説明

医療システム及び医療機器の制御方法

【課題】医療機器の正常な動作を妨げる事情の発生を迅速に報知等することができる医療システム等を提供すること。
【解決手段】医療従事者端末90と、医療処方情報を蓄積する医療処方情報装置10と、薬収容部30と、薬を供給する薬搬送部33と、薬搬送部の先端部に形成され、患者の身体内に、少なくとも、その一部分が挿入される接続部32と、薬の搬送を制御する薬制御部70と、を有し、薬制御部は、患者側に配置されている患者側通信部51と通信するため医療機器側通信部71を有し、医療機器側通信部は、患者側通信部が発した信号を、少なくとも、患者の身体、接続部及び薬搬送部を介して受信し、患者側通信部が送信する間欠信号を受信したか否かを判断する信号受信判断部85を備える医療システム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、患者等の治療に用いる医療システム及び医療機器の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者等の治療のために使用される例えば、輸液ポンプ等の医療機器は、患者等の治療のために用いられている(例えば、特許文献1)
このような輸液ポンプ等の医療機器は、薬液を患者に供給するために点滴等に配置されて使用される。すなわち、輸液ポンプは、点滴にセットされた輸液バッグ内の薬液を薬液搬送用の接続チューブ等を介して患者に送液する際に、その送液量等を制御するために使用される。
また、接続チューブは、その先端側に穿刺針等を有し、この穿刺針の先端を患者の腕等の血管内に到達するように配置することで、輸液バッグ内の薬液を適切に患者に供給することができる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―34845公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、輸液ポンプ等の動作中、すなわち、薬である例えば、薬液等の送液中に穿刺針の先端が患者の血管等の身体から抜けることがある。この状態でも患者等が気がつかず、そのまま放置されると輸液漏れ等が生じ問題となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、医療機器の正常な動作を妨げる事情の発生を迅速に報知等することができる医療システム及び医療機器の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明にあっては、 医療従事者が所持する医療従事者端末と、患者の医療処方情報を蓄積する医療処方情報装置と、薬を収容するための薬収容部と、前記薬を患者側に供給するための薬搬送部と、前記薬搬送部の先端部に形成され、患者の身体内に、少なくとも、その一部分が挿入される接続部と、前記薬の搬送を制御する薬制御部と、を有する医療システムであって、前記薬制御部は、患者側に配置されている患者側通信部と通信するため医療機器側通信部を有し、前記医療機器側通信部は、前記患者側通信部が発した信号を、少なくとも、患者の身体、前記接続部及び前記薬搬送部を介して受信する構成となり、前記患者側通信部が送信する間欠信号を受信したか否かを判断する信号受信判断部を備えることを特徴とする医療システムにより達成される。
【0007】
前記構成によれば、薬制御部の医療機器側通信部は、患者側通信部が発した信号を、少なくとも、患者の身体、接続部及び薬搬送部を介して受信する構成となっており、薬制御部は、患者側通信部が送信する間欠信号を受信したか否かを判断する信号受信判断部を有する。
このため、何らかの原因で、接続部が患者の血管等から外れると、患者側通信部の信号は、患者の身体から接続部に伝わることがない。
この信号である間欠信号を受信したか否かを判断する信号受信判断部は、信号を受信しないことを検知することができる。したがって、医療機器は、速やかに且つ確実に、穿刺針等の接続部が患者から外れたことを検知できる。
このように、前記構成では、医療機器の正常な動作を妨げる事情の発生を迅速に報知等することができる。
【0008】
好ましくは、前記信号受信判断部は、前記間欠信号を所定時間内に受信したか否かを判断する構成となっていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、信号受信判断部は、間欠信号を所定時間内に受信したか否かを判断する構成となっている。
したがって、薬である例えば、薬液の搬送を制御する輸液ポンプ等が接続部の外れ等を検知することができるので、その後の例えば、送液停止等を迅速に処理することができる。
また、信号受信判断部は、間欠信号を所定時間内に受信したか否かで、接続部の外れ等を判断する。すなわち、複雑な判断工程を経ないため、薬制御部が判断間違い等を生じ難い構成ともなっている。
【0010】
好ましくは、前記患者側通信部と前記接続部との間の通信は、患者の身体を介して行われる構成となっていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によれば、患者側通信部と接続部との間の通信は、患者の身体を介して行われる構成となっているので、患者の血管等の身体に接続部が適正に配置するだけで、通信が行われ、この接続部が外れるだけで、通信が中断されるので、極めて簡易な構成とすることができる。したがって、新たなシステム等を構築する必要がないので、導入コストを低く抑えることができる。
【0012】
好ましくは、前記医療従事者端末は、医療従事者側通信部を有し、この医療従事者側通信部は、当該医療従事者の身体を介して前記医療処方情報装置と通信し、特定の患者の前記医療処方情報を取得することができ、前記医療従事者側通信部は、前記医療処方情報装置から取得した特定の患者の前記医療処方情報を、当該医療従事者の身体を介して、前記薬制御部に送信することが可能となっていることを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、医療従事者端末は、医療従事者側通信部を有し、この医療従事者側通信部は、当該医療従事者の身体を介して医療処方情報装置と通信し、特定の患者の前記医療処方情報を取得することができ、医療従事者側通信装置は、医療処方情報装置から取得した特定の患者の医療処方情報を、当該医療従事者の身体を介して、薬制御部に送信することが可能となっている。
したがって、医療従事者は、容易に且つ精度良く、薬制御部に医療処方情報を入力することができる。
【0014】
好ましくは、患者が所持する患者端末を有し、前記医療処方情報には、医療従事者の識別情報及び患者の識別情報を含み、前記薬制御部は、前記医療従事者端末から取得した医療処方情報に含まれる患者の識別情報と、前記患者端末から取得した当該患者端末を所持す患者の識別情報とを比較し、これらが一致した場合に、当該薬制御部の動作を開始させる構成となっていることを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、薬制御部は、医療従事者端末から取得した医療処方情報に含まれる患者の識別情報と、患者端末から取得した当該患者端末を所持し患者の識別情報とを比較し、これらが一致した場合に、当該薬制御部の動作を開始させる構成となっている。
このため、患者の取り違え等を防止でき、権限のない者による薬制御部の操作等も未然に防止することができる。
【0016】
上記目的は、本発明にあっては、薬を収容するための薬収容部と、前記薬を患者側に供給するための薬搬送部と、前記薬搬送部の先端部に形成され、患者の身体内に、少なくとも、その一部分が挿入される接続部と、前記薬の搬送を制御する薬制御部と、を備え、患者側に配置されている患者側通信部と通信するため医療機器側通信部を有し、前記医療機器側通信部は、前記患者側通信部が発した信号を、少なくとも、患者の身体、前記接続部及び前記薬搬送部を介して受信する構成となり、前記薬制御部は、前記患者側通信部が送信する間欠信号を受信したか否かを判断する信号受信判断部を備えることを特徴とする医療機器の制御方法により達成される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、医療機器の正常な動作を妨げる事情の発生を迅速に報知等することができる医療システム及び医療機器の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の医療システムを示す概略図である。
【図2】輸液セットを示す概略図である。
【図3】患者、看護師及び輸液ポンプを例とした人体通信の概略説明図である。
【図4】図1の電子カルテ装置及び看護師端末の主な構成を示す概略ブロック図である。
【図5】図1の患者端末の主な構成を示す概略ブロック図である。
【図6】図1の輸液ポンプの主な構成を示す概略ブロック図である。
【図7】図1の看護師端末が、電子カルテ装置からオーダー情報を取得等する工程を示す概略フローチャートである。
【図8】輸液ポンプ接続工程及び輸液ポンプ動作工程を示す概略フローチャートである。
【図9】輸液ポンプ接続工程及び輸液ポンプ動作工程を示す他の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0020】
図1は、本発明の医療システム1を示す概略図である。医療システム1は、図1に示すように、患者のための医療処方情報である例えば、オーダー情報(薬剤等処方データ)を含む電子カルテを蓄積する電子カルテ装置10(医療処方情報装置の一例)を有している。
この電子カルテは、例えば、患者の識別番号(患者の識別情報の一例)毎に電子カルテ装置10内に蓄積され、電子カルテ装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等となっている。
【0021】
また、図1の医療システム1は、患者が所持する患者端末50を有すると共に、患者の治療に用いる薬制御部である例えば、輸液ポンプ70を有している。
この輸液ポンプ70は、患者の側に配置される輸液セット30に対し装着される。
【0022】
図2は、輸液セット30を示す概略図である。図2に示すように、輸液セット30は、その一端側に薬である例えば、薬液を収容する袋状に形成された薬収容部である例えば薬液バッグ31を有すると共に、他端側には、図2に示すように、患者の静脈の血管等の身体に、薬液を注入するために、少なくとも、その一部差し込まれる接続部である例えば、穿刺針32を有している。
この穿刺針32は、注射針と同様の小さな径の穴を有し、その中を薬液が流れ、患者の身体に注入されると共に、その一部である先端側が患者の身体内に挿入状態で維持される、所謂、留置針となっている。
したがって、この穿刺針32の近傍が患者の静脈等にテープ等で固定されることになる。
【0023】
これら、穿刺針32と薬液バッグ31を繋ぐように配置されるのが、図2に示す薬搬送部である接続チューブ33である。接続チューブ33は、可撓性の樹脂等で形成された中空の長尺部材である。
そして、この接続チューブ33を挟むように配置されるのが、図1に輸液ポンプ70である。
この輸液ポンプ70は、図2の輸液セット30の接続チューブ33に配置され、この輸液ポンプ70によって、薬液等を患者等へ供給する際、制御することが可能な構成となっている。
具体的には、輸液ポンプ70は、弾力が高く自己拡張性のある接続チューブ33を機械に挟み込んで、自己のローラーで押すことにより予め設定された薬液が患者に提供できる構成となっている。
なお、輸液セット30及び輸液ポンプ70が、医療機器の一例となっている。
【0024】
さらに、図1の医療システム1は、患者の処置等を行う医療従事者である例えば、看護師が所持する医療従事者端末である例えば、看護師端末90も備えている。
このうち、患者端末50及び看護師端末90は、それぞれ、人が所持するため例えば、腕時計型となっており、患者や看護師は、その腕に配置することが可能な構成となっている。
なお、これら患者端末50及び看護師端末90は、腕時計型に限らず、携帯電話型、B5(A4)ノート型、メガネ型、アクセサリー型(ネックレス、ピアス)、ペン型、ベルト型、ベルト装着型(歩数計、活動量計等)等であってもよい。
【0025】
そして、これら電子カルテ装置10、患者端末50、輸液ポンプ70及び看護師端末90は、それぞれ、電子カルテ側通信装置11、患者側通信部である例えば、患者側通信装置51、医療機器側通信部である例えば、輸液ポンプ側通信装置71及び医療従事者側通信部である例えば、看護師側通信装置91を有し、相互に通信可能な構成となり、この通信は、所謂、人体通信方式となっている。
これら各通信装置は、それぞれ、送信機能と受信機能を共に有してもよく、また、それぞれの役割に応じて、いずれか一方のみの機能を有する構成としてもよい。
【0026】
この人体通信方式は、人の体に微弱な電流等を流すことで行われる通信であり、専用の装置を装着した人が他の同様の装置を装着した人等に触れることで通信が可能となる方式である。また、人体通信方式は、通信に際し、電流を流す場合と電界を発生させる場合があり、それぞれ、電流方式、電界方式と呼ばれる。
電流方式の場合は、人体の表面に数百マイクロアンペアの電流を流すことで通信を行う。実施の形態では、電流方式の人体通信方式を例に以下、説明する
【0027】
図3は、患者乙、看護師甲及び輸液ポンプ70を例とした人体通信の概略説明図である。
先ず、患者端末50を患者乙の静脈の近傍等に装着し、ベッドに寝ている患者乙に、輸液セット30の穿刺針32が挿入されている場合を例に説明する。
図3の患者乙の静脈に、輸液セット30の穿刺針32が挿入されている状態では、患者端末50は、図3の破線E1で示すように、患者乙、輸液セット30の穿刺針32、接続チューブ33を介して、輸液ポンプ70と繋がっている。
そして、この接続経路に電流が流れることで、患者側通信装置51と輸液ポンプ側通信装置71とは、人体通信等で通信可能となる。
【0028】
このように、図3の電流E1は、患者側通信装置51から患者乙の人体上を流れ、穿刺針32、接続チューブ33を介して、輸液ポンプ側通信装置71に到達することになり、この電流の流れにより、通信が可能となる。
また、本実施の形態では、患者側通信装置51は、穿刺針32が患者乙の静脈に挿入されている間だけ、輸液ポンプ側通信装置71と通信可能となり、何らかの原因で、穿刺針32が患者乙の静脈から外れた場合は、通信不可となる。
【0029】
また、上述のように、患者側通信装置51と輸液ポンプ側通信装置71が通信可能となっている状態で、看護師端末90を所持する看護師甲が、図3に示すように、患者乙の身体に接触すると、看護師端末90は、図3の破線E2で示すように、看護師甲、患者乙、輸液セット30の穿刺針32、接続チューブ33を介して、輸液ポンプ70に繋がっている。
そして、この接続経路に電流が流れることで、看護師側通信装置91と輸液ポンプ側通信装置71とは、人体通信等で通信可能となる。
【0030】
一方、図3のように、看護師端末90を所持している看護師丙が、患者乙に接触せず、直接、輸液ポンプ70に接触した場合は、図3の破線E3で示すように、看護師端末90は、看護師丙を介して、輸液ポンプ70に繋がっている。
そして、この接続経路に電流が流れることで、看護師側通信装置91と輸液ポンプ側通信装置71とは、人体通信等で通信可能となる。
【0031】
図1に示す、電子カルテ装置10、患者端末50、輸液ポンプ70及び看護師端末90は、それぞれ、コンピュータを有し、コンピュータは、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有し、バスを介して接続されている。
【0032】
図4は、図1の電子カルテ装置10及び看護師端末90の主な構成を示す概略ブロック図である。
図4に示すように、電子カルテ装置10は、電子カルテ制御部12を有する。また、電子カルテ装置10は、上述の電子カルテ側通信装置11、情報を入力するための電子カルテ入力装置13及び情報を表示するための電子カルテ表示装置14等を有し、これらは、電子カルテ制御部12で制御されている。
なお、図3の電子カルテ装置10の記憶部や処理部等については、後述する。
【0033】
図4に示すように、看護師端末90は、看護師端末制御部92を有する。また、看護師端末90は、上述の看護師側通信装置91、看護師端末入力装置93、看護師端末表示装置94等を有し、これらは、看護師端末制御部92で制御されている。
なお、図4の看護師端末90の記憶部等については、後述する。
【0034】
図5は、図1の患者端末50の主な構成を示す概略ブロック図である。
図5に示すように、患者端末50は、患者端末制御部52を有する。また、患者端末50は、上述の患者側通信装置51を有し、これは、患者端末制御部52で制御されている。
なお、図5の患者端末50の記憶部や処理部等については、後述する。
【0035】
図6は、図1の輸液ポンプ70の主な構成を示す概略ブロック図である。
図6に示すように、輸液ポンプ70は、輸液ポンプ制御部72を有している。また、輸液ポンプ70は、上述の輸液ポンプ側通信装置71、輸液ポンプ入力装置73、輸液ポンプ表示装置74そして、輸液ポンプ本来の機能を発揮する部分である輸液ポンプ本体75を有し、これらは、輸液ポンプ制御部72で制御されている。
【0036】
また、輸液ポンプ70は、計時装置80、警報を発するアラーム装置81及びアラームを停止するアラーム停止装置82も有し、これらも輸液ポンプ制御部72で制御されている。
なお、図6の輸液ポンプ70の記憶部や処理部等については、後述する。
【0037】
図7乃至図9は、本実施の形態にかかる医療システム1の主な動作等を示す概略フローチャートである。
本実施の形態では、看護師甲が図1に示す看護師端末90を所持し、電子カルテ装置10から自己の担当の患者乙のオーダー情報(薬剤等処方データ)を取得し、輸液ポンプ70を動作させた後、輸液ポンプ70が、穿刺針32の患者乙の静脈からの外れ等を判断等するという一連の動作を例に以下、説明する。
また、この例を説明するにあたり、図7乃至図9のフローチャートに沿って説明すると共に、図1乃至図6の記憶部や処理部等についても説明する。
【0038】
図7は、図1の看護師端末90が、電子カルテ装置10からオーダー情報を取得等する工程を示す概略フローチャートである。
先ず、看護師甲は、図1の看護師端末90を腕等に装着して、電子カルテ装置10の筐体等に、その手等を触れる。
すると、看護師側通信端末91と電子カルテ側通信装置11との間に、図3で示すような人体通信が行われ、看護師端末90から電子カルテ装置10に、オーダー情報取得要求が送信される。
【0039】
なお、この際、看護師端末90は、図4の看護師識別番号記憶部95内に記憶されている自己の看護師識別番号(医療従事者の識別情報の一例)を電子カルテ装置10へ送信する。
次いで、ST1で、電子カルテ装置10は、看護師端末90からオーダー情報取得要求が送信されたか否かを判断する。
【0040】
ST1で、電子カルテ装置10が看護師端末90からのオーダー情報取得要求を受信したと判断した場合は、ST2へ進む。
ST2では、図4の電子カルテ装置10のオーダー情報検索決定処理部(プログラム)15が、オーダー情報記憶部16を参照して、当該看護師端末90の看護師の看護師識別番号と関連付いているオーダー情報が存在するか否かを探す。
ところで、図4の電子カルテ装置10のオーダー情報記憶部16内では、患者毎の薬剤等処方データであるオーダー情報が、担当看護師の看護師識別番号と関連付けて記憶されている。
このため、ST2で、電子カルテ装置10は、アクセスしてきた当該看護師の看護師識別番号から、当該看護師が担当する患者乙のオーダー情報が存在する否かを容易に判断することができる。
【0041】
なお、「オーダー情報」には、処方された薬剤名、医師識別番号、患者識別番号、看護師識別番号等が含まれている。
ST2で、図4のオーダー情報記憶部16内に、当該看護師識別番号と関連付けられているオーダー情報があった場合は、ST3へ進む。
ST3では、電子カルテ装置10が、看護師端末90に、当該看護師識別番号と関連付けられている患者乙のオーダー情報を送信する。
したがって、看護師甲は、自己が担当する患者乙のオーダー情報のみを効率的に、自己の看護師端末90に取得することができる。また、このオーダー情報は自動的に且つ間違いなく送信されるので、極めて信頼性の高い情報となる。
【0042】
なお、本実施の形態では、当該看護師識別番号と関連付けられている患者乙のオーダー情報を送信するとしているが、アクセスした日又はその前日のオーダー情報に限り、送信する構成としてもよい。
【0043】
一方、ST2で、図4のオーダー情報記録部16には、当該看護師の看護師識別番号と関連付けられているオーダー情報が存在しない場合は、ST4へ進む。
すなわち、電子カルテ装置10は、図4のオーダー情報記憶部16内のオーダー情報のうち、いずれの看護師識別番号とも関連付けられていないオーダー情報を選択し、看護師端末90へ送信する。
したがって、看護師甲は、自己が担当する患者乙のオーダー情報に近い情報を、選択的して看護師端末90に取得することができることになり、自己の担当の患者乙のオーダー情報を探し易くなる。これにより、看護師甲の負担を軽減させることができる。
【0044】
次いで、ST5へ進む。ST5では、看護師端末90が、電子カルテ装置10から送信されたオーダー情報を図4のオーダー情報記憶部96に記憶すると共に、図4の看護師端末表示装置94に表示する。
次いで、ST6へ進む。ST6では、図4の看護師端末90のオーダー情報選択処理部(プログラム)97が動作し、看護師甲が図4の看護師端末入力装置93で、看護師端末表示装置94に表示されているオーダー情報から特定の患者乙のオーダー情報を選択したか否かを判断する。
【0045】
ST6で、看護師端末入力装置93で、オーダー情報が選択されると、ST7へ進む。ST7では、看護師端末入力装置93で選択された選択オーダー情報(処方された薬剤名、医師識別番号、患者識別番号、看護師識別番号等)が,図4の看護師端末90の選択済みオーダー情報記憶部98に記憶される。
【0046】
以上で、図7の工程が終了するが、この図7の工程では、看護師端末90が、電子カルテ装置10から簡易且つ正確に、所望の患者乙のオーダー情報を迅速に取得することができる。
また、従来は、電子カルテ装置からオーダー情報を取得するには、コンピュータの操作をマスターする必要があり、看護師に負担を強いていた。この点、本実施の形態では、看護師は、電子カルテ装置10に接触するだけで、必要なオーダー情報を取得することができるので、極めて使い易い医療システム1となっている。
【0047】
図8は、輸液ポンプ接続工程及び輸液ポンプ動作工程を示す概略フローチャートである。
図7で、電子カルテ装置10からオーダー情報を取得した看護師端末90は、図4に示すように、選択済みオーダー情報記憶部98に、オーダー情報を有し、このオーダー情報には、輸液ポンプ70で使用される薬剤情報等のデータが含まれている。
【0048】
そこで、看護師甲は、患者乙のベッド等の側に配置されている図2に示す輸液セット30の輸液ポンプ70に対して準備を行う。
このとき、看護師端末90を所持する看護師甲が、輸液ポンプ70の筐体等に接触すると、上述のように、人体通信により、看護師側通信装置91と輸液ポンプ側通信装置71との間が通信状態となる(図3の看護師丙の場合を参照)。
【0049】
ST31では、輸液ポンプ70が、看護師端末90の看護師識別番号記憶部95内の看護師識別番号を受信したか否かを判断する。
ST31で、看護師識別番号を取得すると、ST32へ進む。ST32では、図6の輸液ポンプ70の看護師識別番号判定処理部(プログラム)76が動作し、受信した看護師識別番号と、図6の看護師識別番号一覧情報記憶部77内に記憶されている看護師識別番号を比較し、受信した看護師識別番号が、看護師識別番号一覧情報記憶部77の看護師識別番号に含まれているか否かを判断する。
【0050】
この看護師識別番号一覧情報記憶部77には、輸液ポンプ70を操作する権限を有する看護師の看護師識別番号が登録されている。
したがって、ST32で、受信した看護師識別番号が、看護師識別番号一覧情報記憶部77の看護師識別番号に含まれている場合は、権限を有する者であると判断することができる。
【0051】
このように、本実施の形態では、輸液ポンプ70の操作権限がない者による輸液ポンプ70の操作を未然に防止し、事故等の発生を未然に防止することができる構成となっている。
【0052】
ST32で、受信した看護師識別番号が、看護師識別番号一覧情報記憶部77の看護師識別番号に含まれている場合は、ST33へ進む。ST33では、輸液ポンプ70が看護師端末90に、オーダー情報の送信を要求する。
そして、ST34で、看護師端末90が、図4の選択済みオーダー情報記憶部98内のオーダー情報を、輸液ポンプ70へ送信し、輸液ポンプ70は「オーダー情報」を図6のオーダー情報記憶部78に記憶する。
【0053】
次いで、ST35へ進む。ST35では、現在、輸液セット30を装着している患者乙の患者端末50から「患者識別番号」を取得し、図6の患者識別番号記憶部79に記憶させる。
次いで、ST36へ進む。ST36では、図6の患者識別番号取得判定処理部(プログラム)88が動作し、図6のオーダー情報記憶部78の「患者識別番号」と患者識別番号記憶部79の「患者識別番号」とが同一か否かを判断する。
【0054】
ST36で、看護師端末90と患者端末50の「患者識別番号」が同一でない場合は、患者乙を取り違えている可能性が高いので、ST37へ進む。
ST37では、輸液ポンプ70の輸液ポンプ表示装置74に「患者××ではありません」と表示し、操作中の看護師に患者乙の取り違えがあることを報知する。
したがって、本実施の形態では、看護師甲による患者乙の取り違え等を未然に防止し、権限のない者による輸液ポンプ70の操作等を防止することもできる。
【0055】
ST36で、輸液ポンプ70及び患者端末90の「患者識別番号」が一致した場合は、患者乙の取り違え等がないと判断し、ST38へ進む。
ST38では、輸液ポンプ70が、患者端末50と通信可能にあるか否かを判断する。具体的には、図6の通信可能範囲判断処理部(プログラム)83が動作する。
ST38で、患者端末50と通信可能でない場合等は、輸液セット30の穿刺針32が、患者乙に装着されていない場合を意味するので、ST39へ進む。
【0056】
ST39では、輸液ポンプ70の輸液ポンプ表示装置74に「患者を輸液ラインに接続してください」とのアラームが表示される。
したがって、本実施の形態では、輸液ポンプ70が動作し、輸液が開始される前に、輸液ラインが確実に患者乙に接続されていることを自動的に確認することができ、安全性の高いシステムとなっている。
【0057】
次いで、ST40へ進む。ST40では、看護師の入力設定した流量で、輸液ポンプ70の輸液ポンプ本体75が動作し、輸液が開始される。
【0058】
次いで、ST41へ進む。ST41では、図6の計時装置80が動作し、例えば1秒経過したか否かが判断され、1秒経過している場合は、ST42へ進む。
ST42では、患者端末50が発する間欠信号であるPing信号を受信したか否かを判断する。
このPing信号は、端末信号が一定の時間を空けて発する信号であり、この信号を輸液ポンプ70が受信することは、両者が通信可能、すなわち、患者乙の静脈に穿刺針32が正常に装着されていることを示す。
したがって、本実施の形態の以下の工程では、このPing信号の受信の有無で、穿刺針32の抜け、すなわち、輸液の漏れを検知することとなる。
【0059】
ST42で、輸液ポンプ70が、患者端末50からのPing信号を受信している場合は、ST43へ進み、輸液ポンプ70は指示通りに輸液動作を実行する。
【0060】
そして、ST44で、輸液停止又は輸液ポンプ70の電源OFFの指示がないかぎり、1秒毎に、患者端末50からのPing信号を受信したか否かを判断する。
一方、ST44で、輸液停止又は輸液ポンプ70の電源OFFの指示があった場合は終了する。
【0061】
一方、ST42で患者端末50からPing信号を受信しない場合は、ST45へ進む。ST45では、患者端末50からのPing信号の未受信時間の累積を図6のPing信号未受信時間記憶部84に記憶させる。
次いで、ST46へ進む。ST46では、図6の信号受信判断部である例えば、未受信時間判断処理部(プログラム)85が動作し、Ping信号未受信時間記憶部84内の累積時間が、図6の未受信時間閾値データ記憶部86内の閾値、例えば、3秒未満か否かを判断する。
【0062】
ST46の累積時間が閾値時間未満の場合は、ST41へ進む。
一方、ST46の累積時間が閾値時間以上の場合、ST48へ進む。ST48では、図6のアラーム装置81が動作し、輸液ポンプ表示装置74に、アラーム、すなわち、輸液セット30が患者乙から外れている旨を報知する。また、同時に輸液ポンプ本体75の輸液動作が停止する。
【0063】
このように、本実施の形態では、輸液セット30の穿刺針32が患者乙の静脈から外れた場合は、自動的に輸液ポンプ70が、その事実を検知し、看護師甲等に知らせると共に、輸液ポンプ70を停止する。
したがって、輸液の液漏れがあった場合では,看護師甲が迅速に対応することができる。また、本実施の形態では、複雑な判断工程を経ないため、判断間違い等が生じ難い構成ともなっている。
さらに、本実施の形態では、輸液の液漏れの検知のために全体のシステムを大幅に変更する必要がないため、低コストで実施することができる。
【0064】
また、ST48でアラームを表示し、輸液ポンプ70の動作を停止した後、ST49へ進む。ST49では、看護師がアラームの停止処理をしたか否かを判断する。具体的には、看護師端末90を装着した看護師甲が、輸液セット30や輸液ポンプ70と接触した状態でアラーム停止装置82(図6参照)を操作したか判断する。
【0065】
具体的には、図6のアラーム停止判断処理部(プログラム)87が、看護師がアラーム停止装置82を操作したと判断したときは、ST50で、アラームを停止させる。すなわち、看護師端末90と輸液ポンプ70とが通信可能な場合は、看護師が操作していると判断し、その指示を許可する。
【0066】
このように、本実施の形態では、アラームの停止も、その権限ある看護師等が操作しているか否かを確認した後に実行するので、極めて信頼性の高いシステムとなる。
一方、ST49で、看護師がアラーム停止装置82の停止操作をしていないと判断されたときは、ST51で一定時間を超えているか否かが判断され、ST52でアラーム停止、輸液ポンプ本体が停止される。
【0067】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。本実施の形態では、医療機器として輸液ポンプ70を例に説明したが、医療機器には、輸液ポンプ70のみならず、シリンジポンプ等も含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1・・・医療システム、10・・・電子カルテ装置、11・・・電子カルテ側通信装置、12・・・電子カルテ制御部、13・・・電子カルテ入力装置、14・・・電子カルテ表示装置、15・・・オーダー情報検索決定処理部(プログラム)、16・・・オーダー情報記憶部、30・・・輸液セット、31・・・薬液バッグ、32・・・穿刺針、33・・・接続チューブ、50・・・患者端末、51・・・患者側通信装置、52・・・患者端末制御部、53・・・患者識別番号記憶部、70・・・輸液ポンプ、71・・・輸液ポンプ側通信装置、72・・・輸液ポンプ制御部、73・・・輸液ポンプ入力装置、74・・・輸液ポンプ表示装置、75・・・輸液ポンプ本体、76・・・看護師識別番号判定処理部(プログラム)、77・・・看護師識別番号一覧情報記憶部、78・・・オーダー情報記憶部、79・・・患者識別番号記憶部、80・・・計時装置、81・・・アラーム装置、82・・・アラーム停止装置、83・・・通信可能範囲判断処理部(プログラム)、84・・・Ping信号未受信時間記憶部、85・・・未受信時間判断処理部(プログラム)、86・・・未受信時間閾値データ記憶部、87・・・アラーム停止判断処理部(プログラム)、88・・・患者識別番号取得判定処理部(プログラム)、90・・・看護師端末、91・・・看護師側通信端末、92・・・看護師端末制御部、93・・・看護師端末入力装置、94・・・看護師端末表示装置、95・・・看護師識別番号記憶部、96・・・オーダー情報記憶部、97・・・オーダー情報選択処理部(プログラム)、98・・・選択済みオーダー情報記憶部、99・・・オーダー情報判断処理部(プログラム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療従事者が所持する医療従事者端末と、
患者の医療処方情報を蓄積する医療処方情報装置と、
薬を収容するための薬収容部と、
前記薬を患者側に供給するための薬搬送部と、
前記薬搬送部の先端部に形成され、患者の身体内に、少なくとも、その一部分が挿入される接続部と、
前記薬の搬送を制御する薬制御部と、を有する医療システムであって、
前記薬制御部は、患者側に配置されている患者側通信部と通信するため医療機器側通信部を有し、
前記医療機器側通信部は、前記患者側通信部が発した信号を、少なくとも、患者の身体、前記接続部及び前記薬搬送部を介して受信する構成となり、
前記患者側通信部が送信する間欠信号を受信したか否かを判断する信号受信判断部を備えることを特徴とする医療システム。
【請求項2】
前記信号受信判断部は、前記間欠信号を所定時間内に受信したか否かを判断する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記患者側通信部と前記接続部との間の通信は、患者の身体を介して行われる構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記医療従事者端末は、医療従事者側通信部を有し、この医療従事者側通信部は、当該医療従事者の身体を介して前記医療処方情報装置と通信し、特定の患者の前記医療処方情報を取得することができ、
前記医療従事者側通信部は、前記医療処方情報装置から取得した特定の患者の前記医療処方情報を、当該医療従事者の身体を介して、前記薬制御部に送信することが可能となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項5】
患者が所持する患者端末を有し、
前記医療処方情報には、医療従事者の識別情報及び患者の識別情報を含み、
前記薬制御部は、前記医療従事者端末から取得した医療処方情報に含まれる患者の識別情報と、前記患者端末から取得した当該患者端末を所持す患者の識別情報とを比較し、これらが一致した場合に、当該薬制御部の動作を開始させる構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項6】
薬を収容するための薬収容部と、
前記薬を患者側に供給するための薬搬送部と、
前記薬搬送部の先端部に形成され、患者の身体内に、少なくとも、その一部分が挿入される接続部と、
前記薬の搬送を制御する薬制御部と、を備え、
前記薬制御部は、患者側に配置されている患者側通信部と通信するため医療機器側通信部を有し、
前記医療機器側通信部は、前記患者側通信部が発した信号を、少なくとも、患者の身体、前記接続部及び前記薬搬送部を介して受信する構成となり、
前記薬制御部は、前記患者側通信部が送信する間欠信号を受信したか否かを判断する構成となっていることを特徴とする医療機器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−200544(P2012−200544A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70547(P2011−70547)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】