説明

医用画像データの削除処理方法、医用画像診断装置

【課題】 過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータが共通して記憶される外部記憶部より過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータを読み出して比較読影をすることが可能な医用画像データの削除処理方法及び医用画像診断装置を提供する。
【解決手段】 過去に撮像された被検体の第1の医用画像データを記憶する記憶部123と、前記第1の医用画像データの撮像時よりも新しい撮像時の被検体の医用画像データを第2の医用画像データとして撮像する医用画像診断装置であって、前記第2の医用画像データの撮像時より所定期間の読影に用いる前記第1の医用画像データを第3の医用画像データとして選択する入力部121と、前記第3の医用画像データに選択されない前記第1の医用画像データを第4の医用画像データとし、当該第4の医用画像データを前記記憶部から削除するシステム制御部124と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置を含む医用画像診断装置により収集された医用画像データがあって、例えば今日読影するために外部記憶装置内に存在する前記医用画像データのうちの読影するために必要な医用画像データ以外のデータを削除する医用画像データの削除処理方法、医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断装置で収集された医用画像データは、医用画像診断装置に設けられるハードディスクなどの外部記憶装置に保管される。
【0003】
また、X線CT装置やMRI装置は、被検体一人の当りの多量の断層像等の収集が可能になり、超音波画像診断装置でも心臓の高速フレームレートの撮像や弾性画像イメージングなど多量の画像データ収集が可能になり、医用画像診断装置では多量の画像データが収集されている。
【0004】
このため、医用画像診断装の多量の画像データの収集に併せて外部記憶装置の容量を増大するなどシステム設計をする必要があるが、外部記憶装置の容量の増大には設置スペースなどの運用面、コスト面で実用上の限界がある。
【0005】
そこで、医用画像診断装置で今日の医用画像データが収集され、今日の医用画像データを記憶すれば外部記憶装置の記憶容量を超過する可能性がある場合、現時点から一定期間、例えば今日1日の間、外部記憶装置に存在する医用画像データのうちの診断に使用する医用画像データ以外の医用画像データを削除する必要がある。
【0006】
医用画像データの削除方法の一例は、記憶部に記憶される医用画像データの削除で実現され、特許文献1に記載されている
特許文献1には、生成された被検体の関心部位の画像データを記憶部に保存し、保存された画像データのうちユーザが指定した画像のデータを削除候補データとし、設定日時が到来したときその削除候補データを削除する自動削除処理をデータ管理部で実行するようにした医用画像診断装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-5039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、専ら画像データの削除のみが開示され、共通の外部記憶部中に記憶される過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータの比較読影について配慮されていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータが共通して記憶される外部記憶部より過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータを読み出して比較読影をすることが可能な医用画像データの削除処理方法及び医用画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、過去に撮像された第1の医用画像データを記憶部に記憶し、前記第1の医用画像データの撮像時よりも新しい撮像時の第2の医用画像データを撮像し、前記第2の医用画像データの撮像時より所定期間の読影に用いる前記第1の医用画像データを選択し、選択されない前記第1の医用画像データを前記記憶部から削除する。
【0011】
具体的に、本発明の医用画像データの削除処理方法は、過去に撮像された被検体の第1の医用画像データを記憶部に記憶するステップと、前記第1の医用画像データの撮像時よりも新しい撮像時の被検体の医用画像データを第2の医用画像データとして撮像するステップと、前記第2の医用画像データの撮像時より所定期間の読影に用いる前記第1の医用画像データを第3の医用画像データとして選択するステップと、前記第3の医用画像データに選択されない前記第1の医用画像データを第4の医用画像データとし、当該第4の医用画像データを前記記憶部から削除するステップと、を含む。
【0012】
また、本発明の医用画像診断装置は、過去に撮像された被検体の第1の医用画像データを記憶する記憶部と、前記第1の医用画像データの撮像時よりも新しい撮像時の被検体の医用画像データを第2の医用画像データとして撮像する医用画像診断装置であって、前記第2の医用画像データの撮像時より所定期間の読影に用いる前記第1の医用画像データを第3の医用画像データとして選択する医用画像データ選択部と、前記第3の医用画像データに選択されない前記第1の医用画像データを第4の医用画像データとし、当該第4の医用画像データを前記記憶部から削除する医用画像データ削除部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によれば、過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータが共通して記憶される外部記憶部より過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータを読み出して比較読影をすることが可能な医用画像データの削除処理方法及び医用画像診断装置を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を採用する医用画像診断装置の構成例を示すブロック図
【図2】実施例1の医用画像データの削除処理方法の手順例を示すフローチャート
【図3】図2のR波での心臓の画像を得た場合に優先順位を付す例を説明する図
【図4】実施例2の医用画像データの削除処理方法の手順例を示すフローチャート
【図5】図4の冠動脈の血管の走行に沿った長さを基に優先順位を付す例を説明する図
【図6】実施例3の医用画像データの削除処理方法の手順例を示すフローチャート
【図7】図6の左心室の長径の長さを基に優先順位を付す例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像診断装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0016】
図1は本発明を採用する医用画像診断装置の構成例を示すブロック図である。ここでは、医用画像診断装置の例をX線CT装置1とする。
【0017】
X線CT装置1はスキャンガントリ部100と操作卓120とを備える。
【0018】
スキャンガントリ部100は、X線管101と、回転円盤102と、コリメータ103と、X線検出器106と、データ収集装置107と、寝台105と、ガントリ制御装置108と、寝台制御装置109と、X線制御装置110と、を備えている。X線管101は寝台105上に載置された被検体にX線を照射する装置である。コリメータ103はX線管101から照射されるX線の放射範囲を制限する装置である。回転円盤102は、寝台105上に載置された被検体が入る開口部104を備えるとともに、X線管101とX線検出器106を搭載し、被検体の周囲を回転するものである。
【0019】
X線検出器106は、X線管101と対向配置され被検体を透過したX線量を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置であり、多数のX線検出素子を回転円盤102の回転方向に配列したもの、若しくは回転円盤102の回転方向と回転軸方向との2次元に配列したものである。データ収集装置107は、X線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御装置108は回転円盤102の回転を制御する装置である。寝台制御装置109は、寝台105の上下前後動を制御する装置である。X線制御装置110はX線管101に入力される電力を制御する装置である。
【0020】
操作卓120は、入力装置121と、画像演算装置122と、表示装置125と、記憶装置123と、システム制御装置124とを備えている。入力装置121は、被検体氏名、検査日時、撮影条件などを入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイスである。画像演算装置122は、データ収集装置107から送出される計測データを演算処理してCT画像再構成を行う装置である。
【0021】
表示装置125は、画像演算装置122で作成されたCT画像を表示する装置であり、具体的にはCRT(Cathode-Ray Tube)や液晶ディスプレイ等である。記憶装置123は、データ収集装置107で収集したデータ及び画像演算装置122で作成されたCT画像の画像データを記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。
【0022】
システム制御装置124は、これらの装置及びガントリ制御装置108と寝台制御装置109とX線制御装置110を制御する装置である。
【0023】
入力装置121から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づきX線制御装置110がX線管101に入力される電力を制御することにより、X線管101は撮影条件に応じたX線を被検体に照射する。X線検出器106は、X線管101から照射され被検体を透過したX線を多数のX線検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤102はガントリ制御装置108により制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特に回転速度などに基づいて回転する。寝台105は寝台制御装置109によって制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特にらせんピッチなどに基づいて動作する。
【0024】
X線管101からのX線照射とX線検出器106による透過X線分布の計測が回転円盤102の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得される。取得された様々な角度からの投影データは画像演算装置122に送信される。画像演算装置122は送信された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成して得られたCT画像は表示装置125に表示される。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1では、被検体の心臓の心位相を用いた医用画像データの削除、保存を実施する例について図2、図3を用いて説明する。
【0026】
図2は実施例1の医用画像データの削除処理方法の手順例を示すフローチャートであり、図3は図2の心位相の選択の例を説明する図である。
【0027】
まず、記憶部123には、過去に得たX線CT画像が記憶されていることが前提となる。
過去に得たX線CT画像は、以下に説明する識別コードが付されているものとする。
【0028】
ステップ.201:各心位相の画像生成
次に、撮像時より所定期間、例えば今日得たX線CT画像の撮影は、本ステップで説明する。
【0029】
被検体の心臓は拍動しているため、X線CT画像を撮影する際に、拍動によるモーションアーチファクトを意識して撮影を実施する必要がある。そこで、被検体に心電計を取り付けて心電波形を取得しながら被検体の透過X線の空間的な分布を計測する。CT画像再構成は、心電波形のあるR波から次のR波間の心位相を指定区間として予め指定し、指定区間で計測された被検体の透過X線の空間的な分布を用いて演算する。実施例1では心電波形のあるR波を基準とし、そのR波から次のR波までの経過時間を100%として、次のR波までの経過時間前の35%と70%の心電波形の位相で演算されるX線CT画像を例示する。
【0030】
心位相は虚血性心疾患など疾病の診断上有効な心位相を最適心位相として設定することが必要だが、一回の心位相では被検体の心臓の拍動には個体差の影響があることから、複数回の心位相にてそれぞれ画像再構成し、それぞれのX線CT画像を得る。それぞれ得られたX線CT画像は表示部125に順次表示され、操作者は表示部125に順次表示されたX線CT画像を観察する。
【0031】
ステップ.202:最適心位相の設定
操作者は、順次表示された複数回の心位相で得たX線CT画像を観察して、どの心位相で得たX線CT画像が虚血性心疾患などを診断するための最適な心位相(最適心位相)のX線CT画像かを選択して、入力部121に最適心位相を入力する。
【0032】
システム制御部124は、入力部121の最適心位相の入力を受けて、選択された最適心位相のX線CT画像を記憶部123に記憶する。
【0033】
ステップ.203:削除候補の優先順位の設定
システム制御部124は、入力部121の最適心位相の入力を受けて、選択された最適心位相のX線CT画像を除くX線CT画像に削除候補の優先順位を示す識別コード“0000”を設定する。
【0034】
ここでは、最適心位相のX線CT画像以外の全てのX線CT画像を識別コード“0000”を設定することで説明したが、今日、X線CT画像を比較読影する被検者が複数人存在する場合は、上記最適心位相を設定する被検者の最適心位相のX線CT画像以外の全てのX線CT画像のみを識別コード“0000”を設定することとしてもよい。
【0035】
また、比較読影も特定の被検者1人の過去のX線CT画像と今日のX線CT画像を比較する例を説明しているが、複数の被検者で症例が類似するX線CT画像と今日のX線CT画像を比較してもよい。この場合、症例が類似するX線CT画像には、 “FFFF”等の大きな数値の識別コードを設定することとしてもよい。
【0036】
ここで、識別コードの4桁の16進数の数が最も小さい値“0000”は最も削除してよい画像データであることを示す削除コードを意味する。その他の識別コードは“0001”、・・・、“FFFF”で表されるが、識別コードが示す4桁の16進数の数が大きいほど保存すべき画像データであることを示す保存コードを意味する。また、識別コードの“0001”は参照用で参照などの用途が終了すれば、識別コードを“0000”に変更してもよいものを示している。
【0037】
また、識別コードについて削除の優先順位は、例えばハードディスクが記憶可能な全領域のうちの95%の規定容量となったら、ハードディスクの記憶日時の旧く、識別コードが“0000”であるX線CT画像を削除していく。規定容量や記憶日時、識別コードは操作者が任意に設定できるようにしてもよい。
【0038】
具体的な例は、図3を用いて説明する。ここでは、図3の上段に心電図が示され、心電図に重畳している点線部分、即ち、心電図のR波を基準としてX線CT画像を得ている。
【0039】
また、R1のタイミングより時相が35%ずれたタイミングを心電図に重畳している破線部分、R1のタイミングより時相が70%ずれたタイミングを心電図に重畳している実線部分としてそれぞれ図中に示している。
【0040】
得られたX線CT画像は、図面の中段に示すように、心電波形の第1番目のR波をR1と、それ以降の第2番目のR波をR2と、第3番目のR波をR3とそれぞれ称している。R1のタイミングで得られたX線CT画像の画像ファイル番号(No.)は“R10001”、R2のタイミングで得られたX線CT画像は“R20001”及びR3のタイミングで得られたX線CT画像は“R30001”とする。
【0041】
また、同様に、R1のタイミングより時相が35%ずれたタイミングで得られたX線CT画像の画像ファイル番号(No.)は“R10002”、R2のタイミングより時相が35%ずれたタイミングで得られたX線CT画像は“R20002”及びR3のタイミングより時相が35%ずれたタイミングで得られたX線CT画像は“R30002” とする。
【0042】
さらに、同様に、R1のタイミングより時相が70%ずれたタイミングで得られたX線CT画像の画像ファイル番号(No.)は“R10003”、R2のタイミングより時相が70%ずれたタイミングで得られたX線CT画像は“R20003”及びR3のタイミングより時相が70%ずれたタイミングで得られたX線CT画像は“R300032” とする。
【0043】
また、図3の下段には、画像ファイルNo.と識別コードとを関連付けて記憶する参照テーブルが示されている。画像ファイルNo.は、図3の中段に示すX線CT画像を示し、識別コードは16ビットの符号で示す。
【0044】
ステップ.204:最適心位相画像表示
システム制御部124は、選択された最適心位相のX線CT画像を記憶部123から読出し、表示部125に表示する。
【0045】
操作者は、最適心位相のX線CT画像を読影する。
【0046】
ステップ.205:保存候補の優先順位の設定
システム制御部124は、識別コードと関連づけて記憶部123に最適心位相のX線CT画像を記憶する。システム制御部124は、この記憶部123への記憶に際して最適心位相のX線CT画像に保存候補の優先順位を示す識別コード“FFFF”を設定する。
【0047】
ステップ.206:削除終了条件充足の判定
システム制御部124は、今日あるいは最新の撮影したX線CT画像を記憶部123に書き込むことによって、記憶部123の最大記憶容量の95%の規定容量を超えるか否かを判定する。
【0048】
判定の結果、記憶部123の規定容量を超えていればステップ207へ移行する。また、記憶部123の規定容量を超えていなければこの場合はステップ201に移行する。
【0049】
ステップ.207:優先順位に基づく削除処理
システム制御部124は、識別コードと記憶日時に基づいて過去のX線CT画像の削除処理を行う。
【0050】
削除処理とは、記憶部123中の存在する過去の画像データのうち識別コードが“0000”のX線CT画像を削除し、“0000”でない他の識別コードの過去のX線CT画像を保存したままとする。
【0051】
つまり、削除される識別コードが“0000”のX線CT画像は、比較読影に用いられないことになる。
【0052】
なお、削除前に可搬型の磁気ディスクやUSBメモリに識別コードが“0000”のX線CT画像をバックアップとして記憶させておいてもよい。また、X線CT画像のバックアップ等の別の方法は、X線CT装置1にネットワーク接続されるサーバに識別コードが“0000”の画像ファイルを記憶させておいてもよい。
【0053】
X線CT画像のバックアップは操作者の操作で誤って削除してしまった場合に復元することを目的としている。
【0054】
また、記憶部123の最大記憶容量の所定割合を超えていない場合の処理として図示しないが、操作者がX線CT画像の取得の終了を入力部121に入力したときは、システム制御部124は、入力部121からのX線CT画像の取得の終了の入力を受けて、X線CT画像の取得処理を終了する。
【0055】
操作者は、X線CT画像の取得処理の後、記憶部123に記憶されている過去のX線CT画像と今日撮像したX線CT画像を並べて表示する比較読影の操作に移行する。
【0056】
比較読影の操作は、例えば、特開2011-41585号公報に開示されている公知の表示技術であるため、比較読影の操作の詳細な説明は省略する。
【0057】
以上説明した実施例1によれば、過去に撮像された被検体の第1の医用画像データ(図2のフローチャートの前提部分の過去に得たX線CT画像データ)を記憶する記憶部123と、前記第1の医用画像データの撮像時よりも新しい撮像時の被検体の医用画像データを第2の医用画像データ(ステップ201:各心位相の画像生成)として撮像する医用画像診断装置であって、前記第2の医用画像データの撮像時よりも所定期間の読影に用いる前記第1の医用画像データを第3の医用画像データ(ステップ202:最適心位相の設定)として選択する入力部121と、前記第3の医用画像データに選択されない前記第1の医用画像データを第4の医用画像データ(優先順位に基づく削除処理)とし、当該第4の医用画像データを前記記憶部から削除するシステム制御部124と、を備えるため、過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータが共通して記憶される外部記憶部より過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータを読み出して比較読影をすることができる。
【0058】
また、実施例1の特有の効果は、X線CT装置において、心電波形、スキャナの回転というX線CT画像を得るための透過X線の空間的な分布の計測に対して同期する要素が2つある。少なくとも一方の要素の同期から外れた画像データは、心臓の三次元画像の再構成に使用されない不使用画像データとなる。このような不使用画像データはハードディスクに長期間保管する必要はない。よって、削除終了条件を満たすまで優先順位に基づきX線CT画像を削除することで、診断上有効でないX線CT画像から優先的に削除され、比較読影される可能性のあるX線CT画像をより長く保存しておくことができる。
【実施例2】
【0059】
本発明の実施例2では、X線CT画像の冠動脈の血管の走行に沿った基準長さL1に基づき医用画像データの削除、保存を実施する例について図4、図5を用いて説明する。
【0060】
図4は実施例2の医用画像データの削除処理方法の手順例を示すフローチャートであり、図5は図4の冠動脈の血管の走行に沿った長さL1を基に優先順位を付す例を説明する図である。
【0061】
なお、実施例1の共通部分の説明を省略し、実施例1との相違部分のみを説明することとする。
【0062】
実施例2の前提は、実施例1の前提と同じであるので説明を省略する。
【0063】
実施例1のステップ201、205〜207は、実施例2において同じであるので説明を省略する。
【0064】
ステップ.402:最適心位相の設定
操作者は、順次表示された複数回の心位相で得たX線CT画像を観察して、X線CT画像の冠動脈の検出基準サイズを入力部121に入力する。冠動脈の検出基準サイズは冠動脈の長さL1を例に説明するが、長さ以外を対象とするのであれば、冠動脈の体積、断面の面積であってもよい。体積、断面の面積は公知の区分求積法などで算出が可能である。また、冠動脈の血管の走行方向に沿った長さの計測には、造影剤を用いて血管部分を高輝度になるように染色させ冠動脈の血管の走行方向に沿った長さを同定してもよい。
【0065】
システム制御部124は、冠動脈の血管の走行方向に沿った基準長さL1の長さの入力を受けて、冠動脈の血管の走行方向に沿った基準長さL1以上の冠動脈が抽出されたX線CT画像を記憶部123に記憶する。
【0066】
ステップ.403:削除候補の優先順位の設定
システム制御部124は、入力部121の冠動脈の血管の走行方向に沿った基準長さL1以上の冠動脈が抽出されたX線CT画像の入力を受けて、冠動脈の血管の走行方向に沿った基準長さL1未満の冠動脈が抽出されたX線CT画像に削除候補の優先順位を示す識別コード“0000”を設定する。識別コード“0000”の設定基準は実施例1と同じであるから説明を省略する。
【0067】
ステップ.404:画像表示
システム制御部124は、冠動脈の基準長さのX線CT画像を記憶部123から読出し、表示部125に表示する。
【0068】
操作者は、図5に示すように、冠動脈の血管の走行方向に沿った基準長さL1の冠動脈が抽出されたX線CT画像を読影する。
【0069】
また、実施例2の後工程となる比較読影は、実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0070】
以上説明した実施例2によれば、過去に撮像された被検体の第1の医用画像データを記憶する記憶部123と、前記第1の医用画像データの撮像時よりも新しい撮像時の被検体の医用画像データを第2の医用画像データとして撮像する医用画像診断装置であって、前記第2の医用画像データの撮像時より所定期間の読影に用いる前記第1の医用画像データを第3の医用画像データとして選択する入力部121と、前記第3の医用画像データに選択されない前記第1の医用画像データを第4の医用画像データとし、当該第4の医用画像データを前記記憶部から削除するシステム制御部124と、を備えるため、過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータが共通して記憶される外部記憶部より過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータを読み出して比較読影をすることができる。
【0071】
また、実施例2の特有の効果は、削除処理する対象を冠動脈抽出後とすることで、診断上有効でないX線CT画像が削除処理の対象として分類できる。
【実施例3】
【0072】
本発明の実施例3では、X線CT画像の左心室の長径の長さL2に基づき医用画像データの削除、保存を実施する例について図6、図7を用いて説明する。
【0073】
図6は実施例3の医用画像データの削除処理方法の手順例を示すフローチャートであり、図7は図6の左心室の長径の長さを基に優先順位を付す例を説明する図である。
【0074】
なお、一般に心電波形のR波は心臓の収縮を示す波形であるから、図7の上段の心電波形の矢印で示すように、R波の前のタイミングで左心室の拡張期が終わる。左心室の拡張期の終りはR1 ずれ-α、R1 35%ずれ-α、R1 70%ずれ-αとそれぞれ表される。
【0075】
つまり、実施例3と実施例1、2の違いは、実施例1、2ではR波を基準に測定する例を示していたが、実施例3では心臓の拡張期から収縮期へ切り換わるタイミングで測定される。
【0076】
また、実施例1の共通部分の説明を省略し、実施例1との相違部分のみを説明することとする。
【0077】
実施例3の前提は、実施例1の前提と同じであるので説明を省略する。
【0078】
実施例1のステップ.201、205〜207は、実施例3において同じであるので説明を省略する。
【0079】
ステップ.602:左心室の長径の長さの設定
操作者は、順次表示された複数回の心位相で得たX線CT画像を観察して、X線CT画像の左心室の長径の基準長さL2を入力部121に入力する。ここでは、左心室の長径の基準長さL2を例に挙げたが、基準長さ以外を対象にするならば左心室の体積、断面の面積であってもよい。体積、断面の面積は公知の区分求積法などで算出が可能である。
【0080】
システム制御部124は、入力部121の左心室の長径の基準長さL2以上の抽出された左心室の長径のX線CT画像の入力を受けて、左心室の長径の基準長さL2以上に抽出された左心室の長径のX線CT画像を記憶部123に記憶する。
【0081】
ステップ.603:削除候補の優先順位の設定
システム制御部124は、入力部121の左心室の長径の基準長さL2以上に抽出された左心室の長径のX線CT画像の入力を受けて、左心室の長径の基準長さL2未満に抽出された左心室の長径のX線CT画像に削除候補の優先順位を示す識別コード“0000”を設定する。識別コード“0000”の設定基準は実施例1と同じであるから説明を省略する。
【0082】
ステップ.604:画像表示
システム制御部124は、左心室の長径の基準長さL2以上に抽出された左心室の長径のX線CT画像を記憶部123から読出し、表示部125に表示する。
【0083】
操作者は、図7に示されるように、左心室の長径のX線CT画像を読影する。
【0084】
また、実施例3の後工程となる比較読影は、実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0085】
以上説明した実施例3によれば、過去に撮像された被検体の第1の医用画像データを記憶する記憶部123と、前記第1の医用画像データの撮像時よりも新しい撮像時の被検体の医用画像データを第2の医用画像データとして撮像する医用画像診断装置であって、前記第2の医用画像データの撮像時より所定期間の読影に用いる前記第1の医用画像データを第3の医用画像データとして選択する入力部121と、前記第3の医用画像データに選択されない前記第1の医用画像データを第4の医用画像データとし、当該第4の医用画像データを前記記憶部から削除するシステム制御部124と、を備えるため、過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータが共通して記憶される外部記憶部より過去に撮像した画像のデータと最新の画像のデータを読み出して比較読影をすることができる。
【0086】
また、実施例3の特有の効果は、心臓の拡張期と収縮期の候補画像のみを残し、その他の画像は自動で削除することが可能となるため、ユーザの負荷を軽減できる。
【0087】
(その他の変形例など)
以上、医用画像診断装置はX線CT装置を例に説明したが、医用画像診断装置はMRI装置、超音波画像診断装置など、被検体の医用画像を取得できる医用画像診断装置であれば本発明では全てが含まれる。
【0088】
また、上記実施例では識別コードを用いて説明することとしたが、簡易的には識別コードを過去の画像データに付さない方法もある。例えば、過去の画像データ(第1の画像データ)のうちの最新の画像データ(第2の画像データ)と比較読影する画像データ(第3の画像データ)でない画像データ(第4の画像データ)を削除することとしてもよい。
【0089】
また、上記実施例では、削除コードと保存コードを1種類の識別コードで説明することとしたが、削除コードSや保存コードHのように2種類の識別コードで表してもよい。
【0090】
また、上記各実施例では、画像ファイルの削除と保存の基準値での判定は「以上」とそれ以外で行ったが、削除と保存を判定するにあたり2つの判定基準であればよく、各実施例での説明に限定されない。
【0091】
また、X線CT画像に付される識別コードのX線CT画像の画像ファイルの記憶される位置は、画像ファイルがDICOM仕様に準拠されたX線CT画像の属性を示す、患者ID、撮影日等のファイルヘッダー情報のユーザ定義可能な部分任意の2バイトに付される。また、上記2バイトは、ファイルヘッダー情報を例に挙げているが、画像ファイルのX線CT画像が記憶されている部分を除く部分であれば、ファイルヘッダーからエンドオブファイルのコードの前の何れであってもよい。
【0092】
また、識別コードの種類は、“0000”が最も削除してよいX線CT画像を、“FFFF”が最も保存しておく(換言すれば「削除してはならない」)X線CT画像をそれぞれ示すものとする。“0001”から“FFFE”までの識別コードはユーザが任意に設定できる。
【0093】
また、今日の比較読影が終了すれば、翌診療日の比較読影で用いないX線CT画像が存在することが、公知の放射線情報システム(RIS)や病院情報システム(HIS)で計画されていれば、翌診療日の比較読影で用いないX線CT画像の識別コードを、例えば“0001”から“0000”へ変更することも可能である。
【0094】
識別コードの変更の具体的方法は、X線CT装置と院内ローカルエリアネットワーク(LAN)接続されるRISやHISがあって、院内LANを通してRISやHISに登録されている翌診療日の比較読影の被検者の患者ID情報をRISやHISからX線CT装置へデータ転送する(図示省略)。
【0095】
X線CT装置のシステム制御部は、データ転送された翌診療日の比較読影の被検者の患者ID情報と記憶部に記憶されるX線CT画像の患者ID情報を照合する。システム制御部は、照合した結果、翌診療日の比較読影の被検者の患者ID情報と記憶部に記憶されるX線CT画像の患者ID情報が一致する場合、記憶部に記憶されるX線CT画像の識別コードを“0001”に変更する。他方、翌診療日の比較読影の被検者の患者ID情報と記憶部に記憶されるX線CT画像の患者ID情報が一致しない場合、記憶部に記憶されるX線CT画像の識別コードを“0000”に変更する。
【0096】
これによって、RISやHISに登録されている翌診療日の比較読影の計画の有無によってX線CT画像の削除/保存処理のための識別コードを設定することが可能である。これにより、読影医は、RISやHISに登録されている翌診療日の比較読影の計画の有無を意識することなく、比較読影を効率的に行うことができる。
【0097】
また、比較読影に対して識別コードに応じて読み出し優先を行うことも可能である。
【0098】
例えば、本日の比較読影に複数の被検者が存在する場合、被検者毎に順番に比較読影を実施することになる。たとえば、比較読影を行う被検者がA〜Eの5人存在し、A〜Eの被検者をアルファベット順に比較読影する場合、AのX線CT画像の識別コードを“0002”、B〜Eを同様にX線CT画像の識別コードを“0003”〜“0006”とする。
【0099】
そして、被検者のX線CT画像の比較読影をAからEまでアルファベット順で行うとき、識別コードの低い順に被検者のX線CT画像の比較読影を行っていき、それぞれの比較読影が終了したらX線CT画像の識別コード“0002”から“0006”を、全て“0001”に変更する。
【0100】
また、X線CT画像の識別コードの低い順に被検者のX線CT画像の比較読影を行う例は、不要となったX線CT画像を早期に削除処理することによって記憶部の記憶量を少なくして記憶部の中から所望のX線CT画像を早期に読み出すことを重視した処理法である。
【0101】
また、X線CT画像の識別コードの高い順に被検者のX線CT画像の比較読影を行うこととしてもよい。X線CT画像の識別コードの高い順に被検者のX線CT画像の比較読影を行う場合は、X線CT画像の識別コードを重篤あるいは緊急性の高い順に設定して、比較読影を被検者の救命のために優先することとしてもよい。
【0102】
これによって、比較読影に対して識別コードに応じて読み出し優先を行うことで、X線CT装置の記憶部中の所望のX線CT画像を早期に読み出すこと、比較読影を被検者の救命のために優先することが可能となる。
【0103】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0104】
1 X線CT装置、100 スキャンガントリ部、101 X線管、102 回転円盤、103 コリメータ、104 開口部、105 寝台、106 X線検出器、107 データ収集装置、108 ガントリ制御装置、109 寝台制御装置、110 X線制御装置、120 操作卓、121 入力装置、122 画像演算装置、123 記憶装置、124 システム制御装置、125 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去に撮像された被検体の第1の医用画像データを記憶部に記憶するステップと、
前記第1の医用画像データの撮像時よりも新しい撮像時の被検体の医用画像データを第2の医用画像データとして撮像するステップと、
前記第2の医用画像データの撮像時より所定期間の読影に用いる前記第1の医用画像データを第3の医用画像データとして選択するステップと、
前記第3の医用画像データに選択されない前記第1の医用画像データを第4の医用画像データとし、当該第4の医用画像データを前記記憶部から削除するステップと、
を含むことを特徴とする医用画像データの削除処理方法。
【請求項2】
前記第4の医用画像データの削除を許容することを示す削除コードを付するステップを備え、
前記削除するステップは、前記削除コードが付された前記第4の医用画像データを前記記憶部から削除する請求項1に記載の医用画像データの削除処理方法。
【請求項3】
前記削除コードを付するステップは、前記医用画像は前記被検体の心臓を撮像対象とするものであって、前記被検体の心電波形を前記撮像と同時に取得し、前記心電波形のうちの設定されない心電波形で得られた医用画像データに対して前記削除コードを付する請求項2に記載の医用画像データの削除処理方法。
【請求項4】
前記削除コードを付するステップは、冠動脈の長さ、容積及び断面の面積を基準値として、その基準値に基づき前記削除コードを付する請求項3に記載の医用画像データの削除処理方法。
【請求項5】
前記削除コードを付するステップは、左心室の長径の長さ、容積及び断面の面積を基準値として、その基準値に基づき前記削除コードを付する請求項3に記載の医用画像データの削除処理方法。
【請求項6】
前記選択するステップによって選択された前記第3の医用画像データに当該第3の医用画像データの誤削除を防止する保存コードを付するステップをさらに含む請求項1に記載の医用画像データの削除処理方法。
【請求項7】
前記保存コードを付するステップは、前記医用画像は前記被検体の心臓を撮像対象とするものであって、前記被検体の心電波形を前記撮像と同時に取得し、前記心電波形のうちの設定される心電波形で得られた医用画像データに対して前記保存コードを付する請求項6に記載の医用画像データの削除処理方法。
【請求項8】
前記保存コードを付するステップは、冠動脈の長さ、容積及び断面の面積を基準値として、その基準値に基づき前記保存コードを付する請求項7に記載の医用画像データの削除処理方法。
【請求項9】
前記保存コードを付するステップは、左心室の長径の長さ、容積及び断面の面積を基準値として、その基準値に基づき前記保存コードを付する請求項7に記載の医用画像データの削除処理方法。
【請求項10】
過去に撮像された被検体の第1の医用画像データを記憶する記憶部と、
前記第1の医用画像データの撮像時よりも新しい撮像時の被検体の医用画像データを第2の医用画像データとして撮像する医用画像診断装置であって、
前記第2の医用画像データの撮像時より所定期間の読影に用いる前記第1の医用画像データを第3の医用画像データとして選択する医用画像データ選択部と、
前記第3の医用画像データに選択されない前記第1の医用画像データを第4の医用画像データとし、当該第4の医用画像データを前記記憶部から削除する医用画像データ削除部と、を備えたことを特徴とする医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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