医療用鋏み具
【課題】 鋏み部による挟持・解放動作を確実に行わせることを可能としながら製造を容易化して安価に供することを課題とする。
【解決手段】
一対のバネ性を有する柄扞1A、1Bの把持操作によりその交点を支点として先端の鋏み部3、3が開閉し、把持時に鋏み部を柄扞のバネ性に抗して閉じ状態に維持する係止手段を備えた医療用鋏み具であって、上記係止手段10は、一方の柄扞1Aの内面側に基端が固着され自由端の一側部に突片12が、自由端の他側部に鋭角に屈曲された係止爪13が設けられた弧状に湾曲するバネ部片14と、他方の柄扞1Bの内面側に設けられ柄扞1A、1Bの把持によりバネ部片14の突片12が潜り込むガイド部15と、前記鋏み部3、3の閉じ時に前記係止爪13が係合する係止溝16とで構成したことにある。
【解決手段】
一対のバネ性を有する柄扞1A、1Bの把持操作によりその交点を支点として先端の鋏み部3、3が開閉し、把持時に鋏み部を柄扞のバネ性に抗して閉じ状態に維持する係止手段を備えた医療用鋏み具であって、上記係止手段10は、一方の柄扞1Aの内面側に基端が固着され自由端の一側部に突片12が、自由端の他側部に鋭角に屈曲された係止爪13が設けられた弧状に湾曲するバネ部片14と、他方の柄扞1Bの内面側に設けられ柄扞1A、1Bの把持によりバネ部片14の突片12が潜り込むガイド部15と、前記鋏み部3、3の閉じ時に前記係止爪13が係合する係止溝16とで構成したことにある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用鋏み具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具として、例えば手術後の縫合時における針を持つ持針器と称される鋏み具がある。この鋏み具は、交差部が軸止めされた一対の柄部を握ることにより先端の鋏み部が閉じて針を挟持した状態を保ち、この挟持状態を係止手段により維持し、再び柄部を握ることにより係止手段が解脱されて針の挟持を解くようになっている。これは持針器に限らず手術用の鋏み具(鉗子)においても同様な構成を有している。
【0003】
従来の上記類の鋏み具は、図11に示すようにバネ性を有する一対の柄扞1A、1Bの交差部が軸2により枢支され、柄扞1A、1Bの軸2より先端側が鋏み部3、3、後端が係着部4により係着されていて、柄扞1A、1Bを握ることにより鋏み部3、3が閉じ、握りを解くことにより鋏み部3、3が開らくように構成されている。
【0004】
上記鋏み部3、3の閉じ状態を維持するための係止手段5は、図11にみられるように、各柄扞1A、1Bの内面側に位相を異らせて固着される係止扞6A、6Bを有し、これら係止扞6A、6Bは、一方の係止扞6Aの後端側、他方の係止扞6Bの前端側にそれぞれバネ性を有する係合部7A、7Bが形成されている。
【0005】
これら係合部7A、7Bは互に係着自在とされるもので、図13B、図14Bに拡大断面図を示すように、一方の係合部7Aに下向きの係合段部7Cが形成され、他方の係合部7Bは上記係合段部7Cに係脱し得る偏平形状に形成されており、柄扞1A、1Bを握ることにより図15に示すように係合部7Aがルートaを通り係合部7Bにそってこれを乗り越えるとき同図に実線で示しているように係合位置へ至って係合段部7Cに係合し、解脱時には係合部7Bの反対側からルートbを通って元の位置へ戻るようになっている。したがって係合への往路と、解脱後の復路とは異るルートa、bを通る。
【0006】
上記従来の係止手段5は、これを構成する係止扞6A、6Bの一端にバネ性を与えるとともに断面形状を特殊な形状に加工する必要があるため、その製造に著しく多くの工程を必要とする。
【0007】
すなわち従来から用いられている係止扞6A、6Bは、厚さ4.0mmの板材をスライス加工したのち仕上げ加工し、熱処理を施したのち柄扞1A、1Bへの取付部6D、6Eの加工を行い、さらに係合部7A、7Bの研摩加工を行って電解処理するという、極めて繁雑な工程を経て形成されている。
【0008】
そのため製作費が嵩み、勢い鋏み具が高価なものとなる。
【0009】
また、鋏み具の使用に際しては、係止扞6A、6Bの係合部7A、7Bを係合させるのに係合部7Aが係合部7Bを乗り越える際に係合せずに通過してしまうことを防ぐため、かなりの操作要領を必要とし、確実な係止状態を得ることおよび係止を解く操作に熟練を要することになって、使い勝手に難点があった。
【0010】
上記の点を解決する手段を示す文献は見当らない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、係止手段の構成を簡易化し、その製造を容易として安価に提供することを可能としながら、熟練を要することなく確実な係止(鋏み部による挟み状態)と係止の解除とを行わせることを可能とする医療用鋏み具を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する手段として本発明は、一対のバネ性を有する柄扞の把持操作によりその交点を支点として柄扞先端の鋏み部が開閉自在とされ、把持時に前記鋏み部を柄扞のバネ性に抗して閉じ状態に維持するための係止手段を備えた医療用鋏み具において、前記係止手段は、一方の柄扞の内面側に基端が固着され自由端の一側部に突片が、自由端の他側部に鋭角に屈曲された係止爪がそれぞれ設けられた弧状に湾曲するバネ部片と、他方の柄扞の内面側に設けられ柄扞の把持により前記バネ部片の突片が潜り込むガイド部と、前記鋏み部の閉じ時に前記バネ部片の係止爪が係合する係止溝とを具有し、柄扞の把持により前記バネ部片の自由端が他側の柄扞側に当ってスライドし、その突片がガイド部の下に進入したのちその係止爪が前記係止溝に嵌入して鋏み部の閉状態を維持し、再度柄扞を把持することによりバネ部片がさらに撓んでその係止爪が係止溝から脱出し、係止が解かれて鋏み部が開放されるようにしたことにある。
【0013】
前記ガイド部は、前記バネ部片の自由端の突片が進入する側が高く、出側が低くなる方向に傾斜した片屋根構造とすることが好ましい。
【0014】
また前記ガイド部および係止溝を柄扞の内面側に固着するベースに設けることが製造を容易とするうえで望ましい。
【0015】
前記ガイド部に対し前記バネ部片の基端側の位置に柱体を立設し、この柱体の高さを、柄扞を把持して前記バネ部片の係止爪を係止溝から外す際に該バネ部片に当接してこれを押し上げ、前記係止爪を係止溝から強制的に脱出させるようにすることができる。
【0016】
この場合も、前記柱体を前記ガイド部および係止溝を設けたベース上に立設することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、鋏み部の閉じ状態を維持するための係止手段を構成するバネ部片は板バネ材で構成することができるので、突片および係止爪を含んでもプレス加工で一挙に製造することができ、またガイド部および係止溝は単純な加工で形成することができるので、これらにより係止手段を容易に製造することが可能となって著しく安価に得ることができる。
【0018】
一方、係止手段としての機能の面においても、柄扞の把持によるバネ部片の撓みを利用して閉じ状態を保つように係着させるので、何ら熟練を要することなく確実な係止動作および解除動作をなさしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明による医療用鋏み具の一実施形態の斜視図を示しており、図11に示した在来の鋏み具と共通する基本構成部分はこれと同一符号を用いて説明する。
【0020】
鋏み具を構成する一対の柄扞1A、1Bは、その交点が軸2により枢支され、この軸2より先端側が鋏み部3、3とされており、柄扞1A、1Bの後半部1C、1Dは薄い板バネ状とされていて、その後端が交差して係着され、無負荷時(柄扞1A、1Bを把持していないとき)にはそのバネ性により鋏み部3、3が開らいた状態におかれるようになっている。
【0021】
前記鋏み部3、3間に縫合用針等を挟持したときその状態を保つための本発明における係止手段10は、一方の柄扞1Aの内面側で前記軸2側に基端がピン11により固着され自由端の一側に突片12が、同他側に鋭角に屈曲された係止爪13がそれぞれ設けられた弧状に湾曲する板バネ材からなるバネ部片14と、他方の柄扞1Bの内面側に設けられ柄扞1A、1Bの把持により前記バネ部片14の突片12が潜り込むガイド部15と、前記鋏み部3、3の閉じ時に前記バネ部片14の係止爪13が係合する係止溝16とで構成されている。
【0022】
前記ガイド部15は、前記バネ部片14の突片12が進入しやすくするため、その進入側が高く、出側が低くなるよう傾斜した片屋根構造とされている。
【0023】
図示の例では、これらガイド部15および係止溝16をベース17に設けるようにし、このベース17を柄扞1Bの内面側に固着する構成として一層製造の容易化を図っている。
【0024】
すなわち図4、図5にバネ部片14と共に取り出して示すように、ベース17の一側にガイド部15の支柱部分15aが立設されてその上端にガイド部15がベース17の略半幅の領域に張り出すように形成され、このガイド部15とは反対側でかつ若干柄扞1Bの後端寄りの位置に係止溝16がベース17の略半幅の領域に切設されており、この係止溝16は、バネ部片14の係止爪13の屈曲角と整合するよう角度θだけ傾斜して形成されている。
【0025】
次に上記実施形態の作用を説明する。
【0026】
非挟持状態のときは、図1および図6(A)にみられるように柄扞1A、1Bのバネ性により鋏み部3、3が開らいており、このとき係止手段10のバネ部片14は反対側の柄扞1Bから離反した状態におかれている。
【0027】
鋏み部3、3間に例えば縫合用針を挟持するときは、鋏み部3、3間に縫合用針を位置させたうえで柄扞1A、1Bを握ると、バネ部片14の自由端がベース17の上面に接触し、さらに柄扞1A、1Bを握って行くとバネ部片14の自由端の突片12がガイド部15の下に潜り込み(図2、図6(B)示)、以後バネ部片14はガイド部15による規制を受けながら徐々に伸展して滑動し(図6(B)〜(C))、鋏み部3、3が縫合用針をしっかりと挟持した時点でバネ部片14の先端の係止爪13がベース17の係止溝16に嵌入する(図3、図6(D)示)。
【0028】
これにより柄扞1A、1Bの把持を解いても、柄扞1A、1Bはバネ部片14による拘束により閉じ状態が維持され、縫合作業を行うことができる。
【0029】
縫合用針の挟持を解くときは、再び柄扞1A、1Bを握れば、バネ部片14の自由端がガイド部15にそってさらに進むのでその係止爪13が係止溝16から抜け(図6(D)示)、そのまま柄扞1A、1Bの把持を解けば、バネ部片14の自由端はガイド部15の下から抜け出て図1の状態に復帰し、縫合用針の挟持が解かれる。
【0030】
したがって係止手段10の係脱動作は柄扞1A、1Bの把持に伴うバネ部片14の自由端の直線移動のみによって行われるので係脱が確実になされ、迅速な鋏み操作およびその解除を行うことができる。特にバネ部片14の直線移動時にその背後がガイド部15により規制されるので、バネ部片14の係止爪13と柄扞1B側の係止溝16との係合が間違いなく行われ、また係合解除もガイド部15による規制の下に行われるので確実な解除ができ、これらにより縫合用針等の挟持および開放を熟練を要することなく確実に行うことが可能となる。
【0031】
図7〜図10は、係止手段10のバネ部片14の係止爪13と係止溝16との係脱作用をさらに確実になさしめるための付加機構を設けた実施形態を示すものである。
【0032】
この実施形態では、前記ベース17の前記軸2側の端部上に柱体18が立設され、この柱体18の上端が前記バネ部片14の中間位置に当接し得るように構成されている。他の構成に関しては図1〜図6に示した実施形態と同じであるから、対応する部分にはこれと同一符号を付すに留め、重複説明は省略する。
【0033】
この実施形態において、柄扞1A、1Bを把持して鋏み部3、3を閉じるときは、図1の実施形態と同様にバネ部片14の自由端がベース17上に接して滑り、ガイド部15による規制を受けて進み、その係止爪13が係止溝16に係合して閉じ状態が維持される。したがって挟持動作時は前述の実施形態と同じ動作となる。
【0034】
挟持を解くときは、再び柄扞1A、1Bを握ると、最先に柱体18の上端がバネ部片14に当接してバネ部片14を相対的に押し上げ(図10(D)示)、バネ部片14の係止爪13を係止溝16から外す方向に力が作用して係止爪13が係止溝16から抜け出る。
【0035】
こうして柄扞1A、1Bの把持を解けば、柄扞1A、1Bのバネ性により鋏み部3、3が開らき、縫合用針の挟持が解かれる。
【0036】
このように挟持開放の際のバネ部片14の変位は、柱体18による押し上げ作用によりガイド部15が支点となってバネ部片14を逆方向に反らせるよう変位させることになり、これにより係止爪13が係止溝16から外されることになるので、係止爪13を係止溝16から確実に抜き外すことができ、1回の把持操作によって間違いなく開放させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による医療用鋏み具の一実施形態を示す開放状態時の斜視図。
【図2】図1における係止手段の係止に至る途中の説明図。
【図3】同、係止した状態の説明図。
【図4】(A)、(B)は、同係止手段の分解斜視図。
【図5】(A)、(B)は、同じ側面図。
【図6】(A)〜(D)は係止手段の動作状況を示す説明図。
【図7】本発明における係止手段の他の実施形態を備えた医療用鋏み具の斜視図。
【図8】図7における係止手段の係止に至る途中の説明図。
【図9】同、係止した状態の説明図。
【図10】(A)〜(D)は図7における係止手段の動作状況を示す説明図。
【図11】従来の医療用鋏み具の側面図。
【図12】同、閉止状態時の側面図。
【図13】図11における係止手段の一方の係止扞を示し、(A)は側面図、(B)は拡大端面図。
【図14】同、他方の係止扞を示し、(A)は側面図、(B)は拡大端面図。
【図15】同、両係止扞の係合および解脱時の動作を示す説明図。
【符号の説明】
【0038】
1A、1B 柄扞
2 軸
3 鋏み部
10 係止手段
12 突片
13 係止爪
14 バネ部片
15 ガイド部
16 係止溝
17 ベース
18 柱体
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用鋏み具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具として、例えば手術後の縫合時における針を持つ持針器と称される鋏み具がある。この鋏み具は、交差部が軸止めされた一対の柄部を握ることにより先端の鋏み部が閉じて針を挟持した状態を保ち、この挟持状態を係止手段により維持し、再び柄部を握ることにより係止手段が解脱されて針の挟持を解くようになっている。これは持針器に限らず手術用の鋏み具(鉗子)においても同様な構成を有している。
【0003】
従来の上記類の鋏み具は、図11に示すようにバネ性を有する一対の柄扞1A、1Bの交差部が軸2により枢支され、柄扞1A、1Bの軸2より先端側が鋏み部3、3、後端が係着部4により係着されていて、柄扞1A、1Bを握ることにより鋏み部3、3が閉じ、握りを解くことにより鋏み部3、3が開らくように構成されている。
【0004】
上記鋏み部3、3の閉じ状態を維持するための係止手段5は、図11にみられるように、各柄扞1A、1Bの内面側に位相を異らせて固着される係止扞6A、6Bを有し、これら係止扞6A、6Bは、一方の係止扞6Aの後端側、他方の係止扞6Bの前端側にそれぞれバネ性を有する係合部7A、7Bが形成されている。
【0005】
これら係合部7A、7Bは互に係着自在とされるもので、図13B、図14Bに拡大断面図を示すように、一方の係合部7Aに下向きの係合段部7Cが形成され、他方の係合部7Bは上記係合段部7Cに係脱し得る偏平形状に形成されており、柄扞1A、1Bを握ることにより図15に示すように係合部7Aがルートaを通り係合部7Bにそってこれを乗り越えるとき同図に実線で示しているように係合位置へ至って係合段部7Cに係合し、解脱時には係合部7Bの反対側からルートbを通って元の位置へ戻るようになっている。したがって係合への往路と、解脱後の復路とは異るルートa、bを通る。
【0006】
上記従来の係止手段5は、これを構成する係止扞6A、6Bの一端にバネ性を与えるとともに断面形状を特殊な形状に加工する必要があるため、その製造に著しく多くの工程を必要とする。
【0007】
すなわち従来から用いられている係止扞6A、6Bは、厚さ4.0mmの板材をスライス加工したのち仕上げ加工し、熱処理を施したのち柄扞1A、1Bへの取付部6D、6Eの加工を行い、さらに係合部7A、7Bの研摩加工を行って電解処理するという、極めて繁雑な工程を経て形成されている。
【0008】
そのため製作費が嵩み、勢い鋏み具が高価なものとなる。
【0009】
また、鋏み具の使用に際しては、係止扞6A、6Bの係合部7A、7Bを係合させるのに係合部7Aが係合部7Bを乗り越える際に係合せずに通過してしまうことを防ぐため、かなりの操作要領を必要とし、確実な係止状態を得ることおよび係止を解く操作に熟練を要することになって、使い勝手に難点があった。
【0010】
上記の点を解決する手段を示す文献は見当らない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、係止手段の構成を簡易化し、その製造を容易として安価に提供することを可能としながら、熟練を要することなく確実な係止(鋏み部による挟み状態)と係止の解除とを行わせることを可能とする医療用鋏み具を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する手段として本発明は、一対のバネ性を有する柄扞の把持操作によりその交点を支点として柄扞先端の鋏み部が開閉自在とされ、把持時に前記鋏み部を柄扞のバネ性に抗して閉じ状態に維持するための係止手段を備えた医療用鋏み具において、前記係止手段は、一方の柄扞の内面側に基端が固着され自由端の一側部に突片が、自由端の他側部に鋭角に屈曲された係止爪がそれぞれ設けられた弧状に湾曲するバネ部片と、他方の柄扞の内面側に設けられ柄扞の把持により前記バネ部片の突片が潜り込むガイド部と、前記鋏み部の閉じ時に前記バネ部片の係止爪が係合する係止溝とを具有し、柄扞の把持により前記バネ部片の自由端が他側の柄扞側に当ってスライドし、その突片がガイド部の下に進入したのちその係止爪が前記係止溝に嵌入して鋏み部の閉状態を維持し、再度柄扞を把持することによりバネ部片がさらに撓んでその係止爪が係止溝から脱出し、係止が解かれて鋏み部が開放されるようにしたことにある。
【0013】
前記ガイド部は、前記バネ部片の自由端の突片が進入する側が高く、出側が低くなる方向に傾斜した片屋根構造とすることが好ましい。
【0014】
また前記ガイド部および係止溝を柄扞の内面側に固着するベースに設けることが製造を容易とするうえで望ましい。
【0015】
前記ガイド部に対し前記バネ部片の基端側の位置に柱体を立設し、この柱体の高さを、柄扞を把持して前記バネ部片の係止爪を係止溝から外す際に該バネ部片に当接してこれを押し上げ、前記係止爪を係止溝から強制的に脱出させるようにすることができる。
【0016】
この場合も、前記柱体を前記ガイド部および係止溝を設けたベース上に立設することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、鋏み部の閉じ状態を維持するための係止手段を構成するバネ部片は板バネ材で構成することができるので、突片および係止爪を含んでもプレス加工で一挙に製造することができ、またガイド部および係止溝は単純な加工で形成することができるので、これらにより係止手段を容易に製造することが可能となって著しく安価に得ることができる。
【0018】
一方、係止手段としての機能の面においても、柄扞の把持によるバネ部片の撓みを利用して閉じ状態を保つように係着させるので、何ら熟練を要することなく確実な係止動作および解除動作をなさしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明による医療用鋏み具の一実施形態の斜視図を示しており、図11に示した在来の鋏み具と共通する基本構成部分はこれと同一符号を用いて説明する。
【0020】
鋏み具を構成する一対の柄扞1A、1Bは、その交点が軸2により枢支され、この軸2より先端側が鋏み部3、3とされており、柄扞1A、1Bの後半部1C、1Dは薄い板バネ状とされていて、その後端が交差して係着され、無負荷時(柄扞1A、1Bを把持していないとき)にはそのバネ性により鋏み部3、3が開らいた状態におかれるようになっている。
【0021】
前記鋏み部3、3間に縫合用針等を挟持したときその状態を保つための本発明における係止手段10は、一方の柄扞1Aの内面側で前記軸2側に基端がピン11により固着され自由端の一側に突片12が、同他側に鋭角に屈曲された係止爪13がそれぞれ設けられた弧状に湾曲する板バネ材からなるバネ部片14と、他方の柄扞1Bの内面側に設けられ柄扞1A、1Bの把持により前記バネ部片14の突片12が潜り込むガイド部15と、前記鋏み部3、3の閉じ時に前記バネ部片14の係止爪13が係合する係止溝16とで構成されている。
【0022】
前記ガイド部15は、前記バネ部片14の突片12が進入しやすくするため、その進入側が高く、出側が低くなるよう傾斜した片屋根構造とされている。
【0023】
図示の例では、これらガイド部15および係止溝16をベース17に設けるようにし、このベース17を柄扞1Bの内面側に固着する構成として一層製造の容易化を図っている。
【0024】
すなわち図4、図5にバネ部片14と共に取り出して示すように、ベース17の一側にガイド部15の支柱部分15aが立設されてその上端にガイド部15がベース17の略半幅の領域に張り出すように形成され、このガイド部15とは反対側でかつ若干柄扞1Bの後端寄りの位置に係止溝16がベース17の略半幅の領域に切設されており、この係止溝16は、バネ部片14の係止爪13の屈曲角と整合するよう角度θだけ傾斜して形成されている。
【0025】
次に上記実施形態の作用を説明する。
【0026】
非挟持状態のときは、図1および図6(A)にみられるように柄扞1A、1Bのバネ性により鋏み部3、3が開らいており、このとき係止手段10のバネ部片14は反対側の柄扞1Bから離反した状態におかれている。
【0027】
鋏み部3、3間に例えば縫合用針を挟持するときは、鋏み部3、3間に縫合用針を位置させたうえで柄扞1A、1Bを握ると、バネ部片14の自由端がベース17の上面に接触し、さらに柄扞1A、1Bを握って行くとバネ部片14の自由端の突片12がガイド部15の下に潜り込み(図2、図6(B)示)、以後バネ部片14はガイド部15による規制を受けながら徐々に伸展して滑動し(図6(B)〜(C))、鋏み部3、3が縫合用針をしっかりと挟持した時点でバネ部片14の先端の係止爪13がベース17の係止溝16に嵌入する(図3、図6(D)示)。
【0028】
これにより柄扞1A、1Bの把持を解いても、柄扞1A、1Bはバネ部片14による拘束により閉じ状態が維持され、縫合作業を行うことができる。
【0029】
縫合用針の挟持を解くときは、再び柄扞1A、1Bを握れば、バネ部片14の自由端がガイド部15にそってさらに進むのでその係止爪13が係止溝16から抜け(図6(D)示)、そのまま柄扞1A、1Bの把持を解けば、バネ部片14の自由端はガイド部15の下から抜け出て図1の状態に復帰し、縫合用針の挟持が解かれる。
【0030】
したがって係止手段10の係脱動作は柄扞1A、1Bの把持に伴うバネ部片14の自由端の直線移動のみによって行われるので係脱が確実になされ、迅速な鋏み操作およびその解除を行うことができる。特にバネ部片14の直線移動時にその背後がガイド部15により規制されるので、バネ部片14の係止爪13と柄扞1B側の係止溝16との係合が間違いなく行われ、また係合解除もガイド部15による規制の下に行われるので確実な解除ができ、これらにより縫合用針等の挟持および開放を熟練を要することなく確実に行うことが可能となる。
【0031】
図7〜図10は、係止手段10のバネ部片14の係止爪13と係止溝16との係脱作用をさらに確実になさしめるための付加機構を設けた実施形態を示すものである。
【0032】
この実施形態では、前記ベース17の前記軸2側の端部上に柱体18が立設され、この柱体18の上端が前記バネ部片14の中間位置に当接し得るように構成されている。他の構成に関しては図1〜図6に示した実施形態と同じであるから、対応する部分にはこれと同一符号を付すに留め、重複説明は省略する。
【0033】
この実施形態において、柄扞1A、1Bを把持して鋏み部3、3を閉じるときは、図1の実施形態と同様にバネ部片14の自由端がベース17上に接して滑り、ガイド部15による規制を受けて進み、その係止爪13が係止溝16に係合して閉じ状態が維持される。したがって挟持動作時は前述の実施形態と同じ動作となる。
【0034】
挟持を解くときは、再び柄扞1A、1Bを握ると、最先に柱体18の上端がバネ部片14に当接してバネ部片14を相対的に押し上げ(図10(D)示)、バネ部片14の係止爪13を係止溝16から外す方向に力が作用して係止爪13が係止溝16から抜け出る。
【0035】
こうして柄扞1A、1Bの把持を解けば、柄扞1A、1Bのバネ性により鋏み部3、3が開らき、縫合用針の挟持が解かれる。
【0036】
このように挟持開放の際のバネ部片14の変位は、柱体18による押し上げ作用によりガイド部15が支点となってバネ部片14を逆方向に反らせるよう変位させることになり、これにより係止爪13が係止溝16から外されることになるので、係止爪13を係止溝16から確実に抜き外すことができ、1回の把持操作によって間違いなく開放させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による医療用鋏み具の一実施形態を示す開放状態時の斜視図。
【図2】図1における係止手段の係止に至る途中の説明図。
【図3】同、係止した状態の説明図。
【図4】(A)、(B)は、同係止手段の分解斜視図。
【図5】(A)、(B)は、同じ側面図。
【図6】(A)〜(D)は係止手段の動作状況を示す説明図。
【図7】本発明における係止手段の他の実施形態を備えた医療用鋏み具の斜視図。
【図8】図7における係止手段の係止に至る途中の説明図。
【図9】同、係止した状態の説明図。
【図10】(A)〜(D)は図7における係止手段の動作状況を示す説明図。
【図11】従来の医療用鋏み具の側面図。
【図12】同、閉止状態時の側面図。
【図13】図11における係止手段の一方の係止扞を示し、(A)は側面図、(B)は拡大端面図。
【図14】同、他方の係止扞を示し、(A)は側面図、(B)は拡大端面図。
【図15】同、両係止扞の係合および解脱時の動作を示す説明図。
【符号の説明】
【0038】
1A、1B 柄扞
2 軸
3 鋏み部
10 係止手段
12 突片
13 係止爪
14 バネ部片
15 ガイド部
16 係止溝
17 ベース
18 柱体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のバネ性を有する柄扞の把持操作によりその交点を支点として柄扞先端の鋏み部が開閉自在とされ、把持時に前記鋏み部を柄扞のバネ性に抗して閉じ状態に維持するための係止手段を備えた医療用鋏み具において、
前記係止手段は、一方の柄扞の内面側に基端が固着され自由端の一側部に突片が、自由端の他側部に鋭角に屈曲された係止爪がそれぞれ設けられた弧状に湾曲するバネ部片と、他方の柄扞の内面側に設けられ柄扞の把持により前記バネ部片の突片が潜り込むガイド部と、前記鋏み部の閉じ時に前記バネ部片の係止爪が係合する係止溝とを具有し、柄扞の把持により前記バネ部片の自由端が他側の柄扞側に当ってスライドし、その突片がガイド部の下に進入したのちその係止爪が前記係止溝に嵌入して鋏み部の閉状態を維持し、再度柄扞を把持することによりバネ部片がさらに撓んでその係止爪が係止溝から脱出し、係止が解かれて鋏み部が開放されるようにしたことを特徴とする医療用鋏み具。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記バネ部片の自由端の突片が進入する側が高く、出側が低くなるよう傾斜した片屋根構造とされている請求項1記載の医療用鋏み具。
【請求項3】
前記ガイド部および係止溝が柄扞の内面に固着されるベースに設けられている請求項1または2記載の医療用鋏み具。
【請求項4】
前記ガイド部に対し前記バネ部片の基端側の位置に柱体が立設され、この柱体は柄扞を把持して前記バネ部片の係止爪を係止溝から外す際に該バネ部片に当接してこれを押し上げて前記係止爪を係止溝から強制的に脱出させ得る高さを有している請求項1または2記載の医療用鋏み具。
【請求項5】
前記柱体がベース上に立設されている請求項4記載の医療用鋏み具。
【請求項1】
一対のバネ性を有する柄扞の把持操作によりその交点を支点として柄扞先端の鋏み部が開閉自在とされ、把持時に前記鋏み部を柄扞のバネ性に抗して閉じ状態に維持するための係止手段を備えた医療用鋏み具において、
前記係止手段は、一方の柄扞の内面側に基端が固着され自由端の一側部に突片が、自由端の他側部に鋭角に屈曲された係止爪がそれぞれ設けられた弧状に湾曲するバネ部片と、他方の柄扞の内面側に設けられ柄扞の把持により前記バネ部片の突片が潜り込むガイド部と、前記鋏み部の閉じ時に前記バネ部片の係止爪が係合する係止溝とを具有し、柄扞の把持により前記バネ部片の自由端が他側の柄扞側に当ってスライドし、その突片がガイド部の下に進入したのちその係止爪が前記係止溝に嵌入して鋏み部の閉状態を維持し、再度柄扞を把持することによりバネ部片がさらに撓んでその係止爪が係止溝から脱出し、係止が解かれて鋏み部が開放されるようにしたことを特徴とする医療用鋏み具。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記バネ部片の自由端の突片が進入する側が高く、出側が低くなるよう傾斜した片屋根構造とされている請求項1記載の医療用鋏み具。
【請求項3】
前記ガイド部および係止溝が柄扞の内面に固着されるベースに設けられている請求項1または2記載の医療用鋏み具。
【請求項4】
前記ガイド部に対し前記バネ部片の基端側の位置に柱体が立設され、この柱体は柄扞を把持して前記バネ部片の係止爪を係止溝から外す際に該バネ部片に当接してこれを押し上げて前記係止爪を係止溝から強制的に脱出させ得る高さを有している請求項1または2記載の医療用鋏み具。
【請求項5】
前記柱体がベース上に立設されている請求項4記載の医療用鋏み具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−212280(P2006−212280A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29496(P2005−29496)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
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