説明

医薬的に高度に精製された粒子を製造するため、およびその粒子をマイクロリアクターの中でコーティングするための装置および方法

本発明は、小粒径を有する、医薬的作用物質として活性な物質粒子であって、当該粒子は、溶媒−非溶媒による沈殿をイン・サイチュ噴霧乾燥プロセスと組み合わせることにより製造される粒子に関する。医薬的作用物質として活性な物質は、水溶性の溶媒、特にエタノールの中に分散され、溶解するまで、送込みラインの中で、加圧下で、その溶媒の沸点を超えて加熱される。この溶液は、微細な液ジェットとして、ガスが浸透したマイクロリアクターの中で微細な水ジェットと衝突し、このように生じた微細なミストは、これにより非常に急速に蒸発する。有機溶媒は最初に蒸発し、次に水が蒸発する。この水は表面改質剤を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物が利用可能な医薬的作用物質、それらの製造のための方法およびその製造のために必要とされる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8および特許文献9は、ほとんど水に溶解しない一連の医薬的作用物質、およびそれらのバイオアベイラビリティーを増大させるために、ナノスケールの形態でそれらの作用物質を得る方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0206959号明細書
【特許文献2】米国特許第5314506号明細書
【特許文献3】米国特許第6558435号明細書
【特許文献4】米国特許第7041144号明細書
【特許文献5】独国特許第102 14 031号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10 2005 017 777号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10 2005 053 862号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第10 2005 011 786号明細書
【特許文献9】独国特許第196 17 085号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、さらにより小さい粒子を製造する方法を提供することであった。
【0005】
この方法は、本願明細書に記載され名称で呼ばれる作用物質の製造を指すが、これらに限定されない。この方法は、水にほとんど溶解しないすべての他の医薬的作用物質とともに使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、溶媒/非溶媒による作用物質沈殿を、表面改質剤の存在下での、当該溶媒のイン・サイチュ噴霧蒸発と組み合わせることによって得られる粒子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る装置の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の粒子は、溶媒/非溶媒による作用物質沈殿を、表面改質剤の存在下での、当該溶媒のイン・サイチュ噴霧蒸発と組み合わせることによって得られる。
【0009】
この目的のために、医薬的作用物質は、最初にエタノールなどの水混和性有機溶媒に溶解され、次いで表面改質剤がその溶液に溶解される。
【0010】
ポンプが使用されて、この溶液が、パイプを介して、数barまで、より好ましくは10bar超まで、さらにより好ましくは50bar超までの高められた圧力下で、ノズルを通して沈殿反応器の中へと注入される。この沈殿反応器のノズルは、同時に圧力制御弁としての役割を果たす。供給用パイプ、または送込みラインは、外部から、電気抵抗ヒーターまたは加熱浴のいずれかによって加熱することができ、この送込みラインは、らせん状であることが好ましい。
【0011】
第2のポンプが使用されて、非溶媒 −好ましくは水− が、同様にパイプを介して、および高められた圧力下で、第2のノズルを通してその沈殿反応器の中へと注入される。この送込みラインも、外部から、電気抵抗ヒーターまたは加熱浴のいずれかによって加熱することができ、この送込みラインは、らせん状であることが好ましい。
【0012】
この沈殿反応器は、欧州特許第1165224号明細書に記載されているように好適に設計されているマイクロリアクターである。窒素が、ガスとして好ましく使用される。
【0013】
作用物質−液ジェットと水ジェットとの衝突によって非溶媒沈殿および微細なミストの形成が引き起こされる。このようにして、溶媒は、この溶媒/非溶媒混合物から、非溶媒による沈殿と事実上同時に蒸発する。この溶媒/非溶媒混合物の温度が、溶媒蒸発温度よりも高いことは必要ではない。
【0014】
ノズルの直前での液体の高い背圧、その結果生じる衝突する液ジェットの高いジェット速度、従ってミスト小滴の微細さが原因であるだけでなく、液ジェットのうちの少なくとも1つの高温および空気、暖かい空気、熱気または、より好ましくは任意に予熱した不活性ガス(窒素など)による反応器のさらなる洗浄が原因で、溶媒は、非常に早く蒸発し、非常に小さい、コーティングされた作用物質粒子の形成が促進される。
【0015】
溶媒の微細な、加熱された液ジェットの形態のこの溶液は、こうして、水を含む少なくとも1つの第2の加熱された液ジェットと、ガス状雰囲気の中で衝突させられる。
【0016】
この液ジェットの速度は、通常、1m/sより大きく、50barを超える圧力で、速度は50m/sよりもはるかに大きい。
【0017】
これら少なくとも2つのジェットの衝突点で、非常に速い溶媒/非溶媒による沈殿が起こる。急速に混合することにより、非常に高レベルの過飽和が引き起こされ、非常に多くの核が生成されるが、この核は、その後あまり大きく成長することはできない。なぜなら、わずかに溶解した作用物質しか利用できないからである。
【0018】
より大きい粒子が成長するにつれてより小さい粒子が消失する現象であるオストワルド熟成は、記載されている方法を用いると起こらない。なぜなら、その溶媒/非溶媒混合物に対する沈殿した粒子の必要な残留溶解性は、粒子の沈殿後の非常に短い時間の間の、その溶媒/非溶媒混合物からの溶媒部分のイン・サイチュ蒸発によってすでになくなっているからである。
【0019】
拡張された実施形態では、溶媒にわずかに適度に可溶である医薬的作用物質は、分散液として調製され、その医薬的作用物質が溶解するまで加熱され、その後でその医薬的作用物質が反応器に供給されてもよい。また医薬的作用物質は、この加圧された溶媒の温度が室温でのその溶媒の沸点を超えて上昇する加熱された反応器送込みラインに、医薬的作用物質を通すことによって溶解されてもよい。この手順によって、感熱性の作用物質が加熱される必要がある時間が短くなる。
【0020】
衝突点が、動いているガスの流れの中にあることが有利である。
【0021】
この衝突点は、流れているガスの方向に広がるダクトの中にあることが適切である。特に、より高い圧力が使用されて液ジェットが形成される場合は、非常に小さい、霧のようなエアロゾルの小滴が生成し、その小滴の大きい表面積のため、この小滴から少なくともより揮発性の溶媒部分が非常に急速に蒸発し、医薬的作用物質は、分散液として、または、噴霧乾燥と同様にその液体およびガスの温度ならびにそれらの処理量に応じて、粉末として、生成される。
【0022】
ガス流およびマイクロリアクター、ならびに溶媒および非溶媒のための送込みラインが、加熱されていることが有利である。温度は、医薬品に熱的な害が及ばないように選択される。
【0023】
この方法を用いて得ることができる最小粒径は、先行技術の方法を用いて得ることができる粒径よりも実質的に小さい。
【0024】
エチルアルコールまたはアセトンは、溶媒として好適である。しかしながら、メタノール、イソプロパノールまたはテトラヒドロフランなどの他の揮発性の水混和性溶媒も、可能である。
【0025】
非常に適切な反応器としては、独国特許出願公開第10 2005 048 201号明細書に記載されている反応器が挙げられる。しかしながら、自由な、液ジェットがガス状帯で衝突する他の「フリージェット反応器」も考慮されてよい。
【0026】
このジェットが直接衝突せず、ガスが浸透したチャンバーのチャンバー壁に突き当たり、その結果生じる乱流によって混合されることも可能であるが、通常はあまり好ましくはない。
【0027】
適切なガスとしては、すべてのガス状元素が挙げられるが、とりわけ不活性ガスだけでなく乾燥空気、窒素または二酸化炭素も挙げられる。
【実施例】
【0028】
実施例1
有効成分グリクラジドおよびポリマーEudragit S100をメタノールに溶解し、2mg/mlの全体濃度および200:1のポリマー:作用物質比を得た。ナノ粒子を調製するために、0.1barの作業圧力を窒素ガスの流れについて設定し、0.5、2.5および10ml/分の流量を、作用物質およびポリマーを含有するメタノールについて設定し、貧溶媒として使用した水について10ml/分の流量を設定した。ポリマー:作用物質比が200、貧溶媒:溶媒の流量比は5よりも大きく設定して、高作用物質含有量のレベル(92.0、97.6%)を得た。
【0029】
実施例2
作用物質としてダナゾール、ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよび溶媒としてアセトンを使用した以外は実施例1に記載したようにして、ナノ粒子を調製した。貧溶媒:溶媒の流量比に依らず20のポリマー:作用物質比を選択することにより、100%までの高作用物質含有量のレベルを得た。
【0030】
実施例3
40、60、80および100℃の温度ならびに0.1barおよび1barの窒素作業圧力で200のポリマー:作用物質比を用いた以外は実施例1に記載したようにして、ナノ粒子を調製した。温度または圧力を上昇させるとナノ粒径の増大につながるということを観察した。これらのパラメータを変えることにより、サイズが205〜756nmの範囲のナノ粒子を製造することが可能であった。
【0031】
実施例4
40、60、80および100℃の温度ならびに0.1barおよび1barの窒素作業圧力で20のポリマー:作用物質比を用いた以外は実施例2に記載したようにして、ナノ粒子を調製した。温度または圧力を上昇させるとナノ粒径の増大につながるということを観察した。これらのパラメータを変えることにより、サイズが30〜275nmの範囲のナノ粒子を製造することが可能であった。
【0032】
実施例5
メタノール、アセトンまたはテトラヒドロフラン中で200のポリマー:作用物質比ならびに2、3、5および8mg/mlの異なる全固形分濃度を使用して、実施例1に記載したようにして、ナノ粒子を調製した。全固形分含量を上昇させるとナノ粒径の増大につながるということを観察した。異なる溶媒混合物を用いると、平均粒径は、MeOH>THF>アセトンの順に増大した。これらのパラメータを変えることにより、サイズが70〜300nmの範囲のナノ粒子を製造することが可能であった。
【0033】
実施例6
50のポリマー:作用物質比、ならびにアセトン:エタノール 50:50(w/w)またはエタノール:水 90:5(w/w)混合物中での3、5および8mg/mlの異なる全固形分濃度を使用して、実施例2に記載したようにして、ナノ粒子を調製した。全固形分含量を上昇させるとナノ粒径の増大につながるということを観察した。異なる溶媒混合物を用いると、平均粒径は、EtOH:水>アセトン:EtOHの順に増大した。これらのパラメータを変えることにより、サイズが38〜325nmの範囲のナノ粒子を製造することが可能であった。
【符号の説明】
【0034】
1 ガス供給
2 水浴
3 溶媒タンク
4 送込みライン
5 ポンプ
6 フィルター
7 反応器
8 回収タンク
9 貧溶媒タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小粒径の医薬的作用物質粒子であって、前記医薬的作用物質粒子は、
・医薬的作用物質粒子を水混和性溶媒に溶解させること、
・末端に圧力調整器として機能するノズルが存在する搬送ラインを通って、高められた圧力下で、このように調製された分散液をポンプ輸送すること、
・前記分散液搬送ラインを、標準圧力での前記溶媒の沸点を超える温度に加熱することにより、分散された前記作用物質粒子を溶解させること、
・沈殿/噴霧乾燥反応器のノズルに前記作用物質溶液を通すこと、
・作用物質溶液の液ジェットと、前記沈殿/噴霧乾燥反応器の別のノズルによって形成される液ジェットとを衝突させることであって、前記沈殿/噴霧乾燥反応器の別のノズルによって形成される液ジェットは、水から、または沈殿の間に形成される超微粒子の表面を改質する生体適合性成分を任意に含有する水溶液からなる、衝突させること、
・沈殿帯を自由に吹き抜けるためのガスを供給することにより、または前記ジェットがそれぞれのノズルを通過した後の圧力降下の結果としての衝突帯の中での溶媒および水の少なくとも部分的な蒸発により、または、フリージェット反応器、すなわち、十分に大きい衝突帯を有する反応器が使用される場合は、重力による前記分散液ミストの除去により、前記液ジェットの衝突点においてガス状雰囲気を維持すること、
・ガス状雰囲気の中で突き当たるジェットの形態で起こる混合に起因して、100ms未満、好ましくは1ms未満の混合時間で、極めて急速に混合すること、
・ガス状雰囲気の中で、前記衝突点およびプレート状の前記混合帯での、前記液ジェットの非常に速い拡散によって制御される溶媒/非溶媒による沈殿によって、ナノ粒子核を生成すること、
によって製造されることを特徴とする、医薬的作用物質粒子。
【請求項2】
前記分散液搬送ラインは、純粋な溶媒用のさらなる、ポンプで供給される入力部を有し、前記溶媒の温度は、標準圧力における前記溶媒の沸点よりも高く、かつ前記分散液搬送ラインの温度よりも高く、このため、残留するまだ溶解していない分散された粒子の、搬送されつつある前記分散液の中への急速な溶解が生じ、前記作用物質が熱ストレス下にある時間が短縮される、請求項1に記載の医薬的作用物質粒子。

【図1】
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【公表番号】特表2012−517403(P2012−517403A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548532(P2011−548532)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/DE2010/075015
【国際公開番号】WO2010/091683
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511194566)エムジェイアール ファームジェット ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】