医療用針
【課題】伸縮部及び板状部材を備える医療用針において、板状部材を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能な医療用針を提供する。
【解決手段】患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、湾曲針10と、基部20と、z軸方向に沿って伸縮可能に構成された伸縮部30と、伸縮部30における基部20とは反対側に接続配置され、湾曲針10を通過させる通過部62を有する板状部材60とを備える医療用針1。伸縮部30は、伸縮部30を最も伸ばしたときのz軸方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部から湾曲部までの長さ以上となるように構成されている。板状部材60は、少なくともアクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成されている。
【解決手段】患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、湾曲針10と、基部20と、z軸方向に沿って伸縮可能に構成された伸縮部30と、伸縮部30における基部20とは反対側に接続配置され、湾曲針10を通過させる通過部62を有する板状部材60とを備える医療用針1。伸縮部30は、伸縮部30を最も伸ばしたときのz軸方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部から湾曲部までの長さ以上となるように構成されている。板状部材60は、少なくともアクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用針に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針として、従来、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部を有する湾曲針と、パンタグラフのように伸縮する伸縮部と、湾曲針を通過させる通過部を有する板状部材とを備える医療用針が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。伸縮部の一端は、湾曲針の基端部側に設けられた基部と接続されており、伸縮部の他端は、板状部材と接続されている。
【0003】
従来の医療用針によれば、上記した伸縮部を備えているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができる。このため、医療用針を使用する者(医療従事者及び患者本人を含む。以下、使用者という。)が誤って使用後の医療用針を自分に刺してしまう事故(いわゆる誤刺)の発生を防止することができる。
また、従来の医療用針によれば、上記した板状部材を備えているため、患者の皮膚から湾曲針を抜く際、板状部材の上面(患者の皮膚に接しない方の面)を上から押さえることにより、比較的スムーズに湾曲針を抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−369884号公報
【特許文献2】特開2006−61379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の医療用針においては、患者の皮膚から湾曲針を抜くにあたって患者の皮膚に向けて板状部材を押さえたとき、板状部材を押さえる力が必要以上に強いと、アクセスポートの上面と板状部材との間で皮膚が挟まれることから、患者が痛がる可能性がある。反対に、板状部材を押さえる力を弱くしすぎてしまうと、伸縮部が伸びきらない状態で患者の皮膚から湾曲針が抜けてしまう場合があり得るため、誤刺の発生を防止するという観点から好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、伸縮部及び板状部材を備える医療用針において、板状部材を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能な医療用針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、上記目的を達成するため、患者の皮膚から湾曲針を抜くにあたって患者の皮膚に向けて板状部材を押さえたときに、板状部材によって押圧されている皮膚のうち、一体どの部分が痛みをより強く感じる箇所であるのかを徹底的に調査した。その結果、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分(後述する図11(a)の破線Aで囲んだ部分。)が、痛みをより強く感じる箇所であるという知見を得た。アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分が、他の部分と比較して痛みをより強く感じる理由としては、板状部材を押さえる力が、アクセスポートの上面端部に集中するからであると考えられる。
【0008】
本発明の発明者は、以上の知見に基づいて、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分で感じる痛みを軽減するための手段を探るべく、さらなる研究を重ねた。その結果、板状部材として、少なくともアクセスポートの上面端部の位置で第1方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材を用いれば、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みを軽減することができ、もって、板状部材を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
[1]すなわち、本発明の医療用針(1)は、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、前記板状部材(60)は、少なくとも前記アクセスポートの上面端部の位置近傍で前記第1方向に沿って屈曲可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
このため、本発明の医療用針によれば、板状部材は、少なくともアクセスポートの上面端部の位置近傍で第1方向に沿って屈曲可能に構成されているため、板状部材を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材の端部を、患者の皮膚側の方向に向けて屈曲させることが可能となる。これにより、板状部材を押さえる力がアクセスポートの上面端部に集中してしまうのを抑制することができるため、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みを軽減することができる。
また、上記の構成からなる板状部材を用いることによって、板状部材を押さえる力を弱くしすぎることも無いため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができ、使用者による誤刺の発生を効果的に防止することができる。
【0011】
したがって、本発明の医療用針は、板状部材を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能な医療用針となる。
【0012】
[2]本発明の医療用針(1)は、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、前記板状部材(60)を、前記通過部(62)を含み前記アクセスポートの上面端部間に対応する中央領域(CA)と、前記アクセスポートの上面端部から前記板状部材(60)の端縁までに対応する端部領域(EA)との2つの領域に分割したとき、前記板状部材(60)は、少なくとも前記中央領域(CA)と前記端部領域(EA)との境界部分で、前記第1方向に沿って屈曲可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
このため、本発明の医療用針によれば、板状部材は、少なくとも中央領域と端部領域との境界部分で、第1方向に沿って屈曲可能に構成されているため、板状部材を押さえたときに、板状部材の端部領域を、患者の皮膚側の方向に向けて屈曲させることが可能となる。これにより、板状部材を押さえる力がアクセスポートの上面端部に集中してしまうのを抑制することができるため、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みを軽減することができる。
また、上記の構成からなる板状部材を用いることによって、板状部材を押さえる力を弱くしすぎることも無いため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができ、使用者による誤刺の発生を効果的に防止することができる。
【0014】
したがって、本発明の医療用針は、板状部材を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能な医療用針となる。
【0015】
[3]上記[2]に記載の医療用針(1)においては、前記中央領域(CA)の最大長さが、13mm〜22mmの範囲に設定されていることが好ましい。
【0016】
市場に流通するアクセスポートの上面長さは、大体13mm〜22mm程度であるため、上記のように構成することにより、板状部材の端部(又は端部領域)を、患者の皮膚側の方向に向けて確実に屈曲させることが可能となる。
【0017】
この明細書において「アクセスポートの上面長さ」とは、アクセスポートの上面における一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味するものである。アクセスポートの上面形状が例えば円である場合には、アクセスポートの上面長さはアクセスポート上面の直径と等しく、アクセスポートの上面形状が例えば長方形又は正方形である場合には、アクセスポートの上面長さはアクセスポート上面の対辺間の距離と等しい。
なお、アクセスポートの上面が、上面中央に配置されたセプタムと当該セプタムの周囲を囲むように設けられたポート筐体部とで構成されている場合には、アクセスポートの上面長さは、当該ポート筐体部上面の一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味する。アクセスポートの上面が、セプタムのみで構成されている場合には、アクセスポートの上面長さは、セプタム上面の一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味する。
また、アクセスポートの上面端縁に丸め処理(ラウンド加工)が施されている場合には、アクセスポートの上面長さは、アクセスポートの最上面における一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味するのではなく、アクセスポートの最上面より若干低い位置での(切断面における)一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味する。
【0018】
[4]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の医療用針(1)においては、前記板状部材(60)には、前記アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に少なくとも1つの溝部(64a,64b)が設けられていることが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、患者の皮膚に向けて板状部材を押さえたときに、溝部の部分で板状部材を屈曲させることが可能となるため、本発明の医療用針を好適に実現することが可能となる。
【0020】
[5]上記[4]に記載の医療用針(1)においては、前記溝部(64,64b)は、前記板状部材(60)における前記基部(20)側の面(60w)に配置されていることが好ましい。
【0021】
基部側の面(上面)に溝部が配置されていると、皮膚側の面(下面)に溝部が配置されている場合に比べて、板状部材を押さえたときに板状部材が屈曲しやすいため、上記のように構成することにより、板状部材を押さえる力がアクセスポートの上面端部に集中してしまうのをさらに抑制することができ、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みをさらに軽減することができる。
【0022】
[6]上記[4]に記載の医療用針(3)においては、前記溝部(364a,364b)は、前記板状部材(360)における前記基部(20)とは反対側の面(360s)に配置されていることが好ましい。
【0023】
このように構成することにより、上述した板状部材を押さえたときの皮膚への痛みを軽減する効果及び使用者による誤刺発生を防止する効果に加えて、患者の皮膚に板状部材を配置したとき、溝部によって患者の皮膚と板状部材との間の通気性を確保することができる。このため、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響を低減することができ、このような蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することが可能となる。また、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響を低減することができることから、患者の皮膚と板状部材との間における菌の繁殖を抑制することが可能となる。
【0024】
[7]上記[6]に記載の医療用針(5)においては、前記板状部材(560)における前記基部(20)とは反対側の面(560s)には、複数の突起(566)が形成されていることが好ましい。
【0025】
このように構成することにより、溝部だけではなく複数の突起によっても患者の皮膚と板状部材との間の通気性を確保することができるため、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響をさらに低減することができ、結果として、蒸れの影響に起因した不快感の発生をさらに抑制することが可能となるとともに、患者の皮膚と板状部材との間における菌の繁殖をさらに抑制することが可能となる。
また、患者の皮膚に医療用針を穿刺するにあたって医療用針を配置する際、複数の突起が滑り止めの役目も果たすことから、医療用針を配置しやすく、皮膚に穿刺しやすいという効果もある。
【0026】
[8]上記[4]〜[7]のいずれか1つに記載の医療用針(1)においては、前記板状部材(60)における前記基部(20)とは反対側の面(60s)上で互いに交差する2方向のうち、前記湾曲針における基端部(12)側の部分から前記湾曲部(14)に沿った方向と同一方向を第2方向とし、他方を第3方向としたとき、前記伸縮部(30)は、前記第3方向に沿って広がるように構成されたパンタグラフ状の伸縮部材であって、前記板状部材(60)は、前記第3方向に長辺方向を有する略長方形状であり、前記溝部(64a,64b)は、前記板状部材(60)における短辺方向に沿って伸びる直線状の溝であることが好ましい。
【0027】
板状部材における短辺方向に沿って伸びる直線状の溝であることから、板状部材を押さえたときに板状部材を比較的屈曲させやすいという効果がある。
また、伸縮部を折り畳んだときに伸縮部の広がる方向と板状部材の長辺方向とを同じ方向に揃えることによって、両者が互いに異なる方向とした場合に比べて、コンパクトな医療用針を実現することができる。
さらにまた、板状部材が略長方形状であることにより、テープ等を用いて患者の皮膚に医療用針を固定する際に、固定しやすい(テープ止めがしやすい)という効果もある。
【0028】
なお、この明細書において「略長方形状」とは、長方形状だけではなく、長方形の四隅の角のうち少なくとも1つが丸くなっている形状や、四辺のうち少なくとも一辺の一部が内側に凹んだ形状なども含む。
【0029】
[9]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の医療用針(6)においては、前記板状部材(660)は、前記通過部(662)から前記板状部材(660)の端縁(660e1,660e2)に向かって波状に湾曲する湾曲部(664a,664b)をさらに有することが好ましい。
【0030】
このように構成することにより、患者の皮膚に向けて板状部材を押さえたときに、湾曲部の部分で板状部材を屈曲させることが可能となるため、本発明の医療用針を好適に実現することが可能となる。
【0031】
[10]上記[9]に記載の医療用針(6)においては、前記板状部材(660)は、前記通過部(662)を含む所定領域に形成された平面部(668)をさらに有することが好ましい。
【0032】
このように構成することにより、患者の皮膚に医療用針を穿刺するにあたって医療用針を配置する際、医療用針を安定して配置することができ、皮膚に穿刺しやすいという効果がある。
【0033】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】医療用針1の斜視図。
【図2】図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図。
【図3】医療用針1の正面図。
【図4】医療用針1の側面図。
【図5】第1及び第2伸縮部材32,36が伸縮する様子を説明するために示す図。
【図6】溝部64aの部分拡大断面図。
【図7】板状部材60を説明するために示す図。
【図8】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図9】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図10】医療用針1を説明するために示す図。
【図11】比較例に係る医療用針900及び実施形態1に係る医療用針1を説明するために示す図。
【図12】医療用針2の斜視図。
【図13】医療用針2の正面図。
【図14】板状部材260の上面図。
【図15】医療用針3の斜視図。
【図16】図15とは異なる方向から見たときの医療用針3の斜視図。
【図17】医療用針3を説明するために示す図。
【図18】医療用針4の斜視図。
【図19】図18とは異なる方向から見たときの医療用針4の斜視図。
【図20】医療用針5の斜視図。
【図21】医療用針5の正面図。
【図22】板状部材560の底面図。
【図23】医療用針5を説明するために示す図。
【図24】医療用針6の斜視図。
【図25】医療用針6の正面図。
【図26】変形例1〜3の溝部164a〜164cを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の医療用針について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0036】
[実施形態1]
まず、実施形態1に係る医療用針1の構成について、図1〜図9を用いて詳細に説明する。
【0037】
図1は、医療用針1の斜視図である。図2は、図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図である。図3は、医療用針1の正面図である。図4は、医療用針1の側面図である。なお、図1〜図4においては、針カバー部材80の図示を省略している。
【0038】
図5は、第1及び第2伸縮部材32,36が伸縮する様子を説明するために示す図である。図5(a)は第1及び第2伸縮部材32,36を最も折り畳んだ状態のときの医療用針1の正面図であり、図5(e)は第1及び第2伸縮部材32,36を最も伸長させた状態のときの医療用針1の正面図であり、図5(b)〜図5(d)は図5(a)に示す状態から図5(e)に示す状態になるまでの途中経過を示す医療用針1の正面図である。
【0039】
図6は、溝部64aの部分拡大断面図である。図7は、板状部材60を説明するために示す図である。図7(a)は板状部材60の正面図であり、図7(b)は板状部材60の上面図である。なお、発明の理解を容易にするため、図7(a)においては、板状部材60以外の部材を破線で図示し、図7(b)においては、板状部材60以外の部材を捨象して板状部材60のみを図示している。
【0040】
図8及び図9は、針カバー部材80を説明するために示す図である。図8(a)は針カバー部材80の正面図であり、図8(b)は針カバー部材80の側面図であり、図8(c)は針カバー部材80の上面図であり、図8(d)は針カバー部材80の底面図である。図9(a)は針カバー部材80の斜視図であり、図9(b)は針カバー部材80を装着したときの医療用針1の斜視図である。
【0041】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれx軸方向、y軸方向、z軸方向とする。x軸方向とは「第3方向」のことであり、y軸方向とは「第2方向」のことであり、z軸方向とは「第1方向」のことである。x軸方向は、板状部材60の長辺方向と同じ方向であり、y軸方向は、板状部材60の短辺方向と同じ方向(または、基部20の長手方向と同じ方向)であり、z軸方向は、湾曲針10の湾曲部14から先端部16に沿った方向(または、板状部材60における基部20側の面に垂直な方向)である。
【0042】
実施形態1に係る医療用針1は、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、図1〜図4に示すように、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部14を有する湾曲針10と、湾曲針10の一部が植設された基部20と、基部20に設けられ、パンタグラフ状に伸縮可能に構成された伸縮部30と、伸縮部30における基部20とは反対側に接続配置された板状部材60と、基部20に設けられた翼部70と、針カバー部材80(図8及び図9参照。)とを備える。
【0043】
湾曲針10は、図4に示すように、基端部12と、例えば90度に湾曲した湾曲部14と、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートAP(後述する図11(b)参照。)に穿刺される先端部16とを有する。基端部12から湾曲部14までは、y軸方向に平行な直管状であり、湾曲部14から先端部16の手前までは、z軸方向に平行な直管状である。先端部16は、コアリング(アクセスポートにおけるセプタムの穴あきや削りカスの発生)防止のために若干屈曲した構成となっている。
【0044】
基部20は、湾曲針10の基端部12及び湾曲部14を覆うように構成されている。また、基部20は、管状のチューブ接続部22を有し、チューブ接続部22の部分で図示しないチューブに接続可能に構成されている。
【0045】
伸縮部30は、湾曲針10を間にして対向配置された第1伸縮部材32及び第2伸縮部材36を有する。第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、端部が基部20及び板状部材60(板状部材60における基部20側の面60w)に接続されており、屈曲部34,38の部分で略「くの字」状に屈曲可能に構成されている(図3参照。)。また、第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、第1及び第2伸縮部材32,36の各端部と基部20及び板状部材60との接続部分においても、屈曲可能に構成されている。このように構成された第1及び第2伸縮部材32,36が湾曲針10を間にして対向配置されているため、図5(a)〜図5(e)に示すように、x軸方向に沿って広がるように又は狭まるように、パンタグラフ状に伸縮することができる。
また、伸縮部30は、第1及び第2伸縮部材32,36が広がる方向が、後述する板状部材60の長辺方向と同じ方向となるように配置されている。
【0046】
伸縮部30は、図5(e)から分かるように、伸縮部30(第1及び第2伸縮部材32,36)を最も伸ばしたときのz軸方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部16から湾曲部14までの長さ以上となるように構成されている。
【0047】
板状部材60は、図1、図2及び図7(b)に示すように、略長方形状の板状部材であり、長方形の四隅の角は丸め処理が施されている。板状部材60は、略中央部に形成され、湾曲針10を通過させる通過部62と、板状部材60における基部20側の面60wに配置された溝部64a,64bとを有する。通過部62は、スリット状(切れ込み状)の通過部である。
【0048】
溝部64a,64bは、板状部材60の短辺方向(y軸方向)に沿って伸びる直線状の溝であって、通過部62から短辺側の一方端縁60e1までの間の所定位置に1つ、通過部62から短辺側の他方端縁60e2までの間の所定位置に1つ、計2つ配置されている。また、溝部64a,64bは、板状部材60における基部20側の面60wに配置されている。溝部64aは、図6に示すように、断面丸形状(半円形状)である。溝部64bの断面形状も、溝部64aと同様である。
【0049】
図7に示すように、板状部材60を、通過部62を含む中央領域CAと、板状部材60の端部側に位置する端部領域EAとの2つの領域に分割したとき、溝部64a,64bは、中央領域CAと端部領域EAとの境界部分にそれぞれ配置されている。また、中央領域CAは、通過部62を含みアクセスポートAPの上面端部a1,a2間に対応しており、端部領域EAは、アクセスポートAPの上面端部a1,a2から板状部材60の各端縁60e1,60e2までに対応している(図7及び後述する図11(b)参照。)。
【0050】
また、図7を参照して、板状部材60のx軸方向に沿った長さ(全体長さ)をLとし、短辺側の一方端縁60e1から溝部64aの中間位置までのx軸方向に沿った長さをL1とし、溝部64aの中間位置から溝部64bの中間位置までのx軸方向に沿った長さをL2とし、溝部64bの中間位置から短辺側の他方端縁60e2までのx軸方向に沿った長さをL3とし、溝部64a,64bのx軸方向に沿った幅をGWとしたとき、板状部材60は、例えば、L=44mm、L1=L3=11mm、L2=22mm、GW=3.2mmに設定されている。また、図面による説明は省略するが、中央領域CAのx軸方向に沿った長さは、例えば18.8mmに設定されており、端部領域EAのx軸方向に沿った長さは、例えば9.4mmに設定されている。なお、ここに示した長さは、あくまでも一例であり、これらの数値は、アクセスポートの大きさに合わせて適宜変更してもよい。
【0051】
翼部70は、図1〜図3に示すように、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材であって、略矩形状の把持部72,74と、基部20と各把持部72,74との間に配置され、把持部72,74の厚みよりも薄く形成された薄肉部77,78とを有する。把持部72,74は、基部20と薄肉部77,78との接続部分を軸として所定角度回動可能に構成されている(後述する図10(a1)〜図10(c1)及び図10(a2)〜図10(c2)参照。)。薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、翼部70を把持する際に、基部20と薄肉部77,78とが干渉してしまうのを抑制することができ、結果として、翼部70を把持しやすくなる。また、薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、把持部72,74を回動させやすいという効果もある。
【0052】
基部20、伸縮部30、板状部材60及び翼部70は、同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなり、射出成形することによって形成されている。
【0053】
針カバー部材80は、図8及び図9に示すように、所定の厚みを残して中身がくり抜かれた、正面視略T字状の部材である。針カバー部材80は、伸縮部30を折り畳んだ状態で翼部70、伸縮部30及び板状部材60を格納可能な第1格納部82と、伸縮部30を折り畳んだ状態で湾曲針10(の先端部16)を格納可能な第2格納部84とを有する。第1格納部82の上面には、基部20の位置に対応して切り欠き83が設けられている。伸縮部30を折り畳んだ状態とすると、図9(b)から分かるように、翼部70、伸縮部30及び板状部材60が第1格納部82に格納され、湾曲針10(の先端部16)が第2格納部84に格納される。
【0054】
実施形態1に係る医療用針1の使用方法について、図10を用いて詳細に説明する。
図10は、医療用針1を説明するために示す図である。図10(a1)〜図10(e1)は医療用針1を使用したときの各状態を示す正面図であり、図10(a2)〜図10(e2)は図10(a1)〜図10(e1)に示す状態のときの斜視図である。
【0055】
医療用針1を使用する際には、まず、針カバー部材80が装着された状態の医療用針1(図9(b)参照。)から、針カバー部材80を取り外す。
次に、翼部70の把持部72,74を把持し、把持部72,74が接触するまで翼部70を回動させる(図10(a1)〜図10(c1)及び図10(a2)〜図10(c2)参照。)。
そして、把持部72,74を把持した状態で、患者の皮膚Sの下に埋め込まれたアクセスポートAPのセプタムP2(後述する図11(b)参照。)に湾曲針10を穿刺する。穿刺後は、必要に応じて、把持部72,74を広げて把持部72,74の上からテープ止めを行う。
【0056】
患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜くときは、テープ止めを行った場合はテープを剥がして、板状部材60を押さえながら把持部72,74を摘まみ上げ、患者の皮膚Sから湾曲針10を引き抜く(図10(d1)及び図10(e1)並びに図10(d2)及び図10(e2)参照。)。
【0057】
なお、患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜く方法としては、上述の方法に限定されない。図示による説明は省略するが、各把持部72,74を第1及び第2伸縮部材32,36に沿わせる(板状部材60側に垂らす)ようにして、第1及び第2伸縮部材32,36と把持部72,74とを一緒に摘まみ上げてもよい。
【0058】
比較例に係る医療用針900をもとにして、実施形態1に係る医療用針1をさらに詳細に説明する。
図11は、比較例に係る医療用針900及び実施形態1に係る医療用針1を説明するために示す図である。図11(a)は比較例に係る医療用針900の場合において板状部材960を押さえたときの様子を模式的に示す図であり、図11(b)は実施形態1に係る医療用針1の場合において板状部材60を押さえたときの様子を模式的に示す図である。なお、図11においては、発明の理解を容易にするため、アクセスポートAPの大きさや、患者の皮膚SからアクセスポートAPまでの深さ(距離)などはある程度誇張して図示している。
【0059】
なお、比較例に係る医療用針900及び実施形態1に係る医療用針1の説明で用いるアクセスポートAPは、図11に示すように、アクセスポートAPの上面が、上面中央に配置されたセプタムP1と、セプタムP1の周囲を囲むように設けられたポート筐体部P2とで構成されているものである。また、この場合のアクセスポートAPの上面長さは、ポート筐体部P2上面の一方端縁(符号a1参照。)から他方端縁(符号a2参照。)までの距離のことを指す。
【0060】
比較例に係る医療用針900は、基本的には実施形態1に係る医療用針1と良く似た構成を有するが、図11(a)に示すように、板状部材960に溝部が配置されていない点で実施形態1に係る医療用針1とは異なる。
【0061】
このため、比較例に係る医療用針900によれば、患者の皮膚Sから湾曲針10を抜くにあたって患者の皮膚Sに向けて板状部材960を押さえたとき、板状部材960を押さえる力が、アクセスポートAPの上面端部a1,a2に集中するため、アクセスポートAPの上面端部a1,a2と板状部材960との間で挟まれている部分(図11(a)の破線Aで囲んだ部分。)において、患者が痛みを強く感じてしまう可能性がある。患者が感じる痛みを弱めるために板状部材960を押さえる力を弱めた場合、その力を弱くしすぎてしまうと、伸縮部30(第1及び第2伸縮部材32,36)が伸びきらない状態で患者の皮膚Sから湾曲針10が抜けてしまう場合があり得るため、誤刺の発生を防止するという観点から好ましくない。
【0062】
これに対し、実施形態1に係る医療用針1によれば、板状部材60は、アクセスポートAPの上面端部a1,a2の位置近傍で、z軸方向に沿って屈曲可能に構成されているため、板状部材60を押さえたときに、アクセスポートAPの上面端部a1,a2の位置近傍を境として、板状部材60の端部を、患者の皮膚S側の方向に向けて屈曲させることが可能となる(図11(b)参照。)。これにより、板状部材60を押さえる力がアクセスポートAPの上面端部a1,a2に集中してしまうのを抑制することができるため、アクセスポートAPの上面端部a1,a2と板状部材60との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みを軽減することができる。
また、上記の構成からなる板状部材60を用いることによって、板状部材60を押さえる力を弱くしすぎることも無いため、患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜いたときに、湾曲針10(の先端部16)を伸縮部30によってカバーすることができ、使用者による誤刺の発生を効果的に防止することができる。
【0063】
したがって、実施形態1に係る医療用針1は、板状部材60を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能な医療用針となる。
【0064】
また、実施形態1に係る医療用針1によれば、図7を用いて上述したように、板状部材60を、通過部62を含みアクセスポートAPの上面端部a1,a2間に対応する中央領域CAと、アクセスポートAPの上面端部a1,a2から板状部材60の短辺側の各端縁60e1,60e2までに対応する端部領域EAとの2つの領域に分割したとき、板状部材60が、中央領域CAと端部領域EAとの境界部分で、z軸方向に沿って屈曲可能に構成されている。このため、板状部材60を押さえたときに、板状部材60の端部領域EAを、患者の皮膚S側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材60を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0065】
なお、板状部材60は、上述したように、アクセスポートAPの上面端部a1,a2の位置近傍で(中央領域CAと端部領域EAとの境界部分で)z軸方向に沿って屈曲可能に構成されていることから、板状部材60の端部(端部領域EA)を、患者の皮膚S側に向けて屈曲させることが可能であるだけではなく、患者の皮膚Sとは反対側(基部20側)に向けて屈曲させることも可能である。
【0066】
実施形態1に係る医療用針1においては、伸縮部30を最も伸ばしたときのz軸方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部16から湾曲部14までの長さ以上となるように構成されているため、患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜いたときに、湾曲針10(の先端部16)を伸縮部30によってカバーすることができる。このため、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
【0067】
実施形態1に係る医療用針1においては、中央領域CAの最大長さ(x軸方向に沿った長さ)が、13mm〜22mmの範囲に設定されている。市場に流通するアクセスポートの上面長さ(上面端部間の長さ)は、大体13mm〜22mm程度であることから、板状部材60の端部(端部領域EA)を、患者の皮膚S側に向けて確実に屈曲させることが可能となる。
【0068】
実施形態1に係る医療用針1においては、板状部材60には、アクセスポートAPの上面端部a1,a2に対応する位置近傍に溝部64a,64bが設けられている。これにより、患者の皮膚Sに向けて板状部材60を押さえたときに、溝部64a,64bの部分で板状部材60を屈曲させることが可能となるため、本発明の医療用針を好適に実現することが可能となる。
【0069】
実施形態1に係る医療用針1においては、溝部64,64bは、板状部材60における基部20側の面60wに配置されている。基部20側の面60wに溝部が配置されていると、皮膚側の面60sに溝部が配置されている場合(例えば、後述する実施形態3〜5の場合。)に比べて、板状部材60を押さえたときに板状部材60が屈曲しやすいため、板状部材60を押さえる力がアクセスポートAPの上面端部a1,a2に集中してしまうのをさらに抑制することができ、アクセスポートAPの上面端部a1,a2と板状部材60との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みをさらに軽減することができる。
【0070】
実施形態1に係る医療用針1においては、溝部64a,64bは、板状部材60における短辺方向に沿って伸びる直線状の溝であることから、板状部材60を押さえたときに板状部材60を比較的屈曲させやすいという効果がある。
また、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と、板状部材60の長辺方向とが同じ方向となるように揃えられているため、両者が互いに異なる方向となっている場合に比べて、コンパクトな医療用針を実現することができる。
また、板状部材60が略長方形状であることにより、テープ等を用いて患者の皮膚に医療用針1を固定する際に、固定しやすい(テープ止めがしやすい)という効果もある。
【0071】
[実施形態2]
図12は、実施形態2に係る医療用針2の斜視図である。図13は、医療用針2の正面図である。なお、図12及び図13においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図12及び図13において、図1及び図3と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図14は、板状部材260の上面図である。なお、発明の理解を容易にするため、図14においては、板状部材260以外の部材を捨象して板状部材260のみを図示している。
【0072】
実施形態2に係る医療用針2は、基本的には実施形態1に係る医療用針1と良く似た構成を有するが、溝部の数が実施形態1に係る医療用針1とは異なる。
【0073】
すなわち、実施形態2に係る医療用針2においては、図12〜図14に示すように、板状部材260は、4つの溝部264a〜264dを有する。溝部264a〜264dは、板状部材260の短辺方向(y軸方向)に沿って伸びる直線状の溝であって、通過部262から短辺側の一方端縁260e1までの間の所定位置に2つ、通過部262から短辺側の他方端縁260e2までの間の所定位置に2つ、それぞれ配置されている。なお、溝部264a〜264dの断面形状は、実施形態1で説明した溝部64a,64bと同様である。
【0074】
また、図示による説明は省略するが、溝部264a〜264dは、アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に設けられている。
【0075】
このように、実施形態2に係る医療用針2は、実施形態1に係る医療用針1とは溝部の数が異なるが、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材260を備えているため、実施形態1に係る医療用針1の場合と同様に、板状部材260を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材260の端部(端部領域)を、患者の皮膚側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材260を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0076】
実施形態2に係る医療用針2は、溝部の数が異なる点以外では、実施形態1に係る医療用針1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る医療用針1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0077】
[実施形態3及び4]
図15は、実施形態3に係る医療用針3の斜視図である。図16は、図15とは異なる方向から見たときの医療用針3の斜視図である。図17は、医療用針3を説明するために示す図である。図17(a)は医療用針3を患者の皮膚Sに穿刺したときの様子を模式的に示す図であり、図17(b)は図17(a)の符号Aで示す部分の拡大図である。図18は、実施形態4に係る医療用針4の斜視図である。図19は、図18とは異なる方向から見たときの医療用針4の斜視図である。なお、図15〜図19においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図15〜図19において、図1及び図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0078】
実施形態3及び4に係る医療用針3,4は、基本的には実施形態1又は2に係る医療用針1,2と良く似た構成を有するが、溝部の配置されている面が実施形態1又は2に係る医療用針1,2とは異なる。
【0079】
すなわち、実施形態3及び4に係る医療用針3,4においては、図15〜図19に示すように、溝部364a,364b,464a〜464dは、板状部材360,460における基部20とは反対側の面(患者の皮膚側の面)360s,460sに配置されている。
【0080】
実施形態3に係る医療用針3においては、図16に示すように、板状部材360は、2つの溝部364a,364bを有する。溝部364a,364bは、通過部362から短辺側の一方端縁360e1までの間の所定位置に1つ、通過部362から短辺側の他方端縁360e2までの間の所定位置に1つ、それぞれ配置されている。また、図示による説明は省略するが、溝部364a,364bは、アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に設けられている。
【0081】
実施形態4に係る医療用針4においては、図19に示すように、板状部材460は、4つの溝部464a〜464dを有する。溝部464a〜464dは、通過部462から短辺側の一方端縁460e1までの間の所定位置に2つ、通過部462から短辺側の他方端縁460e2までの間の所定位置に2つ、それぞれ配置されている。また、図示による説明は省略するが、溝部464a〜464dは、アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に設けられている。
【0082】
このように、実施形態3及び4に係る医療用針3,4は、実施形態1又は2に係る医療用針1,2とは溝部の配置されている面が異なるが、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材360,460を備えているため、実施形態1に係る医療用針1,2の場合と同様に、板状部材360,460を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材360,460の端部(端部領域)を、患者の皮膚側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材360,460を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0083】
また、実施形態3及び4に係る医療用針3,4においては、溝部364a,364b,464a〜464dは、板状部材360,460における基部20とは反対側の面(患者の皮膚側の面)360s,460sに配置されているため、患者の皮膚S上に板状部材360,460を配置したときに、患者の皮膚Sと板状部材360,460との間に空隙gが生じることとなる(図17(b)参照。)。この空隙gによって患者の皮膚Sと板状部材360,460との間の通気性を確保することができる。このため、患者の皮膚Sと板状部材360,460との間における蒸れの影響を低減することができ、このような蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することが可能となる。また、患者の皮膚Sと板状部材360,460との間における蒸れの影響を低減することができることから、患者の皮膚Sと板状部材360,460との間における菌の繁殖を抑制することが可能となる。
【0084】
実施形態3及び4に係る医療用針3,4は、溝部の配置されている面が異なる点以外では、実施形態1又は2に係る医療用針1,2と同様の構成を有するため、実施形態1又は2に係る医療用針1,2が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0085】
[実施形態5]
図20は、実施形態5に係る医療用針5の斜視図である。図21は、医療用針5の正面図である。図22は、板状部材560の底面図である。図23は、医療用針5を説明するために示す図である。図23(a)は医療用針5を患者の皮膚Sに穿刺したときの様子を模式的に示す図であり、図23(b)は図23(a)の符号Aで示す部分の拡大図である。なお、図20及び図21においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図20及び図21(並びに図23)において、図2及び図3と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0086】
実施形態5に係る医療用針5は、基本的には実施形態4に係る医療用針4と良く似た構成を有するが、板状部材の構成が実施形態4に係る医療用針4とは異なる。
【0087】
すなわち、実施形態5に係る医療用針5においては、図20〜図23に示すように、板状部材560における基部20とは反対側の面560sに、溝部564a〜564dが配置されていることに加えて、複数の突起566が形成されている。
【0088】
複数の突起566のそれぞれは、図20及び図22に示すように、板状部材560の短辺方向(y軸方向)に沿って伸びる直線状の突起であって、板状部材560の長辺方向(x軸方向)に沿って複数(例えば10個)配列されている。なお、複数の突起566の数は、適宜変更可能である。
【0089】
複数の突起566の突出高さh(図21参照。)は、例えば0.7mmに設定されている。突起566の長さRL及び幅RWは、所定の値に設定されている。なお、突起566の長さRL及び幅RW並びに突出高さhは、例えば板状部材の厚みによって適宜変更可能である。
【0090】
通過部562から板状部材560の短辺側の各端縁560e1,560e2までに配置される複数の突起566のそれぞれは、図22に示すように、隣り合う突起566との配置間隔RTが略同一となるように設定されている。また、隣り合う突起566との配置間隔RTは、突起566の幅RWよりも大きくなるように設定されている。
【0091】
また、実施形態5に係る医療用針5においては、溝部564a〜564dの断面形状は、図21などから分かるように、丸形状ではなく、略V字状である(但し、頂点部分が丸みを帯びている。)。なお、溝部564a〜564dは、図示による説明は省略するが、アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に設けられている。
【0092】
このように、実施形態5に係る医療用針5は、実施形態4に係る医療用針4とは板状部材の構成(複数の突起が形成されている点)が異なるが、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材560を備えているため、実施形態1に係る医療用針1の場合と同様に、板状部材560を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材560の端部(端部領域)を、患者の皮膚側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材560を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0093】
また、実施形態5に係る医療用針5においては、板状部材560における基部20とは反対側の面560sには、複数の突起566が形成されているため、患者の皮膚S上に板状部材560を配置したときに、患者の皮膚Sと板状部材560との間に空隙gが生じることとなる(図23(b)参照。)。この空隙gによって、患者の皮膚Sと板状部材560との間の通気性を確保することができる。つまり、溝部564a〜564dだけではなく複数の突起566によっても患者の皮膚Sと板状部材560との間の通気性を確保することができるため、患者の皮膚Sと板状部材560との間における蒸れの影響をさらに低減することができ、結果として、蒸れの影響に起因した不快感の発生をさらに抑制することが可能となるとともに、患者の皮膚Sと板状部材560との間における菌の繁殖をさらに抑制することが可能となる。
また、患者の皮膚Sに医療用針5を穿刺するにあたって医療用針5を配置する際、複数の突起566が滑り止めの役目も果たすことから、医療用針5を配置しやすく、皮膚に穿刺しやすいという効果もある。
【0094】
実施形態5に係る医療用針5は、板状部材の構成が異なる点(複数の突起が形成されている点)以外では、実施形態4に係る医療用針4と同様の構成を有するため、実施形態1又は4に係る医療用針1,4が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0095】
[実施形態6]
図24は、実施形態6に係る医療用針6の斜視図である。図25は、医療用針6の正面図である。なお、図24及び図25においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図24及び図25において、図1及び図3と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0096】
実施形態6に係る医療用針6は、基本的には実施形態1に係る医療用針1と良く似た構成を有するが、板状部材の構成が実施形態1に係る医療用針1とは異なる。
【0097】
すなわち、実施形態6に係る医療用針6においては、図24及び図25に示すように、板状部材として、一部が波状に湾曲した板状部材660を備える。
【0098】
板状部材660は、通過部662と、通過部662から板状部材660の短辺側の各端縁660e1,660e2に向かって波状に湾曲する湾曲部664a,664bと、通過部662を含む所定領域に形成された平面部668とを有する。
【0099】
湾曲部664a,664b及び平面部668のx軸方向に沿った長さは適宜設定可能であるが、実施形態6に係る医療用針6においては、板状部材660全体に対する湾曲部664a,664bの位置が、アクセスポートの上面端部の位置と対応するように、湾曲部664a,664b及び平面部668のx軸方向に沿った長さがそれぞれ設定されている。
【0100】
板状部材660は、このような湾曲部664a,664bを有するため、患者の皮膚に向けて板状部材660を押さえたときに、湾曲部664a,664bの部分で板状部材660を屈曲させることが可能となる。つまり、板状部材660の一部が波状に湾曲していることによって、実施形態1で説明した板状部材60の場合と同様に、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲させることが可能となる。
【0101】
なお、実施形態6に係る医療用針6においては、例えば、湾曲している部分の山の数や当該山の間隔などを適宜設定することにより、各湾曲部664a,664bの湾曲度合を調整可能である。
【0102】
このように、実施形態6に係る医療用針6は、実施形態1に係る医療用針1とは板状部材の構成が異なるが、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材660を備えているため、実施形態1に係る医療用針1の場合と同様に、板状部材660を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材660の端部(端部領域)を、患者の皮膚側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材660を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0103】
実施形態6に係る医療用針6においては、板状部材660は、通過部662を含む所定領域に形成された平面部668をさらに有するため、患者の皮膚に医療用針6を穿刺するにあたって医療用針6を配置する際、医療用針6を安定して配置することができ、皮膚に穿刺しやすいという効果がある。
【0104】
実施形態6に係る医療用針6は、板状部材の構成が異なる点以外では、実施形態1に係る医療用針1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る医療用針1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0105】
以上、本発明の医療用針を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0106】
(1)上記実施形態1〜4においては、溝部の断面形状が丸(半円)形状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図26は、変形例1〜3の溝部164a〜164cを示す図である。図26(a)は変形例1の溝部164aの部分拡大断面図であり、図26(b)は変形例2の溝部164bの部分拡大断面図であり、図26(c)は変形例3の溝部164cの部分拡大断面図である。
溝部としては、例えば、図26(a)に示すように、断面V字状であってもよいし、図26(b)に示すように、断面U字状であってもよいし、図26(c)に示すように、断面台形状であってもよいし、図示による説明は省略するが、断面四角状であってもよい。
【0107】
(2)上記実施形態1〜5においては、板状部材における基部側の面又は患者の皮膚側の面のいずれか一面に溝部が配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、板状部材の基部側の面及び患者の皮膚側の面の両面に溝部が配置されていてもよい。
【0108】
(3)上記実施形態1〜5においては、板状部材の通過部から短辺側の一方端縁までの間に配置された溝部も、通過部から短辺側の他方端縁までの間に配置された溝部も、ともに板状部材における基部側の面又は患者の皮膚側の面のいずれか一面に配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、通過部から短辺側の一方端縁までの間に配置される溝部は、板状部材における基部側の面に配置され、通過部から短辺側の他方端縁までの間に配置される溝部は、板状部材における患者の皮膚側の面に配置されていてもよい。
【0109】
(4)上記実施形態1〜5においては、溝部の数として、板状部材の通過部から短辺側の各端縁までの間にそれぞれ1つずつ又は2つずつ配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。板状部材の通過部から短辺側の各端縁までの間に、溝部が3つずつ又はそれ以上配置されていてもよい。
【0110】
(5)上記実施形態5においては、隣り合う突起566との配置間隔RTが略同一となるように設定されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、板状部材の端縁から略中央部(通過部562近傍)に向かうに従って隣り合う突起566との配置間隔が狭くなるように設定された板状部材であってもよいし、反対に当該配置間隔が広くなるように設定された板状部材であってもよい。
また、上記実施形態5においては、隣り合う突起566との配置間隔RTが突起566の幅RWよりも大きく設定されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記配置間隔RTと突起の幅RWとを同じ値に設定してもよいし、上記配置間隔RTを突起の幅RWよりも小さく設定してもよい。
【0111】
(6)上記実施形態5においては、板状部材560における皮膚側の面560sに溝部564a〜564dと複数の突起566とが配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、板状部材560における基部側の面560wに溝部が配置され、板状部材560における皮膚側の面560sに複数の突起が形成されていてもよい。
【0112】
(7)上記実施形態6においては、通過部662を含む所定領域に平面部668が形成された板状部材660を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、平面部が形成されていない板状部材、つまり、板状部材全体が波状に湾曲したものも本発明に含まれる。
【0113】
(8)上記各実施形態においては、板状部材の平面形状が略長方形状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、楕円形状や丸形状の板状部材であってもよいし、三角形状や正方形状の板状部材であってもよいし、5角形以上の多角形状の板状部材であってもよい。なお、上記各実施形態においては、板状部材の大きさ(平面で見た大きさ)とアクセスポートの大きさとの関係や、板状部材が略長方形状であることなどを踏まえて、板状部材が2ヶ所で屈曲可能に構成されているが、例えば板状部材が略長方形状以外の平面形状である場合には、板状部材は3ヶ所以上で屈曲可能に構成されていてもよい。
【0114】
(9)上記各実施形態においては、板状部材に形成される通過部が、スリット状(切れ込み状)のものである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。通過部としては、例えば、湾曲針10が通過する位置(板状部材の略中央部)に形成された穴(丸穴や角穴)であってもよい。
【0115】
(10)上記各実施形態においては、基部、伸縮部、板状部材及び翼部が一体成形されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これら各部材を個別に作成した後、各部材を接合してもよい。
【0116】
(11)上記各実施形態においては、基部、伸縮部、板状部材及び翼部が同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、部材ごとで異なるプラスチック材料を用いてもよいし、プラスチック材料以外の材料でこれら部材を形成してもよい。
【0117】
(12)上記各実施形態においては、湾曲針10の湾曲部14が90度湾曲している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。90度未満又は90度を超える角度で湾曲した湾曲針を備える医療用針についても本発明を適用可能である。
【0118】
(13)上記各実施形態においては、翼部70が、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、基部20の上方に1つの翼部材がz軸方向に沿って伸びるように配置されていてもよい。また、上記各実施形態においては、略矩形状の把持部72,74を有する翼部70を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、略矩形状とは異なる形状(例えば丸形状など)の把持部を有する翼部であってもよい。
【0119】
(14)上記各実施形態においては、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じx軸方向で揃えられ、翼部70の把持部72,74がx軸方向に伸びる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じx軸方向で揃えられ、翼部の把持部がy軸方向に伸びるように構成されていてもよい。または、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じy軸方向で揃えられ、翼部の把持部がy軸方向に伸びるように構成されていてもよい。
なお、後者の場合、すなわち、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と、板状部材の長辺方向と、翼部の把持部が伸びる方向とが、基部20の長手方向であるy軸方向と同じ向きに揃えられているときには、医療用針全体のx軸方向の幅を比較的小さくすることができるため、例えば、医療用針を2つ以上並べて配置したいときに、各医療用針と繋がる各チューブの導出方向を一方向に揃えた状態で医療用針を配置することが可能となる。
【0120】
(15)上記各実施形態においては、基部として、チューブ接続部22を有する基部20を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、チューブ接続部が省略された基部(チューブ接続部を有しない基部)を備えていてもよい。この場合は、例えば、湾曲針10の基端部12を基部から露出させ、基端部12とチューブとを直接接続すればよい。
【0121】
(16)上記各実施形態においては、伸縮部として、2つの伸縮部材(第1及び第2伸縮部材32,36)によってパンタグラフ状に伸縮可能に構成された伸縮部30を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。伸縮部としては、1つの伸縮部材で構成された伸縮部であってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1,2,3,4,5,6,900 医療用針
10 湾曲針
12 湾曲針の基端部
14 湾曲部
16 湾曲針の先端部
20 基部
22 チューブ接続部
30 伸縮部
32 第1伸縮部材
34,38 屈曲部
36 第2伸縮部材
60,260,360,460,560,660,960 板状部材
60e1,60e2,260e1,260e2,360e1,360e2,460e1,460e2,560e1,560e2,660e1,660e2 板状部材の短辺側の端縁
60s,260s,360s,460s,560s 板状部材における基部20とは反対側の面(患者の皮膚側の面)
60w,260w,360w,460w,560w 板状部材における基部20側の面
62,262,362,462,562,662 通過部
64a,64b,164a,164b,164c,264a〜264d,364a,364b,464a〜464d,564a〜564d 溝部
70 翼部
72,74 把持部
77,78 薄肉部
80 針カバー部材
82 第1格納部
83 切り欠き
84 第2格納部
664a,664b 湾曲部
668 平面部
AP アクセスポート
a1,a2 アクセスポートの上面端部
CA 中央領域
EA 端部領域
GW 溝部64a,64bのx軸方向に沿った幅
g (患者の皮膚と板状部材との間に生じる)空隙
h 突起の突出高さ
L 板状部材60のx軸方向に沿った長さ
L1 短辺側の一方端縁60e1から溝部64aの中間位置までのx軸方向に沿った長さ
L2 溝部64aの中間位置から溝部64bの中間位置までのx軸方向に沿った長さ
L3 溝部64bの中間位置から短辺側の他方端縁60e2までのx軸方向に沿った長さ
P1 セプタム
P2 ポート筐体部
RL 突起の長さ
RT 隣り合う突起との配置間隔
RW 突起の幅
S 患者の皮膚
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用針に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針として、従来、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部を有する湾曲針と、パンタグラフのように伸縮する伸縮部と、湾曲針を通過させる通過部を有する板状部材とを備える医療用針が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。伸縮部の一端は、湾曲針の基端部側に設けられた基部と接続されており、伸縮部の他端は、板状部材と接続されている。
【0003】
従来の医療用針によれば、上記した伸縮部を備えているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができる。このため、医療用針を使用する者(医療従事者及び患者本人を含む。以下、使用者という。)が誤って使用後の医療用針を自分に刺してしまう事故(いわゆる誤刺)の発生を防止することができる。
また、従来の医療用針によれば、上記した板状部材を備えているため、患者の皮膚から湾曲針を抜く際、板状部材の上面(患者の皮膚に接しない方の面)を上から押さえることにより、比較的スムーズに湾曲針を抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−369884号公報
【特許文献2】特開2006−61379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の医療用針においては、患者の皮膚から湾曲針を抜くにあたって患者の皮膚に向けて板状部材を押さえたとき、板状部材を押さえる力が必要以上に強いと、アクセスポートの上面と板状部材との間で皮膚が挟まれることから、患者が痛がる可能性がある。反対に、板状部材を押さえる力を弱くしすぎてしまうと、伸縮部が伸びきらない状態で患者の皮膚から湾曲針が抜けてしまう場合があり得るため、誤刺の発生を防止するという観点から好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、伸縮部及び板状部材を備える医療用針において、板状部材を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能な医療用針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、上記目的を達成するため、患者の皮膚から湾曲針を抜くにあたって患者の皮膚に向けて板状部材を押さえたときに、板状部材によって押圧されている皮膚のうち、一体どの部分が痛みをより強く感じる箇所であるのかを徹底的に調査した。その結果、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分(後述する図11(a)の破線Aで囲んだ部分。)が、痛みをより強く感じる箇所であるという知見を得た。アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分が、他の部分と比較して痛みをより強く感じる理由としては、板状部材を押さえる力が、アクセスポートの上面端部に集中するからであると考えられる。
【0008】
本発明の発明者は、以上の知見に基づいて、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分で感じる痛みを軽減するための手段を探るべく、さらなる研究を重ねた。その結果、板状部材として、少なくともアクセスポートの上面端部の位置で第1方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材を用いれば、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みを軽減することができ、もって、板状部材を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
[1]すなわち、本発明の医療用針(1)は、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、前記板状部材(60)は、少なくとも前記アクセスポートの上面端部の位置近傍で前記第1方向に沿って屈曲可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
このため、本発明の医療用針によれば、板状部材は、少なくともアクセスポートの上面端部の位置近傍で第1方向に沿って屈曲可能に構成されているため、板状部材を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材の端部を、患者の皮膚側の方向に向けて屈曲させることが可能となる。これにより、板状部材を押さえる力がアクセスポートの上面端部に集中してしまうのを抑制することができるため、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みを軽減することができる。
また、上記の構成からなる板状部材を用いることによって、板状部材を押さえる力を弱くしすぎることも無いため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができ、使用者による誤刺の発生を効果的に防止することができる。
【0011】
したがって、本発明の医療用針は、板状部材を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能な医療用針となる。
【0012】
[2]本発明の医療用針(1)は、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、前記板状部材(60)を、前記通過部(62)を含み前記アクセスポートの上面端部間に対応する中央領域(CA)と、前記アクセスポートの上面端部から前記板状部材(60)の端縁までに対応する端部領域(EA)との2つの領域に分割したとき、前記板状部材(60)は、少なくとも前記中央領域(CA)と前記端部領域(EA)との境界部分で、前記第1方向に沿って屈曲可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
このため、本発明の医療用針によれば、板状部材は、少なくとも中央領域と端部領域との境界部分で、第1方向に沿って屈曲可能に構成されているため、板状部材を押さえたときに、板状部材の端部領域を、患者の皮膚側の方向に向けて屈曲させることが可能となる。これにより、板状部材を押さえる力がアクセスポートの上面端部に集中してしまうのを抑制することができるため、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みを軽減することができる。
また、上記の構成からなる板状部材を用いることによって、板状部材を押さえる力を弱くしすぎることも無いため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができ、使用者による誤刺の発生を効果的に防止することができる。
【0014】
したがって、本発明の医療用針は、板状部材を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能な医療用針となる。
【0015】
[3]上記[2]に記載の医療用針(1)においては、前記中央領域(CA)の最大長さが、13mm〜22mmの範囲に設定されていることが好ましい。
【0016】
市場に流通するアクセスポートの上面長さは、大体13mm〜22mm程度であるため、上記のように構成することにより、板状部材の端部(又は端部領域)を、患者の皮膚側の方向に向けて確実に屈曲させることが可能となる。
【0017】
この明細書において「アクセスポートの上面長さ」とは、アクセスポートの上面における一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味するものである。アクセスポートの上面形状が例えば円である場合には、アクセスポートの上面長さはアクセスポート上面の直径と等しく、アクセスポートの上面形状が例えば長方形又は正方形である場合には、アクセスポートの上面長さはアクセスポート上面の対辺間の距離と等しい。
なお、アクセスポートの上面が、上面中央に配置されたセプタムと当該セプタムの周囲を囲むように設けられたポート筐体部とで構成されている場合には、アクセスポートの上面長さは、当該ポート筐体部上面の一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味する。アクセスポートの上面が、セプタムのみで構成されている場合には、アクセスポートの上面長さは、セプタム上面の一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味する。
また、アクセスポートの上面端縁に丸め処理(ラウンド加工)が施されている場合には、アクセスポートの上面長さは、アクセスポートの最上面における一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味するのではなく、アクセスポートの最上面より若干低い位置での(切断面における)一方端縁から他方端縁までの距離のことを意味する。
【0018】
[4]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の医療用針(1)においては、前記板状部材(60)には、前記アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に少なくとも1つの溝部(64a,64b)が設けられていることが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、患者の皮膚に向けて板状部材を押さえたときに、溝部の部分で板状部材を屈曲させることが可能となるため、本発明の医療用針を好適に実現することが可能となる。
【0020】
[5]上記[4]に記載の医療用針(1)においては、前記溝部(64,64b)は、前記板状部材(60)における前記基部(20)側の面(60w)に配置されていることが好ましい。
【0021】
基部側の面(上面)に溝部が配置されていると、皮膚側の面(下面)に溝部が配置されている場合に比べて、板状部材を押さえたときに板状部材が屈曲しやすいため、上記のように構成することにより、板状部材を押さえる力がアクセスポートの上面端部に集中してしまうのをさらに抑制することができ、アクセスポートの上面端部と板状部材との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みをさらに軽減することができる。
【0022】
[6]上記[4]に記載の医療用針(3)においては、前記溝部(364a,364b)は、前記板状部材(360)における前記基部(20)とは反対側の面(360s)に配置されていることが好ましい。
【0023】
このように構成することにより、上述した板状部材を押さえたときの皮膚への痛みを軽減する効果及び使用者による誤刺発生を防止する効果に加えて、患者の皮膚に板状部材を配置したとき、溝部によって患者の皮膚と板状部材との間の通気性を確保することができる。このため、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響を低減することができ、このような蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することが可能となる。また、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響を低減することができることから、患者の皮膚と板状部材との間における菌の繁殖を抑制することが可能となる。
【0024】
[7]上記[6]に記載の医療用針(5)においては、前記板状部材(560)における前記基部(20)とは反対側の面(560s)には、複数の突起(566)が形成されていることが好ましい。
【0025】
このように構成することにより、溝部だけではなく複数の突起によっても患者の皮膚と板状部材との間の通気性を確保することができるため、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響をさらに低減することができ、結果として、蒸れの影響に起因した不快感の発生をさらに抑制することが可能となるとともに、患者の皮膚と板状部材との間における菌の繁殖をさらに抑制することが可能となる。
また、患者の皮膚に医療用針を穿刺するにあたって医療用針を配置する際、複数の突起が滑り止めの役目も果たすことから、医療用針を配置しやすく、皮膚に穿刺しやすいという効果もある。
【0026】
[8]上記[4]〜[7]のいずれか1つに記載の医療用針(1)においては、前記板状部材(60)における前記基部(20)とは反対側の面(60s)上で互いに交差する2方向のうち、前記湾曲針における基端部(12)側の部分から前記湾曲部(14)に沿った方向と同一方向を第2方向とし、他方を第3方向としたとき、前記伸縮部(30)は、前記第3方向に沿って広がるように構成されたパンタグラフ状の伸縮部材であって、前記板状部材(60)は、前記第3方向に長辺方向を有する略長方形状であり、前記溝部(64a,64b)は、前記板状部材(60)における短辺方向に沿って伸びる直線状の溝であることが好ましい。
【0027】
板状部材における短辺方向に沿って伸びる直線状の溝であることから、板状部材を押さえたときに板状部材を比較的屈曲させやすいという効果がある。
また、伸縮部を折り畳んだときに伸縮部の広がる方向と板状部材の長辺方向とを同じ方向に揃えることによって、両者が互いに異なる方向とした場合に比べて、コンパクトな医療用針を実現することができる。
さらにまた、板状部材が略長方形状であることにより、テープ等を用いて患者の皮膚に医療用針を固定する際に、固定しやすい(テープ止めがしやすい)という効果もある。
【0028】
なお、この明細書において「略長方形状」とは、長方形状だけではなく、長方形の四隅の角のうち少なくとも1つが丸くなっている形状や、四辺のうち少なくとも一辺の一部が内側に凹んだ形状なども含む。
【0029】
[9]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の医療用針(6)においては、前記板状部材(660)は、前記通過部(662)から前記板状部材(660)の端縁(660e1,660e2)に向かって波状に湾曲する湾曲部(664a,664b)をさらに有することが好ましい。
【0030】
このように構成することにより、患者の皮膚に向けて板状部材を押さえたときに、湾曲部の部分で板状部材を屈曲させることが可能となるため、本発明の医療用針を好適に実現することが可能となる。
【0031】
[10]上記[9]に記載の医療用針(6)においては、前記板状部材(660)は、前記通過部(662)を含む所定領域に形成された平面部(668)をさらに有することが好ましい。
【0032】
このように構成することにより、患者の皮膚に医療用針を穿刺するにあたって医療用針を配置する際、医療用針を安定して配置することができ、皮膚に穿刺しやすいという効果がある。
【0033】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】医療用針1の斜視図。
【図2】図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図。
【図3】医療用針1の正面図。
【図4】医療用針1の側面図。
【図5】第1及び第2伸縮部材32,36が伸縮する様子を説明するために示す図。
【図6】溝部64aの部分拡大断面図。
【図7】板状部材60を説明するために示す図。
【図8】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図9】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図10】医療用針1を説明するために示す図。
【図11】比較例に係る医療用針900及び実施形態1に係る医療用針1を説明するために示す図。
【図12】医療用針2の斜視図。
【図13】医療用針2の正面図。
【図14】板状部材260の上面図。
【図15】医療用針3の斜視図。
【図16】図15とは異なる方向から見たときの医療用針3の斜視図。
【図17】医療用針3を説明するために示す図。
【図18】医療用針4の斜視図。
【図19】図18とは異なる方向から見たときの医療用針4の斜視図。
【図20】医療用針5の斜視図。
【図21】医療用針5の正面図。
【図22】板状部材560の底面図。
【図23】医療用針5を説明するために示す図。
【図24】医療用針6の斜視図。
【図25】医療用針6の正面図。
【図26】変形例1〜3の溝部164a〜164cを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の医療用針について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0036】
[実施形態1]
まず、実施形態1に係る医療用針1の構成について、図1〜図9を用いて詳細に説明する。
【0037】
図1は、医療用針1の斜視図である。図2は、図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図である。図3は、医療用針1の正面図である。図4は、医療用針1の側面図である。なお、図1〜図4においては、針カバー部材80の図示を省略している。
【0038】
図5は、第1及び第2伸縮部材32,36が伸縮する様子を説明するために示す図である。図5(a)は第1及び第2伸縮部材32,36を最も折り畳んだ状態のときの医療用針1の正面図であり、図5(e)は第1及び第2伸縮部材32,36を最も伸長させた状態のときの医療用針1の正面図であり、図5(b)〜図5(d)は図5(a)に示す状態から図5(e)に示す状態になるまでの途中経過を示す医療用針1の正面図である。
【0039】
図6は、溝部64aの部分拡大断面図である。図7は、板状部材60を説明するために示す図である。図7(a)は板状部材60の正面図であり、図7(b)は板状部材60の上面図である。なお、発明の理解を容易にするため、図7(a)においては、板状部材60以外の部材を破線で図示し、図7(b)においては、板状部材60以外の部材を捨象して板状部材60のみを図示している。
【0040】
図8及び図9は、針カバー部材80を説明するために示す図である。図8(a)は針カバー部材80の正面図であり、図8(b)は針カバー部材80の側面図であり、図8(c)は針カバー部材80の上面図であり、図8(d)は針カバー部材80の底面図である。図9(a)は針カバー部材80の斜視図であり、図9(b)は針カバー部材80を装着したときの医療用針1の斜視図である。
【0041】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれx軸方向、y軸方向、z軸方向とする。x軸方向とは「第3方向」のことであり、y軸方向とは「第2方向」のことであり、z軸方向とは「第1方向」のことである。x軸方向は、板状部材60の長辺方向と同じ方向であり、y軸方向は、板状部材60の短辺方向と同じ方向(または、基部20の長手方向と同じ方向)であり、z軸方向は、湾曲針10の湾曲部14から先端部16に沿った方向(または、板状部材60における基部20側の面に垂直な方向)である。
【0042】
実施形態1に係る医療用針1は、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、図1〜図4に示すように、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部14を有する湾曲針10と、湾曲針10の一部が植設された基部20と、基部20に設けられ、パンタグラフ状に伸縮可能に構成された伸縮部30と、伸縮部30における基部20とは反対側に接続配置された板状部材60と、基部20に設けられた翼部70と、針カバー部材80(図8及び図9参照。)とを備える。
【0043】
湾曲針10は、図4に示すように、基端部12と、例えば90度に湾曲した湾曲部14と、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートAP(後述する図11(b)参照。)に穿刺される先端部16とを有する。基端部12から湾曲部14までは、y軸方向に平行な直管状であり、湾曲部14から先端部16の手前までは、z軸方向に平行な直管状である。先端部16は、コアリング(アクセスポートにおけるセプタムの穴あきや削りカスの発生)防止のために若干屈曲した構成となっている。
【0044】
基部20は、湾曲針10の基端部12及び湾曲部14を覆うように構成されている。また、基部20は、管状のチューブ接続部22を有し、チューブ接続部22の部分で図示しないチューブに接続可能に構成されている。
【0045】
伸縮部30は、湾曲針10を間にして対向配置された第1伸縮部材32及び第2伸縮部材36を有する。第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、端部が基部20及び板状部材60(板状部材60における基部20側の面60w)に接続されており、屈曲部34,38の部分で略「くの字」状に屈曲可能に構成されている(図3参照。)。また、第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、第1及び第2伸縮部材32,36の各端部と基部20及び板状部材60との接続部分においても、屈曲可能に構成されている。このように構成された第1及び第2伸縮部材32,36が湾曲針10を間にして対向配置されているため、図5(a)〜図5(e)に示すように、x軸方向に沿って広がるように又は狭まるように、パンタグラフ状に伸縮することができる。
また、伸縮部30は、第1及び第2伸縮部材32,36が広がる方向が、後述する板状部材60の長辺方向と同じ方向となるように配置されている。
【0046】
伸縮部30は、図5(e)から分かるように、伸縮部30(第1及び第2伸縮部材32,36)を最も伸ばしたときのz軸方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部16から湾曲部14までの長さ以上となるように構成されている。
【0047】
板状部材60は、図1、図2及び図7(b)に示すように、略長方形状の板状部材であり、長方形の四隅の角は丸め処理が施されている。板状部材60は、略中央部に形成され、湾曲針10を通過させる通過部62と、板状部材60における基部20側の面60wに配置された溝部64a,64bとを有する。通過部62は、スリット状(切れ込み状)の通過部である。
【0048】
溝部64a,64bは、板状部材60の短辺方向(y軸方向)に沿って伸びる直線状の溝であって、通過部62から短辺側の一方端縁60e1までの間の所定位置に1つ、通過部62から短辺側の他方端縁60e2までの間の所定位置に1つ、計2つ配置されている。また、溝部64a,64bは、板状部材60における基部20側の面60wに配置されている。溝部64aは、図6に示すように、断面丸形状(半円形状)である。溝部64bの断面形状も、溝部64aと同様である。
【0049】
図7に示すように、板状部材60を、通過部62を含む中央領域CAと、板状部材60の端部側に位置する端部領域EAとの2つの領域に分割したとき、溝部64a,64bは、中央領域CAと端部領域EAとの境界部分にそれぞれ配置されている。また、中央領域CAは、通過部62を含みアクセスポートAPの上面端部a1,a2間に対応しており、端部領域EAは、アクセスポートAPの上面端部a1,a2から板状部材60の各端縁60e1,60e2までに対応している(図7及び後述する図11(b)参照。)。
【0050】
また、図7を参照して、板状部材60のx軸方向に沿った長さ(全体長さ)をLとし、短辺側の一方端縁60e1から溝部64aの中間位置までのx軸方向に沿った長さをL1とし、溝部64aの中間位置から溝部64bの中間位置までのx軸方向に沿った長さをL2とし、溝部64bの中間位置から短辺側の他方端縁60e2までのx軸方向に沿った長さをL3とし、溝部64a,64bのx軸方向に沿った幅をGWとしたとき、板状部材60は、例えば、L=44mm、L1=L3=11mm、L2=22mm、GW=3.2mmに設定されている。また、図面による説明は省略するが、中央領域CAのx軸方向に沿った長さは、例えば18.8mmに設定されており、端部領域EAのx軸方向に沿った長さは、例えば9.4mmに設定されている。なお、ここに示した長さは、あくまでも一例であり、これらの数値は、アクセスポートの大きさに合わせて適宜変更してもよい。
【0051】
翼部70は、図1〜図3に示すように、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材であって、略矩形状の把持部72,74と、基部20と各把持部72,74との間に配置され、把持部72,74の厚みよりも薄く形成された薄肉部77,78とを有する。把持部72,74は、基部20と薄肉部77,78との接続部分を軸として所定角度回動可能に構成されている(後述する図10(a1)〜図10(c1)及び図10(a2)〜図10(c2)参照。)。薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、翼部70を把持する際に、基部20と薄肉部77,78とが干渉してしまうのを抑制することができ、結果として、翼部70を把持しやすくなる。また、薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、把持部72,74を回動させやすいという効果もある。
【0052】
基部20、伸縮部30、板状部材60及び翼部70は、同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなり、射出成形することによって形成されている。
【0053】
針カバー部材80は、図8及び図9に示すように、所定の厚みを残して中身がくり抜かれた、正面視略T字状の部材である。針カバー部材80は、伸縮部30を折り畳んだ状態で翼部70、伸縮部30及び板状部材60を格納可能な第1格納部82と、伸縮部30を折り畳んだ状態で湾曲針10(の先端部16)を格納可能な第2格納部84とを有する。第1格納部82の上面には、基部20の位置に対応して切り欠き83が設けられている。伸縮部30を折り畳んだ状態とすると、図9(b)から分かるように、翼部70、伸縮部30及び板状部材60が第1格納部82に格納され、湾曲針10(の先端部16)が第2格納部84に格納される。
【0054】
実施形態1に係る医療用針1の使用方法について、図10を用いて詳細に説明する。
図10は、医療用針1を説明するために示す図である。図10(a1)〜図10(e1)は医療用針1を使用したときの各状態を示す正面図であり、図10(a2)〜図10(e2)は図10(a1)〜図10(e1)に示す状態のときの斜視図である。
【0055】
医療用針1を使用する際には、まず、針カバー部材80が装着された状態の医療用針1(図9(b)参照。)から、針カバー部材80を取り外す。
次に、翼部70の把持部72,74を把持し、把持部72,74が接触するまで翼部70を回動させる(図10(a1)〜図10(c1)及び図10(a2)〜図10(c2)参照。)。
そして、把持部72,74を把持した状態で、患者の皮膚Sの下に埋め込まれたアクセスポートAPのセプタムP2(後述する図11(b)参照。)に湾曲針10を穿刺する。穿刺後は、必要に応じて、把持部72,74を広げて把持部72,74の上からテープ止めを行う。
【0056】
患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜くときは、テープ止めを行った場合はテープを剥がして、板状部材60を押さえながら把持部72,74を摘まみ上げ、患者の皮膚Sから湾曲針10を引き抜く(図10(d1)及び図10(e1)並びに図10(d2)及び図10(e2)参照。)。
【0057】
なお、患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜く方法としては、上述の方法に限定されない。図示による説明は省略するが、各把持部72,74を第1及び第2伸縮部材32,36に沿わせる(板状部材60側に垂らす)ようにして、第1及び第2伸縮部材32,36と把持部72,74とを一緒に摘まみ上げてもよい。
【0058】
比較例に係る医療用針900をもとにして、実施形態1に係る医療用針1をさらに詳細に説明する。
図11は、比較例に係る医療用針900及び実施形態1に係る医療用針1を説明するために示す図である。図11(a)は比較例に係る医療用針900の場合において板状部材960を押さえたときの様子を模式的に示す図であり、図11(b)は実施形態1に係る医療用針1の場合において板状部材60を押さえたときの様子を模式的に示す図である。なお、図11においては、発明の理解を容易にするため、アクセスポートAPの大きさや、患者の皮膚SからアクセスポートAPまでの深さ(距離)などはある程度誇張して図示している。
【0059】
なお、比較例に係る医療用針900及び実施形態1に係る医療用針1の説明で用いるアクセスポートAPは、図11に示すように、アクセスポートAPの上面が、上面中央に配置されたセプタムP1と、セプタムP1の周囲を囲むように設けられたポート筐体部P2とで構成されているものである。また、この場合のアクセスポートAPの上面長さは、ポート筐体部P2上面の一方端縁(符号a1参照。)から他方端縁(符号a2参照。)までの距離のことを指す。
【0060】
比較例に係る医療用針900は、基本的には実施形態1に係る医療用針1と良く似た構成を有するが、図11(a)に示すように、板状部材960に溝部が配置されていない点で実施形態1に係る医療用針1とは異なる。
【0061】
このため、比較例に係る医療用針900によれば、患者の皮膚Sから湾曲針10を抜くにあたって患者の皮膚Sに向けて板状部材960を押さえたとき、板状部材960を押さえる力が、アクセスポートAPの上面端部a1,a2に集中するため、アクセスポートAPの上面端部a1,a2と板状部材960との間で挟まれている部分(図11(a)の破線Aで囲んだ部分。)において、患者が痛みを強く感じてしまう可能性がある。患者が感じる痛みを弱めるために板状部材960を押さえる力を弱めた場合、その力を弱くしすぎてしまうと、伸縮部30(第1及び第2伸縮部材32,36)が伸びきらない状態で患者の皮膚Sから湾曲針10が抜けてしまう場合があり得るため、誤刺の発生を防止するという観点から好ましくない。
【0062】
これに対し、実施形態1に係る医療用針1によれば、板状部材60は、アクセスポートAPの上面端部a1,a2の位置近傍で、z軸方向に沿って屈曲可能に構成されているため、板状部材60を押さえたときに、アクセスポートAPの上面端部a1,a2の位置近傍を境として、板状部材60の端部を、患者の皮膚S側の方向に向けて屈曲させることが可能となる(図11(b)参照。)。これにより、板状部材60を押さえる力がアクセスポートAPの上面端部a1,a2に集中してしまうのを抑制することができるため、アクセスポートAPの上面端部a1,a2と板状部材60との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みを軽減することができる。
また、上記の構成からなる板状部材60を用いることによって、板状部材60を押さえる力を弱くしすぎることも無いため、患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜いたときに、湾曲針10(の先端部16)を伸縮部30によってカバーすることができ、使用者による誤刺の発生を効果的に防止することができる。
【0063】
したがって、実施形態1に係る医療用針1は、板状部材60を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能な医療用針となる。
【0064】
また、実施形態1に係る医療用針1によれば、図7を用いて上述したように、板状部材60を、通過部62を含みアクセスポートAPの上面端部a1,a2間に対応する中央領域CAと、アクセスポートAPの上面端部a1,a2から板状部材60の短辺側の各端縁60e1,60e2までに対応する端部領域EAとの2つの領域に分割したとき、板状部材60が、中央領域CAと端部領域EAとの境界部分で、z軸方向に沿って屈曲可能に構成されている。このため、板状部材60を押さえたときに、板状部材60の端部領域EAを、患者の皮膚S側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材60を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0065】
なお、板状部材60は、上述したように、アクセスポートAPの上面端部a1,a2の位置近傍で(中央領域CAと端部領域EAとの境界部分で)z軸方向に沿って屈曲可能に構成されていることから、板状部材60の端部(端部領域EA)を、患者の皮膚S側に向けて屈曲させることが可能であるだけではなく、患者の皮膚Sとは反対側(基部20側)に向けて屈曲させることも可能である。
【0066】
実施形態1に係る医療用針1においては、伸縮部30を最も伸ばしたときのz軸方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部16から湾曲部14までの長さ以上となるように構成されているため、患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜いたときに、湾曲針10(の先端部16)を伸縮部30によってカバーすることができる。このため、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
【0067】
実施形態1に係る医療用針1においては、中央領域CAの最大長さ(x軸方向に沿った長さ)が、13mm〜22mmの範囲に設定されている。市場に流通するアクセスポートの上面長さ(上面端部間の長さ)は、大体13mm〜22mm程度であることから、板状部材60の端部(端部領域EA)を、患者の皮膚S側に向けて確実に屈曲させることが可能となる。
【0068】
実施形態1に係る医療用針1においては、板状部材60には、アクセスポートAPの上面端部a1,a2に対応する位置近傍に溝部64a,64bが設けられている。これにより、患者の皮膚Sに向けて板状部材60を押さえたときに、溝部64a,64bの部分で板状部材60を屈曲させることが可能となるため、本発明の医療用針を好適に実現することが可能となる。
【0069】
実施形態1に係る医療用針1においては、溝部64,64bは、板状部材60における基部20側の面60wに配置されている。基部20側の面60wに溝部が配置されていると、皮膚側の面60sに溝部が配置されている場合(例えば、後述する実施形態3〜5の場合。)に比べて、板状部材60を押さえたときに板状部材60が屈曲しやすいため、板状部材60を押さえる力がアクセスポートAPの上面端部a1,a2に集中してしまうのをさらに抑制することができ、アクセスポートAPの上面端部a1,a2と板状部材60との間で挟まれている部分の皮膚が感じる痛みをさらに軽減することができる。
【0070】
実施形態1に係る医療用針1においては、溝部64a,64bは、板状部材60における短辺方向に沿って伸びる直線状の溝であることから、板状部材60を押さえたときに板状部材60を比較的屈曲させやすいという効果がある。
また、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と、板状部材60の長辺方向とが同じ方向となるように揃えられているため、両者が互いに異なる方向となっている場合に比べて、コンパクトな医療用針を実現することができる。
また、板状部材60が略長方形状であることにより、テープ等を用いて患者の皮膚に医療用針1を固定する際に、固定しやすい(テープ止めがしやすい)という効果もある。
【0071】
[実施形態2]
図12は、実施形態2に係る医療用針2の斜視図である。図13は、医療用針2の正面図である。なお、図12及び図13においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図12及び図13において、図1及び図3と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図14は、板状部材260の上面図である。なお、発明の理解を容易にするため、図14においては、板状部材260以外の部材を捨象して板状部材260のみを図示している。
【0072】
実施形態2に係る医療用針2は、基本的には実施形態1に係る医療用針1と良く似た構成を有するが、溝部の数が実施形態1に係る医療用針1とは異なる。
【0073】
すなわち、実施形態2に係る医療用針2においては、図12〜図14に示すように、板状部材260は、4つの溝部264a〜264dを有する。溝部264a〜264dは、板状部材260の短辺方向(y軸方向)に沿って伸びる直線状の溝であって、通過部262から短辺側の一方端縁260e1までの間の所定位置に2つ、通過部262から短辺側の他方端縁260e2までの間の所定位置に2つ、それぞれ配置されている。なお、溝部264a〜264dの断面形状は、実施形態1で説明した溝部64a,64bと同様である。
【0074】
また、図示による説明は省略するが、溝部264a〜264dは、アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に設けられている。
【0075】
このように、実施形態2に係る医療用針2は、実施形態1に係る医療用針1とは溝部の数が異なるが、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材260を備えているため、実施形態1に係る医療用針1の場合と同様に、板状部材260を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材260の端部(端部領域)を、患者の皮膚側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材260を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0076】
実施形態2に係る医療用針2は、溝部の数が異なる点以外では、実施形態1に係る医療用針1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る医療用針1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0077】
[実施形態3及び4]
図15は、実施形態3に係る医療用針3の斜視図である。図16は、図15とは異なる方向から見たときの医療用針3の斜視図である。図17は、医療用針3を説明するために示す図である。図17(a)は医療用針3を患者の皮膚Sに穿刺したときの様子を模式的に示す図であり、図17(b)は図17(a)の符号Aで示す部分の拡大図である。図18は、実施形態4に係る医療用針4の斜視図である。図19は、図18とは異なる方向から見たときの医療用針4の斜視図である。なお、図15〜図19においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図15〜図19において、図1及び図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0078】
実施形態3及び4に係る医療用針3,4は、基本的には実施形態1又は2に係る医療用針1,2と良く似た構成を有するが、溝部の配置されている面が実施形態1又は2に係る医療用針1,2とは異なる。
【0079】
すなわち、実施形態3及び4に係る医療用針3,4においては、図15〜図19に示すように、溝部364a,364b,464a〜464dは、板状部材360,460における基部20とは反対側の面(患者の皮膚側の面)360s,460sに配置されている。
【0080】
実施形態3に係る医療用針3においては、図16に示すように、板状部材360は、2つの溝部364a,364bを有する。溝部364a,364bは、通過部362から短辺側の一方端縁360e1までの間の所定位置に1つ、通過部362から短辺側の他方端縁360e2までの間の所定位置に1つ、それぞれ配置されている。また、図示による説明は省略するが、溝部364a,364bは、アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に設けられている。
【0081】
実施形態4に係る医療用針4においては、図19に示すように、板状部材460は、4つの溝部464a〜464dを有する。溝部464a〜464dは、通過部462から短辺側の一方端縁460e1までの間の所定位置に2つ、通過部462から短辺側の他方端縁460e2までの間の所定位置に2つ、それぞれ配置されている。また、図示による説明は省略するが、溝部464a〜464dは、アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に設けられている。
【0082】
このように、実施形態3及び4に係る医療用針3,4は、実施形態1又は2に係る医療用針1,2とは溝部の配置されている面が異なるが、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材360,460を備えているため、実施形態1に係る医療用針1,2の場合と同様に、板状部材360,460を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材360,460の端部(端部領域)を、患者の皮膚側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材360,460を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0083】
また、実施形態3及び4に係る医療用針3,4においては、溝部364a,364b,464a〜464dは、板状部材360,460における基部20とは反対側の面(患者の皮膚側の面)360s,460sに配置されているため、患者の皮膚S上に板状部材360,460を配置したときに、患者の皮膚Sと板状部材360,460との間に空隙gが生じることとなる(図17(b)参照。)。この空隙gによって患者の皮膚Sと板状部材360,460との間の通気性を確保することができる。このため、患者の皮膚Sと板状部材360,460との間における蒸れの影響を低減することができ、このような蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することが可能となる。また、患者の皮膚Sと板状部材360,460との間における蒸れの影響を低減することができることから、患者の皮膚Sと板状部材360,460との間における菌の繁殖を抑制することが可能となる。
【0084】
実施形態3及び4に係る医療用針3,4は、溝部の配置されている面が異なる点以外では、実施形態1又は2に係る医療用針1,2と同様の構成を有するため、実施形態1又は2に係る医療用針1,2が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0085】
[実施形態5]
図20は、実施形態5に係る医療用針5の斜視図である。図21は、医療用針5の正面図である。図22は、板状部材560の底面図である。図23は、医療用針5を説明するために示す図である。図23(a)は医療用針5を患者の皮膚Sに穿刺したときの様子を模式的に示す図であり、図23(b)は図23(a)の符号Aで示す部分の拡大図である。なお、図20及び図21においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図20及び図21(並びに図23)において、図2及び図3と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0086】
実施形態5に係る医療用針5は、基本的には実施形態4に係る医療用針4と良く似た構成を有するが、板状部材の構成が実施形態4に係る医療用針4とは異なる。
【0087】
すなわち、実施形態5に係る医療用針5においては、図20〜図23に示すように、板状部材560における基部20とは反対側の面560sに、溝部564a〜564dが配置されていることに加えて、複数の突起566が形成されている。
【0088】
複数の突起566のそれぞれは、図20及び図22に示すように、板状部材560の短辺方向(y軸方向)に沿って伸びる直線状の突起であって、板状部材560の長辺方向(x軸方向)に沿って複数(例えば10個)配列されている。なお、複数の突起566の数は、適宜変更可能である。
【0089】
複数の突起566の突出高さh(図21参照。)は、例えば0.7mmに設定されている。突起566の長さRL及び幅RWは、所定の値に設定されている。なお、突起566の長さRL及び幅RW並びに突出高さhは、例えば板状部材の厚みによって適宜変更可能である。
【0090】
通過部562から板状部材560の短辺側の各端縁560e1,560e2までに配置される複数の突起566のそれぞれは、図22に示すように、隣り合う突起566との配置間隔RTが略同一となるように設定されている。また、隣り合う突起566との配置間隔RTは、突起566の幅RWよりも大きくなるように設定されている。
【0091】
また、実施形態5に係る医療用針5においては、溝部564a〜564dの断面形状は、図21などから分かるように、丸形状ではなく、略V字状である(但し、頂点部分が丸みを帯びている。)。なお、溝部564a〜564dは、図示による説明は省略するが、アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に設けられている。
【0092】
このように、実施形態5に係る医療用針5は、実施形態4に係る医療用針4とは板状部材の構成(複数の突起が形成されている点)が異なるが、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材560を備えているため、実施形態1に係る医療用針1の場合と同様に、板状部材560を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材560の端部(端部領域)を、患者の皮膚側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材560を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0093】
また、実施形態5に係る医療用針5においては、板状部材560における基部20とは反対側の面560sには、複数の突起566が形成されているため、患者の皮膚S上に板状部材560を配置したときに、患者の皮膚Sと板状部材560との間に空隙gが生じることとなる(図23(b)参照。)。この空隙gによって、患者の皮膚Sと板状部材560との間の通気性を確保することができる。つまり、溝部564a〜564dだけではなく複数の突起566によっても患者の皮膚Sと板状部材560との間の通気性を確保することができるため、患者の皮膚Sと板状部材560との間における蒸れの影響をさらに低減することができ、結果として、蒸れの影響に起因した不快感の発生をさらに抑制することが可能となるとともに、患者の皮膚Sと板状部材560との間における菌の繁殖をさらに抑制することが可能となる。
また、患者の皮膚Sに医療用針5を穿刺するにあたって医療用針5を配置する際、複数の突起566が滑り止めの役目も果たすことから、医療用針5を配置しやすく、皮膚に穿刺しやすいという効果もある。
【0094】
実施形態5に係る医療用針5は、板状部材の構成が異なる点(複数の突起が形成されている点)以外では、実施形態4に係る医療用針4と同様の構成を有するため、実施形態1又は4に係る医療用針1,4が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0095】
[実施形態6]
図24は、実施形態6に係る医療用針6の斜視図である。図25は、医療用針6の正面図である。なお、図24及び図25においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図24及び図25において、図1及び図3と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0096】
実施形態6に係る医療用針6は、基本的には実施形態1に係る医療用針1と良く似た構成を有するが、板状部材の構成が実施形態1に係る医療用針1とは異なる。
【0097】
すなわち、実施形態6に係る医療用針6においては、図24及び図25に示すように、板状部材として、一部が波状に湾曲した板状部材660を備える。
【0098】
板状部材660は、通過部662と、通過部662から板状部材660の短辺側の各端縁660e1,660e2に向かって波状に湾曲する湾曲部664a,664bと、通過部662を含む所定領域に形成された平面部668とを有する。
【0099】
湾曲部664a,664b及び平面部668のx軸方向に沿った長さは適宜設定可能であるが、実施形態6に係る医療用針6においては、板状部材660全体に対する湾曲部664a,664bの位置が、アクセスポートの上面端部の位置と対応するように、湾曲部664a,664b及び平面部668のx軸方向に沿った長さがそれぞれ設定されている。
【0100】
板状部材660は、このような湾曲部664a,664bを有するため、患者の皮膚に向けて板状部材660を押さえたときに、湾曲部664a,664bの部分で板状部材660を屈曲させることが可能となる。つまり、板状部材660の一部が波状に湾曲していることによって、実施形態1で説明した板状部材60の場合と同様に、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲させることが可能となる。
【0101】
なお、実施形態6に係る医療用針6においては、例えば、湾曲している部分の山の数や当該山の間隔などを適宜設定することにより、各湾曲部664a,664bの湾曲度合を調整可能である。
【0102】
このように、実施形態6に係る医療用針6は、実施形態1に係る医療用針1とは板状部材の構成が異なるが、アクセスポートの上面端部の位置近傍でz軸方向に沿って屈曲可能に構成された板状部材660を備えているため、実施形態1に係る医療用針1の場合と同様に、板状部材660を押さえたときに、アクセスポートの上面端部の位置近傍を境として、板状部材660の端部(端部領域)を、患者の皮膚側に向けて屈曲させることが可能となる。その結果、板状部材660を押さえたときに発生し得る痛みを軽減しつつ、誤刺の発生を防止することが可能となる。
【0103】
実施形態6に係る医療用針6においては、板状部材660は、通過部662を含む所定領域に形成された平面部668をさらに有するため、患者の皮膚に医療用針6を穿刺するにあたって医療用針6を配置する際、医療用針6を安定して配置することができ、皮膚に穿刺しやすいという効果がある。
【0104】
実施形態6に係る医療用針6は、板状部材の構成が異なる点以外では、実施形態1に係る医療用針1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る医療用針1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0105】
以上、本発明の医療用針を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0106】
(1)上記実施形態1〜4においては、溝部の断面形状が丸(半円)形状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図26は、変形例1〜3の溝部164a〜164cを示す図である。図26(a)は変形例1の溝部164aの部分拡大断面図であり、図26(b)は変形例2の溝部164bの部分拡大断面図であり、図26(c)は変形例3の溝部164cの部分拡大断面図である。
溝部としては、例えば、図26(a)に示すように、断面V字状であってもよいし、図26(b)に示すように、断面U字状であってもよいし、図26(c)に示すように、断面台形状であってもよいし、図示による説明は省略するが、断面四角状であってもよい。
【0107】
(2)上記実施形態1〜5においては、板状部材における基部側の面又は患者の皮膚側の面のいずれか一面に溝部が配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、板状部材の基部側の面及び患者の皮膚側の面の両面に溝部が配置されていてもよい。
【0108】
(3)上記実施形態1〜5においては、板状部材の通過部から短辺側の一方端縁までの間に配置された溝部も、通過部から短辺側の他方端縁までの間に配置された溝部も、ともに板状部材における基部側の面又は患者の皮膚側の面のいずれか一面に配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、通過部から短辺側の一方端縁までの間に配置される溝部は、板状部材における基部側の面に配置され、通過部から短辺側の他方端縁までの間に配置される溝部は、板状部材における患者の皮膚側の面に配置されていてもよい。
【0109】
(4)上記実施形態1〜5においては、溝部の数として、板状部材の通過部から短辺側の各端縁までの間にそれぞれ1つずつ又は2つずつ配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。板状部材の通過部から短辺側の各端縁までの間に、溝部が3つずつ又はそれ以上配置されていてもよい。
【0110】
(5)上記実施形態5においては、隣り合う突起566との配置間隔RTが略同一となるように設定されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、板状部材の端縁から略中央部(通過部562近傍)に向かうに従って隣り合う突起566との配置間隔が狭くなるように設定された板状部材であってもよいし、反対に当該配置間隔が広くなるように設定された板状部材であってもよい。
また、上記実施形態5においては、隣り合う突起566との配置間隔RTが突起566の幅RWよりも大きく設定されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記配置間隔RTと突起の幅RWとを同じ値に設定してもよいし、上記配置間隔RTを突起の幅RWよりも小さく設定してもよい。
【0111】
(6)上記実施形態5においては、板状部材560における皮膚側の面560sに溝部564a〜564dと複数の突起566とが配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、板状部材560における基部側の面560wに溝部が配置され、板状部材560における皮膚側の面560sに複数の突起が形成されていてもよい。
【0112】
(7)上記実施形態6においては、通過部662を含む所定領域に平面部668が形成された板状部材660を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、平面部が形成されていない板状部材、つまり、板状部材全体が波状に湾曲したものも本発明に含まれる。
【0113】
(8)上記各実施形態においては、板状部材の平面形状が略長方形状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、楕円形状や丸形状の板状部材であってもよいし、三角形状や正方形状の板状部材であってもよいし、5角形以上の多角形状の板状部材であってもよい。なお、上記各実施形態においては、板状部材の大きさ(平面で見た大きさ)とアクセスポートの大きさとの関係や、板状部材が略長方形状であることなどを踏まえて、板状部材が2ヶ所で屈曲可能に構成されているが、例えば板状部材が略長方形状以外の平面形状である場合には、板状部材は3ヶ所以上で屈曲可能に構成されていてもよい。
【0114】
(9)上記各実施形態においては、板状部材に形成される通過部が、スリット状(切れ込み状)のものである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。通過部としては、例えば、湾曲針10が通過する位置(板状部材の略中央部)に形成された穴(丸穴や角穴)であってもよい。
【0115】
(10)上記各実施形態においては、基部、伸縮部、板状部材及び翼部が一体成形されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これら各部材を個別に作成した後、各部材を接合してもよい。
【0116】
(11)上記各実施形態においては、基部、伸縮部、板状部材及び翼部が同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、部材ごとで異なるプラスチック材料を用いてもよいし、プラスチック材料以外の材料でこれら部材を形成してもよい。
【0117】
(12)上記各実施形態においては、湾曲針10の湾曲部14が90度湾曲している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。90度未満又は90度を超える角度で湾曲した湾曲針を備える医療用針についても本発明を適用可能である。
【0118】
(13)上記各実施形態においては、翼部70が、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、基部20の上方に1つの翼部材がz軸方向に沿って伸びるように配置されていてもよい。また、上記各実施形態においては、略矩形状の把持部72,74を有する翼部70を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、略矩形状とは異なる形状(例えば丸形状など)の把持部を有する翼部であってもよい。
【0119】
(14)上記各実施形態においては、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じx軸方向で揃えられ、翼部70の把持部72,74がx軸方向に伸びる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じx軸方向で揃えられ、翼部の把持部がy軸方向に伸びるように構成されていてもよい。または、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じy軸方向で揃えられ、翼部の把持部がy軸方向に伸びるように構成されていてもよい。
なお、後者の場合、すなわち、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と、板状部材の長辺方向と、翼部の把持部が伸びる方向とが、基部20の長手方向であるy軸方向と同じ向きに揃えられているときには、医療用針全体のx軸方向の幅を比較的小さくすることができるため、例えば、医療用針を2つ以上並べて配置したいときに、各医療用針と繋がる各チューブの導出方向を一方向に揃えた状態で医療用針を配置することが可能となる。
【0120】
(15)上記各実施形態においては、基部として、チューブ接続部22を有する基部20を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、チューブ接続部が省略された基部(チューブ接続部を有しない基部)を備えていてもよい。この場合は、例えば、湾曲針10の基端部12を基部から露出させ、基端部12とチューブとを直接接続すればよい。
【0121】
(16)上記各実施形態においては、伸縮部として、2つの伸縮部材(第1及び第2伸縮部材32,36)によってパンタグラフ状に伸縮可能に構成された伸縮部30を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。伸縮部としては、1つの伸縮部材で構成された伸縮部であってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1,2,3,4,5,6,900 医療用針
10 湾曲針
12 湾曲針の基端部
14 湾曲部
16 湾曲針の先端部
20 基部
22 チューブ接続部
30 伸縮部
32 第1伸縮部材
34,38 屈曲部
36 第2伸縮部材
60,260,360,460,560,660,960 板状部材
60e1,60e2,260e1,260e2,360e1,360e2,460e1,460e2,560e1,560e2,660e1,660e2 板状部材の短辺側の端縁
60s,260s,360s,460s,560s 板状部材における基部20とは反対側の面(患者の皮膚側の面)
60w,260w,360w,460w,560w 板状部材における基部20側の面
62,262,362,462,562,662 通過部
64a,64b,164a,164b,164c,264a〜264d,364a,364b,464a〜464d,564a〜564d 溝部
70 翼部
72,74 把持部
77,78 薄肉部
80 針カバー部材
82 第1格納部
83 切り欠き
84 第2格納部
664a,664b 湾曲部
668 平面部
AP アクセスポート
a1,a2 アクセスポートの上面端部
CA 中央領域
EA 端部領域
GW 溝部64a,64bのx軸方向に沿った幅
g (患者の皮膚と板状部材との間に生じる)空隙
h 突起の突出高さ
L 板状部材60のx軸方向に沿った長さ
L1 短辺側の一方端縁60e1から溝部64aの中間位置までのx軸方向に沿った長さ
L2 溝部64aの中間位置から溝部64bの中間位置までのx軸方向に沿った長さ
L3 溝部64bの中間位置から短辺側の他方端縁60e2までのx軸方向に沿った長さ
P1 セプタム
P2 ポート筐体部
RL 突起の長さ
RT 隣り合う突起との配置間隔
RW 突起の幅
S 患者の皮膚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、
所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、
前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、
前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、
前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、
前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、
前記板状部材(60)は、少なくとも前記アクセスポートの上面端部の位置近傍で前記第1方向に沿って屈曲可能に構成されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項2】
患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、
所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、
前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、
前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、
前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、
前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、
前記板状部材(60)を、前記通過部(62)を含み前記アクセスポートの上面端部間に対応する中央領域(CA)と、前記アクセスポートの上面端部から前記板状部材(60)の端縁までに対応する端部領域(EA)との2つの領域に分割したとき、
前記板状部材(60)は、少なくとも前記中央領域(CA)と前記端部領域(EA)との境界部分で、前記第1方向に沿って屈曲可能に構成されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用針において、
前記中央領域(CA)の最大長さが、13mm〜22mmの範囲に設定されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用針において、
前記板状部材(60)には、前記アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に少なくとも1つの溝部(64a,64b)が設けられていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の医療用針において、
前記溝部(64,64b)は、前記板状部材(60)における前記基部(20)側の面(60w)に配置されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項6】
請求項4に記載の医療用針において、
前記溝部(364a,364b)は、前記板状部材(360)における前記基部(20)とは反対側の面(360s)に配置されていることを特徴とする医療用針(3)。
【請求項7】
請求項6に記載の医療用針において、
前記板状部材(560)における前記基部(20)とは反対側の面(560s)には、複数の突起(566)が形成されていることを特徴とする医療用針(5)。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の医療用針において、
前記板状部材(60)における前記基部(20)とは反対側の面(60s)上で互いに交差する2方向のうち、前記湾曲針における基端部(12)側の部分から前記湾曲部(14)に沿った方向と同一方向を第2方向とし、他方を第3方向としたとき、
前記伸縮部(30)は、前記第3方向に沿って広がるように構成されたパンタグラフ状の伸縮部材であって、
前記板状部材(60)は、前記第3方向に長辺方向を有する略長方形状であり、
前記溝部(64a,64b)は、前記板状部材(60)における短辺方向に沿って伸びる直線状の溝であることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用針において、
前記板状部材(660)は、前記通過部(662)から前記板状部材(660)の端縁(660e1,660e2)に向かって波状に湾曲する湾曲部(664a,664b)をさらに有することを特徴とする医療用針(6)。
【請求項10】
請求項9に記載の医療用針において、
前記板状部材(660)は、前記通過部(662)を含む所定領域に形成された平面部(668)をさらに有することを特徴とする医療用針(6)。
【請求項1】
患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、
所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、
前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、
前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、
前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、
前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、
前記板状部材(60)は、少なくとも前記アクセスポートの上面端部の位置近傍で前記第1方向に沿って屈曲可能に構成されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項2】
患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、
所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、
前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、
前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、
前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、
前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、
前記板状部材(60)を、前記通過部(62)を含み前記アクセスポートの上面端部間に対応する中央領域(CA)と、前記アクセスポートの上面端部から前記板状部材(60)の端縁までに対応する端部領域(EA)との2つの領域に分割したとき、
前記板状部材(60)は、少なくとも前記中央領域(CA)と前記端部領域(EA)との境界部分で、前記第1方向に沿って屈曲可能に構成されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用針において、
前記中央領域(CA)の最大長さが、13mm〜22mmの範囲に設定されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用針において、
前記板状部材(60)には、前記アクセスポートの上面端部に対応する位置近傍に少なくとも1つの溝部(64a,64b)が設けられていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の医療用針において、
前記溝部(64,64b)は、前記板状部材(60)における前記基部(20)側の面(60w)に配置されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項6】
請求項4に記載の医療用針において、
前記溝部(364a,364b)は、前記板状部材(360)における前記基部(20)とは反対側の面(360s)に配置されていることを特徴とする医療用針(3)。
【請求項7】
請求項6に記載の医療用針において、
前記板状部材(560)における前記基部(20)とは反対側の面(560s)には、複数の突起(566)が形成されていることを特徴とする医療用針(5)。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の医療用針において、
前記板状部材(60)における前記基部(20)とは反対側の面(60s)上で互いに交差する2方向のうち、前記湾曲針における基端部(12)側の部分から前記湾曲部(14)に沿った方向と同一方向を第2方向とし、他方を第3方向としたとき、
前記伸縮部(30)は、前記第3方向に沿って広がるように構成されたパンタグラフ状の伸縮部材であって、
前記板状部材(60)は、前記第3方向に長辺方向を有する略長方形状であり、
前記溝部(64a,64b)は、前記板状部材(60)における短辺方向に沿って伸びる直線状の溝であることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用針において、
前記板状部材(660)は、前記通過部(662)から前記板状部材(660)の端縁(660e1,660e2)に向かって波状に湾曲する湾曲部(664a,664b)をさらに有することを特徴とする医療用針(6)。
【請求項10】
請求項9に記載の医療用針において、
前記板状部材(660)は、前記通過部(662)を含む所定領域に形成された平面部(668)をさらに有することを特徴とする医療用針(6)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−162172(P2010−162172A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7073(P2009−7073)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】
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