説明

医療用キャップ及びその製造方法

【課題】ゴム栓と、その周縁部を内壁で保持する外枠体との密着性に優れ、針刺しによってゴム栓と外枠体の位置ずれがなく、密閉性の確保に優れた医療用キャップ、その製造方法及び当該医療用キャップを備えた医療用容器を提供する。
【解決手段】本発明の医療用キャップは、ゴム栓と、その側周部を内壁で保持する外枠体とを有する医療用キャップであって、前記ゴム栓に於ける接液面側の周縁部に於いて、前記外枠体と接触する面が熱溶融により融着されており、かつ、前記外枠体から押圧されることにより、当該接液面がその中央部に向かって凹状の状態で保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液容器、採血管等の医療用キャップ及びその製造方法に関する。特に、医療用に於いて針刺し可能な栓体を備えた医療用キャップ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工腎臓による治療の際に使用される補充液等は点滴の場合と異なり、容量の大きい医療用容器を連結して長時間、連続的に使用される。このため、医療用容器に要求される性能も過酷な条件で評価される。例えば、瓶針を同時に3本刺し、24時間放置した後に抜針して液洩れがないことが要求される。
【0003】
前記の様な医療用容器としては、例えば、薬液等を収容する医療用バッグに、瓶針や注射針等でその薬液等を取り出し可能な医療用キャップを備えたものが用いられている。また、当該医療用キャップとしては、針刺し用のエラストマー樹脂からなる栓体を外枠体の内側に備えてなるものが用いられている。
【0004】
しかしながら、エラストマー樹脂からなる栓体を用いた従来の医療用キャップであると、前記の様に容量の大きい医療用容器を連結して長時間、連続的に使用する場合、当該医療用キャップから液洩れが生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−118185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ゴム栓と、その周縁部を内壁で保持する外枠体との密着性に優れ、針刺しによってゴム栓と外枠体の位置ずれがなく、密閉性の確保に優れた医療用キャップ、その製造方法及び当該医療用キャップを備えた医療用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、医療用キャップ、その製造方法及び当該医療用キャップについて検討した。その結果、下記構成を採用することにより、前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明に係る医療用キャップは、前記の課題を解決するために、ゴム栓と、その側周部を内壁で保持する外枠体とを有する医療用キャップであって、前記ゴム栓に於ける接液面側の周縁部に於いて、前記外枠体と接触する面が熱溶融により融着されており、かつ、前記外枠体から押圧されることにより、当該接液面がその中央部に向かって凹状の状態で保持されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成であると、ゴム栓の接液面の周縁部では、外枠体から押圧されているので、ゴム栓はその周縁部から中心に向かって圧縮応力(カシメ力)が働いた状態となっている。その結果、接液面はその中央部に向かって凹状になっている。また、ゴム栓に於ける接液面側の周縁部では、外枠体と接触する面が融着されている。その結果、前記構成の医療用キャップであると、接液面側の周縁部に於いて、ゴム栓と外枠体の内壁との密着性が各段に向上しており、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜き後の再シール性も向上させることができる。尚、前記「融着」とは、外枠体を成形する際の溶融樹脂がゴム栓に接触することによりゴム栓の表面が軟化した状態となり、その様なゴム栓の微細な凹凸面に溶融樹脂が浸透した状態で密着していることを意味する。また、前記「針刺面」とは、本発明の医療用キャップが薬液等を収容する医療用容器に装着され、薬液等を取り出す際に、ゴム栓に於いて瓶針や注射針等による針刺しが行われる面を意味する。前記「接液面」とは、ゴム栓に於いて薬液等が接する面を意味する。
【0010】
ここで、前記ゴム栓の接液面には熱溶融するラミネートフィルムが設けられており、前記ゴム栓に於ける接液面側の周縁部に於いて、前記外枠体と接触する面が前記ラミネートフィルムを熱溶融させることにより融着されていることが好ましい。
【0011】
前記構成であると、ゴム栓に於ける接液面側の周縁部では、外枠体と接触する面が、前記ラミネートフィルムにより融着されている。その結果、前記構成の医療用キャップであると、接液面側の周縁部に於いて、ゴム栓と外枠体の内壁との密着性が各段に向上しているので、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜き後の再シール性も向上させることができる。
【0012】
本発明に係る医療用キャップの製造方法は、前記の課題を解決するために、ゴム栓と、その側周部を内壁で保持する外枠体とを有する医療用キャップの製造方法であって、前記ゴム栓の直径よりも小さい外径の第1リング状突起部を有する第1金型と、前記ゴム栓の直径よりも小さい外径の第2リング状突起部を有する第2金型とを用意し、前記ゴム栓を前記第1金型の第1リング状突起部上に載置し、前記第1金型と第2金型を型閉じすることにより、前記第1リング状突起部及び第2リング状突起部で前記ゴム栓の周縁部を上下から押圧した状態で、前記外枠体の成形用のキャビティを形成し、前記キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記外枠体を成形することを特徴とする。
【0013】
前記方法であると、外枠体の成形の際に、ゴム栓の周縁部を、第1金型が有する第1リング状突起部と第2金型が有する第2リング状突起部とが上下から押圧した状態で行う。その結果、ゴム栓はその周縁部から中心に向かって圧縮応力(カシメ力)が働き、ゴム栓の何れか一方の面がその中央部に向かって凹状になった状態となる。これにより、ゴム栓と外枠体との密着性を向上させることができる。また、外枠体の成形の際に、これを構成する樹脂が熱により溶融した状態でキャビティ内に射出されるので、この溶融樹脂に触れたゴム栓の表面は加熱され軟化する。更に、溶融樹脂は軟化したゴム栓の微細な凹凸面に浸透し、これによりゴム栓と密着した状態(即ち、融着した状態)で外枠体の成形が行われる。その結果、接液面側の周縁部に於いて、ゴム栓と外枠体の内壁との密着性が各段に向上し、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜け後の再シール性も向上させた医療用キャップが得られる。
【0014】
前記方法に於いては、前記ゴム栓としてその接液面に熱溶融可能なラミネートフィルムが設けられたものを使用し、前記ゴム栓に於ける接液面側の周縁部に於いて、前記外枠体と接触する面が前記ラミネートフィルムを熱溶融させることにより融着させていることが好ましい。
【0015】
前記方法によれば、外枠体の成形の際に、これを構成する樹脂が熱により溶融した状態でキャビティ内に射出されるので、この溶融樹脂に触れたゴム栓のラミネートフィルムは熱溶融する。その結果、ラミネートフィルムと外枠体との界面に於いて、2つの高分子樹脂に於ける高分子鎖が絡み合って強固に結合した状態(即ち、融着した状態)となって外枠体の成形が行われる。これにより、接液面側の周縁部に於いて、ゴム栓と外枠体の内壁との密着性が各段に向上し、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜け後の再シール性も向上させた医療用キャップが得られる。
【0016】
また、本発明に係る医療用容器は、前記の課題を解決するために、薬液を収容する本体と薬液を針で取り出す取出部とを少なくとも有する医療用容器であって、前記取出部が前記に記載の医療用キャップであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態に係る医療用キャップの製造方法であって、同図(a)は第1金型内にゴム栓を挿入した様子を表し、同図(b)は第1金型と第2金型との型閉じの様子を表し、同図(c)は第1金型と第2金型を型開きした様子を表す断面図である。
【図2】同図(a)は、前記実施の形態に係る医療用キャップの製造方法に於いて、第1金型内にゴム栓を挿入した様子を表し、同図(b)は、従来の医療用キャップの製造方法に於いて下金型内にゴム栓を挿入した様子を表す説明図である。
【図3】前記製造方法に用いる第1金型を概略的に示す斜視図である。
【図4】前記製造方法に用いる第2金型を概略的に示す斜視図である。
【図5】前記第1金型及び第2金型に於けるリング状突起部の先端の形状を模式的に表した拡大図である。
【図6】前記医療用キャップに用いる各種のゴム栓を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の一形態に係る医療用キャップを表す断面図である。
【図8】前記医療用キャップを薬液の取出部に適用した医療用容器を模式的に表す説明図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る医療用キャップを表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図1〜図9を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0019】
本実施の形態に係る医療用キャップは、ゴム栓と、前記ゴム栓の側周部を内壁で保持する外枠体とを備えた外枠体を有する構造である。
【0020】
前記外枠体の成形は、例えば、第1金型11と第2金型18を用いて射出成形により行う。即ち、第1金型11の内部に、ゴム栓13をその針刺面(上面)13aが下向きとなる様に載置する(図1(a)参照)。
【0021】
ゴム栓13としては、ゴム栓の接液面13bにラミネートフィルムが設けられたものを使用することができる。これにより、ゴム栓13に於ける接液面13b側の周縁部で、外枠体と接触する面が、ラミネートフィルムにより融着される。その結果、接液面13b側の周縁部に於いて、ゴム栓13と外枠体の内壁との密着性が各段に向上し、針抜けに対する保持力及び復元力、並びに針抜き後の再シール性の向上が一層図れる。
【0022】
また、ゴム栓13は、その接液面13bにラミネートフィルムが設けられていないものを使用してもよい。この場合、ゴム栓13の接液面13bをラミネートするための製造コストの増加を抑制することができる。また、ラミネートフィルムを接液面13bにラミネートしたゴム栓に於いては、瓶針や注射針等を穿刺部に穿刺した際にラミネートフィルムが破れ、フラグメントと呼称されている瓶針等の孔径以下の微細なゴム片、フィルム片(コアリング)が発生する場合がある。しかしながら、ラミネートフィルムを使用しない場合には、フィルムが俎板の代用になることによるゴム片の発生がなく、またフィルム片の発生もない。更に、ゴム弾性を損なわない薄いラミネートフィルムの形成は製造上困難であるが、この場合にはその様な問題もない。
【0023】
ゴム栓13は、針刺面13a及び接液面13bがフラットの円柱状の構造を有する。但し、本発明のゴム栓は前記形状のものに限定されない。また、ゴム栓13の直径は特に限定されず、通常は10〜40mmの範囲内で設定される。また、ゴム栓13の厚みTは特に限定されず、通常は3〜15mmの範囲内で設定される。ゴム栓13の他の態様については、後段にて詳述する。
【0024】
次に、前記第1金型11と第2金型18の型閉じを行う(図1(b)参照)。このとき、外枠体の成形が可能なキャビティ20が形成される。また、第1金型11はゴム栓13の針刺面13aの直径よりも小さい外径の第1リング状突起部11aを備えている。第2金型18はゴム栓13の接液面13bの直径よりも小さい外径の第2リング状突起部18aを備えている。型閉じの際、ゴム栓13の針刺面13a側には間隙が形成されている為、針刺面13aは第2リング状突起部18aにより押圧されて上方に押し出された状態となっている。また、ゴム栓13の接液面13b側も、第2リング状突起部18aにより凹状に窪んだ状態となっている。更に、ゴム栓の側周部13cも窪んだ状態となっている。
【0025】
ここで、前記第1金型11の第1リング状突起部11aは、例えば、図3(a)に示すように、一の連続するリング状突起となっている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図3(b)に示すように、円周上に高さの揃った複数のピンを立て、全体として第1リング状突起部11a’を形成する第1金型11’であってもよい。
【0026】
第1リング状突起部11aの外径dは、ゴム栓13に於ける針刺面13aの周縁部を押圧でき、その直径よりも小さければ特に限定されず、インサートするゴム栓13の形状、サイズに応じて適宜設定され得る。前記針刺面13aの直径をsとし、かつ、これを基準とした場合、外径dは(s−20)〜(s−0.2)mmの範囲内であることが好ましく、(s−15)〜(s−0.4)mmの範囲内であることがより好ましい。d1が(s−0.2)mmを超えると、型締めの際にゴム栓13の針刺面13aの端部までが第1リング状突起部11aの内側に入り込み、これにより、例えばゴム栓13が一方の側に偏って保持される等の歪んだ状態で成形される場合がある。その一方、dが(s−20)mm未満であると、第1リング状突起部11aの押圧に起因したゴム栓13の変形が第1リング状突起部11aの内側ではなく外側に向かい、その結果、ゴム栓変形の逃げ代が無くなり型閉じが困難になる場合がある。尚、前記sは特に限定されず、通常は5〜35mmの範囲内で設定される。但し、ゴム栓が段差部を有しない場合、針刺面13aの直径sは、ゴム栓の直径と一致する。従って、この様な場合のdは、後述のゴム栓の直径の数値範囲内で設定される。
【0027】
ここで、前記第2金型18の第2リング状突起部18aは、例えば、図4(a)に示すように、一の連続するリング状突起となっている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図4(b)に示すように、円周上に高さの揃った複数のピンを立て、全体として第2リング状突起部18a’を形成する第2金型18’であってもよい。
【0028】
第2リング状突起部18aの外径dは、ゴム栓13に於ける接液面13bの周縁部を押圧でき、その直径よりも小さければ特に限定されず、インサートするゴム栓13の形状、サイズに応じて適宜設定され得る。前記接液面13bの直径をsとし、かつ、これを基準とした場合、外径dは(s−20)〜(s−0.2)mmの範囲内であることが好ましく、(s−15)〜(s−0.4)mmの範囲内であることがより好ましい。dが(s−0.2)mmを超えると、型締めの際にゴム栓13の接液面13bの端部までが第2リング状突起部18aの内側に入り込み、これにより、例えばゴム栓13が一方の側に偏って保持される等の歪んだ状態で成形される場合がある。その一方、dが(s−20)mm未満であると、第2リング状突起部18aの押圧に起因したゴム栓13の変形が第2リング状突起部18aの内側ではなく外側に向かい、その結果、ゴム栓変形の逃げ代が無くなり型閉じが困難になる場合がある。尚、前記sは特に限定されず、通常は5〜35mmの範囲内で設定される。但し、ゴム栓が段差部を有しない場合、接液面13bの直径sは、ゴム栓の直径と一致する。従って、この様な場合のdは、後述のゴム栓の直径の数値範囲内で設定される。
【0029】
前記第1リング状突起部11aや第2リング状突起部18aの先端部は、図5(a)に示す様に平坦面である他、同図(b)に示すように放電加工等により表面粗さを増大させたものや、同図(c)に示すようにその先端に微小な突起を備えた形状を有していてもよい。また、同図(d)に示すように、凹凸形状であってもよい。これらの形状であると、第1リング状突起部11aはゴム栓13の針刺面13aを確実に把持し、第2リング状突起部18aはゴム栓13の接液面13bを確実に把持した状態でゴム栓13の押圧を可能にする。
【0030】
第1リング状突起部11aの高さhは、ゴム栓13の厚さ等に応じて適宜設定され得る。通常は、例えば0.1〜3mmの範囲内であることが好ましく、0.2〜1.5mmの範囲内であることがより好ましい。前記hが0.1mm未満であると、ゴム栓13の針刺面13aに於ける周縁部を十分に押圧することができない場合がある。その一方、hが3mmを超えると、周縁部に対する押圧が過度になり、ゴム栓13の針刺面13aが歪んだ形状になる。また、第1金型11と第2金型18の型締めが不十分になる弊害も生じる。尚、第1リング状突起部11aの高さhは、ゴム栓13に対し圧縮応力(カシメ力)を加えない状態で外枠体の成形を行う場合に使用する下金型33を基準としている(図2参照)。即ち、下金型33にはゴム栓13を載置する載置部34が設けられており、この載置部34の高さhを基準とした場合に、前記hはhに対し0.1〜3mmの範囲内で高くなっている。
【0031】
また、第1リング状突起部11aの内側に於ける高さhは、外側の高さhよりも大きく設定され得る。通常は、例えば0.5〜5mmの範囲内であることが好ましく、1〜3mmの範囲内であることがより好ましい。前記hが0.5mm未満であると、ゴム栓13の針刺面13aの周縁部を十分に押圧できない場合がある。その一方、hが5mmを超えると、ゴム栓13の針刺面13aの周縁部に対する押圧が過度になり、キャップが変形する場合がある。尚、本実施の形態に於いて、第1リング状突起部11aの外側に於ける高さhと内側に於ける高さhとは同一でもよいが、第1リング状突起部11aの内側の高さhを大きくした場合、ゴム栓13に対するカシメ効果を向上させることができる。
【0032】
第2リング状突起部18aの高さhは、ゴム栓13の厚さ等に応じて適宜設定され得る。通常は、例えば0.1〜3mmの範囲内であることが好ましく、0.2〜1.5mmの範囲内であることがより好ましい。前記hが0.1mm未満であると、ゴム栓13の接液面13bに於ける周縁部を十分に押圧することができない場合がある。その一方、hが3mmを超えると、周縁部に対する押圧が過度になり、ゴム栓13の接液面13bが歪んだ形状になる。また、第1金型11と第2金型18の型締めが不十分になる弊害も生じる。尚、第2リング状突起部18aの高さhは、ゴム栓13に対し圧縮応力(カシメ力)を加えない状態で外枠体の成形を行う場合に使用する上金型35を基準としている(図2参照)。即ち、上金型35にはゴム栓13の周縁部以外の部分に、外枠体の構成材料である溶融樹脂が流出されない様にするための基台部36が設けられており、この基台部36の高さhを基準とした場合に、前記hはhに対し0.1〜3mmの範囲内で高くなっている。
【0033】
また、第2リング状突起部18aの内側に於ける高さhは、外側の高さhよりも大きく設定され得る。通常は、例えば0.5〜5mmの範囲内であることが好ましく、1〜3mmの範囲内であることがより好ましい。前記hが0.5mm未満であると、ゴム栓13の接液面13bの周縁部を十分に押圧できない場合がある。その一方、hが5mmを超えると、ゴム栓13の接液面13bの周縁部に対する押圧が過度になり、キャップが変形したり、ラミネートフィルムが破損する場合がある。尚、本実施の形態に於いて、第2リング状突起部18aの外側に於ける高さhと内側に於ける高さhとは同一でもよいが、第2リング状突起部18aの内側の高さhを大きくした場合、ゴム栓13に対するカシメ効果を向上させることができる。
【0034】
ここで、前記第1リング状突起部11a及び第2リング状突起部18aの形状や位置、大きさに関しては特に限定されず、前述の数値範囲内で種々の組み合わせが可能である。例えば、第1リング状突起部11aの外径dと、第2リング状突起部18aの外径dが同一であり、かつ、第1金型11と第2金型18を型閉じした際に、両者の位置が一致している態様であってもよい。また、第2リング状突起部18aの外径dが第1リング状突起部11aの外径dよりも大きい態様であってもよく、その反対に、第1リング状突起部11aの外径dが、第2リング状突起部18aの外径dよりも大きい態様でもよい。
【0035】
また、第1リング状突起部11a及び第2リング状突起部18aの高さに関しては、第1リング状突起部11aの高さhと、第2リング状突起部18aの高さhを同一にしてもよい。更に、第1リング状突起部11aの高さhが、第2リング状突起部18aの高さhよりも大きい態様であってもよく、その反対に、第2リング状突起部18aの高さhが第1リング状突起部11aの高さhよりも大きい態様でもよい。図1では第2リング状突起部18aが第1リング状突起部11aよりも大きい場合を示している。
【0036】
また、第1リング状突起部11a及び第2リング状突起部18aの幅に関しては、第1リング状突起部11aの幅wを、第2リング状突起部18aの幅wよりも狭くしてもよい。更に、第1リング状突起部11aの幅wと、第2リング状突起部18aの幅wを共に広くした状態で、又は狭くした状態で同一にしてもよい。更に、第2リング状突起部18aの幅wを、第1リング状突起部11aの幅wよりも狭くした態様でもよい。
【0037】
尚、第1リング状突起部11aの幅wは、例えば0.2〜3.5mmの範囲内であることが好ましく、0.3〜2.5mmの範囲内であることがより好ましい。その一方、第2リング状突起部18aの幅wは、例えば0.2〜3.5mmの範囲内であることが好ましく、0.3〜2.5mmの範囲内であることがより好ましい。
【0038】
次に、型閉じにより形成されたキャビティ20内に、外枠体の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂を注入する。このとき、溶融樹脂が有する熱によりゴム栓13の表面が軟化する。更に、溶融樹脂は軟化したゴム栓の微細な凹凸面に浸透する。その後、溶融樹脂が所定時間冷却されると、ゴム栓13と隙間なく密着した状態(即ち、融着した状態)で外枠体が成形される。融着の度合は外枠体の成形条件等に応じて変化するが、例えば、熱溶融し得るラミネートフィルムを備えたゴム栓13を用いた場合と比較すると、応力を加えた際にゴム栓13と外枠体21が分離する程度の融着状態である。また、ゴム栓13の接液面13b側にラミネートフィルムが設けられている場合、当該ラミネートフィルムは、溶融樹脂が有する熱により熱溶融する。その後、溶融樹脂が所定時間冷却されると、ラミネートフィルムと外枠体との接触面に於いて、それらを構成する2つの高分子樹脂に於ける高分子鎖が絡み合って結合した状態となり融着する。融着の度合は外枠体の成形条件等に応じて変化する。そのため、例えば、応力を加えることによりゴム栓13の接液面13b側においても外枠体が分離する程度に融着した場合を含む。
【0039】
前記溶融樹脂の温度は、ゴム栓、及びラミネートフィルムを接液面13b側に備える場合はそのラミネートフィルムとの融着を生じさせ、かつ、外枠体21と一体的に成型される程度であれば特に限定されず、具体的には、例えば160〜250℃の範囲内であることが好ましく、170〜240℃の範囲内であることがより好ましい。尚、射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
【0040】
型開き後、図1(c)に示すように、外枠体21が成形され、本実施の形態に係る医療用キャップ10が得られる。
【0041】
尚、ゴム栓13の接液面13bに設けられているラミネートフィルムとしては特に限定されず、前記合成樹脂からなる外枠体21と融着可能なものが使用される。具体的には、例えば フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル樹脂又はこれらの混合物等を主成分とするプラスチツクフイルムが挙げられる。但し、ラミネートフィルムの材料は外枠体21との融着の容易性を考慮して選択するのが好ましい。
【0042】
ゴム栓13の製造方法としては特に限定されず、従来公知の方法で製造可能である。また、ゴム栓13の接液面13b上にラミネートフィルムを形成する方法としては、例えば、ゴム栓13の成形の際に同時にラミネートフィルムを形成する方法が挙げられる。この場合の条件としては特に限定されず、適宜設定し得るものである。
【0043】
前記ゴム栓13に用いる材料としては特に限定されず、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等が例示できる。前記ブチルゴムであると医療用キャップの気体遮断性を向上させることができる。また、天然ゴム等のゴム弾性に優れた材料であると、瓶針や注射針等を差し込んだ際に、フラグメントと呼称されている瓶針等の孔径以下の微細なゴム片の発生(コアリング)を低減させることができる。尚、接液面13b側にはラミネートフィルムが設けられている場合、気体遮断性の低下を防止することができる。
【0044】
また、本発明で使用するゴム栓の形状としては特に限定されず、適宜必要に応じて変更可能である。例えば、図6(a)に示すように、針刺面40a側に外枠体に設けられた環状溝と嵌合させる環状リブ40dを備え、接液面40b側に外枠体に設けられた環状リブと嵌合させる環状溝40eを備えたゴム栓40であってもよい。環状リブ40dは穿刺時のゴム栓の変形を、環状溝40eは脱落を防止可能にする。また、図6(b)に示すように、針刺面41aはフラットな面を有し、接液面41bには外枠体に設けられた環状リブと嵌合する環状溝41dを備えるゴム栓41であってもよい。また、図6(c)に示すように、針刺面42a及び接液面42bの双方に、脱落防止の為の段差部42d、42eが設けられたゴム栓42が挙げられる。また、図6(d)に示すように、針刺面43aにのみ段差部43dが設けられ、接液面43bはフラットのゴム栓43であってもよい。また、図6(e)に示すように、針刺面44aには外枠体に設けられた環状リブと嵌合する環状溝44dを備え、接液面44bにも外枠体に設けられた環状リブと嵌合する環状溝44eを備えるゴム栓44であってもよい。また、図6(f)に示すように、針刺面45a側に外枠体に設けられた環状リブと嵌合する環状溝45dを備え、接液面45b側に脱落防止の為の段差部45eを備えたゴム栓45であってもよい。環状溝45dは、穿刺時のゴム栓13の変形を防止可能にする。また、図6(g)に示すように、針刺面46a側に外枠体に設けられた環状溝と嵌合させる環状リブ46dを備え、接液面46b側に脱落防止の為の段差部46eを備えたゴム栓46であってもよい。
【0045】
また、前記外枠体21を構成する材料としては、合成樹脂のうち、医療用用途としての安全性が確立されたものであれば足りる。中でも熱可塑性樹脂を用いるのが一般的である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の従来医療用途に用いられている樹脂が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本実施の形態の製造方法により得られる医療用キャップ10に於いて、針刺面13aは、中央部に向かって凸状に膨らんだ状態となっている(図7参照)。その一方、ゴム栓13の接液面13bはその周縁部15に於いて外枠体21の融着面から圧縮応力を受けているので、中央部が凹状に窪んだ状態となっている。これは第2金型18の第2リング状突起部18aの高さが第1金型の第1リング状突起部11aよりも高いことに起因する。これにより、本実施の形態に係る医療用キャップ10は、針抜けに対する保持力、及び復元力が向上し、針抜け後の再シール性にも優れたものにできる。尚、ゴム栓ではなく熱可塑性エラストマー樹脂からなる栓体であると、同様の条件下で外枠体を成形した場合、栓体の接液面側に於ける中央部は凸状に膨らんだ状態となる。これは、外枠体を形成する溶融樹脂が第1金型と第2金型のキャビティ内に注入された際に、当該溶融樹脂の熱が栓体の接液面側に於ける周縁部を軟化させたことにより、その周縁部のみ圧縮応力が緩和され応力の方向が変化した結果と推察される。
【0047】
以上の様にして得られる本発明の医療用キャップ10は、例えば、図8に示すように、薬液を収容する本体51と薬液を針で取り出す取出部52とを少なくとも有する医療用容器50に於いて、取出部52に適用することができる。この場合に於いて、医療用容器50が取出部52に連結された連結用チューブ53により相互に連結されており、薬液の長時間の連続供給を可能にしている。この様な方法により各医療用容器50を連結すると、全ての医療用容器中の薬液を並行して同時に消費させることが可能になる。各連結用チューブ53には針が設けられており、取出部52の医療用キャップ10に於けるゴム栓の針刺面13aに穿刺されている。更に、複数の医療用容器50の内の任意の一つには、薬液取出用チューブ54が取り付けられている。当該薬液取出用チューブ54には針が設けられており、医療用キャップ10のゴム栓に於ける針刺面13aに穿刺されている。本発明の医療用キャップであると、この様な使用態様に於いて連続使用をしても液洩れを防止すると共に、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜け後の再シール性も良好である。
【0048】
(その他の事項)
本発明は前記に示した態様に限定されるものではなく、当該発明の効果を奏する範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記では、外枠体がフランジを有する構造を例にして説明したが、本発明はこの態様に限定されない。例えば、図9に示す医療用キャップ30のように、フランジを有しない外枠体31を備えた医療用キャップ30でもよい。この様な構造の医療用キャップ30であっても、ゴム栓13と外枠体31の内壁との密着性を向上させるので、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜け後の再シール性も向上させることができる。
【実施例】
【0049】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0050】
(実施例1)
本実施例では、前述の図1に示した方法に従い、図7に示す医療用キャップ10の製造を行った。外枠体21の材料としてはポリプロピレンを用い、ゴム栓13の材料としてはイソプレンゴムを用いた。また、成形機としては、日精樹脂工業(株)製の射出成形機(商品名;NS60−9A)を使用した。
【0051】
ゴム栓の形状寸法は下記の通りである。
ゴム栓(針刺面及び接液面)の直径:20mm
厚さT:7mm
【0052】
第1リング状突起部の形状寸法は下記の通りである。
外側の高さh:0.3mm
内側の高さh:1.2mm
幅w:1.3mm
外径d:18mm
先端形状:プレーン
【0053】
第2リング状突起部の形状寸法は下記の通りである。
外側の高さh:0.5mm
内側の高さh:1.4mm
幅w:0.5mm
外径d:16mm
先端形状:プレーン
【0054】
外枠体の成形条件は下記の通りである。
射出成形温度:230℃
射出圧力 :4.2MPa
射出時間 :3.0秒
第1金型温度及び第2金型温度:43℃
【0055】
(実施例2)
本実施例に於いては、ゴム栓として接液面にポリプロピレンからなるラミネートフィルムを設けたものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして本実施例に係る医療用キャップを作製した。
【0056】
(比較例1)
本比較例に於いては、外枠体の成形に用いる金型として図2(b)に示す下金型33と上金型35を使用したこと以外は、前記実施例1と同様にして本比較例に係る医療用キャップを作製した。
【0057】
(比較例2)
本比較例に於いては、外枠体の成形に用いる金型として図2(b)に示す下金型33と上金型35を使用したこと以外は、前記実施例2と同様にして本比較例に係る医療用キャップを作製した。
【0058】
(比較例3)
本比較例に於いては、ゴム栓に代えてスチレン系熱可塑性エラストマーからなる栓体を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして本比較例に係る医療用キャップを作製した。
【0059】
(穿刺針の保持力試験)
前記実施例及び比較例で得られた医療用キャップに対し、オートクレーブにより106℃で25分間の滅菌処理を行った。その様な医療用キャップを40サンプル用意し、金属針(16G金属針)及び樹脂針(400樹脂針)をそれぞれゴム栓又は栓体に刺したときの保持力について調べた。各医療用キャップを引っ張り圧縮試験機にセットし、ゴム栓又は栓体の中央部に、前記試験機に取り付けた下記の穿刺針を垂直に突き刺した後、該穿刺針を200mm/minの速度で上昇させ、該穿刺針がゴム栓又は栓体から抜けるときの力(単位;N)を測定した。穿刺針としては、前記2種類の針を用いて行い、それぞれ最大値、最小値、平均値及び標準偏差を求めた。結果を下記表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
(穿刺針の液漏れ試験)
前記実施例及び比較例で得られた医療用キャップに対し、オートクレーブにより106℃で25分間の滅菌処理を行った。次に、各医療用キャップを試験用圧力缶体に取り付け、その点滴部位にテルモ株式会社製連結管(商品名;TC−00503B)を穿刺し4時間放置した。その後、抜針し、液漏れするかを調べた。尚、検体数は200個とした。結果を下記表2に示す。
【0062】
次に、前記と同様にして滅菌処理を行った各医療用キャップを2Lの水を入れた2Lバッグに取り付け、その針刺し部位にニプロ(株)製連結管(商品名;15−D12)を3本穿刺した。その状態で24時間放置後、抜針しその時の液漏れ量を測定した。尚、検体数は200個とした。結果を下記表2及び表3に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【符号の説明】
【0065】
10、30 医療用キャップ
11 第1金型
11a 第1リング状突起部
13、40〜46 ゴム栓
13a、40a〜46a 針刺面
13b、40b〜46b 接液面
13c 側周部
15 周縁部
18 第2金型
18a 第2リング状突起部
20 キャビティ
21 外枠体
40d、46d 環状リブ
40e、41d、44d、44e、45d 環状溝
42d、42e、43d、45e、46e 段差部
50 医療用容器
51 本体
52 取出部
53 連結用チューブ
54 薬液取出用チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム栓と、その側周部を内壁で保持する外枠体とを有する医療用キャップであって、
前記ゴム栓に於ける接液面側の周縁部に於いて、前記外枠体と接触する面が熱溶融により融着されており、かつ、前記外枠体から押圧されることにより、当該接液面がその中央部に向かって凹状の状態で保持されている医療用キャップ。
【請求項2】
前記ゴム栓の接液面には熱溶融するラミネートフィルムが設けられており、
前記ゴム栓に於ける接液面側の周縁部に於いて、前記外枠体と接触する面が前記ラミネートフィルムを熱溶融させることにより融着されている請求項1に記載の医療用キャップ。
【請求項3】
ゴム栓と、その側周部を内壁で保持する外枠体とを有する医療用キャップの製造方法であって、
前記ゴム栓の直径よりも小さい外径の第1リング状突起部を有する第1金型と、前記ゴム栓の直径よりも小さい外径の第2リング状突起部を有する第2金型とを用意し、
前記ゴム栓を前記第1金型の第1リング状突起部上に載置し、
前記第1金型と第2金型を型閉じすることにより、前記第1リング状突起部及び第2リング状突起部で前記ゴム栓の周縁部を上下から押圧した状態で、前記外枠体の成形用のキャビティを形成し、
前記キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記外枠体を成形する医療用キャップの製造方法。
【請求項4】
前記ゴム栓としてその接液面に熱溶融可能なラミネートフィルムが設けられたものを使用し、
前記ゴム栓に於ける接液面側の周縁部に於いて、前記外枠体と接触する面が前記ラミネートフィルムを熱溶融させることにより融着させている請求項3に記載の医療用キャップの製造方法。
【請求項5】
薬液を収容する本体と薬液を針で取り出す取出部とを少なくとも有する医療用容器であって、前記取出部が請求項1又は2に記載の医療用キャップであることを特徴とする医療用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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