説明

医療支援システムおよび医療支援方法

【課題】各病院等が高価な医療用の画像生成装置を購入しなくても、その画像生成装置が被検体に対して生成した画像データを利用することができる。
【解決手段】 医療システム1では、PETセンター17がPET装置を所有している。市立病院11等は、PETセンター17に要求を送信し、それらの被検者(患者)のPET画像データをPETセンター17のPET装置で生成させる。PETセンター17は、生成したPET画像データを、光ファイバ19を介して、要求元の市立病院11等に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET等の被検体の画像を生成する画像生成装置を効率的に利用することを支援する医療支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
がんや脳血管障害、痴呆などの早期診断に有効と注目されているPET(ポジトロン断層画像診断装置)は、極微量の放射性元素を添加した特殊な薬剤を注射し、体内から放出される放射線を検出することで、糖代謝など代謝機能を画像化し、病気の有無や程度を調べる検査法である。これは、X線CTやMRIなど、組織の形態の異常から病気を見つける従来の検査法とは根本的に異なる。PETは病気の早期発見だけでなく、治療方針の選択や治療効果の確認にも有効だと高い評価を受けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、PETは、非常に高価であると共に、その操作には知識・経験を要する。従って、各病院がそれを購入して使用する場合、経済的および作業的な負担が非常に大きいという問題がある。
同様の問題は、CTおよびMRI等のその他の医療用の画像生成装置についてもある。
【0004】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するために、各病院等が高価な医療用の画像生成装置を購入しなくても、その画像生成装置が被検体に対して生成した画像データを利用することができるシステムおよびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するため、第1の観点の発明の医療支援システムは、被検体に付与された識別データと前記被検体の担当病院の通信アドレスとを対応付けて記憶する第1の記憶装置と、前記被検体内の画像データを生成する画像生成装置と、前記被検体の前記識別データと、当該被検体について前記画像生成装置が生成した前記画像データとを対応付けて記憶する第2の記憶装置と、前記被検体を特定する情報と前記担当病院の通信アドレスとを少なくとも含む要求データを受信すると、当該被検体に前記識別データを付与し、当該付与した前記識別データと前記通信アドレスとを対応付けて第1の記憶装置に書き込み、前記画像生成装置が生成した前記画像データを、それに対応した前記被検体の前記識別データと対応付けて前記第2の記憶装置に書き込み、指定された前記識別データをキーとして前記第2の記憶装置から前記画像データを読み出し、当該指定された前記識別データをキーとして前記第1の記憶装置から前記担当病院の通信アドレスを読み出し、前記読み出した画像データを前記読み出した通信アドレスに送信する処理を行う制御装置とを有する。
【0006】
第1の観点の発明の医療支援システムでは、制御装置が、被検体を特定する情報と前記担当病院の通信アドレスとを少なくとも含む要求データを受信すると、当該被検体に前記識別データを付与する。
そして、前記制御装置が、上記該付与した前記識別データと前記通信アドレスとを対応付けて第1の記憶装置に書き込む。
次に、前記制御装置が、画像生成装置が生成した前記画像データを、それに対応した前記被検体の前記識別データと対応付けて第2の記憶装置に書き込む。
次に、前記制御装置が、指定された前記識別データをキーとして前記第2の記憶装置から前記画像データを読み出し、当該指定された前記識別データをキーとして前記第1の記憶装置から前記担当病院の通信アドレスを読み出し、前記読み出した画像データを前記読み出した通信アドレスに送信する処理を行う。
【0007】
第2の観点の発明の医療支援方法は、被検体を特定する情報と前記被検体の担当病院の通信アドレスとを少なくとも含む要求データを受信すると、前記被検体に識別データを付与し、前記被検体に付与された前記識別データと前記被検体の担当病院の通信アドレスとを対応付けて示す第1の管理データを生成し、画像生成装置を用いて前記被検体内の画像データを生成し、前記画像生成装置が生成した前記画像データと、それに対応した前記被検体の前記識別データとを対応付けて示す第2の管理データを生成し、指定された前記識別データをキーとして前記第2の管理データを基に前記画像データを取得し、当該指定された前記識別データをキーとして前記第1の管理データを基に前記担当病院の通信アドレスを取得し、前記取得した画像データを前記取得した通信アドレスに送信する処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各病院が高価な医療用の画像生成装置を購入しなくても、その画像生成装置が被検体に対して生成した画像データを利用することができるシステムおよびその方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係わる医療システムについて説明する。
先ず、本実施形態の構成要素と、本発明の構成要素との対応関係を説明する。
図2に示すデータベース35が本発明の第1の記憶装置の一例であり、データベース37が本発明の第2の記憶装置の一例であり、PET装置39が本発明の画像生成装置の一例であり、制御装置41が本発明の制御装置の一例である。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係わる医療システム1の全体構成図である。
図1に示すように、医療システム1は、例えば、市立病院11、大学病院13および医療センター15と、PETセンター17との間を光ファイバ19等の通信回線を介して接続した構成を有している。
医療システム1では、PETセンター17がPET装置を所有している。市立病院11、大学病院13および医療センター15は、PETセンター17に要求を送信し、それらの被検者(患者)のPET画像データをPETセンター17のPET装置で生成させる。
PETセンター17は、生成したPET画像データを、光ファイバ19を介して、要求元の市立病院11、大学病院13および医療センター15に送信する。
市立病院11、大学病院13および医療センター15は、受信したPET画像データを基に、患者の診断あるいは治療を行う。
【0011】
図2は、図1に示すPETセンター17が備えるシステムの構成図である。
図2に示すように、PETセンター17が備えるシステムは、例えば、インタフェース31、入力装置33、データベース(記憶装置)35、データベース37、PET装置39および制御装置41を有する。
【0012】
インタフェース31は、光ファイバ19を介して、市立病院11のコンピュータ21、大学病院13のコンピュータ23および医療センター15のコンピュータ25と接続されている。
【0013】
入力装置33は、例えば、パーソナルコンピュータであり、披検者がPETセンター17に来たときに行った受付情報を入力するために用いられる。
当該受付情報は、例えば、被検者の名前、住所、保険証番号、担当病院名、必要に応じて担当病院が発したカルテ情報(診断結果)等である。
【0014】
データベース35は、例えば、図3に示す管理データTB1を記憶する。
図3に示すように、管理データTB1は、各披検者毎に、その披検者ID、その属性データPR、その担当病院の通信アドレスADRとを対応付けて示している。
披検者IDは、システム内で各披検者をユニークに特定するための識別データである。
属性データPRは、披検者の名前、住所、年齢、並びに上記診察結果等のデータである。当該診察結果は、例えば、市立病院11、大学病院13あるいは医療センター15において、当該披検者に対して医師が行った診断結果であり、特にPET装置39における処理に必要なデータである。
なお、属性データPRは、例えば、インタフェース31が受信したサービス要求内に含まれる情報を基に生成してもよし、入力装置33が入力した受付情報を基に生成してもよい。
通信アドレスADRは、図1に示すコンピュータ21,23,25のアドレスである。
【0015】
データベース37は、図4に示す管理データTB2を記憶する。
図4に示すように、管理データTB2は、例えば、披検者IDと、その披検者についてPET装置39が生成したPET画像データIMとを対応付けて記憶する。
なお、管理データTB2に対応付けられるのは、PET画像データIM自体ではなく、PET画像データIMへのパスデータ(記憶アドレスデータ)であってもよい。
【0016】
PET装置39は、被検者(被検体)内に取り込まれた放射性医薬品(ポジトロン核種)に含まれる陽電子(positoron)が消滅するときに発生する1対のγ線(2個のフォトン)を検出して画像化したPET画像データIMを生成する。複数の検出器リングを有する多断層型PET装置で2次元スキャンを行う場合には、各検出器リングの検出面に斜めから入射するような放射線を除去するための遮蔽盤(セプタ又はスライスコリメータとも呼ばれる)が各検出器リングの境界面上に挿入される。この場合の検出断層面としては、同一検出器リング内での同時計数データを断層データとして収集するダイレクトプレーンと、隣り合うリング間での同時計数データを収集するクロスプレーンとがあり、一般に、検出器リング数がn個のPET装置では2n−1プレーンの断層データであるPET画像データIMを収集できる。
【0017】
制御装置41は、図2に示すシステムを統括的に制御する。
【0018】
図5は、図2に示すシステムの動作例を説明ための図である。
図5に示す処理は、例えば、制御装置41によって統括的に制御される。
以下、図5に示す各ステップを説明する。
【0019】
ステップST1:
制御装置41は、例えば、インタフェース31を介してコンピュータ21,23,25のいずれかからサービス要求を受信したか否かを判断し、受信したと判断するとステップST2に進む。
当該サービス要求内には、披検者の属性データPRや要求元の病院(担当病院)の通信アドレス等の情報が含まれている。
【0020】
ステップST2:
制御装置41は、ステップST1で受信したサービス要求内の属性データPRで示される披検者に対して披検者IDを発行する。
【0021】
ステップST3:
制御装置41は、ステップST2で発行した披検者IDのエントリを、図3に示す管理テーブルTB1に追加し、そのエントリにステップST1で受信したサービス要求に含まれる属性データPRおよび通信アドレスを設定する。
【0022】
ステップST4:
制御装置41は、例えば、披検者と連絡をとって取得した情報、あるいはステップST1で受信したサービス要求内に含まれる予約希望情報等を基に、当該披検者によるPET装置39の使用の予約を受け付ける処理を行う。
【0023】
ステップST5:
制御装置41は、予約日時に、図3に示す管理データTB1から、予約に係わる披検者IDに対応した属性データPRを読み出し、それを基にPET装置39に設定処理を行う。当該設定処理では、例えば、披検者の身長、体重、性別、検査対象部位等のPET装置39の動作に必要な情報を自動的に設定する。
これにより、PET装置39は、被検者に適した処理によるPET画像データIMを生成することが可能になる。
【0024】
ステップST6:
PET装置39は、ステップST5の設定内容に従って、披検者のPET画像データIMを生成する。
【0025】
ステップST7:
制御装置41は、ステップST6でPET装置39が生成したPET画像データIMと、披検者の披検者IDと対応付けたエントリを図4に示す管理データTB2に追加する。
【0026】
ステップST8:
制御装置41は、PET画像の送信条件を満たしたか否かを判断し、満たしたと判断するとステップST9に進み、そうでない場合には上記判断を繰り返す。
送信条件は、例えば、担当病院からの送信希望日時、あるいはシステム内で予め決められたルールに従って規定される。
【0027】
ステップST9:
制御装置41は、送信条件を満たした披検者IDに対応する通信アドレスを、図3に示す管理データTB1から読み出す。
【0028】
ステップST10:
制御装置41は、送信条件を満たした披検者IDに対応するPET画像データIMを図4に示す管理データTB2から読み出す。
【0029】
ステップST11:
制御装置41は、ステップST10で読み出したPET画像データIMを、図2に示すインタフェース31および光ファイバ19を介して、ステップST9で読み出した通信アドレスに送信する。
これにより、市立病院11、大学病院13あるいは医療センター15のコンピュータ21,23,25は、自らの患者である披検者のPET画像データIMを取得でき、それを基に診察を行うことができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の医療システム1によれば、市立病院11、大学病院13および医療センター15は、図2に示す高価なPET装置39を自ら購入することなく、自らの患者のPET画像データIMを取得できる。そのため、自らの患者のがん、脳血管障害、痴呆等についてより正確な早期診断を行うことができる。
また、医療システム1によれば、市立病院11、大学病院13および医療センター15の医師等は、PET装置を操作する必要がないため、負担を軽減できる。
また、PET装置39を保有するPETセンター17は、多数の病院からの要求に応じてPET装置39を利用させ、その利用に対して費用を請求することで、経済的な利益を得ることができる。
また、PETセンター17は、PET画像データに基づいた診断は行わないため、PET装置39の運用およびその教員を集中的に管理でき、効率を高められる。
【0031】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
上述した実施形態では、本発明の画像生成装置として、PET装置を例示したが、CT装置やMR装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、PET等の被検体の画像を生成する画像生成装置を用いたシステムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 図1は、本発明の医療支援システムの全体構成図である。
【図2】 図2は、図1に示すPETセンターに備えられたシステムの構成図である。
【図3】 図3は、図2に示すデータベース35が記憶する管理データTB1を説明ための図である。
【図4】 図4は、図2に示すデータベース37が記憶する管理データTB1を説明ための図である。
【図5】 図5は、図2に示すシステムの動作例を説明ためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
11…市立病院、13…大学病院、15…医療センター、17…PETセンター、21,23,25…コンピュータ、31…インタフェース、33…入力装置、35…データベース、37…データベース、39…PET装置、41…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に付与された識別データと前記被検体の担当病院の通信アドレスとを対応付けて記憶する第1の記憶装置と、
前記被検体内の画像データを生成する画像生成装置と、
前記被検体の前記識別データと、当該被検体について前記画像生成装置が生成した前記画像データとを対応付けて記憶する第2の記憶装置と、
前記被検体を特定する情報と前記担当病院の通信アドレスとを少なくとも含む要求データを受信すると、当該被検体に前記識別データを付与し、当該付与した前記識別データと前記通信アドレスとを対応付けて第1の記憶装置に書き込み、前記画像生成装置が生成した前記画像データを、それに対応した前記被検体の前記識別データと対応付けて前記第2の記憶装置に書き込み、指定された前記識別データをキーとして前記第2の記憶装置から前記画像データを読み出し、当該指定された前記識別データをキーとして前記第1の記憶装置から前記担当病院の通信アドレスを読み出し、前記読み出した画像データを前記読み出した通信アドレスに送信する処理を行う制御装置と
を有する医療支援システム。
【請求項2】
被検体を特定する情報と前記被検体の担当病院の通信アドレスとを少なくとも含む要求データを受信すると、前記被検体に識別データを付与し、
前記被検体に付与された前記識別データと前記被検体の担当病院の通信アドレスとを対応付けて示す第1の管理データを生成し、
画像生成装置を用いて前記被検体内の画像データを生成し、
前記画像生成装置が生成した前記画像データと、それに対応した前記被検体の前記識別データとを対応付けて示す第2の管理データを生成し、
指定された前記識別データをキーとして前記第2の管理データを基に前記画像データを取得し、当該指定された前記識別データをキーとして前記第1の管理データを基に前記担当病院の通信アドレスを取得し、
前記取得した画像データを前記取得した通信アドレスに送信する処理を行う
医療支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−334848(P2007−334848A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193358(P2006−193358)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(305053514)医療法人 祥仁会 (1)
【Fターム(参考)】