説明

化粧肌評価装置、化粧肌評価方法、及び化粧肌評価プログラム

【課題】化粧肌の美しさを皮膚表面の皮丘領域における化粧料の付着程度を指標として評価する。
【解決手段】化粧料を塗布した化粧肌を評価するための化粧肌評価装置であって、前記化粧肌を撮影した画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段によって取得された画像に含まれる皮丘領域に付着している前記化粧料の付着程度を解析する画像解析手段と、前記画像解析手段によって解析された皮丘領域における前記化粧料の付着程度を指標として、前記化粧肌に対する評価を行う評価手段とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧肌評価装置、化粧肌評価方法、及び化粧肌評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、メーキャップ化粧料としてのファンデーションを肌に施すことにより、シミ、そばかす、くすみ等の様々な肌の悩みを隠し、肌を美しく仕上げるための様々な化粧方法が提案されている。
【0003】
このような化粧方法によって化粧料が施された化粧肌を定量的に評価する方法として、例えば、サンプル皮膚表面の二次元サンプル画像を撮像し、サンプル皮膚表面の凹凸を分析することによってシワやキメの隠蔽効果を評価する皮膚表面解析システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、撮像した二次元サンプル画像の明暗ピーク間隔及び明暗ピーク粗さに基づき、シワやキメの尺度となる皮膚の凹凸の視覚的粗さや化粧料のシワ・キメ隠蔽効果を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−189942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の手法では、例えば化粧料のシワ・キメ隠蔽効果等を算出している。しかしながら、様々な化粧方法によるファンデーション等の化粧料を肌に施した後の仕上がりの美しさ、すなわち化粧肌の美しさについて分析したところ、化粧肌の美しさには、皮膚表面の皮丘領域における化粧料の付着程度に差が生じていることが分かった。また、従来においては、このような化粧肌における皮膚表面の皮丘領域に着目し、皮丘領域に対する化粧料の付着程度を指標として化粧肌の美しさを評価する手法については提案されていなかった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、化粧肌の美しさを皮膚表面の皮丘領域における化粧料の付着程度を指標として評価する化粧肌評価装置、化粧肌評価方法、及び化粧肌評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、化粧料を塗布した化粧肌を評価するための化粧肌評価装置であって、前記化粧肌を撮影した画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段によって取得された画像に含まれる皮丘領域に付着している前記化粧料の付着程度を解析する画像解析手段と、前記画像解析手段によって解析された皮丘領域における前記化粧料の付着程度を指標として、前記化粧肌に対する評価を行う評価手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、化粧料を塗布した化粧肌を評価するための化粧肌評価装置により実行される化粧肌評価方法であって、前記化粧肌を撮影した画像を取得する画像取得手順と、前記画像取得手順によって取得された画像に含まれる皮丘領域に付着している前記化粧料の付着程度を解析する画像解析手順と、前記画像解析手順によって解析された皮丘領域における前記化粧料の付着程度を指標として、前記化粧肌に対する評価を行う評価手順とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、化粧料を塗布した化粧肌を評価するための化粧肌評価プログラムであって、コンピュータを、前記化粧肌を撮影した画像を取得する画像取得手段、前記画像取得手段によって取得された画像に含まれる皮丘領域に付着している前記化粧料の付着程度を解析する画像解析手段、前記画像解析手段によって解析された皮丘領域における前記化粧料の付着程度を指標として、前記化粧肌に対する評価を行う評価手段として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化粧肌の美しさを皮膚表面の皮丘領域における化粧料の付着状態を指標として評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における化粧肌評価装置の機能構成の一例を示す図である。
【図2】本実施形態における化粧肌評価処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】本実施形態における化粧肌評価処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】異なる化粧方法によるファンデーション付着状態を説明するための図である。
【図5】画像解析手段によって評価対象となる化粧肌の画像を白黒化し、白黒化した画像を判別分析法により自動二値化した画像の一例を示す図である。
【図6】評価対象となる化粧肌の画像から抽出される皮丘領域の一例を示す図である。
【図7】図6で抽出した皮丘領域を覆うファンデーションの付着程度の割合を示す図である。
【図8】皮丘領域におけるファンデーション付着程度の割合の平均値を算出するために用いた肌レプリカの表面画像の一例を示す図である。
【図9】パウダリーファンデーション及びリキッドファンデーションに対するアンケート結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
<化粧肌評価装置:機能構成例>
図1は、本実施形態における化粧肌評価装置の機能構成の一例を示している。図1に示すように、本実施形態における化粧肌評価装置10は、入力手段11と、出力手段12と、記録手段13と、画像取得手段14と、画像解析手段15と、評価手段16と、制御手段17とを有するように構成され、「化粧肌の美しさ」に対する指標として、皮膚(肌)表面の皮丘領域に化粧料としてのファンデーションがどの程度付着しているか(付着程度)を用いて、化粧肌の評価を行う。
【0014】
入力手段11は、例えばキーボードや、マウス等のポインティングデバイス等からなり、ユーザ等からの画像取得指示や、画像解析指示、化粧肌評価指示等の各種指示の開始、終了等の入力を受け付ける。
【0015】
出力手段12は、例えばディスプレイ等からなり、入力手段11により入力された内容や、入力内容に基づいて実行された内容等の表示・出力を行う。
【0016】
記録手段13は、画像取得手段14により取得された画像、画像解析手段15によって解析された結果、評価手段16によって評価された結果等の各種データを記録する。また、記録手段13は、必要に応じて記録されている各種データを読み出すことができる。
【0017】
画像取得手段14は、例えば偏光マイクロスコープ等によって評価対象者のシミ、そばかす、くすみ等の肌の悩みが集中する頬部位における化粧肌を撮影した画像を取得する。なお、上述したように、化粧肌とは、例えばファンデーション等の化粧料が肌に施された後の化粧料が塗布された状態の肌を示す。
【0018】
画像解析手段15は、画像取得手段14によって取得された画像に含まれる皮膚表面の皮丘領域に付着しているファンデーションの付着程度を解析する。
【0019】
具体的には、画像解析手段15は、画像取得手段14によって取得された画像を所定の閾値に基づいて二値化し、二値化した画像に含まれる複数の皮丘領域ごとに領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合を算出して、皮丘領域におけるファンデーションの付着程度を数量化することにより解析する。
【0020】
ここで、画像解析手段15は、例えば画像取得手段14によって取得された画像を白黒化し、白黒化した画像を判別分析法により自動二値化して、自動二値化した画像に含まれる複数の皮丘領域ごとに領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合を算出して解析しても良い。
【0021】
なお、上述した所定の明るさを有する領域の割合は、例えば化粧肌の画像をRGB等の画像信号により取得した場合には、画像信号を二値化して、皮丘領域全体に対する所定の輝度値を有する信号の割合、又は皮丘領域全体に対して所定の明度値等を有する信号の割合によって算出する。また、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば皮丘領域全体に対する所定の色相値や彩度値を有する信号の割合によって算出しても良い。また、所定の明るさを有する領域の割合とは、例えば後述する二値化処理により皮丘領域全体に対して白色化した領域の割合を示す。
【0022】
また、上述した複数の皮丘領域は、画像中に含まれる全ての皮丘領域でも良く、全ての皮丘領域のうち、任意若しくはランダムに設定される所定数の皮丘領域でも良い。
【0023】
評価手段16は、化粧肌の美しさに対する指標として、画像解析手段15によって解析された皮丘領域におけるファンデーションの付着程度を用いて、化粧肌の評価を行う。具体的には、評価手段16は、画像解析手段15によって解析された皮丘領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合により、皮丘領域におけるファンデーションの付着程度を数量化し、数量化された値を指標として評価を行う。
【0024】
例えば、評価手段16は、皮丘領域ごとに領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合が約50〜60%程度の場合、化粧肌の評価値を高く設定する。なお、評価手段16は、複数の皮丘領域に対する、所定の明るさを有する領域の割合の平均値に基づいて、化粧肌に対する評価を行っても良い。ここで、評価手段16による化粧肌の評価値が高いとは、例えば他人から見てその化粧肌が美しいと評価されることを意味する。
【0025】
制御手段17は、化粧肌評価装置10の各構成部全体の制御を行う。例えば、制御手段17は、ユーザ等による入力手段11からの指示等に基づいて、画像取得手段14により評価対象者の頬部位から化粧肌の画像を取得し、画像解析手段15により化粧肌の画像を解析し、評価手段16により化粧肌に対して評価を行う等の各制御を行う。
【0026】
<化粧肌評価装置:ハードウェア構成>
上述した化粧肌評価装置10では、各機能をコンピュータに実行させることができる化粧肌評価プログラム等の実行プログラムを生成し、例えば汎用のパーソナルコンピュータ、サーバ等に実行プログラムをインストールすることにより、本発明における化粧肌評価処理等を実行することができる。
【0027】
次に、図2を用いて、本実施形態における化粧肌評価処理が実行可能なコンピュータのハードウェア構成例について説明する。図2は、本実施形態における化粧肌評価処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示している。
【0028】
図2のコンピュータ本体には、入力装置21と、出力装置22と、ドライブ装置23と、補助記憶装置24と、メモリ装置25と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)26と、ネットワーク接続装置27とを有するように構成され、これらはシステムバスBで相互に接続されている。
【0029】
入力装置21は、ユーザ等が操作するキーボード、マウス等のポインティングデバイスを有しており、ユーザ等からのプログラムの実行等、各種操作信号を入力する。また、入力装置21は、例えば偏光マイクロスコープ等から撮影された評価対象者の化粧肌の画像を入力する入力ユニットを有している。
【0030】
出力装置22は、本発明の処理を行うためのコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するディスプレイを有し、CPU26が有する制御プログラムにより実行経過や結果等を表示することができる。
【0031】
ここで、本発明においてコンピュータ本体にインストールされる実行プログラムは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやCD−ROM等の可搬型の記録媒体28等により提供される。プログラムを記録した記録媒体28は、ドライブ装置23にセット可能であり、記録媒体28に含まれる実行プログラムが、記録媒体28からドライブ装置23を介して補助記憶装置24にインストールされる。
【0032】
補助記憶装置24は、ハードディスク等のストレージ手段であり、本発明における実行プログラムや、コンピュータに設けられた制御プログラム等を記憶し、必要に応じて入出力を行うことができる。
【0033】
メモリ装置25は、CPU26により補助記憶装置24から読み出された実行プログラム等を格納する。なお、メモリ装置25は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等からなる。
【0034】
CPU26は、OS(Operating System)等の制御プログラム、及びメモリ装置25に格納されている実行プログラムに基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御して、化粧肌評価処理等の各処理を実現することができる。
【0035】
なお、プログラム実行中に必要な各種情報等は、補助記憶装置24から取得することができ、また実行結果等を格納することもできる。
【0036】
ネットワーク接続装置27は、通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムを通信ネットワークに接続されている他の端末装置等から取得したり、プログラムを実行することで得られた実行結果又は本発明における実行プログラム自体を他の端末装置等に提供したりすることができる。
【0037】
上述したハードウェア構成により、本発明における化粧肌評価処理を実行することができる。また、プログラムをインストールすることにより、汎用のパーソナルコンピュータ等で本発明における化粧肌評価処理を容易に実現することができる。
【0038】
<本実施形態における化粧肌評価処理手順>
次に、図3を用いて、本実施形態における化粧肌評価処理手順について、フローチャートを用いて具体的に説明する。図3は、本実施形態における化粧肌評価処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0039】
図3に示す化粧肌評価処理において、画像取得手段14は、例えば偏光マイクロスコープ等により撮影された評価対象者の頬部位における化粧肌の画像を取得する(S10)。ここで、画像取得手段14は、例えば頬部位における約3mm×3mm程度の化粧肌の画像を取得し、例えば以下の処理が実行できる程度に拡大する。
【0040】
次に、画像解析手段15は、画像取得手段14によって取得された画像を白黒化し、白黒化した画像を、例えば判別分析法を用いて自動二値化する(S11)。
【0041】
また、画像解析手段15は、S11の処理で自動二値化した画像から皮丘領域を抽出し、抽出した皮丘領域ごとに領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合を算出して、皮丘領域におけるファンデーションの付着程度を解析する(S12)。
【0042】
なお、上述したように、本実施形態では判別分析法を用いて自動二値化しているが、本発明においてこれに限定されるものではない。また、画像を二値化処理する場合、二値化の判定に用いられる閾値は、例えば照明等の化粧肌の撮影条件、あるいはファンデーションに含まれる光沢の有無やファンデーションの色、成分等により適宜設定しても良い。
【0043】
次に、評価手段16は、化粧肌の美しさを画像解析手段15によって解析された皮丘領域におけるファンデーションの付着程度を指標として、化粧肌に対する評価を行い(S13)、処理を終了する。
【0044】
ここで、評価手段16は、画像解析手段15によって解析された所定の明るさを有する領域の割合により、皮丘領域におけるファンデーションの付着程度を数量化し、数量化した値を指標として評価を行う。
【0045】
例えば、評価手段16は、所定の明るさを有する領域の割合が約50〜60%程度の場合、その化粧肌は美しいと評価し、化粧肌の評価値を高く設定する。また、評価手段16は、複数の皮丘領域に対する、所定の明るさを有する領域の割合の平均値に基づいて、化粧肌に対する評価を行っても良い。
【0046】
<皮膚表面のファンデーション付着状態>
次に、図4を用いて、異なる化粧方法による皮膚(肌)表面のファンデーション付着状態について説明する。図4は、異なる化粧方法によるファンデーション付着状態を説明するための図である。
【0047】
なお、図4(A)は、顔の頬部位における肌表面の形状を転写し、これを型に作成した肌レプリカの表面を拡大した画像を示している。また、図4(B)は、一般的に用いられている化粧方法により肌レプリカにファンデーションを滑らせるように塗布した場合のファンデーションの付着状態を示している。
【0048】
また、図4(C)は、化粧肌が美しいと評価された美容技術者の塗布方法を用いて肌レプリカにファンデーションを塗布した場合のファンデーションの付着状態を示している。なお、上述した美容技術者の塗布方法とは、例えば皮丘領域へのファンデーションの付着を意図したパッティング方法であり、肌の表面に対してファンデーションを水平方向に滑らせず、垂直方向の動きによってパッティングする方法である。具体的には、肌の表面を垂直方向に1mm以上10mm以内で動かす力によって、肌の表面にファンデーションを載せるようパッティングする方法である。
【0049】
図4(A)に示すように、肌レプリカに転写された皮膚表面を拡大すると、皮膚表面の形状は、毛穴と、毛穴から伸びた皮溝と、皮溝に囲まれた皮丘とによって構成されている。
【0050】
ここで、図4(B)に示すように、図4(A)に示す肌レプリカに、一般的に用いられている化粧方法によりファンデーションを滑らせるように塗布した場合、肌レプリカの皮丘領域には、白っぽいファンデーションが付着していない黒っぽい部分が多く見られ、毛穴領域や皮溝領域等の窪んだ部分には、ファンデーションが多く付着している。
【0051】
一方、図4(C)に示すように、図4(A)に示す肌レプリカに上述の美容技術者の塗布方法によりファンデーションを塗布した場合には、肌レプリカの皮丘領域をファンデーションが覆うように付着している。また、毛穴領域や皮溝領域にファンデーションが付着しすぎず、肌レプリカの毛穴領域、皮溝領域、皮丘領域全体に対して均一にファンデーションが付着している。
【0052】
上述したように、一般的な化粧方法でファンデーションを滑らせるように塗布した場合には皮丘領域にファンデーションが付きにくい一方、上述の化粧肌が美しいと評価された美容技術者の塗布方法によりファンデーションを塗布した場合には、皮丘領域にファンデーションが多く付着している。
【0053】
このことから、化粧肌の美しさには、特に皮丘領域におけるファンデーションの付着程度に差が生じていることが分かる。そこで、本実施形態では、化粧肌の美しさを、特に取得した画像中に含まれる1又は複数の皮丘領域におけるファンデーションの付着程度を指標として、化粧肌に対する評価を行う。
【0054】
<撮影された画像を二値化した例>
次に、図5を用いて、画像解析手段15によって評価対象となる化粧肌の画像が画像処理された例について説明する。図5は、画像解析手段によって評価対象となる化粧肌の画像を白黒化し、白黒化した画像を判別分析法により自動二値化した画像の一例を示している。
【0055】
なお、図5(A)は、一般的な化粧方法によりファンデーションを滑らすように肌に塗布した場合の化粧肌の画像を示し、図5(B)は、上述の美容技術者の塗布方法によりファンデーションを塗布した場合の化粧肌の画像を示している。
【0056】
また、図5(A)及び図5(B)は、それぞれ液体状のファンデーションであるリキッドファンデーション(リキッドFD)を実際の肌に塗布したときの化粧肌を撮影して得られた約1.4mm×1.4mmの画像を拡大した例を示している。
【0057】
図5(C)及び図5(D)は、それぞれ図5(A)及び図5(B)の画像を白黒化した画像を示しており、図5(E)及び図5(F)は、それぞれ図5(C)及び図5(D)の画像を、判別分析法によって自動二値化したものを示している。
【0058】
本実施形態では、画像解析手段15は、上述のように画像処理された図5(E)及び図5(F)の画像を用いて、画像中に含まれる皮丘領域を抽出し、皮丘領域を覆っているファンデーションの割合を、抽出した皮丘領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合、すなわち二値化処理により、抽出した皮丘領域全体に対する白色化した部分(領域)の割合を算出することにより取得する。
【0059】
本実施形態によれば、上述したように、判別分析法により自動二値化した図5(E)及び図5(F)の画像を用いて、皮丘領域全体に対する白色化した部分の割合を算出することにより、容易に皮丘領域におけるファンデーション付着程度の割合を算出することが可能となる。
【0060】
<化粧肌の画像に含まれる皮丘領域の例>
ここで、図6を用いて、評価対象となる化粧肌の画像から抽出される皮丘領域について説明する。図6は、評価対象となる化粧肌の画像から抽出される皮丘領域の一例を示している。
【0061】
なお、図6(A)は、上述の美容技術者の塗布方法によりファンデーションが塗布された化粧肌の画像を示し、図6(B)は、一般的な化粧方法によりファンデーションを滑らすように肌に塗布した場合の化粧肌の画像を示している。
【0062】
図6(A)、図6(B)に示すように、画像解析手段15は、画像に含まれる全ての皮丘領域のうち、例えば点線によって示される5つの皮丘領域を抽出する。また、画像解析手段15は、抽出した皮丘領域におけるファンデーションの付着程度を、上述した図5に示す画像処理された画像を用いて、皮丘領域ごとに領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合を算出することによって解析する。
【0063】
<皮丘領域を覆うファンデーション付着程度の割合>
次に、図7を用いて、上述した図6で抽出した皮丘領域を覆うファンデーションの付着程度の割合について比較する。図7は、図6で抽出した皮丘領域を覆うファンデーションの付着程度の割合を示している。
【0064】
なお、上述した皮丘領域ごとのファンデーション付着程度の割合は、皮丘領域ごとに領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合、すなわち二値化処理により、皮丘領域全体に対する白色化した部分(領域)の割合を算出して得た値である。
【0065】
図7に示すように、一般的な化粧方法によりファンデーションを滑らすように肌に塗布場合、皮丘領域を覆うファンデーションの付着程度の割合は、抽出したどの皮丘領域においても30%〜50%未満となっており、抽出した5つの皮丘領域に対するファンデーションの付着程度の割合の平均値も40%程度となっている。
【0066】
一方、上述の美容技術者の塗布方法によりファンデーションを塗布した場合には、皮丘領域を覆うファンデーション付着程度の割合は、抽出したどの皮丘領域においても約50%〜60%程度となっており、抽出した5つの皮丘領域に対するファンデーション付着程度の割合の平均値も50%以上となっている。
【0067】
上述したように、美容技術者の塗布方法による化粧肌は、一般的なファンデーション塗布方法による化粧肌と比較して、皮丘領域におけるファンデーション付着程度の割合が高く、皮丘領域にファンデーションがしっかりと付着していることが分かる。
【0068】
このように、一般的なファンデーション塗布方法の化粧肌と、上述の美容技術者によるファンデーション塗布方法の化粧肌とでは、皮丘領域におけるファンデーションの付着程度の割合に差が生じていることが分かる。また、上述の美容技術者によるファンデーション塗布方法の化粧肌では、皮丘領域の領域全体を覆うファンデーションの割合が約50%〜60%程度の値となっていることが分かる。
【0069】
<肌レプリカの皮丘領域におけるファンデーション付着程度の平均値を算出した例>
次に、図8を用いて、肌レプリカを用いて皮丘領域におけるファンデーション付着程度の割合の平均値を算出した例について説明する。図8は、皮丘領域におけるファンデーション付着程度の割合の平均値を算出するために用いた肌レプリカの表面画像の一例を示している。
【0070】
なお、図8(A)は、上述の美容技術者の塗布方法によりファンデーションを塗布した肌レプリカの表面画像の例を示し、図8(B)は、一般的な化粧方法によりファンデーションを塗布した肌レプリカの表面画像の例を示している。また、図8(C)及び図8(D)は、それぞれ図8(A)及び図8(B)を上述した画像処理により二値化した画像を示している。
【0071】
図8(A)及び図8(B)の肌レプリカ画像に含まれる全ての皮丘領域をそれぞれ皮丘領域1〜8に分けて、皮丘領域1〜8に対するファンデーション付着程度の割合の平均値を算出する。具体的には、図8(C)及び図8(D)に示すように、画像解析手段15によって二値化した画像に含まれる皮丘領域1〜8に対する所定の明るさを有する領域の割合の平均値、すなわち二値化処理により皮丘領域1〜8において白色化した領域の割合の平均値を算出する。
【0072】
図8(C)に示すように、上述の美容技術者によるファンデーション塗布方法の場合には、皮丘領域1〜8に対する所定の明るさを有する領域の割合の平均値は、58.3%となった。一方、図8(D)に示すように、一般的な化粧方法によるファンデーション塗布方法の場合には、皮丘領域1〜8に対する所定の明るさを有する領域の割合の平均値は、47.6%となった。
【0073】
上述したように、肌レプリカを用いて皮丘領域に対するファンデーション付着程度の割合の平均値を算出した場合に、上述の美容技術者の塗布方法の場合、一般的なファンデーション塗布方法よりも高い値となることが分かる。また、上述の美容技術者の塗布方法では、皮丘領域を覆うファンデーションの割合の平均が58.3%となり、図7と同様に約50%〜60%程度の値となっていることが分かる。
【0074】
上述した図7及び図8の解析結果から、皮丘領域におけるファンデーションの付着程度を指標として、化粧肌に対する評価を行うことが可能となる。例えば、本実施形態の評価手段16により、皮丘領域ごとの領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合が約50〜60%程度の場合、化粧肌は美しいとして化粧肌の評価値を高く設定することができる。また、評価手段16によって、複数の皮丘領域に対する所定の明るさを有する領域の割合の平均値から評価することもできる。
【0075】
<化粧方法についてのアンケート調査>
次に、図9を用いて、上述の方法によりファンデーションを塗布した化粧肌に関して調査したアンケート結果について説明する。なお、図9は、パウダリーファンデーション及びリキッドファンデーションに対するアンケート結果を示している。
【0076】
本調査は、毛穴の目立ち、クマ、シミ、そばかす等の肌の悩みがある20代〜50代のユーザ80名に、普段行っている塗布方法、及び、上述の美容技術者の塗布方法をそれぞれ用いてファンデーションを塗布してもらったときの化粧肌について調査したものである。アンケートでは、仕上がった化粧肌が美しいかを評価する「きれい」か、及び、今後やってみたい、塗り方に魅力を感じる等の嗜好性を評価する「総合的な好み」について調査した。
【0077】
図9に示すように、普段行っている塗布方法で仕上げた化粧肌の評価を平均スコア(3.0)としたときに、上述の美容技術者の塗布方法で仕上げた化粧肌は、パウダリーファンデーション(パウダリーFD)、リキッドファンデーション(リキッドFD)ともに平均スコアを越える高い評価を得た。このアンケート結果からも、上述の美容技術者の塗布方法により仕上げた化粧肌が、美しいと評価されることが分かる。
【0078】
上述したように、本実施形態によれば、化粧肌の美しさを皮膚表面の皮丘領域における化粧料の付着程度を指標として評価することが可能となる。また、本実施形態によれば、皮膚表面の皮丘領域のみ解析することで画像処理等を複雑にする必要がなく、容易且つ迅速に、化粧肌の美しさを評価することが可能となる。
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本
発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 化粧肌評価装置
11 入力手段
12 出力手段
13 記録手段
14 画像取得手段
15 画像解析手段
16 評価手段
17 制御手段
21 入力装置
22 出力装置
23 ドライブ装置
24 補助記憶装置
25 メモリ装置
26 CPU
27 ネットワーク接続装置
28 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を塗布した化粧肌を評価するための化粧肌評価装置であって、
前記化粧肌を撮影した画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された画像に含まれる皮丘領域に付着している前記化粧料の付着程度を解析する画像解析手段と、
前記画像解析手段によって解析された皮丘領域における前記化粧料の付着程度を指標として、前記化粧肌に対する評価を行う評価手段とを有することを特徴とする化粧肌評価装置。
【請求項2】
前記画像解析手段は、
前記皮丘領域における前記化粧料の付着程度を、前記画像取得手段によって取得された画像を二値化し、二値化した画像に含まれる複数の皮丘領域ごとに領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合を算出することにより解析し、
前記評価手段は、
前記画像解析手段によって解析された皮丘領域に対する前記所定の明るさを有する領域の割合を前記指標とすることを特徴とする請求項1に記載の化粧肌評価装置。
【請求項3】
前記画像解析手段は、
前記皮丘領域における前記化粧料の付着程度を、前記画像取得手段によって取得された画像を判別分析法により自動二値化して、自動二値化した画像に含まれる複数の皮丘領域ごとに領域全体に対する前記所定の明るさを有する領域の割合を算出することにより解析することを特徴とする請求項2に記載の化粧肌評価装置。
【請求項4】
前記評価手段は、
前記皮丘領域に対する前記所定の明るさを有する領域の割合が50〜60%の場合、前記化粧肌の評価値を高く設定することを特徴とする請求項2又は3に記載の化粧肌評価装置。
【請求項5】
前記評価手段は、
前記複数の皮丘領域に対する、前記所定の明るさを有する領域の割合の平均値に基づいて、前記化粧肌に対する評価を行うことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の化粧肌評価装置。
【請求項6】
化粧料を塗布した化粧肌を評価するための化粧肌評価装置により実行される化粧肌評価方法であって、
前記化粧肌を撮影した画像を取得する画像取得手順と、
前記画像取得手順によって取得された画像に含まれる皮丘領域に付着している前記化粧料の付着程度を解析する画像解析手順と、
前記画像解析手順によって解析された皮丘領域における前記化粧料の付着程度を指標として、前記化粧肌に対する評価を行う評価手順とを有することを特徴とする化粧肌評価方法。
【請求項7】
前記画像解析手順は、
前記皮丘領域における前記化粧料の付着程度を、前記画像取得手順によって取得された画像を二値化し、二値化した画像に含まれる複数の皮丘領域ごとに領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合を算出することにより解析し、
前記評価手順は、
前記画像解析手順によって解析された皮丘領域に対する前記所定の明るさを有する領域の割合を前記指標とすることを特徴とする請求項6に記載の化粧肌評価方法。
【請求項8】
前記画像解析手順は、
前記皮丘領域における前記化粧料の付着程度を、前記画像取得手順によって取得された画像を判別分析法により自動二値化して、自動二値化した画像に含まれる複数の皮丘領域ごとに領域全体に対する前記所定の明るさを有する領域の割合を算出することにより解析することを特徴とする請求項7に記載の化粧肌評価方法。
【請求項9】
前記評価手順は、
前記皮丘領域に対する前記所定の明るさを有する領域の割合が50〜60%の場合、前記化粧肌の評価値を高く設定することを特徴とする請求項7又は8に記載の化粧肌評価方法。
【請求項10】
前記評価手順は、
前記複数の皮丘領域に対する、前記所定の明るさを有する領域の割合の平均値に基づいて、前記化粧肌に対する評価を行うことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の化粧肌評価方法。
【請求項11】
化粧料を塗布した化粧肌を評価するための化粧肌評価プログラムであって、
コンピュータを、
前記化粧肌を撮影した画像を取得する画像取得手段、
前記画像取得手段によって取得された画像に含まれる皮丘領域に付着している前記化粧料の付着程度を解析する画像解析手段、
前記画像解析手段によって解析された皮丘領域における前記化粧料の付着程度を指標として、前記化粧肌に対する評価を行う評価手段として機能させる化粧肌評価プログラム。
【請求項12】
前記画像解析手段は、
前記皮丘領域における前記化粧料の付着程度を、前記画像取得手段によって取得された画像を二値化し、二値化した画像に含まれる複数の皮丘領域ごとに領域全体に対する所定の明るさを有する領域の割合を算出することにより解析し、
前記評価手段は、
前記画像解析手段によって解析された皮丘領域に対する前記所定の明るさを有する領域の割合を前記指標とすることを特徴とする請求項11に記載の化粧肌評価プログラム。
【請求項13】
前記画像解析手段は、
前記皮丘領域における前記化粧料の付着程度を、前記画像取得手段によって取得された画像を判別分析法により自動二値化して、自動二値化した画像に含まれる複数の皮丘領域ごとに領域全体に対する前記所定の明るさを有する領域の割合を算出することにより解析することを特徴とする請求項12に記載の化粧肌評価プログラム。
【請求項14】
前記評価手段は、
前記皮丘領域に対する前記所定の明るさを有する領域の割合が50〜60%の場合、前記化粧肌の評価値を高く設定することを特徴とする請求項12又は13に記載の化粧肌評価プログラム。
【請求項15】
前記評価手段は、
前記複数の皮丘領域に対する、前記所定の明るさを有する領域の割合の平均値に基づいて、前記化粧肌に対する評価を行うことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の化粧肌評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−212307(P2011−212307A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84361(P2010−84361)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】