説明

化繊混抄紙及びウェットワイパー

【課題】対人用のウェットワイパーに適する化繊混抄紙を提供する。
【解決手段】
米坪が10〜50g/m2の範囲にあり、紙厚が100〜300μmの範囲にあり、パルプと熱融着バインダー繊維を含み、レーヨン繊維は含まず、前記パルプと熱融着バインダー繊維の重量比が7.5:2.5〜6.0:4.0である化繊混抄紙により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化繊混抄紙及びウェットワイパーに関する。特に、レーヨン繊維を含まない化繊混抄紙及びこれを用いたウェットワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
水やアルコールなどの薬液を浸漬した拭取り用のウェットワイパーはよく知られる。このウェットワイパーの中でも、お手ふき、お尻拭きなど人体の清拭に使用されるものに関しては、特に柔らかさが重要視される。
このため、対人用途のウェットワイパーは、基材として柔らかさと親水性に優れるレーヨン繊維を含むスパンレース不織布が主に利用されてきた。
【特許文献1】特開2004−190163
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、レーヨン繊維を含むスパンレース不織布は、表面強度が弱く、拭取り作業時に毛羽立ち、毛玉が発生する。
また、使い捨て物品であるウェットワイパーはコストが重視されるもののレーヨン繊維は高価なため、そのコストダウンの妨げとなっている。
そこで、本発明の課題は、レーヨン繊維を使用せずに、十分な親水性及び柔らかさを確保し、さらに拭取り操作にともなう表面の毛羽立ち、毛玉の発生がないウェットワイパー及びそのウェットワイパー用の基材シートに用いるに適する化繊混抄紙の提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、米坪が10〜50g/m2の範囲にあり、紙厚が100〜300μmの範囲にあり、パルプと熱融着バインダー繊維を含み、レーヨン繊維は含まず、前記パルプと熱融着バインダー繊維の重量比が7.5:2.5〜6.0:4.0であり、水を自重の250重量%含浸させた状態で測定した、JIS L 1096Eのハンドルオメーター法によるソフトネスが60g以下であることを特徴とする化繊混抄紙である。
この化繊混抄紙は、水を250重量%含んだ状態での学振型摩擦試験機による表面摩耗試験の結果が7回以上であるのが望ましい。
【0005】
熱融着バインダー繊維は、芯鞘構造を有し、融着温度が100〜160℃であるのが望ましい。
また、パルプが針葉樹晒クラフトパルプを含み、熱融着バインダー繊維がPET/PE芯鞘構造の熱融着バインダー繊維を含むのが望ましい。
また、上記化繊混抄紙を用いた基材シートに薬液を含浸してウェットワイパーとするのが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
以上の本発明によれば、レーヨン繊維を使用せずに、十分な親水性及び柔らかさを確保し、さらに拭取り操作にともなう表面の毛羽立ち、毛玉の発生がないウェットワイパー及びそのウェットワイパー用の基材シートに用いるに適する化繊混抄紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次いで、本発明を実施するための最良の形態を以下に詳述する。
<化繊混抄紙>
本発明の化繊混抄紙は、主に人体の清拭用のウェットワイパーの基材に用いるのに極めて適するものである。この用途に用いるのがよい。
その本発明の化繊混抄紙は、米坪が10〜50g/m2、好適には15〜40g/m2とする。米坪はJIS P 8124に基づいて測定する。米坪が10g/m2未満であると紙の地合が悪くなり、50g/m2を超えると紙が硬くなり適さない。
また、紙厚は、100〜300μm、好適には100〜200μmとする。紙厚が100μm未満であると薄くなり手肉感がなくなる、300μmを越えると厚すぎて拭き取り面に沿いにくくなる。
【0008】
他方、本発明の化繊混抄紙は、特徴的にパルプと熱融着バインダー繊維を含み、レーヨン繊維は含まない。
かかる化繊混抄紙は、パルプ及び熱融着バインダー繊維を含む抄紙原料を、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、クレープ加工パート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして混抄してシート態様にする。
【0009】
抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0010】
本発明の化繊混抄紙におけるパルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどが挙げられる。より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチドケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
好ましくは、パルプは、バージンパルプである。また、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が80〜100%含まれているがよく、特には100%で針葉樹晒クラフトパルプであるのがよい。針葉樹晒クラフトパルプは長く太い繊維であることから、強度が強い紙となるので望ましい。
【0011】
他方、熱融着バインダー繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとαオレフィンとからなる結晶性プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル樹脂;フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂から構成される熱可塑性繊維などから一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0012】
前記熱融着バインダー繊維は、単一成分の繊維でもよいが複数の樹脂を適宜組み合わせて構成される複合繊維、例えば並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型、三層以上の多層型、中空並列型、中鞘芯型、異形鞘芯型、海島型等で且つ低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成した構造の複合繊維とすることもできる。
熱融着バインダー繊維として特に適するのは、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PE(ポリエチレン)芯鞘構造の熱融着バインダー繊維を含むものである。特にこれを100%含むのがよい。
熱融着バインダー繊維の繊維長は限定されないが、繊維長は3mm以上100mm以下であることが好ましい。更に好ましくは3mm以上10mm以下である。
用いる繊維の繊維太さは、0.2〜6.0dtex、好適には1.0〜3.0dtexである。繊維の太さが0.2dtex未満であると、乾燥時および湿潤時の引張強度が不足する。反対に6.0dtexを超えると剛性が高くなり、柔らかさに劣るようになる。
【0013】
他方、本形態の化繊混抄紙には、パルプと熱融着バインダー繊維の重量比が、7.5:2.5〜6.0:4.0である。パルプの比率が7.5を超え、熱融着バインダー繊維の比率が2.5未満となると、濡れた状態での表面強度が弱くなる。反対にパルプの比率が6.0未満で、熱融着バインダー繊維の比率が4.0を越えると、剛性が高くなり、柔らかさに劣るようになる。
他方、本発明の化繊混抄紙は、水を自重の250%含浸させた状態で測定した、JIS L 1096Eのハンドルオメーター法によるソフトネスが60g以下である。最適には15〜45gであるのが良い。60g以上であると硬くなり、拭き取りにくいものとなる。
【0014】
さらに、本発明の化繊混抄紙は、水を自重の250重量%含んだ状態での学振型摩擦堅牢度試験機による表面摩耗試験の結果が7回以上であるのが望ましい。最適には7〜10回であるのが良い。この表面摩耗試験は、詳細には学振型摩擦堅牢度試験機(例えば、テスター産業株式会社、AB 301 COLOR FASTNESS RUBBING TESTER)を用い、その固定面側に30mm幅の人工皮革(出光テクノファイン株式会社製「サプラーレ」(型番:PBZ13001、色:ブラック)を固定し、水を自重の250重量%含浸させた測定試料(幅25mm長さ80mm)を移動摩擦子側に取り付け、200g荷重下で前記測定試料を往復移動させて人工皮革上を摺動させる。往復移動は120mmのストロークを30回/分の速度で行い、1往復を1回とカウントする。そして、表面に毛玉が発生したことが目視にて確認できたときの回数を計測し、結果とする。
なお、水分を自重の250%重量%含浸させることとしたのは、一般的な対人用ウェットペーパーの水分率がこの程度であることにより、荷重200gとしたのは汚れを拭き取る操作をしたときに皮膚に加わる荷重が概ねこの程度であることによる。また、移動摩擦子側に測定試料、固定面側に人工皮革を固定したのは、通常拭き取り操作はワイパーで皮膚上を摺るように拭き取ることからである。さらに、7回を境として良否の判定を行うようにしたのは、皮膚の汚れを拭き取る際に、7回程度往復移動させて拭き取ることが多いことによる。
以上の本発明の化繊混抄紙は、レーヨン繊維を含まないにもかかわらず、柔らかがあり濡れた状態で擦っても、毛羽立ち、毛玉の発生が極めてし難い、さらには汚れの裏抜けもし難い。従って、ウェットワイパーの基材として適する。
【0015】
<ウェットワイパー>
次いで、本発明の化繊混抄紙を用いたウェットワイパーについて説明する。
本発明のウェットワイパーは、上述の本発明の化繊混抄紙を用いた基材シートに既知の薬液を含浸させたものである。
基材シートは、化繊混抄紙をそのまま用いることもできるが、前記熱融着繊維が溶融する温度範囲で熱カレンダー処理をして、熱融着バインダー繊維とパルプ繊維とを融着させたものを基材シートとするのがよい。さらに、その後にエンボス加工をするのがよい。
エンボス加工するのであれば、好適にはそのエンボス加工は、ヒートスチールマッチエンボス加工である。
ヒートスチールエンボス加工は、一方の金属ロールのエンボス付与凸部が、他方のロールのエンボス付与凹部に嵌るように構成されている一対の熱した金属ロール間にシートを通して当該シートにエンボスを付与するする方法である。
従って、シート表面の凸エンボスが、シート裏面の凹エンボスになる態様となるとともに熱融着バインダー繊維が融着する。
このように熱カレンダー処理したのちヒートスチールマッチエンボス加工を行う利点として、予めカレンダー処理の際に熱融着バインダー繊維が溶融されているので、エンボス加工時に金属ロールにシートが付着する事故がないという製造上の利点がある。
【0016】
そして、かかるエンボス加工によって、基材シートは、柔らかさを維持しつつ厚みが発現し、手肉感と薬液保持性が向上するとともに、エンボスによる表面の凹凸により拭き性能も向上する。特に本発明における化繊混抄紙では、熱融着バインダー繊維を含むことで、熱融着バインダー繊維の溶融変形によって、付与されたエンボスの凹凸がつぶれることがなく弾力のあるものとなる。
【0017】
さらに、本発明の化繊混抄紙を用いた基材シートとして、特に適するのは表裏面を本発明の化繊混抄紙とし、その間にパルプ100%からなる紙層を中間層として介在させた積層構造の基材シートである。
この場合中間層とする紙は、繊維原料がパルプ100%でる抄紙原料を抄紙した紙である。そのパルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどが挙げられる。より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチドケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
好ましくは、パルプは、バージンパルプである。また、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が80〜100%含まれているがよく。特には100%で針葉樹晒クラフトパルプであるのがよい。
【0018】
積層構造にするにあたっては、化繊混抄紙間に紙を介在させた状態で熱カレンダー処理すればよい。熱融着バインダー繊維の溶融により各層が融着するとともに、表面強度が向上する。なお、各層の積層は湿潤状態で行ってもよい。
さらに、この積層状態にした後にはエンボス加工を施すのがよい。このエンボス加工は上述したヒートスチールエンボス加工が好適である。積層しない場合と同様に、柔らかさを維持しつつ厚みが発現し、手肉感と薬液保持性が向上するとともに、エンボスによる表面の凹凸により拭き性能も向上する。さらに、弾力感も得られる。
【0019】
そして、この基材シートは、特に表裏面において化繊混抄紙の優れた液透過性と毛羽立ちの少なさが発現され、中間層において紙層が有する優れた薬液保持性と湿潤時の柔らかさが発現され、これらの利点があいまって、特に、レーヨン繊維を用いなくとも極めて柔らかで液保持性に優れたものとなる。しかも、レーヨン繊維を用いないので原料コストが安くでき、また抄紙機で製造できるので製造コストも安くできる。
なお、薬液は本発明では限定されるものではない。既知の薬液が利用できる。例えば、メタノール、エタノール、グリセリン等のアルコール、水、メントール等の冷涼剤、香料などを適宜の配合割合で含む既知の薬液を用いることができる。
【実施例】
【0020】
次いで、本発明の実施例と比較例について濡れた状態でのソフトネス、耐摩擦を試験し評価した。試験結果と実施例、比較例、従来例の各物性を表1に示す。なお、実施例及び比較例は、角型手抄きシートマシンを使用し、手抄き後、ロータリー乾燥120度で2分間乾燥して試料とし、従来例は、現在市販されている水解性紙又はレーヨン繊維を含むスパンレース不織布からなる対人用ワイパーを試料とした。
【0021】
さらに、実施例及び比較例における熱融着バインダー繊維は、融着温度が110℃のPET/PE芯鞘構造の熱融着バインダー繊維である。
なお、試験方法は、乾燥引張り強度及び湿潤引張強度についてはJIS P 8113に基づいて測定し、米坪についてはJIS P 8124に基づいて測定し、紙厚についてはマイクロゲージ法により測定した。また、密度については米坪及び紙厚から算出し、乾燥時及び水を自重の250重量%含浸させた時のソフトネスについてはJIS L 1096Eのハンドルオメーター法に準じて測定した。
【0022】
【表1】

【0023】
表1からみてとれるように、本発明の実施例は、比較例よりも水含浸時における対摩耗性及びソフトネスにおいて良好な結果となった。また、湿潤及び乾燥時の引張強度も使用するに十分である。このことから、本願発明の化繊混抄紙は、レーヨン繊維を使用せずに、すなわち安価であり、しかも十分な親水性及び柔らかさを有し、拭取り操作にともなう表面の毛羽立ち、毛玉の発生がないウェットワイパーの基材に適することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、レーヨン繊維を含まない化繊混抄紙及びこれを用いたウェットワイパーに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米坪が10〜50g/m2の範囲にあり、紙厚が100〜300μmの範囲にあり、
パルプと熱融着バインダー繊維を含み、レーヨン繊維は含まず、前記パルプと熱融着バインダー繊維の重量比が7.5:2.5〜6.0:4.0であり、かつ、水を自重の250重量%含浸させた状態で測定した、JIS L 1096Eのハンドルオメーター法によるソフトネスが60g以下であることを特徴とする化繊混抄紙。
【請求項2】
前記化繊混抄紙は、水を自重の250重量%含んだ状態での学振型摩擦試験機を用いた表面摩耗試験の結果が7回以上である請求項1記載の化繊混抄紙。
【請求項3】
熱融着バインダー繊維が、芯鞘構造を有し、融着温度が100〜160℃である請求項1又は2記載の化繊混抄紙。
【請求項4】
パルプが針葉樹晒クラフトパルプを含み、熱融着バインダー繊維がPET/PE芯鞘構造の熱融着バインダー繊維を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の化繊混抄紙。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項の化繊混抄紙を用いた基材シートに薬液が含浸されていることを特徴とするウェットワイパー。

【公開番号】特開2009−133040(P2009−133040A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311684(P2007−311684)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】