説明

医用器具シース

【課題】 医用器具の従来の滅菌処理には問題がある--気体処理は時間を要し;液体処理はその効力に疑問があり、器具を傷める恐れがあり;ディスポーザブル機器の使用は高コストを招く。
【解決手段】 遠位端とは長軸方向に分離される近位端を有し、且つ、第1腔を定める、比較的非弾性のシース本体と、該腔と液的連通状態において該近位端に配置され、該第1腔への長尺内視鏡本体の進入を許容するように構成される開口と、該長尺内視鏡本体が該第1腔内に配置される際には長軸方向に内視鏡レンズに隣接するように配置される透明先端部と、を含む、医用器具シース。この内視鏡シースはさらに、二次腔を定める長尺二次チューブを含んでもよい。医用器具シースの使用法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用器具シースを使用するための装置及び方法に関し、より詳細には、内視鏡などの医用器具に対し吸引接合される医用器具シースに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体の中に侵入するか、又は体と連結する医用器具は、滅菌されていないにしても、極度に清潔でなければならないというのは医学の鉄則である。これは、尿道口、肛門などの生体進入口を介して入る内視鏡や気管支鏡などの機器には特に当てはまる。もしもこれらの機器が、使用の合間に滅菌処置されていないならば、患者間において病原性生物を遷す機会が拡大してしまう。
【0003】
医用器具を滅菌するには、一般に、ガス滅菌を要する。このプロセスは、通常、24時間を要し、それであるから、このプロセスは、1日に数回使用される器具に対しては実用的ではない。その代わりに、多くの機器は、その効力が疑問視される殺菌液に浸される。この薬液浸漬は、少なくとも10分を要するが、これは、ガス滅菌プロセスよりも有利である。しかしながら、殺菌液は、腐食性を呈する傾向があり、そのため、医用器具の寿命以前の破壊をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題を解決するために、いくつかの代替案が考えられている。これまでにも、ディスポーザブル内視鏡などのディスポーザブル機器の使用が示唆されている。しかしながら、仮にこれを実行すれば不当に高いコストを招くであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
代替解決策の一つは、医用器具に対して衛生的でディスポーザブルなシースを着用することである。一局面によれば、医用器具シースは、内視鏡シースとして具体化される。この内視鏡シースは、シース遠位端とは長軸方向に分離されるシース近位端を有する、比較的非弾性のシース本体を含む。この比較的非弾性のシース本体は、シース腔を定める。この内視鏡シースはさらに、シース腔と液的連通状態においてシース近位端に配置され、該シース腔内に長尺内視鏡本体を受容するように構成されるスコープ口、及び、シース遠位端に配置されるシース先端部を含む。このシース先端部の少なくとも一部は、それを介してエネルギーが伝搬することを可能とするように構成され、長尺内視鏡本体がシース腔内に配置される際には長軸方向に内視鏡レンズに隣接するように、配置される。エネルギーの例としては、可視光、赤外線、エコー、及び超音波がある。内視鏡シースは、シース腔と液的に連通し、シース腔から流体を選択的に排除するように構成される排出接合部を含む。内視鏡シースはさらに、長尺二次チューブを含んでもよく、この長尺二次チューブは、二次チューブ遠位端とは長軸方向に分離される二次チューブ近位端を有し、且つ、二次腔を定めてもよい。この二次腔の少なくとも一部はシース腔と事実上平行に延びる。
【0006】
ある実施態様では、比較的非弾性なシース本体は、それに対して陽圧又は陰圧が印加されてもその厚みを事実上維持する。ある実施態様では、排出接合部は、パイロットバルーンと結合したバルブを含んでもよい。ある実施態様では、シース本体は、第1材料から形成され、シース先端部は第2材料から形成されてもよい。さらに、ある実施態様では、第1材料は、ポリテトラフルオロエチレンであってもよい。ある実施態様では、第2材料はシリコンゴムであってもよい。ある実施態様では、長尺二次チューブは、第1材料から形成されていてもよい。シース先端部が第2材料から形成される場合、その第2材料は、第1材料よりも弾性的であることが可能である。
【0007】
さらに、ある実施態様では、シース近位端にハンドル接合部が設けられてもよい。このハンドル接合部は、長尺内視鏡本体と内視鏡シースの間に液密シールを創出するように構成されてもよい。ある実施態様では、長尺二次チューブは、比較的非弾性なシース本体に固定されてもよい。ある実施態様では、二次チューブ遠位端は、シース遠位端に隣接して配置されてもよく、二次腔と液的に連通する開口を有していてもよい。
【0008】
ある実施態様では、二次チューブは、第2医用器具を受容するだけの大きさを有してもよい。ある実施態様では、本内視鏡シースは、長尺の第3チューブを含んでもよく、この第3チューブは、その遠位端とは長軸方向に分離される近位端を有し、且つ、第3腔を定めてもよい。この第3腔の少なくとも一部は、シース腔と事実上平行に延びてもよい。別の実施態様では、二次チューブと同様の、より多くのチューブを、本内視鏡シースに付加することが可能である。例えば、二次チューブが医用器具を受容し、一方、第3のチューブが吸引を実現することが可能である。
【0009】
別の局面によれば、内視鏡シースを使用する方法が開示される。この方法は、内視鏡シースの長尺管状本体の腔の中に、内視鏡本体を挿入すること、内視鏡本体と長尺管状本体の間に液密シールを創出すること、及び、内視鏡本体と長尺管状本体の間から流体を排除して、長尺管状本体を内視鏡本体に接触させること、を含む。ある実施態様では、内視鏡シースの長尺管状本体は、比較的非弾性的であってもよい。
【0010】
ある実施態様では、内視鏡本体と長尺管状本体の間からの流体の排除は、長尺管状本体の腔内部に陰圧を創出することを含んでもよい。ある実施態様では、長尺管状本体の腔中への内視鏡本体の挿入は、内視鏡本体の遠位端を、長尺管状本体の遠位端に接触させることを含んでもよい。さらに、ある実施態様では、本方法はさらに、内視鏡本体と長尺管状本体の間の摩擦係数を下げるために、内視鏡本体及び長尺管状本体のうちの一方に潤滑剤又は他の材料を塗布することを含んでもよい。
【0011】
別の局面によれば、医用器具シースは、遠位端とは長軸方向に分離される近位端を有する、比較的非弾性な本体を含む。この比較的非弾性な本体は、第1腔を定める。本医用器具シースは、第1腔と液的に連通して近位端に配置され、第1腔中に医用器具本体を受容するように構成される開口、及び、シース遠位端に配置されるシース先端部を含む。このシース先端部は、その中をエネルギーが伝搬することを可能とするように構成され、医用器具本体が第1腔内に配置される際には長軸方向に医用器具末端に隣接するように、配置される。本医用器具シースはさらに、二次腔を定める長尺二次チューブを含み、比較的非弾性な本体の遠位端において、複数の開口が定められ、これらの開口のうちの少なくとも一つは、長尺二次チューブの二次腔と液的に連通する。
【0012】
ある実施態様では、医用器具シースはさらに、第1腔と液的に連通し、第1腔から流体を選択的に排除するように構成される排出接合部を含んでもよい。ある実施態様では、排出接合部は、パイロットバルーンと結合したバルブを含んでもよい。このパイロットバルーンは、長尺管状本体内において何時陰圧が維持されるか、を表示するように構成させることが可能である。例えば、パイロットバルーンは、萎縮することによって陰圧を示すことが可能である。ある実施態様では、前記複数の開口は、円形パターンとして配置されてもよい。
【0013】
==関連出願に対する相互参照==
本出願は、米国特許法第119(e)条に基づき、2009年3月25日出願の、米国特許出願第61/163,171号に対する優先権を主張する。なお、この特許出願の全開示を、参照により本出願に含めることを明言する。
【0014】
本発明をよりよく理解するために、添付の図面が参照されてもよい。図面の内容は下記の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】内視鏡と連結させた、医用器具シースの一実施態様の、側面立面図である。
【図2】2Aは、図1の実施態様の断片斜視図であり、2Bは、図1の実施態様の底面平面図である。
【図3】内視鏡と連結させた、医用器具シースの別実施態様の、側面立面図である。
【図4】4Aは、図3の実施態様の断片斜視図であり、4Bは、図3の実施態様の底面平面図である。
【図5】5Aは、医用器具シースの別実施態様の断片斜視図であり、5Bは、図5Aの実施態様の底面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の概念は、各種の修飾及び代替形態に対応することが可能であるが、ここでは、図面の例に基づいて、それらのうちの特定の例示実施態様が示され、本章で詳細に記載される。しかしながら、本開示の概念を、開示されている特定の形態に限定する意図はなく、むしろ逆に、添付の特許請求項に定められる、本発明の精神及び範囲内に納まる限り、全ての修飾物、等価物、及び代替物を包含することが意図されることを理解しなければならない。
【0017】
ここで図1を参照すると、医用器具シースが、内視鏡シース100として示される。この内視鏡シース100は、既知のタイプの内視鏡102の上に設置されるところが示される。内視鏡102は、内視鏡ハンドル104及び長尺内視鏡本体106を含む。内視鏡シース100は、シース遠位端112とは長軸方向に分離されるシース近位端110を有する、長尺管状本シース本体108を含む。このシース本体108は、比較的非弾性な材料から形成される。本明細書で用いる「比較的非弾性な」という用語は、外力が印加された場合長軸方向に目立って伸びることのない材料を指す。比較的非弾性な材料の一つの例として、外力が印加された場合長軸方向に目立って伸びることのない、ポリテトラフルオロエチレン("PTFE")がある。ある実施態様では、比較的非弾性なシース本体は、陽圧又は陰圧がそれに印加されても、その厚みを事実上維持してもよい。
【0018】
シース本体108は、閉鎖されたシース遠位端112から、シース近位端110に配置されるスコープ口116まで延びる、シース腔114を定める。このようにして、スコープ口116は、シース腔114と液的に連通し、シース腔114の中に内視鏡本体106を受容するように構成される。図1に示すように、シース近位端110は、そこにハンドル接合部118を固定させる。このハンドル接合部118の末端は広がって、内視鏡ハンドル104の先端部の上に被さる。ハンドル接合部118は、シリコンゴムから形成され、内視鏡ハンドル104と内視鏡シース100との間に液密シールを形成するように構成される。
【0019】
シース本体108は、患者の体内に挿入される内視鏡本体106に対し、その動作長をカバーするだけの長軸サイズを有し、内視鏡102の汚染を阻止するために内視鏡本体106の動作長を超えて延びる。シース本体108は、内視鏡102の直径よりも十分に大きい初期直径を持つので、内視鏡が内視鏡シース100の中に滑りこむ際、それらの間の摩擦は小さく、したがって、内視鏡102に対しても、内視鏡シース100に対しても損傷を回避することが可能となる。内視鏡シース100の内視鏡本体106に沿う滑走を促進するよう、摩擦係数を下げるための潤滑剤又は他の材料を、別に供給するか、又は、内視鏡シース100の材料の中に含ませてもよいことが了解されよう。
【0020】
ここで図2A及び2Bを参照すると、既知の方式で内視鏡本体106の中を延びる、四つの例示の内視鏡チャンネル220が示される。これらの内視鏡チャンネル220のうちの一つは、内視鏡レンズ222を含み、内視鏡チャンネルの一つ以上は、別の内視鏡レンズ、光源(図示せず)、又は、別の手術支援体又はアクセサリー(図示せず)を含んでもよい。内視鏡シース100は内視鏡102と患者の体の間に液密の障壁を設けるので、患者の体との機械的相互作用(すなわち、単なる可視光又は他の電磁波によるものではない相互作用)を目的として内視鏡チャンネル220の中に延びる手術器具、又は、他の操作性デバイス/侵入性デバイスは、いずれも、図1〜2Bの例示実施態様において使用するには適切ではないと考えられる。
【0021】
図2Aに示すように、シース先端部120は、シース遠位端112に配置される。シース先端部120は、シース本体108と同軸性に延び、シースの遠位端112においてシース腔114を操作可能なように閉鎖する。シース先端部120は、適当であればいずれの長さであってもよく、適当であればいずれの方式でシース遠位端112に取り付けられてもよいことが了解されよう。シース先端部120は、側方延長末端部分224を含み、この末端部分は、それを介してエネルギーの伝達を可能とするように構成され、長軸方向に内視鏡レンズ222に隣接するように配置される。このようなエネルギーの例としては、可視光、赤外線、紫外線、エコー、及び超音波がある。このようにして、シース先端部120は、内視鏡102の中に含まれる各種の機能様式、例えば、内視鏡チャンネル220の内部に含まれる超音波及びファイバーオプティックス、を促進することが可能である。シース腔114の中に配される内視鏡102、又はその他の医用器具は、エネルギー伝達の発生源及び/又は受信機であってもよい。
【0022】
図1〜2Bの例示実施態様では、シース先端部120はシリコンゴムから形成される。シース先端部120はまた、透明で、シース先端部120が、内視鏡本体106と共に曲がることを可能とするような、薄くて屈曲性を持つ、組織又はフィルム様の弾性材料から形成されてもよい。他の実施態様では、シース先端部120は、少なくとも部分的には、透明なプラスチック材料から製造される硬質レンズ又は固形円盤の形を取ってもよいことが了解されるであろう。
【0023】
シース先端部120及びシース本体108は、それぞれ、一体的に形成されてもよいし、又は、別々の成分から合体されてもよい。上述の場合は、シース本体108は、第1材料のPTFEから製造されるが、一方、シース先端部120は、第2材料のシリコンゴムから製造される。別の実施態様では、シース先端部120及びシース本体108は、同じ材料から製造されてもよい。内視鏡102の使用が容易となるよう、この内視鏡シース100の少なくとも一部は、薄くて屈曲性を持つ、組織又はフィルム様の弾性材料−これは透明であってもよい−から形成されていなければならない。
【0024】
内視鏡本体106がシース本体108の中に完全に挿入されると、シース先端部120の末端部分224は、シース先端部120を介するエネルギー伝達を促進するために、内視鏡レンズ222に近接して、又は接触して、保持される。内視鏡レンズ222と、シース先端部120の末端部分224の接触は、もし末端部分224が内視鏡レンズ222から隔てて置かれると発生すると考えられる、望ましくない反射を防ぐ。末端部分224及び内視鏡レンズ222の間の位置取りをやり易くするために、末端部分224、シース先端部120、又は、内視鏡シース100の他の適当な部分のいずれも、末端部分224を長軸方向に内視鏡レンズ222に向けて緊密に偏向させるように構成された、弾性材料又は他の適切な材料から製造されてもよい。ある実施態様では、内視鏡レンズ222と末端部分224の間に、軟らかく透明な材料が付加されてもよい。この軟らかく透明な材料は、例えば、透明なシリコンゲルであってもよい。ある実施態様では、内視鏡レンズ222とシース先端部120の間に僅かなギャップが形成されてもよい。
【0025】
図1に戻ると、内視鏡シース100は、シース腔114と液的に連通する排出接合部226を含む。この排出接合部226は、シース近位端110の近くに置かれる。別の実施態様では、排出接合部226は、シース本体108のいずれの点に配置されてもよいことが了解されよう。さらに、内視鏡シース100は、複数の追加の排出接合部を含んでもよいことが了解されよう。
【0026】
排出接合部226は、末端232においてホース230に結合するバルブ228を含む。このホース230は、末端232から、シース本体108の側面に固定される末端234に延びる。ホース230は、その内部を貫通し、シース腔114をバルブ228と液的に結合させる、腔(図示せず)を有する。バルブ228が開くと、排出接合部226は、大気圧とシース腔114の間に流通路を提供する。
【0027】
排出接合部226のバルブ228は、シース腔114からの、流体(例えば、ただしこれらに限定されないが、空気、生理的食塩水、体液、酸素、窒素、滅菌液、及び/又は潤滑剤)の選択的排除を制御するように構成される。バルブ228は、流体の、ホース230の中への、及び中からの移動を制御するように動作することが可能である。図1〜2Bに示すように、バルブ228は、陰圧源からの真空ラインを受容するように構成され、シース腔114中に陰圧が維持されているかどうかを表示するためのパイロットバルーンを含む。例えば、パイロットバルーンは萎縮して、シース腔114内部の陰圧を表示してもよい。
【0028】
排出接合部226の一例は、Coviden, Mansfield, MA(マサチューセッツ州、米国)から市販されるMallinckrodt(登録商標)Intermediate Hi-Lo Tracheal Tubing、カタログ番号86450である。別の実施態様では、排出接合部226は、シリンジ、真空ライン、又はその他の陽圧又は陰圧源を受容するように構成される、他のバルブ又は器具を含んでもよく、且つ、所望の方向への内部の流体の流れを促進するような一方向バルブを含んでもよい。さらに、排出接合部226を通じて、生理的食塩水又は別の流体をシース腔114に供給することも、可能であると考えられる。シース腔114からの流体排除を促進するために、シース近位端110に配置されるハンドル接合部118は、流体が、排出接合部226を介してシース腔114に印加される吸引圧の下で、スコープ口116を通じて内視鏡シースに入ることがないように阻止する。
【0029】
使用時、内視鏡シース100は、内視鏡102のための汚染障壁として作用する。内視鏡102上に内視鏡シース100を設置するには、ユーザーは、内視鏡本体106をスコープ口116を介してシース本体108の中に挿入する前に、所望なら、内視鏡及び内視鏡シースの一方に対し、摩擦係数を下げるための潤滑剤又は他の物質を塗布してもよい。次に、内視鏡本体が内視鏡シース内の所望の位置に達するまで、内視鏡シース100を、内視鏡本体106に沿って引き上げる(又は、内視鏡本体を、内視鏡シースの中にさらに押し込む)。例えば、内視鏡本体106は、内視鏡レンズ222が、又は、内視鏡本体106の別の遠位位置が、シース先端部120の内側に接触するまで、内視鏡シース100の中に押し込むことが可能であると考えられる。必要に応じて、シース近位端110のハンドル接合部118は、内視鏡本体106のシース腔114へのさらなる進入を阻止するため、「停止」又は運動制限機能を提供してもよい。
【0030】
必要に応じて、シース先端部120、又は関連構造が、弾性を有するか、又は、内視鏡本体106に対して緊密に把握的接合ができるように適応されている場合、ユーザーは、内視鏡の遠位端に対しシース先端部120を巻きほどく(コンドーム様動作において)ことが可能となり、又は、シース先端部120を内視鏡にぴったりと連結させることが可能となり、最終的に、シース本体108の残りの部分も内視鏡本体106の周囲に取り付けられる。
【0031】
内視鏡102がシース腔114に対して所望の位置に達したならば、シース本体108の初期直径は、該シース本体108が、内視鏡本体106の周囲に比較的緩やかに適合するような大きさとなる。次に、真空ライン、シリンジ、又は他の陰圧源が、事実上液密的に排出接合部226に取り付けられ、陰圧が、排出接合部226を介してシース腔114に印加される。シース近位端110に配置されるハンドル接合部118、又は他の密封機構(これは、内視鏡102の周囲にシース遠位端を緊密に保持する弾性バンドほどの、簡単なものであることも可能である)の支援の下に、陰圧源を用いて、内視鏡102に対し屈曲性の内視鏡シース100を吸引適合させる。内視鏡102と内視鏡シース100の間から流体が排除されると、シース本体108の初期直径は縮小し、シース本体108は、図1に示すように、内視鏡本体106の外側に事実上接触させられる。このタイプの接続は、時に、「真空接合」(vacuum fit)と呼ばれることがあるが、ただし、二つの接続される構造体の間に実際の真空が存在する必要はない。バルブ228は、陰圧源が取り除かれた場合、流体がシース腔114に戻ることがないように構成される。バルブ228がパイロットバルーンを含む場合、このパイロットバルーンの状態は、シース腔114中の圧を表示する。それとは別に、又はそれに加えてさらに、内視鏡シース100の材料は、吸引適合接続を維持するように選ぶことも可能と考えられる。
【0032】
内視鏡本体106に対する(更に、必要に応じて内視鏡ハンドル104の少なくともある部分に対する)内視鏡シース100のこの緊密な適合は、使用時、内視鏡と共に屈曲し、内視鏡に沿って回転する、内視鏡100のための滅菌カバーを提供してもよい。この緊密な接合はまた、内視鏡の屈曲領域における、搭載内視鏡シースの「固着」を回避する。さらに、ある実施態様では、内視鏡シース100の全て又は一部を透明とすることによって、ユーザーがカバー又はシースで被覆された内視鏡102を位置決めし、使用するのを支援するようにしてもよい。
【0033】
ここで図3〜5Bを参照すると、医用器具シースの他の実施態様が示される。図3〜5Bに示される実施態様のいくつかの特色は、図1〜2Bの実施態様を参照しながら上述したものと事実上近似する。これらの特色は、図3〜5Bでは、図1〜2Bで使用されるものと同じ参照番号によって表示される。
【0034】
図3を参照すると、別の実施態様において、内視鏡シース400が、内視鏡102の所定位置に置かれるところが示される。図1〜2Bの内視鏡シースと同様、この内視鏡シース400も、シース遠位端112とは長軸方向に分離されるシース近位端110を有する、シース本体108を含む。このシース本体108は、閉鎖されたシース遠位端112から、シース近位端110に配置されるスコープ口116に延びるシース腔114を定める。シース先端部120は、シース遠位端112に配置される。
【0035】
この内視鏡シース400はさらに、シース本体108に固定される長尺二次チューブ402を含む。この二次チューブ402は、二次チューブ遠位端406とは長軸方向に分離される二次チューブ近位端404を有する。二次チューブ402は、下部の開口412から、シース腔114に対して事実上平行に延びる二次腔410(図4A参照)を有する。二次チューブ402はさらに、二次チューブ近位端404に配置される二次チューブ接合部408を含み、これにより、ユーザーが、患者の体外から、二次腔410及び二次チューブ遠位端406にアクセスすることを可能とする。二次チューブ402は、一体的に形成されてもよいし、又は、複数の構成部品から構築されてもよく、適切なものであれば、いずれの材料、又は材料のいずれの組み合わせから製造されてもよい。例えば、二次チューブ402は、少なくとも部分的に、シース本体108と同じ材料から製造することが可能であり、この材料は、上述の通り、ポリテトラフルオロエチレン("PTFE")であってもよい。
【0036】
図4A及び4Bに示すように、いくつかの、二次支持部材414が、二次腔410の内部に配される。これらの支持部材414は、二次腔410に対し付加的支持を提供するが、これにより、腔410が、内視鏡シース100の他の部分、又は患者の体(図示せず)の隣接構造からの側方圧を受けた場合でも、開放状態を維持することができる。この二次支持部材414は、少なくとも半剛性である材料から製造され、長軸方向に延びる貫通孔を含み、二次腔410が側方圧の下で押圧閉鎖されることがないようにする。別の実施態様では、支持部材414の数は増やしても、減らしてもよく、場合によっては省略してもよいことが了解されよう。
【0037】
使用時、ユーザーは、二次チューブ402を通じてシース遠位端112に生理的食塩水又は別の流体を進めてもよい。このようにして、シース先端部120の末端部分224を灌いでもよい。さらに、陰圧源を、二次チューブ近位端404に結合し、内視鏡レンズ222を曇らせる危険性のあるデブリ(雑物)又は不要流体を吸引除去してもよい。さらに、追加の医用器具、例えば、メス、電気メス、ピンセット、バルーンカテーテル、又は、他の、任意の所望のタイプの器具、の患者の体内の手術部位へのアクセスを実現するために、二次チューブ402を用いることも可能と考えられる。
【0038】
別の実施態様では、二次チューブ402は、該二次チューブ402が、患者の体に対するアクセス/液的連通の実現を意図するのか、又は、シース腔114に対するアクセス/液的連通の実現を意図するのかに応じて、シース腔114内部に事実上納められてもよい。二次チューブ先端部(図示せず)は、図1〜2Bの実施態様の、前述のシース先端部120とシース遠位端112の配置と同様に、二次チューブ遠位端406に配置され、それと同軸的に延びることも可能と考えられる。二次チューブ先端部は、存在する場合、二次腔410と、シース本体108の末端部分224に隣接する区域との間の液的連通を実現することが可能と考えられる。さらに、二次チューブ先端部は、適切なものである限り、いずれの材料、又はそれらのいずれの組み合わせから製造されてもよく、適切であればいずれの方法で二次チューブ遠位端406に取り付けることも可能と考えられる。さらに、別の実施態様では、内視鏡シース400は、二次チューブ402と同様の、追加の複数のチューブを含んでもよいことが了解されよう。例えば、一実施態様では、内視鏡シース400は、医用器具が二次チューブ402に挿入されている間の吸引を実現するための、追加のチューブを含んでもよい。このようにすれば、内視鏡シース400は、吸引チューブと作業チューブの両方を含むと考えられる。
【0039】
図5A及び5Bを参照すると、別の実施態様において、内視鏡シース500が示される。図1〜4Bの内視鏡シースと同様、この内視鏡シース500も、シース遠位端112とは長軸方向に分離されるシース近位端(図示せず)を有する、シース本体108を含む。この内視鏡シース500は、シース遠位端112とは長軸方向に分離されるシース近位端(図示せず)を含む。内視鏡シース500は、シース遠位端112に配置されるシース先端部502、及び、シース本体108に固定される二次チューブ504を含む。
【0040】
このシース先端部502は、図1〜2Bのシース先端部と同様、シース本体108と同軸的に延び、シースの遠位端112においてシース本体108のシース腔(図示せず)を操作可能なように閉鎖する。シース先端部502はさらに、側方延長末端部分506を含み、この末端部分は、それを通じてエネルギー伝搬を可能とするように構成され、長軸方向に、内視鏡102の内視鏡レンズ222に隣接するように配置される。
【0041】
さらに、吸引ポート筐体508が、シース遠位端112に配置される。この筐体508は、シース先端部502の末端部506の周囲に円形パターンとして配置される、複数の開口510をその中に定める(図5Bを参照)。筐体508は、これら開口510のそれぞれを、二次チューブ504の遠位端514と液的に結合する通路(図示せず)を有する。別の実施態様では、筐体508は、さらに追加の開口を含んでもよく、、開口の配置は異なっていてもよい。さらに、より少数の開口が含まれてもよいことが了解されよう。
【0042】
筐体508は、一体的に形成されてもよいし、又は、複数の構成部品から構築されてもよく、適切なものであれば、いずれの材料、又は材料のいずれの組み合わせから製造されてもよい。例えば、筐体は、少なくとも部分的に、シース本体108と同じ材料から製造することが可能であり、この材料は、例えば、上述と同様にポリテトラフルオロエチレン("PTFE")であってもよい。それとは別に、筐体508は、シース先端部502と同じ材料、例えば、シリコンゴム、から製造されてもよい。
【0043】
二次チューブ502は、遠位端514から近位端(図示せず)に延びる。図3〜4Bの実施態様と同様、二次チューブ504の近位端に、陰圧源をさらに結合させてもよい。陰圧源が二次チューブ504に結合されると、内視鏡レンズ222を曇らせる危険性のあるデブリ又は不要流体は、二次チューブ504の長さに沿って進められる前に、開口510及び通路の中に吸引することが可能である。
【0044】
別の実施態様では、内視鏡シース500はさらに、二次チューブ502と同様の、追加の複数のチューブを含んでもよいことが了解されよう。ある実施態様では、開口510の必ずしも全ての開口が、二次チューブ502と液的に連通しなくともよい。例えば、一実施態様では、内視鏡シース500は、医用器具が二次チューブ502に挿入されている間の、開口510の一つを介する吸引を実現するための、追加のチューブを含んでもよい。このようにすると、内視鏡シース500は、吸引チューブと作業チューブの両方を有することが可能と考えられる。
【0045】
当業者であれば、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な追加の実施態様を想到することが可能であることが理解されよう。例えば、一つ以上のバルブ又はシール構造(図示せず)を設けることで、内視鏡102と、患者の体の間に事実上液密な障壁を維持しながら、手術器具又はその他の操作性デバイス/侵入性デバイスがシース先端部120を貫通して延びることを可能とすることや、内視鏡チャンネル220を通じて挿入した器具と、患者の体との間の機械的相互作用を可能とすることもできよう。シース腔内部において内視鏡レンズ222を灌ぐするために、生理的食塩水を、内視鏡チャンネル220を通じて末端部分224の内側近傍に供給し、使用済み生理的食塩水をシース腔から排出接合部226を通じて排除するようにすることも可能であろう。排出接合部226は、それがシース本体108を貫通する地点、及び/又は、その近傍において流体を排除することもできようし、流体を排出接合部に搬送してシース腔から排除するために、適切な任意のタイプ(穴開きであってもよい)の排出チューブ(図示せず)を、シース腔内部において任意の方向に任意の長さだけ設けることも可能であろう。
【0046】
さらに、上述の内視鏡シースと同様の医用器具シースは、内視鏡以外の医用器具と共に使用してもよいことが了解されよう。例えば、本医用器具シースの別実施態様は、経食道心エコー用のトランスジューサや気管支鏡と共に使用してもよい。同様に、本医用器具シースの別実施態様は、ファイバースコープ、又はその他の剛性のある気道用医用器具と共に使用してもよい。シース腔の中に設置される医用器具は、エネルギー伝達の供給源及び/又は受信機であってもよい。
【0047】
本開示については、本明細書に記載される方法、装置、及びシステムの、様々な特色から生じる複数の利点がある。本開示の方法、装置、及びシステムにおける別様実施態様は、記載の特色の必ずしも全てを含まないかも知れないが、それでもなお、これらの特色の少なくともいくつかから利益を得るであろうことに注意しなければならない。当業者であれば、本発明の特色のうちの一つ以上を取り込みながら、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲の中に納まる、方法、装置、及びシステムの、彼らなりの実施例を簡単に工夫することが可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較的非弾性のシース本体であって、シース遠位端とは長軸方向に分離されるシース近位端を有し、且つ、シース腔を定める、比較的非弾性のシース本体、
該シース腔と液的連通状態において該シース近位端に配置され、該シース腔内への長尺内視鏡本体の進入を許容するように構成される、スコープ口、
該シース遠位端に配置されるシース先端部であって、その少なくとも一部は、それを介するエネルギーの伝搬を許容するように構成され、該長尺内視鏡本体が該シース腔内に配置される際には長軸方向に内視鏡レンズに隣接するように配置される、シース先端部、
該シース腔と液的に連通し、該シース腔から流体を選択的に排除するように構成される排出接合部、及び、
長尺二次チューブであって、二次チューブ遠位端とは長軸方向に分離される二次チューブ近位端を有し、且つ、二次腔を定め、ここに、該二次腔の少なくとも一部は該シース腔と事実上平行に延びる、二次チューブ
を含む、内視鏡シース。
【請求項2】
前記排出接合部が、パイロットバルーンと結合したバルブを含むことを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡シース。
【請求項3】
前記シース本体が第1材料から形成され、前記シース先端部が第2材料から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡シース。
【請求項4】
前記第1材料がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする、請求項3に記載の内視鏡シース。
【請求項5】
前記第2材料がシリコンゴムであることを特徴とする、請求項4に記載の内視鏡シース。
【請求項6】
前記長尺二次チューブが第1材料から形成されることを特徴とする、請求項3に記載の内視鏡シース。
【請求項7】
前記長尺二次チューブが、前記比較的非弾性なシース本体に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡シース。
【請求項8】
前記二次チューブ遠位端が前記シース遠位端に隣接して配され、且つ、前記二次腔と液的に連通する開口を有することを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡シース。
【請求項9】
前記二次チューブが、第2医用器具を受容する大きさを有することを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡シース。
【請求項10】
前記シース近位端にハンドル接合部が配され、該ハンドル接合部が、長尺内視鏡本体と前記内視鏡シースの間に液密シールを創出するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡シース。
【請求項11】
長尺の第3チューブであって、第3チューブ遠位端とは長軸方向に分離される第3チューブ近位端を有し、且つ、第3腔を定める長尺第3チューブをさらに含み、該第3腔の少なくとも一部が、前記シース腔と事実上平行に延びることを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡シース。
【請求項12】
内視鏡シースを使用する方法であって:
該内視鏡シースの長尺管状本体の腔の中に、内視鏡本体を挿入すること、
該内視鏡本体と該長尺管状本体との間に液密シールを創出すること、及び、
該内視鏡本体と該長尺管状本体の間から流体を排除して、該長尺管状本体を該内視鏡本体に接触させること、を含む方法。
【請求項13】
前記内視鏡シースの前記長尺管状本体が比較的非弾性的であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記内視鏡本体と前記長尺管状本体の間からの流体の排除が、該長尺管状本体の腔内部に陰圧を創出することを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記長尺管状本体の腔中への前記内視鏡本体の挿入が、該内視鏡本体の遠位端を、該長尺管状本体の遠位端に接触させることを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記内視鏡本体及び前記長尺管状本体のうちの一方に潤滑剤を塗布することをさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
比較的非弾性な本体であって、遠位端とは長軸方向に分離される近位端を有し、且つ、第1腔を定める、比較的非弾性な本体、
該腔と液的に連通するように該近位端に配置され、該第1腔への医用器具本体の進入を許容するように構成される、開口、
該遠位端に配置されるシース先端部であって、その中をエネルギーが伝搬することを可能とするように構成され、該医用器具本体が第1腔内に配置される際には長軸方向に医用器具末端に隣接するように配置される、シース先端部、及び、
二次腔を定める長尺二次チューブ
を含み、
該比較的非弾性な本体の遠位端において、複数の開口が定められ、該開口の少なくとも一つが、該長尺二次チューブの二次腔と液的に連通する、
医用器具シース。
【請求項18】
前記第1腔と液的に連通し、該第1腔から流体を選択的に排除するように構成される、排出接合部をさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の医用器具シース。
【請求項19】
前記排出接合部が、前記第1腔と液的連通状態にあって、パイロットバルーンと結合したバルブを含むことを特徴とする、請求項18に記載の医用器具シース。
【請求項20】
前記複数の開口が、円形パターンとして配置されることを特徴とする、請求項17に記載の医用器具シース。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2012−523855(P2012−523855A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502230(P2012−502230)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/028614
【国際公開番号】WO2010/111461
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511230819)ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション (1)
【氏名又は名称原語表記】THE CLEVELAND CLINIC FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】10265 Carnegie Avenue,Cleveland,OH 44106(US).
【Fターム(参考)】