説明

医療用粘着組成物及び粘着テープもしくはシート

【課題】良好な固定性や凝集力を有し、かつ皮膚から剥離する際の角質剥離等を伴う物理的刺激とのバランスに優れ、さらに環境衛生を配慮し有機溶剤を使用しないで作製することのできる、医療用粘着組成物及び該組成物を用いてなる粘着テープもしくはシートを提供することであり、さらには、環境衛生に配慮し有機溶剤を使用することなく製造することが可能である医療用粘着組成物及び該組成物を用いてなる粘着テープもしくはシートを提供することである。
【解決手段】アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、メタクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物を水分散型共重合することによって得られる水分散型共重合体と、HLBが10以上の非イオン系界面活性剤と、架橋剤とを含有する医療用粘着組成物ならびに支持体の片面に当該医療用粘着組成物よりなる粘着剤層を形成してなる粘着テープまたはシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療・衛生分野において皮膚に貼付する用途で使用される医療用粘着組成物及び該組成物を用いてなる粘着テープもしくはシートに関し、詳しくは、アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物を水分散型共重合することにより得られる水分散型の共重合体に、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が10以上の非イオン系界面活性剤を液状成分として含有し、当該共重合体に適量の架橋処理が施されたものであることを特徴とする、医療用粘着組成物及び該組成物を用いてなる粘着テープもしくはシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚患部の保護や薬物の経皮吸収のため又は皮膚にガーゼ、チューブ等を固定するための、各種医療用粘着剤を用いた医療用粘着テープやシートが開発されている。医療用粘着テープやシートの性質としては、それらを直接皮膚に貼付する用途が多いことから、皮膚への接着力や反発力のあるチューブ等を皮膚へ固定する性能が要求されると同時に、剥離の際の角質剥離等の皮膚に対する物理的刺激を少なくするようなものが求められている。
【0003】
このような粘着テープやシート等の粘着層に用いられる粘着剤としては、接着性及び透湿性に優れ、かつ、皮膚に対する化学的刺激の少ない(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーからなる粘着剤が一般的に使用されている。しかし、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーからなる粘着剤に関しては、粘着力が強いため、粘着テープやシートを皮膚から剥離する際に痛みを感じさせたり、皮膚の角質層や表皮に損傷を与えることがあった。特に、同一部位に繰り返して粘着テープ等を貼付する場合には、出血を伴うような皮膚損傷を生ずることもあり、大きな問題となるおそれがある。
【0004】
このような皮膚に対する物理的刺激を軽減させる目的で、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー中に、該ポリマーと相溶可能な有機液状成分を多量に含有させ、架橋処理を施すことによりゲル状にした粘着剤が提案されている(特許文献1、特許文献2)。このような粘着剤に関しては、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーの有する高い接着性を保持したまま、剥離時の皮膚面に与える応力を緩和させ、分散させることが可能である。従って、皮膚に対する物理的刺激が少なく角質の剥離等も軽減されることから、経皮吸収型のテープ製剤や医療用サージカルテープに適用されている。しかしながら、そこで開示されている粘着剤を支持体フィルムに積層して得られる粘着テープは、医療用チューブの皮膚への固定に使用した場合、固定性が十分ではなく、特に発汗の激しい夏場における耐汗固定性の低下が顕著に見られるものであった。また、上記医療用粘着剤は有機溶剤中で作製されるため、環境衛生上好ましくないという問題もあった。
【0005】
また、水分散型の粘着組成物からなり、皮膚への接着性と剥離時の皮膚への糊残りがないような凝集力のバランスに優れた医療用粘着組成物が開発されている(特許文献3)。しかしながら、この粘着組成物に、相溶する有機液状成分を含有させる場合、固定性や凝集力等の粘着特性が十分に発現されず、その結果角質剥離等の物理的刺激の抑制とのバランスを取ることが困難であった。
【特許文献1】特開平6−23029号公報
【特許文献2】特開平6−319793号公報
【特許文献3】特開2003−064336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、良好な接着性、固定性及び凝集力を有し、かつ皮膚から剥離する際の角質剥離等を伴う物理的刺激の抑制とのバランスに優れ、さらに環境衛生に配慮し有機溶剤を使用しないで作製することのできる、医療用粘着組成物及び該組成物を用いてなる粘着テープもしくはシートを提供することである。さらには、本発明の課題は、環境衛生に配慮し有機溶剤を使用することなく製造することが可能である医療用粘着組成物及び該組成物を用いてなる粘着テープもしくはシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために、医療用粘着剤として用いられる組成物に関して、アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸及びメタクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物を水分散型共重合して得られる水分散型の共重合体に、HLBが10以上の非イオン系界面活性剤を液状成分として配合せしめ、さらに上記共重合体を適度に架橋処理して得られる医療用粘着組成物が、従来達成困難であった接着性、固定性や凝集力のバランスに優れ、かつ皮膚から剥離する際の角質剥離などの物理的刺激を軽減することのできる特性を有すること、さらには有機溶剤を使用することなく製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、メタクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物を水分散型共重合することによって得られる水分散型共重合体と、HLBが10以上の非イオン系界面活性剤と、架橋剤とを含有する医療用粘着組成物。
(2)HLBが10以上の非イオン系界面活性剤の含有量が、水分散型共重合体100重量部に対して20〜60重量部である、上記(1)に記載の医療用粘着組成物。
(3)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が4〜12、メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が1〜4である、上記(1)又は(2)に記載の医療用粘着組成物。
(4)水分散型共重合体が、乳化剤、連鎖移動剤及び重合開始剤の存在下、乳化重合を行うことにより得られたものである、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の医療用粘着組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の医療用粘着組成物よりなる粘着層を、支持体上に形成してなる粘着テープもしくはシート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医療用粘着組成物は、粘着テープもしくはシートとして皮膚に貼付、使用した場合に、良好な固定性や凝集力が得られると同時に、皮膚から剥離する際の角質剥離などを伴う物理的刺激の抑制とのバランスに優れた特性を有しているため、救急絆創膏、巻絆、ドレッシング材、ドレープ材などの医療衛生材用途に好適な粘着テープやシートとすることが可能である。さらには、本発明の医療用粘着組成物は、環境衛生に配慮し有機溶剤を使用することなく製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、望ましい実施の形態とともに詳細に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0011】
本発明において、医療用とは、広く医療、衛生の分野で使用されるものを言い、皮膚に貼付する用途に使用されるものである。例えば薬物を配合して経皮吸収させるためのもの、皮膚患部を保護するためのもの、ガーゼ、チューブなどの医療、衛生材料を固定するためのもの等が挙げられる。
【0012】
本発明の医療用粘着組成物は、特定の単量体混合物から得られる水分散型の共重合体に、HLBが10以上の非イオン系界面活性剤(好ましくは、常温で液状を呈する非イオン系界面活性剤)を混合し、かつ該共重合体に適度な架橋処理を施すことによって得ることができる。
【0013】
本発明の医療用粘着組成物を構成する共重合体は、水分散型であり、アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸及びメタクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物を水分散型共重合することにより得られる。
【0014】
アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基として、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などの炭素数4〜12のアルキル基が結合したものを用いることができ、これらのアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状であってもよい。アクリル酸アルキルエステルとして特に好ましいのは、アクリル酸2−エチルヘキシルやアクリル酸イソオクチルである。
【0015】
アクリル酸アルキルエステルと共重合させるメタクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が結合したものを用いることができ、これらのアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもあってもよい。メタクリル酸アルキルエステルとして特に好ましいのは、メタクリル酸メチルである。
【0016】
各単量体の配合量は、アクリル酸アルキルエステル100重量部当たり、(メタ)アクリル酸は1〜5重量部、メタクリル酸アルキルエステルは3〜20重量部である。
【0017】
(メタ)アクリル酸の配合量が1重量部に満たない場合には、粘着感が不足し、5重量部を超えると、皮膚への接着性や固定性が低下する傾向があるため好ましくない。一方、メタクリル酸アルキルエステルの配合量が3重量部に満たない場合には、共重合体のガラス転移温度が低下し接着性や固定性が向上する反面、凝集力が低下し実使用剥離の際に皮膚に糊残りを発生するおそれがある。また、20重量部を超えると、ガラス転移温度の上昇とともに凝集力が向上するが、皮膚から剥離する際にスティックスリップ現象を発現し、物理的刺激が増大するおそれがある。
【0018】
水分散型の共重合体は、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤の存在下で乳化重合を行うことによって得ることができ、適宜、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤の量を調節することができる。
【0019】
乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤は、特に限定されないが、乳化重合の安定性や再現性に優れ、かつ人の皮膚に貼付した際に残存しても化学的刺激や毒性を有さない性質のものが好ましい。
【0020】
乳化重合の方法は、特に限定されないが、一括仕込み法、モノマー逐次添加法、シード重合法及び乳化モノマー逐次添加法などの従来公知の乳化重合法を採用することができる。
【0021】
乳化重合に際しては、水媒体中での単量体混合物の分散安定性の維持や重合安定性を考慮し、乳化剤として、アニオン系乳化剤(スルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなど)、非イオン系乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキルフェニルエーテルなど)、カチオン系乳化剤(アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなど)や、これらの乳化剤に不飽和基(例えば、プロペニル基やアリル基などのラジカル重合性基)が付与された反応性乳化剤などを用いることができ、単独で又は二種以上を併用して用いることができる。これらのうち安定性の観点からは、アニオン系乳化剤や非イオン系乳化剤、反応性乳化剤を用いることが好ましい。乳化剤の配合量は、単量体混合物100重量部に対して0.3〜2重量部である。
【0022】
連鎖移動剤としては、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸などを用いることができ、その配合量は、単量体混合物100重量部に対して0.02〜0.1重量部である。
【0023】
得られる共重合体の分子量は、連鎖移動剤の種類や配合量によって調節することができるが、連鎖移動剤のみの調節に限定されず、重合温度や重合時間などによっても調節することができる。
【0024】
重合開始剤としては、乳化重合への使用が既に公知である、過硫酸塩や有機過酸化物、レドックス系化合物及びアゾ系化合物などを用いることができ、その配合量は、単量体混合物100重量部に対して0.05〜0.5重量部である。
【0025】
水分散型の共重合体の作製は、単量体混合物に乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤等を水媒体中で攪拌混合し、乳化重合時の重合温度や乳化モノマーの滴下速度、攪拌速度等を制御することにより行うことができる。
【0026】
本発明の医療用粘着組成物を構成する液状成分である非イオン系界面活性剤は、HLBが10以上のものである。当該界面活性剤としては、例えば、一般的に非イオン系界面活性剤として用いられる、多価アルコールエチレンオキサイド(EO)付加物(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(4EO)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20EO)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(20EO)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20EO)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(5EO)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(20EO)、ポリオキシエチレントリオレート(20EO)など)、ポリエチレングリコールモノエステル(ポリエチレングリコール(400)モノラウレート、ポリエチレングリコール(600)モノラウレート、ポリエチレングリコール(1000)モノラウレート、ポリエチレングリコール(400)モノステアレート、ポリエチレングリコール(600)モノステアレート、ポリエチレングリコール(1000)モノステアレート、ポリエチレングリコール(400)モノラウレート、ポリエチレングリコール(600)モノラウレート、ポリエチレングリコール(1000)モノラウレートなど)、ポリエチレングリコールジエステル(ポリエチレングリコール(600)ジラウレート、ポリエチレングリコール(1000)ジラウレート、ポリエチレングリコール(1540)ジラウレート、ポリエチレングリコール(600)ジステアレート、ポリエチレングリコール(1000)ジステアレート、ポリエチレングリコール(1540)ジステアレート、ポリエチレングリコール(600)ジオレート、ポリエチレングリコール(1000)ジオレート、ポリエチレングリコール(1540)ジオレートなど)、高級アルコールエチレンオキサイド付加物(ポリオキシエチレンラウリルアルコール(5EO)、ポリオキシエチレンラウリルアルコール(10EO)、ポリオキシエチレンラウリルアルコール(23EO)、ポリオキシエチレンオレイルアルコール(10EO)、ポリオキシエチレンオレイルアルコール(20EO)、ポリオキシエチレンマッコーアルコール(7EO)、ポリオキシエチレンマッコーアルコール(11EO)、ポリオキシエチレンマッコーアルコール(14EO)、ポリオキシエチレンマッコーアルコール(18EO)、ポリオキシエチレンマッコーアルコール(24EO)など)、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物(ポリオキシエチレンノニルフェノール(6EO)、ポリオキシエチレンノニルフェノール(7EO)、ポリオキシエチレンノニルフェノール(10EO)、ポリオキシエチレンノニルフェノール(12EO)、ポリオキシエチレンノニルフェノール(14EO)、ポリオキシエチレンノニルフェノール(16EO)、ポリオキシエチレンノニルフェノール(20EO)、ポリオキシエチレンノニルフェノール(40EO)など)などが挙げられ、疎水基エステル数とエチレンオキサイドやポリエチレングリコールなどの親水基の付加量によりHLBが10以上となるものである。
【0027】
好ましくは、実用時における粘着テープやシートの皮膚への接着性や固定性が良好で、かつ剥離時の糊残りなどを少なくするための粘着組成物の凝集力とのバランスにも優れるため、HLBが14以上のものである。
【0028】
なお、当該非イオン系界面活性剤のHLBの上限値は特に限定はされないが、好ましくは16以下であり、より好ましくは15以下である。
【0029】
HLBが5以上、10未満の場合、水分散型の共重合体と混合した際に、水分散液の分離や共重合体の凝固が発生し、その後の皮膜化が困難になる傾向があり、HLBが5未満の場合、水分散型の共重合体との混合は可能であるが、皮膜化後に、固定性等について良好な特性を得ることが困難となる。また、HLBが16を超えると、親水性が高くなり過ぎて、水分散型重合体との相溶性が悪くなる傾向を示し、均一な被膜(粘着層)が得られにくくなる。
【0030】
当該非イオン系界面活性剤の配合量は、その量が少なすぎる場合、粘着テープやシートとして皮膚に貼付したのち剥離する際の物理的刺激が大きく、その結果角質剥離の抑制が困難となる傾向があり、その量が多すぎる場合、共重合体の液状成分保持能を超過し、粘着テープやシートにおける粘着剤層から液状成分としての非イオン界面活性剤がブルームすることで被着体を汚染し、その結果望ましい特性を得ることが困難となる。
【0031】
従って、非イオン界面活性剤を水分散型の共重合体100重量部に対して、20〜60重量部、好ましくは30〜50重量部含有させる。
【0032】
架橋処理の方法は特に限定はされないが、例えば、水溶性/油溶性のエポキシ系架橋剤、オキサゾリン架橋剤などが用いられる。これらは水分散状態のまま配合され、医療用粘着組成物を粘着層に製膜する際の加熱乾燥により水分散型共重合体に架橋を施すことができる。架橋剤の量としては、水分散型の共重合体100重量部に対して、0.05〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部、より好ましくは0.2〜0.4重量部である。
【0033】
架橋の程度は、例えば、荷重300gの保持力であれば20〜450分の範囲で調整される。この場合、保持力が20分未満ではテープ剥離時に被着体に糊残りなどが生じる傾向があり、450分を超えると十分な皮膚接着性や固定性を得ることが困難となる場合がある。
【0034】
本発明の医療用粘着組成物は、支持体上に、好ましくはその片面に、通常厚み10〜100μm、好ましくは20〜80μmの粘着層とし、全面もしくは点状、筋状など部分的に形成させ、本発明の粘着テープもしくはシートとする。その際、支持体に直接塗布、乾燥してもよいし、一旦剥離紙上に塗布、乾燥した後に支持体上に貼着してもよい。
【0035】
用いる支持体には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの各種プラスチックフィルムや織布、編布、不織布、紙、金属箔、またはこれらを積層したものなどを用いることができる。医療衛生材用途に用いるものであれば形状に特に限定はなく、例えば救急絆創膏や巻絆、ドレッシング材、ドレープ材などに適宜加工して用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
【0037】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌装置を備えた反応容器内に、蒸留水94重量部、乳化剤(界面活性剤、花王:商品名 ラテムルS180A)0.88重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル93重量部、アクリル酸2重量部、メタクリル酸メチル10重量部、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.05重量部、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1重量部の配合にて、重合温度70℃で乳化モノマー逐次添加法により約4.5時間反応させ、その後86℃で2時間熟成させることにより反応を完結させ、水分散型の共重合体を得た。
【0038】
得られた水分散型の共重合体100重量部に対し、液状成分として多価アルコールエステルエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤のポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(20EO)(HLB15)を40重量部、架橋剤として水溶性エポキシ架橋剤であるトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(日産化学工業:商品名 TEPIC−S)を0.2重量部混合し、攪拌することによって本発明の医療用粘着組成物を得た。
【0039】
この医療用粘着組成物を乾燥後の粘着層の厚みが40μmとなるように、片面にシリコーン処理を施した剥離紙のシリコーン処理面に塗布、乾燥した後に、支持体としてのパルプ/ポリエステル繊維混合不織布(坪量 23g/m)に貼り合わせ、本発明の粘着テープを得た。
実施例2および3
【0040】
液状成分として配合する非イオン系界面活性剤の種類を表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法により2種類の医療用粘着組成物及び粘着テープを得た。
比較例1〜3
【0041】
液状成分として配合する非イオン系界面活性剤の種類を表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法により2種類の医療用粘着組成物及び粘着テープを得た。比較例3の配合においては、作製した粘着組成物が凝集状態であるためその後の皮膜化が困難となり、以下に記載する試験が実施できない状態であった。
【0042】
実験例1
【0043】
実施例1〜3及び比較例1〜3における、各液状成分配合後の配合液状態を確認した(表1)。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示した結果から明らかなように、液状成分である非イオン系界面活性剤のHLBによって、配合液状態が変化する。比較例3では、均一な皮膜を得ることはできなかった。
実験例2
【0046】
各実施例および比較例にて得た配合液を皮膜化し、作製した粘着テープを用いて接着力、固定性、凝集力、角質剥離量の試験を下記の要領で行った。これらの結果は、表2に示したとおりである。
[接着力の測定]
ベークライト板に、幅12mmに切断した粘着テープのサンプルを重さ2kgのローラーを一往復させて圧着した。30分経過後、剥離角度180度、剥離速度300mm/分で引き剥がしたときの剥離応力を接着力とした。
[固定性の測定]
コラーゲン膜をベークライト板に両面テープで固定し、そのコラーゲン膜面に12mm幅に切断した粘着テープのサンプルを重さ2kgのローラーを一往復させて圧着した。30分経過後、剥離角度90度で荷重15gを付与し、剥離距離を時間で除すことによって剥離速度を求めこれを固定性とした(定荷重剥離)。本測定条件では、10mm/h以下のものが固定性に優れると判断できる。
[凝集力の測定]
ベークライト板に幅10mmに切断した粘着テープのサンプルを長さが20mmになるように重さ2kgのローラーを一往復させて圧着し、40℃で20分間放置した。その後、40℃で荷重300gを剪断方向に付与し、サンプルが落下するまでの保持時間を測定しこれを凝集力とした。
[角質剥離量]
パネラー5名の背中に、幅20mm、長さ60mmの粘着テープのサンプルを6時間添付した後、剥離角度180度、剥離速度300mm/分で引き剥がした。この引き剥がしたサンプルを予め調整しておいた角質染色液(精製水98.5%、GentianViolet1.0%、BrilliantGreen0.5%)に30分間浸漬し、その後水道水で洗い流した。染色された角質をマイクロスコープにより拡大し、一定面積中の角質面積率を求め、その6名の平均値を角質剥離量とした。
【0047】
【表2】

【0048】
表2に示した結果から明らかなように、実施例及び比較例ともに皮膚へのダメージレベルを見た角質剥離量はほぼ同程度であったにもかかわらず、接着性、固定性、凝集力のバランスが異なっていた。比較例については、粘着テープとしたときに接着性は比較的良好であったが、凝集力が低くべたべた感があり、さらに固定性も低く医療用粘着組成物としてバランスの悪いものであった。本発明の実施例1〜3の医療用粘着組成物は、粘着テープとしたときに良好な固定性や凝集力を有し、かつ皮膚から剥離する際の角質剥離等の物理的刺激の抑制とのバランスに優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、メタクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物を水分散型共重合することによって得られる水分散型共重合体と、HLBが10以上の非イオン系界面活性剤と、架橋剤とを含有する医療用粘着組成物。
【請求項2】
HLBが10以上の非イオン系界面活性剤の含有量が、水分散型共重合体100重量部に対して20〜60重量部である、請求項1に記載の医療用粘着組成物。
【請求項3】
アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が4〜12、メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が1〜4である、請求項1又は2に記載の医療用粘着組成物。
【請求項4】
水分散型共重合体が、乳化剤、連鎖移動剤及び重合開始剤の存在下、乳化重合を行うことにより得られたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用粘着組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用粘着組成物よりなる粘着層を、支持体上に形成してなる粘着テープもしくはシート。

【公開番号】特開2009−261727(P2009−261727A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116395(P2008−116395)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】