医療‐技術的性質の物品を皮膚に貼り付けるための構成要素
本発明は、医療‐技術的性質の物品を皮膚に貼り付けるための、または皮膚に固定するように設計された医療用物品(1)内に含まれる、構成要素(2)に関し、前記構成要素は、支持材料(4)の層を備え、この支持材料(4)の層は、その下面、すなわち医療‐技術的物品の使用中に皮膚に向けて方向付けられる面が、接着剤(3)の層で被覆される。本発明によれば、構成要素(2)は、その頂面上に、物品または物品の要素のための、締結領域(5)を有し、その締結領域は、構成要素の少なくとも2つの対向縁部から距離をおいて配置される。さらに接着剤(3)は、皮膚に優しく軟らかい感圧性接着剤であり、この接着剤は、徐々に進行する除去の試験において、0.2N/25mmの荷重で0.05mm/分より速い除去速度を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療‐技術的性質の物品を皮膚に貼り付けるための、または皮膚に固定されるように設計された医療用物品内に含まれる、構成要素に関し、前記構成要素は、支持材料の層を備え、この支持材料の層は、その下面、すなわち医療‐技術的物品の使用中に皮膚に向けて方向付けられる面が、接着剤の層で被覆される。
【背景技術】
【0002】
自己接着性絆創膏は、医療‐技術的性質の物品を皮膚に固定するため、または皮膚に対する物品の支承を維持するために使用されることが多い。そのような物品の例として、手術用ドレープまたは手術用カバー、点滴ホースなどが挙げられる。自己接着性絆創膏は、たとえばストーマドレッシング内の構成要素など、医療‐技術的物品内に含まれる構成要素であることが多い。
【0003】
医療‐技術的性質のそのような物品が、使用中に緩んでこないこと、および、そうではなくそれらが適用後に定位置に確実に留まることが、極めて重要である。この状況を保証するために、たとえばアクリレート接着剤など、固く強力に接着する接着剤を有する絆創膏を選択することが慣例であった。しかし、固い接着剤は、皮膚に固く貼り付き過ぎ、それらが除去されるときにそれらとともに皮膚細胞を取り去るという欠点を有する。そのような絆創膏を除去する際に生じる痛みに加えて、皮膚細胞の除去により皮膚の関門機能も一時的に損なわれ、かつ、たとえば新しく形成された皮膚など繊細な皮膚が、前記除去中に重大な損傷を受ける危険性もある。接着剤が除去された後に、その表面が多数の皮膚細胞で覆われるということは、接着層の接着力が大幅に損なわれることを意味し、固い接着剤を有する絆創膏は、まず2回以上固定させることができない。
【0004】
特許文献1〜3から、皮膚上に非常に優しく、除去されるときに基本的に死んだ皮膚細胞のみをそれらとともに取り去る、感圧性の軟接着剤を代わりに使用することが知られている。これらの軟接着剤の皮膚に優しい特性の理由は、もちろんこの接着剤が、皮膚にそれほど固く接着しないことであるが、同時に、接着剤層が軟らかいということは、この接着剤が、固い接着剤と比べて皮膚の凹凸をたどる非常に良好な能力を有することを意味する。このことは、接着剤層にとっての接触面積が、固い接着剤にとっての接触面積よりもはるかに大きいことを意味し、医療‐技術的物品の皮膚への十分に高い総合的な接着力を、依然達成することができることを意味する。軟接着剤の皮膚細胞への接着力が低いことは、それらとともに健康な皮膚細胞をそれほど除去することなく、軟接着剤を皮膚から除去することができることを意味する。このことが、使用者の痛みを生じずに軟接着剤を除去することができることを意味することに加え、軟接着剤の層を備える除去されたドレッシング上に皮膚細胞がないことは、そのようなドレッシングを、基本的に同じ接着能力で再び適用することができることを意味する。
【0005】
皮膚に優しい軟接着剤によって皮膚に固定される自己接着性物品の弱点は、短期間の荷重下では良好な接着力を有するにもかかわらず、それらは、低い荷重であっても長期間の荷重下では、不十分な接着力を有することが多いことである。たとえば、ストーマバッグまたは手術用ドレープなど、固定される物品の重力により締結部に荷重がかかる物品では、1時間未満であり得る一定時間後に、ゆっくりと徐々に進行する除去により締結部が緩くなることが見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】スウェーデン国特許第510907号明細書
【特許文献2】国際公開第03/079919号パンフレット
【特許文献3】国際出願PCT/SE2006/000025号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、感圧性軟接着剤によって皮膚に固定される物品の、この弱点をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、医療‐技術的性質の物品を皮膚に貼り付けるための、または皮膚に固定するように設計された医療用物品に含まれる構成要素であって、前記構成要素が、支持材料の層を備え、この支持材料の層は、その下面、すなわち医療‐技術的物品の使用中に皮膚に向かって方向付けられる面が接着剤の層で被覆される、構成要素において、この構成要素が、物品または物品用の要素のための締結領域をその頂面上に有し、その締結領域が、構成要素の少なくとも2つの対向縁部から距離をおいて配置され、接着剤が、皮膚に優しく軟らかい感圧性接着剤であり、この接着剤が、徐々に進行する除去の試験において、0.2N/25mmの荷重で0.05mm/分より速い除去速度を有することを特徴とする構成要素によって達成される。
【0009】
締結領域は、好ましくは、構成要素のすべての縁部から距離をおいて配置される。
【0010】
好ましい一実施形態によれば、接着剤は、徐々に進行する除去の試験において、0.4N/25mmの荷重で0.5mm/分より速い除去速度を有する。
【0011】
さらに接着剤は、有利には、0.2〜4N/25mmの皮膚への接着力および10〜22mmの柔軟性を有する、皮膚に優しく軟らかい感圧性接着剤である。支持層は、好ましくはプラスチック膜であり、有利には、10〜50μmの厚さを有するポリウレタン膜である。
【0012】
締結領域は好ましくは、構成要素の少なくとも、物品の使用中に張力および/またはせん断力によって荷重をかけられる対向縁部から、少なくとも5mmの距離をおいて配置される。
【0013】
本発明の1つの変形形態では、手術用ドレープまたは手術用カバーが、構成要素に固定される。
【0014】
別の変形形態では、構成要素は、ストーマドレッシングの構成要素である。
【0015】
第3の変形形態では、構成要素は、ホースまたは医療‐技術的性質の他の物品を、その頂面に固定するための部材を備える。固定部材は、機械的固定要素のオスまたはメス部品によって形成することができる。
【0016】
次に本発明を、添付の図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術による、患者に締結された手術用ドレープを示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による、患者に締結された手術用ドレープを示す概略断面図である。
【図3】図2の一部を拡大された縮尺で示す概略図である。
【図4】医療‐技術的性質の物品を使用者の皮膚に締結するための、環状構成要素を示す概略平面図である。
【図5】患者の皮膚にホースまたは手術用要素を固定するための構成要素を示す概略平面図である。
【図6】図5の線VI‐VIに沿った概略断面図である。
【図7】皮膚の接着力を測定するための方法を示す概略図である。
【図8】柔軟性を測定するための方法を示す概略図である。
【図9】柔軟性を測定するための方法を示す概略図である。
【図10】接着剤の徐々に進行する除去を測定するための方法を示す概略図である。
【図11】接着剤の徐々に進行する除去を測定するための方法を示す概略図である。
【図12】様々な接着剤の徐々に進行する除去を示す図である。
【図13】本発明による荷重の分布を用いた、接着剤の徐々に進行する除去の測定を示す図である。
【図14】本発明による荷重の分布を用いた、接着剤の徐々に進行する除去の測定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、手術台T上に横たわる患者P上に配置された、従来技術による手術用ドレープAを示す。このドレープはその上縁部に沿って、ドレープを患者に固定する接着剤被覆Bを有する。この締結部は、ドレープの重量によって連続的に荷重がかけられ、かつ、この荷重を支えるように寸法決めされており、この荷重は通常、ドレープが吸収によって、またはドレープの下縁部に配置された液体収集ポーチなどによって液体を受け取ることにより、時間とともに増大する。一方では、軟らかく皮膚に優しい接着剤は、除去されるときにそれらとともに皮膚細胞を取り去らないので、またもう一方では、軟らかく皮膚に優しい接着剤は、皮膚に対する極めて良好な封止の可能性をもたらすので、軟らかく皮膚に優しい接着剤を被覆Bに使用することが近年提案されてきた。しかし、軟らかく皮膚に優しい接着剤を用いると、ドレープが、ゆっくりと徐々に進行する除去により、長期間の荷重下で緩くなる傾向を有する危険性があることが見出されている。
【0019】
図1のドレープAの接着剤被覆Bが、ドレープの重量を受けるとき、皮膚と接着剤との間の力が、接着剤被覆Bの接触面の縁部Cに集中する。ドレープAからの張力は、ほとんどの部分がせん断力として接着剤被覆B内に分配されるが、比較的小さい引裂き力も実際に生じる。こうして、荷重が局部的に接着剤の接着力より大きくなり、縁部Cにおける皮膚と接着剤の間の連結が緩くなる危険性があるが、このことは、荷重をかける力が、縁部からわずかに内側に移動することを意味する。次いでこのプロセスは続き、そのためゆっくりとした漸進的な除去の結果として、ドレープが緩くなる。
【0020】
皮膚と接着剤との間の接触面の1つの縁部上に集中した荷重に対する、軟らかく皮膚に優しい接着剤の上述の感度は、手術用ドレープ以外の物品にも当てはまり、もちろん、接触面の1つの縁部上に集中する短期間の荷重にも当てはまることが理解されるであろう。
【0021】
ドレープの使用中に生じる、吊上げ力を含む他の荷重に応じて、対応する除去プロセスが、他の縁部でも行われることがある。
【0022】
本発明は、第1に、上述の徐々に進行する除去の問題を解決することを目的とする。
【0023】
軟らかく皮膚に優しい接着剤は、上記で述べたように皮膚の外形を極めて良好にたどることができるので、固い接着剤と比較して大きい表面積だけでなく、皮膚へのドレッシングの接着力を高める負圧効果も得られる。この効果は、そのような接着剤被覆を備える物品が皮膚に適用されるときに、接触面下のすべての空気を押し出すことができることにより、適用時に達成される。接触面は、荷重がかかる間に負圧を生み出す原理に完全に基づく、機械的吸引プラグにたとえることができる。この効果は、接着剤被覆が、いわゆる微小漏洩に対する封止ももたらし、すなわち、空気が皮膚のしわまたはひび割れを通り接着剤と皮膚の間の接触面の下に侵入することを妨げるタイプのものである場合に、最も保証される。
【0024】
図2および図3(拡大図)は、本発明による構成要素2を備える、手術用ドレープ1の実施形態の概略図を示す。構成要素2は、軟らかく皮膚に優しい接着剤3の層で被覆された支持部4で構成される。ドレープ1の縁部は、図2および図3では構成要素2の左手および右手縁部から距離をおき構成要素2の頂面上で中央に延びる細い接着剤継ぎ目5によって、支持部4に固定される。継ぎ目5は、たとえばアクリレート接着剤など、任意の適当な接着剤を含むことができる。ドレープ1の縁部を、たとえば溶接継ぎ目など他のタイプの継ぎ目により支持部4に固定することも、もちろん可能である。
【0025】
ドレープ1の荷重は、ドレープの縁部に沿って延びる構成要素2の中央に集中する。次いで荷重は、継ぎ目5の下の領域全体に分配され、図2および図3では左手および右手縁部の方向に減少する。このことは、図1に示す従来技術におけるようにドレープが構成要素2の頂面全体に固定された場合よりも、縁部における引裂き力およびせん断力が小さいという結果を有する。これにより、締結部の縁部の1つの縁部から始まる上述の徐々に進行する除去の結果としてドレープが緩くなるという、危険性が低減される。ドレープの締結部を構成要素2に対してこのように配置することにより、たとえば皮膚の垂直方向の、短期間の大きい荷重に対するこの構成要素の抵抗も増大する。そのような荷重は、構成要素2の中央部分を皮膚から持ち上げることがあるが、空気が縁部を通って侵入しないので、生み出される負圧がここでも、荷重がなくなるとすぐにこれらの中央部分を皮膚に吸い付ける。軟らかく皮膚に優しい接着剤は、中央部分が皮膚から持ち上がるときに接着剤とともに皮膚細胞を取り去らないので、この構成要素は、構成要素が最初の適用後に有するのと同じ高程度の皮膚への接着力を、負圧によってきつく吸引された後にかなりの程度有することになる。
【0026】
多くの場合、構成要素2は、ドレープ1の側縁部、すなわち図2および図3の紙の平面と平行の平面内に横たわる縁部にて終端するので十分となり得るが、構成要素2がこれらの縁部を超えて延びることを可能にすることが、好都合である。これにより、ドレープの側縁部に短期間または長期間の荷重がかけられた後に、構成要素の側縁部が緩くなる危険性が低減される。長期間の荷重によりいくつかの縁部に荷重がかかることがある、他のタイプの医療‐技術的性質の物品では、構成要素の頂面への医療‐技術的性質の物品の締結部が、そのすべての縁部から距離をおいて配置される必要がある。荷重を受ける縁部からの距離は、5mmでなくてはならず、好ましくは10mm、最も好ましくは15mm以上である。
【0027】
構成要素2が、意図されたように機能することができるためには、支持部4が、中央の荷重を構成要素の縁部に直接伝達するほどの剛性を有さず、その代わり、下に横たわる接着剤層内へと力が誘導され、その中で分配されることが重要である。このやり方では、力は接着剤被覆の中央部分上に集中し、縁部に向かう方向に減少し、これにより、構成要素2が緩くなる危険性が大幅に低減される。力が接着剤被覆内においてこの望ましいやり方で受け取られることを保証するためには、支持部4は、伸張後にその元の構成を回復するように、可撓性を有し、伸縮可能であり、かつ、有利には弾性も有さなければならない。支持部のこれらの特性はまた、構成要素2全体が、皮膚の凹凸をたどることができ、こうして構成要素の適用後に、接着剤と皮膚の間に空気ポケットが形成されることを妨げることができることも意味する。支持部は、たとえば10〜50μmの厚さを有するポリウレタン膜など、プラスチック膜とすることができる。使用することができる他のプラスチック材料は、ポリエステルおよびポリエチレンである。プラスチック膜の厚さは、好ましくは50μm未満、より好ましくは10〜30μmである。
【0028】
本発明による使用に適した適当な軟らかく皮膚に優しい接着剤は、たとえば、混合後に架橋し自己接着性エラストマーを形成する、付加硬化型RTV(室温硫化)シリコーンシステムで構成することができる。RTV付加硬化型シリコーンシステムの例は、アルケニルで置換されたポリジオルガノシロキサン、シリコーン原子のいくつかに結合させられた水素原子を含有するオルガノシロキサン、およびまた白金触媒で構成される、ゲル形成組成物を記載するEP0300620Alにおいて挙げられている。
【0029】
Wacker SilGel 612は、市販されているRTVシリコーンシステムである。これは、2成分システムである。形成されるエラストマーの柔軟性および接着力の程度は、2つの成分の比率A:Bを、1.0:0.7から1.0:1.3まで変えることにより変えることができる。
【0030】
乾燥した皮膚に接着する他の軟らかいシリコーンエラストマーの例は、NuSil Technology(米国、カリフォルニア州、Carpintieria)のNuSil MED‐6340、NuSil MED3‐6300、およびNuSil MED 12‐6300、ならびに、Dow Corning Corporation(米国、Midland)のDow Coming 7‐9800である。
【0031】
たとえばNational Starch and Chemical Company(米国、ニュージャージー州、Bridgewater)のDispomelt(登録商標)70‐4647などの熱接着剤など、他の軟らかく皮膚に優しい接着剤もまた、本発明とともに使用することができる。
【0032】
構成要素2は、接着剤被覆が、微小漏洩に対する封止ももたらす場合、すなわち、空気が皮膚内のひび割れ、皮膚のしわ、または皮膚内の他の凹凸を通り接着剤被覆の下に侵入することを防ぐ場合に、最も良好に機能する。そのような空気の進入は、出願される文書の上述の負圧効果を低減し、またはなくす可能性もある。皮膚に優しい接着剤では、驚くべきことに、接着剤が十分に軟らかく、単位面積あたりの十分に大きい重量を有する場合、上述の漏れの危険性をなくすことができ、または少なくとも大幅に低減することができることが見出されている。したがって接着剤被覆3は、10〜22mmの柔軟性、および50g/m2以上の単位面積あたりの重量を有するべきである。接着剤被覆は、好ましくは、75μmの溝深さを用いたMHC漏れ試験に準拠する、耐漏洩性となる。MHC漏れ試験は、特許出願SE0500061‐7により詳しく記載されており、さらなる詳細についてはこれを参照することができる。
【0033】
皮膚の特性は、個々人で異なるので、接着剤被覆の様々な患者の皮膚に接着する能力もまた、当然異なる。接着力はまた、軟接着剤の厚さおよび支持層の機械的特性にも依存する。接着力を測定するために今日使用可能な標準的な方法は、たとえば鋼鉄またはガラスなど様々なタイプのプレートを使用しており、皮膚への接着力の測定に相当する値を提供しない。皮膚への接着剤の接着力についての値は、上記で述べてきたように、図7に概略的に示す、本出願人が開発してきた方法によって測定される。
【0034】
その皮膚への接着力が測定されようとする、自己接着性構成要素の細片が、25×125mmのサイズに切断される。すべての細片が、膜ドレッシングの裏に支持層も備えることに留意されたい(この支持層の機能は、皮膚への適用中に細片を強化することである)。その後、細片は、健康な志願者の背中の皮膚上に置かれる。細片は、指で注意深く押され、次いで、細片の裏の支持層が取り除かれる。最後に細片は、発泡プラスチック製のスポンジ(42×182mm、厚さ=48mm)を用いて皮膚に対して3秒間しっかりと押し付けられ、鋼鉄プレート(50×200mm、厚さ=1mm)上に堅く糊付けされる。押圧は、6kN/m2であると推定される。細片は、皮膚上に2分間置かれる。その後細片は、25mm/秒の速度で除去され、除去力F1が測定される。除去角度、すなわち皮膚の表面と細片の除去される部分との間に形成される鈍角は、135°となるべきである。皮膚に対する細片の接着力は、力F1の平均値である。
【0035】
本発明による構成要素において使用することができる接着剤は、この方法によれば、少なくとも0.2〜4N/25mmの接着力をもたなければならない。接着剤は、好ましくは、1〜2.5N/25mmである。
【0036】
本発明による接着剤は、ASTM D 937およびASTM D 51580に基づく方法により測定される、10mmを超える柔軟性を有さなければならない。いくつかの修正形態が製作されており、以下で説明される。図8および図9は、柔軟性を決定しようする厚さ30mmの接着剤の試料C内に、62.5gの重量を有する円錐体Bを重力により貫入させることにより接着剤の柔軟性を測定するための、この修正された方法を示す。この試料は、60mmの内径および35〜40mmの内高を有する円筒形のガラス容器に、最高30mmの高さの接着剤を充填することによって製作される。シリコーンエラストマーの場合、硬化されていないシリコーンポリマーが、容器内へと注がれ、次いでガラス円筒内で架橋させられてエラストマーとなる。使用される円錐体は、図8に示されており、以下の寸法、a=65mm、b=30mm、c=15mm、およびd=8.5mmを有する。柔軟性を測定するための方法を実行するとき、円錐体Bはまず、図9において破線で示される、円錐体の先端が試料Cの表面をかすめるだけの位置Iへと下げられる。次に円錐体Bは、重力により試料C内へと貫入することができるように解放される。円錐体Bの先端が5秒後に試料C内に貫入したmmの数が測定され、貫入値Pとなり、この貫入値Pが大きいほど試料が軟らかい。貫入値Pは、本発明において使用される柔軟性の測定値となる。この方法は、Sommer&Runge KG(独国)の貫入試験機PNR10を用いて実行される。
【0037】
本出願人は、接着剤の徐々に進行する除去を測定するための試験方法を開発してきた。接着剤のこの徐々に進行する特性を決定するこの方法は、表面が接着剤で完全に被覆されている試料にのみ当てはまることに留意されたい。
【0038】
25×105mmの試料Pは、試験されるべき接着剤で被覆された材料から切り出される。
【0039】
傷のない鋼鉄プレートS(ASTM A666‐94 Aに準ずる、50×200mm)が、n‐ヘプタンを浸したリントフリーの吸収材料で3回洗浄される。最後に、最終洗浄が、n‐ヘプタンの代わりにアセトンを用いて行われる。次いで鋼鉄プレートは、少なくとも10分間乾燥のために置かれるが、10時間より長くは置かれない。
【0040】
試料Pは、強力なテープTを用いて一端部が強化される。この1片のテープ(前記1片は長さ4cm)は、重量が測定され、次いで、図10に概略的に示すように、試料の端部の周りで折り曲げられ固定される。接着剤で被覆された膜の試料Pでは、接着剤で被覆された膜は、接着剤が鋼鉄プレートに向かって方向付けられた状態でプレート上に置かれ、その後、テープが試料の一方の縁部を覆って折り曲げられ、膜の適用を容易にする強化層が、注意深く除去される。重りWを自由にかけることを可能にするように、テープ内に試料の端部を通して穴が開けられる。試料上に圧力がかからないことを保証するために、試料が鋼鉄プレート上に注意深く置かれることが重要である。取り去られるべき強化層をもたない試料では、試料が鋼鉄プレートに固定される前に、テープを試料の端部に固定することができる。
【0041】
その後、1片の発泡ポリウレタン(Rynel Inc.(米国、メイン州、Boothbay)のL00562‐6、1.6mm)が、鋼鉄プレート上の試料を覆って置かれ、発泡ポリウレタン片上で5mm/秒の速度で前後に1回転がされるローラ(幅=45mm、重量=2040g、半径=47mm)により、試料がプレートにしっかり固定される。その後、試料は1時間そのまま置かれる。
【0042】
1時間が経過した後、重りWが試料Pのテープを有する端部内に固定され、その端部は、重りが図11に示すように真っ直ぐ吊り下がるように外側に折り曲げられ、ゼロ地点が、鋼鉄プレート上に印付けされる。図11に示すように、試料のうちの8cmが鋼鉄プレートに固定され、2.5cmが重りとともに吊り下がるように、ゼロ地点が、テープ片の端部から2.5cmのところに配置される。時間が計り始められ、重りおよび接着剤のタイプに応じて、時間間隔が変えられ、鋼鉄プレート上に印が付けられる。次いで、これらの印が計算されて、試料の除去速度がmm/分単位で与えられる。
【0043】
【表1】
【0044】
上述の製品を、0.05、0.1、0.2、0.5、1、および2.5N/25mmの力に対応する様々な重量で試験した。
【0045】
これらの試験の結果を、図12および以下の表に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
行われる試験では、接着剤は、このように局部的な線形荷重を受ける。したがって、試験の結果は、試験された接着剤の局部的接着力を指示する測定値になるということができる。試験から明らかなように、本発明による軟らかく皮膚に優しい接着剤は、皮膚への固定に適しており、0.05〜0.2N/25mmの比較的小さく長期間の荷重で基板から緩むが、試験されたその他の製品の接着剤は、基板に固定されたままとなる。このことは、皮膚への親和性およびそのような接着剤の他の良好な特性に大幅に寄与するのは、軟らかく皮膚に敏感な接着剤の、皮膚への弱い局部的接着力であるという理論を確証する。実行された試験は、接着剤の局部的接着力の一種の尺度になるということができる。
【0048】
接着剤が、本発明により軟らかく皮膚に優しいと考えられるためには、図12の2つの×印の間に引かれる線より左(矢印Aを参照)にこなければならない。したがって除去速度は、0.2N/125mmの荷重で0.05mm/分より速く、0.4N/125mmの荷重で0.5mm/分より速くなければならない。
【0049】
本発明の効果を確認するために、以下の試験を実施した。
【0050】
傷のない鋼鉄プレートS(ASTM A666‐94 Aに準ずる、50×200mm)が、n‐ヘプタンを浸したリントフリーの吸収材料で3回洗浄される。最後に、最終洗浄が、n‐ヘプタンの代わりにアセトンを用いて行われる。次いで鋼鉄プレートは、少なくとも10分間乾燥のために置かれるが、10時間より長くは置かれない。25×105mmの上記と同じ材料の試料Pが、上記で説明したのと同じやり方で、感圧性接着剤を用いて鋼鉄プレートに固定される。
【0051】
2面が接着性であり、10×15mmの厚さ約1mmの発泡プラスチックで構成されるパッドFが、パッドFの4つの縁部のうちの3つが試料の縁部の5mm内側にくるように、試料Pの一方の端部に固定される。試料の鋼鉄プレートからのいかなる除去および/または試料のいかなる横方向移動も、0.5mmの精度で読み取ることができるように、試料の角の位置が、鋼鉄プレートS上にフェルトペンで印付けされる。この試験は、図13および図14に概略的に示される。
【0052】
表2による試験と同じ重りを用いて荷重をかけられる紙の細片PSが、パッドFに固定される。試料の角が、荷重下で30分間にわたり移動した距離が読み取られる。結果としては、SilGel 612で被覆された試料、またはその他の試料のいずれにおいても、除去または移動は生じなかった。したがって、SilGel 612で被覆された試料の、長期間の徐々にかかる荷重に対する抵抗が、著しく改善されたことを確証することができた。
【0053】
図4は、ストーマドレッシング内に含まれる構成要素6の平面図を示す。構成要素6は、ストーマが通過するための穴8を中央に有する、円形支持部7を備える。支持部7は、その下面上、すなわち構成要素の使用中に使用者の皮膚に向けて方向付けられる面上に、軟らかく皮膚に優しい接着剤の被覆を備える。構成要素6は、支持部7の頂面上に、実際のストーマバッグ(図示せず)用の環状締結領域9(図では破線で示される)を有する。バッグの締結部は、バッグの交換を容易にする接着性連結部を含むことができるが、熱溶接継ぎ目の形の固定された連結部を含むこともできる。この場合も、構成要素の外側または内側縁部に力が集中することを防ぐために、締結領域は、構成要素の両縁部から少なくとも5mmの距離をおいて配置しなければならない。そのような構成要素では、接着剤被覆は、空気が入ることを防がなければならないだけではなく、ストーマからの液体が、構成要素6を取り囲む皮膚上へと外に通過しないことも保証しなければならない。したがって、接着剤被覆がそのような柔軟性と単位面積当たりの重量の組合せを有する場合、接着剤被覆が、この機能を保証するために微小漏れに対する封止ももたらすことは、大いなる利点である。図2および図3に示す構成要素2に適する支持材料および接着剤はまた、本発明のこの応用例にも適する。
【0054】
締結領域が、「構成要素の少なくとも2つの対向する縁部から距離をおいて」配置されると記載されるとき、このことは円形または楕円形を有する構成要素にも当てはまり、そこでは輪郭の半分が1つの縁部を表し、もう半分が対向縁部を表すことに留意されたい。
【0055】
図5および図6は、構成要素10を備える本発明の第3の実施形態を示す。この構成要素は、支持部11を有し、その頂面上に、ホースまたは手術用機器のための固定要素12が、好ましくは接着性ドレッシングによって固定される。固定要素12は、下面が支持部11の頂面に固定される下方部分13、および、たとえばヒンジ14によって下方部分13を横断して折り込むことができる上方部分15を備える。上方部分15は、上方部分が折り込まれた状態にあるときに下方部分に対面する面上に、フック部材16、17を有し、下方部分は、下方および上方部分を互いに解放可能に係止するために、フック部材16、17と協働することができるループ部材18を、その頂面上に有する。当然、ループ部材を代わりに上方部分上に配置し、フック部材を下方部分上に配置することができる。
【0056】
上方および下方部分13、15は、プラスチック材料、不織(NW)または織物材料、あるいは、プラスチックとNWまたはプラスチックと織物材料の積層で製作することができる。NWまたは織物材料が、上方および下方部分に含まれ、またはそれらを構成する場合、別個のループ部材は不必要であり、その代わり、この材料と協働することができるフック部材を使用することが可能である。
【0057】
支持部11はその下面上に、解放紙20によって覆われた接着剤被覆19を有し、解放紙20は、使用前に接着剤被覆用の保護をもたらし、構成要素の適用前に除去される。図2および図3に示す構成要素2に適する支持材料および接着剤はまた、本発明のこの応用例にも適する。この実施形態においても、固定要素12の締結される下方部分13は、構成要素10の縁部から少なくとも5mmの距離をおいて配置されなければならない。
【0058】
図2〜図4を参照しながら説明した実施形態による、構成要素2および6もまた、好ましくは解放紙または同様の保護層を備える。
【0059】
本発明は、医療‐技術的性質の物品を皮膚に固定するための、または皮膚に固定するように設計された医療用物品に含まれる、すべての構成要素に適用可能であることが意図されており、その頂面上に、荷重を支持するための要素を有しまたはそれらを含み、上記で引用した実施形態に限定されない。
【0060】
本発明による構成要素に含まれる材料は、滅菌可能である。
【0061】
説明された実施形態は当然、本発明の範囲内で修正することができる。たとえば、図4に示す構成要素は、円形でなくてもよく、代わりに矩形、四角形、八角形などとすることができ、図5および図6に示す構成要素は、矩形でなくてもよく、代わりに円形とすることができる。さらに、図5および図6に示す実施形態の頂面上の固定要素は、別のやり方で設計することができ、たとえば、フックおよびループ部材は、それぞれ上方および下方部分の全表面を横断して延びることを可能にすることができる。たとえば糊またはスナップなど、フックおよびループ部材以外の固定要素も使用することができる。さらに、少なくとも上方部分が弾性材料で製作されることが有利なことがある。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の内容のみにより限定される。
【符号の説明】
【0062】
1 医療用物品/手術用ドレープ
2 構成要素
3 接着剤
4 支持材料
5 締結領域
6 構成要素
10 構成要素
12 部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療‐技術的性質の物品を皮膚に貼り付けるための、または皮膚に固定されるように設計された医療用物品内に含まれる、構成要素に関し、前記構成要素は、支持材料の層を備え、この支持材料の層は、その下面、すなわち医療‐技術的物品の使用中に皮膚に向けて方向付けられる面が、接着剤の層で被覆される。
【背景技術】
【0002】
自己接着性絆創膏は、医療‐技術的性質の物品を皮膚に固定するため、または皮膚に対する物品の支承を維持するために使用されることが多い。そのような物品の例として、手術用ドレープまたは手術用カバー、点滴ホースなどが挙げられる。自己接着性絆創膏は、たとえばストーマドレッシング内の構成要素など、医療‐技術的物品内に含まれる構成要素であることが多い。
【0003】
医療‐技術的性質のそのような物品が、使用中に緩んでこないこと、および、そうではなくそれらが適用後に定位置に確実に留まることが、極めて重要である。この状況を保証するために、たとえばアクリレート接着剤など、固く強力に接着する接着剤を有する絆創膏を選択することが慣例であった。しかし、固い接着剤は、皮膚に固く貼り付き過ぎ、それらが除去されるときにそれらとともに皮膚細胞を取り去るという欠点を有する。そのような絆創膏を除去する際に生じる痛みに加えて、皮膚細胞の除去により皮膚の関門機能も一時的に損なわれ、かつ、たとえば新しく形成された皮膚など繊細な皮膚が、前記除去中に重大な損傷を受ける危険性もある。接着剤が除去された後に、その表面が多数の皮膚細胞で覆われるということは、接着層の接着力が大幅に損なわれることを意味し、固い接着剤を有する絆創膏は、まず2回以上固定させることができない。
【0004】
特許文献1〜3から、皮膚上に非常に優しく、除去されるときに基本的に死んだ皮膚細胞のみをそれらとともに取り去る、感圧性の軟接着剤を代わりに使用することが知られている。これらの軟接着剤の皮膚に優しい特性の理由は、もちろんこの接着剤が、皮膚にそれほど固く接着しないことであるが、同時に、接着剤層が軟らかいということは、この接着剤が、固い接着剤と比べて皮膚の凹凸をたどる非常に良好な能力を有することを意味する。このことは、接着剤層にとっての接触面積が、固い接着剤にとっての接触面積よりもはるかに大きいことを意味し、医療‐技術的物品の皮膚への十分に高い総合的な接着力を、依然達成することができることを意味する。軟接着剤の皮膚細胞への接着力が低いことは、それらとともに健康な皮膚細胞をそれほど除去することなく、軟接着剤を皮膚から除去することができることを意味する。このことが、使用者の痛みを生じずに軟接着剤を除去することができることを意味することに加え、軟接着剤の層を備える除去されたドレッシング上に皮膚細胞がないことは、そのようなドレッシングを、基本的に同じ接着能力で再び適用することができることを意味する。
【0005】
皮膚に優しい軟接着剤によって皮膚に固定される自己接着性物品の弱点は、短期間の荷重下では良好な接着力を有するにもかかわらず、それらは、低い荷重であっても長期間の荷重下では、不十分な接着力を有することが多いことである。たとえば、ストーマバッグまたは手術用ドレープなど、固定される物品の重力により締結部に荷重がかかる物品では、1時間未満であり得る一定時間後に、ゆっくりと徐々に進行する除去により締結部が緩くなることが見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】スウェーデン国特許第510907号明細書
【特許文献2】国際公開第03/079919号パンフレット
【特許文献3】国際出願PCT/SE2006/000025号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、感圧性軟接着剤によって皮膚に固定される物品の、この弱点をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、医療‐技術的性質の物品を皮膚に貼り付けるための、または皮膚に固定するように設計された医療用物品に含まれる構成要素であって、前記構成要素が、支持材料の層を備え、この支持材料の層は、その下面、すなわち医療‐技術的物品の使用中に皮膚に向かって方向付けられる面が接着剤の層で被覆される、構成要素において、この構成要素が、物品または物品用の要素のための締結領域をその頂面上に有し、その締結領域が、構成要素の少なくとも2つの対向縁部から距離をおいて配置され、接着剤が、皮膚に優しく軟らかい感圧性接着剤であり、この接着剤が、徐々に進行する除去の試験において、0.2N/25mmの荷重で0.05mm/分より速い除去速度を有することを特徴とする構成要素によって達成される。
【0009】
締結領域は、好ましくは、構成要素のすべての縁部から距離をおいて配置される。
【0010】
好ましい一実施形態によれば、接着剤は、徐々に進行する除去の試験において、0.4N/25mmの荷重で0.5mm/分より速い除去速度を有する。
【0011】
さらに接着剤は、有利には、0.2〜4N/25mmの皮膚への接着力および10〜22mmの柔軟性を有する、皮膚に優しく軟らかい感圧性接着剤である。支持層は、好ましくはプラスチック膜であり、有利には、10〜50μmの厚さを有するポリウレタン膜である。
【0012】
締結領域は好ましくは、構成要素の少なくとも、物品の使用中に張力および/またはせん断力によって荷重をかけられる対向縁部から、少なくとも5mmの距離をおいて配置される。
【0013】
本発明の1つの変形形態では、手術用ドレープまたは手術用カバーが、構成要素に固定される。
【0014】
別の変形形態では、構成要素は、ストーマドレッシングの構成要素である。
【0015】
第3の変形形態では、構成要素は、ホースまたは医療‐技術的性質の他の物品を、その頂面に固定するための部材を備える。固定部材は、機械的固定要素のオスまたはメス部品によって形成することができる。
【0016】
次に本発明を、添付の図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術による、患者に締結された手術用ドレープを示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による、患者に締結された手術用ドレープを示す概略断面図である。
【図3】図2の一部を拡大された縮尺で示す概略図である。
【図4】医療‐技術的性質の物品を使用者の皮膚に締結するための、環状構成要素を示す概略平面図である。
【図5】患者の皮膚にホースまたは手術用要素を固定するための構成要素を示す概略平面図である。
【図6】図5の線VI‐VIに沿った概略断面図である。
【図7】皮膚の接着力を測定するための方法を示す概略図である。
【図8】柔軟性を測定するための方法を示す概略図である。
【図9】柔軟性を測定するための方法を示す概略図である。
【図10】接着剤の徐々に進行する除去を測定するための方法を示す概略図である。
【図11】接着剤の徐々に進行する除去を測定するための方法を示す概略図である。
【図12】様々な接着剤の徐々に進行する除去を示す図である。
【図13】本発明による荷重の分布を用いた、接着剤の徐々に進行する除去の測定を示す図である。
【図14】本発明による荷重の分布を用いた、接着剤の徐々に進行する除去の測定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、手術台T上に横たわる患者P上に配置された、従来技術による手術用ドレープAを示す。このドレープはその上縁部に沿って、ドレープを患者に固定する接着剤被覆Bを有する。この締結部は、ドレープの重量によって連続的に荷重がかけられ、かつ、この荷重を支えるように寸法決めされており、この荷重は通常、ドレープが吸収によって、またはドレープの下縁部に配置された液体収集ポーチなどによって液体を受け取ることにより、時間とともに増大する。一方では、軟らかく皮膚に優しい接着剤は、除去されるときにそれらとともに皮膚細胞を取り去らないので、またもう一方では、軟らかく皮膚に優しい接着剤は、皮膚に対する極めて良好な封止の可能性をもたらすので、軟らかく皮膚に優しい接着剤を被覆Bに使用することが近年提案されてきた。しかし、軟らかく皮膚に優しい接着剤を用いると、ドレープが、ゆっくりと徐々に進行する除去により、長期間の荷重下で緩くなる傾向を有する危険性があることが見出されている。
【0019】
図1のドレープAの接着剤被覆Bが、ドレープの重量を受けるとき、皮膚と接着剤との間の力が、接着剤被覆Bの接触面の縁部Cに集中する。ドレープAからの張力は、ほとんどの部分がせん断力として接着剤被覆B内に分配されるが、比較的小さい引裂き力も実際に生じる。こうして、荷重が局部的に接着剤の接着力より大きくなり、縁部Cにおける皮膚と接着剤の間の連結が緩くなる危険性があるが、このことは、荷重をかける力が、縁部からわずかに内側に移動することを意味する。次いでこのプロセスは続き、そのためゆっくりとした漸進的な除去の結果として、ドレープが緩くなる。
【0020】
皮膚と接着剤との間の接触面の1つの縁部上に集中した荷重に対する、軟らかく皮膚に優しい接着剤の上述の感度は、手術用ドレープ以外の物品にも当てはまり、もちろん、接触面の1つの縁部上に集中する短期間の荷重にも当てはまることが理解されるであろう。
【0021】
ドレープの使用中に生じる、吊上げ力を含む他の荷重に応じて、対応する除去プロセスが、他の縁部でも行われることがある。
【0022】
本発明は、第1に、上述の徐々に進行する除去の問題を解決することを目的とする。
【0023】
軟らかく皮膚に優しい接着剤は、上記で述べたように皮膚の外形を極めて良好にたどることができるので、固い接着剤と比較して大きい表面積だけでなく、皮膚へのドレッシングの接着力を高める負圧効果も得られる。この効果は、そのような接着剤被覆を備える物品が皮膚に適用されるときに、接触面下のすべての空気を押し出すことができることにより、適用時に達成される。接触面は、荷重がかかる間に負圧を生み出す原理に完全に基づく、機械的吸引プラグにたとえることができる。この効果は、接着剤被覆が、いわゆる微小漏洩に対する封止ももたらし、すなわち、空気が皮膚のしわまたはひび割れを通り接着剤と皮膚の間の接触面の下に侵入することを妨げるタイプのものである場合に、最も保証される。
【0024】
図2および図3(拡大図)は、本発明による構成要素2を備える、手術用ドレープ1の実施形態の概略図を示す。構成要素2は、軟らかく皮膚に優しい接着剤3の層で被覆された支持部4で構成される。ドレープ1の縁部は、図2および図3では構成要素2の左手および右手縁部から距離をおき構成要素2の頂面上で中央に延びる細い接着剤継ぎ目5によって、支持部4に固定される。継ぎ目5は、たとえばアクリレート接着剤など、任意の適当な接着剤を含むことができる。ドレープ1の縁部を、たとえば溶接継ぎ目など他のタイプの継ぎ目により支持部4に固定することも、もちろん可能である。
【0025】
ドレープ1の荷重は、ドレープの縁部に沿って延びる構成要素2の中央に集中する。次いで荷重は、継ぎ目5の下の領域全体に分配され、図2および図3では左手および右手縁部の方向に減少する。このことは、図1に示す従来技術におけるようにドレープが構成要素2の頂面全体に固定された場合よりも、縁部における引裂き力およびせん断力が小さいという結果を有する。これにより、締結部の縁部の1つの縁部から始まる上述の徐々に進行する除去の結果としてドレープが緩くなるという、危険性が低減される。ドレープの締結部を構成要素2に対してこのように配置することにより、たとえば皮膚の垂直方向の、短期間の大きい荷重に対するこの構成要素の抵抗も増大する。そのような荷重は、構成要素2の中央部分を皮膚から持ち上げることがあるが、空気が縁部を通って侵入しないので、生み出される負圧がここでも、荷重がなくなるとすぐにこれらの中央部分を皮膚に吸い付ける。軟らかく皮膚に優しい接着剤は、中央部分が皮膚から持ち上がるときに接着剤とともに皮膚細胞を取り去らないので、この構成要素は、構成要素が最初の適用後に有するのと同じ高程度の皮膚への接着力を、負圧によってきつく吸引された後にかなりの程度有することになる。
【0026】
多くの場合、構成要素2は、ドレープ1の側縁部、すなわち図2および図3の紙の平面と平行の平面内に横たわる縁部にて終端するので十分となり得るが、構成要素2がこれらの縁部を超えて延びることを可能にすることが、好都合である。これにより、ドレープの側縁部に短期間または長期間の荷重がかけられた後に、構成要素の側縁部が緩くなる危険性が低減される。長期間の荷重によりいくつかの縁部に荷重がかかることがある、他のタイプの医療‐技術的性質の物品では、構成要素の頂面への医療‐技術的性質の物品の締結部が、そのすべての縁部から距離をおいて配置される必要がある。荷重を受ける縁部からの距離は、5mmでなくてはならず、好ましくは10mm、最も好ましくは15mm以上である。
【0027】
構成要素2が、意図されたように機能することができるためには、支持部4が、中央の荷重を構成要素の縁部に直接伝達するほどの剛性を有さず、その代わり、下に横たわる接着剤層内へと力が誘導され、その中で分配されることが重要である。このやり方では、力は接着剤被覆の中央部分上に集中し、縁部に向かう方向に減少し、これにより、構成要素2が緩くなる危険性が大幅に低減される。力が接着剤被覆内においてこの望ましいやり方で受け取られることを保証するためには、支持部4は、伸張後にその元の構成を回復するように、可撓性を有し、伸縮可能であり、かつ、有利には弾性も有さなければならない。支持部のこれらの特性はまた、構成要素2全体が、皮膚の凹凸をたどることができ、こうして構成要素の適用後に、接着剤と皮膚の間に空気ポケットが形成されることを妨げることができることも意味する。支持部は、たとえば10〜50μmの厚さを有するポリウレタン膜など、プラスチック膜とすることができる。使用することができる他のプラスチック材料は、ポリエステルおよびポリエチレンである。プラスチック膜の厚さは、好ましくは50μm未満、より好ましくは10〜30μmである。
【0028】
本発明による使用に適した適当な軟らかく皮膚に優しい接着剤は、たとえば、混合後に架橋し自己接着性エラストマーを形成する、付加硬化型RTV(室温硫化)シリコーンシステムで構成することができる。RTV付加硬化型シリコーンシステムの例は、アルケニルで置換されたポリジオルガノシロキサン、シリコーン原子のいくつかに結合させられた水素原子を含有するオルガノシロキサン、およびまた白金触媒で構成される、ゲル形成組成物を記載するEP0300620Alにおいて挙げられている。
【0029】
Wacker SilGel 612は、市販されているRTVシリコーンシステムである。これは、2成分システムである。形成されるエラストマーの柔軟性および接着力の程度は、2つの成分の比率A:Bを、1.0:0.7から1.0:1.3まで変えることにより変えることができる。
【0030】
乾燥した皮膚に接着する他の軟らかいシリコーンエラストマーの例は、NuSil Technology(米国、カリフォルニア州、Carpintieria)のNuSil MED‐6340、NuSil MED3‐6300、およびNuSil MED 12‐6300、ならびに、Dow Corning Corporation(米国、Midland)のDow Coming 7‐9800である。
【0031】
たとえばNational Starch and Chemical Company(米国、ニュージャージー州、Bridgewater)のDispomelt(登録商標)70‐4647などの熱接着剤など、他の軟らかく皮膚に優しい接着剤もまた、本発明とともに使用することができる。
【0032】
構成要素2は、接着剤被覆が、微小漏洩に対する封止ももたらす場合、すなわち、空気が皮膚内のひび割れ、皮膚のしわ、または皮膚内の他の凹凸を通り接着剤被覆の下に侵入することを防ぐ場合に、最も良好に機能する。そのような空気の進入は、出願される文書の上述の負圧効果を低減し、またはなくす可能性もある。皮膚に優しい接着剤では、驚くべきことに、接着剤が十分に軟らかく、単位面積あたりの十分に大きい重量を有する場合、上述の漏れの危険性をなくすことができ、または少なくとも大幅に低減することができることが見出されている。したがって接着剤被覆3は、10〜22mmの柔軟性、および50g/m2以上の単位面積あたりの重量を有するべきである。接着剤被覆は、好ましくは、75μmの溝深さを用いたMHC漏れ試験に準拠する、耐漏洩性となる。MHC漏れ試験は、特許出願SE0500061‐7により詳しく記載されており、さらなる詳細についてはこれを参照することができる。
【0033】
皮膚の特性は、個々人で異なるので、接着剤被覆の様々な患者の皮膚に接着する能力もまた、当然異なる。接着力はまた、軟接着剤の厚さおよび支持層の機械的特性にも依存する。接着力を測定するために今日使用可能な標準的な方法は、たとえば鋼鉄またはガラスなど様々なタイプのプレートを使用しており、皮膚への接着力の測定に相当する値を提供しない。皮膚への接着剤の接着力についての値は、上記で述べてきたように、図7に概略的に示す、本出願人が開発してきた方法によって測定される。
【0034】
その皮膚への接着力が測定されようとする、自己接着性構成要素の細片が、25×125mmのサイズに切断される。すべての細片が、膜ドレッシングの裏に支持層も備えることに留意されたい(この支持層の機能は、皮膚への適用中に細片を強化することである)。その後、細片は、健康な志願者の背中の皮膚上に置かれる。細片は、指で注意深く押され、次いで、細片の裏の支持層が取り除かれる。最後に細片は、発泡プラスチック製のスポンジ(42×182mm、厚さ=48mm)を用いて皮膚に対して3秒間しっかりと押し付けられ、鋼鉄プレート(50×200mm、厚さ=1mm)上に堅く糊付けされる。押圧は、6kN/m2であると推定される。細片は、皮膚上に2分間置かれる。その後細片は、25mm/秒の速度で除去され、除去力F1が測定される。除去角度、すなわち皮膚の表面と細片の除去される部分との間に形成される鈍角は、135°となるべきである。皮膚に対する細片の接着力は、力F1の平均値である。
【0035】
本発明による構成要素において使用することができる接着剤は、この方法によれば、少なくとも0.2〜4N/25mmの接着力をもたなければならない。接着剤は、好ましくは、1〜2.5N/25mmである。
【0036】
本発明による接着剤は、ASTM D 937およびASTM D 51580に基づく方法により測定される、10mmを超える柔軟性を有さなければならない。いくつかの修正形態が製作されており、以下で説明される。図8および図9は、柔軟性を決定しようする厚さ30mmの接着剤の試料C内に、62.5gの重量を有する円錐体Bを重力により貫入させることにより接着剤の柔軟性を測定するための、この修正された方法を示す。この試料は、60mmの内径および35〜40mmの内高を有する円筒形のガラス容器に、最高30mmの高さの接着剤を充填することによって製作される。シリコーンエラストマーの場合、硬化されていないシリコーンポリマーが、容器内へと注がれ、次いでガラス円筒内で架橋させられてエラストマーとなる。使用される円錐体は、図8に示されており、以下の寸法、a=65mm、b=30mm、c=15mm、およびd=8.5mmを有する。柔軟性を測定するための方法を実行するとき、円錐体Bはまず、図9において破線で示される、円錐体の先端が試料Cの表面をかすめるだけの位置Iへと下げられる。次に円錐体Bは、重力により試料C内へと貫入することができるように解放される。円錐体Bの先端が5秒後に試料C内に貫入したmmの数が測定され、貫入値Pとなり、この貫入値Pが大きいほど試料が軟らかい。貫入値Pは、本発明において使用される柔軟性の測定値となる。この方法は、Sommer&Runge KG(独国)の貫入試験機PNR10を用いて実行される。
【0037】
本出願人は、接着剤の徐々に進行する除去を測定するための試験方法を開発してきた。接着剤のこの徐々に進行する特性を決定するこの方法は、表面が接着剤で完全に被覆されている試料にのみ当てはまることに留意されたい。
【0038】
25×105mmの試料Pは、試験されるべき接着剤で被覆された材料から切り出される。
【0039】
傷のない鋼鉄プレートS(ASTM A666‐94 Aに準ずる、50×200mm)が、n‐ヘプタンを浸したリントフリーの吸収材料で3回洗浄される。最後に、最終洗浄が、n‐ヘプタンの代わりにアセトンを用いて行われる。次いで鋼鉄プレートは、少なくとも10分間乾燥のために置かれるが、10時間より長くは置かれない。
【0040】
試料Pは、強力なテープTを用いて一端部が強化される。この1片のテープ(前記1片は長さ4cm)は、重量が測定され、次いで、図10に概略的に示すように、試料の端部の周りで折り曲げられ固定される。接着剤で被覆された膜の試料Pでは、接着剤で被覆された膜は、接着剤が鋼鉄プレートに向かって方向付けられた状態でプレート上に置かれ、その後、テープが試料の一方の縁部を覆って折り曲げられ、膜の適用を容易にする強化層が、注意深く除去される。重りWを自由にかけることを可能にするように、テープ内に試料の端部を通して穴が開けられる。試料上に圧力がかからないことを保証するために、試料が鋼鉄プレート上に注意深く置かれることが重要である。取り去られるべき強化層をもたない試料では、試料が鋼鉄プレートに固定される前に、テープを試料の端部に固定することができる。
【0041】
その後、1片の発泡ポリウレタン(Rynel Inc.(米国、メイン州、Boothbay)のL00562‐6、1.6mm)が、鋼鉄プレート上の試料を覆って置かれ、発泡ポリウレタン片上で5mm/秒の速度で前後に1回転がされるローラ(幅=45mm、重量=2040g、半径=47mm)により、試料がプレートにしっかり固定される。その後、試料は1時間そのまま置かれる。
【0042】
1時間が経過した後、重りWが試料Pのテープを有する端部内に固定され、その端部は、重りが図11に示すように真っ直ぐ吊り下がるように外側に折り曲げられ、ゼロ地点が、鋼鉄プレート上に印付けされる。図11に示すように、試料のうちの8cmが鋼鉄プレートに固定され、2.5cmが重りとともに吊り下がるように、ゼロ地点が、テープ片の端部から2.5cmのところに配置される。時間が計り始められ、重りおよび接着剤のタイプに応じて、時間間隔が変えられ、鋼鉄プレート上に印が付けられる。次いで、これらの印が計算されて、試料の除去速度がmm/分単位で与えられる。
【0043】
【表1】
【0044】
上述の製品を、0.05、0.1、0.2、0.5、1、および2.5N/25mmの力に対応する様々な重量で試験した。
【0045】
これらの試験の結果を、図12および以下の表に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
行われる試験では、接着剤は、このように局部的な線形荷重を受ける。したがって、試験の結果は、試験された接着剤の局部的接着力を指示する測定値になるということができる。試験から明らかなように、本発明による軟らかく皮膚に優しい接着剤は、皮膚への固定に適しており、0.05〜0.2N/25mmの比較的小さく長期間の荷重で基板から緩むが、試験されたその他の製品の接着剤は、基板に固定されたままとなる。このことは、皮膚への親和性およびそのような接着剤の他の良好な特性に大幅に寄与するのは、軟らかく皮膚に敏感な接着剤の、皮膚への弱い局部的接着力であるという理論を確証する。実行された試験は、接着剤の局部的接着力の一種の尺度になるということができる。
【0048】
接着剤が、本発明により軟らかく皮膚に優しいと考えられるためには、図12の2つの×印の間に引かれる線より左(矢印Aを参照)にこなければならない。したがって除去速度は、0.2N/125mmの荷重で0.05mm/分より速く、0.4N/125mmの荷重で0.5mm/分より速くなければならない。
【0049】
本発明の効果を確認するために、以下の試験を実施した。
【0050】
傷のない鋼鉄プレートS(ASTM A666‐94 Aに準ずる、50×200mm)が、n‐ヘプタンを浸したリントフリーの吸収材料で3回洗浄される。最後に、最終洗浄が、n‐ヘプタンの代わりにアセトンを用いて行われる。次いで鋼鉄プレートは、少なくとも10分間乾燥のために置かれるが、10時間より長くは置かれない。25×105mmの上記と同じ材料の試料Pが、上記で説明したのと同じやり方で、感圧性接着剤を用いて鋼鉄プレートに固定される。
【0051】
2面が接着性であり、10×15mmの厚さ約1mmの発泡プラスチックで構成されるパッドFが、パッドFの4つの縁部のうちの3つが試料の縁部の5mm内側にくるように、試料Pの一方の端部に固定される。試料の鋼鉄プレートからのいかなる除去および/または試料のいかなる横方向移動も、0.5mmの精度で読み取ることができるように、試料の角の位置が、鋼鉄プレートS上にフェルトペンで印付けされる。この試験は、図13および図14に概略的に示される。
【0052】
表2による試験と同じ重りを用いて荷重をかけられる紙の細片PSが、パッドFに固定される。試料の角が、荷重下で30分間にわたり移動した距離が読み取られる。結果としては、SilGel 612で被覆された試料、またはその他の試料のいずれにおいても、除去または移動は生じなかった。したがって、SilGel 612で被覆された試料の、長期間の徐々にかかる荷重に対する抵抗が、著しく改善されたことを確証することができた。
【0053】
図4は、ストーマドレッシング内に含まれる構成要素6の平面図を示す。構成要素6は、ストーマが通過するための穴8を中央に有する、円形支持部7を備える。支持部7は、その下面上、すなわち構成要素の使用中に使用者の皮膚に向けて方向付けられる面上に、軟らかく皮膚に優しい接着剤の被覆を備える。構成要素6は、支持部7の頂面上に、実際のストーマバッグ(図示せず)用の環状締結領域9(図では破線で示される)を有する。バッグの締結部は、バッグの交換を容易にする接着性連結部を含むことができるが、熱溶接継ぎ目の形の固定された連結部を含むこともできる。この場合も、構成要素の外側または内側縁部に力が集中することを防ぐために、締結領域は、構成要素の両縁部から少なくとも5mmの距離をおいて配置しなければならない。そのような構成要素では、接着剤被覆は、空気が入ることを防がなければならないだけではなく、ストーマからの液体が、構成要素6を取り囲む皮膚上へと外に通過しないことも保証しなければならない。したがって、接着剤被覆がそのような柔軟性と単位面積当たりの重量の組合せを有する場合、接着剤被覆が、この機能を保証するために微小漏れに対する封止ももたらすことは、大いなる利点である。図2および図3に示す構成要素2に適する支持材料および接着剤はまた、本発明のこの応用例にも適する。
【0054】
締結領域が、「構成要素の少なくとも2つの対向する縁部から距離をおいて」配置されると記載されるとき、このことは円形または楕円形を有する構成要素にも当てはまり、そこでは輪郭の半分が1つの縁部を表し、もう半分が対向縁部を表すことに留意されたい。
【0055】
図5および図6は、構成要素10を備える本発明の第3の実施形態を示す。この構成要素は、支持部11を有し、その頂面上に、ホースまたは手術用機器のための固定要素12が、好ましくは接着性ドレッシングによって固定される。固定要素12は、下面が支持部11の頂面に固定される下方部分13、および、たとえばヒンジ14によって下方部分13を横断して折り込むことができる上方部分15を備える。上方部分15は、上方部分が折り込まれた状態にあるときに下方部分に対面する面上に、フック部材16、17を有し、下方部分は、下方および上方部分を互いに解放可能に係止するために、フック部材16、17と協働することができるループ部材18を、その頂面上に有する。当然、ループ部材を代わりに上方部分上に配置し、フック部材を下方部分上に配置することができる。
【0056】
上方および下方部分13、15は、プラスチック材料、不織(NW)または織物材料、あるいは、プラスチックとNWまたはプラスチックと織物材料の積層で製作することができる。NWまたは織物材料が、上方および下方部分に含まれ、またはそれらを構成する場合、別個のループ部材は不必要であり、その代わり、この材料と協働することができるフック部材を使用することが可能である。
【0057】
支持部11はその下面上に、解放紙20によって覆われた接着剤被覆19を有し、解放紙20は、使用前に接着剤被覆用の保護をもたらし、構成要素の適用前に除去される。図2および図3に示す構成要素2に適する支持材料および接着剤はまた、本発明のこの応用例にも適する。この実施形態においても、固定要素12の締結される下方部分13は、構成要素10の縁部から少なくとも5mmの距離をおいて配置されなければならない。
【0058】
図2〜図4を参照しながら説明した実施形態による、構成要素2および6もまた、好ましくは解放紙または同様の保護層を備える。
【0059】
本発明は、医療‐技術的性質の物品を皮膚に固定するための、または皮膚に固定するように設計された医療用物品に含まれる、すべての構成要素に適用可能であることが意図されており、その頂面上に、荷重を支持するための要素を有しまたはそれらを含み、上記で引用した実施形態に限定されない。
【0060】
本発明による構成要素に含まれる材料は、滅菌可能である。
【0061】
説明された実施形態は当然、本発明の範囲内で修正することができる。たとえば、図4に示す構成要素は、円形でなくてもよく、代わりに矩形、四角形、八角形などとすることができ、図5および図6に示す構成要素は、矩形でなくてもよく、代わりに円形とすることができる。さらに、図5および図6に示す実施形態の頂面上の固定要素は、別のやり方で設計することができ、たとえば、フックおよびループ部材は、それぞれ上方および下方部分の全表面を横断して延びることを可能にすることができる。たとえば糊またはスナップなど、フックおよびループ部材以外の固定要素も使用することができる。さらに、少なくとも上方部分が弾性材料で製作されることが有利なことがある。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の内容のみにより限定される。
【符号の説明】
【0062】
1 医療用物品/手術用ドレープ
2 構成要素
3 接着剤
4 支持材料
5 締結領域
6 構成要素
10 構成要素
12 部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療‐技術的性質の物品を皮膚に貼り付けるための、または皮膚に固定するように設計された医療用物品(1)に含まれる、構成要素(2)であって、前記構成要素が、支持材料(4)の層を備え、前記支持材料(4)の層は、その下面、すなわち前記医療‐技術的物品の使用中に前記皮膚に向かって方向付けられる面が接着剤(3)の層で被覆される、構成要素(2)において、前記構成要素(2)が、前記物品または前記物品用の要素のための締結領域(5)をその頂面上に有し、その締結領域が、前記構成要素の少なくとも2つの対向縁部から距離をおいて配置され、前記接着剤(3)が、皮膚に優しく軟らかい感圧性接着剤であり、前記接着剤が、徐々に進行する除去の試験において、0.2N/25mmの荷重で0.05mm/分より速い除去速度を有することを特徴とする構成要素(2)。
【請求項2】
前記締結領域が、前記構成要素のすべての前記縁部から距離をおいて配置されることを特徴とする請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記接着剤(3)が、徐々に進行する除去の試験において、0.4N/25mmの荷重で0.5mm/分より速い除去速度を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構成要素。
【請求項4】
前記接着剤(3)が、皮膚への0.2〜4N/25mmの接着力、10〜22mmの柔軟性、および少なくとも50g/m2の単位面積当たりの重量を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の構成要素。
【請求項5】
前記支持層(4)がプラスチック膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の構成要素。
【請求項6】
前記プラスチック膜(4)が、10〜15μmの厚さを有するポリウレタン膜であることを特徴とする請求項5に記載の構成要素。
【請求項7】
前記締結領域(5)が、前記構成要素(2)の少なくとも、前記物品の使用中に張力および/またはせん断力によって荷重がかけられる対向縁部から、少なくとも5mmの距離をおいて配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の構成要素(2)。
【請求項8】
手術用ドレープ(1)または手術用カバーが、前記構成要素に固定されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の構成要素(2)。
【請求項9】
ストーマドレッシング内に構成要素(6)として含まれることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の構成要素(6)。
【請求項10】
ホースまたは医療‐技術的性質の他の物品を、前記構成要素(10)の前記頂面に固定するための部材(12)を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の構成要素(10)。
【請求項11】
前記固定部材が、機械的固定要素のメスまたはオス部品によって形成されることを特徴とする請求項10に記載の構成要素。
【請求項1】
医療‐技術的性質の物品を皮膚に貼り付けるための、または皮膚に固定するように設計された医療用物品(1)に含まれる、構成要素(2)であって、前記構成要素が、支持材料(4)の層を備え、前記支持材料(4)の層は、その下面、すなわち前記医療‐技術的物品の使用中に前記皮膚に向かって方向付けられる面が接着剤(3)の層で被覆される、構成要素(2)において、前記構成要素(2)が、前記物品または前記物品用の要素のための締結領域(5)をその頂面上に有し、その締結領域が、前記構成要素の少なくとも2つの対向縁部から距離をおいて配置され、前記接着剤(3)が、皮膚に優しく軟らかい感圧性接着剤であり、前記接着剤が、徐々に進行する除去の試験において、0.2N/25mmの荷重で0.05mm/分より速い除去速度を有することを特徴とする構成要素(2)。
【請求項2】
前記締結領域が、前記構成要素のすべての前記縁部から距離をおいて配置されることを特徴とする請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記接着剤(3)が、徐々に進行する除去の試験において、0.4N/25mmの荷重で0.5mm/分より速い除去速度を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構成要素。
【請求項4】
前記接着剤(3)が、皮膚への0.2〜4N/25mmの接着力、10〜22mmの柔軟性、および少なくとも50g/m2の単位面積当たりの重量を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の構成要素。
【請求項5】
前記支持層(4)がプラスチック膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の構成要素。
【請求項6】
前記プラスチック膜(4)が、10〜15μmの厚さを有するポリウレタン膜であることを特徴とする請求項5に記載の構成要素。
【請求項7】
前記締結領域(5)が、前記構成要素(2)の少なくとも、前記物品の使用中に張力および/またはせん断力によって荷重がかけられる対向縁部から、少なくとも5mmの距離をおいて配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の構成要素(2)。
【請求項8】
手術用ドレープ(1)または手術用カバーが、前記構成要素に固定されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の構成要素(2)。
【請求項9】
ストーマドレッシング内に構成要素(6)として含まれることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の構成要素(6)。
【請求項10】
ホースまたは医療‐技術的性質の他の物品を、前記構成要素(10)の前記頂面に固定するための部材(12)を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の構成要素(10)。
【請求項11】
前記固定部材が、機械的固定要素のメスまたはオス部品によって形成されることを特徴とする請求項10に記載の構成要素。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−537769(P2010−537769A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523979(P2010−523979)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050514
【国際公開番号】WO2009/031948
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(507226709)メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー (30)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050514
【国際公開番号】WO2009/031948
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(507226709)メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー (30)
【Fターム(参考)】
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