説明

医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラム

【課題】管腔体の内面の陰になっている箇所を表す展開画像を生成することが可能な医用画像処理装置を提供する。
【解決手段】展開部5は、ボリュームデータに表された管腔体を切り開くことにより仮想展開体を生成する。傾斜部6は、仮想展開体を複数の単位展開体に分割し、複数の単位展開体の向きを傾ける。画像生成部7は、管腔体の内部に仮想視点を設定し、傾けられた状態の複数の単位展開体に対して仮想視点から仮想光線を照射してレイトレーシング処理を行うことにより、管腔体の内部の表面を表す展開画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管腔体を表す医用画像データを生成する医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置やMRI装置などの医用画像撮影装置を用いて被検体を撮影し、その撮影で得られた医用画像データを用いた診断が行われている。大腸や血管などの管腔体を診断するための医用画像としては、例えば仮想内視鏡画像や展開画像などが用いられる(例えば特許文献1)。
【0003】
仮想内視鏡画像は、大腸や血管などの管腔体の内部の表面(以下、「内壁」と称する場合がある)を3次元的に表す仮想的な内視鏡画像である。仮想内視鏡画像を用いた画像の表示方法は、フライスルーと称されている。フライスルーは、大腸や血管などの管腔体の内壁を、内視鏡と同じ視線で観察する技術である。仮想内視鏡画像を用いることにより、内視鏡検査を模擬的に行うことができる。しかしながら、仮想内視鏡画像は一度に表示できる領域が狭いため、診断を行うためには多数の仮想内視鏡画像を用いる必要がある。
【0004】
一方、展開画像によると、管腔体の内壁を一覧することができる。展開画像は、管腔体が切り開かれた状態を表す画像である。すなわち、展開画像は、管腔体の内壁が展開された状態を表す画像であり、管腔体の内壁を平面状に表す画像である。展開画像の具体例を図7に示す。図7(a)は、大腸を模式的に示す図である。図7(b)は、展開画像を示す図である。図7(a)に示すように、大腸200の中心線201上に視点202を設定する。視点202から中心線201に直交する方向を視線方向203とする。視点202から視線方向203に仮想光線を放射する(レイトレーシング処理)。視点202の位置を中心線201上で変えて、各位置の視点202から視線方向203に仮想光線を放射することにより、大腸200の内壁を表す画像を生成する。生成された画像を中心線201に平行に切り開くことにより、図7(b)に示す、大腸の内壁を平面状に表す展開画像210を生成する。
【0005】
図8を参照して、観察対象の管腔体が屈曲している場合について説明する。図8は、屈曲した管腔体を模式的に示す図である。図8に示すように、観察対象の大腸220が屈曲している場合に、大腸220に沿って屈曲した中心線221を設定し、中心線221に直交する方向を視線方向222とする。そしてレイトレーシング処理を実行することにより、大腸220の内壁を表す画像を生成する。すなわち、中心線221上に設定された各視点から視線方向222に仮想光線を放射することにより、大腸220の内壁を表す画像を生成する。屈曲している実際の臓器に沿って中心線221を設定することにより、屈曲している臓器の内壁を平面状に表す展開画像が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4130428号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
展開画像によると管腔体の内壁を一覧することができるため、管腔体の広い領域を短時間で見渡すことができる。しかしながら、従来技術に係る展開画像の生成方法では、管腔体の曲がり方や内壁の形状によっては観察しにくい箇所が発生する場合がある。例えば図8に示すように、大腸220のひだの裏側の領域223は、視線方向222から見て大腸220のひだの陰に隠れてしまう。そのため、ひだの裏側の領域223には仮想光線が照射されない。その結果、ひだの裏側の領域223は展開画像に表されないことになる。このように従来技術に係る方法では、ひだ等の突起物の裏側の領域が観察しにくい。
【0008】
展開画像では観察しにくい箇所を観察するために、仮想内視鏡画像を併用することがある。しかしながら、仮想内視鏡画像の表示には一般的に時間がかかってしまい、管腔体の広い領域を短時間で観察することは困難である。
【0009】
この発明は上記の問題を解決するものであり、管腔体の内面の陰になっている箇所を表す展開画像を生成することが可能な医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、医用画像撮影装置によって生成されて管腔体を表すボリュームデータを受けて、前記ボリュームデータに表された前記管腔体を切り開くことにより仮想展開体を生成する展開手段と、前記仮想展開体を複数の単位展開体に分割し、前記複数の単位展開体の向きを傾ける傾斜手段と、前記管腔体の内部に仮想視点を設定し、傾けられた状態の前記複数の単位展開体に対して前記仮想視点から仮想光線を照射してレイトレーシング処理を行うことにより、前記管腔体の内部の表面を表す展開画像データを生成する画像生成手段と、を有する医用画像処理装置である。
請求項5に記載の発明は、コンピュータに、医用画像撮影装置によって生成されて管腔体を表すボリュームデータを受けて、前記ボリュームデータに表された前記管腔体を切り開くことにより仮想展開体を生成する展開機能と、前記仮想展開体を複数の単位展開体に分割し、前記複数の単位展開体の向きを傾ける傾斜機能と、前記管腔体の内部に仮想視点を設定し、傾けられた状態の前記複数の単位展開体に対して前記仮想視点から仮想光線を照射してレイトレーシング処理を行うことにより、前記管腔体の内部の表面を表す展開画像データを生成する画像生成機能と、を実行させる医用画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によると、管腔体が切り開かれた状態の仮想展開体を複数の単位展開体に分割し、複数の単位展開体の向きを傾けてレイトレーシング処理を行うことにより、仮想展開体に対して斜めの方向から仮想光線を照射することができる。そのことにより、管腔体の内面の陰になっている箇所に仮想光線を照射することが可能となる。その結果、内面の陰になっている箇所を表す展開画像データを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【図2】管腔体の一部を模式的に示す斜視図である。
【図3】仮想展開体を模式的に示す斜視図である。
【図4】仮想展開体を模式的に示す図である。
【図5】変形例に係る仮想展開体を模式的に示す斜視図である。
【図6】変形例に係る仮想展開体を模式的に示す図である。
【図7】図7(a)は大腸を模式的に示す図であり、図7(b)は展開画像を示す図である。
【図8】屈曲した管腔体を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、この発明の実施形態に係る医用画像処理装置について説明する。この実施形態に係る医用画像処理装置1には、例えば医用画像撮影装置90が接続されている。
【0014】
(医用画像撮影装置90)
医用画像撮影装置90には、X線CT装置やMRI装置などの撮影装置が用いられる。医用画像撮影装置90は、観察対象を含む撮影領域を撮影することにより医用画像データを生成する。例えば医用画像撮影装置90は、3次元の撮影領域を撮影することによりボリュームデータを生成する。観察対象の一例は管腔体である。管腔体は、管状の組織と袋状の組織とを含む。管状の組織の一例は、大腸や血管や気管支である。袋状の組織の一例は、胃である。例えば管状組織を観察対象とした場合、医用画像撮影装置90は、管状組織を含む撮影領域を撮影することにより、管状組織を含む撮影領域を表すボリュームデータを生成する。
【0015】
例えば医用画像撮影装置90としてのX線CT装置は、3次元の撮影領域を撮影することにより、位置がそれぞれ異なる複数の断面におけるCT画像データを生成する。X線CT装置は、複数のCT画像データを用いてボリュームデータを生成する。管状組織の一例として大腸を観察対象とした場合、X線CT装置は、大腸を含む3次元の撮影領域を撮影することにより大腸を含む撮影領域を表すボリュームデータを生成する。医用画像撮影装置90はボリュームデータを医用画像処理装置1に出力する。以下では、大腸を観察対象の一例として説明する。
【0016】
(医用画像処理装置1)
医用画像処理装置1は、画像記憶部2と、特定部3と、芯線算出部4と、展開部5と、傾斜部6と、画像生成部7と、表示制御部8と、ユーザインターフェース(UI)9とを備えている。
【0017】
(画像記憶部2)
画像記憶部2は、医用画像撮影装置90から出力された医用画像データを記憶する。例えば、画像記憶部2は、大腸を含む撮影領域を表すボリュームデータを記憶する。
【0018】
医用画像撮影装置90がボリュームデータを生成せずに、医用画像処理装置1がボリュームデータを生成してもよい。この場合、医用画像撮影装置90は、複数の医用画像データ(例えばCT画像データ)を医用画像処理装置1に出力する。医用画像処理装置1は、医用画像撮影装置90によって生成された複数の医用画像データを受ける。画像記憶部2は、複数の医用画像データを記憶する。画像生成部7は、複数の医用画像データを画像記憶部2から読み込み、複数の医用画像データに基づいてボリュームデータを生成する。画像記憶部2は、画像生成部7によって生成されたボリュームデータを記憶する。
【0019】
(特定部3)
特定部3は、ボリュームデータを画像記憶部2から読み込み、CT値などの画素値に基づいてボリュームデータから管腔体を特定する。特定部3によって特定された管腔体を、図2に示す。図2は、管腔体の一部を模式的に示す斜視図である。大腸を観察対象とする場合、図2に示すように、特定部3は、管腔体としての大腸100をボリュームデータから特定する。
【0020】
(芯線算出部4)
芯線算出部4は、管腔体の芯線の位置を求める。大腸を観察対象とする場合、芯線算出部4は、大腸100の長手方向に沿って大腸100の中心を通る線を芯線として求める。
【0021】
(展開部5)
展開部5は、芯線に沿って管腔体を切り開くことにより、管腔体の内部の表面(内壁)が展開された平面状の仮想展開体を生成する。大腸を観察対象とする場合、図2に示すように、展開部5は大腸100を切り開くことにより、大腸100の内部の表面(内壁111)が展開された平面状の仮想展開体110を生成する。図2に示す例では、展開部5は、大腸100の一部の領域を切り開くことにより平面状の仮想展開体110を生成する。展開部5は、大腸100の全体の領域を切り開くことにより、全体の領域の仮想展開体を生成してもよいし、大腸100の一部の領域を切り開くことにより、一部の領域の仮想展開体を生成してもよい。例えば操作者が、操作部11を用いて領域を指定してもよい。操作者によって領域が指定されると、領域の位置を示す座標情報がユーザインターフェース(UI)9から展開部5に出力される。展開部5は、操作者によって指定された領域を切り開くことにより、仮想展開体を生成する。
【0022】
一例として、仮想展開体は、管腔体の壁厚と同じ厚さを有する。例えば仮想展開体110は、大腸100の内壁111と外壁との間の厚さ(壁厚)と、同じ厚さを有する。
【0023】
(傾斜部6)
傾斜部6は、仮想展開体を複数の単位展開体に分割し、複数の単位展開体の向きを芯線に対して傾ける。例えば傾斜部6を、管腔体の芯線に略直交する分割面に沿って仮想展開体を複数の単位展開体に分割し、複数の単位展開体の向きを芯線に対して傾ける。
【0024】
図3及び図4を参照して、傾斜部6の処理について説明する。図3は、仮想展開体を模式的に示す斜視図である。図4は、仮想展開体を模式的に示す図であり、芯線に沿った方向と壁厚の方向とに直交する方向から見た図である。図4(a)は、単位展開体を傾ける前の状態を示す図である。図4(b)は、単位展開体を傾けた後の状態を示す図である。
【0025】
図3及び図4に示す仮想展開体110は、展開部5によって生成された仮想展開体を模式的に示すものである。一例として、3次元の直交座標系によって座標を規定する。この直交座標系は、X方向の軸(X軸)、Y方向の軸(Y軸)、及びZ方向の軸(Z軸)を備える。大腸100の芯線101に沿った方向をY方向とし、仮想展開体110の厚さ(壁厚)方向をX方向とする。例えば図3及び図4(a)に示すように、傾斜部6は、大腸100の芯線の方向(Y方向)に略直交する分割面に沿って、所定間隔の距離をおいて仮想展開体110を分割することにより、複数の単位展開体120を得る。
【0026】
所定間隔の距離の値は、図示しない記憶部に予め記憶されている。例えば操作者が、所定間隔の距離を操作部11によって入力してもよい。操作部11から入力された所定間隔の距離の値は、図示しない記憶部に記憶される。傾斜部6は、記憶部に記憶されている所定間隔の距離に従って、仮想展開体110を複数の単位展開体120に分割する。
【0027】
なお、傾斜部6は、芯線101の方向(Y方向)に直交する面に対して傾斜する分割面に沿って、仮想展開体110を複数の単位展開体120に分割してもよい。例えば操作者が、操作部11を用いて分割面の角度を入力する。傾斜部6は、操作部11から入力された角度に従って分割面を設定し、仮想展開体110を複数の単位展開体120に分割する。
【0028】
傾斜部6は、複数の単位展開体120の向きを芯線101に対して傾ける。例えば図4(b)に示すように、傾斜部6は、芯線101に沿った方向(Y方向)と壁厚方向(X方向)とに直交するZ方向を回転軸とし、予め設定された傾斜方向に向けて予め設定された傾斜角度の位置に、複数の単位展開体120を傾ける。これにより、複数の単位展開体120は、傾けられる前の仮想展開体110の壁厚方向(X方向)に対して、傾いた状態となる。
【0029】
傾斜方向を示す情報と傾斜角度の値とは、図示しない記憶部に予め記憶されている。例えば操作者が、傾斜方向を示す情報と傾斜角度の値とを操作部11を用いて入力してもよい。操作者によって入力された傾斜方向を示す情報と傾斜角度の値とは、図示しない記憶部に記憶される。傾斜部6は、記憶部に記憶されている傾斜方向を示す情報と傾斜角度の値とに従って、複数の単位展開体120を傾ける。
【0030】
(画像生成部7)
画像生成部7は、画像記憶部2からボリュームデータを読み込み、管腔体の内部の表面(内壁)を平面状に表す展開画像データをボリュームデータに基づいて生成する。例えば画像生成部7は、管腔体の内部に仮想視点を設定する。画像生成部7は、仮想視点から仮想光線を照射してレイトレーシング処理を行う。画像生成部7はレイトレーシング処理を行うことにより、管腔体の内壁を平面状に表す展開画像データを生成する。画像生成部7は、展開画像データを表示制御部8に出力する。
【0031】
例えば画像生成部7は、芯線101上に仮想視点を設定する。図4(b)に示すように、画像生成部7は、複数の単位展開体120に対して仮想視点から平行な仮想光線102(平行光線)を照射してレイトレーシング処理を行う。画像生成部7はレイトレーシング処理を行うことにより、大腸100の内壁111を平面状に表す展開画像データを生成する。図4(b)に示す例では、画像生成部7は、仮想展開体110の壁厚方向(X方向)に平行な仮想光線102(平行光線)を、複数の単位展開体120に照射してレイトレーシング処理を行う。複数の単位展開体120は壁厚方向(X方向)に傾いている。そのため、壁厚方向(X方向)に対して平行に照射された仮想光線102(平行光線)は、複数の単位展開体120に対して斜めの方向から照射される。すなわち、仮想光線102は、大腸100(仮想展開体110)の内壁111に対して斜めに照射される。その結果、内壁111を斜めの方向から見た展開画像データが生成される。
【0032】
画像生成部7は、ボリュームデータにボリュームレンダリングを施すことにより、管腔体の内壁を3次元的に表す仮想内視鏡画像データを生成してもよい。また、画像生成部7は、ボリュームデータにMPR(Multi Planar Reconstruction)処理を施すことにより、任意の断面におけるMPR画像データを生成してもよい。
【0033】
(表示制御部8)
表示制御部8は展開画像データを画像生成部7から受けて、展開画像データに基づく展開画像を表示部10に表示させる。
【0034】
(ユーザインターフェース(UI)9)
ユーザインターフェース(UI)9は、表示部10と操作部11とを備えている。表示部10は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されている。操作部11は、キーボードやマウスなどの入力装置で構成されている。
【0035】
以上の構成を有する医用画像処理装置1によると、傾いた状態の複数の単位展開体120に対してレイトレーシング処理を行うことにより、大腸100(仮想展開体110)の内壁111に対して斜めの方向から仮想光線102(平行光線)を照射することができる。そのことにより、大腸100の内壁111の陰になっている箇所に仮想光線102を照射することが可能となる。その結果、内壁111の陰になっている箇所を表す展開画像データを生成することが可能となる。すなわち、この実施形態に係る医用画像処理装置1によると、大腸100の内壁111を斜めの方向から見た状態の展開画像データを生成することが可能となる。複数の単位展開体120は仮想光線102に対して斜めに傾いているため、例えば、大腸100のひだの陰になっている箇所に仮想光線102を照射することができる。そのことにより、ひだの陰になっている箇所を表す展開画像データを生成することが可能となる。その結果、操作者は、ひだ等の突起物の陰になっている箇所を観察することが可能となる。
【0036】
従来においては、内壁111に直交する方向から見た状態の展開画像データを生成していた。そのため、内壁111の陰になっている箇所には仮想光線(平行光線)が照射されず、陰になっている箇所を表す展開画像データを生成することができなかった。その結果、操作者は、陰になっている箇所を観察することが困難であった。これに対して、この実施形態に係る医用画像処理装置1によると、大腸100の内壁111の陰になっている箇所に仮想光線102を照射することができるので、操作者は、陰になっている箇所を観察することが可能となる。
【0037】
(変形例)
図5及び図6を参照して、医用画像処理装置1の変形例について説明する。図5は、変形例に係る仮想展開体を模式的に示す斜視図である。図6は、変形例に係る仮想展開体を模式的に示す図であり、芯線に沿った方向から見た図である。図6(a)は、単位展開体を傾ける前の状態を示す図である。図6(b)は、単位展開体を傾けた後の状態を示す図である。
【0038】
(展開部5)
展開部5は、上述したように大腸100を切り開くことにより、大腸100の内部の表面(内壁111)が展開された平面状の仮想展開体を生成する。
【0039】
図5及び図6に示す仮想展開体130は、展開部5によって生成された仮想展開体を模式的に示すものである。大腸の芯線101に沿った方向をY方向とし、仮想展開体130の厚さ(壁厚)方向をX方向とする。
【0040】
(傾斜部6)
例えば図5及び図6(a)に示すように、傾斜部6は、大腸100の芯線の方向(Y方向)に略平行な分割面に沿って、所定間隔の距離をおいて仮想展開体130を分割することにより、複数の単位展開体140を得る。一例として、傾斜部6は、芯線の方向(Y方向)に略平行で、壁厚方向(X方向)にも略平行な分割面に沿って、仮想展開体130を複数の単位展開体140に分割する。なお、傾斜部6は、芯線の方向(Y方向)に略平行で、壁厚方向(X方向)に対して傾斜する分割面に沿って、仮想展開体130を複数の単位展開体1440に分割してもよい。
【0041】
なお、傾斜部6は、芯線101の方向(Y方向)に平行な面に対して傾斜する分割面に沿って、仮想展開体130を複数の単位展開体140に分割してもよい。例えば操作者が、操作部11を用いて分割面の角度を入力する。傾斜部6は、操作部11から入力された角度に従って分割面を設定し、仮想展開体130を複数の単位展開体140に分割する。
【0042】
そして、傾斜部6は、複数の単位展開体140の向きを芯線101に対して傾ける。例えば図6(b)に示すように、傾斜部6は、芯線101に沿った方向(Y方向)を回転軸とし、予め設定された傾斜方向に向けて予め設定された傾斜角度の位置に、複数の単位展開体140を傾ける。これにより、複数の単位展開体140は、傾けられる前の仮想展開体130の壁厚方向(X方向)に対して、傾いた状態となる。
【0043】
傾斜方向を示す情報と傾斜角度の値とは、図示しない記憶部に予め記憶されている。例えば操作者が、傾斜方向を示す情報と傾斜角度の値とを操作部11を用いて入力してもよい。操作者によって入力された傾斜方向を示す情報と傾斜角度の値とは、図示しない記憶部に記憶される。傾斜部6は、記憶部に記憶されている傾斜方向を示す情報と傾斜角度の値とに従って、複数の単位展開体140を傾ける。
【0044】
(画像生成部7)
例えば画像生成部7は、芯線101上に仮想視点を設定する。図6(b)に示すように、画像生成部7は、複数の単位展開体140に対して仮想視点から平行な仮想光線102(平行光線)を照射してレイトレーシング処理を行う。画像生成部7はレイトレーシング処理を行うことにより、大腸100の内壁111を平面状に表す展開画像データを生成する。図6(b)に示す例では、画像生成部7は、仮想展開体130の壁厚方向(X方向)に平行な仮想光線102(平行光線)を、複数の単位展開体140に照射してレイトレーシング処理を行う。複数の単位展開体140は壁厚方向(X方向)に傾いている。そのため、壁厚方向(X方向)に対して平行に照射された仮想光線102は、複数の単位展開体140に対して斜めの方向から照射される。すなわち、仮想光線102は、大腸100(仮想展開体130)の内壁111に対して斜めに照射される。その結果、内壁111を斜めの方向から見た展開画像データが生成される。
【0045】
画像生成部7は、展開画像データを表示制御部8に出力する。表示制御部8は、展開画像データに基づく展開画像を表示部10に表示させる。
【0046】
以上のように、医用画像処理装置1の変形例によっても、傾いた状態の複数の単位展開体140に対してレイトレーシング処理を行うことにより、大腸100(仮想展開体130)の内壁111に対して斜めの方向から仮想光線102(平行光線)を照射することができる。そのことにより、大腸100の内壁111の陰になっている箇所に仮想光線102を照射することが可能となる。その結果、内壁111の陰になっている箇所を表す展開画像データを生成することが可能となる。
【0047】
特定部3と、芯線算出部4と、展開部5と、傾斜部6と、画像生成部7と、表示制御部8とはそれぞれ、CPU、GPU、又はASICなどの図示しない処理装置と、ROM、RAM、又はHDDなどの図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。記憶装置には、特定部3の機能を実行するための特定プログラムが記憶されている。また記憶装置には、芯線算出部4の機能を実行するための芯線算出プログラムが記憶されている。また記憶装置には、展開部5の機能を実行するための展開プログラムが記憶されている。また記憶装置には、傾斜部6の機能を実行するための傾斜プログラムが記憶されている。また記憶装置には、画像生成部7の機能を実行するための画像生成プログラムが記憶されている。また記憶装置には、表示制御部8の機能を実行するための表示制御プログラムが記憶されている。CPUなどの処理装置が、記憶装置に記憶されている各プログラムを実行することにより、各部の機能が実行される。
【0048】
なお、医用画像撮影装置90が医用画像処理装置1の機能を備えていてもよい。この場合、医用画像撮影装置90は管腔体を撮影することによりボリュームデータを生成し、医用画像処理装置1の機能を更に実行する。これにより、医用画像撮影装置90は、管腔体を平面状に展開した展開画像データを生成する。このように医用画像撮影装置90が医用画像処理装置1の機能を実行しても、医用画像処理装置1と同じ効果を奏することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 医用画像処理装置
2 画像記憶部
3 特定部
4 芯線算出部
5 展開部
6 傾斜部
7 画像生成部
8 表示制御部
9 ユーザインターフェース(UI)
10 表示部
11 操作部
90 医用画像撮影装置
100 大腸
101 芯線
110、130 仮想展開体
111 内壁
120、140 単位展開体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像撮影装置によって生成されて管腔体を表すボリュームデータを受けて、前記ボリュームデータに表された前記管腔体を切り開くことにより仮想展開体を生成する展開手段と、
前記仮想展開体を複数の単位展開体に分割し、前記複数の単位展開体の向きを傾ける傾斜手段と、
前記管腔体の内部に仮想視点を設定し、傾けられた状態の前記複数の単位展開体に対して前記仮想視点から仮想光線を照射してレイトレーシング処理を行うことにより、前記管腔体の内部の表面を表す展開画像データを生成する画像生成手段と、
を有する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記管腔体の芯線を求める芯線算出手段を更に有し、
前記展開手段は、前記芯線に沿って前記管腔体を切り開くことにより前記仮想展開体を生成し、
前記傾斜手段は、前記複数の単位展開体の向きを前記芯線に対して傾け、
前記画像生成手段は、前記芯線上に前記仮想視点を設定し、傾けられた状態の前記複数の単位展開体に対して前記仮想視点から平行な前記仮想光線を照射して前記レイトレーシング処理を行うことにより、前記展開画像データを生成する請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記傾斜手段は、前記芯線に略直交する面に沿って前記仮想展開体を前記複数の単位展開体に分割し、前記複数の単位展開体の向きを前記芯線に対して傾ける請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記傾斜手段は、前記芯線に略平行な面に沿って前記仮想展開体を前記複数の単位展開体に分割し、前記複数の単位展開体の向きを前記芯線に対して傾ける請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
コンピュータに、
医用画像撮影装置によって生成されて管腔体を表すボリュームデータを受けて、前記ボリュームデータに表された前記管腔体を切り開くことにより仮想展開体を生成する展開機能と、
前記仮想展開体を複数の単位展開体に分割し、前記複数の単位展開体の向きを傾ける傾斜機能と、
前記管腔体の内部に仮想視点を設定し、傾けられた状態の前記複数の単位展開体に対して前記仮想視点から仮想光線を照射してレイトレーシング処理を行うことにより、前記管腔体の内部の表面を表す展開画像データを生成する画像生成機能と、
を実行させる医用画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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