説明

医薬品ガリウム組成物及び方法

錯体形成しないガリウム塩に対して経口生物活性が増大するガリウム錯体を含んでなる、新規な医薬品ガリウム組成物を開示する。当該組成物は、がん、高カルシウム血症、骨多孔症、骨減少症及びページェット病を含んでなる、カルシウムの異常再吸収増加の抑制が所望される症状及び疾病の治療に有用である。製剤及び治療の方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願へのクロスリファレンス)本出願明細は、2005年11月4日付け米国仮出願第60/733388号の優先権を主張し、当該仮出願の開示は参照により全体が本明細書に取り入れられる。
【0002】
本発明は、一般的に、錯体形成しないガリウム塩と比較して経口生物活性が増大したガリウム錯体及びその使用を含んでなる、医薬品ガリウム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ガリウムは、高カルシウム血症、がん、及びとりわけ広範な退行性又は代謝性の骨疾患(例えば骨多孔症及びページェット病)を含んでなる、多くのヒト及び動物の疾患治療において、医薬上有用性が認められている。例えば、多くの治験により、ガリウムはページェット病において骨代謝回転の異常亢進を低減する能力と同様に、抗悪性活性を有することが示されてきた。(非特許文献参照:Bernstein、Therapeutic Gallium Compounds、in Metallotherapeutic Drugs and Meta−Based Diagnostic Agents:The Use of Metals in Medicine、259〜277ページ、Gielen and Tiekink eds.、2005年)ガリウムは、現在、悪性高カリウム血症治療用の静注クエン酸キレート化硝酸ガリウム水溶液(GanateR)の米国における使用が承認されている。
【0004】
その有用性が確立しているにもかかわらず、これらの疾患治療におけるガリウム使用は、硝酸塩及び塩酸塩等の形態でのガリウムイオンが経口投与時の生物活性が高くないという事実により妨げられている。経口投与したガリウム塩の生物活性が低いということは、非実用的な大量を患者に経口投与するか、又は非経口的手段(例えば静脈内供給)を介するガリウム投与が必要になる。現時点では、このようなガリウム塩の経口投与は、その生物活性の低さによる骨多孔症及びページェット病の慢性的状態に対して実用的とは考えられない。
【0005】
経口投与ガリウムの生物活性を増加するための努力が、特に化学錯体形成において、払われてきた。経口生物活性の増加を認める種々のガリウム錯体が確認されており、例えば麦芽酸ガリウム(例えばBernsteinら、Metal−Based Drugs 7、第7巻、33〜47ページ、2000年、米国特許第5258376号、第5574027号、第5883088号、第5968922号、第5998397号、第6004951号、第6048851号、第6087354号を参照)及びガリウム8−キノリノレート(Colleryら、Anticancer Res.、第16巻、687〜692ページ、1996年、米国特許第5525598号、欧州特許第EP 0 599881号、国際特許出願PCT/EP92/01687参照)を含んでなる。他の治療用ガリウム錯体は、例えば次に記載がある。Arionら、J. Inorg. Biochem.、第91巻、298〜305ページ、2002年、Chitambarら、Clin. Cancer Res.、第2巻、1009〜1015ページ、1996年、Stojilkovicら、Mol. Microbiol.、第31巻、429〜442ページ、1999年、米国特許第5196412号、第5281578号、及び国際特許出願PCT/US91/03599。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、新規な医薬品ガリウム組成物、とりわけ経口生物活性を増強したガリウム錯体開発の必要性は継続している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、新規な医薬品ガリウム組成物、及びカルシウム再吸収の異常亢進の抑制が求められる症状及び疾病治療のための方法を提供する。より詳しくは、本発明の実施形態はさらに経口生物活性を増加した新規なガリウム錯体、及び当該錯体を用いるがん、高カルシウム血症、骨多孔症、骨減少症及びページェット病等の症状及び疾病の治療法を提供する。
【0008】
従って、本発明の一態様は、ガリウム及び構造式I:
2−OH−Ar−CR−NR−R−COOH(I)
(式中、2−OH−Arは適宜置換された2−ヒドロキシアリール基であり、Rは−OH又は=OHであり、Rは水素、ヒドロキシ、又は適宜置換されたC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はC〜Cアルケニルであり、及びRは適宜置換されたヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、C〜C24アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アリールアルキル、C〜C10アルケニルアリール、C〜C10アリールアルケニル、C〜C10アルキニルアリール又はC〜C10アリールアルキニルであり、O、N、S又はこれらの任意の組み合わせが適宜割り込んでもよい。)に表される化合物を含んでなるガリウム錯体を目的とする。
【0009】
本発明の他の態様は、前記ガリウム錯体を十分に生成する状態において、構造式Iで表される化合物を有して反応するガリウムを含んでなる、ガリウム錯体を調製するための方法を目的とする。一実施形態において、当該ガリウム錯体は患者への投与に先だって調製される。他の実施形態において、当該ガリウム錯体は投与後の現場において生成する。
【0010】
本発明の別の態様は、ガリウム、構造式Iで表される化合物、及び少なくとも1の薬理学的に許容できる賦形剤を含んでなる、ガリウムを患者に投与するための医薬品組成物を目的とする。一実施形態において、当該ガリウム及び構造式1で表される化合物は、当該組成物の投与に先立って錯体形成する。他の実施形態において、ガリウム錯体は当該組成物の投与後の現場で生成する。
【0011】
本発明の別の態様は、ガリウム、構造式Iで表される化合物及び薬理学的に許容できる賦形剤を含んでなる医薬品組成物を前記患者に投与することを含んでなる、患者へのガリウム投与のための方法を目的とする。一実施形態において、当該ガリウム及び構造式1で表される化合物は、当該組成物の投与に先立って錯体形成する。他の実施形態において、ガリウム錯体は当該組成物の投与後の現場で生成する。
【0012】
本発明の別の態様は、治療上有効量のガリウム及び構造式Iで表される化合物を、当該治療を必要とする患者に投与することを含んでなる、過剰な骨再吸収で特徴づけられる症状又は疾病を治療するための方法を目的とする。一実施形態において、当該ガリウム及び構造式Iで表される化合物は、単一の服用の医薬品組成物中にある。さらなる実施形態において、ガリウム及び構造式Iで表される化合物は、経口投与に先立って錯体形成する。他の実施形態において、錯体形成は経口投与後に発生する。
【0013】
本発明の他の態様は、構造式Iで表される化合物と共に錯体形成するガリウムを含んでなるガリウムの経口生物活性を増加することを目的とする。一実施形態において、当該ガリウム及び構造式1で表される化合物は、当該組成の投与に先立って錯体形成する。他の実施形態において、錯体形成は経口投与後に発生する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、錯体形成するガリウム及び構造式Iで表される化合物を含んでなるガリウム錯体に関し、ここにR、R及びRは前述の定義による。構造式Iで表されるvは、ラセミ混合物又は光学的に純粋な化合物として投与されうる。
【0015】
本発明のガリウム錯体において用いられる好適な化合物の一群は、構造式Iで表され、ここに2−OH−Arは4位を適宜置換された2−ヒドロキシフェニルであり、Rは=OHであり、Rは水素であり、Rは適宜置換されたC〜C24アルキルである。
【0016】
従って、本発明のガリウム錯体において使用に好適な化合物の一群は、次式で表される化合物である。
【化1】

式中、Zは水素又はハロゲンであり、nは3=11である。
【0017】
この群の特に好適な化合物は、Zが水素並びにnが7であるもの、Zが水素並びにnが9であるもの、及びZが塩素並びにnが3であるものを含んでなる。
【0018】
本発明のガリウム錯体において使用に好適な他の化合物は、構造式Iで表される化合物であり、ここに2−OH−Arは2−ヒドロキシフェニルであり、RはHO−であり、Rは水素であり、Rは適宜置換されたC〜C24アルキルである。
【0019】
従って、本発明のガリウム錯体において使用に好適な化合物の一群は、次式で表される化合物である。
【化2】

ここにnは3〜11である。
【0020】
この群の特に好適な化合物はnが9であるものを含んでなる。
【0021】
他に記載の場合を除き、以下の定義を本願明細書及び特許請求の範囲の全体に適用する。これらの定義は、用語自体又は他の用語との組み合わせでの使用に関わらず適用する。例えば、「アルキル」の定義は「アルキル」に適用し、同様に「アルコキシ」「アルキルアミノ」にも適用する。
【0022】
「患者」はヒト及び他の動物を含んでなる。
【0023】
「哺乳類」はヒト及び他の哺乳動物を含んでなる。
【0024】
本願明細書に用いられる状態、異常、疾病又は症状を「治療すること」又は「治療」は、(1)当該状態、異常、疾病又は症状による苦痛又は罹患の可能性があるが、当該状態、異常、疾病又は症状の臨床的又は準臨床的症候を経験又は呈示していない哺乳類に発症する、当該状態、異常、疾病又は症状の臨床症候の様相を防止又は遅延させること、(2)当該状態、異常、疾病又は症状を抑制すること、すなわち当該疾病又はそれらの少なくとも1の臨床的又は準臨床的症候の発症を抑止又は低減すること、又は(3)疾病を軽減すること、すなわち当該状態、異常、疾病又は症状又はその臨床的又は準臨床的症候の少なくとも1を退行させること、を意味する。治療すべき患者への利益は、統計学的に有意であるか又は少なくとも当該患者及び/又は担当医に認識可能である。
【0025】
「有効量」及び「治療的有効量」は当該状態、異常、疾病又は症状を治療するために哺乳類へ投与された時に、十分な治療結果を生じる化合物量を意味する。有効量又は治療的有効量は、化合物、疾病とその重篤度、及び年齢、体重、体調及び治療される固体の反応性に依存して変化しうる。
【0026】
「投与」及び「投薬」は、患者体内の特定一部位又は複数部位に活性成分の治療的有効量を供給し、当該有効成分を当該特定一部位又は複数部位において治療上有効な血中濃度にすることを意味する。これは、例えば、患者に有効成分を局所又は全身投与することにより達成する。
【0027】
用語「併用」は、第1の及び第2の薬剤(例えばガリウム及び構造式Iで表される化合物)を、例えば1の服用形態(第1及び第2の量比が固定であるか又はそれぞれに対して複数服用形態であるカプセル又は錠剤等)で基本的に同時に投与することを含む。当該薬剤は順不同で続けて投与されうる。併用が各薬剤の独立投与である時には、所望の効果(例えば錯体形成)を有するために、当該薬剤は十分に近い時間において投与される。
【0028】
「薬理学的に許容できる」とは、健全な医学的判断の範囲内において、ヒト及び下等動物の組織との接触使用に好適であり、過度の毒性、過敏、アレルギー応答等を有しないこれらの塩及びエステルである活性薬剤と賦形剤が、正当な利点/危険性の比率の均衡を有し、意図した使用に対して効果を有することを意味する。
【0029】
「過剰な骨再吸収の特徴がある症状又は疾病」とは、少なくとも一部に骨からの過剰なカルシウム再吸収で特徴づけられる状態、異常、疾病又は症状を意味し、非ホジキンリンパ腫等のがん、高カルシウム血症、骨多孔症、骨減少症、ページェット病、悪性骨疾患、副甲状腺機能亢進症による骨変性症及び組織損傷を含んでなるが、限定しない。
【0030】
「アルキル」は、約1から約24の炭素原子を含んでなる直鎖又は分枝脂肪族炭化水素を意味する。好適なアルキル基は、鎖に約1から約12の炭素原子を含んでなる。分枝は、1以上のメチル、エチル、プロピル等の低級アルキル基が直鎖アルキルに付加することを意味する。「低級アルキル」は、約1から約6の炭素原子を直鎖又は分枝鎖に有するアルキル基を意味する。好適なアルキル基の例はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、及びt−ブチルを含んでなるが限定しない。
【0031】
「アルケニル」は、少なくとも1の炭素−炭素2重結合を含んでなり、約2から約20の炭素原子を含んでなる直鎖又は分枝脂肪族炭化水素を意味する。好適なアルケニル基は約2から約12の炭素原子を鎖に含み、より好適には約2から約6の炭素原子を鎖に含む。分枝は、1以上のメチル、エチル、プロピル等の低級アルキル基が直鎖アルケニルに付加することを意味する。「低級アルケニル」は、約2から約6の炭素原子を直鎖又は分枝鎖に有するアルケニル基を意味する。好適なアルケニル基の例はエテニル、プロペニル、n−ブテニル、及び3−methylbut−2−enylを含んでなるが限定しない。
【0032】
「アルキニル」は、少なくとも1の炭素−炭素3重結合を含んでなり、約2から約20の炭素原子を含んでなる直鎖又は分枝脂肪族炭化水素を意味する。好適なアルキニル基は約2から約12の炭素原子を鎖に含み、より好適には約2から約4の炭素原子を鎖に含む。分枝は、1以上のメチル、エチル、プロピル等の低級アルキル基が直鎖アルキニルに付加することを意味する。「低級アルキニル」は、約2から約6の炭素原子を直鎖又は分枝鎖に有するアルキニル基を意味する。好適なアルケニル基の例はエチニル、プロピニル、及び2−ブチニルを含んでなるが限定しない。
【0033】
「アルキル」「アルケニル」及び「アルキニル」は、鎖上の利用可能な水素原子を1以上の同一又は異種の置換基と適宜置換されうる。
【0034】
「アルキレン」は、2つの炭素原子上に共通に自由原子価を有するアルカンジイル基を意味する。例えばメチレン、エチレン、プロピレン等を含んでなるが限定しない。
【0035】
「アリール」は、約6から約14の炭素原子、好適には約6から約10の炭素原子を含んでなる単環又は多環系を意味する。例えば好適なアリール基はフェニル及びナフチルを含んでなるが限定しない。アリール基は、環上の利用可能な水素原子を同一又は異種の1以上の置換基に置き換えることで適宜置換されうる。「アリール」基は、例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ等、1以上の炭素原子及び1以上の酸素原子を介して芳香環上の2の隣接炭素原子を接続することによっても置換されうる。
【0036】
「アリーレン」は、2の環上炭素原子から1の水素原子を除去することにより芳香族炭化水素に由来する2価官能基を意味する。例えばフェニレン等を含んでなるが限定しない。
【0037】
「アルキレンジオキシ」は、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ及び同様の、1以上の炭素原子及び1以上の酸素原子を意味するが、これに限定しない。
【0038】
「ヘテロアリール」は、約5から約14の環上原子、好適には約5から約10の環上原子を含んでなる芳香族単環又は多環系を意味し、ここに1以上の環上原子は、例えば窒素、酸素、又は硫黄の単独又は組み合わせである、炭素以外の元素である。好適なヘテロアリールは、約5から約6の環上原子を含んでなる。「ヘテロアリール」は、環上の利用可能な水素原子を同一又は異種の1以上の置換基に置き換えることで適宜置換されうる。ヘテロアリール特性基の名称に対する接頭のアザ、オキサ、又はチアは、少なくとも1の窒素、酸素、硫黄原子がそれぞれ環原子に存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、対応するN−オキシドへ適宜酸化されうる。好適なヘテロアリールの例はピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、イソキサゾイル、イソチアゾイル、オキサゾリル、チアゾリル、ピロリル、トリアゾリル及び同様のものを含んでなるが限定しない。
【0039】
「ヘテロアリーレン」は、例えば、ピリジン、ピロール、及び同様のもの等、2の環上炭素原子から1の水素原子を除去することによりヘテロ環芳香族化合物に由来する2価官能基を意味する。
【0040】
「アリールアルキル」は、アリール及びアルキルについては前述のアリール・アルキル基を意味する。好適なアリールアルキル基は低級アルキル基を含んでなる。好適なアリールアルキル基はベンジル、2−フェネチル及びナフタレニルメチルを含んでなるが限定しない。親構造への結合はアルキル基を介する。
【0041】
「アルキルアリール」は、アルキル及びアリールについては前述の、アルキル・アリール基を意味する。好適なアルキルアリール基は低級アルキル基を含んでなる。好適なアリールアルキル基はトリルを含んでなるが限定しない。親構造への結合はアリール基を介する。
【0042】
「アリールアルケニル」は、アリール及びアルケニルについては前述の、アリール・アルケニル基を意味する。好適なアリールアルケニル基は低級アルケニル基を含んでなる。親構造への結合はアルケニル基を介する。
【0043】
「アルケニルアリール」は、アルケニル及びアリールについては前述のアルケニル・アリール基を意味する。好適なアルケニルアリール基は低級アルキル基を含んでなる。親構造への結合はアリール基を介する。
【0044】
「アリールアルキニル」は、アリール及びアルキニルについては前述のアリール・アルキニル基を意味する。好適なアリールアルキニル基は低級アルケニル基を含んでなる。親構造への結合はアルキニル基を介する。
【0045】
「アルキニルアリール」は、アルキニル及びアリールについては前述のアルキニル・アリール基を意味する。好適なアルキニルアリール基は低級アルキル基を含んでなる。親構造への結合はアリール基を介する。
【0046】
「シクロアルキル」は、約3から約10の炭素原子、好適には約5から約10の炭素原子を含んでなる非芳香族単環又は多環系を意味する。好適なシクロアルキル環は約5から約7の環上原子を含んでなる。シクロアルキルは、環上の利用可能な水素原子を、同一又は異種の1以上の置換基で置き換えることにより適宜置換されうる。好適な単環シクロアルキルはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及び同様のものを含んでなるが限定しない。好適な多環シクロアルキルは1−デカリニル、ノルボルニル、アダマンチル及び同様のものを含んでなるが限定しない。
【0047】
「シクロアルキルアルキル」は、シクロアルキル及びアルキルについては前述のシクロアルキル・アルキル基を意味する。好適なシクロアルキルアルキルの例はシクロプロピルメチルを含んでなるが限定しない。親構造への結合はアルキル基を介する。
【0048】
「アルコキシ」は、アルキルについては前述のアルキル−O−基を意味する。好適なアルコキシの例はメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ及びイソプロポキシを含んでなるが限定しない。アルキル基はエーテル酸素原子を介して隣接構造に結合する。
【0049】
「ハロ」はフロロ、クロロ、ブロモ又はヨード基を意味する。好適にはフロロ、クロロ又はブロモであり、より好適にはフロロ及びクロロである。
【0050】
「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。好適にはフッ素、塩素又は臭素であり、より好適にはフッ素及び塩素である。
【0051】
「ハロアルキル」は上述の定義のように、アルキル上の1以上の水素原子を上述のハロ基で置換したアルキルを意味する。
【0052】
「シクロアルケニル」は、少なくとも1の炭素−炭素2重結合を含んでなり、約3から約10の炭素原子、好適には約5から約10の炭素原子を含んでなる非芳香族単環又は多環系を意味する。好適なシクロアルケニル環は約5から約7の環上原子を含んでなる。シクロアルケニルは、環上の利用可能な水素原子を、同一又は異種の1以上の置換基で置き換えることにより適宜置換されうる。好適な単環シクロアルケニルはシクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル及び同様のものを含んでなるが限定しない。好適な多環シクロアルケニルはノルボルニレニルであるが、これに限定しない。
【0053】
「ヘテロシクリル」は、約3から約10の炭素原子、好適には約5から約10の炭素原子を含んでなる非芳香族飽和単環又は多環系を意味し、ここに1以上の環上原子は、例えば窒素、酸素、又は硫黄の単独又は組み合わせである、炭素以外の元素である。環上には隣接酸素及び/又は硫黄原子は存在しない。好適なヘテロシクリルの例は約5から約6の環原子を含んでなる。ヘテロシクリル特性基の名称に対する接頭のアザ、オキサ、又はチアは、少なくとも1の窒素、酸素、硫黄原子がそれぞれ環原子に存在することを意味する。ヘテロシクリルは、環上の利用可能な水素原子を同一又は異種の1以上の置換基に置き換えることで適宜置換されうる。ヘテロシクリルの窒素又は硫黄原子は、対応するN−オキシド、S−オキシド又はS,S−ジオキシドへ適宜酸化されうる。好適な単環ヘテロシクリル環の例はピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピラニル、テトラヒドロチオフェニル、モルホリニル及び同様のものを含んでなるが限定しない。
【0054】
「アリールシクロアルケニル」は、本願明細書にて定義のごとく、シクロアルケニル部位から水素原子を除去することによる縮合アリール及びシクロアルケニル由来の官能基を意味する。好適なアリールシクロアルケニルにおいては、アリールはフェニルであり、シクロアルケニルは約5から約6の環原子を含んでなる。アリールシクロアルケニルは、環上の利用可能な水素原子を同一又は異種の1以上の置換基に置き換えることで適宜置換されうる。好適なアリールシクロアルケニルの例は1,2−ジヒドロナフタレン、インデン及び同様のものを含んでなるが限定しない。親構造への結合は非環状炭素原子を介する。
【0055】
「ヘテロアリールアルキル」は、ヘテロアリール及びアルキルについては前述のヘテロアリール・アルキル基を意味する。好適なヘテロアリールアルキルは低級アルキル基を含んでなる。好適なヘテロアリールアルキルの例はピリジルメチル、2−(フラン−3−イル)エチル及びキノリン−3−イルメチルを含んでなるが限定しない。親構造への結合はアルキル基を介する。
【0056】
「ヘテロアリールアルケニル」は、ヘテロアリール及びアルケニルについては前述のヘテロアリール・アルケニル基を意味する。好適なヘテロアリールアルケニルは低級アルケニル基を含んでなる。好適なヘテロアリールアルケニルの例は2−(pyrid−3−yl)ethenyl及び2−(キノリン−3−イル)エテニルを含んでなるが限定しない。親構造への結合はアルケニル基を介する。
【0057】
「アルコキシアルキル」は、アルコキシ及びアルキルについては前述のアルコキシ・アルキル基を意味する。好適なアルコキシアルキル基の例は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチエル及びエトキシエチルを含んでなる。
【0058】
「アリーロキシアルキル」は、アリール及びアルコキシについては前述のアリーロキシ・アルキル基を意味する。好適なアリーロキシアルキル基の例はベンゾキシメチル、置換アリーロキシメチル、ベンゾキシエチル、及び置換アリーロキシエチルを含んでなる。
【0059】
「ヒドロキシアルキル」は、アルキルについては前述の、HO−アルキル基を意味する。好適なヒドロキシアルキルは低級アルキルを含んでなる。好適なヒドロキシアルキルの例はヒドロキシメチル及び2−ヒドロキシエチルを含んでなるが限定しない。
【0060】
「アシル」は、種々の官能基について前述の、H−C(O)−、アルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、アルキニル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、シクロアルケニル−C(O)−、又はシクロアルキニル−C(O)−を意味する。親構造への結合はカルボニルを介する。好適なアシルは低級アルキルを含んでなる。好適なアシル基の例はホルミル、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル及びシクロヘキサノイルを含んでなるが限定しない。
【0061】
「アロイル」は、アリール基については前述のアリール−C(O)−基を意味する。親構造への結合はカルボニルを介する。好適な基の例はベンゾイル及び1−及び2−ナフトイルを含んでなるが限定しない。
【0062】
「アリールオキシ」は、アリール−O基−を意味し、アリール基は前述の通りである。好適なアリールオキシ基の例はフェノキシ及びナフトキシを含んでなるが限定しない。親構造への結合はエーテル酸素を介する。
【0063】
「アルキルアミノ」は、水酸基上の1以上の水素原子を上述のアルキル基で置換した−NH又は−NH+基を意味する。
【0064】
「アルキルチオ」は、アルキル基については前述のアルキル−S−基好適なアルキルチオ基の例はメチルチオ、エチルチオ、i−プロピルチオ及びヘプチルチオを含んでなるが限定しない。親構造への結合は硫黄を介する。
【0065】
「アリールチオ」は、アリールについては前述のアリール−S−基を意味する。好適なアリールチオ基の例はフェニルチオ及びナフチルチオを含んでなるが限定しない。親構造への結合は硫黄を介する。
【0066】
「アリールアルキルチオ」は、アリールアルキルについては前述のアリールアルキル−S−基を意味する。好適なアリールアルキルチオ基の例はベンジルチオを含んでなるが限定しない。親構造への結合は硫黄を介する。
【0067】
「アルキルカルボニル」は、カルボニルを介して隣接構造に結合する前述のアルキル基を意味する。好適なアルキルカルボニル基の例はメチルカルボニルを含んでなるが限定しない。
【0068】
「アルコキシカルボニル」は、カルボニルを介して隣接構造に結合する前述のアルコキシ基を意味する。好適なアルコキシカルボニル基の例はメトキシカルボニルを含んでなるが限定しない。
【0069】
「アリーロキシカルボニル」は、アリール−O−C(O)−基を意味する。好適なアリーロキシカルボニル基の例はフェノキシカルボニル及びナフトキシカルボニルを含んでなるが限定しない。親構造への結合はカルボニルを介する。
【0070】
「アリールアルコキシカルボニル」は、アリールアルキル−O−C(O)−基を意味する。好適なアリールアルコキシカルボニル基の例はベンゾイルオキシカルボニルを含んでなるが限定しない。親構造への結合はカルボニルを介する。
【0071】
「アリールスルホニル」は、アルキル−S(O)−基を意味する。好適なアリールスルホニル基は低級アルキルを含んでなる。親構造への結合は硫黄を介する。
【0072】
「アリールスルフィル」は、アルキル−S(O)−基を意味する。好適なアリールスルフィル基は低級アルキルを含んでなる。親構造への結合は硫黄を介する。
【0073】
「アリールスルホニル」は、アリール−S(O)−基を意味する。親構造への結合は硫黄を介する。
【0074】
「アリールスルフィニル」はアリール−S(O)−基を意味する。親構造への結合は硫黄を介する。
【0075】
用語「適宜置換された」は、1位所の官能基、ラジカル又は構造(すなわち「置換基」)により適宜置換することを意味し、それらは同一でも異種でもありうる。代表的な置換基は上述の任意の置換基、とりわけハロ、アルキル、、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシ、アミノ及びカルボニルを含んでなるが限定しない。
【0076】
用語「錯体」は、2以上の試薬(例え、ガリウム及び構造式Iの化合物)間の相互作用により形成される構造を含むことを意図している。このような相互作用は、例えば、共有結合性、イオン性、又は2次的結合(例えば水素結合)及び同様のもの等の化学的相互作用、又は封入、捕捉及び同様のもの等の物理的相互作用を介しうる。当該錯体は患者への投与に先だって生成されうるか、又は錯体形成していない薬剤投与の後に現場(例えば腸)で生成しうる。
【0077】
用語「組成物」は、特定された量の特定成分を含んでなる製品と同様に、特定された量の特定成分の組み合わせから直接的又は間接的に生じる任意の成分を含むことを意図している。
【0078】
本発明の化合物の溶媒和物もまた本願明細書の意図に含まれる。「溶媒和物」は、本発明の化合物と1以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、種々のイオン性及び水素結合を含んでなる共有結合を含んでなる。一例において、当該会合は単離しうる溶媒和物であり、例えば、1以上の溶媒分子が固体結晶の結晶構造に取り込まれる。「溶媒和物」は溶液相及び単離可能な溶媒和物をの意味を含む。好適な溶媒和物の例はエタノレート、メタノレート、及び同様のものを含んでなるが限定しない。「水和物」は溶媒分子がHOである溶媒和物である。
【0079】
構造式Iで表される化合物は、同様に本発明の範囲に含まれる塩の形態でもよい。構造式Iで表される化合物を参照することは、特に記載のない限り、それらの塩、とりわけそれらの薬理学的に許容できる塩を含んでなる。本願明細書に用いる用語「塩」は、無機及び/又は有機塩基と形成される塩基性塩、同様に無機及び/又は有機酸と形成される酸性塩を表す。加えて、構造式Iで表される化合物が塩基性構造(ピリジン又はイミダゾール等、限定しない)及び酸性構造(カルボン酸等であるが限定しない)を含む時に、双性イオン(「分子内塩」)が生成されてもよく、本願明細書に用いる「塩」の範囲に含まれる。他の塩が利用可能であっても、薬理学的に許容できる塩が好適である。構造式Iで表される化合物の塩は、例えば、塩が沈殿するような媒体中で、又は水溶性媒質中から凍結乾燥により、当量等の一定量の酸及び塩基と当該化合物を反応させて生成してもよい。
【0080】
酸付加塩の例は、アセタート、アジパート、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸エステル、ベンゼンスルホリエート、重硫酸塩、ホウ酸塩、ブチラート、クエン酸塩、カンホラート、カンファースルホネート、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタノエート、グリセロリン酸、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノアート、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸エステル、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホネート、ニコチン酸塩、ニトラート、シュウ酸塩、ペクチネート、ペルオキソ硫酸塩、3−フェニル・プロピオナート、ホスファート、ピクラート、ピバラート、プロピオナート、サリチル酸塩、スクシナート、スルファート、スルホン酸エステル、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホネート(別名トシル化)ウンデカノエート、及び同様のものを含んでなる。
【0081】
塩基性塩の例は、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウム及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N−ビス(デヒドロ・アビエチル)エチレンジアミンと生成する)、Nメチル−D−グルカミン、Nメチル−D−グルコアミド、t−ブチルアミン及びアルギニン、リジン等のアミノ酸を有する塩等の有機性塩基(例えば有機アミン)を含んでなる。塩基性窒素を含む官能基は、低級ハロゲン化アルキル(メチル、エチル、プロピル及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、ジアルキルスルファート(ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミルスルファート)、長鎖ハロゲン化物(デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリル塩化物、臭化物及びヨウ化物)、ハロゲン化アラルキル(ベンジル及びフェネチル臭化物)、及び他のもの等の試薬との4級構造であってもよい。
【0082】
これらの酸性塩及び塩基性塩は全て、本発明の範囲において薬理学的に許容できる塩であることを意図しており、酸性及び塩基性塩はいずれも本発明の目的に対応する化合物の自由な形態と等価であると考えられる。
【0083】
構造式Iで表される化合物、及びその塩及び溶媒和物は、それらの互変異性型(例えばアミド又はイミノエーテル)で存在してもよい。そのような互変異性型は全て本発明の一部として本願明細書に含まれる。
【0084】
本発明の化合物(当該化合物の塩及び溶媒和物を含んでなる)の、種々の置換基上の非対称炭素によって存在しうる、エナンチオマー型(非対称炭素が無い場合でも存在しうる)、ロータマー型、アトロプ異性体、及びジアステレオマー型等の立体異性体(例えば幾何異性体、光学異性体及び同様のもの)は、全て本発明の範囲に含まれる。本発明の化合物の立体異性体は、各々、例えば他の異性体がほぼ無くてもよく、あるいは例えばラセミ体として、他の全ての又は他の選ばれた立体異性体と混合されていてもよい。本発明の光学活性中心は、IUPAC 1974 Recommendationに定義のS又はRコンフィグレーションを有しうる。用語「塩」「溶媒和物」及び同様のものの使用は、本発明のエナンチオマー、立体異性体、ロータマー、互変異性体又はラセミ体の塩及び溶媒和物への適用と等価であることを意図している。
【0085】
本願明細書に開示の、非結晶を含んでなるガリウム錯体の多型は全て本発明の範囲に含まれる。
【0086】
任意の構成物又は構造式Iにおいていかなる変更(例えば、アリール、ヘテロ環、R等)が発生する時でも、それぞれの発生ごとの定義は他の発生における定義とは独立する。同様に、置換基の組み合わせ及び/又は変更は当該組み合わせが安定化合物を生じる場合のみ許容される。
【0087】
発明者らは、本発明のガリウム錯体の調製に用いうる、構造式Iで表される多数の化合物を確認した。これらの化合物は例えば、アミノカプリル酸、アミノカプロン酸、アミノブチル酸及び4−塩化サリチル酸等の市販入手可能な出発物質から、米国特許第5650386号及び第5866536号、米国特許出願第2004/0048777号等に記載の周知の方法を用いて合成可能である。構造式Iで表される化合物に存在する脂肪族側鎖長は細胞膜透過性に影響してもよく、しなくてもよい。
【0088】
本発明のガリウム錯体は、1以上の構造式Iで表される化合物とガリウムを反応させることにより、ガリウム治療を要する患者への投与前に調製されうる。当該ガリウムは、典型的にはガリウムイオンの形態である。当該ガリウムイオンは、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、酒石酸ガリウム又は硫酸ガリウム等のガリウム塩から供給されうる。当該反応は、使用可能であれば水を含んでなる好適な相互溶媒中で実施されうる。しかしながら、所望であれば、有機溶媒又は水/有機溶媒の混合物を錯体形成に用いてもよい。好適な有機溶媒は、例えばメタノール、エタノール、クロロホルム及びこれらの混合物を含んでなる。
【0089】
錯体形成反応は一般的に迅速であり、より長時間及びより低温での反応が必要な場合もあるが、通常は室温において約5分から約60分後にほぼ進行を完了する。一般的に、未反応試薬又は不要副産物を、例えばイオン交換又はゲル濾過クロマトグラフィにより分離した後、反応混合物を蒸溜又は凍結乾燥して固体ガリウム錯体を得てもよい。ガリウム錯体は、所望であれば、水、メタノール及びエタノール等のアルコール、エーテル、アセトン、クロロホルム及びこれらの溶媒を含む混合物等の適切な溶媒から再結晶してもよい。ガリウム錯体の生成及び純度は、NMR分光法、IR分光法、UV/可視光分光法、TLC、HPLC、質量分析法、及びX線回折解析を含んでなる当業に周知の各種方法により計測しうる。
【0090】
本発明のガリウム錯体は、投与後又は錯体形成しない構成物同時投与の後に、腸内等の現場においても生成されうる。例えば、ガリウム及び構造式Iで表される化合物が1の服用形態に含まれ、ガリウム治療を要する患者に投与され、2つの構成物が腸管の高いpH中に錯体形成しうる。あるいは、ガリウム及び構造式Iで表される化合物は別個の服用形態を含んでなり、現場で錯体形成するよう、ほぼ同時投与されうる。
【0091】
本発明の錯体物は第一にガリウムを参照するよう記載しているが、当業者であれば他の金属イオン(放射性、非放射性の両方)も構造式Iで表される化合物を用いて錯体形成しうることを認識するだろう。例えば、構造式Iで表される化合物は、例えばCa、Sr、Mg、Cr、Zn、Au、Ag、Fe、Ni、Cu等の栄養金属イオンの吸収を促進するために用いうる。構造式Iで表される化合物は、Au、Ag、Pt、Zn、Ca、Fe、Mg、Sr、Co等の治療用金属イオンの投与にも用いうる。さらに、構造式Iで表される化合物は、Ti、Tc、Sr、Ln,Gd等の診断用金属イオンの投与にも用いうる。イオン対化合物の化学量論は、金属イオンの電荷、電荷密度及び構造式Iが供与する電位、金属イオン及び構造式Iで表される化合物の両者の立体効果等に依存して変化しうる。
【0092】
治療、栄養及び診断用の金属イオン輸送に加えて、構造式Iで表される化合物は、Pb、Al、Cd、Ag、Cu、Sr、Ra、Po等の不要金属イオンに対するスカベンジャーとしても用いうる。
【0093】
下記実施例に記載のように、発明者らは、ガリウムと構造式Iで表される化合物のある種の錯体が、錯体形成しないガリウム塩に対して経口生物活性が促進されることを発見した。下記実施例に記載の方法を用いれば、当業者であれば、ガリウムと錯体を生成しうる構造式Iで表される他の化合物が経口生物活性を促進しうることを直ちに確認できる。このように、これらのガリウム錯体(及び必ずしも経口生物活性の促進を示さない他のもの)は、がん、高カルシウム血症、骨多孔症、骨減少症、ページェット病、悪性骨疾患、副甲状腺機能亢進症による骨変性症及び組織損傷等、過剰な骨再吸収で特徴づけられる疾病及び症状の治療に有用である。
【0094】
これら及び他の疾病の治療において、治療上有効量のガリウムが当該治療を要する患者に投与される。当該ガリウムは、医薬品組成物の形態で投与されうる。本発明のガリウム組成物は、特に経口輸送に適しているが、他の好適な投与経路には、経鼻、直腸、局所、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、心室内、関節内、腹腔内、クモ膜下を含んでなるが限定しない。
【0095】
種々の形態のがん治療、特に悪性腫瘍に対して、当該ガリウムは、ガリウム−67等の放射性ガリウムを含んでなり、これは腫瘍部位に投与される。放射性ガリウムを含んでなる錯体は、腫瘍及び同様のものを検出する放射診断試薬にも用いうる。典型的には、約100mgから約1000mgのガリウムを当該目的のために投与し、ここから本発明のガリウム錯体又は組成物の投与が外挿されうる。
【0096】
投与に先立って調製されるガリウム錯体用に、ガリウム組成物は少なくとも1の薬理学的に許容できる賦形剤と組み合わせたガリウム錯体を含みうる。ガリウム錯体が現場で生成する場合は、ガリウム組成物は、ガリウム、構造式Iで表される化合物及び少なくとも1の薬理学的に許容できる賦形剤を含みうる。これらの組成物(錯体であってもなくても)におけるガリウムと構造式Iで表される化合物とのモル比は、好適には約1:1から約1:10、より好適には約1:2から約1:5、さらに好適には約1:3である。
【0097】
あるいは、現場での錯体生成用に、一方は少なくとも1の薬理学的に許容できる賦形剤と組み合わされたガリウムを含んでなり、他方は少なくとも2の薬理学的に許容できる賦形剤と組み合わされた構造式Iで表される化合物を含んでなる、2つの分離した組成物を投与に用いうる。再び、これらの組成物におけるガリウムと構造式Iで表される化合物とのモル比は、好適には約1:1から約1:10、より好適には約1:2から約1:5、さらに好適には約1:3である。
【0098】
特に選択される医薬品用賦形剤は、当該組成物の形態と同様に、少なくとも部分的には所望の投与経路に依存する。薬理学的に許容できる賦形剤及び種々の組成物の製造方法の例は、当業において、Remington's Pharmaceutical Sciences、Gennaro ed.、20th ed.、2000年等が周知である。
【0099】
例えば、経口投与がより望ましく用いられる時に、当該ガリウム組成物は好適には固体錠剤、カプセル、カプレット又はデンプン、乳糖、デキストラン又はステアリン酸マグネシウム等の固体賦形剤を伴うドラジェの形態である。ガリウム組成物は、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖又はリン酸又はカルボン酸バッファ等の薬理学的に許容できるバッファ等の液体賦形剤を伴う溶液、懸濁液又は乳液の形態でもありうる。
【0100】
投与に先立って調製されるガリウム錯体の経口投与用には、1以上の種々のアプローチが利用され、当該錯体を胃の酸性条件に暴露することを回避又は低減し、腸内に当該錯体を放出させることにより、血流へのガリウム輸送を増加する。例えば、ガリウム錯体(又は同様の化合物)生成に用いられる構造式Iで表される化合物のフリー過剰量を当該医薬品組成物に含ませ、胃の内部での平衡を錯体形成状態にシフトしうる。
【0101】
別のアプローチは、腸管に到達して初めてガリウム錯体を放出するよう、放出を遅延させた当該医薬品組成物を処方することである。一方法としては、ガリウム錯体をゲル、好適には例えばポリマー化ポリエチレングリコールハイドロゲル等のハイドロゲルと共に処方し、これは錯体を吸着して胃の中では非常にゆっくりとしか放出せず、錯体の大部分は腸内で放出されるようになる。このような遅延放出処方の調製、とりわけハイドロゲルを含むものは、当業に周知である。
【0102】
あるいは、よりpHの高い腸管内に到達するまでは錯体放出を防止又は抑制するよう、ガリウム錯体はカプセル化されうる。例えば、ガリウム錯体は、好適にはリン脂質のリポソーム中にマイクロカプセル封入され、これは胃の酸性条件下では解離しないが、よりpHが高い腸内では錯体を放出する。
【0103】
特に好適なカプセル化のアプローチは、pHが約5〜6に到達するまではガリウム錯体の放出を抑制又は防止する、腸で溶けるよう工夫されたコーティングを用いることである。腸で溶けるよう工夫されたコーティングの好適な材料は、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(フタル酸酢酸ビニル)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、及び酢酸フタル酸/ジエチルフタル酸セルロースを含んでなるが限定しない。胃のpHは食後には高くなるため、とにかく経口生成を用いるという場合は、この時にガリウム錯体を投与することが有利になりうる。
【0104】
本願明細書に記載の医薬品組成物は、一般的には約1から約99重量%のガリウムを含んでなる。好適には、薬理学的に許容できる賦形剤が本発明の医薬品組成物に用いられる時に、当該組成物は約1から約99重量%の賦形剤を含んでなる。当該組成物が、胃の酸性条件下における錯体解離抑制手段の十分な量を含む時には、そのような手段を含んでなる材料は、当該組成物の約98重量%を超えずに当該医薬品組成物に取り入れられる。
【0105】
服用量は、骨からの過剰なカルシウム再吸収(がん、高カルシウム血症、骨多孔症、骨減少症及びページェット病等に起因)を治療するため、医薬品活性を有する血漿中ガリウム濃度を提供するよう選択され、約0.1〜5.0μg/ml、好適には約0.5〜2.0μg/mlであることが確立している。これらの血中濃度は、1日に約0.1〜20グラムのガリウムを投与することで達成しうる。
【0106】
がん関連の高カルシウム血症を含んでなる種々の形態のがんを治療するために、典型的にはガリウムが約0.25mg/kg/日〜約10mg/kg/日、好適には約0.5mg/kg/日〜約5mg/kg/日の範囲で投与され、ここから本発明のガリウム錯体及び組成物の投与量が外挿されうる。これらの服用量は単一の服用単位としてもよく、少量の複数を投与してもよい。
【0107】
本発明の方法に係る特定の実施形態を、ここに下記実施例において記載する。当該実施例は例示のためのみのものであり、開示以外のいかなる限定をも意図していない。
【実施例】
【0108】
(実施例1)
ガリウム及び構造式Iで表される化合物(すなわち「錯体試薬」)の錯体を次のように調製した。錯体試薬をエタノール中に溶解し、塩化、硝酸又は硫酸等の単純ガリウム塩と混ぜ、固体又は水溶液又は有機溶媒中の溶液として、1価アルカリ金属又は他の1価カチオン塩の存在又は非存在下で、2時間かき混ぜた。溶媒を蒸溜し、残渣をクロロホルム中に再度サスペンドした。クロロホルム中ガリウム錯体を精製水で抽出して過剰ガリウム及びカウンターイオンを洗浄し、NaSOで乾燥した。クロロホルム溶媒を蒸溜除去し、残渣を過剰メタノール中に再サスペンドした。精製ガリウム錯体はメタノール溶媒の一部を蒸発させて再結晶し、濾過回収し、風乾又は真空乾燥した。
【0109】
(実施例2)
ガリウム及び構造式Iで表される化合物(すなわち「錯体試薬」)の錯体を、以下のように調製した。錯体試薬を精製メタノール、精製エタノール又は他の精製アルコール、又はメタノール/ジクロロメタンの1:1混合等の好適なアルコール/有機化合物溶媒混合、又はクロロホルム又は他の好適な有機溶媒系等の精製有機溶媒に溶解し、塩化、硝酸又は硫酸等のガリウム塩と混合し、固体又は水溶液又は有機溶媒中の溶液として、1価アルカリ金属又は他の1価カチオン塩の存在又は非存在下で、15時間還流させた。沈殿したガリウム錯体を濾過し、適切な溶媒系で洗浄し、水洗し、風乾又は真空乾燥した。
【0110】
(実施例3)
ガリウム及び構造式Iで表される化合物(すなわち「錯体試薬」)の錯体を、以下のように調製した。錯体試薬を水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、細胞培養培地、又は他の生理学的に互換性のある溶媒系に溶解し、塩化、硝酸又は硫酸等の単純ガリウム塩と混合し、固体又は水溶液又は有機溶媒中の溶液として、1価アルカリ金属又は他の1価カチオン塩の存在又は非存在下で、UV可視光分光法でモニターしながた錯体が精製するまで静置した。
【0111】
(実施例4)
ガリウム及び構造式Iで表される化合物(すなわち「錯体試薬」)の錯体を、以下のように調製した。錯体試薬を水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、細胞培養培地、又は他の生理学的に互換性のある溶媒系に溶解し、塩化、硝酸又は硫酸等の単純ガリウム塩と混合し、固体又は水溶液又は有機溶媒中の溶液として、1価アルカリ金属又は他の1価カチオン塩の存在又は非存在下で、1時間かき混ぜた。溶液をBio−Rad AG 50W−X8又はBio−Rad AG 50W−X4等の適切な陽イオン交換カラムマトリクスに乗せ、水等の適切な溶媒で洗浄して過剰の化合物及びフリーのガリウムと他イオンを除去した。ガリウム錯体は、1M NHOH/NHCl、pH9、又は0.1M NHOH/酢酸、pH6.0から1M NHOH/酢酸、pH9.0への直線グラジエント等の適切な溶出液でイオン交換カラムから溶出した。ガリウム錯体の溶出は、220nm等の錯体検出に適切な波長で分光学的にモニターした。蒸発等の適切な方法により溶出物を濃縮し、当該濃縮した溶出物から過剰に沈殿した塩は濾過し除去した。濃縮した溶出物中の過剰な塩は、Sephadex G10等の適切なゲル濾過マトリクスを通過させて除去した。濃縮した溶出物を脱塩カラムに乗せ、次いで蒸留水で洗浄し溶出した。塩フリーの溶出物を蒸発等の適切な方法により再度濃縮した。
【0112】
(実施例5)
ガリウム錯体の生成及び純度を種々の一般法により計測した。
【0113】
H及び13C−NMR分光法)Bruker DRX500及びAMX400型NMR分光計等の機器を用いる標準手法により、重水、重クロロホルム又は他の適切な重水素化溶媒中で、親化合物単独に対するガリウム−化合物錯体のH及び13C−NMRスペクトルを、20〜900MHzをスキャンして記録比較し、ガリウム錯体生成を確認し、ガリウム−化合物原子の相互作用が明らかになった。テトラメチルシランの吸収に対する水素及び炭素吸収のppm単位でのシフト、又はある化合物において特定の水酸基水素が消失することから、ガリウム−化合物相互作用が明白であった。
【0114】
(赤外分光法)Bruker IFS分光計等の機器でフーリエ変換赤外スペクトル(FT−IR)を記録比較し、ガリウム錯体生成を確認し、ガリウム−化合物原子の相互作用が明らかになった。ガリウム錯体及び親化合物単独の固体試料を、NaCl、KBr又は他の適切な材料等のIR窓材料の間に配置し、IRスペクトルをスキャンした。ガリウム錯体とフリー化合物の間の振動周波数シフト差を、ガリウムの存在及び不在における特定のC=C、C=O、C−OH、C−NH、及びC=N基の吸収の変化から観測した。
【0115】
(可視紫外分光法)Cary−1E型UV可視分光計及び標準1cm石英キュベット等の機器を用い、メタノールに溶解したフリー化合物に対して水、メタノール又は他の適切な溶媒にに溶解したガリウム錯体の近紫外吸収スペクトルを、225〜700nmをスキャンして記録比較し、ガリウム錯体生成を確認した。錯体生成は、親化合物単独に対するそれぞれのガリウム錯体に対して計測された、吸収極小点及び極大点における個々の波長シフト、及び/又は吸収極小点又は極大点におけるモル吸光係数から示された。
【0116】
(薄層クロマトグラフィ)ガリウム錯体の純度は、80%メタノール/20%水等の適切な溶媒、及び10%塩化第2鉄スプレー等の適切な検出系を用いるシリカゲルプレート上の薄層クロマトグラフィにより評価した。TLCプレート上スポット位置のシフト及び試料ごとのスポット数から、ガリウム錯体及びフリー化合物が示された。
【0117】
(HPLC、高速液体クロマトグラフィ)Lichrosorb RP8、ビーズ直径10ミクロン等の適切なカラム上で、水、トリフロロ酢酸、メタノール又は適切な混合物等の適切な溶媒グラジエントを用いるHPLC分析により、ガリウム錯体生成及び純度を評価した。溶出物は、220nm等の適切な波長で吸収によりモニターした。
【0118】
(質量分析法)Finnigan MAT 90型質量分析計等の機器を用い、質量スペクトル計測によりガリウム錯体生成を確認した。錯体生成は、フリーの親化合物に対する錯体の質量ピークのシフトにより示された。
【0119】
(X線構造解析)Nonius Kappa CCD回折計等の機器を用いるX線回折パターン計測を実施し、ガリウム錯体のX線構造を決定した。結晶学的構造は、DENZO−SMN、SORTAV、SHELXS−97、SHELXL−97等の適切なソフトウェアを用いて解き、SCHAKAL等のグラフィクスソフトウェアを用いて表示した。ガリウム錯体生成は、基本的な結晶構造スペース群の変化において、及び/又は、化合物単独で生成した結晶に対して、当該化合物及びガリウム錯体結晶に取り込まれた他のイオンに対しガリウムイオンを配置する最終構造解における回折パターンの相違により、示された。
【0120】
(参考文献)Snow、Biochem.J.、第115号、199−205ページ、(1969); Adjimaniら、J. Bacteriol.、第169巻、3664−3668ページ、(1987); Sharmanら、Biochem.J.、第305巻、187−196ページ、(1995); Richardson、Antimicrob. Agents Chemother.、第41巻、2061−2063ページ、(1997); Albrechtら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第99巻、4867−4872ページ、(2002); Filikら、Anal.Sci.、第18巻、955−957ページ、(2002)。
【0121】
(実施例6)
硝酸ガリウム及び構造式Iで表される化合物(すなわち「錯体試薬」)の錠剤服用形態を、以下のように調製した。硝酸ガリウム水和物を秤量し、次いで適切なサイズのスクリーン又はミルを介するスクリーニングにより固まりを除いた。次いで、サイズをそろえた材料を決着溶液及び希釈剤と共に高速撹拌造粒機にて湿式造粒した。次いで、湿式顆粒をトレー乾燥機中で所定の水分含有量まで乾燥した。次いで、硝酸ガリウム顆粒をスクリーニングし、錯体試薬、結着剤/希釈剤、可溶化剤、崩壊剤及び滑剤と共に混合した。次いで、ツインシェル又はビンブレンダー中で混合を実施した。次いで、標準的な高速回転錠剤プレスを用いて最終混合物を錠剤に圧縮した。錠剤は、硬さ、砕けやすさ及び溶けやすさ等の適切な医薬品の特徴を有し、次いで、パンコーター又は流動層コーターを用いて、フィルムコート又は腸で溶けるよう工夫されたコーティングをされうる。錠剤製剤例
【表1】

【0122】
(実施例7)
ラットにおける血漿中ガリウム濃度を、種々のガリウム組成物投与後、1時間までの時点において計測した組成物1は、静脈中に投与した硝酸ガリウム(5.5mg/kg)である。組成物2は、経口投与した硝酸ガリウム(5.5mg/kg)である。組成物3は、次式の担体を有する本発明に係る化合物(200mg/kg)と組み合わせた硝酸ガリウム(5.5mg/kg)であり、
【化3】

式中、nは7であり、Zは水素であり、経口投与した。組成物4は、次の構造を有して経口投与された、本発明に係る化合物(200mg/kg)と組み合わせた硝酸ガリウム(5.5mg/kg)である。
【化4】

【0123】
図1に示すように、組成物3は、硝酸ガリウム(GaNO)単独の経口投与(組成物2)よりも大きな経口生物活性を示した。組成物3は、ほぼ組成物4よりも大きな経口生物活性も示した。全体として、組成物4の投与後のガリウムの血漿レベルは、硝酸ガリウム(GaNO)単独の経口投与(組成物2)後に見られるレベルと同程度であった。平均して、本発明に係る化合物と組み合わせたガリウムの経口投与は、ガリウム単独の投与と比較して、生物活性を約3倍から約10倍増加させた。
【0124】
本願明細書の発明を特定の実施形態を参照して記載してきたが、これらの実施形態は単に本発明の原理及び応用の例示であることが理解されるべきである。従って、例示の実施形態に対して多くの変更がなされてもよく、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、他の改変が工夫されてもよいことを理解すべきである。
【0125】
本明細書に列挙の文献は全て、特許文献及び非特許文献の両方とも、本発明の属する当業者の技量の水準を示すものである。これらの文献は全て、参照により取り込まれるのと同じく、個々の独立した文献が個々に独立して呈示されるのと同程度に、参照により本明細書に完全に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】硝酸ガリウムの経時的生物活性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガリウム及び構造式I:
2−OH−Ar−CR−NR−R−COOH (I)
(式中、2−OH−Arは適宜置換された2−ヒドロキシアリールであり、Rは−OH又は=Oであり、Rは水素、ヒドロキシであるか、又は適宜置換されたC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はC〜Cアルケニルであり、Rは、適宜置換されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、C〜C24アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アリールアルキル、C〜C10アルケニルアリール、C〜C10アリールアルケニル、C〜C10アルキニルアリール又はC〜C10アリールアルキニルであり、適宜、O、N、S又はこれらの任意の組み合わせが割り込んでもよい。)により表される化合物を含んでなるガリウム錯体。
【請求項2】
当該化合物は次式で表される請求項1に記載のガリウム錯体。
【化1】

(式中、Zは水素又はハロゲンであり、nは3〜11である。)
【請求項3】
Zは水素でありnは7又は9であるか、又はZは塩素でありnは3である、請求項2に記載のガリウム錯体。
【請求項4】
当該化合物は次式で表される請求項1に記載のガリウム錯体。
【化2】

(式中、nは3〜11である。)
【請求項5】
nは9である、請求項4に記載のガリウム錯体。
【請求項6】
前記錯体は、錯体形成しないガリウムと比較して投薬における経口生物活性が増加した、請求項1に記載のガリウム錯体。
【請求項7】
前記経口生物学的利用能は投薬後約1時間までに約3倍から約10倍増加する、請求項6に記載のガリウム錯体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の化合物とガリウムを反応させることを含んでなる、ガリウム錯体の調製方法。
【請求項9】
ガリウム、請求項1から7のいずれか1つに記載の化合物、及び少なくとも1の薬理学的に許容できる賦形剤を含んでなり、ガリウムを患者に投与するための医薬品組成物。
【請求項10】
前記組成物はさらに胃の酸性条件下においてガリウム錯体の解離を抑制する手段を含んでなる、請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項11】
胃の酸性条件下においてガリウム錯体の解離を抑制する手段は、さらに、ヒドロゲル、リポソーム、腸溶コーティング又はこれらの組み合わせを含んでなる、請求項10に記載の医薬品組成物。
【請求項12】
ガリウムはガリウム硝酸塩の形態で提供される、請求項11に記載の医薬品組成物。
【請求項13】
過剰な骨再吸収で特徴づけられる症状又は疾患の治療用の薬物調製のための、請求項1から7のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項14】
前記疾病又は症状は、がん、高カルシウム血症、骨多孔症、骨減少症、ページェット病、悪性骨疾患、副甲状腺機能亢進症による骨変性症及び組織損傷からなる群から選ばれる、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記薬物は1の服用形態において約0.25mg/kg/日から10mg/kg/日のガリウムを含んでなる、請求項14に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−514856(P2009−514856A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538909(P2008−538909)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/040986
【国際公開番号】WO2007/055885
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506135291)ジェンタ インコーポレーテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Genta Incorporated
【Fターム(参考)】