説明

医療作業車

【課題】冬季に凍結しそうな医療資器材の当該冬季における収容を可能にして医療行為の向上を図ることができる医療作業車を提供する。
【解決手段】車体12上に医療資器材を収容するための荷箱2が搭載された医療作業車1であって、荷箱2内は、適宜に区画された複数の収容室21を有するとともに、各収容室21は開閉扉22によりそれぞれ個別に開閉自在に設けられ、さらに、少なくとも一つの収容室21内には内部を所定温度に保持する保温庫3が設置され、保温庫3には開閉扉22に面して保温庫用開閉扉32が開閉自在に設けられるとともに、保温庫用開閉扉32が脱着可能に設けられている。保温庫3は、別個独立に開閉自在な一対の断熱室31からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療資器材を収容するための荷箱を搭載した医療作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体上に搭載した荷箱を複数の収容室に分割してこれら各収容室内に医療資器材を収容するようにし、適宜な現場に駐車することによってその現場において医療資器材を提供する医療作業車が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭63−284070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のものでは、医療資器材の提供を長期的に行う場合に冬季を迎えることもあり、この場合、寒冷地等では収容室内に収容している点滴などの液体の医薬品や飲料水などが凍結する恐れがあった。
【0004】
このため、冬季になると凍結しそうな医療資器材を予め収容室内から取り出し、冬季が過ぎると再び当該医療資器材を収容する作業が必要で煩雑であるとともに、冬季では除去した医療資器材を提供することができずに医療行為の低下を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、冬季に凍結しそうな医療資器材の当該冬季における収容を可能にして医療行為の向上を図ることができる医療作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明の医療作業車は、車体上に医療資器材を収容するための荷箱が搭載された医療作業車であって、前記荷箱内は、適宜に区画された複数の収容室を有するとともに、各収容室は開閉扉によりそれぞれ個別に開閉自在に設けられ、さらに、少なくとも一つの収容室内には内部を所定温度に保持する保温庫が設置され、該保温庫には前記開閉扉に面して保温庫用開閉扉が開閉自在に設けられるとともに、当該保温庫用開閉扉が脱着可能に設けられたものである。
【0007】
請求項2に係る発明の医療作業車は、前記保温庫が別個独立に開閉自在な一対の断熱室からなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冬季には凍結しそうな医療資器材を温度調整した断熱室に収容することによって、冬季においても当該医療資器材を提供することができ、医療行為の向上を図ることができるとともに、季節によって医療資器材を入れ換える必要もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1及び図2は、本発明の医療作業車の全体構成を示している。
【0011】
この医療作業車1は、運転席11後方の車体12上に荷箱2が搭載されている。荷箱2は、複数の収容室21に区画されている。具体的には、図1及び図2に示す荷箱2では、左右に分割された収容室21…が前後に3室配置されて計6室を備えている。
【0012】
各収容室21は、その側面に当該側面略全体が開閉する開閉扉22が設けられている。開閉扉22は、各収容室21の床面高さと略同じ下端縁21aが図示しないヒンジによって支持されており、図示しないアクチュエータにより下端縁21aを中心にして側方に向かって上下に回動するように構成されている。また、開閉扉22の内側面には、当該開閉扉22が開放してその先端が接地した状態で階段として利用できる段状の階段部材23が設けられており、利用者はこの階段部材23を通じて医療資器材の出し入れを行うようになっている。
【0013】
そして、荷箱2内を上述のようにして区画した各収容室21のうち、最後部左右の収容室21、21には保温庫3が設置されている。
【0014】
保温庫3は、図3及び図4に示すように左右2つの断熱室31、31に分割され、このように左右2つに分割した保温庫3を最後部の収容室21、21に設置している。つまり、実質的には保温庫3によって最後部左右の収容室21、21を左右に分割している。
【0015】
各断熱室31、31には、保温手段4がそれぞれ設けられるとともに、前記開閉扉22と対峙する車輌の側面となる面が保温庫用開閉扉32(以下、単に開閉扉32という)によって開閉自在になされている。開閉扉32としては図5及び図6に示すようなヒンジ33によって左右に開閉自在になされた観音開き式のものが採用されている。
【0016】
この開閉扉32は、ヒンジ33を取付けているボルト34を取外すことによって、脱着可能になされており、夏季などに保温庫3を使用しない場合には開閉扉32を取外しておけるようにしている。このようにして開閉扉32を取外しておけば、医療資器材の搬入出が容易に行え、緊急時などに迅速に対応することができる。
【0017】
また、開閉扉32は、図5及び図7に示すように当該開閉扉32の内側に設けられたストッパ32aによって開放状態を保持できるようになっている。
【0018】
そして、上述した左右の断熱室31、31は、図5に示すように中央の断熱パネル35によって左右に区画されるとともに、開閉扉32を含む周囲を断熱パネル(図5では後面の断熱パネルのみ図示している。)35で囲繞することによって構成されている。
【0019】
保温手段4は、図4及び図8に示すように、ヒータ41、このヒータ41に付属する各部材、並びにヒータ41で暖められた空気を対流させるダクト部5(図5参照)を備えている。
【0020】
ヒータ41は、各断熱室31の前後面下部に配設されており、熱源となるヒータ本体41aと、このヒータ本体41aの外側面に連設したヒータパネル42とで構成され、ヒータ本体41aで発生した熱をヒータパネル42で伝熱して外部に放熱するようになっている。
【0021】
このヒータ本体41aの内側面には、カバーパネル43が設けられており、ヒータ本体41aはカバーパネル43とヒータパネル42とで挟まれた状態で配置されている。
【0022】
前記ダクト部5は、図5に示すように前記断熱パネル34の内側に形成された空間部を利用して構成されており、このダクト部5を通じて前後のヒータ41が連通され、各ヒータ本体41aの下方に設けられたACファン44によってヒータ41で加熱された空気がダクト部5内で対流するようになっている。
【0023】
さらに、保温手段4には、サーモスタットの温度検出部45、各断熱室31内の温度を検出する温度検出部46の他、図9に示すような制御盤6が設けられている。
【0024】
制御盤6には、電源スイッチ61、操作スイッチ62、マグネットコネクタ63、断熱室31内の温度を表示する温度表示部64などが設けられている。
【0025】
この制御盤6は、操作スイッチ62の操作によって温度検出部46からの検出温度に基づいてヒータ本体41aを通じて各断熱室31内の温度をそれぞれ所望の温度に調整するとともに、サーモスタットの温度検出部45からの検出温度に基づいてヒータ本体41aの異常加熱を検出することによって各断熱室31内における異常加熱の発生を防止するようにしている。
【0026】
また、マグネットコネクタ63は、通電による電磁石の作用によって施設側に接続された電源コネクタを吸着することによって当該施設側から電源ケーブルを介して電源を確保するようになっている。このマグネットコネクタ63は、車輌エンジンの始動によって通電が解除されて上記電源コネクタを自動的には離脱させるように構成されており、車輌の移動時において電源ケーブルなどの切断による損傷の発生を防止するようにしている。なお、電源としては例えば車輌に発電機を搭載しておき、この発電機を利用するようにしてもよい。
【0027】
さらに、各断熱室31には、適数段の棚板7が設けられており、この棚板7を利用することで医療資器材を効率良く収容することができる。棚板7の裏面には図10に示すように複数の係止孔を有するラッシングレール71が設けられるとともに、断熱室31の奥行き側となり当該断熱室31を左右に区画する断熱パネル34にもラッシングレール71が設けられている。従って、これらラッシングレール71の係止孔を利用して医療資器材を固定することで、棚板7上の設置スペースを犠牲にすることなく医療資器材を安定的に固定することができる。
【0028】
上記棚板7及びラッシングレール71は、必要に応じて他の収容室21にも適宜に設けられている。
【0029】
各断熱室31の底面にはドレンパン8が敷設されており、このドレンパン8によって室内で結露した水を集めて図示しない排水口から外部に排水するようにしている。
【0030】
このようにして医療作業車を構成したことによって、冬季には凍結しそうな医療資器材を温度調整した断熱室31に収容することによって、冬季においても当該医療資器材を提供することができ、医療行為の向上を図ることができるとともに、季節によって医療資器材を入れ換える必要もなくなる。
【0031】
また、左右一対の断熱室31が独立した状態で開閉できるので、一方の断熱室31の開閉扉32の開放による室内の温度変化の影響を他方の断熱室31に与えることがなく、温度管理を良好に行うことができる。
【0032】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲内において種々設計変更可能である。
【0033】
例えば、保温庫3の断熱室31は本例のように左右一対に限らず、必要に応じて適数室を設けるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の医療作業車の全体構成を示す側面図である。
【図2】本発明の医療作業車の全体構成を示す背面図である。
【図3】保温庫を示す車輌の側面から見た図である。
【図4】保温庫を示す車輌の背面から見た図である。
【図5】保温庫を示す断面図である。
【図6】保温庫の開閉扉を示す車輌の側面から見た図である。
【図7】保温庫の開閉扉を示す斜視図である。
【図8】保温庫示す斜視図である。
【図9】制御盤を示す正面図である。
【図10】棚板を示す裏面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 医療作業車
12 車体
2 荷箱
21 収容室
22 開閉扉
3 保温庫
31 断熱室
32 開閉扉(保温庫用開閉扉)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に医療資器材を収容するための荷箱が搭載された医療作業車であって、
前記荷箱内は、適宜に区画された複数の収容室を有するとともに、各収容室は開閉扉によりそれぞれ個別に開閉自在に設けられ、さらに、少なくとも一つの収容室内には内部を所定温度に保持する保温庫が設置され、該保温庫には前記開閉扉に面して保温庫用開閉扉が開閉自在に設けられるとともに、当該保温庫用開閉扉が脱着可能に設けられたことを特徴とする医療作業車。
【請求項2】
前記保温庫は、別個独立に開閉自在な一対の断熱室からなることを特徴とする請求項1記載の医療作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−253978(P2007−253978A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78863(P2006−78863)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】