医療用切削装置及びそれを備える医療用切削実習装置
【課題】作業性に影響を与えることなく、切削時に切削工具に加わる荷重を即時的に把握することができる医療用切削装置、及び切削時に切削工具にかかる当該荷重に基づき実習評価を行う医療用切削実習装置を提供すること。
【解決手段】ハウジング1と、切削工具2と、工具保持部3と、荷重検出部5とを備える医療用切削装置である。ハウジング1は、工具保持部3及び荷重検出部5を保持する。工具保持部3は、切削工具2を保持する。荷重検出部5は、切削工具2に加わる荷重を検出する。
【解決手段】ハウジング1と、切削工具2と、工具保持部3と、荷重検出部5とを備える医療用切削装置である。ハウジング1は、工具保持部3及び荷重検出部5を保持する。工具保持部3は、切削工具2を保持する。荷重検出部5は、切削工具2に加わる荷重を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用切削装置及びそれを備える医療用切削実習装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療では、医療用切削装置であるハンドピースを用いて歯牙を削る治療が行われている。この治療技術を習得するためには、切削実習を履修する必要がある。切削実習では、特許文献1に記載されているような、実習後の切削した人工歯牙の形状を測定し、測定した形状と教師の切削形状とを比較することで評価を行っている。
【0003】
また、特許文献2では、切削実習の評価をリアルタイムに行えるよう、ハンドピースの軌跡を撮像カメラで記録する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−97187号公報
【特許文献2】特開2000−298427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す切削実習では、実習後に切削した人工歯牙の形状を測定するまでは、評価を行うことができず、リアルタイムに切削の善し悪しを評価することができなかった。また、特許文献1に示す切削実習では、人工歯牙の形状を測定するための3次元形状測定装置などの高価な装置が必要であった。
【0006】
さらに、特許文献2に示す切削実習では、ハンドピースの軌跡を記録し易いようにハンドピースにターゲットを設けておく必要があった。また、特許文献2に示す切削実習では、ハンドピースの軌跡を記録するために、複数の撮像カメラを設ける必要があった。また、特許文献2に示す切削実習では、ハンドピースの軌跡のみで、切削時に切削工具に加わる荷重を測定することができなかった。
【0007】
臨床現場においても、切削時に切削工具に加わる荷重を知ることで、過度の切削を回避することが可能となる。しかし、臨床現場では作業性が重視されるため、普段使用しているハンドピースと同じ形状等の範囲内で、切削時に切削工具に加わる荷重を測定する構成をハンドピースに設ける必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、作業性に影響を与えることなく、切削時に切削工具に加わる荷重を即時的に把握することができる医療用切削装置、及び切削時に切削工具にかかる当該荷重に基づき実習評価を行う医療用切削実習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る医療用切削装置は、切削工具と、切削工具を保持する工具保持部と、切削工具に加わる荷重を検出する荷重検出部と、工具保持部及び荷重検出部を保持するハウジングとを備える。
【0010】
本発明の請求項2に係る医療用切削装置は、請求項1に記載の医療用切削装置であって、荷重検出部は、一端がハウジングに、他端が工具保持部又は切削工具にそれぞれ固定された曲げ部材と、曲げ部材上に設けられ、曲げ部材の歪みを検出する歪み検出部とを備え、歪み検出部で検出した曲げ部材の歪みに基づき切削工具に加わる荷重を検出する。
【0011】
本発明の請求項3に係る医療用切削装置は、請求項2に記載の医療用切削装置であって、曲げ部材は、ハウジング及び工具保持部又は切削工具のうち少なくとも一方が間接部材を介して固定される。
【0012】
本発明の請求項4に係る医療用切削装置は、請求項2に記載の医療用切削装置であって、歪み検出部を設けた曲げ部材が複数設けられ、且つ個々の曲げ部材は切削工具の長軸を中心に、所定の角度ずらせて配置される。
【0013】
本発明の請求項5に係る医療用切削装置は、請求項1に記載の医療用切削装置であって、荷重検出部は、ハウジングと、工具保持部又は切削工具とに挟持された圧力検出部を備え、圧力検出部で検出した圧力に基づき切削工具に加わる荷重を検出する。
【0014】
本発明の請求項6に係る医療用切削装置は、請求項5に記載の医療用切削装置であって、圧力検出部は、ハウジング及び工具保持部又は切削工具のうち少なくとも一方が間接部材を介して挟持されている。
【0015】
本発明の請求項7に係る医療用切削装置は、請求項5に記載の医療用切削装置であって、圧力検出部は、切削工具の長軸方向及び、それに対して垂直な方向に配置されている。
【0016】
本発明の請求項8に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記ハウジングは、把持部と前記把持部の先端に設けられたヘッド部とを有し、前記把持部の長軸に対して所定の角度をなして前記切削工具の回転軸が設けられるように、前記ヘッド部内部に前記工具保持部が設けられ、前記ヘッド部内部にエアタービン駆動部を有している。
【0017】
本発明の請求項9に係る医療用切削装置は、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記ハウジングは、把持部と前記把持部の先端に設けられたヘッド部とを有し、前記把持部の長軸に対して所定の角度をなして前記切削工具の回転軸が設けられるように、前記ヘッド部内部に前記工具保持部が設けられ、前記把持部内部にマイクロモータを有している。
【0018】
本発明の請求項10に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記切削工具は、スケーラチップである。
【0019】
本発明の請求項11に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを表示する表示部をさらに備える。
【0020】
本発明の請求項12に係る医療用切削装置は、請求項11に記載の医療用切削装置であって、前記表示部は、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを時系列的に表示する機能を有する。
【0021】
本発明の請求項13に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記荷重検出部で検出した荷重が所定の値以上になったことを知らせる報知部をさらに備える。
【0022】
本発明の請求項14に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項13のいずれか1つに記載の医療用切削装置と、前記医療用切削装置から、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを受け取り、当該荷重又は荷重ベクトルと所定の判定基準とを比較して、切削作業の評価判定を行う判定部と、前記判定部での評価判定結果を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1に係る医療用切削装置では、切削工具に加わる荷重を検出できる荷重検出部をハウジング内に設けているので、作業性に影響を与えることなく、切削時に切削工具に加わる荷重を即時的に把握することができる。
【0024】
本発明の請求項2に係る医療用切削装置では、歪み検出部で曲げ部材の歪みを検出し、当該検出結果に基づいて切削工具に加わる荷重を検出するので、荷重検出部を小型化することが可能になる。
【0025】
本発明の請求項3に係る医療用切削装置では、曲げ部材を、間接部材を介してハウジングや工具保持部又は切削工具に固定するので、医療用切削装置内の曲げ部材や工具保持部などの構成部材のレイアウトに自由度が増す。
【0026】
本発明の請求項4に係る医療用切削装置では、歪み検出部を設けた曲げ部材を、所定の配置で複数設けることで、切削工具に加えられる様々な方向の荷重を検出することができる。
【0027】
本発明の請求項5に係る医療用切削装置では、圧力検出部で検出した圧力に基づいて切削工具に加わる荷重を検出するので、荷重検出部の構成を簡略化することが可能になる。
【0028】
本発明の請求項6に係る医療用切削装置では、圧力検出部を、間接部材を介してハウジングや工具保持部又は切削工具に固定するので、医療用切削装置内の圧力検出部や工具保持部などの構成部材のレイアウトに自由度が増す。
【0029】
本発明の請求項7に係る医療用切削装置では、圧力検出部を所定の配置で複数設けることで、切削工具に加えられる様々な方向の荷重を検出することができる。
【0030】
本発明の請求項8又は9に係る医療用切削装置では、切削工具をエアタービン又はマイクロモータで駆動することができる。
【0031】
本発明の請求項10に係る医療用切削装置では、切削工具をスケーラチップとすることできる。
【0032】
本発明の請求項11に係る医療用切削装置では、表示部に荷重又は荷重ベクトルを表示するので、術者が切削作業中に切削工具に加わる荷重又は荷重ベクトルを、容易に認識することができる。
【0033】
本発明の請求項12に係る医療用切削装置では、表示部に荷重又は荷重ベクトルの時系列を表示するので、術者が切削作業中に切削工具に加わる荷重又は荷重ベクトルの時間的変化を、容易に認識することができる。
【0034】
本発明の請求項13に係る医療用切削装置では、報知部が、切削工具に加わる荷重が所定の値以上になったことを術者に知らせるので、過度の切削を回避することができる。
【0035】
本発明の請求項14に係る医療用切削装置では、切削工具に加わる荷重又は荷重ベクトルを検出できる医療用切削装置を用いるので、切削実習の評価を客観的データに基づき即時的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置の荷重検出部の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置の荷重検出を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置の荷重検出を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置のブロック図である。
【図6】エアータービンハンドピースのより全体的な部分を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1の変形例に係る医療用切削装置の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1の変形例に係る医療用切削装置の荷重検出部の平面図である。
【図9】本発明の実施の形態1の変形例に係る医療用切削装置の断面図である。
【図10】マイクロモータハンドピースのより全体的な部分を示す概略断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る医療用切削装置の断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る医療用切削装置の荷重検出部の断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2の変形例に係る医療用切削装置の断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る医療用切削実習装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る医療用切削装置は、切削工具に加わる荷重を検出する荷重検出部をハウジング内に設けている。具体的に、本実施の形態に係る医療用切削装置では、荷重検出部として歪みゲージを用いる構成について説明する。図1に、本実施の形態に係る医療用切削装置であるエアータービンハンドピースの断面図を示す。図1に示すエアータービンハンドピースでは、ハウジング1に切削工具2を保持する切削工具保持部3と、切削工具2を駆動させるためのタービンのローター4と、切削工具2に加わる荷重を検出する荷重検出部5とが格納されている。
【0038】
ハウジング1は、従来使用されているエアータービンハンドピースのハウジングと同じ材質で、且つほぼ同じ形状及びスケールである。但し、ハウジング1では、従来のハウジングに比べて、荷重検出部5を格納することができる分だけスペースを内部に確保する必要がある。
【0039】
切削工具2も、従来使用されているエアータービンハンドピースに着脱可能な切削工具であればいずれの工具でも良い。切削工具2については、JIS T 5501で定められている。また、切削工具2の軸部には、ステンレス鋼が使用される。切削工具2の作業部には、ダイヤモンド砥粒やタングステンカーバイド等にニッケルメッキやクロムメッキを施したものが使用される。なお、一般的に切削工具2の作業部がダイヤモンド砥粒で構成されているものを「ダイヤモンドバー」、タングステンカーバイドで構成されているものを「カーバイトバー」、ステンレス鋼を刃物形状にしたものを「ステンレスバー」、先端が円盤状のブラシ等で構成されているものを「ディスク」と呼ばれる。
【0040】
切削工具保持部3は、切削工具2を直接保持する内側保持部3aと、ハウジング1と嵌合する外側保持部3bと、内側保持部3aと外側保持部3bとに挟持されるベアリング3cとを備えている。内側保持部3aは、切削工具2を脱着可能なように保持している。また、内側保持部3aは、ベアリング3cを介して外側保持部3bに対して回転可能な構成である。なお、図1に示す切削工具保持部3では、切削工具2の長軸Kの方向に対して上下2組のベアリング3cを用いて、外側保持部3bに対して内側保持部3aが回転するように構成している。
【0041】
ローター4は、図1に示すように上下2組のベアリング3cの間で、且つ内側保持部3aに直接取り付けられている。そのため、エアータービンハンドピースに供給される駆動用の圧縮空気でローター4を回転させることで、内側保持部3aを回転させ切削工具2を駆動する。
【0042】
荷重検出部5は、曲げ部材5aと、曲げ部材5a上に貼り付けられた歪みゲージ5bとを備えている。曲げ部材5aは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3にそれぞれ固定されている。そして、切削工具2に荷重が加えられ、切削工具保持部3の位置がずれることで曲げ部材5aに歪みが生じる。この歪みを歪みゲージ5bで検出することで、切削工具2に加わる荷重を求めることができる。なお、図1に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aがハウジング1に対して間接部材6を介して固定されている。この間接部材6を設けることで、曲げ部材5aを設ける位置に自由度が増し、荷重検出部5をハウジング1内でレイアウトし易くなる。図1では間接部材6をハウジング1側に設ける例を示したが、本発明はこれに限られず、切削工具保持部3側又はハウジング1及び切削工具保持部3の両側に設けても良い。また、図1に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aが外側保持部3bに固定されている。しかし、本発明はこれに限られず、内側保持部3aや切削工具2と回転可能に固定しても良い。
【0043】
より詳しく荷重検出部5を説明するために、図2に、図1のA−A面から見た荷重検出部5の平面図を示す。図2に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aが十字形状部5a1を有し、この十字形状部5a1の中心部が間接部材6を介してハウジング1に固定されている。また、図2に示す荷重検出部5では、十字形状部5a1の周辺部が外側保持部3bに固定されている。そして、図2に示す荷重検出部5では、十字形状部5a1のそれぞれの辺に歪みゲージ5bが貼り付けられている。
【0044】
なお、図2に示す曲げ部材5aは、十字形状部5a1の中心部が連結部5a2で、周辺部が連結部5a3でそれぞれ接続される形状である。これは、組み立て作業の効率化を考慮した曲げ部材5aの形状であり、切削工具2に加わる荷重を検出することのみ考慮すれば、4つの独立した曲げ部材5aを十字形状に配置する構成でも良い。また、図2に示す荷重検出部5では、歪みゲージ5bを貼り付けた曲げ部材5aを、切削工具2の長軸Kの周りに90度ずつずらせて配置している。これは、図2に示す荷重検出部5が、切削工具2に加わる荷重を、長軸Kの方向及びこれに垂直な方向で検出可能とするための構成である。しかし、ある歪みゲージ5bを貼り付けた曲げ部材5aと隣接する歪みゲージ5bを貼り付けた曲げ部材5aとは、必ずしも90度である必要はない。歪みゲージ5bを貼り付けたそれぞれの曲げ部材5aを所定の角度(0度以上の角度)ずらせて配置すれば、荷重検出部5は、当該角度を考慮して演算することで長軸Kの方向及びこれに垂直な方向の荷重を求めることができる。また、歪みゲージ5bを貼り付けた曲げ部材5aの数は4つに限られない。
【0045】
次に、荷重検出部5の動作について説明する。図3では、切削工具2に図中左側(長軸Kに垂直な方向)から荷重が加えられた場合のエアータービンハンドピースの断面図を示している。また、図4では、切削工具2に図中下側(長軸Kの方向)から荷重が加えられた場合のエアータービンハンドピースの断面図を示している。
【0046】
まず、図3に示すエアータービンハンドピースでは、切削工具2が左から右に押されるため、切削工具保持部3は左側に傾く。切削工具保持部3が左側に傾くと図中左側の曲げ部材5aLと図中右側の曲げ部材5aRには歪みが生じる。そのため、図3に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aL,5aRで生じた歪みを、それぞれに貼り付けた歪みゲージ5bL,5bRで測定することで、切削工具2に加わる荷重の大きさのみならず、荷重を加えた方向も含む荷重ベクトルを求めることができる。
【0047】
次に、図4に示すエアータービンハンドピースでは、切削工具2が下から上に押されるため、切削工具保持部3は上側に持ち上げられる。切削工具保持部3が持ち上げられると図中左側の曲げ部材5aLと図中右側の曲げ部材5aRには歪みが生じる。そのため、図4に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aL,5aRで生じた歪みを、それぞれに貼り付けた歪みゲージ5bL,5bRで測定することで、切削工具2に加わる長軸Kに垂直な方向の荷重のみならず、長軸Kの方向の荷重も求めることができる。なお、切削工具2が上から下に引っ張られる場合にも、曲げ部材5aL,5aRのそれぞれに歪みが生じる。なお、さらに詳しい荷重検出部(センサ基板2と歪みゲージ5)の動作については、特開2004−239621に記載されている。
【0048】
歪みゲージ5bで検出された信号は所定の処理が施されて、切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルとして算出される。算出された荷重又は荷重ベクトルは、表示部に表示される。この処理について、図5に示す本実施の形態に係る医療用切削装置のブロック図を用いて説明する。図5に示す医療用切削装置では、荷重検出部5を設けたハンドピース10に、切削駆動回路11と信号増幅器12とが接続されている。この切削駆動回路11及び信号増幅器12は、CPU13に設けた制御回路14に接続されている。切削駆動回路11は、制御回路14からの信号に基づき切削工具2の駆動を制御する。なお、ハンドピース10がエアータービンハンドピースであれば、切削駆動回路11からの信号以外に、駆動用の圧縮空気がハンドピース10に供給される。
【0049】
信号増幅器12は、ハンドピース10内の荷重検出部5と接続されている。信号増幅器12は、荷重検出部5で検出した歪みの信号を制御回路14で処理可能なレベルに増幅している。信号増幅器12で増幅した信号に基づき、制御回路14は、荷重検出部5で検出した歪み量から切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルを求める。なお、荷重検出部5で検出した歪み量から切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルを求める場合、切削工具2の長さや径、材質を考慮して求める必要がある。
【0050】
切削工具2の全長は16〜70mmであり、エアータービンハンドピースでは、標準的な切削工具2の長さが19mmである。なお、マイクロモータハンドピースの場合、コントラタイプの切削工具2では22mm,ストレートタイプの切削工具2では44.5mmが標準である。切削工具2の直径は1.07mmから3mmであり、エアータービンハンドピースでは、標準的な切削工具2の直径は2.35mmと1.6mmとである。マイクロモータハンドピースでは、コントラタイプ及びストレートタイプともに切削工具2の直径は2.35mmが標準である。切削工具2の材質は、軸部がステンレス鋼で、作業部がダイヤモンド砥粒やタングステンカーバイド等にニッケルメッキやクロムメッキを施したものが使用される。
【0051】
制御回路14で求めた荷重又は荷重ベクトルは、表示部15に表示される。なお、表示部15には、CPU13に設けた記憶部(図示せず)に記録された過去の荷重又は荷重ベクトルと合わせて、時系列的に表示することも可能である。また、CPU13において、過剰切削等の不具合が発生する可能性がある荷重又は荷重ベクトルの値を閾値として設定することで、本実施の形態に係る医療用切削装置は、切削時に当該閾値を越えた場合に報知部16から術者に当該事実を知らせることができる。それにより、術者は、切削工具2に過剰な荷重が加わった事実を切削中に知ることができる。報知部16は、音声で知らせる構成でも、表示部15を利用して画像で知らせる構成でも良い。
【0052】
さらに、図5に示すブロック図では、ハンドピース10の外に切削駆動回路11及び信号増幅器12を設ける構成である。しかし、本発明はこれに限られず、切削駆動回路11及び信号増幅器12をハンドピース10の内に設けても良い。また、表示部15をハンドピース10の内に設けることも可能であり、術者は、手元のハンドピースから目を離すことなく、切削工具2に加わる荷重を知ることができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態に係る医療用切削装置は、ハンドピース10内に荷重検出部5を設けることで、作業性に影響を与えることなく、切削時に切削工具2に加わる荷重を即時的に把握することができる。
【0054】
図6はエアータービンハンドピースのより全体的な部分を示す概略断面図である。このエアータービンハンドピースのハウジング1は、把持部1Bとヘッド部1Hとを有している。把持部1Bは、手により把持可能な部分である。ここでは、把持部1Bは、長尺棒状、より具体的には、先端側部分がなだらかに湾曲する長尺棒状に形成されている。また、ここでは、把持部1Bは、先端側部分1Baと基端側部分1Bbとの2分割構成とされている。
【0055】
ヘッド部1Hは把持部1Bの先端部に設けられている。上記ヘッド部1H内には、切削工具保持部3が設けられている。工具保持部3には、保持対象となる切削工具2(図6では図示省略、図1等参照)の回転軸(K)が把持部1Bの長軸(より具体的には把持部1Bのうちヘッド部1Hに接続された近傍部分の長軸)に対して所定の角度をなすように、切削工具2が保持される。換言すれば、工具保持部3により保持される切削工具2は把持部1Bの長軸に対して斜め姿勢となる。
【0056】
また、このヘッド部1H内部には、エアタービン駆動部1Tが設けられている。そして、図示省略のユニット本体から専用のチューブ及び把持部1B内を通って上記エアタービン駆動部1Tに圧縮空気が供給される。この圧縮空気により、エアタービン駆動部1Tの羽根車が高速回転される共に、その回転が工具保持部3を介して工具2に伝達され、切削工具2が高速回転するようになっている。
【0057】
また、ヘッド部1Hのうち切削工具2をチャックする部分の上端に荷重検出部5が設けられている。荷重検出部5自体の具体的構成については既に説明した通りである。エアータービンハンドピース内には、荷重検出部5による検出信号を外部のユニット本体に伝達する電線100が設けられている。電線100は、ハウジングの把持部1B内を通って配設されている。かかる電線100としては、例えば、エアータービンハンドピース内にはヘッド部1Hに設けた照明用ライトを点灯させるための電線を含む配線が設けられている場合、当該配線の一部を共用した構成とすることができる。
【0058】
本実施形態では、ヘッド部1Bは、先端側部分1Baと基端側部分1Bbとの2分割構成とされているため、両者の接続部分では、先端側部分1Baと基端側部分1Bbとの合体及び分離により接触及び分離する接点構造を介して、先端側部分1Ba側の電線100aと基端側部分1Bbの電線100bとを接続することができる。このような接点構造としては、例えば、先端側部分1Baの接続面にリング状の接点部材102aを設け、基端側部分1Bbの接続面に接点部材102bを配設し、先端側部分1Baと基端側部分1Bbとを合体接続すると、リング状の接点部材102aと接点部材102bとが導通する構成を採用することができる。この場合、コイルバネ等の付勢部材104によって少なくとも一方の接点部材を相手側に付勢するとよい。ここでは、付勢部材104によって接点部材102bを、リング状の接点部材102aとの接続を維持する方向(押付ける方向)に付勢し、接点部材102aと接点部材102bとがより確実に常時接触状態を維持できるようにしている。このような付勢部材としては、例えば、ボールジョイント部材等を用いることができる。
【0059】
(変形例)
図1に示す医療用切削装置では、エアータービンハンドピースの例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、図7に示すスケーラが考えられる。図7に示すスケーラでも、ハウジング1に切削工具であるスケーラチップ21を保持する切削工具保持部3と、スケーラチップ21を駆動させるための駆動部41と、スケーラチップ21に加わる荷重を検出する荷重検出部5とが格納されている。
【0060】
切削工具保持部3は、図1の場合と同様に、スケーラチップ21を直接保持する内側保持部3aと、ハウジング1と嵌合する外側保持部3bと、内側保持部3aと外側保持部3bとに挟持されるベアリング3cとを備えている。
【0061】
荷重検出部5は、図1の場合と同様に、曲げ部材5aと、曲げ部材5a上に貼り付けられた歪みゲージ5bとを備えている。曲げ部材5aは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3の外側保持部3bにそれぞれ固定されている。なお、図7に示す荷重検出部5では、図1と異なり、曲げ部材5aがハウジング1に対して直接固定されている。
【0062】
また、図8に、図7のB−B面から見た荷重検出部5の平面図を示す。図8に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aが十字形状部5a1を有し、この十字形状部5a1の中心部が外側保持部3bに固定されている。また、図8に示す荷重検出部5では、十字形状部5a1の周辺部がハウジング1に固定されている。そして、図8に示す荷重検出部5では、十字形状部5a1のそれぞれの辺に歪みゲージ5bを貼り付けている。なお、図8に示す曲げ部材5aでも、十字形状部5a1の中心部が連結部5a2で、周辺部が連結部5a3でそれぞれ接続される形状である。
【0063】
その他、図7に示すスケーラの荷重検出及びその信号処理は、図1に示すエアータービンハンドピースの場合と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、図7に示すスケーラにおいて、図1に示すエアータービンハンドピースと同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0064】
さらに、エアータービンハンドピース以外に、図9に示すマイクロモータハンドピースが考えられる。図9に示すマイクロモータハンドピースでも、ハウジング1に切削工具2を保持する切削工具保持部3と、切削工具2を駆動させるための駆動機構42と、切削工具2に加わる荷重を検出する荷重検出部5とが格納されている。
【0065】
切削工具保持部3は、図1の場合と同様に、切削工具2を保持する内側保持部3aと、ハウジング1と嵌合する外側保持部3bと、内側保持部3aと外側保持部3bとに挟持されるベアリング3cとを備えている。
【0066】
駆動機構42は、図9に示すように上下2組のベアリング3cの間で、且つ内側保持部3aに直接取り付けられているギア42aと、ギア42aと噛み合うギア42bとを備えている。ギア42bは、図示しないマイクロモータにより駆動される。マイクロモータは、駆動機構42を用いて内側保持部3aを回転させて切削工具2を駆動する。
【0067】
荷重検出部5は、図1の場合と同様に、曲げ部材5aと、曲げ部材5a上に貼り付けられた歪みゲージ5bとを備えている。曲げ部材5aは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3の外側保持部3bにそれぞれ固定されている。なお、図9に示す荷重検出部5では、図1と同様、曲げ部材5aがハウジング1に対して間接部材6を介して固定されている。
【0068】
その他、図9に示すマイクロモータハンドピースは、荷重検出部5の形状、荷重検出及びその信号処理について、図1に示すエアータービンハンドピースの場合と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、図9に示すマイクロモータハンドピースにおいて、図1に示すエアータービンハンドピースと同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0069】
図10はマイクロモータハンドピースのより全体的な部分を示す概略断面図である。ここでは、図10はコントラアングル型ハンドピースを示している。
【0070】
このマイクロモータハンドピースのハウジング1は、把持部201Bとヘッド部201Hとを有している。把持部201Bは、手により把持可能な部分である。ここでは、把持部201Bは、長尺棒状、より具体的には、先端側部分がなだらかに湾曲する長尺棒状に形成されている。また、ここでは、把持部201Bは、先端側部分201Baと基端側部分201Bbとの2分割構成とされている。
【0071】
ヘッド部201Hは把持部201Bの先端部に設けられている。上記ヘッド部201H内には、切削工具保持部3が設けられている。工具保持部3には、保持対象となる切削工具2の回転軸が把持部201Bの長軸(より具体的には把持部201Bのうちヘッド部201Hに接続された近傍部分の長軸)に対して所定の角度をなすように、切削工具2が保持される。換言すれば、工具保持部3により保持される切削工具2は把持部201Bの長軸に対して斜め姿勢となる。
【0072】
また、把持部201B内部には、マイクロモータ210が設けられている。把持部201Bからヘッド部201H内の工具保持部3に至る部分に回転伝達機構212が設けられている。回転伝達機構212は、複数のギアの組合わせによって構成されており、マイクロモータ210の回転が本回転伝達機構212を介して工具保持部3に伝達され、切削工具2が回転駆動される。なお、この回転伝達機構212のギア比を変更することで、所望の回転速度で切削工具2の減速・等速・増速等を行なうことができる。
【0073】
また、ヘッド部201Hのうち切削工具2をチャックする部分の上端に荷重検出部5が設けられている。荷重検出部5自体の具体的構成については既に説明した通りである。マイクロモータハンドピース内には、荷重検出部5による検出信号を外部のユニット本体に伝達する電線220が設けられている。電線220は、ハウジングの把持部201B内を通って配設されている。かかる電線220としては、例えば、マイクロモータハンドピース内にはマイクロモータ210を駆動するための電線を含む配線が設けられているため、当該配線の一部を共用した構成とすることができる。
【0074】
本実施形態では、ヘッド部201Bは、先端側部分201Baと基端側部分201Bbとの2分割構成とされているため、両者の接続部分では、先端側部分201Baと基端側部分201Bbとの合体及び分離により接触及び分離する接点構造を介して、先端側部分201Ba側の電線220aと基端側部分201Bbの電線220bとを接続することができる。このような接点構造としては、例えば、先端側部分201Baの接続面に接点部材222aを設け、基端側部分201Bbの接続面に接点部材222bを配設し、先端側部分201Baと基端側部分201Bbとを合体接続すると、接点部材222aと接点部材222bとが導通する構成を採用することができる。この場合、コイルバネ等の付勢部材224によって接点部材の少なくとも一方を相手側に付勢する構成とするとよい。ここでは、付勢部材224によって、接点部材222aを、接点部材222bとの接続を維持する方向(押付ける方向)に付勢し、接点部材222aと接点部材222bとがより確実に常時接触状態を維持できるようにしている。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る医療用切削装置においても、実施の形態1と同様に、切削工具に加わる荷重を検出する荷重検出部をハウジング内に設けている。しかし、本実施の形態に係る医療用切削装置では、実施の形態1と異なり、荷重検出部に歪みゲージではなく、圧力センサを用いる構成である。図11に、本実施の形態に係る医療用切削装置であるエアータービンハンドピースの断面図を示す。図11に示すエアータービンハンドピースでは、ハウジング1に切削工具2を保持する切削工具保持部3と、切削工具2を駆動させるためのタービンのローター4と、切削工具2に加わる荷重を検出する荷重検出部7とが格納されている。なお、図11に示すエアータービンハンドピースにおいて、図1に示すエアータービンハンドピースと同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0076】
荷重検出部7は、圧力センサを採用している。当該圧力センサとしては、フィルム形状やゴム等の弾性体形状の導電性圧力センサ、静電容量型圧力センサが考えられる。なお、これら以外、ハウジング1内に配置可能な圧力センサであれば、荷重検出部7として採用できる。荷重検出部7は、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3にそれぞれ固定されている。そして、切削工具2に荷重が加えられ、切削工具保持部3の位置がずれることで荷重検出部7に荷重がかかる。この荷重を荷重検出部7である圧力センサで検出することで、切削工具2に加わる荷重を求めることができる。なお、図11では、切削工具2の長軸Kの方向に配置される荷重検出部7aは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3の内側保持部3aに固定されている。また、切削工具2の長軸Kに対して垂直な方向に配置される荷重検出部7bは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3の外側保持部3bに固定されている。なお、図11に示す荷重検出部7aは、内側保持部3aに固定しているが、本発明はこれに限られず、外側保持部3bに固定、又は切削工具2と回転可能に固定しても良い。図11に示す荷重検出部7bは、外側保持部3bに固定しているが、本発明はこれに限られず、内側保持部3aや切削工具2と回転可能に固定しても良い。
【0077】
より詳しく荷重検出部7を説明するために、図12に、図11のC−C面での荷重検出部7の断面図を示す。図12に示す荷重検出部7bは、切削工具2の長軸Kの周りに90度ずつずらせて外側保持部3bに配置されている。これにより、図12に示す荷重検出部7bは、長軸Kに対して垂直な方向全てについて切削工具2に加わる荷重を検出することができる。しかし、隣接する荷重検出部7bの間の角度が、必ずしも90度である必要はない。隣接する荷重検出部7bの間の角度が決まっていれば、当該角度を考慮して長軸Kの方向の荷重を演算し求めることができる。また、設ける荷重検出部7bの数は4つに限られない。なお、図12では示していないが、長軸Kの方向の荷重は荷重検出部7aで検出する。
【0078】
図11に示すエアータービンハンドピースでも、図5で示した構成で、荷重検出部7で検出した信号を処理して、切削工具2に加わった荷重又は荷重ベクトルを求める。但し、図1に示すエアータービンハンドピースでは、測定した歪み量から荷重に変換する必要があったが、図11に示すエアータービンハンドピースでは圧力センサからの出力であるため上記のような変換は不要である。なお、図11に示すエアータービンハンドピースの場合でも、荷重検出部7で検出した荷重に対して切削工具の長さ,径や材質を考慮して切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルを求める必要はある。
【0079】
以上のように、本実施の形態に係る医療用切削装置では、ハンドピース10内に圧力センサの荷重検出部7を設けることで、作業性に影響を与えることなく、切削時に切削工具2に加わる荷重を即時的に把握することができる。
【0080】
(変形例)
図11に示すエアータービンハンドピースでは、ハウジング1が1重構造の場合について説明したが、本発明はこれに限られず、図13に示すような2重構造のハウジング1のエアータービンハンドピースであっても良い。図13に示すエアータービンハンドピースでは、外側に位置するアウターハウジング部1aと、内側に位置するインナーハウジング部1bと、アウターハウジング部1aと嵌合するカプセルキャップ部1cとを備える2重構造のハウジング1を採用している。そのため、図13に示す荷重検出部7は、一端がインナーハウジング部1bに、他端が切削工具保持部3の内側保持部3aに固定されている。図13に示すエアータービンハンドピースでは、カプセルキャップ部1cを長軸K方向に外し、インナーハウジング部1bを取り出すことができるため、メンテナンスが容易になる。このような、2重構造のハウジング1を採用するエアータービンハンドピースにも、図13に示すよう荷重検出部7を設けることで、切削工具2(図13では図示せず)に加わる荷重又は荷重ベクトルを検出することができる。なお、図13に示すエアータービンハンドピースにおいて、図11に示すエアータービンハンドピースと同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。また、図13に示す2重構造のハウジング1は、歪みゲージ5bで荷重を検出する図1のエアータービンハンドピースにも同様に適用することができる。
【0081】
(実施の形態3)
実施の形態1及び2では、切削時に切削工具2に加わる荷重を求める医療用切削装置について説明した。当該医療用切削装置は、臨床現場でも実習でも利用することが可能である。さらに、本実施の形態では、医療用切削装置を備え、実習での切削評価が可能な医療用切削実習装置について説明する。
【0082】
図14に、本実施の形態に係る医療用切削実習装置のブロック図を示す。図14に示す医療用切削実習装置では、図5に示した医療用切削装置に、判定部17を追加した構成である。判定部17は、CPU13内で構成され、制御回路14から得た切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルと、所定の判定基準とを比較して切削作業の評価判定を行う。所定の判定基準は、例えば、教師が行った人工歯牙の切削での切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルの基準履歴を採用する。評価判定では、例えば、この基準履歴に対して、実習者が行った人工歯牙の切削での切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルの実習履歴を比較し、統計的にどの程度差異があるかに基づいて判定する。なお、判定部17は、図14のようにCPU13内でソフトウェアとして構成しても、CPU13の外部にハードウェアとして構成しも良い。
【0083】
評価判定した結果は、表示部15に表示される。なお、表示部15を評価判定結果の出力部とせずに、プリンタ等の他の出力装置を出力部としても良い。また、図14に示す医療用切削実習装置において、図5に示す医療用切削装置と同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0084】
以上のように、本実施の形態に係る医療用切削実習装置では、実施の形態1及び2に係る医療用切削装置と、その出力を利用して実習での評価判定を行う判定部17と、評価結果を出力できる出力部とを備えるので、切削実習の評価を客観的データに基づき即時的に行うことができる。
【符号の説明】
【0085】
1 ハウジング、1T エアタービン駆動部、2 切削工具、3 切削工具保持部、4 ローター、5,7 荷重検出部、6 間接部材、10 ハンドピース、11 切削駆動回路、12 信号増幅器、13 CPU、14 制御回路、15 表示部、16 報知部、17 判定部、21 スケーラチップ、41 駆動部、42 駆動機構、210 マイクロモータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用切削装置及びそれを備える医療用切削実習装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療では、医療用切削装置であるハンドピースを用いて歯牙を削る治療が行われている。この治療技術を習得するためには、切削実習を履修する必要がある。切削実習では、特許文献1に記載されているような、実習後の切削した人工歯牙の形状を測定し、測定した形状と教師の切削形状とを比較することで評価を行っている。
【0003】
また、特許文献2では、切削実習の評価をリアルタイムに行えるよう、ハンドピースの軌跡を撮像カメラで記録する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−97187号公報
【特許文献2】特開2000−298427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す切削実習では、実習後に切削した人工歯牙の形状を測定するまでは、評価を行うことができず、リアルタイムに切削の善し悪しを評価することができなかった。また、特許文献1に示す切削実習では、人工歯牙の形状を測定するための3次元形状測定装置などの高価な装置が必要であった。
【0006】
さらに、特許文献2に示す切削実習では、ハンドピースの軌跡を記録し易いようにハンドピースにターゲットを設けておく必要があった。また、特許文献2に示す切削実習では、ハンドピースの軌跡を記録するために、複数の撮像カメラを設ける必要があった。また、特許文献2に示す切削実習では、ハンドピースの軌跡のみで、切削時に切削工具に加わる荷重を測定することができなかった。
【0007】
臨床現場においても、切削時に切削工具に加わる荷重を知ることで、過度の切削を回避することが可能となる。しかし、臨床現場では作業性が重視されるため、普段使用しているハンドピースと同じ形状等の範囲内で、切削時に切削工具に加わる荷重を測定する構成をハンドピースに設ける必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、作業性に影響を与えることなく、切削時に切削工具に加わる荷重を即時的に把握することができる医療用切削装置、及び切削時に切削工具にかかる当該荷重に基づき実習評価を行う医療用切削実習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る医療用切削装置は、切削工具と、切削工具を保持する工具保持部と、切削工具に加わる荷重を検出する荷重検出部と、工具保持部及び荷重検出部を保持するハウジングとを備える。
【0010】
本発明の請求項2に係る医療用切削装置は、請求項1に記載の医療用切削装置であって、荷重検出部は、一端がハウジングに、他端が工具保持部又は切削工具にそれぞれ固定された曲げ部材と、曲げ部材上に設けられ、曲げ部材の歪みを検出する歪み検出部とを備え、歪み検出部で検出した曲げ部材の歪みに基づき切削工具に加わる荷重を検出する。
【0011】
本発明の請求項3に係る医療用切削装置は、請求項2に記載の医療用切削装置であって、曲げ部材は、ハウジング及び工具保持部又は切削工具のうち少なくとも一方が間接部材を介して固定される。
【0012】
本発明の請求項4に係る医療用切削装置は、請求項2に記載の医療用切削装置であって、歪み検出部を設けた曲げ部材が複数設けられ、且つ個々の曲げ部材は切削工具の長軸を中心に、所定の角度ずらせて配置される。
【0013】
本発明の請求項5に係る医療用切削装置は、請求項1に記載の医療用切削装置であって、荷重検出部は、ハウジングと、工具保持部又は切削工具とに挟持された圧力検出部を備え、圧力検出部で検出した圧力に基づき切削工具に加わる荷重を検出する。
【0014】
本発明の請求項6に係る医療用切削装置は、請求項5に記載の医療用切削装置であって、圧力検出部は、ハウジング及び工具保持部又は切削工具のうち少なくとも一方が間接部材を介して挟持されている。
【0015】
本発明の請求項7に係る医療用切削装置は、請求項5に記載の医療用切削装置であって、圧力検出部は、切削工具の長軸方向及び、それに対して垂直な方向に配置されている。
【0016】
本発明の請求項8に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記ハウジングは、把持部と前記把持部の先端に設けられたヘッド部とを有し、前記把持部の長軸に対して所定の角度をなして前記切削工具の回転軸が設けられるように、前記ヘッド部内部に前記工具保持部が設けられ、前記ヘッド部内部にエアタービン駆動部を有している。
【0017】
本発明の請求項9に係る医療用切削装置は、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記ハウジングは、把持部と前記把持部の先端に設けられたヘッド部とを有し、前記把持部の長軸に対して所定の角度をなして前記切削工具の回転軸が設けられるように、前記ヘッド部内部に前記工具保持部が設けられ、前記把持部内部にマイクロモータを有している。
【0018】
本発明の請求項10に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記切削工具は、スケーラチップである。
【0019】
本発明の請求項11に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを表示する表示部をさらに備える。
【0020】
本発明の請求項12に係る医療用切削装置は、請求項11に記載の医療用切削装置であって、前記表示部は、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを時系列的に表示する機能を有する。
【0021】
本発明の請求項13に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、前記荷重検出部で検出した荷重が所定の値以上になったことを知らせる報知部をさらに備える。
【0022】
本発明の請求項14に係る医療用切削装置は、請求項1乃至請求項13のいずれか1つに記載の医療用切削装置と、前記医療用切削装置から、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを受け取り、当該荷重又は荷重ベクトルと所定の判定基準とを比較して、切削作業の評価判定を行う判定部と、前記判定部での評価判定結果を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1に係る医療用切削装置では、切削工具に加わる荷重を検出できる荷重検出部をハウジング内に設けているので、作業性に影響を与えることなく、切削時に切削工具に加わる荷重を即時的に把握することができる。
【0024】
本発明の請求項2に係る医療用切削装置では、歪み検出部で曲げ部材の歪みを検出し、当該検出結果に基づいて切削工具に加わる荷重を検出するので、荷重検出部を小型化することが可能になる。
【0025】
本発明の請求項3に係る医療用切削装置では、曲げ部材を、間接部材を介してハウジングや工具保持部又は切削工具に固定するので、医療用切削装置内の曲げ部材や工具保持部などの構成部材のレイアウトに自由度が増す。
【0026】
本発明の請求項4に係る医療用切削装置では、歪み検出部を設けた曲げ部材を、所定の配置で複数設けることで、切削工具に加えられる様々な方向の荷重を検出することができる。
【0027】
本発明の請求項5に係る医療用切削装置では、圧力検出部で検出した圧力に基づいて切削工具に加わる荷重を検出するので、荷重検出部の構成を簡略化することが可能になる。
【0028】
本発明の請求項6に係る医療用切削装置では、圧力検出部を、間接部材を介してハウジングや工具保持部又は切削工具に固定するので、医療用切削装置内の圧力検出部や工具保持部などの構成部材のレイアウトに自由度が増す。
【0029】
本発明の請求項7に係る医療用切削装置では、圧力検出部を所定の配置で複数設けることで、切削工具に加えられる様々な方向の荷重を検出することができる。
【0030】
本発明の請求項8又は9に係る医療用切削装置では、切削工具をエアタービン又はマイクロモータで駆動することができる。
【0031】
本発明の請求項10に係る医療用切削装置では、切削工具をスケーラチップとすることできる。
【0032】
本発明の請求項11に係る医療用切削装置では、表示部に荷重又は荷重ベクトルを表示するので、術者が切削作業中に切削工具に加わる荷重又は荷重ベクトルを、容易に認識することができる。
【0033】
本発明の請求項12に係る医療用切削装置では、表示部に荷重又は荷重ベクトルの時系列を表示するので、術者が切削作業中に切削工具に加わる荷重又は荷重ベクトルの時間的変化を、容易に認識することができる。
【0034】
本発明の請求項13に係る医療用切削装置では、報知部が、切削工具に加わる荷重が所定の値以上になったことを術者に知らせるので、過度の切削を回避することができる。
【0035】
本発明の請求項14に係る医療用切削装置では、切削工具に加わる荷重又は荷重ベクトルを検出できる医療用切削装置を用いるので、切削実習の評価を客観的データに基づき即時的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置の荷重検出部の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置の荷重検出を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置の荷重検出を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る医療用切削装置のブロック図である。
【図6】エアータービンハンドピースのより全体的な部分を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1の変形例に係る医療用切削装置の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1の変形例に係る医療用切削装置の荷重検出部の平面図である。
【図9】本発明の実施の形態1の変形例に係る医療用切削装置の断面図である。
【図10】マイクロモータハンドピースのより全体的な部分を示す概略断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る医療用切削装置の断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る医療用切削装置の荷重検出部の断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2の変形例に係る医療用切削装置の断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る医療用切削実習装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る医療用切削装置は、切削工具に加わる荷重を検出する荷重検出部をハウジング内に設けている。具体的に、本実施の形態に係る医療用切削装置では、荷重検出部として歪みゲージを用いる構成について説明する。図1に、本実施の形態に係る医療用切削装置であるエアータービンハンドピースの断面図を示す。図1に示すエアータービンハンドピースでは、ハウジング1に切削工具2を保持する切削工具保持部3と、切削工具2を駆動させるためのタービンのローター4と、切削工具2に加わる荷重を検出する荷重検出部5とが格納されている。
【0038】
ハウジング1は、従来使用されているエアータービンハンドピースのハウジングと同じ材質で、且つほぼ同じ形状及びスケールである。但し、ハウジング1では、従来のハウジングに比べて、荷重検出部5を格納することができる分だけスペースを内部に確保する必要がある。
【0039】
切削工具2も、従来使用されているエアータービンハンドピースに着脱可能な切削工具であればいずれの工具でも良い。切削工具2については、JIS T 5501で定められている。また、切削工具2の軸部には、ステンレス鋼が使用される。切削工具2の作業部には、ダイヤモンド砥粒やタングステンカーバイド等にニッケルメッキやクロムメッキを施したものが使用される。なお、一般的に切削工具2の作業部がダイヤモンド砥粒で構成されているものを「ダイヤモンドバー」、タングステンカーバイドで構成されているものを「カーバイトバー」、ステンレス鋼を刃物形状にしたものを「ステンレスバー」、先端が円盤状のブラシ等で構成されているものを「ディスク」と呼ばれる。
【0040】
切削工具保持部3は、切削工具2を直接保持する内側保持部3aと、ハウジング1と嵌合する外側保持部3bと、内側保持部3aと外側保持部3bとに挟持されるベアリング3cとを備えている。内側保持部3aは、切削工具2を脱着可能なように保持している。また、内側保持部3aは、ベアリング3cを介して外側保持部3bに対して回転可能な構成である。なお、図1に示す切削工具保持部3では、切削工具2の長軸Kの方向に対して上下2組のベアリング3cを用いて、外側保持部3bに対して内側保持部3aが回転するように構成している。
【0041】
ローター4は、図1に示すように上下2組のベアリング3cの間で、且つ内側保持部3aに直接取り付けられている。そのため、エアータービンハンドピースに供給される駆動用の圧縮空気でローター4を回転させることで、内側保持部3aを回転させ切削工具2を駆動する。
【0042】
荷重検出部5は、曲げ部材5aと、曲げ部材5a上に貼り付けられた歪みゲージ5bとを備えている。曲げ部材5aは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3にそれぞれ固定されている。そして、切削工具2に荷重が加えられ、切削工具保持部3の位置がずれることで曲げ部材5aに歪みが生じる。この歪みを歪みゲージ5bで検出することで、切削工具2に加わる荷重を求めることができる。なお、図1に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aがハウジング1に対して間接部材6を介して固定されている。この間接部材6を設けることで、曲げ部材5aを設ける位置に自由度が増し、荷重検出部5をハウジング1内でレイアウトし易くなる。図1では間接部材6をハウジング1側に設ける例を示したが、本発明はこれに限られず、切削工具保持部3側又はハウジング1及び切削工具保持部3の両側に設けても良い。また、図1に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aが外側保持部3bに固定されている。しかし、本発明はこれに限られず、内側保持部3aや切削工具2と回転可能に固定しても良い。
【0043】
より詳しく荷重検出部5を説明するために、図2に、図1のA−A面から見た荷重検出部5の平面図を示す。図2に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aが十字形状部5a1を有し、この十字形状部5a1の中心部が間接部材6を介してハウジング1に固定されている。また、図2に示す荷重検出部5では、十字形状部5a1の周辺部が外側保持部3bに固定されている。そして、図2に示す荷重検出部5では、十字形状部5a1のそれぞれの辺に歪みゲージ5bが貼り付けられている。
【0044】
なお、図2に示す曲げ部材5aは、十字形状部5a1の中心部が連結部5a2で、周辺部が連結部5a3でそれぞれ接続される形状である。これは、組み立て作業の効率化を考慮した曲げ部材5aの形状であり、切削工具2に加わる荷重を検出することのみ考慮すれば、4つの独立した曲げ部材5aを十字形状に配置する構成でも良い。また、図2に示す荷重検出部5では、歪みゲージ5bを貼り付けた曲げ部材5aを、切削工具2の長軸Kの周りに90度ずつずらせて配置している。これは、図2に示す荷重検出部5が、切削工具2に加わる荷重を、長軸Kの方向及びこれに垂直な方向で検出可能とするための構成である。しかし、ある歪みゲージ5bを貼り付けた曲げ部材5aと隣接する歪みゲージ5bを貼り付けた曲げ部材5aとは、必ずしも90度である必要はない。歪みゲージ5bを貼り付けたそれぞれの曲げ部材5aを所定の角度(0度以上の角度)ずらせて配置すれば、荷重検出部5は、当該角度を考慮して演算することで長軸Kの方向及びこれに垂直な方向の荷重を求めることができる。また、歪みゲージ5bを貼り付けた曲げ部材5aの数は4つに限られない。
【0045】
次に、荷重検出部5の動作について説明する。図3では、切削工具2に図中左側(長軸Kに垂直な方向)から荷重が加えられた場合のエアータービンハンドピースの断面図を示している。また、図4では、切削工具2に図中下側(長軸Kの方向)から荷重が加えられた場合のエアータービンハンドピースの断面図を示している。
【0046】
まず、図3に示すエアータービンハンドピースでは、切削工具2が左から右に押されるため、切削工具保持部3は左側に傾く。切削工具保持部3が左側に傾くと図中左側の曲げ部材5aLと図中右側の曲げ部材5aRには歪みが生じる。そのため、図3に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aL,5aRで生じた歪みを、それぞれに貼り付けた歪みゲージ5bL,5bRで測定することで、切削工具2に加わる荷重の大きさのみならず、荷重を加えた方向も含む荷重ベクトルを求めることができる。
【0047】
次に、図4に示すエアータービンハンドピースでは、切削工具2が下から上に押されるため、切削工具保持部3は上側に持ち上げられる。切削工具保持部3が持ち上げられると図中左側の曲げ部材5aLと図中右側の曲げ部材5aRには歪みが生じる。そのため、図4に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aL,5aRで生じた歪みを、それぞれに貼り付けた歪みゲージ5bL,5bRで測定することで、切削工具2に加わる長軸Kに垂直な方向の荷重のみならず、長軸Kの方向の荷重も求めることができる。なお、切削工具2が上から下に引っ張られる場合にも、曲げ部材5aL,5aRのそれぞれに歪みが生じる。なお、さらに詳しい荷重検出部(センサ基板2と歪みゲージ5)の動作については、特開2004−239621に記載されている。
【0048】
歪みゲージ5bで検出された信号は所定の処理が施されて、切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルとして算出される。算出された荷重又は荷重ベクトルは、表示部に表示される。この処理について、図5に示す本実施の形態に係る医療用切削装置のブロック図を用いて説明する。図5に示す医療用切削装置では、荷重検出部5を設けたハンドピース10に、切削駆動回路11と信号増幅器12とが接続されている。この切削駆動回路11及び信号増幅器12は、CPU13に設けた制御回路14に接続されている。切削駆動回路11は、制御回路14からの信号に基づき切削工具2の駆動を制御する。なお、ハンドピース10がエアータービンハンドピースであれば、切削駆動回路11からの信号以外に、駆動用の圧縮空気がハンドピース10に供給される。
【0049】
信号増幅器12は、ハンドピース10内の荷重検出部5と接続されている。信号増幅器12は、荷重検出部5で検出した歪みの信号を制御回路14で処理可能なレベルに増幅している。信号増幅器12で増幅した信号に基づき、制御回路14は、荷重検出部5で検出した歪み量から切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルを求める。なお、荷重検出部5で検出した歪み量から切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルを求める場合、切削工具2の長さや径、材質を考慮して求める必要がある。
【0050】
切削工具2の全長は16〜70mmであり、エアータービンハンドピースでは、標準的な切削工具2の長さが19mmである。なお、マイクロモータハンドピースの場合、コントラタイプの切削工具2では22mm,ストレートタイプの切削工具2では44.5mmが標準である。切削工具2の直径は1.07mmから3mmであり、エアータービンハンドピースでは、標準的な切削工具2の直径は2.35mmと1.6mmとである。マイクロモータハンドピースでは、コントラタイプ及びストレートタイプともに切削工具2の直径は2.35mmが標準である。切削工具2の材質は、軸部がステンレス鋼で、作業部がダイヤモンド砥粒やタングステンカーバイド等にニッケルメッキやクロムメッキを施したものが使用される。
【0051】
制御回路14で求めた荷重又は荷重ベクトルは、表示部15に表示される。なお、表示部15には、CPU13に設けた記憶部(図示せず)に記録された過去の荷重又は荷重ベクトルと合わせて、時系列的に表示することも可能である。また、CPU13において、過剰切削等の不具合が発生する可能性がある荷重又は荷重ベクトルの値を閾値として設定することで、本実施の形態に係る医療用切削装置は、切削時に当該閾値を越えた場合に報知部16から術者に当該事実を知らせることができる。それにより、術者は、切削工具2に過剰な荷重が加わった事実を切削中に知ることができる。報知部16は、音声で知らせる構成でも、表示部15を利用して画像で知らせる構成でも良い。
【0052】
さらに、図5に示すブロック図では、ハンドピース10の外に切削駆動回路11及び信号増幅器12を設ける構成である。しかし、本発明はこれに限られず、切削駆動回路11及び信号増幅器12をハンドピース10の内に設けても良い。また、表示部15をハンドピース10の内に設けることも可能であり、術者は、手元のハンドピースから目を離すことなく、切削工具2に加わる荷重を知ることができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態に係る医療用切削装置は、ハンドピース10内に荷重検出部5を設けることで、作業性に影響を与えることなく、切削時に切削工具2に加わる荷重を即時的に把握することができる。
【0054】
図6はエアータービンハンドピースのより全体的な部分を示す概略断面図である。このエアータービンハンドピースのハウジング1は、把持部1Bとヘッド部1Hとを有している。把持部1Bは、手により把持可能な部分である。ここでは、把持部1Bは、長尺棒状、より具体的には、先端側部分がなだらかに湾曲する長尺棒状に形成されている。また、ここでは、把持部1Bは、先端側部分1Baと基端側部分1Bbとの2分割構成とされている。
【0055】
ヘッド部1Hは把持部1Bの先端部に設けられている。上記ヘッド部1H内には、切削工具保持部3が設けられている。工具保持部3には、保持対象となる切削工具2(図6では図示省略、図1等参照)の回転軸(K)が把持部1Bの長軸(より具体的には把持部1Bのうちヘッド部1Hに接続された近傍部分の長軸)に対して所定の角度をなすように、切削工具2が保持される。換言すれば、工具保持部3により保持される切削工具2は把持部1Bの長軸に対して斜め姿勢となる。
【0056】
また、このヘッド部1H内部には、エアタービン駆動部1Tが設けられている。そして、図示省略のユニット本体から専用のチューブ及び把持部1B内を通って上記エアタービン駆動部1Tに圧縮空気が供給される。この圧縮空気により、エアタービン駆動部1Tの羽根車が高速回転される共に、その回転が工具保持部3を介して工具2に伝達され、切削工具2が高速回転するようになっている。
【0057】
また、ヘッド部1Hのうち切削工具2をチャックする部分の上端に荷重検出部5が設けられている。荷重検出部5自体の具体的構成については既に説明した通りである。エアータービンハンドピース内には、荷重検出部5による検出信号を外部のユニット本体に伝達する電線100が設けられている。電線100は、ハウジングの把持部1B内を通って配設されている。かかる電線100としては、例えば、エアータービンハンドピース内にはヘッド部1Hに設けた照明用ライトを点灯させるための電線を含む配線が設けられている場合、当該配線の一部を共用した構成とすることができる。
【0058】
本実施形態では、ヘッド部1Bは、先端側部分1Baと基端側部分1Bbとの2分割構成とされているため、両者の接続部分では、先端側部分1Baと基端側部分1Bbとの合体及び分離により接触及び分離する接点構造を介して、先端側部分1Ba側の電線100aと基端側部分1Bbの電線100bとを接続することができる。このような接点構造としては、例えば、先端側部分1Baの接続面にリング状の接点部材102aを設け、基端側部分1Bbの接続面に接点部材102bを配設し、先端側部分1Baと基端側部分1Bbとを合体接続すると、リング状の接点部材102aと接点部材102bとが導通する構成を採用することができる。この場合、コイルバネ等の付勢部材104によって少なくとも一方の接点部材を相手側に付勢するとよい。ここでは、付勢部材104によって接点部材102bを、リング状の接点部材102aとの接続を維持する方向(押付ける方向)に付勢し、接点部材102aと接点部材102bとがより確実に常時接触状態を維持できるようにしている。このような付勢部材としては、例えば、ボールジョイント部材等を用いることができる。
【0059】
(変形例)
図1に示す医療用切削装置では、エアータービンハンドピースの例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、図7に示すスケーラが考えられる。図7に示すスケーラでも、ハウジング1に切削工具であるスケーラチップ21を保持する切削工具保持部3と、スケーラチップ21を駆動させるための駆動部41と、スケーラチップ21に加わる荷重を検出する荷重検出部5とが格納されている。
【0060】
切削工具保持部3は、図1の場合と同様に、スケーラチップ21を直接保持する内側保持部3aと、ハウジング1と嵌合する外側保持部3bと、内側保持部3aと外側保持部3bとに挟持されるベアリング3cとを備えている。
【0061】
荷重検出部5は、図1の場合と同様に、曲げ部材5aと、曲げ部材5a上に貼り付けられた歪みゲージ5bとを備えている。曲げ部材5aは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3の外側保持部3bにそれぞれ固定されている。なお、図7に示す荷重検出部5では、図1と異なり、曲げ部材5aがハウジング1に対して直接固定されている。
【0062】
また、図8に、図7のB−B面から見た荷重検出部5の平面図を示す。図8に示す荷重検出部5では、曲げ部材5aが十字形状部5a1を有し、この十字形状部5a1の中心部が外側保持部3bに固定されている。また、図8に示す荷重検出部5では、十字形状部5a1の周辺部がハウジング1に固定されている。そして、図8に示す荷重検出部5では、十字形状部5a1のそれぞれの辺に歪みゲージ5bを貼り付けている。なお、図8に示す曲げ部材5aでも、十字形状部5a1の中心部が連結部5a2で、周辺部が連結部5a3でそれぞれ接続される形状である。
【0063】
その他、図7に示すスケーラの荷重検出及びその信号処理は、図1に示すエアータービンハンドピースの場合と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、図7に示すスケーラにおいて、図1に示すエアータービンハンドピースと同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0064】
さらに、エアータービンハンドピース以外に、図9に示すマイクロモータハンドピースが考えられる。図9に示すマイクロモータハンドピースでも、ハウジング1に切削工具2を保持する切削工具保持部3と、切削工具2を駆動させるための駆動機構42と、切削工具2に加わる荷重を検出する荷重検出部5とが格納されている。
【0065】
切削工具保持部3は、図1の場合と同様に、切削工具2を保持する内側保持部3aと、ハウジング1と嵌合する外側保持部3bと、内側保持部3aと外側保持部3bとに挟持されるベアリング3cとを備えている。
【0066】
駆動機構42は、図9に示すように上下2組のベアリング3cの間で、且つ内側保持部3aに直接取り付けられているギア42aと、ギア42aと噛み合うギア42bとを備えている。ギア42bは、図示しないマイクロモータにより駆動される。マイクロモータは、駆動機構42を用いて内側保持部3aを回転させて切削工具2を駆動する。
【0067】
荷重検出部5は、図1の場合と同様に、曲げ部材5aと、曲げ部材5a上に貼り付けられた歪みゲージ5bとを備えている。曲げ部材5aは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3の外側保持部3bにそれぞれ固定されている。なお、図9に示す荷重検出部5では、図1と同様、曲げ部材5aがハウジング1に対して間接部材6を介して固定されている。
【0068】
その他、図9に示すマイクロモータハンドピースは、荷重検出部5の形状、荷重検出及びその信号処理について、図1に示すエアータービンハンドピースの場合と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、図9に示すマイクロモータハンドピースにおいて、図1に示すエアータービンハンドピースと同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0069】
図10はマイクロモータハンドピースのより全体的な部分を示す概略断面図である。ここでは、図10はコントラアングル型ハンドピースを示している。
【0070】
このマイクロモータハンドピースのハウジング1は、把持部201Bとヘッド部201Hとを有している。把持部201Bは、手により把持可能な部分である。ここでは、把持部201Bは、長尺棒状、より具体的には、先端側部分がなだらかに湾曲する長尺棒状に形成されている。また、ここでは、把持部201Bは、先端側部分201Baと基端側部分201Bbとの2分割構成とされている。
【0071】
ヘッド部201Hは把持部201Bの先端部に設けられている。上記ヘッド部201H内には、切削工具保持部3が設けられている。工具保持部3には、保持対象となる切削工具2の回転軸が把持部201Bの長軸(より具体的には把持部201Bのうちヘッド部201Hに接続された近傍部分の長軸)に対して所定の角度をなすように、切削工具2が保持される。換言すれば、工具保持部3により保持される切削工具2は把持部201Bの長軸に対して斜め姿勢となる。
【0072】
また、把持部201B内部には、マイクロモータ210が設けられている。把持部201Bからヘッド部201H内の工具保持部3に至る部分に回転伝達機構212が設けられている。回転伝達機構212は、複数のギアの組合わせによって構成されており、マイクロモータ210の回転が本回転伝達機構212を介して工具保持部3に伝達され、切削工具2が回転駆動される。なお、この回転伝達機構212のギア比を変更することで、所望の回転速度で切削工具2の減速・等速・増速等を行なうことができる。
【0073】
また、ヘッド部201Hのうち切削工具2をチャックする部分の上端に荷重検出部5が設けられている。荷重検出部5自体の具体的構成については既に説明した通りである。マイクロモータハンドピース内には、荷重検出部5による検出信号を外部のユニット本体に伝達する電線220が設けられている。電線220は、ハウジングの把持部201B内を通って配設されている。かかる電線220としては、例えば、マイクロモータハンドピース内にはマイクロモータ210を駆動するための電線を含む配線が設けられているため、当該配線の一部を共用した構成とすることができる。
【0074】
本実施形態では、ヘッド部201Bは、先端側部分201Baと基端側部分201Bbとの2分割構成とされているため、両者の接続部分では、先端側部分201Baと基端側部分201Bbとの合体及び分離により接触及び分離する接点構造を介して、先端側部分201Ba側の電線220aと基端側部分201Bbの電線220bとを接続することができる。このような接点構造としては、例えば、先端側部分201Baの接続面に接点部材222aを設け、基端側部分201Bbの接続面に接点部材222bを配設し、先端側部分201Baと基端側部分201Bbとを合体接続すると、接点部材222aと接点部材222bとが導通する構成を採用することができる。この場合、コイルバネ等の付勢部材224によって接点部材の少なくとも一方を相手側に付勢する構成とするとよい。ここでは、付勢部材224によって、接点部材222aを、接点部材222bとの接続を維持する方向(押付ける方向)に付勢し、接点部材222aと接点部材222bとがより確実に常時接触状態を維持できるようにしている。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る医療用切削装置においても、実施の形態1と同様に、切削工具に加わる荷重を検出する荷重検出部をハウジング内に設けている。しかし、本実施の形態に係る医療用切削装置では、実施の形態1と異なり、荷重検出部に歪みゲージではなく、圧力センサを用いる構成である。図11に、本実施の形態に係る医療用切削装置であるエアータービンハンドピースの断面図を示す。図11に示すエアータービンハンドピースでは、ハウジング1に切削工具2を保持する切削工具保持部3と、切削工具2を駆動させるためのタービンのローター4と、切削工具2に加わる荷重を検出する荷重検出部7とが格納されている。なお、図11に示すエアータービンハンドピースにおいて、図1に示すエアータービンハンドピースと同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0076】
荷重検出部7は、圧力センサを採用している。当該圧力センサとしては、フィルム形状やゴム等の弾性体形状の導電性圧力センサ、静電容量型圧力センサが考えられる。なお、これら以外、ハウジング1内に配置可能な圧力センサであれば、荷重検出部7として採用できる。荷重検出部7は、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3にそれぞれ固定されている。そして、切削工具2に荷重が加えられ、切削工具保持部3の位置がずれることで荷重検出部7に荷重がかかる。この荷重を荷重検出部7である圧力センサで検出することで、切削工具2に加わる荷重を求めることができる。なお、図11では、切削工具2の長軸Kの方向に配置される荷重検出部7aは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3の内側保持部3aに固定されている。また、切削工具2の長軸Kに対して垂直な方向に配置される荷重検出部7bは、一端がハウジング1に、他端が切削工具保持部3の外側保持部3bに固定されている。なお、図11に示す荷重検出部7aは、内側保持部3aに固定しているが、本発明はこれに限られず、外側保持部3bに固定、又は切削工具2と回転可能に固定しても良い。図11に示す荷重検出部7bは、外側保持部3bに固定しているが、本発明はこれに限られず、内側保持部3aや切削工具2と回転可能に固定しても良い。
【0077】
より詳しく荷重検出部7を説明するために、図12に、図11のC−C面での荷重検出部7の断面図を示す。図12に示す荷重検出部7bは、切削工具2の長軸Kの周りに90度ずつずらせて外側保持部3bに配置されている。これにより、図12に示す荷重検出部7bは、長軸Kに対して垂直な方向全てについて切削工具2に加わる荷重を検出することができる。しかし、隣接する荷重検出部7bの間の角度が、必ずしも90度である必要はない。隣接する荷重検出部7bの間の角度が決まっていれば、当該角度を考慮して長軸Kの方向の荷重を演算し求めることができる。また、設ける荷重検出部7bの数は4つに限られない。なお、図12では示していないが、長軸Kの方向の荷重は荷重検出部7aで検出する。
【0078】
図11に示すエアータービンハンドピースでも、図5で示した構成で、荷重検出部7で検出した信号を処理して、切削工具2に加わった荷重又は荷重ベクトルを求める。但し、図1に示すエアータービンハンドピースでは、測定した歪み量から荷重に変換する必要があったが、図11に示すエアータービンハンドピースでは圧力センサからの出力であるため上記のような変換は不要である。なお、図11に示すエアータービンハンドピースの場合でも、荷重検出部7で検出した荷重に対して切削工具の長さ,径や材質を考慮して切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルを求める必要はある。
【0079】
以上のように、本実施の形態に係る医療用切削装置では、ハンドピース10内に圧力センサの荷重検出部7を設けることで、作業性に影響を与えることなく、切削時に切削工具2に加わる荷重を即時的に把握することができる。
【0080】
(変形例)
図11に示すエアータービンハンドピースでは、ハウジング1が1重構造の場合について説明したが、本発明はこれに限られず、図13に示すような2重構造のハウジング1のエアータービンハンドピースであっても良い。図13に示すエアータービンハンドピースでは、外側に位置するアウターハウジング部1aと、内側に位置するインナーハウジング部1bと、アウターハウジング部1aと嵌合するカプセルキャップ部1cとを備える2重構造のハウジング1を採用している。そのため、図13に示す荷重検出部7は、一端がインナーハウジング部1bに、他端が切削工具保持部3の内側保持部3aに固定されている。図13に示すエアータービンハンドピースでは、カプセルキャップ部1cを長軸K方向に外し、インナーハウジング部1bを取り出すことができるため、メンテナンスが容易になる。このような、2重構造のハウジング1を採用するエアータービンハンドピースにも、図13に示すよう荷重検出部7を設けることで、切削工具2(図13では図示せず)に加わる荷重又は荷重ベクトルを検出することができる。なお、図13に示すエアータービンハンドピースにおいて、図11に示すエアータービンハンドピースと同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。また、図13に示す2重構造のハウジング1は、歪みゲージ5bで荷重を検出する図1のエアータービンハンドピースにも同様に適用することができる。
【0081】
(実施の形態3)
実施の形態1及び2では、切削時に切削工具2に加わる荷重を求める医療用切削装置について説明した。当該医療用切削装置は、臨床現場でも実習でも利用することが可能である。さらに、本実施の形態では、医療用切削装置を備え、実習での切削評価が可能な医療用切削実習装置について説明する。
【0082】
図14に、本実施の形態に係る医療用切削実習装置のブロック図を示す。図14に示す医療用切削実習装置では、図5に示した医療用切削装置に、判定部17を追加した構成である。判定部17は、CPU13内で構成され、制御回路14から得た切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルと、所定の判定基準とを比較して切削作業の評価判定を行う。所定の判定基準は、例えば、教師が行った人工歯牙の切削での切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルの基準履歴を採用する。評価判定では、例えば、この基準履歴に対して、実習者が行った人工歯牙の切削での切削工具2に加わる荷重又は荷重ベクトルの実習履歴を比較し、統計的にどの程度差異があるかに基づいて判定する。なお、判定部17は、図14のようにCPU13内でソフトウェアとして構成しても、CPU13の外部にハードウェアとして構成しも良い。
【0083】
評価判定した結果は、表示部15に表示される。なお、表示部15を評価判定結果の出力部とせずに、プリンタ等の他の出力装置を出力部としても良い。また、図14に示す医療用切削実習装置において、図5に示す医療用切削装置と同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0084】
以上のように、本実施の形態に係る医療用切削実習装置では、実施の形態1及び2に係る医療用切削装置と、その出力を利用して実習での評価判定を行う判定部17と、評価結果を出力できる出力部とを備えるので、切削実習の評価を客観的データに基づき即時的に行うことができる。
【符号の説明】
【0085】
1 ハウジング、1T エアタービン駆動部、2 切削工具、3 切削工具保持部、4 ローター、5,7 荷重検出部、6 間接部材、10 ハンドピース、11 切削駆動回路、12 信号増幅器、13 CPU、14 制御回路、15 表示部、16 報知部、17 判定部、21 スケーラチップ、41 駆動部、42 駆動機構、210 マイクロモータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具と、
前記切削工具を保持する工具保持部と、
前記切削工具に加わる荷重を検出する荷重検出部と、
前記工具保持部及び前記荷重検出部を保持するハウジングとを備える医療用切削装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用切削装置であって、
前記荷重検出部は、
一端が前記ハウジングに、他端が前記工具保持部又は前記切削工具にそれぞれ固定された曲げ部材と、
前記曲げ部材上に設けられ、前記曲げ部材の歪みを検出する歪み検出部とを備え、
前記歪み検出部で検出した前記曲げ部材の歪みに基づき前記切削工具に加わる荷重を検出することを特徴とする医療用切削装置。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用切削装置であって、
前記曲げ部材は、前記ハウジング及び前記工具保持部又は前記切削工具のうち少なくとも一方が間接部材を介して固定されることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項4】
請求項2に記載の医療用切削装置であって、
前記歪み検出部を設けた前記曲げ部材が複数設けられ、且つ個々の前記曲げ部材は前記切削工具の長軸を中心に、所定の角度ずらせて配置されることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項5】
請求項1に記載の医療用切削装置であって、
前記荷重検出部は、
前記ハウジングと、前記工具保持部又は前記切削工具とに挟持された圧力検出部を備え、
前記圧力検出部で検出した圧力に基づき前記切削工具に加わる荷重を検出することを特徴とする医療用切削装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医療用切削装置であって、
前記圧力検出部は、前記ハウジング及び前記工具保持部又は前記切削工具のうち少なくとも一方が間接部材を介して挟持されていることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項7】
請求項5に記載の医療用切削装置であって、
前記圧力検出部は、前記切削工具の長軸方向及び、それに対して垂直な方向に配置されていることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記ハウジングは、把持部と前記把持部の先端に設けられたヘッド部とを有し、
前記把持部の長軸に対して所定の角度をなして前記切削工具の回転軸が設けられるように、前記ヘッド部内部に前記工具保持部が設けられ、
前記ヘッド部内部にエアタービン駆動部を有していることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記ハウジングは、把持部と前記把持部の先端に設けられたヘッド部とを有し、
前記把持部の長軸に対して所定の角度をなして前記切削工具の回転軸が設けられるように、前記ヘッド部内部に前記工具保持部が設けられ、
前記把持部内部にマイクロモータを有していることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記切削工具は、スケーラチップであることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを表示する表示部をさらに備えることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項12】
請求項11に記載の医療用切削装置であって、
前記表示部は、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを時系列的に表示する機能を有することを特徴とする医療用切削装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記荷重検出部で検出した荷重が所定の値以上になったことを知らせる報知部をさらに備えることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか1つに記載の医療用切削装置と、
前記医療用切削装置から、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを受け取り、当該荷重又は荷重ベクトルと所定の判定基準とを比較して、切削作業の評価判定を行う判定部と、
前記判定部での評価判定結果を出力する出力部とを備える医療用切削実習装置。
【請求項1】
切削工具と、
前記切削工具を保持する工具保持部と、
前記切削工具に加わる荷重を検出する荷重検出部と、
前記工具保持部及び前記荷重検出部を保持するハウジングとを備える医療用切削装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用切削装置であって、
前記荷重検出部は、
一端が前記ハウジングに、他端が前記工具保持部又は前記切削工具にそれぞれ固定された曲げ部材と、
前記曲げ部材上に設けられ、前記曲げ部材の歪みを検出する歪み検出部とを備え、
前記歪み検出部で検出した前記曲げ部材の歪みに基づき前記切削工具に加わる荷重を検出することを特徴とする医療用切削装置。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用切削装置であって、
前記曲げ部材は、前記ハウジング及び前記工具保持部又は前記切削工具のうち少なくとも一方が間接部材を介して固定されることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項4】
請求項2に記載の医療用切削装置であって、
前記歪み検出部を設けた前記曲げ部材が複数設けられ、且つ個々の前記曲げ部材は前記切削工具の長軸を中心に、所定の角度ずらせて配置されることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項5】
請求項1に記載の医療用切削装置であって、
前記荷重検出部は、
前記ハウジングと、前記工具保持部又は前記切削工具とに挟持された圧力検出部を備え、
前記圧力検出部で検出した圧力に基づき前記切削工具に加わる荷重を検出することを特徴とする医療用切削装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医療用切削装置であって、
前記圧力検出部は、前記ハウジング及び前記工具保持部又は前記切削工具のうち少なくとも一方が間接部材を介して挟持されていることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項7】
請求項5に記載の医療用切削装置であって、
前記圧力検出部は、前記切削工具の長軸方向及び、それに対して垂直な方向に配置されていることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記ハウジングは、把持部と前記把持部の先端に設けられたヘッド部とを有し、
前記把持部の長軸に対して所定の角度をなして前記切削工具の回転軸が設けられるように、前記ヘッド部内部に前記工具保持部が設けられ、
前記ヘッド部内部にエアタービン駆動部を有していることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記ハウジングは、把持部と前記把持部の先端に設けられたヘッド部とを有し、
前記把持部の長軸に対して所定の角度をなして前記切削工具の回転軸が設けられるように、前記ヘッド部内部に前記工具保持部が設けられ、
前記把持部内部にマイクロモータを有していることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記切削工具は、スケーラチップであることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを表示する表示部をさらに備えることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項12】
請求項11に記載の医療用切削装置であって、
前記表示部は、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを時系列的に表示する機能を有することを特徴とする医療用切削装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用切削装置であって、
前記荷重検出部で検出した荷重が所定の値以上になったことを知らせる報知部をさらに備えることを特徴とする医療用切削装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか1つに記載の医療用切削装置と、
前記医療用切削装置から、前記荷重検出部で検出した荷重又は荷重ベクトルを受け取り、当該荷重又は荷重ベクトルと所定の判定基準とを比較して、切削作業の評価判定を行う判定部と、
前記判定部での評価判定結果を出力する出力部とを備える医療用切削実習装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−264233(P2010−264233A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80750(P2010−80750)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】
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