説明

医療用貼付材とその製造方法

【課題】取り扱い性が良好で、しかも貼付すべき体表面の比較的広い1箇所の面積部分を透視することのできる医療用貼付材とその製造方法を提供する。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する医療用貼付材において、基材2は熱可塑性樹脂からなる繊維基材又は熱可塑性樹脂からなる繊維基材3とフィルム基材4との積層基材であり、前記繊維基材3は、熱により溶融した部分(熱溶融部)20と、この熱溶融部の周囲の一部又は全部に熱により溶融していない部分(非熱溶融部)10とを備え、前記熱溶融部はその貼付部位が視認可能となっているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認性を付与した医療用貼付材とその製造方法に関する。更に詳しくは、医療分野において医療材料の皮膚への固定、皮膚や傷の保護又は治療等に用いる医療用貼付材とその製造方法に関する。なお、本発明の医療用貼付材は、家庭用、スポーツ用、美容用等として、皮膚やその他の体表面に貼付して使用することが可能なものである。
【背景技術】
【0002】
疾患の治療に用いるチューブ、ガーゼ、包帯等の医療材料の体表面への固定、傷や皮膚等の治療や保護、美容等のために、シート状又はロール状の貼付材が使用されている。
【0003】
一般に医療用の貼付材は、皮膚の動き(皮膚の伸びや縮み等)に追従する性質、凹凸等になじむ性質等が求められる。これらの特性を有する貼付材としてポリウレタンフィルムに感圧粘着剤を塗布したものが知られている。この貼付材は使用時には感圧性粘着剤上に載せてある剥離紙を取り除いてプラスチックフィルムを例えば傷面上に置き、感圧性粘着剤でもって接着固定するようになっている。この種の貼付材はフィルムが極めて薄く柔軟性に富み、腰がないため、剥離紙を取り除いた後の取扱いが極めて難しく、フィルムにしわが寄ったり、フィルム同士が付着したりしてしまう問題がある。
【0004】
この点を改良するため、特許文献1では薄い重合体フィルムの感圧性粘着剤を塗布した側と反対側の重合体フィルムの外周に、重合体フィルムから剥離可能なフレームを付着させたものが提案されている。この貼付材は、フレームを持ってフィルムを平らなしわのない状態に維持するようになっており、従来の貼付材に比べて操作性は向上するものの、フィルムから剥離紙やフレームを取り除くときには同様にフィルムにしわが発生し易く、また、フレームが硬いため特に人体の湾曲部位に適用するときには貼付し難いという問題がある。さらに、フレームは貼付後に不要となるため、廃棄すべきゴミが増加する。
【0005】
そこで本出願人は、特許文献2に開示されるようなプラスチックフィルムと不織布とをラミネートし、プラスチックフィルムの不織布と反対側の全面に粘着剤層を設けた貼付材を創作した。この貼付材は操作性が極めてよく、極薄いフィルムであっても対象部位に密着させて貼り付けることができる。しかしながら、基材として不織布を使用するため透明性に欠け、貼付材を通して創部等を見ながら最適位置に貼り付けることも、貼り付けた後に患部を観察することも不可能という別の問題点があった。
【0006】
そこでさらに本出願人は、操作性が良好で、しかも貼り付けるべき面の透視性を改善した貼付材を創作した(特許文献3)。特許文献3の貼付材は、不織布と光透過性で柔軟性のプラスチックフィルムとをラミネートし、少なくとも不織布はエンボス加工し、プラスチックフィルムの不織布と反対側の全面に光透過性の粘着剤層を設けるものである。
この貼付材は、エンボス加工の面積率が小さいと取扱い性は良いが透明度は低下し、エンボス加工の面積率が大きいと透明度は上がるが取り扱い性が低下するため、取り扱い性と視認性の両方の性質を同時に満足させることが難しかった。
【0007】
また、特許文献4では、熱可塑性繊維布とフィルムをラミネ−トした基材と、該基材の熱可塑性繊維布側表面に粘着剤層を設けた絆創膏において、熱可塑性繊維を溶融させるようにパターンシ−ルしたものが提案されている。この絆創膏は、絆創膏の周囲から水が浸入するのを防ぐために、絆創膏の周囲のみパターンシールするものであり、傷の視認性は考慮されておらず、取り扱い性と視認性の両方の性質を同時に満足できるものではなかった。
【0008】
【特許文献1】特公昭62-28994号公報
【特許文献2】実公平3−32345号公報
【特許文献3】実用新案登録2535473号公報
【特許文献4】特開平9-299396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、取り扱い性が良好で、しかも貼付すべき体表面の比較的広い1箇所の面積部分を透視することのできる医療用貼付材とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を進めた結果、熱可塑性樹脂からなる繊維基材又は熱可塑性樹脂からなる繊維基材とフィルム基材との積層基材を基材とし、その基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を設け、基材の所定部分を熱により溶融すればよいことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明は、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する医療用貼付材において、基材は熱可塑性樹脂からなる繊維基材又は熱可塑性樹脂からなる繊維基材とフィルム基材との積層基材であり、前記繊維基材は、熱により溶融した部分(熱溶融部)と、この熱溶融部の周囲の一部又は全部に熱により溶融していない部分(非熱溶融部)とを備え、前記熱溶融部はその貼付部位が視認可能となっていることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
前記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし8の発明が好ましい。即ち、前記請求項1に記載のものにおいて、繊維基材に設けた非熱溶融部は、基材周囲において枠状とする(請求項2)。
【0013】
さらに、前記請求項1又は2のいずれか1項に記載のものにおいて、熱溶融部が、繊維基材全体の面積の16〜85%とする(請求項3)。また、前記請求項1〜3のいずれか1項に記載のものにおいて、熱溶融部1箇所の面積が1cm2以上とする(請求項4)。さらに、前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のものにおいて、非熱溶融部の貼付材の剛軟性が10〜40mm/20mmとする(請求項5)。
【0014】
また、前記請求項1〜5のいずれか1項に記載のものにおいて、熱溶融部の可視光透過率(波長550nm)が10%以上とする(請求項6)。さらに、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載のものにおいて、基材が不織布又は不織布を含む積層基材とする(請求項7)。また、前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のものにおいて、粘着剤層が透明又は半透明の粘着剤からなるものとする(請求項8)。
【0015】
さらに、製造方法の発明としては、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する医療用貼付材の製造方法において、熱可塑性樹脂からなる繊維基材又は熱可塑性樹脂からなる繊維基材とフィルム基材との積層基材に粘着剤層を設け、次いで、基材側から熱源を接触させ、繊維基材の一部に、繊維基材を熱により溶融した部分を形成し、この熱により溶融した部分はその貼付部位が視認可能となるように形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の医療用貼付材によれば、柔軟で追従性に優れ、ある程度腰のある繊維材料を基材の周囲等に存在させることにより、貼付時には基材全体を平らなしわのない状態に維持することができるとともに、屈曲部などでも周囲部分をしわなく貼付することができる。
また、貼付材を貼付する際には、熱により溶融した部分から患部を透視しながら貼付することができるので、正確な位置に貼付することができるし、貼付後も患部の比較的広い1箇所の面積部分の鮮明な観察が可能となる。また、熱により溶融した部分も柔軟で追従性に優れるため、貼付中、違和感を生じることもない。
さらに、本発明の製造方法によれば、比較的広い1箇所の面積部分の視認化が、比較的簡単な方法で得られ、製造コストが安価となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜4に基づき、本発明の実施形態について以下に述べる。なお、同一部位については、同一の符号を用いる。 HYPERLINK "javascript:fGetImage('000003','図1','K2');" 図1は、本発明の貼付材に係る実施形態の構成図を示し、a)図は正面図、b)図はa)図のb-b線に沿う断面図である。
図1の実施形態における貼付材1は、基材2の一方の面に粘着剤層5を有し、この粘着剤層5の表面を剥離可能な粘着剤保護層6で覆う構成を有している。基材2は、不織布3とフィルム4を積層した積層基材であり、不織布3が熱により溶融した部分(以下、熱溶融部ともいう。)20を形成している。本実施例では、基材のほぼ中央部に円形でフィルム状になった熱により溶融した部分20と、基材の周囲の全部に枠状の熱により溶融していない部分(以下、非熱溶融部ともいう。)10とを設けており、基材2の熱により溶融した部分20は、貼付部位が視認可能となっている。
本実施形態では、基材2として不織布3とフィルム4の積層基材を用いているが、不織布3の単独基材にした態様でも実施可能である。
【0018】
図2は、熱溶融部および非熱溶融部のパターンを図1とは変えたもので、それ以外の部分は、図1の実施形態と同様である。
図2のa)の実施形態は、基材全体に占める熱溶融部20の割合を図1の実施形態より大きくしたもので、非熱溶融部10は、基材周囲の四隅に全体としてほぼ枠状になるように形成されている。
図2のb)の実施形態は、基材の中央部に長方形の熱溶融部20を設け、基材周囲の対向する2辺に非熱溶融部10を設けたものである。
図2のc)の実施形態は、基材のほぼ中央部に熱溶融部20を複数箇所設け、非熱溶融部10は、基材全体にわたってほぼ網状に形成された態様である。
【0019】
図3、4は、テープ状の貼付材で、本態様においてはロール状の形態にしたものである。図3の実施形態は、貼付材の長手方向に連続する熱により溶融した部分20と、貼付材の長手方向の両縁部に連続する熱により溶融していない部分10を設けたものである。本実施形態においては、粘着剤保護層を設けず、粘着剤層5を直接基材2の背面(粘着剤層が形成される面と反対側の面)に剥離可能に仮着させている。
図4の実施形態は、図3の実施形態とほぼ同じであるが、粘着剤保護層6を設けた点と、熱により溶融していない部分10の態様が異なる。即ち、図4の実施形態では、貼付材の長手方向と直行する方向に、間隔をおいて熱により溶融していない部分10を設け、1つのロールにおいて熱により溶融した部分20を連続的に複数箇所形成したものである。図4の実施形態は、例えば、切り取り線7の部分で、熱により溶融していない部分10が基材周囲に枠状になるように分離して使用することができる。
【0020】
本発明においては、繊維基材の熱溶融部は、繊維基材のほぼ中央部にフィルム状に形成し、非熱溶融部は、熱溶融部の周囲の一部又は全部に設けることが好ましい。非熱溶融部は、熱溶融部の周囲の50%以上の部分に設けることが好ましく、熱溶融部の周囲全部に設けることが更に好ましい。
繊維基材の非熱溶融部は、繊維基材の周囲に枠状に設けるか、繊維基材全体に網状に設けることができ、繊維基材の周囲に枠状に設けることが好ましい。繊維基材の周囲に枠状に設ける非熱溶融部は、繊維基材の周囲全体にわたっていることが好ましいが、枠の一部が欠けているものでもよい。
繊維基材の熱溶融部は、視認性を向上させるために、面状にフィルム化してある程度の大きさを有することが好ましく、繊維基材全体の面積の16〜85%を熱溶融部とすることが好ましく、繊維基材全体の面積の32〜80%を熱溶融部とすることがさらに好ましい。また、多数の比較的小さな熱溶融部を集合させて、その集合部分が全体として面状となるように繊維基材を熱により溶融してもよい。
また、繊維基材の熱溶融部は、基材繊維中に複数箇所存在させてもよく、その場合の熱溶融部1箇所の面積は、視認性の観点から1cm2以上であることが好ましく、4cm2以上であることがさらに好ましい。さらに、熱溶融部1箇所の面積は、繊維基材全体の面積に対して8%以上の領域を占めることが視認性の観点から好ましい。
【0021】
(繊維基材の材料について)
本発明の貼付材は、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有するものであり、基材には熱可塑性樹脂からなる不織布、編布、又は織布等の繊維基材を少なくとも使用する。中でも熱により溶融した時に均一なフィルム層が形成され易い不織布を基材として使用することが好ましい。
繊維基材の材料となる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリウレタン;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリスチレン;シリコーン等が挙げられる。これらの材料は基本的には単一で用いる方が好ましいが、二種類以上を混合して使用してもよい。中でも透湿性、伸縮性を有するポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマーが好ましく、ポリエステルエラストマーが特に好ましい。
【0022】
(繊維基材の物性について)
本発明において、繊維基材の目付けは10〜150g/m2であることが好ましく、10〜100g/m2であることが更に好ましい。目付けが10g/m2より低いと、基材の強度が十分でなく、使用時に繰り返しの摩擦によって破れる可能性がある。他方、目付けが150g/m2より高いと、嵩高になり皮膚に貼付したときに違和感が生じ、曲面部位への追従性が悪くなり、熱による溶融も困難となる可能性がある。
本発明において、繊維基材の厚さは15〜1,000μmであることが好ましく、15〜400μmがさらに好ましい。
【0023】
(フィルムとの積層基材について)
本発明の医療用貼付材の基材は、上記の繊維基材にフィルム基材を積層した積層基材とすることが好ましい。繊維基材にフィルム基材を積層することで、外部からの水や微生物が患部に浸入することを防ぐことができる。繊維基材と、フィルムとを積層する方法としては、熱ラミネーション、接着剤による積層などを利用できる。
積層基材に使用するフィルム基材の材料としては、上記の繊維基材の材料として使用できる熱可塑性樹脂と同様のものを挙げることができ、中でも透湿性を有するポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマーが好ましい。これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。さらに、積層するフィルムは、一層でも、二層以上でもよい。
本発明において、繊維基材と積層するフィルム基材の目付けは5〜150g/m2であることが好ましく、5〜50g/m2であることが更に好ましい。
本発明において、繊維基材と積層するフィルム基材の厚さは1〜1,000μmであることが好ましく、5〜150μmがさらに好ましい。
【0024】
(基材全般について)
本発明において、基材(熱可塑性樹脂からなる繊維基材又は熱可塑性樹脂からなる繊維基材とフィルム基材との積層基材)の伸び率は40〜1,500%であることが好ましい。基材の伸び率が上記下限未満であると、基材が皮膚の伸展に追従し難くなり貼付中に違和感が生じる恐れがあり、また外部や皮膚からの応力に対する緩衝性も低下する恐れがある。他方、基材の伸び率が前記上限より大きいと、使用中に基材に皺やよれが発生し易くなる恐れがある。
また、基材に使用する樹脂材料には、本発明の目的を損なわない程度において、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、滑剤、顔料、染料、抗菌剤等を添加することができる。
【0025】
(粘着剤層について)
本発明の貼付材は、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。用途によっては、粘着剤層を基材のもう一方の面に設け、両面粘着の貼付材としてもよい。基材として積層基材を使用する場合、粘着剤層を設けるのは、繊維基材側、フィルム基材側のどちらでもよい。使用する粘着剤は、シリコーン系、アクリル系、ゴム系、ウレタン系などが挙げられるが、耐熱性の良いシリコーン系、アクリル系が好ましく、特にシリコーン系が好ましい。また、これらの粘着剤に、親水性物質を加え、所謂ハイドロコロイド粘着剤とすると、汗や創傷からの滲出液吸収することができ、蒸れによるカブレや掻痒感を軽減することができる。
また、本発明において、使用される粘着剤は、貼付材として使用した時に視認性があることが好ましく、透明又は半透明であることが好ましい。粘着剤は、光透過率(波長550nm)が10%以上あることが好ましく、15%以上あることがさらに好ましい。
本発明において、粘着剤層は、その厚さが10〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることが更に好ましい。また、粘着剤の塗工重量でいうと10〜500g/m2の範囲が好ましく、20〜150g/m2の範囲が更に好ましい。粘着剤層の厚さがこの範囲内にあることにより、貼付時に適度な粘着力を示し、体表面等に対する密着性及び追従性にも優れ、良好な透湿度を得ることができる。
【0026】
(製造方法)
次に、本発明の医療用貼付材の製造方法について説明する。本発明の医療用貼付材の製造方法としては、概略、以下の2つの方法を利用できる。
1)基材に粘着剤層を設け、次いで、基材側(粘着剤層が設けられていない側)から、熱溶融部の形成を必要とする所定部位に熱源を接触させ、繊維基材の一部に熱溶融部を形成すると共に、その熱溶融部の周囲に非熱溶融部を形成する方法。
2)基材における熱溶融部の形成を必要とする所定部位に熱源を接触させ、繊維基材の一部に熱溶融部を形成すると共に、その熱溶融部の周囲に非熱溶融部を形成し、次いで、その基材に粘着剤層を設ける方法。
【0027】
本発明の医療用貼付材の具体的な製造方法は、次の通りである。
基材に粘着剤層を設ける方法としては、例えば、粘着剤を基材上に直接塗工する方法、粘着剤を粘着剤保護層に塗工しそれを基材に貼り合わせる方法等が挙げられる。
粘着剤の基材又は粘着剤保護層への塗工方法は、特に限定されず、コンマダイレクト、ナイフコーター、グラビアダイレクト等の公知の塗工方式を利用して、塗工パターンや厚さを制御することができる。粘着剤層の塗工パターンとしては、基材の表面を部分的に被覆してもよいし、全面を被覆してもよく、格子状、ネット状、粒状、唐草模様等の任意の形態を選択できる。
本発明の貼付材においては、基材と粘着剤層との接着性を向上させるために、基材に表面処理又はプライマー処理を施してもよい。基材の表面処理としては、例えば、エンボス加工、サンドマット加工、コロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ処理等が挙げられる。
【0028】
繊維基材を溶融してフィルム状にする方法としては、ヒートシール、インパルスシール、超音波シール(超音波ウェルダー)、高周波シール(高周波ウェルダー)等の公知の熱加工方法が利用でき、ヒートシールによる方法が好ましい。ヒートシールを利用する場合、熱プレス装置に溶融させる形状の金型を装着し、温度150〜250℃、圧力19.5〜50N/cm2、プレス時間0.2〜10秒程度で基材に金型を接触させることで、基材の所望の位置、大きさに熱により溶融して視認性が付与された部分が形成される。
また、上記1)の製造方法において、四角形、円形等の所定形状の貼付材を製造する場合には、特定の方向に連続的に延びる基材に粘着剤層を連続的に設け、その連続基材から所定形状の貼付材を打抜くと同時に基材に熱源を接触させ、繊維基材の溶融化と貼付材の打抜きとを一度に行える方法が利用でき、この方法は、製造効率の観点から特に好ましい。
【0029】
(医療用貼付材の特性)
このようにして、得られた本発明の医療用貼付材は、貼付材の繊維基材を熱により溶融した部分が透明又は半透明となっていることが好ましく、貼付材の繊維基材を熱により溶融した部分の可視光透過率(波長550nm)が10%以上あることが好ましく、15%以上あることがさらに好ましい。熱により溶融した部分の貼付材の可視光透過率が10%以上あることで、良好な視認性が得られる。
本発明の医療用貼付材は、熱により溶融していない部分の剛軟性が10〜40mm/20mmであることが好ましく、15〜35mm/20mmであることがさらに好ましい。剛軟性がこの範囲にあることにより、皮膚へ貼付する前も取扱いやすく、皮膚に貼付した後も違和感が少ない。また、医療用貼付材の熱により溶融した部分の剛軟性は、熱により溶融していない部分の剛軟性より低いことが好ましく、20mm/20mm以下であることが好ましい。
本発明の医療用貼付材は、40%変位時の引張荷重が10.0N/25mm以下であることが好ましく、1.0〜10.0N/25mmの範囲にあることがさらに好ましい。40%変位時の引張荷重が10.0N/25mm以下であることにより、本発明の医療用貼付材は、皮膚の伸展によく追従し、皮膚への貼付中に違和感や物理的刺激を与えることがない。1.0N/25mm未満であると、医療用貼付材は、皺がよりやすくなり、貼付時に取扱いにくくなる場合がある。
【0030】
本発明の医療用貼付材の形態は、特に限定されず、三角形、四角形、菱形等の多角形や、円形、楕円形、又はこれらの形状を適宜組み合わせたシート状の形態や、特定の方向に連続的に製造したロール状の形態が利用できる。
また、本発明の医療用貼付材は、所望により、粘着剤層を保護するために、粘着剤層の表面に剥離可能な粘着剤保護層を設けてもよい。粘着剤保護層としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムや、シリコーン系離型剤、フッ素、フッ素化合物等による剥離処理をしたフィルムや、紙を使用できる。また、これらの保護フィルムにエンボス等の凹凸を設けてもよい。
また、粘着剤保護層を設けなくとも、連続的に製造した貼付材の粘着剤層を基材背面(基材の粘着剤層が存在する側とは反対側の面)に剥離可能に仮着し、ロール状の形態にすることもできる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、貼付材の各特性は、以下の方法により評価した。
【0032】
〔熱により溶融した繊維基材の面積割合〕
繊維基材全体の面積に対する熱により溶融された部分の面積の割合を算出した。なお、エンボス加工のように、多数の小さな熱溶融された部分が点在し、その1つ1つの点部分が視認性を有していない場合は、その点部分は熱により溶融された部分として算出しないこととした。ただし、多数の比較的小さな熱溶融部を集合させて、その集合部分が全体として面状となるようにフィルム化した場合は、その面状の全体部分を熱により溶融した部分とみなして算出することとした。
【0033】
〔可視光透過率〕
紫外可視分光光度計(島津製作所製、UV−1650PC)を使用し、波長550nmにおける貼付材の透過率を測定した。
【0034】
〔貼付材の視認性〕
貼付材を貼付したときに、被着体の表面部分が貼付材を通して視認できるかを、明瞭に視認できる○、多少視認できる△、視認できない×、の3段階で評価した。
被着体には、黒地に青色の格子線を引いた紙を用いた。なお、被着体の平面図を図7−1に示す。また、上記被着体に貼付材を貼り付け、表側から貼付材を見ることにより貼付材の視認性の評価を行なった結果を示す図を、図7−2〜図7−8に示す。
【0035】
〔貼付材の剛軟性〕
JIS L 1096「剛軟性 A法(45°カンチレバー法)」に準じて、貼付材の剛軟性を評価した。
【0036】
〔貼付材の40%変位時の引張荷重〕
JIS Z 0237「引張強さ及び伸び」に準じて、貼付材の40%変位時の荷重(N/25mm)を測定した。
【0037】
〔実施例1〕
熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムと熱可塑性ポリエステルエラストマー不織布(ユニセル社製 ヌーベランR860)とのエンボス加工による積層基材(目付け70g/m2)に、剥離紙上に厚さ70μmにて塗布したシリコーン粘着剤層を基材のフィルム側に貼り合わせた。その後、195℃に加熱した円形の金型を貼付材の中央に不織布側から7秒間押し当てて、基材の不織布部分をフィルム化させて図1に示すような本発明の医療用貼付材を得た。不織布のフィルム化されていない部分は、貼付材の周囲に枠状に形成された。各特性を評価した結果を図5に示す。また、本実施例の貼付材について視認性の評価を行なった結果を示す図を、図7−2に示す。図7−2によれば、左上の熱溶融部においては、被着体の格子線が明瞭に観察できるが、その他の非熱溶融部においては、エンボス加工があるにも関わらず、被着体の格子線が殆ど観察できないことが分かる。
【0038】
〔実施例2〕
エンボス加工した熱可塑性ポリエステルエラストマー不織布基材(ユニセル社製 ヌーベランR668)(目付け80g/m2)に、剥離紙上に厚さ70μmにて塗布したシリコーン粘着剤層を貼り合わせた。その後、実施例1と同様の条件で不織布をフィルム化させて本発明の医療用貼付材を得た。不織布のフィルム化されていない部分は、貼付材の周囲に枠状に形成された。各特性を評価した結果を図5に示す。また、貼付材の視認性の評価を示す図を、図7−3に示す。
【0039】
〔実施例3〕
粘着剤層として、剥離紙上に厚さ60μmで塗布したアクリル粘着剤を使用する他は、実施例1と同様の方法で、本発明の医療用貼付材を得た。各特性を評価した結果を図5に示す。また、貼付材の視認性の評価を示す図を、図7−4に示す。
【0040】
〔実施例4〕
熱可塑性ポリウレタンエラストマー不織布基材(クラレ社製 ミクロフレックスUC0050)(目付け50g/m2)に、剥離紙上に厚さ50μmにて塗布したアクリル粘着剤層を貼り合わせた。その後、実施例1と同様の条件で不織布をフィルム化させて本発明の医療用貼付材を得た。不織布のフィルム化されていない部分は、貼付材の周囲に枠状に形成された。各特性を評価した結果を図5に示す。また、貼付材の視認性の評価を示す図を、図7−5に示す。
【0041】
〔実施例5〕
エンボス加工を施した熱可塑性ポリウレタンエラストマー不織布基材(KBセーレン社製 エスパンシオーネ)とポリウレタンフィルム基材とをウレタン系接着剤でラミネートした積層基材(目付け60g/m2)に、剥離紙上に厚さ40μmにて塗布したアクリル粘着剤層を基材のフィルム側に貼り合わせた。その後、190℃に加熱した円形の金型を貼付材の中央に不織布側から7秒間押し当てて、基材の不織布部分をフィルム化させて本発明の医療用貼付材を得た。不織布のフィルム化されていない部分は、貼付材の周囲に枠状に形成された。各特性を評価した結果を図5に示す。また、貼付材の視認性の評価を示す図を、図7−6に示す。
【0042】
〔比較例1〕
芯がポリエステルで鞘がポリエチレンの複合不織布(ユニチカ社製 エルベス)とポリエチレンフィルムを熱エンボス加工により積層した積層基材(目付け55g/m2)に、剥離紙上に厚さ50μmにて塗布したアクリル粘着剤層を貼り合わせた。各特性を評価した結果を図6に示す。また、貼付材の視認性の評価を示す図を、図7−7に示す。この場合には、被着体の格子線は視認できない。
【0043】
〔比較例2〕
ポリエステル不織布(バイリーン社製 LMW9004/PET2)とポリエステルフィルムとの積層基材(目付け42g/m2)に、剥離紙上に厚さ70μmにて塗布したシリコーン粘着剤を貼り合わせた。この中央部分に、220度に加熱した金型を7秒間押し当てたが、不織布は熱可塑性樹脂ではないために溶融しなかった。各特性を評価した結果を図6に示す。また、貼付材の視認性の評価を示す図を、図7−8に示す。この場合も、被着体の格子線は視認できない。
【0044】
上記のように、本発明の実施例によれば、比較的広い1箇所の面積部分の視認化が、比較的簡単な方法で実現できることが分かる。また、図5、6の結果を含めて、次のことが言える。
【0045】
単なるエンボス加工では、視認性は付与されない(実施例1〜3と5の熱溶着していない部分、比較例1参照)。
熱可塑性樹脂ではない不織布を使用すると、熱処理してもフィルム化が起こらず視認性が付与されない(比較例2参照)。
それに対し、本発明の貼付材は視認性が良好で、且つ、所定の引張り荷重や剛軟性を有する基材を使用することで、取扱い性も良く、皮膚に貼付した場合の違和感もないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る貼付材の図。
【図2】本発明の他の実施形態の一例に係る貼付材の図。
【図3】本発明の他の実施形態の一例に係る貼付材の図。
【図4】本発明の他の実施形態の一例に係る貼付材の図。
【図5】本発明の実施例の評価結果を示す図。
【図6】本発明の比較例の評価結果を示す図。
【図7−1】本発明の視認性の評価に用いた被着体の平面図。
【図7−2】本発明の実施例1の視認性の評価を示す図。
【図7−3】本発明の実施例2の視認性の評価を示す図。
【図7−4】本発明の実施例3の視認性の評価を示す図。
【図7−5】本発明の実施例4の視認性の評価を示す図。
【図7−6】本発明の実施例5の視認性の評価を示す図。
【図7−7】本発明の比較例1の視認性の評価を示す図。
【図7−8】本発明の比較例2の視認性の評価を示す図。
【符号の説明】
【0047】
1 貼付材
2 基材
3 不織布
4 フィルム
5 粘着剤層
6 粘着剤保護層
7 切り取り線
10 熱により溶融していない部分(非熱溶融部)
20 熱により溶融した部分(熱溶融部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する医療用貼付材において、基材は熱可塑性樹脂からなる繊維基材又は熱可塑性樹脂からなる繊維基材とフィルム基材との積層基材であり、前記繊維基材は、熱により溶融した部分(熱溶融部)と、この熱溶融部の周囲の一部又は全部に熱により溶融していない部分(非熱溶融部)とを備え、前記熱溶融部はその貼付部位が視認可能となっていることを特徴とする医療用貼付材。
【請求項2】
繊維基材に設けた非熱溶融部は、基材周囲において枠状となっていることを特徴とする請求項1に記載の医療用貼付材。
【請求項3】
熱溶融部が、繊維基材全体の面積の16〜85%であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の医療用貼付材。
【請求項4】
熱溶融部1箇所の面積が1cm2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用貼付材。
【請求項5】
非熱溶融部の貼付材の剛軟性が10〜40mm/20mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用貼付材。
【請求項6】
熱溶融部の可視光透過率(波長550nm)が10%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用貼付材。
【請求項7】
基材が不織布又は不織布を含む積層基材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療用貼付材。
【請求項8】
粘着剤層が透明又は半透明の粘着剤からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用貼付材。
【請求項9】
基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する医療用貼付材の製造方法において、熱可塑性樹脂からなる繊維基材又は熱可塑性樹脂からなる繊維基材とフィルム基材との積層基材に粘着剤層を設け、次いで、基材側から熱源を接触させ、繊維基材の一部に、繊維基材を熱により溶融した部分を形成し、この熱により溶融した部分はその貼付部位が視認可能となるように形成することを特徴とする医療用貼付材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図7−7】
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【図7−8】
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【公開番号】特開2008−73163(P2008−73163A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254534(P2006−254534)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】