説明

医薬組成物における改善および医薬組成物に関する改善

非経口の単位投薬形態または真皮もしくは粘膜を介する送達のために適切な単位投薬形態において、患者に送達されるかまたは患者の血漿に到達するブプレノルフィン対ナロキソンの重量による比率が7.5:1〜12.4:1の範囲中であるようにブプレノルフィンおよびナロキソンの量を含む、組成物。ブプレノルフィンの鎮痛作用は低用量のナロキソンによって増強され、それは薬物常用者による本組成物の乱用の可能性を減少させる役目もまた果たす。疼痛の治療の方法ならびに医薬品の製造のためのナロキソンおよびブプレノルフィンの使用もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ナロキソンとの組合せでブプレノルフィンを含む医薬組成物、加えてかかる組成物の製造におけるそれらの使用および臨床業務における鎮痛剤としてのそれらの使用に関する。
【0002】
オピオイドは中等度から重度の疼痛の管理において特に有効であるが、それらの使用は不快で潜在的に危険な副作用によって限定される。かかる副作用は鎮静状態、呼吸抑制、悪心および胃腸障害を含みうる。したがって、副作用を最小限にする取り組みが行なわれてきた。
【0003】
多くのオピオイドがあり、いくつかのものは他のものよりも有意な副作用を生じる。従って、鎮痛性組成物中に用いられるオピオイドを注意深く選択することそれ自体によって、副作用の発生率および重症度を減少できる。特に適切な1つのオピオイドはブプレノルフィンであり、有意な身体依存性を生じずにアゴニスト(モルヒネ様)特性およびアンタゴニスト特性の両方を有することが示されている。
【0004】
ブプレノルフィン(N−シクロプロピルメチル−7α−[1−(S)−ヒドロキシ−1,2,2−トリメチル−プロピル]6,14−エンドエタノ−6,7,8,14−テトラヒドロノルオリパビンについての国際一般的名称)は、他のオピエート鎮痛薬に見出される精神異常作用を欠く強力なオピエート部分アゴニスト鎮痛剤である。しかしながら、ブプレノルフィンは、幾人かの患者では悪心嘔吐、便秘および呼吸抑制などのオピエートアゴニストの典型的な副作用を示すが、その部分アゴニスト特性の直接的な結果として呼吸抑制に対する効果の上限がある。
【0005】
他の薬物とオピオイド治療を組み合わせることによる副作用の発生率および重症度を最小限にしながらオピオイドの鎮痛効果を増強する試みもまた行なわれた。
【0006】
1つのアプローチは、オピオイド治療への非オピオイド鎮痛薬の添加である。ここでの論理的根拠は、より低いレベルのオピオイドが抗侵害受容作用を達成するために必要であり、したがって副作用が減少されるに違いないということである。
【0007】
他のアプローチは、オピオイドアゴニストおよび低用量のオピオイドアンタゴニストの共投与である。
【0008】
オピオイドアンタゴニストの投与に関連したオピオイド結合の強力な遮断を考慮すると、かかる薬剤の使用は疼痛軽減を向上させず、おそらくアンタゴニストに組み合わせるアゴニストの部分的な遮蔽効果を介して疼痛を増加させうることが古典的には期待されるだろう。しかしながら、いくつかの実例において、抗侵害受容作用がアンタゴニストの共投与によって増強されうることが見出された。
【0009】
そのような1つのアンタゴニストは、麻薬アンタゴニストであるナロキソン(1−N−アリル−14−ヒドロキシノルヒドロモルヒノン(hydroxynorhydromorphinone)についての国際一般的名称)である。
【0010】
GB2150832Aにおいて、ブプレノルフィンの活性用量、および非経口投与により麻薬常用者に対しては不快であることが立証される程度に十分であるが、ブプレノルフィンの鎮痛作用を妥協するには不十分であるナロキソンの量を含む、非経口形態または舌下形態で鎮痛性組成物が開示される。非経口投薬形態は3:1〜1:1の重量比率内で、および舌下形態は1:2〜2:1の比率内でブプレノルフィンおよびナロキソンを含みうる。GBA−2150832の試験はラットで行なわれた。
【0011】
EP1242087Aにおいて、低用量のナロキソンによって非経口レベルおよび舌下レベルのブプレノルフィンが増強および促進されることが開示される。ラットでの試験に基づいて、12.5:1〜27.5:1、好ましくは15:1〜20:1のブプレノルフィン対ナロキソンの重量が適切な比率である。
【0012】
ヒトの研究は現在行なわれ、オピオイドアゴニストとしてブプレノルフィンおよびオピオイドアンタゴニストとしてナロキソンを組み合わせた使用についての新しい所見が生じている。これらの新しい所見は、ヒトにおいて効果的な鎮痛を生ずる治療的用量についての理解を拡大する。
【0013】
本発明の第1の態様に従って、非経口の単位投薬形態または粘膜もしくは真皮を介する送達のために適切な単位投薬形態における鎮痛性組成物であって、ブプレノルフィンおよび患者に送達されるかまたは患者の血漿に到達するブプレノルフィン対ナロキソンの重量による比率が7.5:1〜12.4:1の範囲中であるような量のナロキソンを含む組成物が提供される。
【0014】
ブプレノルフィンの鎮痛作用は比較的少量の量のナロキソンによって増強されると考えられている。
【0015】
本明細書において使用されるような用語ブプレノルフィンおよびナロキソンは、エステル、塩基および塩(例えば酸付加塩)などの、単純に関連する、薬学的に許容される化合物を包含するように意図されることが理解されるべきである。特に好ましい塩は塩酸塩である。しかしながら、本明細書において参照される比率および重量はブプレノルフィンおよびナロキソンそれ自体を指し、塩、塩基またはエステルは指さない。
【0016】
用語非経口は、消化管を介する以外の任意の方法による組成物の投与を包含するように意図される。
【0017】
用語粘膜は、任意の粘膜を包含するように意図され、口腔粘膜、直腸粘膜、膣粘膜および鼻粘膜を含む。用語真皮は非粘膜の皮膚を示す。
【0018】
投与はその性質に依存して、数分かかってもよい。好ましくは、それは、少なくとも1分、好ましくは少なくとも2分、好ましくは少なくとも3分の期間にわたる。好ましくは、それは10分まで、好ましくは7分まで、好ましくは5分までの期間にわたって起こる。
【0019】
経皮投与は、真皮を介する投与の任意の様式を包含できる。経粘膜投与は粘膜を介する投与の任意の様式を包含でき、投与の部位は例えば、膣粘膜および直腸粘膜、ならびに好ましくは口腔−鼻腔の粘膜(例えば鼻部位、喉部位、口腔部位、舌下部位)を含みうる。鼻腔投与および舌下投与は特に好ましい。
【0020】
好ましくは、ブプレノルフィン対ナロキソンの定義された比率は、投与完了後60分以内に達成され、すなわち、好ましくは、投与完了の60分以内のある時間で、血漿中の定義された薬物比率が達成される。
【0021】
患者に送達されるかまたは患者の血漿に到達するブプレノルフィン対ナロキソンの重量による比率が少なくともX:1(X対1)であり、式中Xは8.0、好ましくは9.0、好ましくは9.5、好ましくは10.0、好ましくは10.5、好ましくは11.0であるように、組成物はブプレノルフィンおよびナロキソンを含みうる。
【0022】
患者に送達されるかまたは患者の血漿に到達するブプレノルフィン対ナロキソンの重量による比率がY:1(Y対1)以下であり、式中Yは12.3、好ましくは12.2、好ましくは12.0、好ましくは11.5であるように、組成物はブプレノルフィンおよびナロキソンを含みうる。
【0023】
意外にも、ブプレノルフィンに対するナロキソンの相対的な量はEP1242087Bよりも本発明でより高いが、ナロキソンのアンタゴニスト作用が「勝つ」ことがなく、ナロキソンは実際ブプレノルフィンのアゴニスト作用を増強することが見出された。
【0024】
組成物は非経口の単位投薬形態を含むことができ、非経口組成物内のブプレノルフィン対ナロキソンの比率は、適用に際して患者に送達されるかまたは患者の血漿に到達するものと実質的に同じでありうる。したがって、非経口の投薬形態は、血漿中のブプレノルフィンおよびナロキソンについて上で述べたような好ましい上限および下限の比率で、重量比率7.5:1〜12.4:1のブプレノルフィンおよびナロキソンを含みうる。
【0025】
ヒトでは、EP1242087B中で述べられるように、体重1キログラムあたり約40μgのブプレノルフィンの投薬量が増強のない状態において十分な疼痛軽減を得るために適切に必要とされる。したがって50〜80kgの典型的な体重については、ブプレノルフィン投薬量は、1日あたり2mg〜3.2mgのブプレノルフィンであるだろう。これは、4単位用量として便利に投与されるだろう。本発明の組成物中で効果的であるのに必要な量のブプレノルフィンは、ナロキソンの増強効果のない状態において効果的であるのに必要な量より少ない。
【0026】
重要なことには、ナロキソンの増強効果ありおよびその増強効果なしのブプレノルフィンの同等の用量を比較するときに、前者の組成物(すなわちナロキソンもまた含む)によって達成される鎮痛の大きさおよび継続期間は著しく増加する。したがって、ナロキソンと組み合わせたときに、同じ鎮痛実績はより低いブプレノルフィン用量で達成できる。治療用範囲内でまたは治療用範囲にわたって、鎮痛効果の増加を達成できること、および/または減少した濃度のブプレノルフィンを使用できることが提案されている。
【0027】
適切には、本発明の組成物の単位用量(ナロキソンを含む)は、ナロキソンなしのブプレノルフィンの単位用量で相当する疼痛軽減を得るのに必要な単位用量以下である量でブプレノルフィンを含む。
【0028】
適切には、本発明の組成物は、単位用量あたり少なくとも10μg、好ましくは少なくとも15μg、好ましくは少なくとも20μg、好ましくは少なくとも30μg、および最も好ましくは少なくとも40μgのブプレノルフィンを含む。これらの値は、低投薬量で鎮痛を達成することにおいて本発明の利益を反映する。
【0029】
適切には、本発明の組成物は従来の臨床業務の上限まで任意の量のブプレノルフィンを含みうる。適切には、それらは、単位用量あたり32mgまで、好ましくは16mgまで、好ましくは8mgまで、好ましくは4mgまで、好ましくは2mgまで、好ましくは1mgまで、好ましくは600μgまで、好ましくは400μgまで、好ましくは200μgまで、好ましくは160μgまで、および最も好ましくは100μgまでのブプレノルフィンを含みうる。
【0030】
適切には、本発明に従って、患者は、24時間あたり少なくとも1kg(の体重)あたり0.25μgのブプレノルフィンを投与される。好ましくは、量は少なくとも0.5μg、好ましくは少なくとも1μg、好ましくは少なくとも1.5μgおよび最も好ましくは少なくとも2μgである。
【0031】
適切には、本発明に従って、患者は、24時間あたり1kgあたり640μgまでのブプレノルフィンを投与される。好ましくは、量は320μgまで、好ましくは160μgまで、好ましくは80μgまで、好ましくは40μgまで、好ましくは20μgまで、好ましくは16μgまで、および好ましくは12μgまでである。最も好ましくは、量は8μg未満である。
【0032】
適切には、本発明の組成物の使用によって、疼痛軽減を達成する目的のために患者に投与されるブプレノルフィンの量は、24時間あたり少なくとも40μg、好ましくは少なくとも60μg、好ましくは少なくとも80μg、好ましくは少なくとも120μg、および最も好ましくは少なくとも160μgである。
【0033】
適切には、本発明の組成物の使用によって、疼痛軽減の達成目的のために患者に投与されるブプレノルフィンの量は、32mgまで、好ましくは16mgまで、好ましくは8mgまで、好ましくは4mgまで、好ましくは2mgまで、好ましくは1mgまで、好ましくは800μgまで、好ましくは600μgまで、好ましくは400μgまで、好ましくは200μgまで、好ましくは160μgまで、好ましくは100μgまでである。
【0034】
適切には、組成物は、単位用量あたり少なくとも1μg、好ましくは少なくとも1.5μg、好ましくは少なくとも2μg、および最も好ましくは少なくとも4μgのナロキソンを含む。
【0035】
適切には、組成物は、単位用量あたり4mgまで、好ましくは2mgまで、好ましくは1mgまで、好ましくは500μgまで、好ましくは300μgまで、好ましくは200μgまで、好ましくは100μgまで、好ましくは80μgまで、および最も好ましくは50μgまでのナロキソンを含む。
【0036】
適切には、投与されるナロキソンの量は、24時間あたり体重1kgあたり少なくとも0.025μgのナロキソンである。好ましくは、量は少なくとも0.05μg、好ましくは少なくとも0.1μg、好ましくは少なくとも0.15μg、好ましくは少なくとも0.2μg、好ましくは少なくとも0.25μg、好ましくは少なくとも0.4μgである。
【0037】
適切には、投与されるナロキソンの量は、24時間あたり体重1kgあたり320μgナロキソンまでである。好ましくは、量は160μgまで、好ましくは80μgまで、好ましくは40μgまで、好ましくは20μgまで、好ましくは10μgまで、好ましくは8μgまで、および好ましくは6μgまでである。好ましくは、量は、24時間あたり1kgあたり4μg以下である。
【0038】
適切には、投与されるナロキソンの量は少なくとも24時間あたり5μg、好ましくは少なくとも8μg、好ましくは少なくとも10μg、好ましくは少なくとも15μg、および最も好ましくは少なくとも20μgである。
【0039】
適切には、投与されたナロキソンの量は24時間あたり16mgμgまで、好ましくは8mgまで、好ましくは4mgまで、好ましくは2mgまで、好ましくは1mgまで、好ましくは500μgまで、好ましくは400μgまで、好ましくは300μgまで、および最も好ましくは200μgまでである。
【0040】
患者に投与できる化合物の量に対する上記参照は、成人患者に対する参照である。
【0041】
投与されるブプレノルフィンおよびナロキソンの絶対量が何であれ、ブプレノルフィンに対するナロキソンの比率の本明細書において述べられる定義が満たされなくてはならない。
【0042】
薬学的に許容される希釈剤および/または担体と共に、単位投薬形態(すなわち適切な量のブプレノルフィンおよびナロキソンを含む物理的に不連続の単位)で組成物を製剤化することが好ましい。非経口投与についてのかかる単位投薬形態は、適切にはアンプルの形態である。経皮投与または経粘膜投与のための単位投薬形態は、例えばタブレット、フィルム、スプレー、パッチ、擦リ込むための組成物またはロゼンジでありうる。第2の態様でさらに記述される投与は、好ましくはかかる形態において、ブプレノルフィンおよびナロキソンを含む医薬品の送達を含みうる。
【0043】
本発明の組成物は、バッファーシステム(例えばクエン酸およびクエン酸ナトリウムなどの有機酸およびその塩)を含みうる。
【0044】
舌下投薬形態の形態で組成物は、ラクトース、マンニトール、デキストロース、スクロースまたはその混合物などの物質から選択される可溶性添加剤を適切には含んでいる。それらは、デンプンなどの物質から選択された造粒剤および崩壊剤、ポビドンまたはヒドロキシプロピル−メチルセルロースなどの結合剤、およびステアリン酸マグネシウムなどの平滑剤もまた適切には含む。
【0045】
非経口投与を意図した組成物は、滅菌水中に、ブプレノルフィンおよびナロキソンの等張液を含みうる。便利なようには、溶液はデキストロースの使用によって等張にでき、オートクレーブ滅菌によって、または濾過膜を通す濾過によって滅菌できる。組成物は、筋肉内に、皮膚内に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、皮下に、または硬膜外経路によって投与できる。
【0046】
非経口投与のための、または舌下投与によってなどの粘膜を介する送達のための組成物は、上で詳述されたように、当業者に周知の製造技術によって調製できる。
【0047】
本発明の第2の態様に従って、ヒト患者における疼痛の治療のための方法であって、患者に送達されるかまたは患者の血漿に到達するブプレノルフィン対ナロキソンの重量による比率が7.5:1〜12.4:1の範囲中であるようなブプレノルフィンおよびナロキソンの非経口経路または皮膚経路または粘膜経路によるヒト患者への投与を含む方法が提供される。
【0048】
ブプレノルフィン対ナロキソンの好ましい比率は第1の態様に関して上で定義された通りである。
【0049】
適切には、本方法は粘膜を介する送達を含む。本方法は舌下単位投薬形態における送達を含みうる。
【0050】
適切には、本方法は、ブプレノルフィン、およびブプレノルフィンの鎮痛作用を増強し、特にブプレノルフィンの鎮痛作用とナロキソンの抗乱用の存在との間のバランスを最適化する目的のための量のナロキソンの投与を含む。このバランスが非常に重要であることが理解される。医薬品は、意図した機能を遂行する強力な鎮痛薬でなくてはならない。同時に今日では、オピオイド医薬品が常用者による乱用を妨げることが極めて重要である。本発明はこれらの点において非常に効果的であると考えられる。
【0051】
ブプレノルフィンおよびナロキソンの個別投与は本方法では除外されない。しかしながら適切には、本方法はヒトに、ブプレノルフィンおよびナロキソンを含む組成物を投与することを含む。適切には、本方法は第1の態様に従う組成物を用いる。第1の態様に関して上で与えられた定義は第2の態様に適用されるが、第2の態様ではブプレノルフィンおよびナロキソンは原理上は個別に投与されてもよいことが注目される。
【0052】
適切には、本方法は1日あたり体重1キログラムあたり0.25μg〜20μgのブプレノルフィンでヒトまたは動物に投与することを含む。
【0053】
本方法は、もし単独で投与されるならば、最小の抗侵害受容作用を生じるか、または抗侵害受容作用を生じないブプレノルフィンの用量を投与することを含みうる。本方法は本発明の第1の態様に関して上述されるようなブプレノルフィンおよびナロキソンの量をヒトに投与することを含みうる。
【0054】
本方法は第1の態様に関して記述されるような任意の特徴を含みうる。
【0055】
本発明の第3の態様に従って、疼痛の治療のための医薬品の製造におけるナロキソンおよびブプレノルフィンの使用であって、ナロキソンおよびブプレノルフィンが、7.5:1〜12.4:1の範囲中のブプレノルフィン対ナロキソンの重量による比率で医薬品が患者に送達されるかまたは患者の血漿に到達するような量で使用される、ナロキソンおよびブプレノルフィンの使用が提供される。
【0056】
適切には、本使用は、疼痛の治療のための医薬品の製造におけるブプレノルフィンおよびナロキソンの使用であって、ブプレノルフィンは鎮痛効果のために使用されるが、ナロキソンのない状態において規定の患者における規定の疼痛に対する規定の鎮痛効果のために必要であるよりも低いレベルで使用される、ブプレノルフィンおよびナロキソンの使用を含む。したがって、ナロキソンは、ブプレノルフィンの鎮痛効果を増強する。さらに、それは医薬品を薬物常用者にとってそれほど魅力的でなく(および好ましくは完全に魅力的でなく)する。
【0057】
第3の態様に従う医薬品の製造におけるブプレノルフィンおよびナロキソンの使用は、第1の態様または第2の態様に関して記述されるような任意の特徴を含みうる。
【0058】
適切には、医薬品の製造におけるブプレノルフィンおよびナロキソンの使用は、第1の態様に従う組成物を含む医薬品の製造を含む。しかしながら、ブプレノルフィンおよびナロキソンをそれぞれ含む、2つの投薬単位を有する医薬品の製造におけるブプレノルフィンおよびナロキソンの使用は除外されない。
【0059】
本発明はここで例証として添付の図面に対する参照と共に以下に図示される。
方法
侵害受容試験
【0060】
ブプレノルフィンおよびブプレノルフィンの抗侵害受容作用ならびにナロキソンの組合せを評価するために、寒冷昇圧(CP)試験を使用した。化合物形態はブプレノルフィン塩酸塩およびナロキソン塩酸塩二水和物であった。CP試験は2つのプラスチック円筒容器を利用し、その1つは温水で、他のものは「雪解けの(slushy)」硬さを達成するように水および砕いた氷の組合せで満たした。被験者は利き手でない前腕および手を正確に2分間温水の中へ浸した。1分45秒で、浸した腕上の血圧計カフを拡張期血圧の20mmHg下の圧迫まで膨張させた。血圧計カフは、寒冷に対する反応の測定における血流の役割を最小限にした。正確に2分で、前腕を温水から冷水浴へ移した。被験者の目は、気を散らすものおよび時間についての合図を最小限にするために、全手順の間覆った。冷水浴中の四肢の浸漬に際して、被験者に、いつ最初に疼痛を感じたか(疼痛閾値、CPTHR)を示すように依頼し、次に彼らがもはや疼痛を耐えることができなくなる(疼痛耐性、CPTOL)まで腕を沈めたままにするように依頼した。疼痛閾値時間および疼痛耐性時間は冷水中の浸漬の秒で記録した。未公表の180秒のカットオフ(その時間後の疼痛耐性は、もはやしびれのために正確に評価することができない)を課した。疼痛耐性(CPTOL)は最新の研究において報告される疼痛反応パラメーターである。
【0061】
本試験については、侵害受容試験は、最小のバックグラウンドノイズ、聞き取り可能な声および聞き取り可能なティッキングをともなう無時計で同じ環境で行なった。周囲の室温および照明は一貫していた。実験者は、被験者と試験に対する成績について決して論じないか、または平均疼痛耐性時間に関連するいかなる質問もしくはいかなる以前の結果に答えない。
【0062】
スクリーニング
試験前に、被験者は、以前の病状および薬物乱用のような因子に基づく組入れ基準および除外基準に従ってスクリーニングされた。
【0063】
試験手順
適切にスクリーニングされた被験者を、以下の手順に従って試験した。被験者は試験日に到着と同時に尿サンプルを提供し、乱用している薬物(オピオイド、大麻類、ベンゾジアゼピンおよび交感神経興奮アミン)、および女性の被験者については妊娠について試験された。22ゲージ留置静脈カテーテルを、各腕(利き手でない腕についてはCP浸漬ラインの上方で)の最良の利用可能な前腕静脈へと挿入した。オス型ルアーロックアダプター注射部位を各カテーテルに接続した。1つのカテーテルは試験日を通じて血液サンプリングのために、および他のカテーテルは注入のために使用した。次に参加者を、試験セッション期間の間に生理的パラメーターを連続的にモニタリングするようにセットされているモニターに連結した。
【0064】
各試験日に、被験者は30分の非盲検の生理食塩水の静脈内注入を受け、続いて1回または複数回の30分の薬物(またはプラセボ)注入を受けた。初回生理食塩水注入の目的は以下の2つであった。注入プロセス自体に対する反応として疼痛または生理的パラメーターにおける任意の変化が起こるかどうかを立証すること、およびカテーテルを介する静脈投与に対する妨害がなく注入ポンプが正しく作動していることを保証することである。
【0065】
注入はシリンジポンプを使用して投与した。薬物および生理食塩水は30mlのBDプラスティパック(Plastipak)シリンジ中で調製した。注入は毎時20mlの速度で30分間流した。各シリンジは最小体積の延長セットに接続した。(150cmチューブ、メス型ルアーロック、オス型ルアーロック、0.5mL/30cm)。オス型ルアーロックはレバーロックカニューレに接続した。延長セットに薬物/生理食塩水を詰め、注射部位へと挿入した。ブプレノルフィン:アンタゴニストの比率研究において、ブプレノルフィンおよびアンタゴニストは同時に投与した。2つの薬物の同時注入のために(1つのカニューレを介して)、2つの注射部位を備えたY形カテーテル延長セットをカテーテルに接続し、レバーロックカニューレ(最小体積の延長セットを介して各シリンジに連結される)を注射部位の各々の中に挿入した。
【0066】
試験セッションは各試験日の間に何度も行なった。各試験セッションは、リストされた順で以下の測定からなっていた。記録された悪心および鎮静状態、採取された血液サンプル、記録された生理的パラメーター(脈拍、酸素飽和度および血圧)、完了した侵害受容試験(上で詳述されたように)および記録された呼吸(CPの温水構成部分の間に完全な1分間でカウントされた1分あたりの呼吸)。
【0067】
試験セッションは各試験日を通じてセットされた間隔で行なった。これらは以下の通りであった。1.注入の開始前;2.30分の生理食塩水注入の開始20分後;3.30分の薬物注入の開始20分後、および続いて(最後)薬物注入の停止から一時間ごと。これはウォッシュアウト期間と呼ばれる。各30分の注入の開始20分後に試験セッションを行なう目的は、続いて行なわれる注入のスタート前に試験が完了する時間を見越しておくことであった。
【0068】
結果の比較
ベースライン値が条件間で異なっていたので、CPTOLデーターは、異なる薬物の組合せに関連する効果を比較するためにベースラインからの%変化として表現した。各参加者の各条件についての各タイムポイントでの反応は、以下の等式に従うベースライン反応からの%変化として表現した。データーは、各条件についての各々の投薬後の試験セッションでこれらの値の平均(±SEM)として表現される。
(投薬後の潜時−ベースライン潜時)/ベースライン潜時×100
これは、パーセント変化CPTOLについての値を提供する。
【実施例】
【0069】
例1
8人の健康なコーカサス人のボランティア(4人の男性、4人の女性)が研究に組入れられた。1人の37歳の男性のデーターは、BUPのみの試験日にオピオイド陽性尿のために分析から除外された。そのため最終サンプル(n=7)は3人の男性および4人の女性を含み、平均年齢は25.14(±1.02、範囲21〜37)、およびスクリーニングでの平均CPTOLは43.00(±6.73、範囲29〜80)であった。年齢(p=0.265)またはスクリーニングでのCPTOL(0.764)の点では男性と女性との間で有意な差はなかった。
【0070】
被験者に静脈内注入によって10:1の比率でブプレノルフィンおよびナロキソンを投与し、ブプレノルフィンは0.5mg/kg体重の用量であった。ウォッシュアウトモニタリングは10時間の期間実行した。CPTOLの結果を図1中に提供する。問題となる副作用は示されなかった。
【0071】
例2−比較
比較例として、実施例1からの同じ被験者に、別の日に静脈内注入によってブプレノルフィンおよび生理食塩水(後に「BUPのみ」と呼ばれる)を投与した。ブプレノルフィンを0.5mg/kg体重の用量で再び投与し、ウォッシュアウトモニタリングを10時間にわたって実行した。CPTOL結果を図2中に提供する。
【0072】
例の比較
ベースラインからのCPTOLについてのパーセント変化を実施例1および2について計算し、結果を図3中に提供する。試験の早期の時間において、ブプレノルフィン単独と比較して、ブプレノルフィンおよびナロキソンの組合せの利益があったことが理解できる。
【0073】
例3−非経口組成物
【表1】

上記の組成物を有する非経口製剤は、注射用水の約95%のバッチ体積中で、デキストロース、塩酸ブプレノルフィンおよび塩酸ナロキソンをその順序で撹拌して溶解することによって調製した。溶液の酸度は0.1M塩酸の添加によってpH4.0に調整し、溶液は注射用水で体積までにした。溶液は濾過膜によって濾過し、2mlの溶液を含む滅菌された2mlのガラス製アンプルに移した。アンプルを密封し、生成物をオートクレーブ滅菌によって滅菌した。
【0074】
例4−舌下組成物
【表2】

上記の組成物を有する舌下錠は、ステアリン酸マグネシウムを例外とした原料をすべて750μmのふるいを通してスクリーニングすることおよびそれらを一緒に混合することによって調製した。次に混合粉末は水性顆粒化手順を行ない、50℃で乾燥した。結果として生じる顆粒は750μmのふるいを強制的に通し、ステアリン酸マグネシウム(あらかじめ500μmのふるいを通した)に混合した。タブレット用顆粒を圧縮して5.56mmの直径で60mgの重量のタブレットを産出した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ブプレノルフィンおよびナロキソンの組合せについての疼痛耐性結果のグラフである。
【図2】ブプレノルフィン単独についての疼痛耐性結果のグラフである。
【図3】比較のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非経口の単位投薬形態または粘膜もしくは真皮を介する送達のために適切な単位投薬形態における鎮痛性組成物であって、ブプレノルフィンおよび患者に送達されるかまたは患者の血漿に到達するブプレノルフィン対ナロキソンの重量による比率が7.5:1〜12.4:1の範囲中であるような量のナロキソンを含む組成物。
【請求項2】
前記比率が少なくともX:1であり、式中Xは8.0または9.0または9.5または10.0または10.5または11.0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記比率がY:1までであり、式中Yは12.3または12.2または12.0または11.5である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記単位投薬形態中のブプレノルフィンの量は10μg〜8mgまでである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ヒト患者における疼痛の治療のための方法であって、患者に送達されるかまたは患者の血漿に到達するブプレノルフィン対ナロキソンの重量による比率が7.5:1〜12.4:1の範囲中であるようなブプレノルフィンおよびナロキソンの非経口経路または皮膚経路または粘膜経路によるヒト患者への投与を含む方法。
【請求項6】
疼痛の治療のための医薬品の製造におけるナロキソンおよびブプレノルフィンの使用であって、ナロキソンおよびブプレノルフィンが、7.5:1〜12.4:1の範囲中のブプレノルフィン対ナロキソンの重量による比率で医薬品が患者に送達されるかまたは患者の血漿中で到達するような量で使用される、ナロキソンおよびブプレノルフィンの使用。
【請求項7】
前記ブプレノルフィンの投与が24時間あたり体重1kgあたり0.25〜640μgの範囲中である、請求項5または6に記載の方法または使用。
【請求項8】
実質的に本発明に従って上文に記述されるような組成物または方法または使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−520186(P2010−520186A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551256(P2009−551256)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000526
【国際公開番号】WO2008/104738
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(501427803)レキット ベンキサー ヘルスケア (ユーケイ) リミテッド (11)
【Fターム(参考)】