説明

医療用容器

【課題】区画部により区分された主薬剤室と副薬剤室を有する医療用容器において、区画部が未解除の状態での薬剤排出用針管の穿刺を確実に規制し、未混合状態での薬剤の投与を防止し、かつ、区画部の未剥離を薬剤排出用針管の接続時に作業者に教示することができる医療用容器を提供するものである。
【解決手段】医療用容器1は、区画部により区分された主薬剤室11と副薬剤室13それぞれの薬剤室に収納された薬剤と、副薬剤室と連通し、薬剤排出用針管の刺入が可能な排出口33とを備える。医療用容器1は、区画部の未解除時における排出口33への薬剤排出用針管の刺入を阻害する針管侵入阻害部4を備え、針管侵入阻害部4は、長さ調整機能と、筒状部31内に挿入後、封止部33の装着前に、筒状部の開口端側にて、長さ調整機能を操作し、針管侵入阻害部の全長を変更するための操作部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部において、輸液などの薬液に薬剤の調整や配合を行うことができる医療用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸液に際し、2種以上の液体(薬液)を混合して使用する場合がある。この場合、従来では、別途準備した2つの薬液を使用時に混合することにより準備していた。最近では、薬液の投与を速やかなものとすること、ならびに混合忘れなどを防止することより、1つの医療用容器の薬剤室を剥離可能な仕切部により2つの薬剤室に区分することにより複室としたもの、また、破断可能部にて破断することにより容器本体内と連通可能な薬剤容器を取り付けることにより複室としたものがある。そして、このような複室容器では、それぞれに、あらかじめ混合すると、経時的に変質、劣化する薬剤が分離して収納される。しかし、このような複室の医療用容器の場合、仕切部の開通もしくは破断可能部の破断を行うことなく、医療用容器に、輸液セットの薬剤排出用針管を穿刺すると薬剤が流出してしまう。
【0003】
特許文献1(特開2005−95604号公報)に示されるものを本件出願人は提案している。この輸液用容器では、薬液が収納された軟質バッグと、軟質バッグに取り付けられた薬剤容器を有する輸液用容器であって、薬剤容器は、薬剤が収納された薬剤収納部と、薬剤収納部と独立して設けられ軟質バッグ内部の内容物を排出するための排出ポートと、薬剤収納部及び排出ポートの一端部に設けられかつ軟質バッグ内部に配置され、薬剤収納部及び排出ポートと軟質バッグ内部との連通を規制するとともに、薬剤収納部と前記排出ポートの両方を前記軟質バッグ内部と連通可能とする連通規制部を有している。そして、連通規制部は、指による破損により薬剤収納部及び排出ポートの一端部を開封するための脆弱部と、脆弱部の破損操作を行うための操作部を有している。
【0004】
また、特許文献2(特開2007−50085号公報)に示されるものを本件出願人は提案している。図25に示す輸液用容器60は、可撓性材料により形成され、解除可能な区画部を構成する剥離可能な連通阻害用弱シール部24により第1の薬剤室11と第2の薬剤室24aに区分された容器本体2と、容器本体2の第2の薬剤室24aに取り付けられた排出ポート83と、第1の薬剤室11に充填された第1の薬剤と、第2の薬剤室24aに収納された第2の薬剤とを備える薬剤入り医療用容器である。そして、排出ポート83は、容器本体2の第2の薬剤室24aに固定され、開口端を有する筒状部61と、筒状部61の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部32と、針管侵入阻害部4を備える。針管侵入阻害部4は、先端部41が連通阻害用弱シール部24に当接可能であり、基端部42が筒状部61内に侵入し、かつ連通阻害用弱シール部24の未剥離時における筒状部61内への薬剤排出用針管の侵入を阻害するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−95604号公報
【特許文献2】特開2007−50085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のものでは、連通規制部の破損操作を行うことなく、輸液セットの薬剤排出用針管を穿刺しても薬剤が流出することはなく、安全なものとなっている。しかし、特許文献1のものでは、薬剤排出用針管の穿刺自体は、行えるので、穿刺後、薬液が排出されないことにより、連通規制部の破損操作を行っていないことに気づくのである。この後、その状態のまま連通規制部の破損操作を行うことより、一度、薬剤排出用針管を抜去した後、連通規制部の破損操作を行い、再び薬剤排出用針管を穿刺するという作業を行うことが望ましい。
上記特許文献2のものでは、上記の問題点は解消されており、有効である。しかし、連通阻害用弱シール部の内縁と排出ポートの封止部の内面間の距離は、連通阻害用弱シール部の位置制御誤差および排出ポート形成部材の差込み距離制御誤差により、一定なものではない。このため、連通阻害用弱シール部の内縁と排出ポートの封止部の内面間の距離が、想定より長いものが製造されることがあり、このような場合、連通阻害用弱シール部を剥離することなく、薬剤排出用針管の刺入が可能となることがあった。
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決するものであり、剥離可能な区画部により区分された主薬剤室と副薬剤室を有する医療用容器において、剥離可能な区画部が未解除の状態での薬剤排出用針管の穿刺を確実に規制し、未混合状態での薬剤の投与を防止し、かつ、区画部の未剥離を薬剤排出用針管の接続時に作業者に教示することができる医療用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 可撓性材料により形成され、薬剤が収納された容器本体と、排出口を備える排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記容器本体は、剥離可能な弱シール部により形成された区画部により主薬剤室と副薬剤室に区分され、かつ、前記主薬剤室に充填された第1の薬剤と、前記副薬剤室に収納された第2の薬剤とを備えており、
前記排出ポートは、前記容器本体に固定され、開口端を有する筒状部と、該筒状部の前記開口端を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する前記排出口とを備え、
さらに、前記医療用容器は、先端部が前記区画部に当接可能であり、基端部が前記筒状部内に侵入し、かつ前記区画部の未剥離時における前記筒状部内への前記薬剤排出用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部を備え、
前記針管侵入阻害部は、長さ調整機能と、前記筒状部内に挿入後、前記封止部装着前に、前記筒状部の前記開口端側にて、前記長さ調整機能を操作し、前記針管侵入阻害部の全長を変更するための操作部とを備えている医療用容器。
【0008】
(2) 前記針管侵入阻害部は、小径筒状部と、前記小径筒状部内に先端部が進入したシャフト部と、該シャフト部の基端部に設けられた操作部とを備え、前記長さ調整機能は、前記小径筒状部の内面側に設けられた小径筒状部側調整部と前記シャフト部の前記小径筒状部に進入する先端部に設けられたシャフト部側調整部とにより構成されている上記(1)に記載の医療用容器。
(3) 前記小径筒状部側調整部と前記シャフト部側調整部は、前記針管侵入阻害部の長さを延長する方向への前記小径筒状部と前記シャフト部の相対的移動を許容し、かつ、前記針管侵入阻害部の長さが短縮する方向への相対的移動を規制するラチェット機構により構成されている上記(2)に記載の医療用容器。
(4) 前記小径筒状部側調整部と前記シャフト部側調整部は、前記小径筒状部の内面に形成された雌ねじ部と、前記シャフト部に形成され、前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部により構成されている上記(2)に記載の医療用容器。
(5) 前記針管侵入阻害部の前記長さ調整機能は、前記操作部側および前記シャフト部の基端部側から押圧されても実質的に長さが変化しないものとなっている上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の医療用容器。
(6) 前記小径筒状部の先端部は、閉塞している上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器。
(7) 前記区画部は、前記主薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害するとともに小容量の前記副薬剤室を形成する連通阻害用弱シール部である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用容器。
(8) 前記容器本体は、前記主薬剤室を第1の主薬剤室と第2の主薬剤室に区分する剥離可能な仕切部を有する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の医療用容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医療用容器は、可撓性材料により形成され、薬剤が収納された容器本体と、排出口を備える排出ポートとを備える。容器本体は、剥離可能な弱シール部により形成された区画部により主薬剤室と副薬剤室に区分され、かつ、主薬剤室に充填された第1の薬剤と、副薬剤室に収納された第2の薬剤とを備えており、排出ポートは、容器本体の第1の薬剤室側に固定され、開口端を有する筒状部と、筒状部の開口端を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口とを備え、さらに、医療用容器は、先端部が区画部に当接可能であり、基端部が筒状部内に侵入し、かつ区画部の未剥離時における筒状部内への薬剤排出用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部を備え、針管侵入阻害部は、長さ調整機能と、筒状部内に挿入後、封止部装着前に、筒状部の開口端側にて、長さ調整機能を操作し、針管侵入阻害部の全長を変更するための操作部とを備えている。
この医療容器では、針管侵入阻害部は、長さ調整機能を有し、かつ針管進入阻害部は、筒状部内に挿入後、封止部装着前に、筒状部の開口端側にて、長さ調整可能であるため、個々の容器本体の区画部の内縁と排出ポートの封止部の内面間の距離に対応して、長さを調整することができるため、剥離可能な区画部が未解除の状態での薬剤排出用針管の穿刺を確実に規制し、かつ、区画部の未解除を薬剤排出用針管の接続時に作業者に教示することができ、未解除状態における薬剤排出用針管の接続が行われることがなく、針管の再度の接続といった作業が生じることがなく、作業効率も良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の医療用容器の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1に示す医療用容器に使用される排出ポートの一例の拡大正面図である。
【図3】図3は、図2の排出ポートの断面図である。
【図4】図4は、図2の排出ポートに用いられる針管侵入阻害部の拡大正面図である。
【図5】図5は、図4に示した針管侵入阻害部の拡大底面図である。
【図6】図6は、図4に示した針管侵入阻害部の断面図である。
【図7】図7は、図4に示した針管侵入阻害部の小径筒状部の断面図である。
【図8】図8は、本発明の医療用容器に使用される針管侵入阻害部の他の例の拡大底面図である。
【図9】図9は、本発明の医療用容器に使用される針管侵入阻害部の長さ調整過程を説明するための説明図である。
【図10】図10は、本発明の医療用容器に使用される針管侵入阻害部の他の例の正面図である。
【図11】図11は、図10に示した針管侵入阻害部の拡大底面図である。
【図12】図12は、図10に示した針管侵入阻害部の断面図である。
【図13】図13は、図10に示した針管侵入阻害部のシャフト部の正面図である。
【図14】図14は、本発明の他の実施例の医療用容器の正面図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施例の医療用容器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の医療用容器を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の医療用容器1は、図1に示すように、可撓性材料により形成され、薬剤が収納された容器本体2と、排出口を備える排出ポート3とを備える。容器本体2は、剥離可能な弱シール部により形成された区画部7により主薬剤室11と副薬剤室13に区分され、かつ、主薬剤室11に充填された第1の薬剤と、副薬剤室13に収納された第2の薬剤14とを備えている。排出ポート3は、容器本体2に固定され、開口端を有する筒状部31と、筒状部31の開口端を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部33を有する排出口32とを備える。医療用容器1は、先端部45が区画部7に当接可能であり、基端部が筒状部31内に侵入し、かつ区画部7の未剥離時における筒状部31内への薬剤排出用針管(図示せず)の侵入を阻害する針管侵入阻害部4を備える。針管侵入阻害部4は、長さ調整機能と、筒状部31内に挿入後、封止部33装着前に、筒状部31の開口端側にて、長さ調整機能を操作し、針管侵入阻害部の全長を変更するための操作部とを備えている。
そして、医療用容器1の副薬剤室13内に配置されている針管侵入阻害部4は、図1に示すように、先端部45と区画部7の内縁間および基端部43と排出ポート3の封止部33の内面間に実質的なクリアランスを持たないもしくはわずかなクリアランスのみを有し、剥離可能な区画部7が未解除の状態での薬剤排出用針管の穿刺を規制している。
【0012】
この実施例の医療用容器1は、図1に示すように、可撓性材料により形成され、解除可能な区画部を構成する剥離可能な連通阻害用弱シール部7により主薬剤室11と副薬剤室13に区分された容器本体2と、容器本体2の副薬剤室13に取り付けられた排出ポート3と、主薬剤室11に充填された第1の薬剤と、副薬剤室13に収納された第2の薬剤とを備える薬剤入り医療用容器である。
容器本体2は、軟質合成樹脂により形成されている。容器本体2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、容器本体2は、例えば、ブロー成形法、共押出インフレーション法などの種々の方法により製造されたものでもよい。
容器本体2は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。
このように容器本体2が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬剤(具体的には、薬液)の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0013】
このような容器本体2の形成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。そして、使用する樹脂材料は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に耐えられる耐熱性、耐水性を有していることが好ましい。
また、容器本体の形成材料として、ポリオレフィンが含有されるとき、本発明の有用性が大きいものとなる。したがって、本発明においては、容器本体2の形成材料として、ポリオレフィンを含むものであるのが好ましい。容器本体2の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレンまたはポリプロピレンに、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を挙げることができる。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
【0014】
また、容器本体は、前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、容器本体2の耐衝撃性を向上させたり、対ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、容器本体2のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与したりすることができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、容器本体2の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。なお、容器本体2が多層積層体である場合、その内表面部分を形成する材料が、前述した材料であるのが好ましい。
容器本体2を構成するシート材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜500μm程度であるのが好ましく、200〜360μm程度であるのがより好ましい。
【0015】
また、医療用容器1の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、薬剤室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましい。また、主薬剤室の容積は、200〜5000mlであることが好ましい、また、主薬剤室に収納する薬剤は、薬液であり、アミノ酸電解質液、ブドウ糖液、生理的食塩水などが使用される。
排出ポート3は、容器本体2内に充填された薬剤(薬液)を排出するためのものである。排出ポート3は、容器本体2の副薬剤室13に固定され、開口端を有する筒状部31と、筒状部31の開口端を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部33と、針管侵入阻害部4を備える。針管侵入阻害部4は、先端部45が連通阻害用弱シール部7に当接可能(具体的には、連通阻害用弱シール部7の内縁に当接可能)であり、後端を構成する操作部43が筒状部31内に侵入し、かつ連通阻害用弱シール部7の未剥離時における筒状部31内への薬剤排出用針管の侵入を阻害している。
この医療用容器1では、上記のような針管侵入阻害部4を備えるため、区画部である連通阻害用弱シール部7の剥離作業、すなわち、主薬剤室と副薬剤室との連通作業を行うことなく、薬液が投与されることを防止できる。
【0016】
区画部である連通阻害用弱シール部7は、排出ポート3の上方を取り囲むように形成されている。この連通阻害用弱シール部7により、主薬剤室11から隔離された小容量の副薬剤室13が形成されている。また、図1に示すように、容器本体2の一端側及び他端側には、シール部5、6が設けられている。
この副薬剤室13には、薬剤14が収納されている。収納される薬剤としては、粉末、顆粒状などの固体状、液体状等いかなるものでもよい。薬剤としては、輸液剤に配合・溶解させるものであって、例えば抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリン等の抗血栓剤、インシュリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正電解質、抗ウィルス薬、免疫賦活剤等が挙げられる。
連通阻害用弱シール部(区画部)7は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。弱シール部は、加熱プレスにより行うことが好ましく、金型の温度は、容器本体2の形成材料の溶融温度より10℃以上低い温度で行うことにより形成することができる。
連通阻害用弱シール部7は、図1に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、連通阻害用弱シール部は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。また、連通阻害用弱シール部7は、主薬剤室11を押圧することにより、剥離する。
【0017】
排出ポート3は、容器本体2内に充填された薬剤(薬液)を排出するためのものである。この実施例における排出ポート3は、図1に示すように、副薬剤室13と連通するように容器本体2の下部シール部6に固定されている。排出ポート3は、開口端を有する筒状部31と、筒状部31の開口端を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部33を有する排出口32を備えている。また、筒状部31は、図2および図3に示すように、後端にキャップ状の排出口32の先端部を収納する環状凹部を有するフランジ部36を備えている。また、キャップ状排出口32は、上記フランジ部36と当接するフランジ部34、上記筒状部の環状凹部に収納される先端部を備えている。そして、筒状部31と排出口32は、両者のフランジ部の当接面において、液密に固着されている。
そして、医療用容器1は、図1ないし図3に示すように、先端部45が連通阻害用弱シール部7に当接可能であり、基端部43が筒状部31内に侵入し、かつ連通阻害用弱シール部7の未剥離時における筒状部31内への薬剤排出用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部4を備えている。
【0018】
この実施例の医療用容器1では、針管侵入阻害部4は、図1に示すように、先端部45は、連通阻害用弱シール部7に接触するもしくは若干離間したものとなっており、基端部43は、排出ポートの底面(封止部材内面)に接触するもしくは若干離間したものとなっている。針管侵入阻害部4の先端部および基端部の両者が連通阻害用弱シール部7および封止部33の内面に接触するものあるいはそれぞれとの間にごくわずかなクリアランスがあるもののいずれであってもよい。なお、クリアランスを有する場合であっても、連通阻害用弱シール部の未剥離の状態(図1の状態)における薬剤排出用針管の排出ポートへの穿刺可能長さは、薬剤排出用針管の開口が排出ポート内部と連通しない長さとなっている。具体的には、針管侵入阻害部4の容器内における移動可能距離は、3mm以下であることが好ましい。
この実施例では、図1ないし図7に示すように、針管侵入阻害部4は、小径筒状部41と、小径筒状部内に先端部が進入したシャフト部42とにより構成されている。そして、シャフト部42は、シャフト本体46とその基端部に設けられた操作部43を備えている。そして、長さ調整機能は、小径筒状部41の内面側に設けられた小径筒状部側調整部47とシャフト部42の小径筒状部41に侵入する先端部に設けられたシャフト部側調整部44とにより構成されている。
小径筒状部41は、閉塞した先端部を有する小径の筒状体であり、後端開口部より、シャフト部42の先端部の侵入が可能となっている。なお、小径筒状部41は、シャフト部42の先端部と当接する可能性のない部分(具体的には、先端側部分)は、中実なものであってもよい。また、小径筒状部41の基端より若干先端側となる側内面には、小径筒状部側調整部47が設けられている。小径円筒部の断面形状は、楕円を含む円形(円柱状、円筒状)、多角形状(例えば、三角形、四角形)などのいずれであってもよい。
シャフト部42は、所定長延びるシャフト本体46と、その先端部に設けられたシャフト部側調整部44と、シャフト本体46の基端に設けられた円盤状(言い換えれば、フランジ状)の操作部43を備えている。
【0019】
そして、この実施例では、小径筒状部側調整部47とシャフト部側調整部44は、針管侵入阻害部の長さを延長する方向への小径筒状部41とシャフト部42の相対的移動を許容し、かつ、針管侵入阻害部の長さが短縮する方向への両者の相対的移動を規制するラチェット機構により構成されている。
具体的には、小径筒状部側調整部47は、基端方向に傾斜する傾斜面と小径筒状部の中心軸にほぼ直交する直交底面とを有し、若干外側に変形可能な内刃が軸方向に複数有するものとなっている。これに対応するように、シャフト部側調整部44は、シャフト部本体の先端部の外面に設けられ、シャフト部本体の基端方向(操作部方向)に傾斜する傾斜面とシャフト部本体の中心軸にほぼ直交する直交底面とを有する外刃を軸方向に複数有するものとなっている。このため、針管侵入阻害部の長さを延長する方向への小径筒状部41とシャフト部42の相対的移動を許容する。具体的には、小径筒状部41を保持した状態にてシャフト部42を基端方向へ引く(牽引する)と、シャフト部側調整部44の外刃の傾斜面が小径筒状部側調整部47の内刃の傾斜面に当接し、それを若干押し広げながら、傾斜面を摺接し乗り越えることにより、基端側に移動する。このため、長さ調整が可能となっている。また、この実施例のものでは、小径筒状部41を保持した状態にてシャフト部42を先端方向に押すと、シャフト部側調整部44の外刃の直交面が小径筒状部側調整部47の内刃の直交面に当接するため、それ以上の先端側への移動を規制する。
【0020】
そして、この実施例の針管侵入阻害部4では、シャフト部42に設けられた操作部43を保持することにより、長さ調整を行うことが可能である。さらに、この操作部43は、図5に示すように、周縁部に設けられた複数の切欠部48を備えており、切欠部48には、操作用牽引具を装着可能である。操作用牽引具を装着する切欠部48は、薬剤排出用針管が侵入困難な部分(具体的には、操作部の周縁部)に設けられていることが好ましい。また、操作部の形態としては、図8に示す針管侵入阻害部4aのような、放射状の把持用兼牽引具装着用リブ49を有するものであってもよい。
そして、この例の針管侵入阻害部4では、先端部は、半球状となっている。このようにすることにより、連通阻害用弱シール部7を剥離することを防止している。さらに、この例の針管侵入阻害部4は、連通阻害用弱シール部の剥離後、排出ポートより流出可能なものとなっている。
【0021】
また、針管侵入阻害部は、上記のタイプのものに限定されるものではなく、例えば、図10ないし図13に示す針管侵入阻害部4bのようなタイプのものであってもよい。
この例の針管侵入阻害部4bと上述した針管侵入阻害部4との実質的な相違は、長さ調整機能の構成のみである。
図10ないし図13に示すように、針管侵入阻害部4bは、小径筒状部41aと、小径筒状部41a内に先端部が進入したシャフト部42aとにより構成されている。そして、シャフト部42aは、シャフト本体46とその基端部に設けられた操作部43を備えている。そして、長さ調整機能は、小径筒状部41aの内面側に設けられた小径筒状部側調整部47aとシャフト部42aの小径筒状部41aに侵入する先端部に設けられたシャフト部側調整部44aとにより構成されている。
この例の針管侵入阻害部4bでは、小径筒状部側調整部とシャフト部側調整部は、小径筒状部41aの内面に形成された雌ねじ部47aと、シャフト部42aに形成され、雌ねじ部47aと螺合する雄ねじ部44aにより構成されている。
そして、この実施例のものでも、小径筒状部側調整部47aとシャフト部側調整部44aは、針管侵入阻害部の長さを延長する方向への小径筒状部41aとシャフト部42aの相対的移動を許容する。また、シャフト部42aの先端方向に押圧しても、針管侵入阻害部の長さが短縮する方向への相対的移動が規制されている。
具体的には、小径筒状部側調整部47aは、小径筒状部41aの基端部内面に形成された雌ねじ部であり、シャフト部側調整部44aは、シャフト部本体46の先端部の外面に設けられ、上記雌ねじ部と螺合可能な雄ねじ部である。このため、シャフト部42aを上記雌ねじ部と雄ねじ部の螺合深度が減少する方向に回転させることにより、針管侵入阻害部の長さを延長することができる。また、シャフト部42aの押圧および牽引によっては、針管侵入阻害部の長さは変化しないものとなっている。なお、シャフト部42aを上記雌ねじ部と雄ねじ部の螺合深度が増加する方向に回転させることにより、針管侵入阻害部の長さを短縮することもできる。
そして、この実施例の針管侵入阻害部4bでは、シャフト部42aに設けられた操作部43を保持し、回転させることにより、長さ調整を行うことが可能である。さらに、この操作部43は、底面部にシャフト部42aを回転させるための操作具を接続可能な操作具接続可能部51を備えている。操作具接続部51は、凹部となっており、操作具としては、例えば、上記凹部に対応した先端形状を有するドライバーが用いられる。また、針管侵入阻害部の操作具接続部51は、薬剤排出用針管が侵入しても薬剤が排出不能な深さであることが好ましい。
【0022】
図9は、本発明の医療用容器に使用される針管侵入阻害部の長さ調整過程を説明するための説明図である。
図9に示すように、区画部である連通阻害用弱シール部7が形成された容器本体2に排出ポートの筒状部31を取り付けたものを準備する。そして、連通阻害用弱シール部7により区画された副薬剤室13内に薬剤14を注入する。その後、針管侵入阻害部4を小径筒状部41の基端側(開口端側)より、筒状部31内に挿入し、先端を連通阻害用弱シール部7に当接する状態とする。この状態が、図9に示す状態である。
そして、針管侵入阻害部4の小径筒状部41の先端部を容器本体の外側より保持し、さらに、筒状部31の開口部より露出する針管侵入阻害部4のシャフト部42の操作部を把持し、後端側に牽引することにより、針管侵入阻害部4の長さを調整する。なお、長さの調整は、筒状部31の開口部より露出する針管侵入阻害部4(シャフト部42)の長さを予め決めておき、ほぼその長さとなるように調製する。なお、長さの調整は、シャフト部42の基端部が、筒状部31の開口部を基準に、封止部の内面に接触もしくは近接する位置にくる長さとなるように調整する。
また、針管侵入阻害部4bのようなタイプのものであれば、同様に針管侵入阻害部4bの小径筒状部45の先端部を容器本体の外側より保持し、筒状部31の開口部より露出する針管侵入阻害部4bのシャフト部42aの操作部を回転させることにより長さを短縮させ、針管侵入阻害部4bの長さを調整することも可能である。
そして、針管侵入阻害部4の長さ調整終了後、封止部33を収納したキャップ状の排出口32を筒状部31の開口部に装着し、両者の周縁部を融着することにより、装着作業が終了する。
なお、針管侵入阻害部4を副薬剤室13内に挿入し、長さ調整を行った後に、副薬剤室13内への薬剤14の注入を行ってもよい。また、針管侵入阻害部4を副薬剤室13内に挿入し、長さ調整を行った後に、針管侵入阻害部4を一度取り出し、副薬剤室13に薬剤14を注入し、その後、再度、副薬剤室13内に針管侵入阻害部4を副薬剤室13内に挿入するものとしてもよい。
【0023】
筒状部、針管侵入阻害部(小径筒状部、シャフト部)、排出口(キャップ部)の形成材料としては、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマーなど、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど、スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)など、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、例えば、6ナイロン、66ナイロンなどが使用される。
封止部(弾性部材)33の形成材料としては、合成ゴム、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなど、天然ゴム、例えば、ラテックスゴム、スチレン系エラストマー、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマーなど、ウレタン系エラストマー、例えば、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリエステルポリウレタンなどが使用できる。
また、この実施例の医療用容器1は、薬剤室11と連通する混注ポート8を備えているが、混注ポートを備えないものであってもよい。混注ポート8としては、公知のものが使用できる。
【0024】
次に、本発明の他の実施例の医療用容器10について説明する。
図14は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
この実施例の医療用容器10と上述した医療用容器1との相違は、剥離可能な仕切部9により、主薬剤室は、第1の主薬剤室11aと第2の主薬剤室11bとに区分されている点である。そこで、相違点を中心に説明する。なお、この医療用容器10においても、区画部(連通阻害用弱シール部)7の未解除時における排出口3への薬剤排出用針管の刺入を阻害する針管侵入阻害部4を備えている。
また、医療用容器10の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、第1の主薬剤室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましく、第2の主薬剤室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましい。
このように薬剤室を2つに区分することにより、反応等による変質、劣化を生じる物質を含有する液体を使用するまでは別々に保存でき、使用に際し、両液を混合することが好ましいとき等に適用することができる。それぞれの薬剤室に収納される薬剤としては、薬液、散剤などが考えられる。特に、本発明の医療用容器では、第1の薬剤は、薬液であることが好ましい。第2の薬剤は、薬液もしくは散剤いずれであってもよい。好ましくは、薬液である。第1の薬剤および第2の薬剤の組合せとしては、例えば、アミノ酸電解質液とブドウ糖液、ブドウ糖液と重曹液等の組み合わせが挙げられる。
【0025】
排出ポート3は、上述したものと同じである。また、針管侵入阻害部としては、上述したすべてのタイプのものを用いることができる。
医療用容器10の仕切部9は、剥離可能な中央弱シール部9aと、その両側部に設けられた実質的に剥離しない仕切部側部シール部15を備えている。
この実施例の医療用複室容器10では、仕切部9は、容器本体2aの側部から軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部15と、2つの仕切部側部シール部間を繋ぐように設けられた中央弱シール部9aとにより形成されている。中央弱シール部9aは、容器本体2aのシート材を帯状に剥離可能に融着することにより形成されている。このような構成により、薬剤室の中央付近には、中央弱シール部9aのみ形成されており、その両側には、中央弱シール部9aの両端部と重なるように形成された仕切部側部シール部15が形成されている。
また、この実施例では、仕切部側部シール部15は、中央弱シール部9aより幅が広く、その上縁は、側辺部に向かうに従って、軟質バッグの上端側に向かうように湾曲している。
仕切部9の中央弱シール部9aの剥離強度としては、輸送中に2つ折り梱包形態の軟質バッグ2に対して加えられる圧力では剥離せず、容器本体2aを手指などで強く圧迫した(絞った)ときに剥離する程度であることが好ましい。仕切部9は、容器本体2aを融着することにより形成されることが好ましい。融着としては、熱融着、高周波融着、超音波融着などであることが好ましい。中央弱シール部9aのシール強度(初期の剥離強度)は、0.1〜5N/10mm、特に、0.3〜3N/10mmであることが好ましい。シール強度がこの範囲内であれば、輸送や保管中等に誤って中央弱シール部が剥離することがなく、また、中央弱シール部を剥離する作業も容易である。
【0026】
また、図14に示す実施例において中央弱シール部9aは、第1の主薬剤室11a側および第2の主薬剤室側11bの縁部に非シール部を有するものとなっており、区画部(連通阻害用弱シール部)7の上方、特に、鉛直方向上方となる位置に設けられていることが好ましい。また、仕切部側部シール部15は、図示するように、連通阻害用弱シール部7の鉛直方向上方となる位置の両側に設けられていることが好ましい。このような位置に中央弱シール部9aが設けられていることにより、中央弱シール部9aが剥離した際、容器本体2aの連通阻害用弱シール部7が形成されている部分が大きく膨らむため連通阻害用弱シール部7が剥離しやすくなる。
【0027】
次に、本発明の他の実施例の医療用容器20について説明する。
図15は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
この実施例の医療用容器20は、解除可能な区画部である仕切部9により区分された主薬剤室21と副薬剤室22と、それぞれの薬剤収納部に収納された薬剤と、いずれかの薬剤室(この実施例では、副薬剤室22)と連通し、薬剤排出用針管の刺入が可能な排出ポート3を備える。医療用容器20は、区画部9の未解除時における排出ポート3への薬剤排出用針管の刺入を阻害する針管侵入阻害部4cを備えている。
この実施例の医療用容器20と上述した医療用容器1との相違は、上述した医療用容器1では、区画部が連通阻害用弱シール部7であったのに対し、この医療用容器20では、容器本体内を大きく二分する剥離可能な仕切部9である点、および針管侵入阻害部の長さのみである。
この実施例の医療用容器20の仕切部9は、上述した医療用容器10と同じ構成となっており、剥離可能な中央弱シール部9aと、その両側部に設けられた実質的に剥離しない仕切部側部シール部15を備えている。そして、この実施例の医療用複室容器20においても、仕切部9は、容器本体2bの側部から軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部15と、2つの仕切部側部シール部間を繋ぐように設けられた中央弱シール部9aとにより形成されている。中央弱シール部9aは、容器本体2bのシート材を帯状に剥離可能に融着することにより形成されている。このような構成により、薬剤室の中央付近には、中央弱シール部9aのみ形成されており、その両側には、中央弱シール部9aの両端部と重なるように形成された仕切部側部シール部15が形成されている。
また、この実施例では、仕切部側部シール部15は、中央弱シール部9aより幅が広く、その上縁は、側辺部に向かうに従って、軟質バッグの上端側に向かうように湾曲している。
【0028】
そして、排出ポート3は、容器本体2bの副薬剤室22に固定され、開口端を有する筒状部31と、筒状部31の開口端を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部33を有する排出口32を備える。さらに、医療用容器20は、先端部が中央弱シール部9aに当接可能であり、基端部が筒状部31内に侵入し、かつ弱シール部9aの未剥離時における筒状部31内への薬剤排出用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部4cを備えている。
針管侵入阻害部としては、上述したすべてのタイプのものを用いることができる。
なお、この例の針管侵入阻害部4cでは、上述した針管侵入阻害部に比べて、小径筒状部が長いものとなっているが、その他の構成は、上述したいずれのタイプのものであってもよい。
また、この実施例の医療用容器20においても、針管侵入阻害部4cの先端部および基端部の両者が弱シール部9aおよび封止部33に接触するものであっても、わずかなクリアランスがあるものいずれでもよい。なお、弱シール部の未剥離の状態(図15の状態)における薬剤排出用針管の排出ポートへの穿刺可能長さは、薬剤排出用針管の開口が排出ポート内部と連通しない長さであることが好ましい。よって、針管侵入阻害部4の容器内における移動可能距離は、3mm以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0029】
1 医療用容器
2 容器本体
3 排出ポート
4 針管侵入阻害部
7 区画部
41 小径筒状部
42 シャフト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料により形成され、薬剤が収納された容器本体と、排出口を備える排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記容器本体は、剥離可能な弱シール部により形成された区画部により主薬剤室と副薬剤室に区分され、かつ、前記主薬剤室に充填された第1の薬剤と、前記副薬剤室に収納された第2の薬剤とを備えており、
前記排出ポートは、前記容器本体に固定され、開口端を有する筒状部と、該筒状部の前記開口端を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する前記排出口とを備え、
さらに、前記医療用容器は、先端部が前記区画部に当接可能であり、基端部が前記筒状部内に侵入し、かつ前記区画部の未剥離時における前記筒状部内への前記薬剤排出用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部を備え、
前記針管侵入阻害部は、長さ調整機能と、前記筒状部内に挿入後、前記封止部装着前に、前記筒状部の前記開口端側にて、前記長さ調整機能を操作し、前記針管侵入阻害部の全長を変更するための操作部とを備えていることを特徴とする医療用容器。
【請求項2】
前記針管侵入阻害部は、小径筒状部と、前記小径筒状部内に先端部が進入したシャフト部と、該シャフト部の基端部に設けられた操作部とを備え、前記長さ調整機能は、前記小径筒状部の内面側に設けられた小径筒状部側調整部と前記シャフト部の前記小径筒状部に進入する先端部に設けられたシャフト部側調整部とにより構成されている請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記小径筒状部側調整部と前記シャフト部側調整部は、前記針管侵入阻害部の長さを延長する方向への前記小径筒状部と前記シャフト部の相対的移動を許容し、かつ、前記針管侵入阻害部の長さが短縮する方向への相対的移動を規制するラチェット機構により構成されている請求項2に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記小径筒状部側調整部と前記シャフト部側調整部は、前記小径筒状部の内面に形成された雌ねじ部と、前記シャフト部に形成され、前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部により構成されている請求項2に記載の医療用容器。
【請求項5】
前記針管侵入阻害部の前記長さ調整機能は、前記操作部側および前記シャフト部の基端部側から押圧されても実質的に長さが変化しないものとなっている請求項2ないし4のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項6】
前記小径筒状部の先端部は、閉塞している請求項2ないし5のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項7】
前記区画部は、前記主薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害するとともに小容量の前記副薬剤室を形成する連通阻害用弱シール部である請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項8】
前記容器本体は、前記主薬剤室を第1の主薬剤室と第2の主薬剤室に区分する剥離可能な仕切部を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の医療用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−200559(P2012−200559A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70842(P2011−70842)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】