説明

医療器具前処理用泡の配合組成

【課題】医療器具の前処理用の発泡組成物を提供する。
【解決手段】医療器具前処理用発泡組成物は、0.1重量%〜15重量%の範囲内の過酸化水素、0.5重量%〜20重量%の範囲内の界面活性剤、および、0.1重量%〜10重量%のシリコーンを含有する発泡増進剤を含む。この組成物は、医療処置で使用後の医療器具を洗浄するのに先立って器具に前処理をするためのものである。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、医療器具の再利用前の処理に関し、特に殺菌処理に先立つ医療器具の前処理に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
使用後の医療器具は通常潜在的に伝染性の微生物で汚染されているばかりでなく血液および他の体内物質によっても汚染されている。医療処置で再利用する前に、これらの器具は洗浄し殺菌する必要がある。器具に付いた血液や他の物質を乾いたままにしておくと、洗浄および殺菌処理が面倒なことになる。特に血液は一旦乾いてしまうとなおさら取除きにくくなる。
【0003】
使用した器具を、液体の入った容器に収めて湿気を保って器具に付いた異物が乾いて取りにくくなるのを防ぐことが提案されている。しかし、そのような容器は非常に重くて動かすのが難しいことがあり、かつ、その中に入っている液体が汚染される可能性もあり、従ってこの液体をこぼすことは望ましくない。これまで提案されてきた一つの解決策は、使用した器具を最終的に殺菌処理する前に酵素の泡を器具に吹き付けるというものである。泡は液体よりも軽く、器具に付着すると早い段階である程度の洗浄を開始して洗浄効果を高めるものである。そのような泡は殆どまたはまったく抗菌作用がない。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明による医療器具前処理用発泡組成物は、過酸化水素と、界面活性剤と、シリコーンを含む発泡増進剤と、を含む。過酸化水素の量は、好ましくは0.1重量%〜15重量%の範囲、より好ましくは約2重量%〜10重量%の範囲、最も好ましいのは約3重量%〜8重量%の範囲内である。界面活性剤の量は、好ましくは0.5重量%〜20重量%の範囲、より好ましくは約1重量%〜10重量%の範囲、最も好ましくは約2重量%〜6重量%の範囲内である。発泡増進剤の量は、好ましくは0.1重量%〜10重量%の範囲、より好ましくは約0.3重量%〜5重量%の範囲、最も好ましいのは約0.5重量%〜3重量%の範囲内である。
【0005】
pHは好ましくは4.7〜7.5の範囲、より好ましくは5〜7の範囲、最も好ましいのは5.5〜6.5の範囲内である。本発明の組成物は、さらに好ましくは約0.5%〜20%、より好ましくは約1%〜10%、最も好ましくは約1.5%〜5%の量の、アクリル重合体を含有する増粘剤を含む。
【0006】
上記組成物は、加圧泡放出容器内に収納できる。また手動ポンプ式泡放出容器にも収納できる。上記組成物は、さらに過酢酸も含んでもよい。
【0007】
〔発明の詳細な説明〕
医療処置時に一つまたは複数の医療器具を使用する場合がある。これらの医療器具は血液、体組織および潜在的に汚染性の微生物(potentially contaminating microorganisms)で汚染される。通常、使用後の医療器具は洗浄および殺菌を待つあいだ脇に置いておかれる。この待機時間が数時間またはそれ以上になることがある。この待機時間に器具上で乾いた血液や他の物質が、後の洗浄処置時にさらに取除き難くなる。このことは、処置が長時間続いて、多くの異なる器具を使用する時、または、職員の時間が限られている時、器具の時宜にかなった処理が困難となり、特に問題となる。
【0008】
図面、特に図1を参照すると、本発明によれば、使用後ならびに完全洗浄および殺菌処理前は、医療器具10を容器12内に入れて泡14で覆う。泡は過酸化水素を含む。過酸化水素の泡14は血液、乾いた血液でさえも溶解し、かつ、器具上の微生物に対して抗菌活動を開始する。泡14は器具10を包み込んで、その表面に湿気を保たせて血液および他の物質が器具上で乾燥しないようにする。血液や他の物質を乾燥させないでおくことで、後ほどの洗浄および殺菌処理で洗浄がよくできるようになる。
【0009】
過酸化水素の泡14を供給する一つの方法は、発泡エアロゾールスプレイ缶16から泡14を噴霧することであろう。噴射剤を使ったそのような缶は当業者には周知である。また、容器12が器具10を複数の穴を通して容易にすすげるように、さらに容器12を殺菌処理に使う場合に殺菌剤の蒸気(vapor sterilants)が効率よく拡散して器具10に接触するように、当該複数の穴を有するインサート(insert)またはトレイ18を備えていることが好ましい。蓋20を設けることも好ましい。
【0010】
医療器具10は医療処理で使い終わるとともに容器12内に置かれる。大量の泡14を器具10全体に噴射して器具10を湿らせたままにし、器具に付着した血液が乾燥しないようにし、器具に付着した血液を溶かし始め、さらに、器具の消毒をする。泡14は、好ましくは、過酸化水素を1〜15重量%、より好ましくは3〜8重量%含む。このような濃度は、すぐに患者に再使用できるほどの殺菌効果のレベルを達成することはできないが、器具を扱う職員が特に洗浄時に器具から感染する可能性を最低限にするよう器具表面上の微生物の量を大幅に減少させる。蓋20は、手術室などの医療処置の場所から洗浄する場所へ器具を運ぶ前に容器12の上に載せるのが好ましい。器具10を洗浄する準備ができた時に、インサート18を持ち上げて取出し、器具10がまだインサート18内にある間に泡14をすすぎ落とすことができる。その後に通常の洗浄と殺菌とを行なうことができる。洗浄は、酵素系の磨き粉、洗剤または他の洗浄剤による処理を含み、ウオータージェット、超音波振動などを伴う処理を随意に含む機械的洗浄または攪拌と組み合わせるのが好ましい。洗浄後は、器具を好ましくは容器12内で化学気相または高圧蒸気殺菌泡(steam autoclaving)などで殺菌するべきである。
【0011】
インサート18を備えた容器12が、STERRAD(登録商標)過酸化水素/気体プラズマシステムまたはスチームシステムなどにおける最終的な殺菌処理に使用するように構成されていると特に便利である。液晶ポリマーなどの適当な材料および上述したような容器、特にスチームまたは過酸化水素のいずれかを使用できる容器の詳細な構造は、参照して本明細書に組込まれる、ウー(Wu)に対する米国特許第6,379,631号および第6,696,693号に示されている。上述のような容器は、殺菌蒸気で容器内の器具を殺菌し、一方、殺菌後に器具を汚染する可能性のある微生物の侵入を防ぐために、通常はCSRラップで包装されているか、または半透過性の薄膜フィルターを組込んでいる。
【0012】
つぎに図2を参照すると、器具10の外面を過酸化水素の泡14で覆ってしまうことに加えて、器具10に内腔22がある場合には、器具10を容器12に入れて器具10を泡14で覆う前に過酸化水素を含んだ液体または噴霧(mist)24を内腔22に吹き込むのが好ましい。この噴霧は、当該分野で知られているように噴射剤を用いた加圧容器26から噴射するのが好ましい。
【0013】
つぎに図3を参照すると、便利さを高めるためにディスペンサー28に発泡ノズル30と噴霧ノズル32とを備えることができる。発泡性過酸化水素溶液および噴射剤はディスペンサー28に収められ、噴霧ノズル32を介して噴射されると溶液は内腔に吹き込むのに適した噴霧34となり、発泡ノズル30を介して噴射されると溶液は器具の外表面を覆うのに適した泡36となる。
【0014】
つぎに図4を参照すると、発泡性過酸化水素溶液を収めたディスペンサー38は噴射剤を用いる代わりに手動の噴霧ノズル40と発泡ノズル42を用いている。特に有用な発泡ノズル42はオランダ、アルクマール(Alkamar, The Netherlands)所在のエアスプレイ(Airspray)社から入手可能のAirspray F2-L11である。
【0015】
つぎに図5を参照すると、容器44は網目インサート46と蓋48とを有するものとして示されている。容器の下部に、ある量の発泡性過酸化水素溶液52を収納できる液溜(well)50を有している。ポート54およびバルブ56が気泡器(air bubbler)または疎水性膜(hydrophobic membrane)58を介して液溜50に接続されている。ポート54に取り付けられた圧縮空気または他の気体の供給(supply)は、気泡器58を通って染み出した(percolate)過酸化水素溶液52を発泡させ、容器44を過酸化水素の泡で満たす。蓋48は容器44を満たしている泡の発生状況を見るための透明な窓60と、容器44内の気体を逃がして容器44が泡で満たされるようにするための一つまたは複数の気体逃げ口(vent)62とを備えているのが好ましい。気体逃げ口62は単純な開口、または半透性膜で覆ってもよく、または、一方向弁を用いてもよい。
【0016】
つぎに図6を参照すると、容器44と同様にインサート66、疎水性膜70を備えた液溜68、および窓74を備えた蓋72を有する容器64において、圧縮空気または気体のためのポートの代わりにポート76を容器64の上部に設けてあり、このポートにはバルブ78と追加的な疎水性膜79が備わっている。ポート76を真空源に取付け、容器64から気体を引抜くことにより、空気が疎水性膜70を通って容器内に染み出し、液溜68内の過酸化水素溶液52を泡立たせる。この容器64または前述の容器44のどちらにおいても、もし泡が消えると、ケースに応じて真空または圧縮気体を使って再起泡(refoam)できる。
【0017】
つぎに図7を参照すると、インサート82および窓86を有する蓋84を備えた容器80は液溜88を有する。攪拌器90が液溜88内に置かれ、モーター92とスイッチ96を介して制御されるバッテリ94のような電源に取り付けられている。攪拌器90を駆動することにより、液溜88内の過酸化水素溶液52を泡立てて、容器80内を泡で満たす。どのような泡発生方法でも攪拌器90のような泡発生装置を自動的に駆動できるタイマー95を用いることにより、所定の時間間隔で泡を再発生し、これによって長時間であっても器具と良好に接触させることができる。
【0018】
実施例
配合1
【表1】

【0019】
配合2
【表2】

【0020】
配合3
【表3】

【0021】
配合4
【表4】

【0022】
配合5
【表5】

【0023】
配合6(〜6%過酸化水素に対して)
【表6】

【0024】
配合7(〜3%過酸化水素に対して)
【表7】

【0025】
配合8(消泡および中和液)
【表8】

【0026】
配合8のような消泡液は、手動ポンプ式または、噴射剤気体を使用する、スプレイディスペンサー内に収められていて、器具10を覆う過酸化水素の泡14を消すためのマニュアルと共に提供される。消泡する前は、器具10は過酸化水素の泡14で覆われていて、ユーザーが器具10を見て容器12から取り出すのが難しい。器具10に鋭い尖端または刃がある場合には、ユーザーが器具10を十分に見ることもできずに泡14の中に手を入れたことにより怪我をするかもしれない。消泡液は、消泡剤と過酸化水素不活性化剤との両方を含んでいることが好ましい。従って、消泡液を泡14に吹き付けると、泡の体積が減って器具が見えて安全に取出すことができ、かつ、泡14に含まれる過酸化水素の濃度が低下してユーザーとの接触により生じるかもしれない有害な影響が最小限になる。
【0027】
最も一般的な二つのタイプの消泡剤は、ポリプロピレンを基剤とするポリエーテル分散剤(polypropylene based polyether dispersions)(シグマ泡消剤204(Sigma antifoam204))と脂肪酸エステル(fatty acid esters)(シグマ泡消剤0-30(Sigma antifoam 0-30))のような有機物を基剤(organic-based)とした消泡剤、およびシロキサン重合体(siloxane polymers)(シグマ泡消剤(Sigma antifoams) A, B, C, Y-30, SE-15)のようなシリコーンを基剤(silicone-based)とした消泡剤である。シリコーンを基剤とする消泡剤は、有機物を基剤とする消泡剤に比べると器具10から容易に取除ける点でいくぶんか好ましい。しかし、いずれのタイプも使用可能である。適当な消泡剤の一つは、ポリエチレングリコール(有機物基剤)とジメチコン (シリコーン基剤)とのコポリオール(polyethylene glycol (organic) and dimethicone (silicone) copolyol)である、SILSENSE コポリオール1シリコーン(SILSENSE Copolyol-1 silicone)である。他の適当な消泡剤には次のようなものが含まれる。即ち、カルボキシレイト(carboxylates)(有機物基剤)、モノアミド(monoamides)(有機物基剤)、リン酸エステル(phosphoric acid esters)(有機物基剤)、ミネラルオイル混合物(mineral oil blends)(有機物基剤)、長鎖アルコール(long chain alcohols)(有機物基剤)、フッ素界面活性剤(fluorosurfactants)(有機物基剤)、疎水化シリコーン/親水性オイル混合物(hydrophobed silicon/hydrophilic oil mixtures)(シリコーン基剤)、シリカ(Silicas)(シリカとのポリジメチルシロキサン共重合体(polydimethylsiloxane polymer with silica)のような)(シリコーン基剤)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)(有機物基剤)、およびポリジエチレンメチルシリコーン(polydiethylenemethyl silicones)(シリコーン基剤)などである。
【0028】
泡14中の過酸化水素を中和するには、カタラーゼが使い勝手のよさ、過酸化水素に対する作用の強力さ、取除き易さ、および、低毒性などの点で好ましい。他にもコバルト塩類(cobalt salts)、アイドダイド塩類(idodide salts)、チタン塩類(titanium salts)、セリウム塩類(ceric salts)および過マンガン酸塩類(permanganate salts)がある。
【0029】
配合9(ムース状発泡(3%H22
【表9】

【0030】
改良配合7(pH調整剤入り)
【表10】

【0031】
改良配合6(pH調整剤入り)
【表11】

【0032】
好ましい配合
【表12】

【0033】
テスト
(A)新鮮な血液でのテスト
直径約4ミリメートルの一滴の新鮮な血液をペトリ皿に塗った。一方は何の処理もせずに放置し、他方はエアスプレイF2-L11 フィンガー ポンプ泡立て器(Airspray F2-L11 Finger Pump Foamer)で起泡した配合7の過酸化水素の泡で処理を行なった。10分以内に不処理の血液は乾いてしまったが、処理した方の血液は過酸化水素の泡に反応して溶解した。
【0034】
(B)乾燥した血液でのテスト
一滴分の乾いた血液を室温の水道水で10分間処理し、別の一滴分の乾いた血液はエアスプレイF2-L11 フィンガー ポンプ泡立て器(Airspray F2-L11 Finger Pump Foamer)で起泡した配合7の3%過酸化水素の泡で処理を行なった。水道水で処理した乾いた血液は10分経過後も残った。過酸化水素の泡で処理した乾いた血液は10分後には溶解していた。
【0035】
アメリカ合衆国ニューヨーク州ミネオラ所在のルホ社(Ruhof Corporation of Mineola, NY)から市販されている酵素の泡、Prepzyme XF、と比較してさらにテストを行った。一滴分の乾いた血液をPrepzyme XFで処理し、別の一滴分の乾いた血液を配合6の6%過酸化水素の泡で処理をした。10分後、Prepzyme XFで処理した血液は残っていたが、過酸化水素の泡で処理した血液は5分以内で溶解した。
【0036】
(C)泡の安定性のテスト
配合9による泡を、直径150ミリメートル、深さ15ミリメートルのペトリ皿に入れた。Prepzyme XFを同様寸法のペトリ皿に入れた。泡を1時間放置してから観察した。配合9の泡は1時間にわたって実質的にその全体積を保った。ペトリ皿の底面の一部が、泡でもはや覆われない程度に、Prepzymeの泡は、潰れていた。4時間後でも、配合9の泡はペトリ皿の底面を覆っていた。
【0037】
(D)微生物に対するテスト
微生物除去の効力のテストを、配合7の3%過酸化水素の泡および配合6の6%過酸化水素の泡の両方についてPrepzyme XFの酵素泡と比較して、以下のテスト手順で行なった。
ステップ1:微生物懸濁液を無菌のフィルター上に置く。
ステップ2:懸濁液を乾燥させる。
ステップ3:過酸化水素の泡か、または、酵素の泡のいずれかをフィルターを覆うために加える。
ステップ4:泡を微生物上に所定時間だけ定着させる。
ステップ5:フィルターを10ミリリットルの無菌中和/消泡溶液(配合8)で濯ぐ。
ステップ6:フィルターを100ミリリットルの無菌の水で3回濯ぐ。
ステップ7:フィルターをTSA寒天培地上に置いて摂氏32度で48時間恒温培養する。
ステップ8:残った微生物の数を数える(TNTC=数が多すぎるためカウント不可(TNTC=Too Numerous to Count))。
【0038】
二組のサンプルの効力テストの結果
【表13】

【表14】

【0039】
本発明の過酸化水素の泡は、肝炎およびエイズウイルスなどの血液で運ばれる病原体に対して非常に効果がある。従って、過酸化水素の泡で医療器具を処理することにより、器具に触れる医療従事者の偶発的な感染を防止するのに役立つ。
【0040】
泡14に補充剤を加えるのが望ましいこともある。例えば、器具10を腐食させないために、腐食防止剤を加えることが望ましい場合がある。米国特許第6,585,933号で名称「水系における腐食防止方法および組成物 (Method and composition for inhibiting corrosion in aqueous systems)」に良好な腐食防止剤および例が述べられており、この特許の内容のすべては、参照して本明細書に組み入れられる。腐食防止剤は金属および合金の腐食を止めるか、または、その進行を遅らせる化学的化合物である。その効果のメカニズムには不動態化層を形成して、酸化還元腐食システムの酸化部分もしくは還元部分を阻止するか、または、溶解した酸素を取除くものがある。腐食防止剤には、トリアゾール類(triazoles)(ベンゾトリアゾール(benzotriazole)、ヒドロベンゾールトリアゾール(hydrobenzotriazole)、カルボキシベンゾールトリアゾール(carboxybenzotriazole))、アゾル類(azoles)、モリブデン酸塩類(molybdates)(モリブデン酸ナトリウム(sodium molybdate))、バナジウム酸塩類(vanadates)、グルコン酸ナトリウム(sodium gluconate)、安息香酸塩類(benzoates)(安息香酸ナトリウム(sodium benzoate))、タングステン酸塩類(tungstates)、アジミドベンゼン(azimidobenzene)、ベンゼンアミド(benzene amide)、酸化亜鉛(zinc oxide)、ヘキサミン(hexamine)、フェニレンジアミン(phenylenediamine)、ジメチルエタノールアミン(dimethylethanolamine)、亜硝酸ナトリウム(sodium nitrite)、桂皮アルデヒド(cinnamaldehyde)、アルデヒド類およびアミン類(イミン類)の縮合物(condensation products of aldehydes and amines(imines))、アルカノールアミド類(alkanolamides)、クロム酸塩類(chromates)、重クロム酸塩類(dichromates)、ホウ酸塩類(borates)、亜硝酸塩類(nitrites)、リン酸塩類(phosphates)、ヒドラジン(hydrazine)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、ケイ酸ナトリウム(sodium silicate)、樹脂酸ナトリウム(sodium resinate)、およびこれらの組み合わせがある。好ましい腐食防止剤は、アルカノールアミド、ケイ酸ナトリウムおよびトリアゾールである。腐食防止剤の濃度は0.1〜約10重量%が好ましいが、より好ましくは約0.01〜約2重量%、最も好ましくは0.1〜約1.5重量%である。
【0041】
脂肪の同義語としてよく使われる脂質は、一種の炭化水素含有有機化合物である。脂質類は非極性溶剤に溶けるが水には比較的溶けにくい。医療器具に付着している生物学的汚染物質には通常脂質類が含まれ、従って泡14内に脂質溶剤を含ませてこれらの脂質の分解および除去を促進するのが望ましいことがある。
【0042】
脂質溶剤には、アルコール類(alcohols)(メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)および1−プロパノール(1-propanol))、エーテル類(ethers)(ジエチルエーテル(diethyl ether)および石油エーテル(petroleum ether))、グリコールエーテル類(glycol ethers)(プロピレングリコールt-ブチルエーテル(propylene glycol t-butyl ether)およびジプロピレングリコールメチルエーテル(dipropylene glycol methyl ether))、アセトン(acetone)、四塩化炭素(carbon tetrachloride)、クロロホルム(chloroform)、およびd-リモネン含有のシトリスを基剤とした溶液類(citrus-based solutions containing d-limonene)を含む。この泡14については、処置時に脂質/脂肪を医療装置の表面から取除くだけで十分である。脂質/脂肪を完全に溶解しなくてもよい。好ましい脂質溶剤はグリコールエーテル類とd-リモネンである。脂質/脂肪を取除くための溶剤の濃度は約0.01〜約10重量%が好ましく、より好ましくは約0.1〜約5%、最も好ましくは1〜約3%である。
【0043】
過酸化水素と酢酸との組み合わせが過酸化水素だけのものより殺菌効果が高いことを示した。過酸化水素と酢酸とを隣接する別々の容器から供給するのが好ましい。内腔への散布にスプレイを使う場合には、別々のスプレイが使える。しかし、泡について言えば、ひとつひとつの泡で過酸化水素と酢酸との混合が一定していることが望ましい。従って、過酸化水素を含む泡14と酢酸を含む泡とを両方同時に供給するのが望ましいことになる。アメリカ合衆国フロリダ州ポンパーノビーチ所在のエアスプレイインターナショナル社(Airspray International Inc., Pompano Beach, Florida) から市販のDUAL FOAMERは別々であるが隣接している容器から並んで泡を供給する。
【0044】
もっと良いのは発泡する直前に二つの原材料を混合することである。図8は、本明細書で述べたように発泡に適した過酸化水素溶液104を入れた第1室102と、発泡に適した酢酸溶液108を入れた第2室106を備えた泡放出容器100を示す。酢酸溶液108は、過酸化水素を酢酸に置換した配合(5重量%の酢酸を含む酢酸溶液)で過酸化水素溶液に類似している。それぞれ一方向弁114および116を有するチューブ110および112は、それぞれ第1室102および第2室106から泡放出ノズル120が接続されている混合室118へ通じている。第1室102および第2室106内の噴射剤が原動力を生じる。
【0045】
他の手動成分混合泡ディスペンサー(hand operated component mixing foam dispenser)が米国特許第5,918,771号で名称「多成分材料放出用エアロゾル (Aerosol Intended for Dispensing a Multi-Component Material)」に示されており、その全内容は参照して本明細書に組込まれる。他の噴射剤駆動2成分混合泡ディスペンサーが米国特許第6,305,578号に開示されており、その全内容は参照して本明細書に組み入れられる。
【0046】
電池式噴霧器も便利である。そのような噴霧器の一つがアメリカ合衆国ミズーリ州グランドヴュー所在のセイントゴベインカルマー社(Saint-Gobain Calmar, Inc. of Grandview, MO)から市販のBOS-2噴霧器である。この噴霧器には電池駆動のポンプヘッドと、出口部分のひねり(twist)を介して泡をスプレイする状態から閉じた状態に変換するノズルを始めとしてさまざまな利用ができる噴射ノズルと、が組込まれている。このような噴霧器は大量の噴射剤無しで多量の泡を放出でき、かつ、アンドゥ手動動作(undo manual actuation)の使用無しで多量の泡を放出できる。
【0047】
実地の面では、器具10は医療処置中に使い終わると容器12内に入れられる。もし器具10を容器に入れる間合いが長ければ、容器に入れる時に少量の過酸化水素の泡14を各器具全体に付けることができる。ユーザーは全部の器具10を容器にいれて、泡14で器具10を覆ってから容器に蓋をすればよい。泡14は軽いので、器具10と泡14を入れた容器12を医療処置の場所から最終的な汚染除去と殺菌が行なわれる場所へ容易に運ぶことができる。
【0048】
ユーザーがすぐにでも器具の処理ができる時に、蓋を取って消泡液を器具10を覆っている泡14全体に吹き付ける。消泡液の消泡剤が泡14の物理的な構造を潰し、中和剤が過酸化水素を水と酸素に分解するのが好ましい。所望に応じて、器具を容器内で真水または他の溶剤で濯ぐことができる。この後ユーザーはいつものやり方で器具を処理する。
【0049】
本発明を好ましい実施例について述べてきた。前述の詳細な説明を読み理解すれば他の人々は変形および変更を思い付くであろうことは明らかである。本発明は、変形および変更が添付の特許請求の範囲またはそれに相当するものの範囲内にあるに限って、そのような変形および変更のすべてを含むと解釈されるものである。
【0050】
〔実施の態様〕
(1)医療器具前処理用発泡組成物において、
0.1重量%〜15重量%の範囲内の過酸化水素と、
0.5重量%〜20重量%の範囲内の界面活性剤と、
0.1重量%〜10重量%の範囲内の、シリコーンを含む発泡増進剤と、
を含む、組成物。
(2)実施の態様1に記載の組成物において、
前記過酸化水素が、約2重量%〜10重量%の範囲内で存在する、組成物。
(3)実施の態様2に記載の組成物において、
前記過酸化水素が、約3重量%〜8重量%の範囲内で存在する、組成物。
(4)実施の態様1に記載の組成物において、
前記界面活性剤が、約1重量%〜10重量%の範囲内で存在する、組成物。
(5)実施の態様4に記載の組成物において、
前記界面活性剤が、約2重量%〜6重量%の範囲内で存在する、組成物。
(6)実施の態様1に記載の組成物において、
前記発泡増進剤が、約0.3重量%〜5重量%の範囲内で存在する、組成物。
(7)実施の態様6に記載の組成物において、
前記発泡増進剤が、約0.5重量%〜3重量%の範囲内で存在する、組成物。
(8)実施の態様1に記載の組成物において、
pHが、4.7〜7.5の範囲内である、組成物。
(9)実施の態様8に記載の組成物において、
前記pHが、5〜7の範囲内である、組成物。
(10)実施の態様9に記載の組成物において、
前記pHが、5.5〜6.5の範囲内である、組成物。
【0051】
(11)実施の態様1に記載の組成物において、
約0.5重量%〜20重量%の量の、アクリル重合体を含む増粘剤、
をさらに含む、組成物。
(12)実施の態様11に記載の組成物において、
約1重量%〜10重量%の量の、アクリル重合体を含む増粘剤、
をさらに含む、組成物。
(13)実施の態様1に記載の組成物において、
約1.5重量%〜5重量%の量の、アクリル重合体を含む増粘剤、
をさらに含む、組成物。
(14)実施の態様1に記載の組成物において、 前記組成物は、加圧泡供給容器に収納される、組成物。
(15)実施の態様1に記載の組成物において、
前記組成物は、手動ポンプ式泡供給容器に収納される、組成物。
(16)実施の態様1に記載の組成物において、
過酢酸、
をさらに含む、組成物。
(17)実施の態様1に記載の組成物において、
腐食防止剤、
をさらに含む、組成物。
(18)実施の態様17に記載の組成物において、
前記腐食防止剤は、アルカノールアミド、ケイ酸ナトリウム、および、トリアゾール類からなる群から選ばれる、組成物。
(19)実施の態様18に記載の組成物において、
前記腐食防止剤が、前記泡内に約0.01〜約10重量%の範囲内で存在する、組成物。
(20)実施の態様19に記載の組成物において、
前記腐食防止剤が、前記泡内に約0.05〜約2重量%の範囲内で存在する、組成物。
(21)実施の態様20に記載の組成物において、
前記腐食防止剤が、前記泡内に0.1〜約1.5重量%の範囲内で存在する、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明によるシステムのブロック図である。
【図2】図1のシステムを改良したもののブロック図である。
【図3】図1のシステムに使用する泡ディスペンサーの正面図である。
【図4】図1のシステムに使用する他の泡ディスペンサーの正面図である。
【図5】図1のシステムに使用する容器の正面断面図である。
【図6】図1のシステムに使用する他の容器の正面断面図である。
【図7】図1のシステムに使用するさらに他の容器の正面断面図である。
【図8】図1のシステムに使用する多成分泡ディスペンサーの正面断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具前処理用発泡組成物において、
0.1重量%〜15重量%の範囲内の過酸化水素と、
0.5重量%〜20重量%の範囲内の界面活性剤と、
0.1重量%〜10重量%の範囲内の、シリコーンを含む発泡増進剤と、
を含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、
前記過酸化水素が、約2重量%〜10重量%の範囲内で存在する、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物において、
前記過酸化水素が、約3重量%〜8重量%の範囲内で存在する、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物において、
前記界面活性剤が、約1重量%〜10重量%の範囲内で存在する、組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物において、
前記界面活性剤が、約2重量%〜6重量%の範囲内で存在する、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物において、
前記発泡増進剤が、約0.3重量%〜5重量%の範囲内で存在する、組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物において、
前記発泡増進剤が、約0.5重量%〜3重量%の範囲内で存在する、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物において、
pHが、4.7〜7.5の範囲内である、組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物において、
前記pHが、5〜7の範囲内である、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物において、
前記pHが、5.5〜6.5の範囲内である、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物において、
約0.5重量%〜20重量%の量の、アクリル重合体を含む増粘剤、
をさらに含む、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物において、
約1重量%〜10重量%の量の、アクリル重合体を含む増粘剤、
をさらに含む、組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物において、
約1.5重量%〜5重量%の量の、アクリル重合体を含む増粘剤、
をさらに含む、組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物において、
前記組成物は、加圧泡供給容器に収納される、組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物において、
前記組成物は、手動ポンプ式泡供給容器に収納される、組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物において、
過酢酸、
をさらに含む、組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物において、
腐食防止剤、
をさらに含む、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物において、
前記腐食防止剤は、アルカノールアミド、ケイ酸ナトリウム、および、トリアゾール類からなる群から選ばれる、組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物において、
前記腐食防止剤が、前記泡内に約0.01〜約10重量%の範囲内で存在する、組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物において、
前記腐食防止剤が、前記泡内に約0.05〜約2重量%の範囲内で存在する、組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の組成物において、
前記腐食防止剤が、前記泡内に0.1〜約1.5重量%の範囲内で存在する、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−314767(P2007−314767A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−91350(P2007−91350)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】