説明

医療デジタルデーターの固有化フォーマット

【課題】 従来の生体情報データーの記録保存方法では、原デジタルデーターの真実性の証明が困難な問題があった。これは、原デジタルデーター自体の識別固有化に乏しく、原デジタルデーターに対し変更データーの直接的な検証照合の対策が不十分であり変更、改竄が可能な為である。
【解決手段】原デジタルデーターを任意のサイズに分割し、識別分割データー直前の分割データーの下位4bitと識別分割データーの論理和16進数を識別分割データーの最終部に付ける。識別分割データー直前の分割データーの論理和16進数を識別分割データーの先頭に付け結合用とし各分割データーの識別固有化を行う。更に、全分割データー上位4bitの論理和16進数を先頭分割データーの先頭に付け原デジタルデーター全体の識別固有値とする。これにより、原デジタルデーター自体の照合が部分、全体で実施できると共に真実のデーターを記録保存でき、誤操作や意図的な改竄の防止が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療行為によって得る生体情報データーの原デジタルデーターを固有化し、データーの変更を行ったとき原デジタルデーターの保存を維持する為のデーター固有化フォーマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機器から得る生体情報データーは、電子カルテ、及び、付属データーとしてコンピューターの記憶装置に記録し再度呼出し意図して原データーを変更することが可能である。また、ID番号やパスワードで保護したものがあるが、データー本体は特定の操作により可能なファイルなどで処理されている。特許文献1を参照。
これらの生体情報のデーターは医師、技師によって患者の医療判断の際利用され、原データーを変更しても、顧客である患者自身が原データーであるかどうか検証し確認する方法がない。また、患者ID番号や履歴で保護したものがあるが、データー本体は変更書込み操作の可能なファイル化で処理されている。特許文献2を参照。
従って、過去の医療記録の原データーを患者が知ろうとした時に履歴以外に具体的な方法が不明で、また、患者が再医療を受ける時、情報の説明開示の要求を重要視することなく医療機関間の情報交換に止まることがある。これは、患者生体情報の取扱い方法が曖昧で、記録の手段が医療機関の方法判断に依存していることが一原因である。非特許文献1を参照。
これらにより、患者生体情報医療デジタルデーターの原データーの記録方法、及び、その取扱いについて確立する必要性がある。
【0003】
従来の技術の図による説明
【0004】
図4に示す様に、データ−をファイルとして特定し記録する方式が示されているがデータ−そのものの変更については入力時の患者IDやパスワード等の確認で操作の制限を行っている。また、変更履歴はログデータ−として記録するように構成されているが正確には原データーの確定的な識別、また確実に改竄を防止する手段を示していない。
【0005】
図5に示す様に、データ−を特定のファイルとして認識させ記録している。この時、オペレーションシステム機能の書込み禁止、読取り専用ファイルとして制限は出来るが、ソフトウェア技術の知識があれば容易にファイル内のデータ−の操作が可能である。
【0006】
第24条に「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」とあり、また、その2項に「・・・その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。」とある。
【0007】
以上の様に、医療の安全と安心を確保するためのデータ−改竄防止対策はシステム構成及び、設計時の認識として不充分であり、同時に今後の重要な課題である。
【0008】
【特許文献1】特開2002−92168号公報
【特許文献2】特開2001−142994号公報
【非特許文献1】医師法第4章業務第24条1項2項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に述べた従来の生体情報データーの記録保存方法では、原デジタルデーターの固有化による識別がデーターに対し直接的に施されていないので、データーの変更、改竄が行われた時、原デジタルデーターとしての真実性の証明が困難である。
【0010】
本発明は、従来の記録保存方法が有していた問題を解決しようとするものであり、原デジタルデーターの識別固有化を行い、変更、改竄を防止するプロトコルを実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、原デジタルデーターを最初に記録する時16bitのn倍のデーターごとに分割し、分割した1番目のデーターの論理和16進数SUM値を分割データーの最終位置に付与する。倍数nは任意に設定する。2番目のデーターはデーター本来のSUM値に1番目のデーターの下位4bitを16進数加算したSUM値を最終位置に付与する。全分割データーに対しこの処理を実施することにより、分割データーごとの固有化をするものである。
【0012】
また、第2の課題解決手段は、分割データーが処理の過程で、分散される可能性があり、2番目の分割データーからその先頭に直前のデーターのSUM値を付与し、分割データー最終位置のSUM値と分割データー先頭位置のSUM値の一致する分割データー同士を順番に結合できるように構成したものである。
【0013】
また、第3の課題解決手段として、全分割データー各SUM値上位4ビットの合計値を原デジタルデーターの先頭、すなわち、結合用の先頭SUM値の無い1番目の分割データーの先頭に付与し、データー全体の固有値とし、原デジタルデーターの照合用識別固有SUM値となるよう構成したものである。
【0014】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。分割した原デジタルデーターを変更者が意図して変更しても、また、誤って変更を加えた時も、この16進数SUM値と連結照合データーの配列の不一致、及び、データー全体の固有SUM値と不一致の場合は新デジタルデーターとして変更者、日時を付与して履歴データーとして記録保存する。この時以降は、原デジタルデーターと異なるデーターが複数、存在することとなり、これにより原デジタルデーターを保護することができる。
【0015】
第2の課題解決手段による作用は、分割データーを原デジタルデーターの一部を抽出して分析検討した後、再度記録保存を繰返した時の分割データーの分散を防止する為に、ひとつ前のデーターのSUM値を結合用として次のデーターの先頭に付与し、SUM値が一致する分割データーを結合することにより元の順番に再記録することができる。
【0016】
第3の課題解決手段による作用は、全分割データー上位4ビットを抽出し、その論理和16進数SUM値を原デジタルデーターの先頭分割データーに付与することにより、分割データーとの関連付けを定義できると同時にデーター全体の固有値とすることができ、さらに原デジタルデーターの真意性と固有化を確実にする効果を発揮する。
【発明の効果】
【0017】
上述したように本発明のデジタルデーターの固有化フォーマットは患者生体情報の原データーから得た原デジタルデーターの日常における取扱いにおいて、誤操作による変更、改竄を予防し、真の生体情報データーの保存を可能とし、医師、技師が医療分析の必要な時に原デジタルデーターの閲覧分析が可能となり、患者生体情報データーの錯誤のない判断が可能となる原デジタルデーターを提供できる。
【0018】
また、分割データーのSUM値に加え、全分割データーの上位4ビットの論理和16進数SUM値を先頭の分割データーに付与して原デジタルデーターの固有値としているため、さらに変更や改竄が加えにくいという効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図2に基づいて説明する。
【0020】
図1の原デジタルデーター1を16bitのn倍のデーター毎に分割し、これを分割データーとする。先頭となるデーターを先頭分割データー2として以下N個の分割データーが発生する。この分割データーを4bit毎の16進数に変換し加算する。
加算の結果であるSUM値A3を先頭分割データー2の最終部分に付与する。更に、先頭分割データー2の下位4bitの16進数を第2分割データー4の16進数SUM値B5に加算しSUM値C6を得る。このSUM値C6を第2分割データー4の最終部分に付与する。最終分割データー8まで(N−1)回この処理を繰返す。先頭分割データー2のSUM値A3は前にくる分割データーが存在しないので直前分割データーの下位4bitの16進数加算処理はしない。
【0021】
デジタルデーターの参照、保存を繰返すとき分割したデーターを元の順番で記録することを確実にするために図1で示した第2分割データー4のSUM値B5を第3分割データー7の先頭に図2のごとく付与している。最終分割データー8まで(N−1)回この処理を繰返す。
【0022】
また、原デジタルデーターを分割した先頭分割データー2は、その先頭に結合用のSUM値を付与することはなく全データー、即ち、原デジタルデーターの固有値として全分割データーの上位4ビットの論理和加算により識別固有SUM値9を求め付与する。
【0023】
以下、上記構成の動作を説明する。SUM値付分割データーは、SUM値の一致する分割データー同士を順番に再結合し原デジタルデーターの状態を復元する。また、分割データーそれぞれのSUM値は分割データーの固有値として記録してあり、この原デジタルデーターを読出し意図して変更し上書きをしようとした時の照合値として用い一致しない場合は変更改竄と判断し上書き保存を拒否すると同時に変更改竄の証拠として原デジタルデーターとは別に日時と変更したデーターをログ記録する。
【0024】
更に、原デジタルデーターの識別固有SUM値9は、分割データーが変更され保存されようとする前に照合値として用い一致しない場合は変更改竄と判断し上書き保存を拒否することにより原デジタルデーターを維持することができる。以上のように、本実施形態によれば誤操作、及び、意図的な変更改竄を防止する効果が得られるものである。
【実施例】
【0025】
本発明は、医療における患者の生体情報データーの真実性を追求されている現在、デジ
タルデーター変換をして記録保存を行う際、原デジタルデーターの意図的な変更や改竄を防止するフォーマットとしてプログラムすることにより常に真実性のある原デジタルデーターを閲覧検証、及び、医療分析に使用する例を挙げることができる。
また、生体情報データーとして、ホルスター心電図、連続血圧測定値、連続血中酸素飽和度、連続体温測定値が対象にあげられる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
現在、医療、及び、医薬品において治療過程のデーター、製造プロセスデーターの改竄防止の技術が医療の安全と安心を患者に提供する為に再重要視されている。その実例としてアメリカ連邦規則CDF21Part11が日本においても導入されつつ例を挙げることができる。このフォーマットを用いたプログラムにより、意図的な変更や改竄を予防することが可能となることにより、医師、医療技師が計測時の患者の正しい生体情報データーをいつでも閲覧分析可能となり、同時に、誤りによる保存を防止できることにより病院内の患者生体情報記録システムへの導入が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態を示す分割データーの固有化フォーマットの説明図
【図2】原デジタルデーターの識別固有化フォーマットの説明図
【図3】固有化フォーマットの記録動作を示すフローチャート系統図
【図4】従来のデーター記録方法のフローチャート系統図1
【図5】従来のデーター記録方法のフローチャート系統図2
【符号の説明】
【0028】
1 原デジタルデーター
2 先頭分割データー
3 SUM値A
4 第2分割データー
5 SUM値B
6 SUM値C
7 第3分割データー
8 最終分割データー
9 識別固有SUM値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療アナログデーターをデジタル変換した原デジタルデーターの記録する時、全データーを16bitのn倍のデーター毎に順番に分割し、分割データーの論理和16進数SUM値に直前の分割データー下位4ビットの16進数SUM値を加算したSUM値を分割データーの最終部分に付加するフォーマット。
【請求項2】
原デジタルデーターを分割した時、データーの順番の誤りを発生させない為に、直前の分割データーの16進数SUM値を次の分割データーの先頭に付与し、各分割データーの先頭値と最終部分のSUM値の一致する分割データーを連続的に結合するフォーマット。
【請求項3】
全分割データーの各上位4ビットの論理和16進数SUM値を原デジタルデーターの先頭に付与し、データー全体の識別固有値とするフォーマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−134013(P2006−134013A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321477(P2004−321477)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(504211728)株式会社エム・イ・テック (5)
【Fターム(参考)】