説明

医療用ガイドワイヤ

【課題】
ガイディングカテーテルを湾曲させた場合における抵抗を低減させ、かつその抵抗を低減した状態を長く継続させる耐久性を向上させた医療用ガイドワイヤを提供する。
【解決手段】
医療用ガイドワイヤ1のコアシャフト3は、コイル体5の基端側にコイル体5の径よりも細い第2の円筒部11を有し、その第2の円筒部には、親水性材料7が被覆されている。また、第2の円筒部11を被覆する親水性材料7は、コイル体5を被覆する親水性材料7よりも厚く被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管、消化管、尿管等の管状器官や体内組織に挿入して使用されるカテーテル等の医療器具を案内するために種々の医療用ガイドワイヤが提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、先端部より後端側が一定径であって先端先細り形状のワイヤ本体2と、そのワイヤ本体2の先端部分に巻回された螺旋状のコイル4と、そのコイル4を覆う樹脂被覆層6と、樹脂被覆層6の基端部とワイヤ本体2との間の段差空間を埋める環状部材5とから構成された医療用ガイドワイヤが記載されている。
【0004】
また、特許文献1に記載の医療用ガイドワイヤにおける樹脂被覆層6の外表面及び環状部材5の外表面には、親水性潤滑層13が形成されている。
【0005】
特許文献1は、この文献に記載の発明によれば、医療用ガイドワイヤと医療器具とを組み合わせて使用する場合に、医療用ガイドワイヤが医療器具に引っ掛かることが防止されるとしている。
【0006】
ここで、医療用ガイドワイヤと医療器具とを組み合わせて使用する場合を図面を参照して説明する。
【0007】
図6〜図8は、大腿動脈から心臓に至る領域に配置された医療器具であるガイディングカテーテル及び医療用ガイドワイヤの状態を示す状態説明図であり、図6は、医療用ガイドワイヤ50の先端が左冠状動脈67の左冠状動脈主幹部61に達した状態を示し、図7は、医療用ガイドワイヤ50の先端が左冠状動脈67の左前下行枝63に位置する狭窄部71に達した状態を示し、図8は、医療用ガイドワイヤ50の先端が左前下行枝63の末端部に達した状態を示す。
【0008】
先ず、図6に示すように、ガイディングカテーテル51の先端部を、大腿動脈から下行大動脈57、大動脈弓55及び上行大動脈65へと前進させて、大動脈弁53の手前の右冠状動脈59又は左冠状動脈67の一方の入口に定置させる(図6では、ガイディングカテーテル51を左冠状動脈67の入口に定置させている。)。そして、医療用ガイドワイヤ50を定置されたガイディングカテーテル51内に挿入してガイディングカテーテル51の先端部から突出させる。
【0009】
なお、左冠状動脈67は、動脈の上流側に位置する左冠状動脈主幹部61と、その左冠状動脈主幹部61から分岐した一方の下流側に位置する左回旋枝69と、左冠状動脈主幹部61から分岐した他方の下流側に位置する左前下行枝63とから構成される。
【0010】
ここで、例えば、左前下行枝63の所定位置に狭窄部71が存在する場合には、図7に示すように、ガイドワイヤ50を狭窄部71の位置まで前進させて狭窄部71が形成された動脈の部分を治療することとなる。
【0011】
また、図8に示すように、ガイドワイヤ50を左前下行枝63の末端部まで前進させることも可能である。
【0012】
図6〜図8に示すように、定置されたガイディングカテーテル51は、大腿動脈からほぼ直線状に延び、下行大動脈57から大動脈弓55に至る領域73において湾曲し、上行大動脈65から左冠状動脈67に至る手前の領域75においてさらに曲率半径が小さい状態で湾曲し、左冠状動脈67の入口付近の領域77でさらに曲率半径が小さい状態で湾曲している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−307367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載の医療用ガイドワイヤは、樹脂被覆層6の外表面及び環状部材5の外表面が親水性潤滑層13で被覆されているものであるが、図6〜図8に示すようにガイディングカテーテル51が湾曲した状態においては、領域73、領域75及び領域77において医療用ガイドワイヤ50とガイディングカテーテル51との摺動抵抗が増大するという問題があった。
【0015】
また、医者の手技中においては、医療用ガイドワイヤとガイディングカテーテルとが継続して摺動するものであるから、医療用ガイドワイヤとガイディングカテーテルとの摺動抵抗を低減させた状態を可能な限り長く継続させる耐久性についても考慮する必要があった。
【0016】
また、特許文献1に記載の医療用ガイドワイヤは、樹脂被覆層6の基端部とワイヤ本体2との間の段差空間を環状部材5によって埋めるものであるが、ワイヤ本体2と環状部材5との間には角部を有する凹み部が形成されているため、医療用ガイドワイヤを操作する際の抵抗がこの凹み部によっても増大するという問題があった。
【0017】
さらに、特許文献1に記載の医療用ガイドワイヤの凹み部が角部を有しているため、血液または体液がその凹み部に滞留する可能性があるという問題もあった。
【0018】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ガイディングカテーテルを湾曲させた場合における抵抗を低減させた医療用ガイドワイヤを提供すること、また、その抵抗を低減した状態を長く継続させる耐久性を向上させた医療用ガイドワイヤを提供すること、さらには、操作する際の血液または体液の流れを阻害しない医療用ガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的を達成するために、本願請求項1に係る発明は、コアシャフトと、そのコアシャフトの少なくとも先端部を覆うコイル体とを備えた医療用ガイドワイヤにおいて、特に、前記コアシャフトは、前記コイル体の基端側に前記コイル体の径よりも細い円筒部を有し、前記円筒部には、親水性材料が被覆されていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記親水性材料は、前記コイル体にも被覆されており、前記円筒部を被覆する親水性材料の厚みは、前記コイル体を被覆する親水性材料の厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0021】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記親水性材料を含む前記円筒部の径は、前記親水性材料を含む前記コイル体の径よりも細いことを特徴とする。
【0022】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れかに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記コイル体の基端部から前記円筒部までの領域を流線形状に形成したことを特徴とする。
【0023】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記コイル体の基端部から前記円筒部までの中間領域を直線状に形成したことを特徴とする。
【0024】
さらに、請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れかに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記円筒部は、前記コアシャフトの先端から50〜350mmの範囲内に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本願請求項1に係る発明によれば、医療用ガイドワイヤのコアシャフトは、コイル体の基端側にコイル体の径よりも細い円筒部を有し、円筒部には、親水性材料が被覆されているので、ガイディングカテーテルとその内部に挿入された医療用ガイドワイヤの円筒部との間に空隙を確保することができ、ガイディングカテーテルを湾曲させた場合に、たとえガイディングカテーテルの内表面とガイドワイヤの外表面が接触した場合においても、径の異ならない円筒部によってガイドワイヤの操作性が変化することがない。また、円筒部には親水性材料が被覆されているので、ガイディングカテーテルと医療用ガイドワイヤとの摺動抵抗をさらに低減することができ、手技を行う医者にとって操作性の良い医療用ガイドワイヤを提供することができる。
【0026】
また、請求項2に係る発明によれば、親水性材料はコイル体にも被覆されており、円筒部を被覆する親水性材料の厚みは、コイル体を被覆する親水性材料の厚みよりも厚いので、請求項1に係る発明の効果に加え、医者が手技を長い時間継続した場合においても、ガイディングカテーテルと医療用ガイドワイヤとの抵抗を低減した状態を維持することができ、耐久性を向上させることができる。
【0027】
また、請求項3に係る発明によれば、親水性材料を含む円筒部の径は、親水性材料を含むコイル体の径よりも細いので、請求項2に係る発明の効果に加え、手技を行う医者にとってさらに操作性の良い医療用ガイドワイヤを提供することができる。
【0028】
また、請求項4に係る発明によれば、コイル体の基端部から円筒部までの領域を流線形状に形成したので、請求項1〜3の何れかに記載の発明の効果に加え、医療用ガイドワイヤをカテーテル内、管状器官内または体内組織内で引く場合における摺動抵抗を低減することができ、手技を行う医者にとってさらに操作性の良い医療用ガイドワイヤを提供することができる。
【0029】
また、請求項5に係る発明によれば、コイル体の基端部から円筒部までの中間領域を直線状に形成したので、請求項4に係る発明の効果に加え、血液または体液を滞留させることがなく、血液または体液の流れを阻害することがない。
【0030】
さらに、請求項6に係る発明によれば、円筒部は、コアシャフトの先端から50〜350mmの範囲内に設けられているので、ガイディングカテーテルを心臓に適用する場合に生ずる湾曲形状に特に好適な医療用ガイドワイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の医療用ガイドワイヤの第1実施形態を示す全体図である。
【図2】第1実施形態のコアシャフトの第2の円筒部を拡大した部分拡大図である。
【図3】第1実施形態のコアシャフトとコイル体との接続状態を示す部分拡大図である。
【図4】第2実施形態のコアシャフトとコイル体との接続状態を示す部分拡大図である。
【図5】第3実施形態のコアシャフトとコイル体との接続状態を示す部分拡大図である。
【図6】大腿動脈から心臓に至る領域に配置されたガイディングカテーテル及び先端が左冠状動脈の左冠状動脈主幹部に達した医療用ガイドワイヤの状態図である。
【図7】大腿動脈から心臓に至る領域に配置されたガイディングカテーテル及び先端が左冠状動脈の左前下行枝に位置する狭窄部に達した医療用ガイドワイヤの状態図である。
【図8】大腿動脈から心臓に至る領域に配置されたガイディングカテーテル及び先端が左前下行枝の末端部に達した医療用ガイドワイヤの状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の医療用ガイドワイヤを図面に示す好適実施形態に基づいて説明する。
【0033】
<第1実施形態>
図1は、本発明の医療用ガイドワイヤの第1実施形態を示す全体図である。
【0034】
なお、図1では、説明の都合上、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
また、図1では、理解を容易にするため、医療用ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、全体的に模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0035】
図1において、医療用ガイドワイヤ1は、コアシャフト3と、そのコアシャフト3の先端部を覆うコイル体5とから構成され、コアシャフト3の先端部とコイル体5の先端部とは最先端部9において固着されている。
【0036】
コアシャフト3の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼(SUS304)が使用されている。その他、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、タングステン線等の材料を使用することも可能である。
【0037】
コアシャフト3は、基端側から先端側に向けて全体的に先細り形状をなしている。コアシャフト3は、その基端から所定距離の位置に位置する第1の円筒部21と、その第1の円筒部21の先端方向に隣接する第1のテーパ部27と、その第1のテーパ部27の先端方向に隣接する第2の円筒部11(本発明の円筒部に相当)と、その第2の円筒部11の先端方向に隣接する第2のテーパ部25と、その第2のテーパ部25の先端方向に隣接する第3の円筒部19と、その第3の円筒部19の先端方向に隣接する第3のテーパ部29と、その第3のテーパ部29の先端方向に隣接する第4の円筒部31と、その第4の円筒部31の先端方向に隣接するテーパプレス部33と、そのテーパプレス部33の先端方向に隣接する円筒プレス部35とから構成されている。
【0038】
なお、テーパプレス部33は、プレス加工によって側断面形状をテーパ形状にしたものであり、円筒プレス部35は、プレス加工によって側断面形状を円筒形状にしたものである。
【0039】
第2の円筒部11は、医療用ガイドワイヤ1の先端から50〜350mmの領域に形成されている。ここで、50〜350mmの領域とは、前述した左冠状動脈67の左前下行枝63または左回旋枝69に狭窄部71が存在し、その狭窄部71に治療を施している場合に領域77、領域75及び領域73を含む領域を意味する。
【0040】
医療用ガイドワイヤ1の先端から50〜350mmの領域を第2の円筒部11として円筒形状にしている理由は、領域77、領域75及び領域73におけるガイディングカテーテルと医療用ガイドワイヤとの摺動抵抗を一定にするためである。
【0041】
一方、第2の円筒部11を円筒形状ではなく、例えばテーパ形状又は円錐形状に形成した場合には、領域77、領域75又は領域73において摺動抵抗が変動する可能性があり、手技中における操作性が低下する可能性がある。
【0042】
また、領域75及び領域77における曲率半径は、領域73における曲率半径よりも小さいことから、第2の円筒部11の形成領域を領域75及び領域77のみに限定して適用しても効果を得ることは可能である。その場合には、第2の円筒部11を医療用ガイドワイヤ1の先端から50〜250mmの領域に形成すれば良い。
【0043】
なお、本実施形態においては、大腿動脈から心臓に至る領域に配置されたガイディングカテーテルの形状に基づいて、医療用ガイドワイヤ1の第2の円筒部11を形成しているが、ガイディングカテーテルを使用する体内箇所によって湾曲する位置が異なることから、その体内箇所に合わせて第2の円筒部11を形成する必要がある。
【0044】
また、ガイディングカテーテル以外の医療器具と医療用ガイドワイヤ1とを組み合わせて使用する場合には、それらの医療器具の湾曲形状に合わせて第2の円筒部11を形成する必要がある。
【0045】
しかしながら、何れの場合にも、第2の円筒部11を円筒状に形成する点、第2の円筒部11をコイル体5よりも基端側に形成する点及び第2の円筒部11の外径をコイル体5の外径よりも細く形成する点は共通している。
【0046】
第2の円筒部11をコイル体5の基端側にコイル体5の外径よりも細く形成することにより以下の効果を奏する。
【0047】
すなわち、医療用ガイドワイヤ1の最先端部9を含むコイル体5を体内に挿入させた場合には、コイル体5が体内を通過することにより、体内にコイル体5の外径に相当する空洞がコイル体5の基端側に形成される。コイル体5の基端側に位置する第2の円筒部11はコイル体5の外径よりも細く形成されているため、コイル体5が通過することにより形成された空洞と第2の円筒部11との間には空隙が生じる。
【0048】
この空隙の発生により、第2の円筒部11と空洞との間の摺動抵抗を低減することができる。
【0049】
また、図6〜図8で図示したように、ガイディングカテーテルが湾曲した場合、または、医療用ガイドワイヤ1自体が体内で単独で湾曲した場合においても、コイル体5が通過することにより形成される空洞と第2の円筒部11との間の摺動抵抗を低減することができる。
【0050】
コイル体5の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼(SUS304)が使用されている。その他、コアシャフト3と同様に、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、タングステン線等の材料を使用することも可能である。
【0051】
コイル体5は、コアシャフト3の先端部にコイル状に巻回されており、最先端部9に連続するコイル先端ロウ付け部15、そのコイル先端ロウ付け部15の基端側に位置するコイル中間ロウ付け部17を含む複数のコイル中間ロウ付け部及びコイル体5の基端に位置するコイル基端ロウ付け部13の複数箇所にてコアシャフト3の先端部にロウ付け固定されている。
【0052】
なお、図1には、一つのコイル中間ロウ付け部17のみが図示され、その他のコイル中間ロウ付け部は省略されている。
【0053】
コイル体5は、最先端部9近傍においては、隣接する素線間に空隙が生ずるように巻回されており、コイル先端ロウ付け部15の基端側に隣接するコイル中間ロウ付け部17から基端側においては、隣接する素線が接触するように巻回されている。
【0054】
なお、本実施形態におけるコイル体5の素線の素線径は同一径であるが、コイル体5の基端から先端方向に沿って徐々に素線径を細く形成しても良く、コイル中間ロウ付け部17より先端側の素線の素線径をそれ以外の素線の素線径よりも細く形成しても良い。
【0055】
コイル体5の基端から先端方向に沿って徐々に素線径を細く形成すれば、医療用ガイドワイヤ1の先端部分の柔軟性を徐々に高めることができ、コイル体5全体を湾曲させる場合に有効である。
【0056】
一方、コイル中間ロウ付け部17より先端側の素線の素線径をそれ以外の素線の素線径よりも細く形成すれば、コイル中間ロウ付け部17より先端側の柔軟性を高めることができ、コイル中間ロウ付け部17よりも先端側の領域における比較的曲率半径の小さな湾曲を実行させる場合に有効である。
【0057】
また、医療用ガイドワイヤ1の最先端部9からコイル体5及び第2の円筒部11までの外表面には、親水性材料7が被覆されている。
【0058】
親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミドのブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸塩等が挙げられる。
なお、本実施形態における親水性材料7は、ヒアルロン酸塩である。
【0059】
医療用ガイドワイヤ1に被覆された親水性材料7は、カテーテル内、管状器官内または体内組織内における医療用ガイドワイヤ1の摺動抵抗を低減するものである。
【0060】
本実施形態における親水性材料7は、コイル体5の外径よりも細い第2の円筒部11に被覆されることにより、ガイディングカテーテルと医療用ガイドワイヤ1との間の摺動抵抗を顕著に低減することができた。
【0061】
親水性材料7は、医療用ガイドワイヤ1の最先端部9からコイル体5及び第2の円筒部11までの外表面に均一の厚みで塗布することで十分に摺動抵抗を低減することができる。
【0062】
しかしながら、医者が手技をする際に長時間を要する場合には、医療用ガイドワイヤ1とガイディングカテーテルとの摺動回数が増大する。本実施形態では、その点についても考察がなされている。
【0063】
図2は、本第1実施形態のコアシャフトの第2の円筒部を拡大した部分拡大図である。
【0064】
図2において、第2の円筒部11を被覆している親水性材料7は、コイル体5を被覆している親水性材料7よりも厚く形成されている。
【0065】
すなわち、第2の円筒部11の外表面から親水性材料7の外表面までの距離が、コイル体5の外表面から親水性材料7の外表面までの距離よりも長くなるように、親水性材料7がコアシャフト3の表面に形成されている。
【0066】
また、第2の円筒部11を被覆している親水性材料7は、第2の円筒部11に隣接する第1のテーパ部27を被覆している親水性材料7及び第2のテーパ部25を被覆している親水性材料7よりも厚く形成されている。
【0067】
したがって、図6〜図8に示すようにガイディングカテーテルが湾曲された状態で医療用ガイドワイヤ1を長時間摺動させたとしても、第2の円筒部11における摺動抵抗が増大することがない。
【0068】
また、親水性材料7を含む第2の円筒部の径は、親水性材料7を含むコイル体5の径よりも細いことが望ましい。
【0069】
親水性材料7を含む第2の円筒部の径を、親水性材料7を含むコイル体5の径よりも細くすることにより、コイル体5がガイディングカテーテル内、管状器官内または体内組織内を通過することにより形成される空洞と、コイル体5の基端側に位置する第2の円筒部との間に空隙を発生することができ、ガイディングカテーテルを湾曲させた状態で医療用ガイドワイヤ1を長時間摺動させた場合においても、ガイディングカテーテルと医療用ガイドワイヤ1との間の摺動抵抗を低減することができる。
【0070】
一方、医療用ガイドワイヤ1の摺動抵抗を低減することは、医療用ガイドワイヤ1を押す場合だけでなく、医療用ガイドワイヤ1を引く場合にも必要であり、本発明においては、その点についても考察がなされている。
【0071】
図3は、本実施形態のコアシャフトとコイル体との接続状態を示す部分拡大図である。
【0072】
図3において、親水性材料7は、コイル体5の基端部と第2のテーパ部25との間に流線形状をなすように塗布されている。これにより、医療用ガイドワイヤ1をガイディングカテーテル内、管状器官内または体内組織内で引く際の摺動抵抗を低減することができる。
【0073】
本実施形態では、親水性材料7をコイル体5の基端部と第2のテーパ部25との間に流線形状をなすように塗布したが、この親水性材料7をコイル体5の基端部と第2の円筒部11との間に流線形状をなすように塗布しても良い。そうすることにより、第2のテーパ部25の凹み部分を減少させることができ、さらに、医療用ガイドワイヤ1をガイディングカテーテル内、管状器官内または体内組織内で引く際の摺動抵抗を低減することができる。
【0074】
なお、この場合にも、第2の円筒部11に塗布する親水性材料7をコイル体5、第1のテーパ部27及び第2のテーパ部25に塗布する親水性材料7よりも厚く形成することが好ましい。
【0075】
その場合には、ガイディングカテーテルが湾曲された状態で医療用ガイドワイヤ1を長時間摺動させたとしても、第2の円筒部11における摺動抵抗は増大することがない。
【0076】
<第2実施形態>
次に、本発明の医療用ガイドワイヤの第2実施形態について説明する。
【0077】
図4は、第2実施形態のコアシャフトとコイル体との接続状態を示す部分拡大図である。
【0078】
図4において、コイル基端ロウ付け部13は、コイル体5の基端部と第2のテーパ部25との間が流線形状のロウ材によって形成されている。そして、その後、コイル体5からコイル基端ロウ付け部13及び第2のテーパ部25まで均一な厚みにて親水性材料7が塗布されている。
【0079】
この第2実施形態の医療用ガイドワイヤ1によっても、医療用ガイドワイヤ1をガイディングカテーテル内、管状器官内または体内組織内で引く際の摺動抵抗を低減することができる。
【0080】
第2実施形態では、ロウ材をコイル体5の基端部と第2のテーパ部25との間に流線形状をなすように形成したが、このロウ材をコイル体5の基端部と第2の円筒部11との間が流線形状をなすように形成しても良い。そうすることにより、第1実施形態と同様に、第2のテーパ部25の凹み部分を減少させることができ、さらに、医療用ガイドワイヤ1をガイディングカテーテル内、管状器官内または体内組織内で引く際の摺動抵抗を低減することができる。
【0081】
この場合には、コイル体5からコイル基端ロウ付け部13及び第2の円筒部11まで均一な厚みにて親水性材料7を塗布する。
【0082】
なお、この場合にも、第2の円筒部11に塗布する親水性材料7をコイル体5、第1のテーパ部27及び第2のテーパ部25に塗布する親水性材料7よりも厚く形成することも可能である。
【0083】
その場合には、ガイディングカテーテルが湾曲された状態で医療用ガイドワイヤ1を長時間摺動させたとしても、第2の円筒部11における摺動抵抗は増大することがない。
【0084】
<第3実施形態>
次に、本発明の医療用ガイドワイヤの第3実施形態について説明する。
【0085】
図5は、第3実施形態のコアシャフトとコイル体との接続状態を示す部分拡大図である。
【0086】
図5において、親水性材料7は、コイル体5の基端部と第2の円筒部11との中間領域を直線状に塗布され、その中間領域とコイル体5の基端部との接続部において湾曲形状を形成するように塗布され、かつ、中間領域と第2の円筒部との接続部において湾曲形状を形成するように塗布されている。これにより、医療用ガイドワイヤ1をガイディングカテーテル内、管状器官内または体内組織内で引く際の摺動抵抗をさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 医療用ガイドワイヤ
3 コアシャフト
5 コイル体
7 親水性材料
9 最先端部
11 第2の円筒部
13 コイル基端ロウ付け部
15 コイル先端ロウ付け部
17 コイル中間ロウ付け部
19 第3の円筒部
21 第1の円筒部
25 第2のテーパ部
27 第1のテーパ部
29 第3のテーパ部
31 第4の円筒部
33 テーパプレス部
35 円筒プレス部
53 大動脈弁
55 大動脈弓
57 下行大動脈
59 右冠状動脈
61 左冠状動脈主幹部
63 左前下行枝
65 上行大動脈
67 左冠状動脈
69 左回旋枝
71 狭窄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
そのコアシャフトの少なくとも先端部を覆うコイル体とを備えた医療用ガイドワイヤにおいて、
前記コアシャフトは、前記コイル体の基端側に前記コイル体の径よりも細い円筒部を有し、
前記円筒部には、親水性材料が被覆されていることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記親水性材料は、前記コイル体にも被覆されており、
前記円筒部を被覆する親水性材料の厚みは、前記コイル体を被覆する親水性材料の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記親水性材料を含む前記円筒部の径は、前記親水性材料を含む前記コイル体の径よりも細いことを特徴とする請求項2に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記コイル体の基端部から前記円筒部までの領域を流線形状に形成したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項5】
前記コイル体の基端部から前記円筒部までの中間領域を直線状に形成したことを特徴とする請求項4に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項6】
前記円筒部は、前記コアシャフトの先端から50〜350mmの範囲内に設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の医療用ガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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