説明

医療用吸引器具、陰圧形成装置、および、一方弁を有する栓部材

【課題】排液の吸引排出の際に、排気口の開口方向へ排液が噴射することがなく、排液の不測の飛散を防止することが可能な陰圧形成装置、陰圧形成装置用の一方弁を有する栓部材、医療用吸引装置を提供する。
【解決手段】医療用吸引器具100を、エアの排気により陰圧を形成する陰圧形成部10と、陰圧により吸引された排液を貯留する貯留容器50とを備えて構成する。陰圧形成部10は、収縮により排気口12からエアを排気するポンプ部11と、エアの排気により内部が陰圧となり排液の吸引力を形成する吸引容器13と、排気口12に配置されエアの排気を許容し吸気を阻止する一方弁20と、排気口12に臨んで配置されエアおよび排液が突き当たる返し部材30と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用吸引器具、陰圧形成装置、および、一方弁を有する栓部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、術後の創部から血液、膿、滲出液などの体液(以下、「排液」と呼ぶ)を吸引排出するための医療用吸引器具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このような医療用吸引器具は、排液の吸引用のチューブを創部内に挿入し、陰圧によってチューブを通して創部からの排液を吸引して、排液貯留用の容器内に集積、貯留するものである。特許文献1に記載の医療用吸引器具では、吸引用のチューブは、ゴム弾性を有する樹脂材料で形成され圧縮変形する容器本体の接続口に接続されている。また、排気口とチューブの接続口とは、容器本体よりも剛性の高い材料で容器本体とは別体に形成された頭部に設けられ、この頭部が容器本体に取り付けられている。そして、排気口を開放して容器本体を圧縮変形させ、容器本体内のエアを排気口から排気する。この状態で、排気口を蓋体で閉止することで、圧縮変形された容器本体が復元しようとし、その復元力によって容器本体内に陰圧が形成される。この陰圧により、創部からチューブ内に排液が吸引された後、容器本体内に集積して貯留される。また、容器本体とは別個に、圧縮膨張によりエアを排出するポンプなどで陰圧を形成し、容器本体の内部に排液を吸引する装置も上市されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−336361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の医療用吸引器具では、容器本体やポンプを数回、圧縮変形させて、排気口からエアを排気する際に、容器本体内に貯留または残留していた排液が空気とともに排気口から噴射されることがある。これにより、排液が飛散して周囲を汚すことがあり、掃除や洗浄等の後始末に手間がかかるという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、術後の創部から血液、膿、滲出液などの排液を吸引排出する際に、外部への排液の飛散を良好に防止することが可能な医療用吸引器具、医療用吸引具に用いられる陰圧形成装置、および、一方弁を有する栓部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の医療用吸引器具は、陰圧部で形成される陰圧により排液を吸引する医療用吸引器具であって、
陰圧部、陰圧部の内部のエアを排気する排気口を有し収縮により排気口からエアを外部に排気する排気部、排気口に配置され陰圧部の内部のエアの排気を許容し吸気を阻止する一方弁、ならびに、排気口の外側に覆設されエアおよび排液が突き当たる返し部材、を備え、排気口からのエアの排気により陰圧部の内部に陰圧を形成する陰圧形成部と、
陰圧形成部により形成された陰圧により排液を吸引し貯留する貯留部と、
を有している。
【0007】
また、本発明の医療用吸引器具において、返し部材は、排気口の外側に覆設された天板部と、当該天板部から排気口に向かって筒状に突設された側壁部と、天板部の内表面の中央に突設され排気口から排出されるエアの流路を複数に分流する分流部と、を有するものであってもよい。
【0008】
また、本発明の医療用吸引器具において、返し部材は、分流部に連続して、側壁部に向かって所定間隔を介して放射状に延出形成された複数の平面略V字形の仕切壁を、さらに有し、隣接する仕切壁との間に、分流部で分流されたエアが流通する分流路が形成され、各分流路に連続して側壁部の外周縁の近傍に、分流路からのエアを排気する分流排気口が各々形成されていてもよい。
【0009】
また、本発明の医療用吸引器具において、分流路の分流部の方向を上流、分流排気口の方向を下流としたとき、当該分流路は、分流部で仕切られた部分の幅寸法よりも、下流側の幅寸法が一旦狭幅に形成され、当該狭幅部分から下流側に向かって、幅寸法が次第に広幅に形成されているものであってもよい。
【0010】
また、本発明の医療用吸引器具において、一方弁が、内部にエアの流通路を有する弁本体と、流通路の内部を往復移動し分流部を死点とするピストン部材と、を含んでいるものであってもよい。
【0011】
また、本発明の医療用吸引器具において、ピストン部材が死点に当接したときに、排気部の内部と分流路とが連通するものであってもよい。
【0012】
また、本発明の医療用吸引器具において、流通路は、エアが噴射される噴射口を有し、側壁部は、噴射口の外周に覆設され、かつ、噴射口の開口面積以上の開口面積を有しているものであってもよい。
【0013】
また、本発明の医療用吸引器具において、仕切壁は、略V字形の内部に中空の中空部が形成され、当該中空部は、分流路と隔絶されているものであってもよい。
【0014】
また、本発明の医療用吸引器具において、返し部材は、半透明または透明であってもよい。
【0015】
また、本発明の医療用吸引器具において、排気口に着脱自在に形成された栓部材を、さらに有し、一方弁、および、返し部材が、栓部材に備えられているものであってもよい。
【0016】
本発明の陰圧形成装置は、陰圧部で形成される陰圧により排液を吸引する医療用吸引器具に用いられる陰圧形成装置であって、
陰圧部と、
陰圧部の内部のエアの外部への排気を行う排気口と、
排気口の外側に覆設されエアおよび排液が突き当たる返し部材と、
を有している。
【0017】
本発明の一方弁を有する栓部材は、陰圧部と、陰圧部の内部のエアを外部に排気する排気口を有し、陰圧部の内部のエアを排気口から外部に排気して陰圧を形成する陰圧形成装置の排気口に装着して用いられる栓部材であって、
内部にエアの流通路とエアの噴射口が設けられ排気口に挿入される挿入部と、
挿入部の流通路に設けられ陰圧部の内部のエアの排気を許容し吸気を阻止する一方弁と、
噴射口の外側に覆設され当該噴射口から噴射されるエアが突き当たる返し部材と、
を有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、陰圧部で形成される陰圧により排液を吸引するときに、陰圧部の内部のエアを排気口から排気することで、陰圧が形成され、術後の創部から血液、膿、滲出液などの排液を吸引することができる。陰圧形成の際に、排気口からエアとともに排液が噴射されると、排気口の外側に覆設された返し部材に、エアおよび排液が突き当たることで、流動方向が排気口の方向に変えられ、排気口に向かって流動して排出される。さらに、返し部材に突き当たることで、比重の高い排液は流速が減速されて流下する。したがって、排液の周囲への飛散を良好に防止することが可能な医療用吸引器具、医療用吸引器具に用いられる陰圧形成装置、および、一方弁を有する栓部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の医療用吸引器具の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る医療用吸引器具の陰圧形成部に装着する栓部材を示す平面図である。
【図3】本実施形態の栓部材における、返し部材のみの底面図である。
【図4】本実施形態に係る医療用吸引器具に装着する栓部材の閉弁状態を表す断面図であり、(a)は図3のA−A'線に相当する位置での栓部材の閉弁状態を表す断面図であり、(b)は図3のB−B'線に相当する位置での栓部材の閉弁状体をあらわす断面図である。
【図5】本実施形態に係る医療用吸引器具に装着する栓部材の開弁状態を表す断面図であり、(a)は図3のA−A'線に相当する位置での栓部材の開弁状態を表す断面図であり、(b)は図3のB−B'線に相当する位置での栓部材の開弁状体をあらわす断面図である。
【図6】本実施形態の返し部材の底面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の医療用吸引器具の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。また、特にことわりのない場合には、紙面上方向を各部の上とし、上方、上面、上端などと呼び、紙面下方向を各部の下とし、下方、下面、下端などと呼ぶ。同様に、紙面左方向を、各部の左側、左側面などと呼び、紙面右方向を各部の右側、右側面などと呼ぶ。
【0021】
本実施形態の医療用吸引器具は、陰圧部で形成される陰圧により、創部から排出される血液、膿、滲出液などの排液を吸引するものである。図1の斜視図に示すように、本実施形態の医療用吸引器具100は、陰圧を形成する陰圧形成部10(本願の陰圧形成装置に相当する)と、陰圧により吸引された排液を貯留する貯留部(貯留容器50)と、を備えて構成されている。
【0022】
陰圧形成部10は、陰圧を形成する陰圧部(吸引容器13)と、この吸引容器13の内部のエアの排気口12を有し、収縮により排気口12からエアを外部に排気する排気部(ポンプ部11)と、排気口12に配置されエアの排気を許容し吸気を阻止する一方弁20と、排気口12の外側に覆設されエアおよび排液が突き当たる返し部材30と、を備えている。陰圧部である吸引容器13は、ポンプ部11によって内部のエアが排気されることにより、内部が陰圧となって排液の吸引力を形成する。なお、本明細書でいう「覆設」とは、部材(本実施形態では、排気口12や噴射口27)を密閉することなく、所定間隙を介して、当該部材を覆うように配置されていることをいう。
【0023】
ポンプ部11は、中空の球状であり、手で押圧することで収縮し、押圧を解除することで復元する。この動作(以下、「ポンピング動作」と呼ぶ)によって、吸引容器13内のエアを排気することにより、吸引容器13内部を陰圧にする機能を有している。ポンプ部11は、図1に示すように、上端に排気口12を設けた筒状の栓部材挿入部14を有し、下端に吸引容器13と気密的に接続された筒状の接続部15を有している。この接続部15内には、図示しない第2の一方弁が設けられ、吸引容器13の内部からのポンプ部11の内部へのエアの流動は許容するが、ポンプ部11の内部からの吸引容器13の内部へのエアの戻りを阻止する構成となっている。この第2の一方弁は、以降で詳細に説明する栓部材40の一方弁20と同様のものを用いてもよいし、他の何れのものを用いてもよい。
【0024】
吸引容器13は、透明な矩形状であり、バルーン部材16を内部に有している。バルーン部材16は、一端が開放端、他端が閉塞端の略筒状の弾性材料で構成され、膨張収縮が自在である。排液を吸引する際に、緩やかで一定の吸引力を発生させることができるため、好適に用いられる。また、吸引容器13が透明であるため、バルーン部材16の膨張収縮を目視で確認でき、このバルーン部材16の状態で吸引容器13の内部の陰圧状態を確認することができる。バルーン部材16は、図1に示すように、閉塞端側が吸引容器13内に挿入配置され、開放端側が蓋状の固定部材19によって吸引容器13に接続固定されている。固定部材19には、図示しない小孔が開口され、バルーン部材16の内部は小孔を介して外気と連通している。このような吸引容器13では、ポンプ部11を押圧して収縮させることにより、一方弁20が開弁してポンプ部11の内部のエアが排気され、ポンプ部11が収縮変形する。そして、押圧を解除することで、一方弁20が閉弁するとともに、収縮変形したポンプ部11の復元力により、図示しない第2の一方弁が開弁して吸引容器13の内部のエアがポンプ部11の内部に吸引され、ポンプ部11が球状に復元する(以上、前述のポンピング動作)。このようなポンピング動作を繰り返すことで、吸引容器13の内部が徐々に陰圧となる。このように吸引容器13の内部が陰圧状態となることにより、排液を吸引するための吸引力が形成される。この吸引容器13の内部の陰圧化により、固定部材19の小孔を介してバルーン部材16の内部に外気が吸引されてバルーン部材16が膨張する。また、吸引容器13による排液の吸引により、吸引容器13の内部圧力が徐々に大気圧に戻るため、バルーン部材16が徐々に萎む。
【0025】
なお、図1に示すように、連結管17とポンプ部11とは、バルーン部材16の中心軸を挟んで反対側に設けられている。このような配置とすることで、バルーン部材16が最大に膨張して吸引容器13の天井に接触しても、連結管17内腔とポンプ部11の接続部15内腔とがバルーン部材16により閉塞されることがない。そのため、吸引容器13の内部の上部の四隅付近のエアもバルーン部材16の外周を迂回して、接続部15側に流れるため、エアの流路を確実に確保することができる。したがって、ポンプ部11により、吸引容器13の内部のエアを、外部に円滑に排気することが可能となる。
【0026】
貯留容器50は、透明な矩形状であり、上面略中央部に、創部からの排液を吸引する吸引口51と、吸引により貯留された排液を排出する排液口52と、正面に、貯留した排液の量を計測する目盛り55と、が設けられている。また、排液口52は、貯留容器50の上面の四隅のうちの一隅に設けられている。さらに、貯留容器50の上面には、排液口52とは対角線上の隅に、連結管17の一端が接続され、この連結管17の他端は、吸引容器13に接続されている。このように、貯留容器50と吸引容器13とは、連結管17を介して連通され、吸引容器13からの吸引力により、創部から排液を吸引して貯留容器50内に貯留可能となっている。
【0027】
貯留容器50は、吸引容器13とは、連結管17を長尺にする等により、離間して設置されていてもよいが、近接して設置されていることが好ましい。本実施形態では、貯留容器50と吸引容器13とは、側面同士が面ファスナー等の連結部材18で接続固定されている。連結部材18は、面ファスナーに限定されないが、着脱が容易であるだけでなく、強固な連結が可能で、容器同士の安定した連結や設置が可能であるため好ましい。
【0028】
吸引口51は、チューブ状の弾性体で構成されている。吸引口51には、吸引容器13の内部を陰圧にする際に、外気の吸引を防止するためのクランプ部材53が取り付けられている。このクランプ部材53は、吸引口51の開閉が自在であれば、何れの部材を用いてもよい。本実施形態のクランプ部材53は、長尺な板状体であり、中央長手方向に長尺な長孔部531が形成されている。この長孔部531は、一端側が吸引口51と略同径の円形であり、この一端部位置では、吸引口51は開口している。また、長孔部531は、他端側方向に次第に狭幅となり、他端部では最も狭幅で直線的に形成されている。この他端部に吸引口51が移動したときは、弾性体製の吸引口51が閉塞される。さらに、長孔部531の他端部が直線的であるため、不測に幅広の一端部の方向に移動せず、吸引口51の閉塞が維持されるようになっている。吸引口51の先端には、図示しないチューブ部材(例えば、穿刺針を有するカテーテル等)が連結される。
【0029】
排液口52は、吸引した排液を排出するのに用いられるものである。排液口52には、蓋体54が設けられ、排液の吸引中の貯留容器50の不測の転倒等が生じた際や、排液の排出のための運搬等の際に、不測に排液が漏れないよう液密的に密閉されている。排液の排出を行う際には、蓋体54を外して貯留容器50を傾けることにより行う。このとき、排液口52と連結管17とを、貯留容器50の上面に、対角線上に配置したことで、排液口52からの排液の廃棄の際に、連結管17を介して、排液が吸引容器13側に侵入するのを防止することができる。
【0030】
一方弁20と返し部材30とは、図2に示すように、一体に形成され、独立して栓部材(本発明の一方弁を有する栓部材に相当する)40を構成している。栓部材40は、ポンプ部11の排気口12に着脱自在に装着される。また、一方弁20と返し部材30とは、本実施形態では、接着材の塗布または溶着により、一体化されている。
【0031】
一方弁20は、エアの流通路22および噴射口27を有する弁本体21と、当該流通路22内を上下に往復移動するピストン(弁体)23とを有している。弁本体21は、排気口12に挿入する挿入部としての機能を有している。流通路22とピストン23とは、上方側が次第に拡径するテーパー部分を有し、流通路22のテーパーの下端はピストン23が着座する弁座24となっている。通常は、ピストン23が弁座24(すなわち、下死点)に着座している。ポンプ部11の収縮による排気圧で、ピストン23が上昇して、弁座24から離れ、一方弁20が開弁して外部とポンプ部11の内部とが連通し、流通路22の上端の噴射口27からポンプ部11内のエアが噴射(排気)される。
【0032】
また、弁本体21は、栓部材挿入部14の内径よりも僅かに大径に形成されている。さらに、弁本体21の下端(排気口12への挿入側先端)に、排気口12への挿入側が小径で、抜き取り側(上方)がポンプ部11の栓部材挿入部14の内径よりも大径なテーパー部26が形成されている。また、一方、弁本体21の上端には、弁本体21の中心軸と直交して外方に突出する円盤状のフランジ部25が形成されている。このような構成により、一方弁20をポンプ部11の栓部材挿入部14への挿入の際には、下端側が小径なテーパー部26により、容易に挿入することができる。挿入が完了すると、栓部材挿入部14の内周面が、僅かに大径の弁本体21の外周面に弾性的に密着して気密性が保持される。一方弁20のフランジ部25の下面は、栓部材挿入部14の上端面に気密的に密着する。さらに、テーパー部26の上端面が、それよりも小径な栓部材挿入部14の下端側のポンプ部11の内周面に当接するような寸法合わせで形成されている。そのため、エアの排気の際の排気圧によって、栓部材40がポンプ部11の栓部材挿入部14から容易に抜け出ることがないものとなる。
【0033】
返し部材30について、図2〜図6に基づいて詳細に説明する。本実施形態の返し部材30は、図2に示すように、排気口12の外側に覆設された平坦な天板部31と、この天板部31に連続して排気口12方向(下方)に、円筒状に突出する側壁部32と、を有している。天板部31と側壁部32との境界は、曲面で連結され、後述するように、エアや排液が円滑に下方に流動する構成となっている。また、側壁部32の内側面321で囲まれた開口面積が、一方弁20に形成されたエアの噴射口27の開口面積よりも広面積に形成されている。このような構成とすることで、噴射口27から噴射されたエアや排液が、返し部材30の外部に直に噴射されることがなく、返し部材30内に一旦噴射された後、流動方向を変更されて、排気または排出される。そのため、噴射方向にエアや排液が噴射されて周囲に飛散するのを防止することができる。
【0034】
また、本実施形態の返し部材30は、図3〜図6に示すように、内表面311の中央に、平面十字状の4つの壁面331からなる分流部33が、排気口12に向かって突設されている。分流部33の各壁面331は、図5に示すように、一方弁20の流通路22の内部に、下端が挿入可能な高さで突設されている。そして、排気口12に挿入した栓部材40の流通路22の内部を通過して、噴射口27から噴射されるエアの流路を十字状の壁面331で4分割(分流)する。また、図6に示すように、十字状の分流部33の各壁面331の下面は、両側がカットされ、鉛直方向の断面形状が逆台形状となっている。このような構成とすることで、エアや排液の流路の分断のときのスプリット性が向上し、エアや排液の流れを淀ませることなく、円滑に分断することが可能となる。ここで、スプリット性とは、エアや排液が滞留することなく、かつ、バランス良く後述の複数の分流路36に分流されることをいう。なお、本実施形態では、分流部33が十字状、すなわち、天板部31の内表面311の中心から、4つの壁面331が90度間隔で形成されている。しかし、エアの流路を複数に分流することができれば、本願がこれに限定されることはなく、返し部材30のサイズやエアの噴射圧、デザイン性等を考慮して、中心から放射状に3つ以下または4つ超の壁面331を突設して分流部33を形成してもよい。
【0035】
本実施形態の返し部材30は、分流部33に連続して、側壁部32の内側面321に向かって、等間隔を介して周方向に放射状に延出形成された4つの平面略V字形の仕切壁34を、さらに有している。仕切壁34は、図3および図6に詳細に示すように、分流部33の壁面331の十字の先端に接続し、円筒の一部で形成された支持壁341を有している。支持壁341は、分流部33と同一高さに形成され、一方弁20の流通路22の内部に挿入されることで、流通路22の内面に支持壁341の円弧状の外面が気密的に密着する。この支持壁341の両端から、側壁部32方向に、2つの仕切板342(第1仕切板342aおよび第2仕切板342b)が、放射状に延出して形成されている。仕切板342の一側は支持壁341と接続し、他側は側壁部32と接続することで、返し部材30の内部空間を仕切っている。なお、仕切板342は、天板部31から下方への突出長さが、支持壁341の突出長さよりも短く形成され、支持壁341が流通路22内に挿入されたときに、仕切板342の下端が弁本体21のフランジ部25の上面に略当接するような寸法合わせで形成されている。このような構成の第1仕切板342a、第2仕切板342bと支持壁341とにより、図3に示すように、仕切壁34は平面が略V字形となっている。この略V字形の内部は中空であり(中空部35)、隣接する仕切壁34間に形成される4つのエアの分流路36と隔絶されている。
【0036】
上記のように構成することで、返し部材30では、図3に示すように、周回方向に、中空部35を挟んで一つ置きに分流路36が配置される。そのため、中空部35の色と比較して、分流路36の排液による色の変化を視認により明確に判別することができる。この視認し易さの観点から、返し部材30は、透明、または、半透明とするのが好ましい。本実施形態では、返し部材30を白色半透明(乳白色)に形成している。このように、返し部材30を白色半透明とすることで、返し部材30を通過する排液が容易に視認できるだけでなく、白色とのコントラストにより、排液の色を明確に視認できる。したがって、排液による分流路36の色の変化を明確に判別して、排液の漏れを迅速に認識することができる。なお、略V字形の内部は、樹脂材料を充填して中実としてもよい。しかし、中空部35として分流路36の色や肉厚等の性状を同一とすることにより、分流路36の色の変化の比較対象部として有効であるし、材料コストも少なくて済む。また、流動方向の流れを変化させ、かつ良好なスプリット性でエアや排液を分流して排出し、排液の不測の飛散を防止する機能が発揮できればよく、特に排液の色で漏れを認識する必要がない場合等は、返し部材30を不透明に形成してもよい。
【0037】
また、返し部材30と一方弁20とは、溶着により一体化されて栓部材40を構成している。この溶着は、本実施形態では超音波溶着加工により行われている。まず、返し部材30の成形の際には、図6に示すように、仕切板342(第1仕切板342aおよび第2仕切板342b)の下端に、断面逆三角形状の溶着代343(第1溶着代343aおよび第2溶着代343b)が突設されている。この溶着代343を介して、返し部材30と一方弁20のフランジ部25とを当接し、超音波溶着加工を行うことで、溶着代343が溶融して、双方が一体に溶着される。なお、この一体化により、分流部33の十字状の下面は、一方弁20のピストン23の上死点332となる。ピストン23が、この上死点332に当接したときに、一方弁20が開弁し、流通路22を介して、ポンプ部11の内部と返し部材30の内部(分流路36)とが連通する。なお、返し部材30と一方弁20との一体化は、溶着に限定されることはなく、接着剤による接着などで行ってもよい。
【0038】
また、隣接する仕切壁34間に形成された前述の4つの分流路36は、分流部33で4つに分断されたエアがそれぞれ流通する。各分流路36に連続して、側壁部32の外周縁322の近傍に、分流路36からのエアを排気する分流排気口37が各々形成されている。前述のように、ピストン23が、上死点332に当接したときに、流通路22、分流路36、および、分流排気口37を介して、ポンプ部11の内部と外部とが連通する。
【0039】
なお、図3に示すように、分流路36の分流部33側を上流、分流排気口37側を下流としたとき、当該分流路は、分流部33で仕切られた部分の幅寸法aよりも、下流側の幅寸法bが一旦狭幅に形成されている。この幅寸法b部分から、下流側の分流排気口37に向かって、幅寸法が次第に広幅に形成され、分流排気口37近傍の幅寸法cが最大寸法となっている。その作用効果については、後述する。
【0040】
ここで、本実施形態の返し部材30の代表的な寸法について説明する。返し部材30の最大外径は18.0mm、最大高さは7.0mmである。返し部材30の天板部31、側壁部32、仕切壁34の略V字状の仕切板342、および、分流部33の各壁面331は、厚さ1.0mmである。また、天板部31と側壁部32との境界の曲面の曲率半径は、4.0mmである。
【0041】
以下、各部材の好ましい材料について説明する。返し部材30は、血液等の排液の漏洩を視認することが容易なように、半透明または透明であることが好ましい。また、返し部材30の形成材料としては、成形の容易さ、耐排液性などを考慮して、樹脂材料が好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系樹脂が好ましく、これらの中でも、半透明に加工し易いことから、PEが特に好ましい。なお、一方弁20は、透明、半透明に限らず、不透明材料で形成してもよいが、返し部材30と一体に形成する際の溶着の行い易さを考慮して、同一材料で形成するのが好ましい。本実施形態では、返し部材30および一方弁20の弁本体21とは、同一材料のPEを用いて溶着を容易としている。ただし、ピストン23は、弁本体21とは別個に形成して、弁本体21内に収納した後、一方弁20と返し部材30とを一体化する。そのため、ピストン23は、エアや排液によって動作を妨げられることなく、円滑に上下動し、確実な開弁と閉弁とが可能であれば、透明、半透明、または、不透明いずれの材料で形成してもよい。なお、半透明とする場合、樹脂材料そのものが半透明のものを用いてもよいし、透明な樹脂材料に、染料、フィラー、マイクロバブル等を用いることにより、半透明としてもよい。また、排液の色が明確に判別できれば、白色半透明に限らず、他の異なる色を呈する半透明物としてもよい。
【0042】
吸引容器13および貯留容器50としては、たとえば、硬質塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、アクリルニトリル−スチレン共重合体樹脂などのスチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)やPEなどのポリオレフィン系樹脂等を用いるのが好ましい。これらの中でも硬質塩化ビニル樹脂、アクリルニトリル−スチレン共重合体樹脂を用いるのが特に好ましい。これらの樹脂材料では、透明性が優れているため、吸引容器13では、バルーン部材16の状態を容易に確認することができ、貯留容器50では、排液の状態や貯留量を容易に確認することができる。
【0043】
バルーン部材16は、前述したように、膨張収縮自在な弾性材料で形成されている。具体的には、たとえば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー材料、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム等のゴム材料を用いるのが好ましい。
【0044】
以下、本実施形態に係る医療用吸引器具100の動作例について説明する。ここでは、外科手術における血液、膿、滲出液等の排液を吸引する場合について説明する。医療用吸引器具100の操作者は、まず、貯留容器50の吸引口51に、体内に留置して排液を吸引するカテーテル(不図示)を取り付ける。このカテーテルを体内に留置するが、予め創部を滅菌生理食塩水等で洗浄し、凝血塊、組織片を排出しておく。その後、チューブの先端を体内に留置する。
【0045】
次に、吸引口51をクランプ部材53で密閉するとともに、排液口52を蓋体54で閉止する。そして、ポンプ部11のポンピング動作を行い、吸引容器13の内部のエアを排気して陰圧を形成する。これにより、バルーン部材16の外部(すなわち、吸引容器13の内部)も陰圧になり、バルーン部材16が膨張する。なお、バルーン部材16が吸引容器13の天井に到達するまで膨張しても、前述のように、ポンプ部11と連結管17とをバルーン部材16の中心軸を挟んで反対側に設けているので、ポンプ部11や連結管17がバルーン部材16により閉塞されることはない。さらに、連結管17とポンプ部11とが離間し、かつ、これらの間に、吸引容器13の天井まで到達したバルーン部材16が存在する。そのため、連結管17内に排液が流入しても、連結管17からの排液がポンプ部11の内部に直ちに吸引されるのを防止することができる。また、このようにバルーン部材16が吸引容器13の天井まで到達しても、矩形の吸引容器13と球形のバルーン部材16との間に空間が残る。連結管17から吸引容器13内に流入したエアは、この空間を通過してポンプ部11により、外部に排気されるため、バルーン部材16が排気の妨げとなることはない。
【0046】
また、前述したように、ポンプ部11の排気口12には、一方弁20と返し部材30とを備えた栓部材40が取り付けられている。一方弁20は、図4(a)、(b)に示すように、ピストン23が弁座24に着座し、閉弁されている。ポンピング動作によるエアの排気力により、ピストン23が上昇し、図5(a)、(b)に示すように、返し部材30の上死点332に当接することで、ポンプ部11の内部と外部とが連通する。弁本体21の流通路22から噴射されたエアは、スプリット性に優れた分流部33により4つに分流され、分流部33の4つの壁面331で仕切られた4つの分流路36の内部に流入する。エアは、分流路36の内部を介して噴射口27から、返し部材30の天板部31の方向に噴射される。
【0047】
このエアは天板部31の内表面311に突き当たり、その流動方向が排気口12の方向、すなわち、分流排気口37の方向に変更される。分流排気口37に向かって分流路36内を流動するエアは、図3に示すように、分流部33の壁面331間の幅寸法aを通過した後、幅寸法a部分よりも狭幅に絞られた幅寸法b部分を通過する。この通過の際に流速が加速され、その後、次第に広幅となる分流路36を通過し、図5(b)の一点鎖線で示すように、分流排気口37から外部に排気される。したがって、ポンプ部11および吸引容器13の内部から排気されたエアが、一方弁20のピストン23の周囲に気流が滞留したり淀んだりすることがなく、分流排気口37から速やかに外部に排出される。一方、ピストン23も速やかに落下して弁座(下死点)24に着座し、一方弁20が閉止される。そして、ポンプ部11の復元力によって、吸引容器13との間の図示しない第2の一方弁が開弁し、吸引容器13の内部のエアがポンプ部11の内部に吸引され、吸引されたエアの体積分、バルーン部材16が膨張する。これにより、陰圧形成部10の陰圧が大気圧に戻ることがなく、バルーン部材16の膨張を円滑に行うことができる。そのため、ポンプ部11による陰圧形成を、より良好に行うことができる。
【0048】
バルーン部材16が充分に膨張したら、クランプ部材53を長孔部531の円形状の広幅側にスライドさせて、吸引口51を開放することで、排液の吸引が開始される。このとき、医療用吸引器具100を創部よりも高い位置に設置しないようにする。そして、吸引口51の開放により、連結管17を介して貯留容器50の内部に、吸引容器13による吸引力が作用し、カテーテルにより排液を吸引することができる。吸引容器13の内部では、バルーン部材16が徐々に萎むことで、創部に強い吸引力が急激に作用することがなく、緩やかで一定の吸引力が作用する。吸引された排液は、貯留容器50に集液され貯留される。なお、排液を吸引中にバルーン部材16が萎んでいくことを確認することで、吸引力が少なくなっていくことを視認することができる。そのときに、再度ポンピング動作を行い、吸引容器13の内部のエアを排気して、吸引容器13の内部をさらに陰圧にする。このように、バルーン部材16を用いることにより、吸引容器13の内部の陰圧状態を視認により確認しつつ、緩やかで一定の吸引力を保持して、創部に負担のないよう、時間をかけて排液の吸引を行うことができる。
【0049】
ここで、排液は貯留容器50に貯留されるが、再度のポンピング動作による陰圧形成の際に、貯留容器50内の排液が、連結管17を介して、吸引容器13側に吸引されてしまうことがある。すると、ポンピング動作によるエアの排気の際に、エア中に排液が混入し、排気口12(本実施形態では、噴射口27)からエアとともに排液が噴射されることがある。この噴射により、従来は排液が周囲に飛散し、その後始末に手数がかかっていた。
【0050】
しかしながら、本実施形態の医療用吸引器具100では、流通路22の噴射口27の外側に、当該噴射口27の開口面積よりも、開口面積が広い側壁部32を有する返し部材30が覆設されている。そのため、噴射口27から噴射された排液は、外部にそのまま噴射されることなく、返し部材30内に噴射され、エアとともに分流部33によって分流された後、分流路36内に流動する。そして、排液は天板部31の内表面311に突き当たり、その流動方向が下方向、すなわち、分流排気口37の方向に変更される。前述したように、エアは流動方向が変更された後、分流排気口37を介して下方向、横方向に比較的自由に外部に排気される。
【0051】
一方、排液は、エアと比較して比重が高いため、天板部31の内表面311天井に突き当たった後、慣性力により、図5(b)に点線矢印で示すように、曲面を有する側壁部32の内面に沿って次第に減速して下方に流動する。そして、分流排気口37を通過して、側壁部32の外周縁322から流下する。そのため、排液がポンプ部11や吸引容器13の周囲には付着することがあるが、周囲への飛散を防止することができ、後始末等の手間を省くことができる。また、返し部材30が白色半透明であるため、分流路36の側壁部32に沿って流動する排液が透過して、操作者が排液の流出を容易に視認することができる。さらに、分流路36が、中空部35を挟んで一つ置きに配置されているため、白色透明の中空部35の色と比較して、分流路36の排液による色の変化を明確に判別することができ、排液の外部への漏れを迅速に認識することができる。そして、操作者は直ちに吸引作業を停止することで、排液の漏れを最小限に抑えることができる。
【0052】
排液の吸引が終了したら、クランプ部材53を長孔部531の狭幅側にスライドさせて、吸引口51を再度密閉する。次に、体内に留置していたカテーテルを体内から引き抜く。その後、蓋体54を外して排液口52を開口し、貯留容器50の内部に貯留された排液を当該排液口52から廃棄する。以上のように、本実施形態の医療用吸引器具100では、排液を一定の吸引力で良好に吸引することができる。また、排液の不測の漏れを良好に防止することができる。
【0053】
以上、本実施形態の返し部材30を有する陰圧形成部10(陰圧形成装置)、返し部材30を有し陰圧形成装置に用いるための栓部材40(一方弁を有する栓部材)、および、栓部材40を有する陰圧形成部10を備えた医療用吸引器具100は、エアの排気により陰圧を形成し、陰圧により排液を吸引する医療用吸引器具として好適に用いることができる。また、本実施形態の医療用吸引器具100は、外科手術後における血液・滲出液の吸引ドレナージ用の医療用吸引器具として好適に用いることができる。特に、携帯型の低圧持続吸引器として好適に用いることができる。
【0054】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。例えば、吸引容器13、貯留容器50の構成、形状等については、同様の機能を生じ得るものであれば、矩形に限定されることはなく、袋状など、任意の形状や構成のものを用いることができる。また、吸引容器13において陰圧により吸引力を形成する手段も、バルーン部材16に限定されるものではなく、例えば、吸引容器13自体が収縮し、その復元力によって吸引力を発生させるなど、任意のものを用いることができる。また、本実施形態では、返し部材30と一方弁20とを一体に形成して栓部材40とし、排気口12に装着していたが、本願がこれに限定されることはない。例えば、返し部材30と一方弁20とを別個に形成し、排気口12に一方弁20を配置し、返し部材30を任意の手段により排気口12の外側に覆設してもよい。また、本実施形態では、吸引容器13と貯留容器50との二つの容器を用いていたが、本願がこれに限定されることはなく、一つの容器で排液の吸引と貯留とを行うようにしてもよいし、三つ以上の容器を用いてもよい。また、一部材で、排気部(ポンプ部11)および陰圧部(吸引容器13)の双方の機能を兼用するものを用いてもよい。さらには、一つの部材で、排気部、陰圧部、および、貯留部(貯留容器50)のすべての機能を備えたものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10:陰圧形成部、11:ポンプ部(排気部)、12:排気口、13:吸引容器(陰圧部)、14:栓部材挿入部、15:接続部、16:バルーン部材、17:連結管、18:連結部材、19:固定部材、20:一方弁、21:弁本体(挿入部)、22:流通路、23:ピストン(弁体)、24:弁座、25:フランジ部、26:テーパー部、27:噴射口、30:返し部材、31:天板部、311:内表面、32:側壁部、321:内側面、322:外周縁、33:分流部、331:壁面、332:上死点(死点)、34:仕切壁、341:支持壁、342:仕切板、343:溶着代、35:中空部、36:分流路、37:分流排気口、40:栓部材(一方弁を有する栓部材)、50:貯留容器(貯留部)、51:吸引口、52:排液口、53:クランプ部材、531:長孔部、54:蓋体、55:目盛り、100:医療用吸引器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧部で形成される陰圧により排液を吸引する医療用吸引器具であって、
前記陰圧部、
前記陰圧部の内部のエアを排気する排気口を有し収縮により前記排気口から前記エアを外部に排気する排気部、
前記排気口に配置され前記陰圧部の内部の前記エアの排気を許容し吸気を阻止する一方弁、ならびに、
前記排気口の外側に覆設され前記エアおよび前記排液が突き当たる返し部材、を備え、
前記排気口からの前記エアの排気により前記陰圧部の内部に陰圧を形成する陰圧形成部と、
前記陰圧形成部により形成された陰圧により前記排液を吸引し貯留する貯留部と、
を有していることを特徴とする医療用吸引器具。
【請求項2】
前記返し部材は、
前記排気口の外側に覆設された天板部と、
当該天板部から前記排気口に向かって筒状に突設された側壁部と、
前記天板部の内表面の中央に突設され前記排気口から排出される前記エアの流路を複数に分流する分流部と、
を有する請求項1に記載の医療用吸引器具。
【請求項3】
前記返し部材は、
前記分流部に連続して、前記側壁部に向かって所定間隔を介して放射状に延出形成された複数の平面略V字形の仕切壁を、さらに有し、
隣接する前記仕切壁との間に、前記分流部で分流された前記エアが流通する分流路が形成され、各分流路に連続して前記側壁部の外周縁の近傍に、前記分流路からの前記エアを排気する分流排気口が各々形成されている請求項2に記載の医療用吸引器具。
【請求項4】
前記分流路の前記分流部の方向を上流、前記分流排気口の方向を下流としたとき、当該分流路は、前記分流部で仕切られた部分の幅寸法よりも、下流側の幅寸法が一旦狭幅に形成され、当該狭幅部分から下流側に向かって、前記幅寸法が次第に広幅に形成されている請求項3に記載の医療用吸引器具。
【請求項5】
前記一方弁が、内部に前記エアの流通路を有する弁本体と、前記流通路の内部を往復移動し前記分流部を死点とするピストン部材と、を含んでいる請求項3または4に記載の医療用吸引器具。
【請求項6】
前記ピストン部材が前記死点に当接したときに、前記排気部の内部と前記分流路とが連通する請求項5に記載の医療用吸引器具。
【請求項7】
前記流通路は、前記エアが噴射される噴射口を有し、
前記側壁部は、前記噴射口の外周に覆設され、かつ、前記噴射口の開口面積以上の開口面積を有している請求項5または6に記載の医療用吸引器具。
【請求項8】
前記仕切壁は、略V字形の内部に中空の中空部が形成され、
当該中空部は、前記分流路と隔絶されている請求項3から7のいずれか一項に記載の医療用吸引器具。
【請求項9】
前記返し部材は、半透明または透明である請求項1から8のいずれか一項に記載の医療用吸引器具。
【請求項10】
前記排気口に着脱自在に形成された栓部材を、さらに有し、
前記一方弁、および、前記返し部材が、前記栓部材に備えられている請求項1から9のいずれか一項に記載の医療用吸引器具。
【請求項11】
陰圧部で形成される陰圧により排液を吸引する医療用吸引器具に用いられる陰圧形成装置であって、
前記陰圧部と、
前記陰圧部の内部のエアの外部への排気を行う排気口と、
前記排気口の外側に覆設され前記エアおよび前記排液が突き当たる返し部材と、
を有していることを特徴とする陰圧形成装置。
【請求項12】
陰圧部と、前記陰圧部の内部のエアを外部に排気する排気口を有し、前記陰圧部の内部の前記エアを前記排気口から外部に排気して陰圧を形成する陰圧形成装置の前記排気口に装着して用いられる一方弁を有する栓部材であって、
内部に前記エアの流通路と前記エアの噴射口が設けられ前記排気口に挿入される挿入部と、
前記挿入部の前記流通路に設けられ前記陰圧部の内部の前記エアの排気を許容し吸気を阻止する一方弁と、
前記噴射口の外側に覆設され当該噴射口から噴射される前記エアが突き当たる返し部材と、
を有していることを特徴とする一方弁を有する栓部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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