医療用容器、医療用容器の製造方法、及び輸液入り医療用容器の製造方法
【課題】自立性を有し、液漏れのおそれの少ない医療用容器、及び該医療用容器が簡便に得られる製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】輸液収容部11及び底部シール部12を有する容器本体10と、該容器本体10の上部に液密に取り付けられた口部材20とを備えた医療用容器であって、輸液収容部11が、輸液収容部11の両方の側縁11aの内面と、底縁11bの内面とが接触するように折り込まれ、その接触部分11cがヒートシールされて折り込まれた状態が固定され、底面14が形成されていることを特徴とする医療用容器1。また、該医療用容器1の製造方法、及び医療用容器1に輸液が収容された輸液入り医療用容器の製造方法。
【解決手段】輸液収容部11及び底部シール部12を有する容器本体10と、該容器本体10の上部に液密に取り付けられた口部材20とを備えた医療用容器であって、輸液収容部11が、輸液収容部11の両方の側縁11aの内面と、底縁11bの内面とが接触するように折り込まれ、その接触部分11cがヒートシールされて折り込まれた状態が固定され、底面14が形成されていることを特徴とする医療用容器1。また、該医療用容器1の製造方法、及び医療用容器1に輸液が収容された輸液入り医療用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用容器、医療用容器の製造方法、及び輸液入り医療用容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液の点滴には、ガラス瓶、合成樹脂をブロー成形して得られるブロー容器、可撓性フィルムを用いた医療用容器が用いられている。ガラス瓶及びブロー容器は、自立性を有するものの可撓性に乏しく、一定の点滴速度を確保するには容器内に空気を導入するための通気針を必要とするため、輸液の汚染のおそれがある。これに対して、可撓性フィルムを用いた医療用容器は、通気針が不要で一定の点滴速度を確保することが可能である。可撓性フィルムを用いた医療用容器は、輸液を収容する可撓性フィルムからなる容器本体と、該容器本体から輸液を取り出す口部材と、該容器本体を懸架する懸架孔とを有する医療用容器であり、広く用いられている。しかし、該医療用容器は自立性を有していなかった。そのため、使用前の準備においては該医療用容器を倒した状態で机上等に置いていたことから、場所を広く取るうえ机上等が雑然として作業の混乱を招く要因となることがあった。また、該医療用容器の保管にも場所を取っていた。
【0003】
そこで、自立性を付与した可撓性フィルムを用いた医療用容器として、特許文献1には、図12(A)に示すように、輸液収容部110と、輸液収容部110の上端に備えられた輸液口120と、輸液収容部110の底部111に備えられたスカート部130とを有する医療用容器101が示されている。
医療用容器101では、輸液収容部110の底部111から筒状のスカート部130が形成されていることにより、自立性が付与されている。また、スカート部130には懸架孔131が設けられており、点滴の際には該懸架孔131をフックに引っ掛けて使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−7641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の医療用容器101では、スカート部130のヒートシールが不充分となり、液漏れが生じるおそれがあった。すなわち、医療用容器101では、図12(B)に示すように、スカート部130を形成する際、輸液収容部110を形成する外側の可撓性フィルム102と、輸液収容部110の底部111を形成する内側の可撓性フィルム103とが、シール部130a及び130bでヒートシールされる。このヒートシールでは、可撓性フィルム103を折り込んだ部分に平板状の治具140を挿入してヒートシールするが、フィルムが4枚重なった状態であるために、シール部130aのヒートシールが不充分になって、輸液収容部110の輸液が液漏れするおそれがあった。
そのため、自立性を有し、かつ液漏れのおそれの少ない医療用容器が必要である。
【0006】
そこで本発明では、自立性を有し、液漏れのおそれが少なく、点滴速度が安定した医療用容器、該医療用容器の製造方法及び輸液入り医療用容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の医療用容器は、輸液を収容する袋状の輸液収容部、及び該輸液収容部の底部を密封する底部シール部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを備えた医療用容器であって、前記輸液収容部が、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込まれ、ヒートシールによりその折り込まれた状態で固定されていることを特徴とする容器である。
また、本発明の医療用容器は、前記底部シール部が前記輸液収容部の外面に溶着されていることが好ましい。
また、前記底部シール部の幅方向における中央部に対して対称な位置に、前記容器本体を懸架する2つの懸架孔が設けられていることが好ましい。
また、前記底部シール部に、前記底部シール部の2つの前記懸架孔を揃えて固定する固定部が設けられていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の医療用容器の製造方法は、前記医療用容器の製造方法であって、輸液を収容する袋状の輸液収容部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを有する容器の前記輸液収容部を、前記輸液収容部の両側の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込んだときの前記輸液収容部の断面形状と同様の断面形状を有する枠体の内部に挿入する枠体挿入工程と、前記容器本体の前記輸液収容部に気体を送入する気体送入工程と、前記枠体挿入工程及び気体送入工程の後、前記枠体により、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように前記輸液収容部を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定するシール工程と、を有する方法である。
【0009】
また、本発明の輸液入り医療用容器の製造方法は、前記医療用容器に輸液が収容された輸液入り医療用容器の製造方法であって、輸液を収容する袋状の輸液収容部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを有する容器の前記輸液収容部を、輸液を充填して膨らませる輸液充填工程と、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように前記輸液収容部を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定するシール工程と、口部材に封をする封止工程と、を有する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療用容器は、自立性を有しており、かつ液漏れのおそれが少なく、点滴速度が安定している。
また、本発明の医療用容器の製造方法によれば、自立性を有し、かつ液漏れのおそれが少なく、点滴速度が安定した医療用容器が得られる。
また、本発明の輸液入り医療用容器の製造方法によれば、自立性を有し、かつ液漏れのおそれが少なく、点滴速度が安定した輸液入り医療用容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の医療用容器の実施形態の一例を示した斜視図である。
【図2】図1の医療用容器の前駆体である容器前駆体を示した斜視図である。
【図3】図1の医療用容器を懸架した様子を示した斜視図である。
【図4】本発明の医療用容器の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図5】本発明の医療用容器の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図6】本発明の医療用容器の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図7】本発明の医療用容器の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図8】本発明の医療用容器を製造する工程を示した図である。
【図9】本発明の医療用容器を製造する工程を示した図である。
【図10】従来の医療用容器の一例を示した斜視図である。
【図11】実施例1で用いた容器前駆体を示した斜視図である。
【図12】従来の医療用容器の一例を示した斜視図(A)及びその断面図(B)である。
【図13】本実施例における点滴速度の測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[医療用容器]
本発明の医療用容器は、輸液を収容する袋状の輸液収容部、及び該輸液収容部の底部を密封する底部シール部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを備えた医療用容器である。また、本発明の医療用容器は、前記輸液収容部が、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と、該輸液収容部の底縁の内面とが接触するように折り込まれ、ヒートシールによりその折り込まれた状態で固定されていることを特徴とする。
以下、本発明の医療用容器の実施形態の一例を示して詳細に説明する。図1は、本発明の医療用容器の一実施形態例を示した斜視図である。図2は、図1の医療用容器における、輸液収容部を折り込んだ状態でヒートシールする前の状態である容器前駆体を示した斜視図である。
【0013】
本実施形態の医療用容器1は、図1に示すように、容器本体10と、輸液を排出する口部材20とを有している。容器本体10は、輸液を収容する袋状の輸液収容部11と、輸液収容部11の底部を密封している底部シール部12とから構成されている。
【0014】
医療用容器1では、輸液収容部11の両方の側縁11aの内面が、輸液収容部11の底縁11bと接触するように折り込まれ、その重ね合わされた接触部分11cの基端をヒートシールしてヒートシール部13が形成されることで、折り込まれた状態で固定されている。また、これにより底面14が形成されている。
すなわち、図2に示す容器前駆体1Aにおいて、輸液収容部11が、輸液収容部11の両方の側縁11a上の点αの内面が底縁11bの内面と接触するように内側に折り込まれる。これにより、図1に示すように、輸液収容部11の内面同士が接触し、張り出した三角形の接触部分11cが形成され、該接触部分11cの一部がヒートシールされてヒートシール部13が形成され、輸液収容部11の底に底面14が形成される。
医療用容器1は、自重を底面14で支えることができるようになるため、特別な器具を用いることなく立てた状態で置くことができる。さらに、内容物充填後は内容物の自重により医療用容器1の底部が膨らむため、より安定した自立性が得られる。
【0015】
輸液収容部11の底面14は、輸液収容部11の幅方向の両側に形成されたヒートシール部13、13によって対向する二辺が形成されてなる面であり、その形状は医療用容器1が充分な自立性を有する形状であればよい。この例では、ヒートシール部13が平行に形成され、矩形状の底面14が形成されている。底面14の形状は、接触部分11cにおけるヒートシール部13を形成する方向により適宜調整することができる。なお、ヒートシール部13、13を平行とせず底面14を台形等としてもよい。
【0016】
また、底面14の面積は、医療用容器1が充分な自立性を有する面積であればよい。
底面14の面積は、底縁11bの両端11dからヒートシール部13までの距離b1、b2を調整することにより調整することができる。
距離b1と、底縁11bの長さcとの比b1/cは、0.20〜0.40であることが好ましく、0.26〜0.34であることが好ましい。比b1/cが前記範囲内であれば、底面14の面積が充分に大きくなって医療用容器1がより安定に自立できる。
距離b2と、底縁11bの長さcとの比b2/cは、0.20〜0.40であることが好ましく、0.26〜0.34であることが好ましい。比b2/cが前記範囲内であれば、底面14の面積が充分に大きくなって医療用容器1がより安定に自立できる。
また、距離b1とb2は、医療用容器1の自立の安定性の点から、同じであることが好ましい。
【0017】
また、医療用容器1では、図1に示すように、接触部分11cの内側の部分に輸液収容部11内の輸液が侵入しないようにヒートシール部13を端から端まで形成し、接触部分11cが輸液収容部11から隔離されるようになっている。このように接触部分11cが輸液収容部11から隔離されるようにヒートシールすれば、接触部分11cに輸液が残って最後まで点滴が行えなくなることを防止しやすくなる点で好ましい。
【0018】
また、医療用容器1は、ヒートシール部13をヒートシールする際、底部シール部12を同時にヒートシールして、底部シール部12の表面と輸液収容部11の外面との接触部分が溶着されていることが好ましい。これにより、底部シール部12によって医療用容器1を支える部分がより大きくなるため、医療用容器1の自立安定性が向上する。
【0019】
医療用容器1は、底部シール部12の幅方向における中央部に対して対称な位置に、容器本体10を懸架する2つの懸架孔を有していることが好ましく、本実施形態のように底部シール12の両端に2つの懸架孔15a、15bが設けられていることがより好ましい。このような2つの懸架孔15a、15bが設けられていれば、図3に示すように、それら懸架孔15a、15bが揃うように容器本体10の底部側を折り畳み、懸架孔15a、15bにフック30を引っ掛けて使用することができる。このようにして医療用容器1を懸架すると、容器本体10の輸液収容部11における底部シール部12側が窄まった状態となる。そのため、輸液収容部11の容積が小さくなって内圧が充分に高められ、口部材20からの輸液の排出速度がより安定になる。
【0020】
また、底部シール部12には、図3に示すように、懸架孔15a、15bを揃えた状態で底部シール部12を固定する固定部16が設けられていることが好ましい。固定部16により、懸架孔15a、15bを揃えた状態でより安定に保持することができ、輸液の排出速度をさらに安定化することができる。
【0021】
容器本体10は、可撓性フィルムにより形成することができる。
可撓性フィルムは、医療用容器の分野で用いられる合成樹脂であって、透明な材質であることが好ましい。本発明における透明とは、「日本薬局方第15改正 7.02プラスチック製医薬品容器試験法のプラスチック製水性注射剤容器」に基づき、「4.透明性試験・第1法」で試験したとき、水中での波長450nmにおける光透過率が55%以上であることを意味する。
容器本体10の可撓性フィルムに用いられる合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエーテルサルホン、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。なかでも、透明性、軽量性、柔軟性及び衛生性に優れ、低コストである点から、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0022】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体等のオレフィン系エラストマー、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、環状ポリオレフィン樹脂等や、これらの混合物が挙げられる。こうした樹脂は、耐熱性向上等を目的として一部架橋されていてもよい。
可撓性フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
【0023】
また、可撓性フィルムは、Tダイ成形により製造されたフラットフィルム、インフレーション成形により製造された筒状フィルム等が用いられる。これらのうち筒状フィルムを用いたものは、フィルム製造の際に、無菌エアーを吹き込んで製造することにより内面が無菌の筒状フィルムとなること、及び医療用容器内面が外気に触れる可能性が殆どないことから、医療用容器内面の衛生性を優れたものとすることができる点で好ましい。
【0024】
可撓性フィルムの厚みは、50〜1000μmであることが好ましく、100〜500μmであることがより好ましい。
また、容器本体10の可撓性フィルムの中間層又は外側には、遮光、バリア目的でアルミニウム箔やアルミニウム箔ラミネート等の金属を有するフィルムや蒸着フィルムが設けられていてもよい。
【0025】
容器本体10には、可撓性フィルムで狭持され、該可撓性フィルムに溶着された口部材20が設けられている。口部材20と容器本体10における輸液収容部11内部とは連通しており、口部材20から輸液収容部11内の薬剤等の充填、流出が行なえる。
【0026】
口部材20は、合成樹脂製で中空形状の口部材であり、例えば、医療用バッグにおいて用いられる公知の口部材が挙げられる。医療用バッグに用いられる口部材は、例えば、輸送・保管時には、図示していないゴム栓等で閉栓されており、使用時に刺栓針が刺入できる構成となっている。また、その場合、口部材20には、刺栓針が刺入できる面を覆う図示していない保護フィルムが剥離可能に設けられている。
【0027】
以上説明した医療用容器1は、輸液収容部11が、輸液収容部11の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように内側に折り込まれ、その折り込まれた状態がヒートシールされることにより固定されている。これにより、医療用容器1には底面14が形成されているため、底面14によって自重を支えることができ、自立性を有している。
また、医療用容器1は、袋状に形成された輸液収容部11を内側に折り込んでヒートシールすることにより自立性を付与するものであり、ヒートシール部13が輸液収容部11の形成を兼ねていない。そのため、ヒートシール部13のヒートシールの程度は輸液収容部11からの液漏れには影響しない。すなわち、たとえヒートシール部13のヒートシールが完全ではなくても、輸液収容部11内の輸液が接触部分11cの部分に侵入するだけであり、輸液収容部11から輸液が漏れることはない。
また、医療用容器1は、輸液収容部11を内側に折り込んだ状態で固定して底面14を形成していることで、輸液収容時の輸液収容部11における輸液を収容する部分の断面が略円形となるため、その断面積が容器前駆体1Aの輸液収容部11の断面積に比べて小さくなる。そのため、懸架して点滴する際、同量の輸液が輸液収容部11内に残っているときの該輸液の液面の高さが、容器前駆体1Aの場合に比べてより高くなる。このため、輸液が少なくなっても口部材20に向かって輸液による充分な圧力が加わるので、輸液の滴下速度が最後まで一定の速度で安定になる効果が得られるものと思われる。
【0028】
尚、本発明の医療用容器は、輸液収容部が、該輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込まれ、ヒートシールによりその折り込まれた状態で固定されているものであればよく、前述の医療用容器1には限定されない。
例えば、底部シール部12に設ける懸架孔は、図1に例示した2つの懸架孔には限定されず、図4(A)に示すように、1つの懸架孔15cだけであってもよい。この場合、バランス良く懸架することができる点から、底部シール部12の幅方向の中央に懸架孔15cを設けることが好ましい。
【0029】
また、懸架孔15cを中央に1つだけ設け、かつ底部シール部12を、ヒートシール部13の部分で輸液収容部11の外面と溶着する場合には、懸架孔15cの両側に切れ込み17、17を入れておくことが好ましい。切れ込み17、17を入れておくことにより、容器本体10を懸架するときに、図4(B)に示すように、底部シール部12の懸架孔15cの部分のみを捲り上げ、懸架孔15cにフックを引っ掛けることができるため、容易に懸架することができるようになる。
ただし、切れ込み17、17が深い場合には切れ込み部分が取り扱い時に輸液収容部11に達し、内容物の漏れを誘発するおそれもあるため、底部シール部12を輸液収容部外面と溶着することなく、1つの懸架孔を底部シール部12の中央に設けることも好ましい。この場合、容器が自立時は、底部シール部12と輸液収容部11の外面とが密着し、懸架時には底部シール部12と輸液収容部11の外面が離間する。
【0030】
また、ヒートシール部13の位置、形状は、容器前駆体から自立可能となるように、すなわち側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように折り込んだ状態を固定できる位置、形状であれば、特に限定されるものではない。例えば、医療用容器1では、接触部分11cに直線状のヒートシール部13が形成されているが、ヒートシール部13は波線状に形成されていてもよい。また、直線状でなくとも、一部のみを円、楕円等の形状でスポット状に部分的にシールしてもよい。
本発明の医療用容器は、図5に示すように、接触部分11cが全てヒートシールされたヒートシール部13Aが形成されている医療用容器2であってもよい。
【0031】
また、医療用容器1ではヒートシール部13は輸液収容部11の幅方向の両側の対向する二辺に設けられているが、図6に示すように、輸液収容部11の前面側と後面側の二辺にヒートシール部13B、13Bが設けられた医療用容器3であってもよい。医療用容器1では、ヒートシール部13、13が底縁11bと交差しているために、それらヒートシール部13、13と底縁11bとにより、平坦な底面14が形成されるが、医療用容器3では、ヒートシール部13B、13Bが底縁11bと平行して設けられているため、折り込まれた状態で固定されても底縁11bとヒートシール部13B、13Bとが同一平面には位置せず、折れ曲がった状態となる。そのため、輸液収容部11に輸液が充填される前には平坦な底面14は形成されていないが、医療用容器3は輸液収容部11に輸液を充填して立てて置いたとき、その自重によって底縁11bとヒートシール部13B、13Bとが同一平面に位置するようになり、医療用容器1の底面14と同等の底面ができ、該底面により自重を支えることができるため自立性を有する。
医療用容器3のように、輸液収容部11の前面側と後面側の二辺にヒートシール部13B、13Bを設ける場合、輸液収容部11を折り込んだ状態で固定できる範囲であれば、ヒートシール部13B、13Bは必ずしも接触部分11cに到達していなくてもよい。
【0032】
さらに、本発明の医療用容器は、図7に示すように、輸液収容部11の幅方向の両側の対向する二辺及び前面側と後面側の二辺の四辺全てがヒートシールされたヒートシール部13Cが設けられた医療用容器4であってもよい。四辺全てをヒートシールした医療用容器4では、二辺をヒートシールした医療用容器1、医療用容器3よりも安定した自立性を付与できる。
【0033】
[医療用容器の製造方法]
本発明の医療用容器の製造方法は、前述の医療用容器の製造方法である。以下、本発明の医療用容器の製造方法の実施形態の一例として、前記医療用容器1の製造方法について説明する。
本実施形態の医療用容器1の製造方法は、以下の工程を有する。
枠体挿入工程:輸液収容部11を有する容器本体10と、口部材20とを有する容器前駆体1Aの輸液収容部11を、輸液収容部11の両側の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように折り込んだときの該輸液収容部11の断面形状と同様の断面形状を有する枠体40の内部に挿入する工程。
気体送入工程:容器本体10の輸液収容部11に気体を送入する工程。
シール工程:前記枠体挿入工程及び気体送入工程の後、枠体40により輸液収容部11の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように輸液収容部11を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定する工程。
【0034】
容器前駆体1Aは、従来公知の医療用容器の製造方法により製造することができる。例えば、2枚の可撓性フィルムを重ね合わせてその周縁部をヒートシールして袋状にし、上部に口部材20をヒートシールにより溶着固定する方法や、インフレーション法を用いて成形した可撓性の筒状フィルムの2つの開口端の一方の開口端に口部材20をヒートシールにより溶着固定する方法等が挙げられる。
底部シール部12は、容器本体10の底部をヒートシールすることにより形成することができる。また、懸架孔15a、15bも通常底部シール部の中央に懸架孔を1つ形成するのと同様の公知の方法により形成することができる。
また、口部材20のヒートシール及び底部シール部12のヒートシールはいずれを先に行ってもよい。
【0035】
本発明の医療用容器の製造方法では、容器前駆体1Aとして、自立性を有さない従来の可撓性フィルムを用いた医療用容器を用いることもできる。従来の医療用容器には一般に、容器本体10を懸架するための懸架孔を形成するために底部シール部12が設けられており、この部分と輸液収容部11の内面とをヒートシール部13で溶着することにより、医療用容器1に安定した自立性を付与することができる。
【0036】
枠体挿入工程では、図8(A)に示すように、輸液収容部11の両側の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように折り込んだときの該輸液収容部11の断面形状、すなわち形成する底面14の形状と同様の断面形状を有する枠体40の内部に、容器前駆体1Aの輸液収容部11を挿入する。
枠体40は、図8(B)に示すように、6枚の板片からなり、容器前駆体1Aの幅よりも幅の大きな扁平な形態から、形成する底面14の形状と同様の断面形状を有する形態に変形できる枠体であって分割位置41で分割可能である。分割しうる枠体40を用いることにより、枠体40の内部に容器前駆体1Aの輸液収容部11を挿入することが容易になる。すなわち、医療用容器1の底面14の幅方向の長さは容器本体10の幅よりも短いため、底面14の形状と同様の断面形状を有する変形しない枠体を用いると、該枠体に輸液収容部11を挿入するには容器本体10を丸める等して変形させる必要がある。これに対して、図8(B)に示すように、分割位置41が結合した状態であっても、枠体40は医療用容器1の容器本体10の幅に合わせた扁平な形態で容器本体10の挿入を行った後に、枠体40を変形して底面14と同様の断面形状を有する形態にすることができる。
【0037】
気体送入工程では、容器本体10の輸液収容部11に気体を送入する。これにより、輸液収容部11が膨らんだ状態となることで、シール工程において輸液収容部11を内側に折り込むことが可能となる。
送入する気体は、特に限定されず、例えば、滅菌された空気や二酸化炭素、窒素等が挙げられる。送入する気体としてはコストや環境安全性、菌の繁殖抑制の観点から滅菌された空気や二酸化炭素であることが好ましい。
【0038】
シール工程では、枠体40により、輸液収容部11の側縁11aの内面と、底縁11bの内面とが接触するように折り込んで接触部分11cを形成し、その状態で接触部分11cの基端をヒートシールすることによりヒートシール部13を形成する。これにより、輸液収容部11が内側に折り込んまれた状態で固定され、底面14が形成される。
具体的には、輸液収容部11の枠体40内部にある部分は、枠体40により幅が狭い形状、すなわち形成する底面14の形状になっているため、そのまま枠体40を輸液収容部11の底縁11bの部分まで押し下げいくことにより、図9に示すように、輸液収容部11が、側縁11aと底縁11bとが接触するように内側に折り込まれた状態となり接触部分11cが形成される。次いで、形成した接触部分11cの基端をヒートシールしてヒートシール部13を形成することにより底面14が形成され、図1に示す医療用容器1が得られる。
【0039】
以上説明した製造方法により、医療用容器1を簡便に製造することができる。
本発明の医療用容器の製造方法では、枠体挿入工程と気体送入工程の順序は限定されず、枠体挿入工程の後に気体送入工程を行ってもよく、気体送入工程の後に枠体挿入工程を行ってもよく、枠体挿入工程と気体送入工程を同時に行ってもよい。ただし、医療用容器1の製造がより簡便な点から、枠体挿入工程の後に気体送入工程を行うことが好ましい。
【0040】
尚、本発明の医療用容器の製造方法は前述の方法に限定されない。例えば、前述の枠体を用いて輸液収容部を賦形する代わりに、輸液収容部の形状に合わせた型を用意し、輸液収容部外面を吸引固定により型に密着させて賦形した後、ヒートシール部を形成してもよい。また、この吸引固定は、真空吸着パッドにより輸液収容部外面を固定して行なってもよい。
また、医療用容器2〜4についても、ヒートシールする部分に合わせて枠体40の断面形状や型の形状を調節することで、医療用容器1と同様に簡便に製造できる。
【0041】
[輸液入り医療用容器の製造方法]
本発明の輸液入り医療用容器は、前述した本発明の医療用容器の輸液収容部に輸液を収容した容器の製造方法である。以下、本発明の輸液入り医療用容器の製造方法の実施形態の一例として、前記医療用容器1に輸液を収容したものの製造方法について説明する。
本実施形態の輸液入り医療用容器の製造方法は、以下の工程を有する。
輸液充填工程:輸液収容部11を有する容器本体10と、口部材20とを有する容器前駆体1Aの輸液収容部11を、輸液を充填して膨らませる工程。
シール工程:輸液収容部11の両方の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように輸液収容部11を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定する工程。
封止工程:口部材20に封をする工程。
【0042】
容器前駆体1Aの製造方法については前述の通りである。
輸液充填工程では、口部材20から容器前駆体1Aの輸液収容部11に輸液を充填し、輸液収容部11を膨らませる。
輸液の充填量は、前駆体溶液1Aの輸液収容部11の全容積、すなわち輸液収容部11に収容できる輸液の最大量に対して、70〜90容量%であることが好ましい。輸液の充填量が70容量%以上であれば、充分な輸液量が確保されやすい。また、輸液の充填量が90容量%以下であれば、輸液収容部11に一定量の空気が確保され、輸液の滴下速度が安定になりやすい。
【0043】
シール工程では、輸液収容部11の両方の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように輸液収容部11を折り込み、その状態で接触部分11cの基端をヒートシールすることによりヒートシール部13を形成する。これにより、輸液収容部11が内側に折り込まれた状態で固定され、底面14が形成される。
輸液収容部11を折り込む方法は、前述の医療用容器1の製造方法と同様に、枠体40を用いる方法であってもよく、型、真空吸着パッド等による吸引固定を用いる方法であってもよい。
【0044】
封止工程では、口部材20の封をし、口部材20から輸液が漏れないようにする。
具体的には、使用時に刺栓針が刺入できる構成を有するゴム栓等の栓で口部材20を閉栓し、前記栓の刺栓針を刺入できる面を覆う保護フィルムを剥離可能に設ける。
【0045】
本発明の輸液入り医療用容器の製造方法では、輸液充填工程の後にシール工程を行なう方法には限定されない。例えば、輸液収容部11を折り込むのに枠体40を用いる場合、枠体40に容器前駆体1Aの輸液収容部11を挿入した後に輸液を充填し、その後に枠体40を押し下げて輸液収容部11を折り込んでヒートシールする方法であってもよく、容器前駆体1Aの輸液収容部11に輸液を充填した後に枠体40の内部に挿入し、その後に枠体40を押し下げて輸液収容部11を折り込んでヒートシールする方法であってもよく、枠体40に容器前駆体1Aの輸液収容部11を挿入し、枠体40を押し下げて輸液収容部11を折り込んだ後に、輸液を充填してヒートシールする方法であってもよい。同様に、型、真空吸着パッド等による吸引固定を用いる場合、容器前駆体1Aの輸液収容部11を吸引固定した後に輸液を充填してヒートシールする方法であってもよく、容器前駆体1Aの輸液収容部11に輸液を充填した後に吸引固定してヒートシールする方法であってもよい。
【0046】
また、封止工程についても、輸液充填工程の後であればシール工程の前であってもよい。例えば、輸液充填工程にて容器前駆体1Aの輸液収容部11に輸液を充填し、次いで封止工程にて口部材20の封をした後に、シール工程にて輸液収容部11を折り込んでヒートシールする方法であってもよい。
また、医療用容器2〜4に輸液が収容された輸液入り医療用容器についても、医療用容器1に輸液が収容された輸液入り医療用容器と同様の方法で製造できる。
以上説明した製造方法によれば、輸液を充填することと、医療用容器に自立性を付与することを同時に行うことができる。
また、ヒートシール方法については、常に通電され加熱されたシールバーを用いるヒートシール、必要時にのみ通電し加熱するインパルス式のヒートシール、さらにはベルトシーラーを用い常時加熱又は必要時にのみ加熱するヒートシール方法を用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
インフレーション成形により製造された折り径120mm、厚み250μmのポリエチレン製筒状フィルムを用いて、一方の開口端に底部シール部12、他方の開口端に口部材20をそれぞれ具備した、図10に示すような容器前駆体5Aを製造した。容器前駆体5Aの輸液収容部11の大きさは、筒状フィルムの両端のヒートシール部を含めて、横d1を120mm、縦d2を260mmとし、底部シール部12の幅d3を25mmとし、1つの懸架孔15cを底部シール部12の中央部に設けた。次いで、枠体を用いて、図8及び図9に示す方法により、図11に示すように、ヒートシール部13の長さd4が70mmとなる医療用容器5を作成した。尚、医療用容器5の底部シール部12と輸液収容部11の外面とは溶着されていない。
次いで、500mLの生理食塩水を充填し、輸液収容部11の生理食塩水以外の部分の空気量が150mLとなるように調整し、ゴム栓体で口部材20を封止した。空気量を一定の体積とするのは、滴下速度は容器や容器内の内容物以外の部分の影響を受けることが経験的に知られているためである。輸液収容部11の高さd5はおよそ190mmであった。
生理食塩水が充填された医療用容器5を104℃、40分間高圧蒸気滅菌した。医療用容器5をその懸架孔15cで点滴スタンドに懸け、ゴム栓に点滴用チューブが接続された針を挿入し、クランプにより点滴速度が毎分100滴となるように調整して生理食塩水がなくなるまで滴下させ、毎分の液滴数を測定して点滴速度の変化を測定した。尚、1分間に100滴は、およそ7.3mLに相当する滴下速度である。
【0048】
[比較例1]
実施例1で用いた本発明の医療用容器5に代えて、実施例で用いた容器前駆体5Aを用いた以外は、実施例1と同様にして点滴速度の変化を測定した。
【0049】
[比較例2]
ブロー容器に充填された市販の500mL輸液に通気針を刺したものを用いた以外は、実施例1と同様にして点滴速度の変化を測定した。
実施例及び比較例の点滴速度の測定結果を図13に示す。
【0050】
ブロー容器を用いた比較例2の場合の点滴速度は20分経過後から低下した。袋状容器である容器前駆体を用いた比較例1の場合の点滴速度は、比較例2に比べて改善され35分まで点滴速度が一定であるが、その後低下した。
これに対し、本発明の医療用容器を用いた場合の点滴速度は、内容物が殆どなくなる70分まで一定であり、点滴速度がほとんど変化することなく安定して点滴することができる。このように最後まで一定の点滴速度を保つことができるようになると、点滴速度を調整するための看護師の監視負担を軽減でき、患者にも安心感を与えるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0051】
1〜5 医療用容器 10 容器本体 11 輸液収容部 11a 側縁 11b 底縁 11c 接触部分 12 底部シール部 13、13A〜13C ヒートシール部 14 底面 15a、15b、15c 懸架孔 20 口部材 1A、5A 前駆体容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用容器、医療用容器の製造方法、及び輸液入り医療用容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液の点滴には、ガラス瓶、合成樹脂をブロー成形して得られるブロー容器、可撓性フィルムを用いた医療用容器が用いられている。ガラス瓶及びブロー容器は、自立性を有するものの可撓性に乏しく、一定の点滴速度を確保するには容器内に空気を導入するための通気針を必要とするため、輸液の汚染のおそれがある。これに対して、可撓性フィルムを用いた医療用容器は、通気針が不要で一定の点滴速度を確保することが可能である。可撓性フィルムを用いた医療用容器は、輸液を収容する可撓性フィルムからなる容器本体と、該容器本体から輸液を取り出す口部材と、該容器本体を懸架する懸架孔とを有する医療用容器であり、広く用いられている。しかし、該医療用容器は自立性を有していなかった。そのため、使用前の準備においては該医療用容器を倒した状態で机上等に置いていたことから、場所を広く取るうえ机上等が雑然として作業の混乱を招く要因となることがあった。また、該医療用容器の保管にも場所を取っていた。
【0003】
そこで、自立性を付与した可撓性フィルムを用いた医療用容器として、特許文献1には、図12(A)に示すように、輸液収容部110と、輸液収容部110の上端に備えられた輸液口120と、輸液収容部110の底部111に備えられたスカート部130とを有する医療用容器101が示されている。
医療用容器101では、輸液収容部110の底部111から筒状のスカート部130が形成されていることにより、自立性が付与されている。また、スカート部130には懸架孔131が設けられており、点滴の際には該懸架孔131をフックに引っ掛けて使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−7641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の医療用容器101では、スカート部130のヒートシールが不充分となり、液漏れが生じるおそれがあった。すなわち、医療用容器101では、図12(B)に示すように、スカート部130を形成する際、輸液収容部110を形成する外側の可撓性フィルム102と、輸液収容部110の底部111を形成する内側の可撓性フィルム103とが、シール部130a及び130bでヒートシールされる。このヒートシールでは、可撓性フィルム103を折り込んだ部分に平板状の治具140を挿入してヒートシールするが、フィルムが4枚重なった状態であるために、シール部130aのヒートシールが不充分になって、輸液収容部110の輸液が液漏れするおそれがあった。
そのため、自立性を有し、かつ液漏れのおそれの少ない医療用容器が必要である。
【0006】
そこで本発明では、自立性を有し、液漏れのおそれが少なく、点滴速度が安定した医療用容器、該医療用容器の製造方法及び輸液入り医療用容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の医療用容器は、輸液を収容する袋状の輸液収容部、及び該輸液収容部の底部を密封する底部シール部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを備えた医療用容器であって、前記輸液収容部が、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込まれ、ヒートシールによりその折り込まれた状態で固定されていることを特徴とする容器である。
また、本発明の医療用容器は、前記底部シール部が前記輸液収容部の外面に溶着されていることが好ましい。
また、前記底部シール部の幅方向における中央部に対して対称な位置に、前記容器本体を懸架する2つの懸架孔が設けられていることが好ましい。
また、前記底部シール部に、前記底部シール部の2つの前記懸架孔を揃えて固定する固定部が設けられていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の医療用容器の製造方法は、前記医療用容器の製造方法であって、輸液を収容する袋状の輸液収容部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを有する容器の前記輸液収容部を、前記輸液収容部の両側の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込んだときの前記輸液収容部の断面形状と同様の断面形状を有する枠体の内部に挿入する枠体挿入工程と、前記容器本体の前記輸液収容部に気体を送入する気体送入工程と、前記枠体挿入工程及び気体送入工程の後、前記枠体により、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように前記輸液収容部を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定するシール工程と、を有する方法である。
【0009】
また、本発明の輸液入り医療用容器の製造方法は、前記医療用容器に輸液が収容された輸液入り医療用容器の製造方法であって、輸液を収容する袋状の輸液収容部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを有する容器の前記輸液収容部を、輸液を充填して膨らませる輸液充填工程と、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように前記輸液収容部を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定するシール工程と、口部材に封をする封止工程と、を有する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療用容器は、自立性を有しており、かつ液漏れのおそれが少なく、点滴速度が安定している。
また、本発明の医療用容器の製造方法によれば、自立性を有し、かつ液漏れのおそれが少なく、点滴速度が安定した医療用容器が得られる。
また、本発明の輸液入り医療用容器の製造方法によれば、自立性を有し、かつ液漏れのおそれが少なく、点滴速度が安定した輸液入り医療用容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の医療用容器の実施形態の一例を示した斜視図である。
【図2】図1の医療用容器の前駆体である容器前駆体を示した斜視図である。
【図3】図1の医療用容器を懸架した様子を示した斜視図である。
【図4】本発明の医療用容器の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図5】本発明の医療用容器の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図6】本発明の医療用容器の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図7】本発明の医療用容器の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図8】本発明の医療用容器を製造する工程を示した図である。
【図9】本発明の医療用容器を製造する工程を示した図である。
【図10】従来の医療用容器の一例を示した斜視図である。
【図11】実施例1で用いた容器前駆体を示した斜視図である。
【図12】従来の医療用容器の一例を示した斜視図(A)及びその断面図(B)である。
【図13】本実施例における点滴速度の測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[医療用容器]
本発明の医療用容器は、輸液を収容する袋状の輸液収容部、及び該輸液収容部の底部を密封する底部シール部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを備えた医療用容器である。また、本発明の医療用容器は、前記輸液収容部が、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と、該輸液収容部の底縁の内面とが接触するように折り込まれ、ヒートシールによりその折り込まれた状態で固定されていることを特徴とする。
以下、本発明の医療用容器の実施形態の一例を示して詳細に説明する。図1は、本発明の医療用容器の一実施形態例を示した斜視図である。図2は、図1の医療用容器における、輸液収容部を折り込んだ状態でヒートシールする前の状態である容器前駆体を示した斜視図である。
【0013】
本実施形態の医療用容器1は、図1に示すように、容器本体10と、輸液を排出する口部材20とを有している。容器本体10は、輸液を収容する袋状の輸液収容部11と、輸液収容部11の底部を密封している底部シール部12とから構成されている。
【0014】
医療用容器1では、輸液収容部11の両方の側縁11aの内面が、輸液収容部11の底縁11bと接触するように折り込まれ、その重ね合わされた接触部分11cの基端をヒートシールしてヒートシール部13が形成されることで、折り込まれた状態で固定されている。また、これにより底面14が形成されている。
すなわち、図2に示す容器前駆体1Aにおいて、輸液収容部11が、輸液収容部11の両方の側縁11a上の点αの内面が底縁11bの内面と接触するように内側に折り込まれる。これにより、図1に示すように、輸液収容部11の内面同士が接触し、張り出した三角形の接触部分11cが形成され、該接触部分11cの一部がヒートシールされてヒートシール部13が形成され、輸液収容部11の底に底面14が形成される。
医療用容器1は、自重を底面14で支えることができるようになるため、特別な器具を用いることなく立てた状態で置くことができる。さらに、内容物充填後は内容物の自重により医療用容器1の底部が膨らむため、より安定した自立性が得られる。
【0015】
輸液収容部11の底面14は、輸液収容部11の幅方向の両側に形成されたヒートシール部13、13によって対向する二辺が形成されてなる面であり、その形状は医療用容器1が充分な自立性を有する形状であればよい。この例では、ヒートシール部13が平行に形成され、矩形状の底面14が形成されている。底面14の形状は、接触部分11cにおけるヒートシール部13を形成する方向により適宜調整することができる。なお、ヒートシール部13、13を平行とせず底面14を台形等としてもよい。
【0016】
また、底面14の面積は、医療用容器1が充分な自立性を有する面積であればよい。
底面14の面積は、底縁11bの両端11dからヒートシール部13までの距離b1、b2を調整することにより調整することができる。
距離b1と、底縁11bの長さcとの比b1/cは、0.20〜0.40であることが好ましく、0.26〜0.34であることが好ましい。比b1/cが前記範囲内であれば、底面14の面積が充分に大きくなって医療用容器1がより安定に自立できる。
距離b2と、底縁11bの長さcとの比b2/cは、0.20〜0.40であることが好ましく、0.26〜0.34であることが好ましい。比b2/cが前記範囲内であれば、底面14の面積が充分に大きくなって医療用容器1がより安定に自立できる。
また、距離b1とb2は、医療用容器1の自立の安定性の点から、同じであることが好ましい。
【0017】
また、医療用容器1では、図1に示すように、接触部分11cの内側の部分に輸液収容部11内の輸液が侵入しないようにヒートシール部13を端から端まで形成し、接触部分11cが輸液収容部11から隔離されるようになっている。このように接触部分11cが輸液収容部11から隔離されるようにヒートシールすれば、接触部分11cに輸液が残って最後まで点滴が行えなくなることを防止しやすくなる点で好ましい。
【0018】
また、医療用容器1は、ヒートシール部13をヒートシールする際、底部シール部12を同時にヒートシールして、底部シール部12の表面と輸液収容部11の外面との接触部分が溶着されていることが好ましい。これにより、底部シール部12によって医療用容器1を支える部分がより大きくなるため、医療用容器1の自立安定性が向上する。
【0019】
医療用容器1は、底部シール部12の幅方向における中央部に対して対称な位置に、容器本体10を懸架する2つの懸架孔を有していることが好ましく、本実施形態のように底部シール12の両端に2つの懸架孔15a、15bが設けられていることがより好ましい。このような2つの懸架孔15a、15bが設けられていれば、図3に示すように、それら懸架孔15a、15bが揃うように容器本体10の底部側を折り畳み、懸架孔15a、15bにフック30を引っ掛けて使用することができる。このようにして医療用容器1を懸架すると、容器本体10の輸液収容部11における底部シール部12側が窄まった状態となる。そのため、輸液収容部11の容積が小さくなって内圧が充分に高められ、口部材20からの輸液の排出速度がより安定になる。
【0020】
また、底部シール部12には、図3に示すように、懸架孔15a、15bを揃えた状態で底部シール部12を固定する固定部16が設けられていることが好ましい。固定部16により、懸架孔15a、15bを揃えた状態でより安定に保持することができ、輸液の排出速度をさらに安定化することができる。
【0021】
容器本体10は、可撓性フィルムにより形成することができる。
可撓性フィルムは、医療用容器の分野で用いられる合成樹脂であって、透明な材質であることが好ましい。本発明における透明とは、「日本薬局方第15改正 7.02プラスチック製医薬品容器試験法のプラスチック製水性注射剤容器」に基づき、「4.透明性試験・第1法」で試験したとき、水中での波長450nmにおける光透過率が55%以上であることを意味する。
容器本体10の可撓性フィルムに用いられる合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエーテルサルホン、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。なかでも、透明性、軽量性、柔軟性及び衛生性に優れ、低コストである点から、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0022】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体等のオレフィン系エラストマー、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、環状ポリオレフィン樹脂等や、これらの混合物が挙げられる。こうした樹脂は、耐熱性向上等を目的として一部架橋されていてもよい。
可撓性フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
【0023】
また、可撓性フィルムは、Tダイ成形により製造されたフラットフィルム、インフレーション成形により製造された筒状フィルム等が用いられる。これらのうち筒状フィルムを用いたものは、フィルム製造の際に、無菌エアーを吹き込んで製造することにより内面が無菌の筒状フィルムとなること、及び医療用容器内面が外気に触れる可能性が殆どないことから、医療用容器内面の衛生性を優れたものとすることができる点で好ましい。
【0024】
可撓性フィルムの厚みは、50〜1000μmであることが好ましく、100〜500μmであることがより好ましい。
また、容器本体10の可撓性フィルムの中間層又は外側には、遮光、バリア目的でアルミニウム箔やアルミニウム箔ラミネート等の金属を有するフィルムや蒸着フィルムが設けられていてもよい。
【0025】
容器本体10には、可撓性フィルムで狭持され、該可撓性フィルムに溶着された口部材20が設けられている。口部材20と容器本体10における輸液収容部11内部とは連通しており、口部材20から輸液収容部11内の薬剤等の充填、流出が行なえる。
【0026】
口部材20は、合成樹脂製で中空形状の口部材であり、例えば、医療用バッグにおいて用いられる公知の口部材が挙げられる。医療用バッグに用いられる口部材は、例えば、輸送・保管時には、図示していないゴム栓等で閉栓されており、使用時に刺栓針が刺入できる構成となっている。また、その場合、口部材20には、刺栓針が刺入できる面を覆う図示していない保護フィルムが剥離可能に設けられている。
【0027】
以上説明した医療用容器1は、輸液収容部11が、輸液収容部11の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように内側に折り込まれ、その折り込まれた状態がヒートシールされることにより固定されている。これにより、医療用容器1には底面14が形成されているため、底面14によって自重を支えることができ、自立性を有している。
また、医療用容器1は、袋状に形成された輸液収容部11を内側に折り込んでヒートシールすることにより自立性を付与するものであり、ヒートシール部13が輸液収容部11の形成を兼ねていない。そのため、ヒートシール部13のヒートシールの程度は輸液収容部11からの液漏れには影響しない。すなわち、たとえヒートシール部13のヒートシールが完全ではなくても、輸液収容部11内の輸液が接触部分11cの部分に侵入するだけであり、輸液収容部11から輸液が漏れることはない。
また、医療用容器1は、輸液収容部11を内側に折り込んだ状態で固定して底面14を形成していることで、輸液収容時の輸液収容部11における輸液を収容する部分の断面が略円形となるため、その断面積が容器前駆体1Aの輸液収容部11の断面積に比べて小さくなる。そのため、懸架して点滴する際、同量の輸液が輸液収容部11内に残っているときの該輸液の液面の高さが、容器前駆体1Aの場合に比べてより高くなる。このため、輸液が少なくなっても口部材20に向かって輸液による充分な圧力が加わるので、輸液の滴下速度が最後まで一定の速度で安定になる効果が得られるものと思われる。
【0028】
尚、本発明の医療用容器は、輸液収容部が、該輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込まれ、ヒートシールによりその折り込まれた状態で固定されているものであればよく、前述の医療用容器1には限定されない。
例えば、底部シール部12に設ける懸架孔は、図1に例示した2つの懸架孔には限定されず、図4(A)に示すように、1つの懸架孔15cだけであってもよい。この場合、バランス良く懸架することができる点から、底部シール部12の幅方向の中央に懸架孔15cを設けることが好ましい。
【0029】
また、懸架孔15cを中央に1つだけ設け、かつ底部シール部12を、ヒートシール部13の部分で輸液収容部11の外面と溶着する場合には、懸架孔15cの両側に切れ込み17、17を入れておくことが好ましい。切れ込み17、17を入れておくことにより、容器本体10を懸架するときに、図4(B)に示すように、底部シール部12の懸架孔15cの部分のみを捲り上げ、懸架孔15cにフックを引っ掛けることができるため、容易に懸架することができるようになる。
ただし、切れ込み17、17が深い場合には切れ込み部分が取り扱い時に輸液収容部11に達し、内容物の漏れを誘発するおそれもあるため、底部シール部12を輸液収容部外面と溶着することなく、1つの懸架孔を底部シール部12の中央に設けることも好ましい。この場合、容器が自立時は、底部シール部12と輸液収容部11の外面とが密着し、懸架時には底部シール部12と輸液収容部11の外面が離間する。
【0030】
また、ヒートシール部13の位置、形状は、容器前駆体から自立可能となるように、すなわち側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように折り込んだ状態を固定できる位置、形状であれば、特に限定されるものではない。例えば、医療用容器1では、接触部分11cに直線状のヒートシール部13が形成されているが、ヒートシール部13は波線状に形成されていてもよい。また、直線状でなくとも、一部のみを円、楕円等の形状でスポット状に部分的にシールしてもよい。
本発明の医療用容器は、図5に示すように、接触部分11cが全てヒートシールされたヒートシール部13Aが形成されている医療用容器2であってもよい。
【0031】
また、医療用容器1ではヒートシール部13は輸液収容部11の幅方向の両側の対向する二辺に設けられているが、図6に示すように、輸液収容部11の前面側と後面側の二辺にヒートシール部13B、13Bが設けられた医療用容器3であってもよい。医療用容器1では、ヒートシール部13、13が底縁11bと交差しているために、それらヒートシール部13、13と底縁11bとにより、平坦な底面14が形成されるが、医療用容器3では、ヒートシール部13B、13Bが底縁11bと平行して設けられているため、折り込まれた状態で固定されても底縁11bとヒートシール部13B、13Bとが同一平面には位置せず、折れ曲がった状態となる。そのため、輸液収容部11に輸液が充填される前には平坦な底面14は形成されていないが、医療用容器3は輸液収容部11に輸液を充填して立てて置いたとき、その自重によって底縁11bとヒートシール部13B、13Bとが同一平面に位置するようになり、医療用容器1の底面14と同等の底面ができ、該底面により自重を支えることができるため自立性を有する。
医療用容器3のように、輸液収容部11の前面側と後面側の二辺にヒートシール部13B、13Bを設ける場合、輸液収容部11を折り込んだ状態で固定できる範囲であれば、ヒートシール部13B、13Bは必ずしも接触部分11cに到達していなくてもよい。
【0032】
さらに、本発明の医療用容器は、図7に示すように、輸液収容部11の幅方向の両側の対向する二辺及び前面側と後面側の二辺の四辺全てがヒートシールされたヒートシール部13Cが設けられた医療用容器4であってもよい。四辺全てをヒートシールした医療用容器4では、二辺をヒートシールした医療用容器1、医療用容器3よりも安定した自立性を付与できる。
【0033】
[医療用容器の製造方法]
本発明の医療用容器の製造方法は、前述の医療用容器の製造方法である。以下、本発明の医療用容器の製造方法の実施形態の一例として、前記医療用容器1の製造方法について説明する。
本実施形態の医療用容器1の製造方法は、以下の工程を有する。
枠体挿入工程:輸液収容部11を有する容器本体10と、口部材20とを有する容器前駆体1Aの輸液収容部11を、輸液収容部11の両側の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように折り込んだときの該輸液収容部11の断面形状と同様の断面形状を有する枠体40の内部に挿入する工程。
気体送入工程:容器本体10の輸液収容部11に気体を送入する工程。
シール工程:前記枠体挿入工程及び気体送入工程の後、枠体40により輸液収容部11の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように輸液収容部11を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定する工程。
【0034】
容器前駆体1Aは、従来公知の医療用容器の製造方法により製造することができる。例えば、2枚の可撓性フィルムを重ね合わせてその周縁部をヒートシールして袋状にし、上部に口部材20をヒートシールにより溶着固定する方法や、インフレーション法を用いて成形した可撓性の筒状フィルムの2つの開口端の一方の開口端に口部材20をヒートシールにより溶着固定する方法等が挙げられる。
底部シール部12は、容器本体10の底部をヒートシールすることにより形成することができる。また、懸架孔15a、15bも通常底部シール部の中央に懸架孔を1つ形成するのと同様の公知の方法により形成することができる。
また、口部材20のヒートシール及び底部シール部12のヒートシールはいずれを先に行ってもよい。
【0035】
本発明の医療用容器の製造方法では、容器前駆体1Aとして、自立性を有さない従来の可撓性フィルムを用いた医療用容器を用いることもできる。従来の医療用容器には一般に、容器本体10を懸架するための懸架孔を形成するために底部シール部12が設けられており、この部分と輸液収容部11の内面とをヒートシール部13で溶着することにより、医療用容器1に安定した自立性を付与することができる。
【0036】
枠体挿入工程では、図8(A)に示すように、輸液収容部11の両側の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように折り込んだときの該輸液収容部11の断面形状、すなわち形成する底面14の形状と同様の断面形状を有する枠体40の内部に、容器前駆体1Aの輸液収容部11を挿入する。
枠体40は、図8(B)に示すように、6枚の板片からなり、容器前駆体1Aの幅よりも幅の大きな扁平な形態から、形成する底面14の形状と同様の断面形状を有する形態に変形できる枠体であって分割位置41で分割可能である。分割しうる枠体40を用いることにより、枠体40の内部に容器前駆体1Aの輸液収容部11を挿入することが容易になる。すなわち、医療用容器1の底面14の幅方向の長さは容器本体10の幅よりも短いため、底面14の形状と同様の断面形状を有する変形しない枠体を用いると、該枠体に輸液収容部11を挿入するには容器本体10を丸める等して変形させる必要がある。これに対して、図8(B)に示すように、分割位置41が結合した状態であっても、枠体40は医療用容器1の容器本体10の幅に合わせた扁平な形態で容器本体10の挿入を行った後に、枠体40を変形して底面14と同様の断面形状を有する形態にすることができる。
【0037】
気体送入工程では、容器本体10の輸液収容部11に気体を送入する。これにより、輸液収容部11が膨らんだ状態となることで、シール工程において輸液収容部11を内側に折り込むことが可能となる。
送入する気体は、特に限定されず、例えば、滅菌された空気や二酸化炭素、窒素等が挙げられる。送入する気体としてはコストや環境安全性、菌の繁殖抑制の観点から滅菌された空気や二酸化炭素であることが好ましい。
【0038】
シール工程では、枠体40により、輸液収容部11の側縁11aの内面と、底縁11bの内面とが接触するように折り込んで接触部分11cを形成し、その状態で接触部分11cの基端をヒートシールすることによりヒートシール部13を形成する。これにより、輸液収容部11が内側に折り込んまれた状態で固定され、底面14が形成される。
具体的には、輸液収容部11の枠体40内部にある部分は、枠体40により幅が狭い形状、すなわち形成する底面14の形状になっているため、そのまま枠体40を輸液収容部11の底縁11bの部分まで押し下げいくことにより、図9に示すように、輸液収容部11が、側縁11aと底縁11bとが接触するように内側に折り込まれた状態となり接触部分11cが形成される。次いで、形成した接触部分11cの基端をヒートシールしてヒートシール部13を形成することにより底面14が形成され、図1に示す医療用容器1が得られる。
【0039】
以上説明した製造方法により、医療用容器1を簡便に製造することができる。
本発明の医療用容器の製造方法では、枠体挿入工程と気体送入工程の順序は限定されず、枠体挿入工程の後に気体送入工程を行ってもよく、気体送入工程の後に枠体挿入工程を行ってもよく、枠体挿入工程と気体送入工程を同時に行ってもよい。ただし、医療用容器1の製造がより簡便な点から、枠体挿入工程の後に気体送入工程を行うことが好ましい。
【0040】
尚、本発明の医療用容器の製造方法は前述の方法に限定されない。例えば、前述の枠体を用いて輸液収容部を賦形する代わりに、輸液収容部の形状に合わせた型を用意し、輸液収容部外面を吸引固定により型に密着させて賦形した後、ヒートシール部を形成してもよい。また、この吸引固定は、真空吸着パッドにより輸液収容部外面を固定して行なってもよい。
また、医療用容器2〜4についても、ヒートシールする部分に合わせて枠体40の断面形状や型の形状を調節することで、医療用容器1と同様に簡便に製造できる。
【0041】
[輸液入り医療用容器の製造方法]
本発明の輸液入り医療用容器は、前述した本発明の医療用容器の輸液収容部に輸液を収容した容器の製造方法である。以下、本発明の輸液入り医療用容器の製造方法の実施形態の一例として、前記医療用容器1に輸液を収容したものの製造方法について説明する。
本実施形態の輸液入り医療用容器の製造方法は、以下の工程を有する。
輸液充填工程:輸液収容部11を有する容器本体10と、口部材20とを有する容器前駆体1Aの輸液収容部11を、輸液を充填して膨らませる工程。
シール工程:輸液収容部11の両方の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように輸液収容部11を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定する工程。
封止工程:口部材20に封をする工程。
【0042】
容器前駆体1Aの製造方法については前述の通りである。
輸液充填工程では、口部材20から容器前駆体1Aの輸液収容部11に輸液を充填し、輸液収容部11を膨らませる。
輸液の充填量は、前駆体溶液1Aの輸液収容部11の全容積、すなわち輸液収容部11に収容できる輸液の最大量に対して、70〜90容量%であることが好ましい。輸液の充填量が70容量%以上であれば、充分な輸液量が確保されやすい。また、輸液の充填量が90容量%以下であれば、輸液収容部11に一定量の空気が確保され、輸液の滴下速度が安定になりやすい。
【0043】
シール工程では、輸液収容部11の両方の側縁11aの内面と底縁11bの内面とが接触するように輸液収容部11を折り込み、その状態で接触部分11cの基端をヒートシールすることによりヒートシール部13を形成する。これにより、輸液収容部11が内側に折り込まれた状態で固定され、底面14が形成される。
輸液収容部11を折り込む方法は、前述の医療用容器1の製造方法と同様に、枠体40を用いる方法であってもよく、型、真空吸着パッド等による吸引固定を用いる方法であってもよい。
【0044】
封止工程では、口部材20の封をし、口部材20から輸液が漏れないようにする。
具体的には、使用時に刺栓針が刺入できる構成を有するゴム栓等の栓で口部材20を閉栓し、前記栓の刺栓針を刺入できる面を覆う保護フィルムを剥離可能に設ける。
【0045】
本発明の輸液入り医療用容器の製造方法では、輸液充填工程の後にシール工程を行なう方法には限定されない。例えば、輸液収容部11を折り込むのに枠体40を用いる場合、枠体40に容器前駆体1Aの輸液収容部11を挿入した後に輸液を充填し、その後に枠体40を押し下げて輸液収容部11を折り込んでヒートシールする方法であってもよく、容器前駆体1Aの輸液収容部11に輸液を充填した後に枠体40の内部に挿入し、その後に枠体40を押し下げて輸液収容部11を折り込んでヒートシールする方法であってもよく、枠体40に容器前駆体1Aの輸液収容部11を挿入し、枠体40を押し下げて輸液収容部11を折り込んだ後に、輸液を充填してヒートシールする方法であってもよい。同様に、型、真空吸着パッド等による吸引固定を用いる場合、容器前駆体1Aの輸液収容部11を吸引固定した後に輸液を充填してヒートシールする方法であってもよく、容器前駆体1Aの輸液収容部11に輸液を充填した後に吸引固定してヒートシールする方法であってもよい。
【0046】
また、封止工程についても、輸液充填工程の後であればシール工程の前であってもよい。例えば、輸液充填工程にて容器前駆体1Aの輸液収容部11に輸液を充填し、次いで封止工程にて口部材20の封をした後に、シール工程にて輸液収容部11を折り込んでヒートシールする方法であってもよい。
また、医療用容器2〜4に輸液が収容された輸液入り医療用容器についても、医療用容器1に輸液が収容された輸液入り医療用容器と同様の方法で製造できる。
以上説明した製造方法によれば、輸液を充填することと、医療用容器に自立性を付与することを同時に行うことができる。
また、ヒートシール方法については、常に通電され加熱されたシールバーを用いるヒートシール、必要時にのみ通電し加熱するインパルス式のヒートシール、さらにはベルトシーラーを用い常時加熱又は必要時にのみ加熱するヒートシール方法を用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
インフレーション成形により製造された折り径120mm、厚み250μmのポリエチレン製筒状フィルムを用いて、一方の開口端に底部シール部12、他方の開口端に口部材20をそれぞれ具備した、図10に示すような容器前駆体5Aを製造した。容器前駆体5Aの輸液収容部11の大きさは、筒状フィルムの両端のヒートシール部を含めて、横d1を120mm、縦d2を260mmとし、底部シール部12の幅d3を25mmとし、1つの懸架孔15cを底部シール部12の中央部に設けた。次いで、枠体を用いて、図8及び図9に示す方法により、図11に示すように、ヒートシール部13の長さd4が70mmとなる医療用容器5を作成した。尚、医療用容器5の底部シール部12と輸液収容部11の外面とは溶着されていない。
次いで、500mLの生理食塩水を充填し、輸液収容部11の生理食塩水以外の部分の空気量が150mLとなるように調整し、ゴム栓体で口部材20を封止した。空気量を一定の体積とするのは、滴下速度は容器や容器内の内容物以外の部分の影響を受けることが経験的に知られているためである。輸液収容部11の高さd5はおよそ190mmであった。
生理食塩水が充填された医療用容器5を104℃、40分間高圧蒸気滅菌した。医療用容器5をその懸架孔15cで点滴スタンドに懸け、ゴム栓に点滴用チューブが接続された針を挿入し、クランプにより点滴速度が毎分100滴となるように調整して生理食塩水がなくなるまで滴下させ、毎分の液滴数を測定して点滴速度の変化を測定した。尚、1分間に100滴は、およそ7.3mLに相当する滴下速度である。
【0048】
[比較例1]
実施例1で用いた本発明の医療用容器5に代えて、実施例で用いた容器前駆体5Aを用いた以外は、実施例1と同様にして点滴速度の変化を測定した。
【0049】
[比較例2]
ブロー容器に充填された市販の500mL輸液に通気針を刺したものを用いた以外は、実施例1と同様にして点滴速度の変化を測定した。
実施例及び比較例の点滴速度の測定結果を図13に示す。
【0050】
ブロー容器を用いた比較例2の場合の点滴速度は20分経過後から低下した。袋状容器である容器前駆体を用いた比較例1の場合の点滴速度は、比較例2に比べて改善され35分まで点滴速度が一定であるが、その後低下した。
これに対し、本発明の医療用容器を用いた場合の点滴速度は、内容物が殆どなくなる70分まで一定であり、点滴速度がほとんど変化することなく安定して点滴することができる。このように最後まで一定の点滴速度を保つことができるようになると、点滴速度を調整するための看護師の監視負担を軽減でき、患者にも安心感を与えるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0051】
1〜5 医療用容器 10 容器本体 11 輸液収容部 11a 側縁 11b 底縁 11c 接触部分 12 底部シール部 13、13A〜13C ヒートシール部 14 底面 15a、15b、15c 懸架孔 20 口部材 1A、5A 前駆体容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液を収容する袋状の輸液収容部、及び該輸液収容部の底部を密封する底部シール部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを備えた医療用容器であって、
前記輸液収容部が、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込まれ、ヒートシールによりその折り込まれた状態で固定されていることを特徴とする医療用容器。
【請求項2】
前記底部シール部が前記輸液収容部の外面に溶着されている、請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記底部シール部の幅方向における中央部に対して対称な位置に、前記容器本体を懸架する2つの懸架孔が設けられている、請求項2に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記底部シール部に、前記底部シール部の2つの前記懸架孔を揃えて固定する固定部が設けられている、請求項3に記載の医療用容器。
【請求項5】
請求項1に記載の医療用容器の製造方法であって、
輸液を収容する袋状の輸液収容部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを有する容器の前記輸液収容部を、前記輸液収容部の両側の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込んだときの前記輸液収容部の断面形状と同様の断面形状を有する枠体の内部に挿入する枠体挿入工程と、
前記容器本体の前記輸液収容部に気体を送入する気体送入工程と、
前記枠体挿入工程及び気体送入工程の後、前記枠体により、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように前記輸液収容部を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定するシール工程と、を有する医療用容器の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の医療用容器に輸液が収容された輸液入り医療用容器の製造方法であって、
輸液を収容する袋状の輸液収容部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを有する容器の前記輸液収容部を、輸液を充填して膨らませる輸液充填工程と、
前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように前記輸液収容部を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定するシール工程と、
口部材に封をする封止工程と、を有する輸液入り医療用容器の製造方法。
【請求項1】
輸液を収容する袋状の輸液収容部、及び該輸液収容部の底部を密封する底部シール部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを備えた医療用容器であって、
前記輸液収容部が、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込まれ、ヒートシールによりその折り込まれた状態で固定されていることを特徴とする医療用容器。
【請求項2】
前記底部シール部が前記輸液収容部の外面に溶着されている、請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記底部シール部の幅方向における中央部に対して対称な位置に、前記容器本体を懸架する2つの懸架孔が設けられている、請求項2に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記底部シール部に、前記底部シール部の2つの前記懸架孔を揃えて固定する固定部が設けられている、請求項3に記載の医療用容器。
【請求項5】
請求項1に記載の医療用容器の製造方法であって、
輸液を収容する袋状の輸液収容部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを有する容器の前記輸液収容部を、前記輸液収容部の両側の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように折り込んだときの前記輸液収容部の断面形状と同様の断面形状を有する枠体の内部に挿入する枠体挿入工程と、
前記容器本体の前記輸液収容部に気体を送入する気体送入工程と、
前記枠体挿入工程及び気体送入工程の後、前記枠体により、前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように前記輸液収容部を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定するシール工程と、を有する医療用容器の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の医療用容器に輸液が収容された輸液入り医療用容器の製造方法であって、
輸液を収容する袋状の輸液収容部を有する容器本体と、該容器本体の上部に液密に取り付けられ、前記輸液収容部内の輸液を排出する口部材とを有する容器の前記輸液収容部を、輸液を充填して膨らませる輸液充填工程と、
前記輸液収容部の両方の側縁の内面と底縁の内面とが接触するように前記輸液収容部を折り込み、ヒートシールによりその折り込んだ状態で固定するシール工程と、
口部材に封をする封止工程と、を有する輸液入り医療用容器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−273934(P2010−273934A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130619(P2009−130619)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】
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