説明

医療機器データのデータ送信システム

【課題】測定を行う医療機器と、その測定結果に関するデータを受け取る端末との関係を確実に維持しつつ、電磁波による悪影響を極力防止し、しかも省電力を図ることができるデータ送信システムを提供すること。
【解決手段】前記複数の携帯用医療機器と、前記医療機器用端末に、それぞれ、低い電力で動作され出力の弱い近距離通信用の第1の通信部と、第1の通信部よりも高い電力を必要とするが、出力が高く、より大容量の通信に適した第2の通信部とが備えられており、前記医療機器用端末が、第2の通信部を起動して前記携帯用医療機器からの処置・検査情報との間の送受信作業を終了するまで前記第2の通信部の起動を維持するとともに、前記携帯用医療機器は、患者毎のおよび/または処置・検査作業毎のデータ送信のさいだけ前記第2の通信部によるデータ送信を行う構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として医療施設内等で患者の治療や検査に用いる医療機器の治療、検査、測定等で得られる医療機器データを、簡単かつ確実に管理装置に取り込むためのデータ送信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、糖尿病患者のように血液中の血糖値成分を定期的に監視し、適切な治療を受けるために病院等の施設に複数の患者が入院している場合がある。このような医療施設では、看護師が多数の患者について血糖値を測定するために、持ち運びに便利で、正確に血糖値を測ることができる装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−318928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置では、発色試薬を担持した試験紙に検体成分を染み込ませて、パルス光の照射により測色して反射光の強度差から正確に成分を検出するようになされていたり、検体成分と反応する酵素試薬系などで発生する電気的な変化を電流や電圧を測定することにより成分を検出するようになされ、全体にコンパクトであって、多数の患者の血糖値を順番に計測するために持ち運ぶのに好適である。
【0005】
しかしながら、医療施設等では、血糖測定に関する医療機器だけでなく、多種類の医療機器を持ち運び、複数の患者の体温・血圧・血糖値・酸素飽和度などのバイタル情報を測定・記録し、日々の経過を観察する業務を遂行している。つまり、一人の患者について、病気によっては、複数種類のバイタル値の定期的測定等が必要なことが多い。
【0006】
そこで、現在では看護師が医療機器と入力するノート型の汎用端末(PC=パーソナルコンピュータ)等を患者のベッドサイドまで運び、バイタル測定後に汎用端末へ手入力している。この作業は煩雑であるとともに入力ミスなどによる医療過誤の危険がある。
省力化のためにバイタル情報の測定データを汎用端末に無線通信で送信する試みがなされているが、測定データと患者とが正しく紐付けされなければ医療過誤の原因となる。また、看護師はバイタル情報の測定を行う際には患者のバイタル情報以外の情報も入力する必要がある。
【0007】
さらに、病棟などではバイタル情報を測定する医療機器と、該医療機器からの送信データを受信する汎用端末の入れ替わりが多く、同一機種が多数存在している。医療機器と測定データを受信する汎用端末(ノートパソコン)を確実に接続し、他の看護師が使用する同種の医療機器からのデータを誤って受信しないこと、あるいは、その逆で他の汎用端末に測定データを送信しないことが必要とされる。
さらに、電池で駆動する医療機器においては省電力を図らなければならない。
しかも、データ通信に伴い、医療現場において、電磁波の不要輻射により、ノイズの悪影響が出てしまうという、所謂電磁環境の乱れを考慮する必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、測定を行う医療機器と、その測定結果に関するデータを受け取る端末との関係を確実に維持しつつ、電磁波による悪影響を極力防止し、しかも省電力を図ることができる医療施設内等で患者の治療や検査に用いる医療機器の治療、検査、測定等のデータを簡単かつ確実に管理装置に取り込むためのデータ送信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、本発明にあっては、複数の携帯用医療機器と、患者とを収容する施設において、前記携帯用医療機器により前記患者への処置・検査のデータを、情報処理装置である複数の医療機器用端末へ送信する医療機器データの送信システムであって、前記複数の携帯用医療機器と、前記医療機器用端末とには、それぞれ、低い電力で動作され出力の弱い近距離通信用の第1の通信部と、第1の通信部よりも高い電力を必要とするが、出力が高く、より大容量の通信に適した第2の通信部とが備えられており、前記複数の医療機器用端末の少なくとも一つを起動して、同時にその前記第1の通信部を起動させた状態にて、前記複数の携帯用医療機器のうちのひとつの携帯用医療機器を当該ひとつの医療機器用端末に近接させることにより、該携帯用医療機器の前記第1の通信部を起動させて、第1の通信部どうしをデータ通信可能とし、該第1の通信部を介して、前記ひとつの医療機器用端末は、前記携帯用医療機器との間で前記した互いの第2の通信部の接続に必要なデータを送受信して、当該ひとつの携帯用医療機器と前記医療機器用端末とを互いに特定した状態にて送受信を行えるようにし、前記医療機器用端末が、前記第2の通信部を起動して前記携帯用医療機器からの処置・検査情報との間で行う送受信作業を終了するまで前記第2の通信部の起動を維持するとともに、前記携帯用医療機器は、患者毎のおよび/または処置・検査作業毎のデータ送信の際だけ前記第2の通信部によるデータ送信を行う構成とした医療機器データの送信システムにより、達成される。
【0010】
上記構成によれば、沢山あるうちの一つの医療機器用端末を起動して、その前記第1の通信部を起動させた状態にて、沢山あるうちのひとつの携帯用医療機器を当該ひとつの医療機器用端末に近接させることにより、該携帯用医療機器の前記第1の通信部を起動させて、第1の通信部どうしをデータ通信可能とている。これによって、はじめて第2の通信部による接続情報等をやりとりして、該第2の通信部を機器と端末とを相互に特定して送受信可能とすることができる。
したがって、沢山ある中からひとつの医療機器と、その測定データを受信するひとつの汎用端末(ノートパソコン)を確実に接続し、他の看護師等が使用する同種の医療機器からのデータを誤って受信することなく、あるいは他の医療機器用端末に、誤って測定データを送信してしまう事態を有効に防止することができる。
また、携帯用医療機器についても医療機器用端末についても、常時、第2の通信部により強い電磁波を輻射する必要がなく、必要最低限での電磁波放射が可能となるので、相互にノイズが問題となることや、電波障害が生じることがなく、特に心臓ペースメーカ等の電子治療機器を使用することの多い医療施設では、電波による誤動作等の弊害を極力抑制できる。
また、携帯用医療機器は、比較的大きな電力を必要とする第2の通信部の使用頻度や使用時間を抑制できるので、バッテリ消費を抑えることができ、省電力に寄与できる。
ここで、携帯用医療機器側の第2の通信部は、患者一人のひとつの検査・測定、もしくは処置結果を得るごとにデータ送信してもよいが、携帯用医療機器が複合機能を持つ場合には、患者毎に複数種類の測定データ等をまとめて送信するようにしてもよい。
【0011】
また、前記医療機器用端末が、測定プログラムを保持しており、前記ひとつの医療機器により測定されるべき複数の患者の患者データを保持していることを特徴とする。
上記構成によれば、ひとつの携帯用医療機器を用いて、数人の患者が入っている病院の大部屋等におけるバイタル測定を効率よく行うことができる。
【0012】
また、前記携帯用医療機器の前記第2の通信部は、当該携帯用医療機器の電源がオフされた場合、特定の測定データの送信が完了した場合、前記医療機器用端末との接続が所定時間維持できなかった場合に終了する構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、前記携帯用医療機器において、一度第2の通信部が起動された後においても、データ送信がされないことが判明している状態では、当該第2の通信部をオフすることにより、該第2の通信部が無用に維持されていることによる弊害を防止することができる。
【0013】
また、前記医療機器用端末の前記第2の通信部は、測定プログラムが終了した場合、および予定された測定データを全て受領した場合に終了する構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、前記医療機器用端末においても、一度第2の通信部が起動された後においても、データの受信がされないことが判明している状態では、当該第2の通信部をオフすることにより、該第2の通信部が無用に維持されていることによる弊害を防止することができる。
【0014】
また、前記第1の通信部がISO15693やISO18092などの磁気結合通信であり、前記第2の通信部がブルートゥースや無線LANであることを特徴とする。
上記構成によれば、本発明の目的沿った第1の通信部と第2の通信部を確実に実現することができる。
また、ひとつの前記携帯用医療機器の第1通信部とひとつの前記医療機器用端末の第1の通信部が通信可能とされたとき、前記ひとつの医療機器用端末に通信接続できる他の前記携帯用医療機器の種類あるいは数の少なくともどちらかを制限するように構成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、複数種類の携帯用医用機器が同時に医療機器用端末と接続可能とすることができ、複数の前記携帯用医療機器の該第2の通信部の通信接続が無用に維持されることによる弊害を防止することができる。つまり、体温計などの患者毎に使用する携帯用医療機器は測定の度に前記ひとつの医療機器用端末と通信接続を行い、血圧計などの看護師毎に使用する携帯用医療機器については利用開始時にのみ前記ひとつの医療機器用端末に通信接続を行えばよい。また、通信接続を行った際にはそれまでに通信接続を行った同種の携帯用医用機器との接続を切断すればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、測定を行う医療機器と、その測定結果に関するデータを受け取る端末との関係を確実に維持しつつ、電磁波による悪影響を極力防止し、しかも省電力を図ることができるデータ送信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかるデータ送信システムのブロック構成図。
【図2】図1のデータ送信システムの使用の様子を示す説明図。
【図3】図1のデータ送信システムにおけるデータ送信の一例を示すタイムチャート。
【図4】図1のデータ送信システムを使わない場合のデータ送信の例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態にかかるデータ送信システムのブロック構成図である。
図1において、データ送信システム10は、携帯用医療機器20と、この携帯用医療機器20から処置・検査データの送信を受ける医療機器用端末40とを含んでいる。
ここで、医療機器用端末40は、例えば、管理システム50に含まれるものを使用すると好ましい。管理システム50は、病院等、医療機関の管理運営を行うためのものであり、例えば、病院内に設けた図示しない通信回線、すなわち、伝送線やバスを介して、例えば、病院内のイントラネット等を介して、図示しない複数の診療用端末や医療機器を接続し、管理するものである。それに加えて、患者とその診療に関する情報を管理する医療管理システムの一部として構成することができる。
この通信回線は、あるいはインターネット等を用いて、病院等の医療施設から遠隔の地にある代理店や修理・検査機関・医療機器メーカー等のサイトにあるホストコンピュータ(図示せず)を利用して構成することもできる。
【0019】
具体的には、管理システムには、少なくとも、図1の管理装置60が含まれている。
管理装置60は、制御部であるホストコンピュータ62と、このホストコンピュータ62には、外部通信部61を介して、医療機器用端末40が接続されるようになっている。また、管理装置60は、通信プロトコルや管理システム等に関する各種プログラムコードを記憶する記憶部63(データサーバを含む)を有している。
すなわち、記憶部63は、データサーバを中心として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、もしくはハードディスク等を有し、これらは他のデバイスとともにバスを介して接続されている。
ホストコンピュータである制御部62はCPU(Central Processing Unit)を有し、所定のプログラムの処理を行う他、バスに接続されたROM等を制御している。ROMは、各種プログラムや各種情報等を格納している。RAMは、メモリ内に使用プログラムを展開し、処理中のメモリの内容を対比したり、プログラムを実行するためのエリアとしての機能を有する。
【0020】
記録部63には少なくとも図示された各種データが格納されている。
すなわち、記憶部63には、管理対象となる医療機器に関する機器データ64が格納されている。機器データ64は、各医療機器に関する管理用のデータを格納している。
また、記録部63には入院患者や診療に通う患者のIDや通院期間等の記録や、各患者と登録されている医療機器の関係等に関する患者データ65、患者別の治療内容や入院歴等の診療記録66、患者別の投薬記録や医療機器による処置や検査の記録である処方記録67等が含まれている。
【0021】
医療機器用端末40は、好ましくは、携帯に便利なノート型のパソコン(パーソナルコンピュータ)などで構成されている。
医療機器用端末40は、CPUを中心としたコンピュータ本体である制御部44を備え、ROMとRAM47、ハードディスク等のデータ蓄積用記憶装置46および図示しないキーボードや入力パッドなどの入力手段と、出力手段としての液晶画面などでなる表示部49、二次電池等でなる駆動電源48等を有している。
記憶部46には、後述する携帯用医療機器20から送られてくる検査・測定の結果による測定データを収集するための測定用プログラムが格納されている。この測定用プログラムは、携帯用医療機器の種類に応じて、例えば、後述する手順で測定や検査を実行した結果としての医療機器データの送信を受け取る具体的シーケンスを含んでいる。特に、測定用プログラムは、携帯用医療機器20の使用時に、医療機器用端末40が当該携帯用医療機器20の機種情報であるID28を認識した時には、当該ひとつの医療機器用端末40に通信接続できる同じ種類の携帯用医療機器20の数を制限するように構成されている。
具体的には、例えば、一つのノートパソコン(医療機器用端末40)が複数の血糖値測定装置(携帯用医療機器20)とピコネット(後述)を構成しないようになっている。いいかえれば、一つの医療機器用端末40は、一台の血糖測定装置、一台の血圧計、一台の体温計等、医療機器一台毎に通信接続可能となるようにされている。
さらに、制御部44に接続された通信回路でなる外部通信部43を介して、第1の通信部41と、第2の通信部42とを備えている。
【0022】
第1の通信部41は、好ましくは、ISO15693やISO18092による磁気結合通信等を用いた近距離通信(NFC)(Near Field Communication)を利用したものが適している。消費電力が少なく、対象とする医療機器に近づけることで、通信可能範囲に入ると、容易に通信可能とすることができるからである。この実施形態では磁気結合通信による場合を説明する。
第1の通信部42は、所謂リーダライタであり、医療機器20側の第1の通信部である非接触ICタグとの間で磁界による近距離通信を行い、情報の読み出しと書込みをすることができる。
【0023】
第1の通信部41は、例えば、ループアンテナ71と、該ループアンテ71が受信する信号を復調する復調部72と、復調したデータをインターフェイス43を介して、制御部44に送る構成となっている。
さらに、第1の通信部41は、発振器74により生成された搬送波を変調部73に与え、変調部73は、変調後の信号をループアンテナ71から輻射する。ループアンテナ73は所定の電磁波を輻射し、それに対する負荷の変化に基づいて、非接触ICタグでなる第1の通信部21(携帯用医療機器20)が通信可能範囲に入ったことを検出するようになっている。携帯用医療器具20の医療機器用端末40の第1の通信部41に対するデータ転送に使用される周波数帯域の中心周波数は、13.56メガヘルツ、通信距離は半径10センチ程度である。
【0024】
医療機器用端末40には、第2の通信部42が備えられている。
第2の通信部は、公知のブルートゥースや、無線LANを使用することができる。この実施形態では、ブルートゥース(Bluetooth)モジュールが使用されている。
ブルートゥースのネットワークの形態には、「ピコネット」と呼ばれるものがあり、ピコネット内では、マスターとスレーブの関係が周波数軸と時間軸の同期により確立されている必要がある。
したがって、ピコネットを確立するには「問合せ(Inquiry)」という処理および「呼び出し(Page)」という処理により、ブルートゥースアドレスと、ブルートゥースクロックを含む各種の情報が、マスターとスレーブ間で送受信される必要がある。なお、本実施形態では、マスターが医療機器用端末の第2の通信部42であり、スレーブが携帯用医療機器20の第2の通信部(ブルートゥースモジュール)22である。ブルートゥースモジュールによりデータ転送に利用される中心周波数帯は2.4ギガヘルツ、通信距離は半径10ないし100メートル程度である。
【0025】
図1を参照しながら、携帯用医療機器20の構成を説明する。
携帯用医療機器としては、この実施形態では、血糖値測定装置を想定して説明するが、これに限らず、血圧計その他の測定装置等が含まれる。
図において、携帯用医療機器20は、CPUを中心としたコンピュータである制御部24を備え、図示しないROMやRAMその他の記憶装置および図示しない入力手段(操作ボタン等)を備えている。
制御部24には、該制御部の一部として、あるいは制御部24の指示により駆動される機構部や記憶装置の一部として、当該携帯用医療機器20による処置や検査に当たり、医療従事者などから与えられる処方データを保持する処方記録部25と、各携帯用医療機器の種類毎に独自に備える治療や検査機能を実現するための治療検査実行部26と、個別の医療機器を識別するためのID28と、測定結果等を一時格納保持しておく記憶部の一部としての処置・検査記録部26、表示パネル等の表示部29、駆動電力を供給するための二次電池等でなる電源部31等を備えている。
【0026】
さらに、制御部24は、外部とデータのやり取りをするための通信回路を有する外部接続部23を有し、この外部接続部23には、第1の通信部21と、第2の通信部22とが接続されている。
第1の通信部21は、医療機器用端末40の第1の通信部41との間に信号S1のやり取りをするためのものであり、好ましくは、ISO15693やISO18092による磁気結合通信等を用いた近距離通信(NFC)を利用するもので、当然医療機器用端末40の第1の通信部41と同じ通信方式のものが選択される。
【0027】
具体的には、例えば、外部接続部23と接続されたインターフェイス部83と、該インターフェイス部83と接続されたループアンテナ81とを備えており、インターフェイス部21とループアンテナ81との間にはコンデンサ82が設けられている。ループアンテナ81とコンデンサ80とによりLC回路(共振回路)が形成され、特定周波数の信号を生成し、抽出する。
インターフェイス部21には、ループアンテナ81を介して受信した信号を復調する復調部と、復調した信号を安定化させる電圧レギュレータと、さらに前記復調信号は外部接続部23に伝えられる。電圧レギュレータによる直流電流は各部に与えられる。また、インターフェイス部21には発振器および該発振器による搬送波を利用してループアンテナ81に変調した信号を送出する変調部を内蔵している。
第2の通信部22は、この実施形態ではブルートゥースモジュールであり、医療機器用端末40の第2の通信部42のスレイブである。
【0028】
かくして、携帯用医療機器20が、医療機器用端末40に近接され、医療機器用端末40の第1の通信部41が輻射する電磁波が、携帯用医療機器20の第1の通信部21に受信された時、該携帯用医療機器20から、ID28に基づく識別情報が医療機器用端末40の第1の通信部41に送られる。このID28は、それぞれの第2の通信手段22であるブルートゥースユニットに対応して設定されているブルートゥースデバイス名と対応して、医療機器用端末40の記憶部46に登録されているから、これを参照して一致した時、医療機器用端末40がデータの更新の受けるべき携帯用医療機器であると特定して、ブルートゥース通信を行うために上記したピコネット内同期を確立させる。
したがって、医療機器用端末40は、周囲に同種の携帯用医療機器が存在していても、携帯用医療機器20を識別して、該携帯用医療機器20とだけ第2の通信部による送受信を行うことができる。
【0029】
以上より、携帯用医療機器20の第1の通信部21は、医療機器用端末40のリーダライタである第1の通信部が接近し、そこから輻射される13.56メガヘルツの磁界を検知した時に起動される。
そして、ブルートゥースによる通信に必要なブルートゥースアドレスやパスコードを受信するとともに、自らの機種情報(ID28)を送信する。
そして、携帯用医療機器20の第1の通信部21は、該携帯用医療機器20の電源が切られるか、上記接続設定情報であるブルートゥースアドレスやパスコードを送信し終わった場合、さらには、13.56メガヘルツの磁界領域を予め定めた一定期間検知しない場合に、終了する。
【0030】
同様に、携帯用医療機器20の第2の通信部22は、第1の通信部どうしによる接続設定時は起動していないが、上記ブルートゥースアドレスやパスコードを受信して、ピコネットを確立すると起動する。その後、休止していて、携帯用医療機器20が測定・検査に関するデータを取得し、それを送信する際に起動する。
そして、当該測定データ等の送信時には起動しており、次の場合に終了する。
第2の通信部22は、携帯用医療機器20の電源がオフとなった時、測定データ等を送信し終えた時、あるいは医療機器用端末40との接続が一定期間できなかった時に終了する。
【0031】
一方、医療機器用端末40の第1の通信部41は、端末の電源がオンされ測定データ収集のための測定用プログラムが起動することで動作が開始される。
そして、13.56メガヘルツの磁界を出力し、携帯用医療機器20の第1の通信部21から接続設定情報であるブルートゥースアドレスやパスコードを受信する。
さらに、追加情報として、携帯用医療機器20の機種情報(ID28)を受信する。これにより、当該携帯用医療機器20と同種の他の携帯用医療機器の接続設定を拒否する。
そして、第1の通信部41は、医療機器用端末40の測定用プログラムの終了により終了する。
【0032】
医療機器用端末40の第2の通信部42は、第1の通信部どうしによる接続設定時は起動していないが、上記ブルートゥースアドレスやパスコードによりピコネットが確立されたら起動する。その後、医療機器用端末40の測定用プログラムの終了か、医療機器用端末40が必要とする測定データを全て受信した場合に終了する。
【0033】
次に、図2と図3を参照しながら、本実施形態におけるデータ送信システムの動作の一例を説明する。
図2において、K1は、「看護師」を示し、K2は「患者」を示している。
図2(a)において、携帯用医療機器20の保管場所から当該携帯用医療機器20を選ぶ。符号90の端末は、本実施形態の上記した医療機器用端末とは直接関係ない。
携帯用医療機器20は、この場合、携帯用の血糖値測定装置であるが、それ以外の医療機器でもよい。携帯用医療機器20には、第1の通信部21と第2の通信部22が内蔵されている。
【0034】
次いで、図2(b)に示すように、看護師K1は、携帯用医療機器20とともに、医療機器用端末40を用意し、該医療機器用端末40の測定プログラムを起動すると、第1の通信部41が起動して磁界を形成する(図3のP1参照、以下、適宜図3を参照。)。
さらに、看護師K1は、携帯用医療機器20の電源をオンにする(H1)。
そこで、看護師K1が携帯用医療機器20を医療機器用端末40のリーダライタ41の上に置いたり、近づけたりすると、携帯用医療機器20の第1の通信部21は、医療機器用端末40のリーダライタである第1の通信部に接近し、そこから輻射される13.56メガヘルツの磁界を検知して起動される(D1)。
【0035】
これにより、医療機器用端末40の第1の通信部41と携帯用医療機器20の第1の通信部21との間で通信が可能となり、医療機器用端末40は、第1の通信部41を使ってブルートゥースによる通信に必要なブルートゥースアドレスやパスコードを送信する。
これを受け取った携帯用医療機器20は、自らの機種情報(ID28)等を第1の通信部21を用いて送信する。
これにより、上述したように、ブルートゥースのネットワークとしてピコネットが確立するので、相互に第2の通信部22,42間での通信が可能となる。
この場合、既に図1で説明したように、携帯用医療機器20から、ID28に基づく識別情報が医療機器用端末40の第1の通信部41に送られ、このIDは、それぞれの第2の通信手段22であるブルートゥースユニットに対応して設定されているブルートゥースデバイス名と対応して、医療機器用端末40の記憶部46に登録されているから、これを参照して一致した時、医療機器用端末40がデータの更新を受けるべき携帯用医療機器であると特定して、ブルートゥース通信を行うために上記したピコネット内同期を確立させるのである。このため、医療機器用端末40は、周囲に同種の携帯用医療機器が存在していても、携帯用医療機器20を識別して、該携帯用医療機器20とだけ第2の通信部による送受信を行うことができる(D2、P2)。
【0036】
図2(b)において、看護師K1は、携帯用医療機器の第1の通信部21の役割は済んだので、該第1の通信部21から手を離す(H3)。これにより、第1の通信部21の動作は終了する(D3)。そして、医療機器用端末40の第2の通信部42は受信待機状態となる(P3)。
図2(c)に示すように、看護師K1は、医療機器用端末40を傍らに置いて、患者K2に対して携帯用医療機器20を用いて計測を行う(H4)。この場合、携帯用医療機器20は血糖測定装置なので、患者K2の血糖値を測定し測定結果を得る(H5)。これにより、携帯用医療機器20は、携帯用医療機器20の第2の通信部22を起動して、血糖値測定データを送信する(D4)。医療機器用端末40の第2通信部42は、当該計測データを受け取り、応答した旨送信する(P4)。
携帯用医療機器20の第2の通信部22は、応答信号を受信後、第2の通信部の動作を終了する。
【0037】
以下、計測すべき患者の数だけ同様の作業を繰り返す(H6、D6、P5、D7、G)。看護師は、予定されている全ての患者の計測を終了したら(H8)、携帯用医療機器20の電源をオフとする(H9)。これにより携帯用医療機器20の第2の通信部22が測定終了の旨の信号を送出し、医療機器用端末40の第2の通信部42がこれを確認した旨の応答送信を行う(P6)。携帯用医療機器20の第2の通信部22がこの応答送信を受領すると、該携帯用医療機器の第2の通信部22が動作を終了する(D9)。
【0038】
図4は、比較例を示しており。上記の計測作業による計測データの送信を全て第2の通信部に相当するブルートゥースを用いて行った場合を示すタイムチャートである。
説明内容はほとんどが重複するので省略するが、太い縦の二重線内に平行斜線を付した面積につき、図3と図4を比較すると、第2の通信部であるブルートゥースによる通信時間を非常に短くすることができることが理解される。
【0039】
以上説明したように、測定を行う携帯用医療機器20と、その測定結果に関するデータを受け取る医療機器用端末40との関係を確実に維持しつつ、電磁波による悪影響を極力防止し、しかも省電力を図ることができるデータ送信システムを提供することができる。
【0040】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。
上述の実施形態では、血糖値測定装置に発明を適用できる点を説明したが、上記各説明から明らかなように、第1の通信部と第2の通信部を組み込むことができる携帯用の医療機器ならば全て本発明の対象とすることができる。第2の通信部は、ブルートゥースモジュールに限らず、無線LAN等の通信方式を適宜採用することができる。
上記実施形態に記載された事項は、その一部を省略してもよいし、上記で説明しない他の構成と組み合わせることによっても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【符号の説明】
【0041】
10・・・医療機器のデータ送信システム、20・・・携帯用医療機器、21・・・第1の通信部、22・・・第2の通信部、24・・・制御部、40・・・医療機器用端末装置、41・・・第1の通信部、42・・・第2の通信部、44・・・制御部50・・・管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の携帯用医療機器と、患者とを収容する施設において、前記携帯用医療機器により前記患者への処置・検査のデータを、情報処理装置である複数の医療機器用端末へ送信する医療機器データの送信システムであって、
前記複数の携帯用医療機器と、前記医療機器用端末とには、それぞれ、低い電力で動作され出力の弱い近距離通信用の第1の通信部と、第1の通信部よりも高い電力を必要とするが、出力が高く、より大容量の通信に適した第2の通信部とが備えられており、
前記複数の医療機器用端末の少なくとも一つを起動して、同時にその前記第1の通信部を起動させた状態にて、前記複数の携帯用医療機器のうちのひとつの携帯用医療機器を当該ひとつの医療機器用端末に近接させることにより、該携帯用医療機器の前記第1の通信部を起動させて、第1の通信部どうしをデータ通信可能とし、
該第1の通信部を介して、前記ひとつの医療機器用端末は、前記携帯用医療機器との間で前記した互いの第2の通信部の接続に必要なデータを送受信して、当該ひとつの携帯用医療機器と前記医療機器用端末とを互いに特定した状態にて送受信を行えるようにし、
前記医療機器用端末が、前記第2の通信部を起動して前記携帯用医療機器からの処置・検査情報との間で行う送受信作業を終了するまで前記第2の通信部の起動を維持するとともに、前記携帯用医療機器は、患者毎のおよび/または処置・検査作業毎のデータ送信の際だけ前記第2の通信部によるデータ送信を行う構成とした
ことを特徴とする医療機器データの送信システム。
【請求項2】
前記医療機器用端末が、測定プログラムを保持しており、前記ひとつの医療機器により測定されるべき複数の患者の患者データを保持していることを特徴とする請求項1に記載の医療機器データの送信システム。
【請求項3】
前記携帯用医療機器の前記第2の通信部は、当該携帯用医療機器の電源がオフされた場合、特定の測定データの送信が完了した場合、前記医療機器用端末との接続が所定時間維持できなかった場合に終了する構成としたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の医療機器データの送信システム。
【請求項4】
前記医療機器用端末の前記第2の通信部は、測定プログラムが終了した場合、および予定された測定データを全て受領した場合に終了する構成としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の医療機器のデータの送信システム。
【請求項5】
前記第1の通信部がISO15693またはISO18092の磁気結合通信であり、前記第2の通信部がブルートゥースや無線LANであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の医療機器データの送信システム。
【請求項6】
ひとつの前記携帯用医療機器の第1通信部とひとつの前記医療機器用端末の第1の通信部が通信可能とされたとき、前記ひとつの医療機器用端末に通信接続できる他の前記携帯用医療機器の種類あるいは数の少なくともどちらかを制限するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の医療機器データの送信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−233697(P2010−233697A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83237(P2009−83237)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】