説明

医療機器

【課題】体内に留置固定されて被検部位を観察する撮像装置の観察窓に付着する付着物を除去する機能を設け、その除去性能の低下を抑制する医療機器を提供する。
【解決手段】体内に導入される医療機器1であって、外装部2a,2b,3内に配設され、観察窓3aを介して体内を撮像する撮像手段と、外装部2a,2b,3を体壁に固定する固定手段と、外装部2a,2b,3に回動自在に配設され、観察窓3aに付着した付着物を除去する払拭手段を備えた付着物除去手段4と、付着物除去手段4を回動駆動する駆動手段と、観察窓3a外の領域に配設され、付着物除去手段4の汚れ除去性能低下を抑制する性能維持手段60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に導入されて留置固定した状態で患部を観察する医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、医療機器である内視鏡装置は、撮像手段である撮像装置を備えており、患者の体内へ導入されて、撮像装置によって撮影された観察像により、体内患部の各種検査、各種処置などを行うためのものである。また、内視鏡装置には、体内の管腔管路である、食道、胃、大腸、十二指腸などの消化臓器内に口腔、または肛門から導入するもの、臍部近傍から体壁を穿刺して貫通させて、腹腔内へ導入するものがある。このような内視鏡装置などの医療機器は、観察窓の曇り防止、汚れ防止、汚れ除去などのために、以下に記載するような種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、体内の体壁に留置固定して腹腔内を観察するための小型な医療装置が開示されている。この医療装置は、観察窓を被覆する被覆手段により、体内への導入時に観察窓に汚れが付着することを防止して、使用時にクリアな観察画像を種つく刷ることができる医療装置が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、内視鏡の観察窓を払拭するブレードを備えた内視鏡用洗浄シースが開示されている。この特許文献2には、通常の観察または処置の際にブレードにより内視鏡観察を妨げることを防止した内視鏡用洗浄シースの技術が開示されている。
【0005】
さらに、例えば、特許文献3には、内視鏡の観察窓を払拭するワイパを備えた内視鏡用洗浄シースおよび内視鏡装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−35825号公報
【特許文献2】特開2008−132282号公報
【特許文献3】特開2007−130084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載される従来構成の体内に留置される医療用カメラでは、観察窓に汚れが付着して除去する機能を備えていない。そこで、特許文献2または特許文献3に記載されるような従来構成の内視鏡用洗浄シースが備える内視鏡の観察窓の汚れを払拭するブレードまたはワイパを特許文献1に記載されるような体内へ留置する医療用カメラに転用することができる。
【0008】
しかしながら、従来の観察窓を払拭するブレードまたはワイパは、それ自体に払拭した汚れが付着、蓄積などして、観察窓の汚れを除去する性能が低下してしまうという問題がある。つまり、汚れが付着、蓄積などしたブレードまたはワイパは、払拭した汚れを引きずってしまい、観察窓を清浄にする汚れ除去効率が低下し、クリアな視野が得られないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、体内に留置固定されて被検部位を観察する撮像装置の観察窓に付着する付着物を除去する機能を設け、その除去性能の低下を抑制する医療機器を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の医療機器は、体内に導入される医療機器において、外装部内に配設され、観察窓を介して体内を撮像する撮像手段と、前記外装部を体壁に固定する固定手段と、
前記外装部に回動自在に配設され、前記観察窓に付着した付着物を除去する払拭手段を備えた付着物除去手段と、前記付着物除去手段を回動駆動する駆動手段と、前記観察窓外の領域に配設され、前記付着物除去手段の汚れ除去性能を維持する性能維持手段と、を備える。
【0011】
本発明の他の態様の医療機器は、体内に導入される医療機器において、外装部内に配設され、観察窓を介して体内を撮像する撮像手段と、前記外装部を体壁に固定する固定手段と、前記外装部に回動自在に配設され、前記観察窓に付着した付着物を除去する払拭手段を備えた付着物除去手段と、前記付着物除去手段を回動駆動する駆動手段と、を備え、前記外装部は、前記払拭手段が非接触となるように、前記付着物除去手段の回動中心から前記観察窓側に所定の距離だけ偏芯した中心からの第1の曲率半径の外表断面形状とし、前記観察窓は、前記払拭手段が接触するように、前記回動中心からの第2の曲率半径の外表断面形状とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、体内に留置固定されて被検部位を観察する撮像装置の観察窓に付着する付着物を除去する機能を設け、その除去性能の低下を抑制する医療機器を実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の腹腔内設置カメラの構成を示す斜視図
【図2】同、腹腔内設置カメラが腹腔内に設置された状態を示す部分断面図
【図3】同、腹腔内設置カメラの構成を示す分解斜視図
【図4】同、腹腔内設置カメラの構成を示す断面図
【図5】同、カップリング磁石構成のワイパユニットと能動側回動磁石ユニットの構成を示す斜視図
【図6】同、永久磁石の構成を示す平面図
【図7】同、図4のVII−VII線に沿った腹腔内設置カメラの断面図
【図8】同、ワイパクリーニング部の構成を示す断面図
【図9】同、変形例のワイパクリーニング部の構成を示す断面図
【図10】同、ワイパクリーニング部によるワイパブレードの汚れ除去前の状態を示す断面図
【図11】同、ワイパクリーニング部によるワイパブレードの汚れ除去後の状態を示す断面図
【図12】同、変形例のワイパクリーニング部を示す平面図
【図13】同、図12のXIII−XIII線断面図
【図14】本発明の第2の実施形態の腹腔内設置カメラの構成を示す横断面図
【図15】同、変形例の腹腔内設置カメラの構成を示す横断面図
【図16】本発明の第3の実施形態の腹腔内設置カメラの構成を示す縦断面図
【図17】同、図16のXVII−XVII線断面図
【図18】同、図17の位置とは異なる回動するワイパユニットの状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明である医療機器について説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0015】
さらに、本発明の医療機器である腹腔内設置カメラは、ここでは従来手技の腹腔鏡下外科手術を例に挙げて、以下に詳述するが、臍下部などに設けた一カ所の切開創から差し込んだトロッカーに、内視鏡や鉗子などを挿入して行う単孔式腹腔鏡下外科手術(腹壁内視鏡シングルサイト手術ともいう)、経管腔的内視鏡手術(NOTES)などのさらに低侵讐性を向上させた内視鏡下外科手術に適用することができる構成である。
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1から図13は、本発明の第1の実施の形態に係り、図1は腹腔内設置カメラの構成を示す斜視図、図2は腹腔内設置カメラが腹腔内に設置された状態を示す部分断面図、図3は腹腔内設置カメラの構成を示す分解斜視図、図4は腹腔内設置カメラの構成を示す断面図、図5はカップリング磁石構成のワイパユニットと能動側回動磁石ユニットの構成を示す斜視図、図6は永久磁石の構成を示す平面図、図7は図4のVII−VII線に沿った腹腔内設置カメラの断面図、図8はワイパクリーニング部の構成を示す断面図、図9は変形例のワイパクリーニング部の構成を示す断面図、図10はワイパクリーニング部によるワイパブレードの汚れ除去前の状態を示す断面図、図11はワイパクリーニング部によるワイパブレードの汚れ除去後の状態を示す断面図、図12は変形例のワイパクリーニング部を示す平面図、図13は図12のXIII−XIII線断面図である。
【0017】
本実施の形態の医療機器である腹腔内設置カメラ(以下、単にカメラと言う。)1は、図1から図4に示すように、カプセル形状を形成するように略球冠状として両側部分に位置する第1、第2の外装部2a,2bと、これら第1、第2の外装部2a,2bの間に回動自在に配置され、ここでの下部側に観察窓3aを備えた外形円柱状の外装部であるカメラ本体部3と、第1、第2の外装部2a,2bの間にカメラ本体部3を覆うように配設され、円筒外周部を2箇所刳り貫いた開口部となる切欠部4a,4bが形成された付着物除去手段であるワイパユニット4と、を有して主に構成されている。
【0018】
なお、第1の外装部2aの上部からは、ケーブル5が延設されている。このケーブル5の延出端には、外部機器に接続する電気コネクタ5aが設けられている。
【0019】
先ず、本実施の形態のカメラ1は、図2に示すように、腹腔鏡下外科手術に用いられ、患者の体腔の1つである腹腔101内の臓器などを治療するときに治療部位を撮影するために用いられる。
カメラ1は、腹腔101内に向けて腹壁102を穿孔して穿刺される、図示しないトラカールを介して、患者の腹腔101内へ導入される。そして、カメラ1は、腹腔101に穿刺された、図示しない穿刺針などによりケーブル5が掛止され、このケーブル5が腹壁102を貫通するように体外に引き出される。なお、ケーブル5には、この体内、ここでは腹腔101内への導入に際して、図示しないが、電気コネクタ5aを防滴するキャップが装着されるものである。
【0020】
次に、カメラ1のケーブル5は、患者の腹部側に準備されたカメラ固定手段である固定ユニット21の孔部21aに通され、腹壁102側に牽引される。そして、ケーブル5は、カメラ1が腹壁102に近づくように持ち上げられ、体外側へ牽引される。このように、カメラ1は、第1、第2の外装部2a,2bが腹壁102に当接された状態で腹腔101内に留置固定される。
【0021】
なお、固定ユニット21には、カメラ1のケーブル5を体外側で固定する固定レバー22が設けられている。この固定レバー22は、中途部にケーブル5が貫挿する孔部22aが形成され、この孔部22aの位置が固定ユニット21の孔部21aの位置とズレが生じるように固定ユニット21内に設けられたバネ23により、固定ユニット21の一側方向へ付勢されている。
【0022】
つまり、ユーザは、固定ユニット21の孔部21aと、固定レバー22の孔部22aが略一致する位置まで、固定レバー22をバネ23の付勢力に抗して固定ユニット21内へ押し込むと、ケーブル5を容易に牽引することができる。そして、ユーザは、固定レバー22の固定ユニット21内への押し込みを解除すると、バネ23の付勢力を受けて固定レバー22がスライドする。
【0023】
そのため、固定ユニット21の孔部21aの位置に対して、固定レバー22の孔部22aの位置にズレが生じるため、各孔部21a,22aに挿通するカメラ1のケーブル5は、固定ユニット21内で挟持固定される。こうして、カメラ1は、腹腔101内において腹壁102に第1、第2の外装部2a,2bの上部が当接して安定した状態で留置固定される。
【0024】
その後、ケーブル5の電気コネクタ5aに装着されている防滴用のキャップ(不図示)が取り外されて、図示しないビデオプロセッサなどの外部機器に接続される。なお、カメラ1は、ビデオプロセッサなどから電源が供給される構成となっている。
【0025】
ここで、上述した体内、ここでは、腹腔101内に留置固定されるカメラ1の具体的な各種構成要素について、図3、及び図4を用いて、詳しく説明する。
カメラ1の第1の外装部2aは、図3に示すように、外形円柱状のカメラ本体部3の端部が気密保持(水密保持)されるように圧入して嵌合される穴部2cが内部に形成されている。なお、第1の外装部2aとカメラ本体部3を気密保持(水密保持)するために、Oリングなど気密保持(水密保持)部材を設けても良いし、第1の外装部2aとカメラ本体部3とが螺着する構成としても良い。なお、カメラ本体部3は、第1、第2の外装部2a,2bと共に、内蔵する構成要素を気密保持(水密保持)する第3の外装部を構成している。
【0026】
また、組付け時に第1、第2の外装部2a,2bが対向するそれぞれの端面部分には、ワイパユニット4をカメラ本体部3の長手軸回りの回動を保持するため、ワイパユニット4の側部を収容して保持する凹部2dが形成されている(図3では第2の外装部2bの凹部2dは不図示である)。
【0027】
付着物除去手段であるワイパユニット4は、上述した、開口部となる2つの切欠部4a,4bのそれぞれを仕切るように長手方向に沿った2つのアーム部41,42と、これら2つのアーム部41,42に一体に繋がれるように両側に位置する2つの円環部43,44と、一方の円環部43の内周に嵌着された円環状の永久磁石45と、を有して主に構成されている。なお、切欠部4a,4bは、2つに限定されることなく、観察窓3aが露出する大きさであれば幾つでも良く、それに応じてアーム部41,42の数を増やせば良い。
【0028】
このワイパユニット4の一方のアーム部41の内方の面上には、スポンジ、ゴムなどの弾性部材から形成された払拭手段のワイパブレード40が配設されている。なお、ここでは、一方のアーム部41のみにワイパブレード40を配設したが、他方のアーム部42の内方側の面上にも払拭手段であるワイパブレード40を配設しても良い。
【0029】
本実施の形態のカメラ本体部3は、図1〜図3に示したように、ワイパユニット4の汚れ除去性能を維持する性能維持手段である、交換のため着脱自在なワイパクリーニング部60が外周部に配設されている。なお、後で詳しく説明するワイパクリーニング部60は、カメラ本体部3の外表面に一体形成しても良い。
【0030】
また、カメラ本体部3は、図4に示すように、中空形成されており、第1の外装部2aに接続される側とは反対側の端部が第2の外装部2bに気密保持(水密保持)された状態で嵌着されている。このカメラ本体部3には、制御部10と、モータドライバ11と、カメラユニット30と、が内蔵されている。
【0031】
なお、上述したカメラ本体部3に配設される観察窓3aは、サファイアガラス、アクリルなどによって断面円弧状に形成された透明部材である。また、カメラ本体部3の第1の外装部2aに接続される側の端面からは、水密にシーリングされた上述のケーブル5が延出している。つまり、カメラ本体部3内の各種構成要素、特に内蔵する電気的構成要素は、気密保持(水密保持)された状態となっている。
【0032】
制御部10は、カメラ本体部3から延設されるケーブル5と電気的に接続されている。この制御部10からは、フレキシブルプリント基板16,17が延設されている。フレキシブルプリント基板16,17は、モータドライバ11またはカメラユニット30に接続され、制御部10とモータドライバ11またはカメラユニット30の信号の授受、電源供給などが行なわれる。
【0033】
撮像手段(撮像部)であるカメラユニット30は、CCD、CMOSなどの固体撮像素子31と、この固体撮像素子31が実装された撮像基板32と、複数の対物レンズ33と、照明部である複数のLED照明34と、を有して構成されている。このカメラユニット30は、光電変換した画像信号を制御部10へ出力する。そして、制御部10は、ケーブル5を介して、外部機器であるビデオプロセッサ(不図示)へ画像信号を伝送する。なお、カメラユニット30により撮影された画像は、ビデオプロセッサにより画像処理されて、外部モニタに表示される(いずれも不図示)。
【0034】
モータドライバ11は、第2の外装部2b内に配設される駆動手段の1つであるモータ12と電気的に接続される。なお、モータドライバ11は、制御部10の制御信号に基づき、モータ12への電流のON/OFF、流れる方向などを制御するものである。
【0035】
モータ12は、第2の外装部2bに嵌合固定されたモータ保持枠13に保持されている。モータ保持枠13の外周側には、第2の外装部2b内で回動自在な円環状の磁石保持枠46と、この磁石保持枠46の外周に嵌着された円環状の永久磁石47と、を備えた駆動手段の1つを構成する能動側回動磁石ユニット50が配設されている。
【0036】
モータ12は、モータギヤ14がギヤボックス15内の平歯車の伝達ギヤに噛合し、このギヤボックス15の伝達ギヤが磁石保持枠46の内周面に刻設されたギヤ溝に噛合することで、能動側回動磁石ユニット50を回動駆動する。
【0037】
以上に説明した、第2の外装部2b内の各種構成要素も、上述したように、カメラ本体部3が第2の外装部2bに嵌着された状態において、気密保持(水密保持)される。
【0038】
なお、ワイパユニット4は、ゴム、スポンジなどで形成されたワイパブレード40を備えているため、このワイパブレード40を完全に滅菌消毒することが困難であり、使用毎に交換されるディスポーザブルタイプとしている。これに対して、カメラ1は、その他の全ての構成要素が使用前後に滅菌消毒されるリユースとなっている。
【0039】
すなわち、第1、第2の外装部2a,2b、およびカメラ本体部3は、使用前後に滅菌消毒処理されて、内蔵する構成要素を含めて、全てリユース構成となっている。なお、第1の外装部2aから延出するケーブル5の根元部分の気密性(水密性)を確保するために、第1の外装部2aにはパッキン18が配設されている。つまり、本実施のカメラ1は、上述したように、リユース構成である第1、第2の外装部2a,2bおよびカメラ本体部3により、内部の各種電気的構成要素が気密保持(水密保持)された状態で配設されている。
【0040】
以上のように構成された、本実施の形態のカメラ1は、図5に示すように、能動側回動磁石ユニット50がモータ12によって回動駆動されると、能動側回動磁石ユニット50の永久磁石47の引力(磁力)がワイパユニット4の永久磁石45に作用して、ワイパユニット4が能動側回動磁石ユニット50の動き(回動)に追従して回動される。したがって、カメラ1は、ワイパユニット4の永久磁石45が受動側磁石とし、能動側回動磁石ユニット50の永久磁石47が能動側磁石とした非接触のカップリング磁石機構を備えている。
【0041】
また、各永久磁石45,47は、図6に示すように、周回りにS/N極が6分割された6極の円環状磁石が用いられている。なお、各永久磁石45,47は、6極に限定されることなく、2極以上の偶数の極数であれば良いものである。
【0042】
このように、カメラ1は、カメラ本体部3の外周側で、ワイパユニット4が、例えば、図7に示すカメラ本体部3の長手方向回りの矢印方向に回動されて、ワイパブレード40が観察窓3aを通過する度に、観察窓3aの表面の曇り、汚れなどが払拭されて除去される構成とすることができる。つまり、ワイパユニット4は、ワイパブレード40がカメラ本体部3の外周面に接触した状態で、カメラ本体部3の外周回りに沿って回動する。
【0043】
そして、ワイパブレード40は、観察窓3aの表面を通過するとき、この表面上の付着物である曇りまたは粘膜、血液などの汚れを払拭して、観察窓3aの曇りまたは汚れを除去して清浄する。こうして、カメラ1は、観察窓3aの外表面に曇り、汚れなどが付着したとしても、容易、且つ確実に、観察窓3aに付着する付着物を除去することができる。
【0044】
また、カメラ1は、ワイパユニット4の回動駆動を、ビデオプロセッサにコントローラを接続して、ユーザが、適宜、コントローラを操作することで行なうようにしても良いし、電源が入っている間、常にワイパユニット4が回動駆動するようにしても良い。なお、ユーザが適宜、コントローラを操作することでワイパユニット4が回動する構成の場合、ワイパユニット4の各アーム部41,42が観察窓3a上で停止しないようにして、観察窓3aが切欠部4a(または4b)により露出して視界が遮られないような、ワイパユニット4の回動初期位置を設定すると良い。
【0045】
ここで、払拭手段のワイパブレード40の性能維持手段であるワイパクリーニング部60について、以下に詳しく説明する。
本実施の形態のワイパクリーニング部60は、図1から図3に示したように、カメラ本体部3の長手方向に沿った凹凸溝を備えたブロック体であって、断面形状が、例えば、図7および図8に示すような尖形状となっている。なお、ワイパクリーニング部60は、断面が図9に示す矩形状の凹凸溝でも良い。
【0046】
このワイパクリーニング部60は、ワイパユニット4が回動し、観察窓3aの領域外のカメラ本体部3の外周部において、ワイパブレード40が回動により移動する軌跡上にあれば、何処に設置しても良いが、ここではワイパブレード40が観察窓3aを通過する前であって、ワイパクリーニング部60を鉛直上方側から鉛直下方側に通過する側のカメラ本体部3における一方の側部に配設されている。なお、ワイパクリーニング部60は、ワイパブレード40が移動して通過する方向に対して直交した凹凸溝が形成されている。
【0047】
以上のように構成された、本実施の形態のカメラ1は、図5に示した、カップリング磁石機構により、非接触にて、ワイパユニット4を回動駆動する構成となっている。つまり、カメラ1は、駆動要素であるモータ12、能動側回動磁石ユニット50などがワイパユニット4に直接的に接触することなく、気密保持(水密保持)されたリユース側の内部に配設した構成として、ワイパユニット4を非接触にて回動駆動する構成となっている。
【0048】
これにより、カメラ1は、リユースの第1、第2の外装部2a,2bおよびカメラ本体部3のそれぞれを組付けた状態では、内部の特に電気的構成要素に対して気密性(水密性)が保たれた状態となっている。また、カメラ1は、ワイパユニット4を除く、第1、第2の外装部2a,2bおよびカメラ本体部3を使用前後にオートクレーブなどにより高温高圧滅菌処理を行なっても、第2の外装部2bおよびカメラ本体部3が組み付けられた状態にしておくことで、内部の特に電気的構成要素に対して気密性(水密性)が保たれた状態となり、内蔵する電気的構成要素に対して気密保持(水密保持)も行うことができる。なお、ケーブル5の端部に配設される電気コネクタ5aには、防滴用のキャップが装着されるものである。
【0049】
そして、回動によって、カメラ本体部3の外周部に接触して、特に、観察窓3aの汚れを払拭したワイパユニット4のワイパブレード40は、図10および図11に示すように、付着した汚れ110がワイパクリーニング部60を鉛直上方側から鉛直下方側に通過することで、ワイパクリーニング部60の凹凸溝によって汚れ110が削ぎ落とされ、またはワイパクリーニング部60に汚れ110が吸着される。このように、ワイパユニット4のワイパブレード40は、ワイパクリーニング部60を通過する度に、付着する汚れ110がある程度に除去されて、汚れ110が蓄積することが抑制される。
【0050】
なお、本実施の形態では、ワイパクリーニング部60をワイパブレード40が鉛直上方側から鉛直下方側に通過する、カメラ本体部3の一方の外周側部に配設することで、ワイパブレード40から削ぎ落とされた汚れ110が観察窓3aに付着することなく、鉛直下方側に弾き飛ばされるため、ワイパクリーニング部60への汚れ110の蓄積も軽減できる。
【0051】
さらに、ワイパクリーニング部60は、観察窓3aの他、カメラ本体部3の外周部に付着する汚れ110を引き摺ってくるため、ワイパブレード40が観察窓3aを通過する直前側のカメラ本体部3の一方の外周側部に配設している。これにより、ワイパクリーニング部60により汚れ110が除去された後のワイパブレード40は、カメラ本体部3の外周部に接触する距離が短く、新たな汚れ110が付着、蓄積などする量も少なく、比較的にきれいな状態で、観察窓3aを通過させることができる。
【0052】
以上の説明から、本実施の形態のカメラ1は、観察窓3aに付着する付着物を除去するワイパユニット4のワイパブレード40の汚れ除去性能の低下を防止/抑制することができる。その結果、カメラ1は、観察窓3aにワイパブレード40が通過する度に観察窓3aの汚れが払拭されて、クリアな観察画像で撮影することができる。
【0053】
なお、図12および図13に示すように、ワイパクリーニング部60の短手方向に沿った両側部に、凹凸溝に接続されるように直交して形成され、この凹凸溝によってワイパブレード40から削ぎ取った汚れ110を鉛直下方へ排出する溝部61を設けても良い。
【0054】
(第2の実施の形態)
次に、図14および図15を用いて、本発明に係る第2の実施の形態について、以下に説明する。なお、図14および図15は、本発明の第2の実施の形態に係り、図14は腹腔内設置カメラの構成を示す断面図、図15は変形例の腹腔内設置カメラの構成を示す断面図である。
また、以下の説明において、上述した第1の実施の形態の医療機器であるカメラ1の構成要素と同一の構成要素について同じ符号を用い、それら構成要素の詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施の形態の医療機器である腹腔内設置カメラ(以下、単にカメラと言う。)1は、図14に示すように、上述の第1の実施の形態で記載した観察窓3aの領域外となるワイパユニット4の各アーム部41,42にワイパブレード40の他、スポンジなどの保水性を有する、ここでの性能維持手段である保液部材48を設けた構成となっている。
【0056】
これら保液部材48は、ワイパユニット4の所定の回動方向に対し、各アーム部41,42に配設されたワイパブレード40よりも先にカメラ本体部3の外周部および観察窓3aの表面に接触するようにワイパブレード40に隣接されて、各アーム部41,42に配設されている。
【0057】
これら保液部材48には、生理食塩水、生体適合性のある曇り止めなどの薬剤が使用前に含有される。つまり、カメラ1は、ワイパユニット4の保液部材48に生理食塩水、曇り止めなどの薬剤を保水した状態で使用される。なお、使用される薬剤は、一般的に内視鏡下手術で用いられている曇り止めが使用される。
【0058】
このように構成された本実施の形態のカメラ1は、ワイパユニット4の回動時に、先ず、カメラ本体部3の外周部、および観察窓3aの表面に保液部材48が接触後に、ワイパブレード40が接触する。このとき、保液部材48に含ませた生理食塩水、曇り止めなどの液体は、カメラ本体部3の外周部、および観察窓3aの表面に塗着される。そして、カメラ本体部3の外周部、および観察窓3aの表面に塗着された生理食塩水、曇り止めなどの液体が汚れと共にワイパブレード40により払拭される。
【0059】
特に、観察窓3aの表面に付着する粘膜、血液などの汚れは、カメラ本体部3内のカメラユニット30の発熱により乾燥して硬化してしまう。しかし、上述した構成とすることで、硬化してしまった汚れがワイパブレード40により払拭し難くなったとしても、保液部材48が通過することで汚れが生理食塩水、曇り止めなどの液体の水分を含んで軟化する。そして、保液部材48の後に通過するワイパブレード40は、軟化した汚れを容易に払拭することができ、汚れ除去性能の低下を抑制することができる。さらに、保液部材48に含ませる薬剤を曇り止めにすることで、観察窓3aの表面への曇りの発生を抑制することができる。なお、使用時にカメラ1の内部または外部から保液部材48に生理食塩水、曇り止めなどの薬剤を供給する機構をカメラ1に配設しても良い。
【0060】
また、上述では、ワイパユニット4の各アーム部41,42にワイパブレード40および保液部材48を配設したが、一方のアーム部41,42だけにワイパブレード40および保液部材48を設けても十分に観察窓3a表面の汚れ除去または曇り抑制の効果がある。
【0061】
さらに、図15に示すように、一方のアーム部41にワイパブレード40を設け、他方のアーム部42に保液部材48を配設しても良い。また、第1の実施の形態で記載したワイパクリーニング部60をカメラ本体部3に設けた構成に、本実施の形態の保液部材48を備えたワイパユニット4の構成を併用したカメラ1としても良い。
【0062】
(第3の実施の形態)
次に、図16から図18を用いて、本発明に係る第3の実施の形態について、以下に説明する。なお、図16から図18は、本発明の第3の実施の形態に係り、図16は腹腔内設置カメラの構成を示す縦断面図、図17は図16のXVII−XVII線断面図、図18は図17の位置とは異なる回動するワイパユニットの状態を示す断面図である。
また、以下の説明において、上述した第1の実施の形態の医療機器であるカメラ1の構成要素と同一の構成要素について同じ符号を用い、それら構成要素の詳細な説明を省略する。
【0063】
本実施の形態の医療機器である腹腔内設置カメラ(以下、単にカメラと言う。)1は、図16から図18に示すように、上述の第1の実施の形態で記載したカメラ本体部3のカメラユニット30が内蔵される部分が、ワイパユニット4の中心(回動中心)O1から、ここでは下方側にある観察窓3a側に所定の距離だけ偏芯させた位置の中心O2とした円弧の外周面を有する円筒状の胴部35を備えた構成となっている。なお、図16に示すように、カメラ本体部3の胴部35は、ワイパユニット4のワイパブレード40の長手方向に沿った長さよりも長く、ここでは下方側にずれるようにカメラ本体部3の断面形状が凹状となるように形成されている。
【0064】
また、カメラ本体部3の観察窓3aは、胴部35の下方側に配設され、ワイパユニット4の中心O1とした円弧断面の外表面を有している。換言すると、観察窓3aは、ワイパユニット4の中心O1とする所定の曲率半径R1を有する円に外表断面が一致している。
【0065】
これに対して、カメラ本体部3の胴部35は、ワイパユニット4の中心O1に偏芯した中心O2とする所定の曲率半径R2を有する円と外表断面が一致している。
【0066】
このように構成された本実施の形態のカメラ1は、ワイパユニット4の回動時に、ワイパブレード40が観察窓3aの表面のみに接触する(図17の状態)。そして、ワイパブレード40は、観察窓3aへ接触して通過する前後のカメラ本体部3の胴部35の表面には接触しない(図18の状態)。
【0067】
したがって、ワイパブレード40は、観察窓3aのみに付着する曇り、汚れなどを払拭除去して清浄にする。すなわち、中心O1回りに回動するワイパユニット4のワイパブレード40は、観察窓3aに接触する端部の軌跡上にカメラ本体部3の胴部35の外表面が存在しないため、観察窓3aの外表面にのみ接触する。
【0068】
このような構成とすることで、ワイパブレード40に胴部35の外表面に付着する汚れなどに接触せず蓄積しないため、観察窓3aのみの曇り、汚れなどを確実に払拭して取り除けるようになる。これに加え、カメラ1の使用時におけるワイパブレード40の汚れ除去性能の低下を抑制することができる。
【0069】
なお、第1、第2の実施の形態で記載したワイパクリーニング部60および/または保液部材48を本実施の形態のカメラ1に設けても良い。
以上の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態、および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0070】
1…腹腔内設置カメラ
2a…第1の外装部
2b…第2の外装部
2c…穴部
2d…凹部
3…カメラ本体部
3a…観察窓
4…ワイパユニット
4a,4b…切欠部
5…ケーブル
5a…電気コネクタ
10…制御部
11…モータドライバ
12…モータ
13…モータ保持枠
14…モータギヤ
15…ギヤボックス
16,17…フレキシブルプリント基板
18…パッキン
21…固定ユニット
21a,22a…孔部
22…固定レバー
22a…孔部
23…バネ
30…カメラユニット
31…固体撮像素子
32…撮像基板
33…対物レンズ
34…照明
35…胴部
40…ワイパブレード
41,42…アーム部
43,44…円環部
45,47…永久磁石
46…磁石保持枠
48…保液部材
50…能動側回動磁石ユニット
60…ワイパクリーニング部
61…溝部
101…腹腔
102…腹壁
O1…中心
O2…中心
R1…曲率半径
R2…曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に導入される医療機器において、
外装部内に配設され、観察窓を介して体内を撮像する撮像手段と、
前記外装部を体壁に固定する固定手段と、
前記外装部に回動自在に配設され、前記観察窓に付着した付着物を除去する払拭手段を備えた付着物除去手段と、
前記付着物除去手段を回動駆動する駆動手段と、
前記観察窓外の領域に配設され、前記付着物除去手段の汚れ除去性能低下を抑制する性能維持手段と、
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項2】
前記性能維持手段は、前記外装部の前記払拭手段が移動する軌跡上に配設され、前記体内に留置固定された状態における鉛直上方側から鉛直下方側に向けて前記払拭手段が通過する前記外装部の一側部に配設されていることを特徴とする請求項1の医療機器。
【請求項3】
前記性能維持手段は、前記払拭手段に蓄積する汚れを除去する凹凸溝を有していることを特徴とする請求項2の医療機器。
【請求項4】
前記性能維持手段は、前記凹凸溝に接続されて直交した溝部が側部に形成されていることを特徴とする請求項3の医療機器。
【請求項5】
さらに、前記性能維持手段を構成し、前記付着物除去手段に配設され、使用時に液体を含有して保液し、前記観察窓の表面に前記気体を塗着する保液部材を備えていることを特徴とする請求項2から請求項4に請求項の医療機器。
【請求項6】
前記保液部材は、前記付着物除去手段の回動方向に対し、前記払拭手段よりも先に前記観察窓の表面に接触するように前記払拭手段に隣接して配設されていることを特徴とする請求項5の医療機器。
【請求項7】
前記性能維持手段は、前記付着物除去手段に配設され、使用時に液体を含有して保液し、前記観察窓の表面に前記気体を塗着する保液部材であることを特徴とする請求項1の医療機器。
【請求項8】
前記保液部材は、前記付着物除去手段の回動方向に対し、前記払拭手段よりも先に前記観察窓の表面に接触するように前記払拭手段に隣接して配設されていることを特徴とする請求項7の医療機器。
【請求項9】
体内に導入される医療機器において、
外装部内に配設され、観察窓を介して体内を撮像する撮像手段と、
前記外装部を体壁に固定する固定手段と、
前記外装部に回動自在に配設され、前記観察窓に付着した付着物を除去する払拭手段を備えた付着物除去手段と、
前記付着物除去手段を回動駆動する駆動手段と、
を備え、
前記外装部は、前記払拭手段が非接触となるように、前記付着物除去手段の回動中心から前記観察窓側に所定の距離だけ偏芯した中心からの第1の曲率半径の外表断面形状とし、
前記観察窓は、前記払拭手段が接触するように、前記回動中心からの第2の曲率半径の外表断面形状としたことを特徴とする医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−147940(P2012−147940A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8844(P2011−8844)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】