説明

医薬組成物容器

【課題】同程度の大きさの硬カプセルよりも喉越しがよく、かつ、同程度の喉越しの硬カプセルに比べて大量の医薬組成物を一度に服用できる医薬組成物容器を提供する。
【解決手段】容器本体402は嚥下補助物質収容室430と包蔵物収容室432と出口形成予定部436とを有している。嚥下補助物質収容室430に嚥下補助物質502が収容されている。包蔵物収容室432に、包蔵物500が収容されている。包蔵物500は、少なくとも表面が嚥下補助物質502の成分に対して溶解する。筒形部510は、外径が0ミリメートルを超え14ミリメートル以下かつ長さが0ミリメートルを超え50ミリメートル以下という要件と、外径が0ミリメートルを超え7ミリメートル以下かつ長さが0ミリメートルを超え60ミリメートル以下という要件とのうち少なくとも一方を満たす。出口形成予定部436での出口の形成が予定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物容器に関し、さらに詳しくは、同程度の大きさの硬カプセルよりも喉越しがよく、かつ、同程度の喉越しの硬カプセルに比べて大量の医薬組成物を一度に服用することを可能にする、医薬組成物容器に関する。
【背景技術】
【0002】
散剤または顆粒剤を服用する一般的な方法は、水を利用して嚥下する方法である。散剤または顆粒剤を水により嚥下するための一般的な方法は、一旦舌上に受けたのち水と共に散剤または顆粒剤を嚥下する方法である。このような方法で散剤または顆粒剤を服用する場合、次に述べるような3つの問題がある。第1の問題は、散剤の一部または顆粒剤の一部がいつまでも口内などに残留するという問題である。第2の問題は、薬効成分による刺激を舌が受けるという問題である。第3の問題は、横臥した状態で散剤または顆粒剤を服用することができないという問題である。
【0003】
特許文献1は、複室型容器を開示する。この複室型容器は、複数の空間を互いに連通可能に区画したものである。これらの空間は、外部から加えられる力によって連通可能な状態で閉塞されている。これらの空間のいずれかに、散剤または顆粒剤が密封状態で収容されている。他の空間には濃厚流動物質が密封状態で収容されている。各空間を互いに連通させて、散剤または顆粒剤と濃厚流動物質とを集合させ混合したのち、いずれかの空間に設けた取出し口より混合物を取出し可能である。
【0004】
特許文献1に開示された容器によれば、極めて簡単な操作で散剤または顆粒剤を服用することができる。しかも、特許文献1に開示された複室型容器によれば、服用に対する患者の抵抗感を大幅に減じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−234820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開始された発明では、散剤または顆粒剤の量が多いとき、散剤または顆粒剤と濃厚流動物質との混合物を服用することが難しいという問題点がある。その理由は、複室型容器の内部という限られた空間で散剤または顆粒剤と濃厚流動物質とを混合することが難しい点にある。複室型容器の内部という限られた空間で散剤または顆粒剤と濃厚流動物質とを混合できなければ、複室型容器の中に散剤または顆粒剤が残留する恐れが高くなる。
【0007】
医薬品を加工して錠剤にした後、その錠剤を服用することも考えられる。医薬品を硬カプセルに収容してその硬カプセルを収容することも考えられる。この場合、錠剤または硬カプセルを一旦舌上に受けたのち、その錠剤または硬カプセルを水と共に嚥下するとよい。水の代わりに濃厚流動物質を用いてもよい。しかしながら、物を飲み込む力が衰えている者にとって錠剤または硬カプセルは嚥下しにくいものである。服用すべき医薬品の量が多いとき、錠剤および硬カプセルのサイズは大きくなる。そのような大きな錠剤および硬カプセルを嚥下することは、小さな錠剤および硬カプセルに比べ困難である。小さな錠剤および硬カプセルでさえ嚥下が困難な者にとり大きな錠剤および硬カプセルの嚥下が困難であることは言うまでもないことである。
【0008】
物を飲み込む力が衰えている者にとって、上述した嚥下が困難であるという問題は、医薬品を服用するときのみに生じる問題ではない。例えば、粉末状の食品およびサプリメントを摂取する際にもこの問題は生じる。
【0009】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消するためになされたものである。その目的は、同程度の大きさの硬カプセルよりも喉越しがよく、かつ、同程度の喉越しの硬カプセルに比べて大量の医薬組成物を一度に服用することを可能にする、医薬組成物容器を提供することにある。なお、本発明における「医薬組成物」とは、医薬品、食品、サプリメント、および、これらを含有する混合物を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図面を参照して本発明の医薬組成物容器を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、医薬組成物容器400は、容器本体402を備える。容器本体402は複数の空間430,432,434を有する。隣り合う2つの空間430,432,434の間は力が加えられると開くよう閉塞されている。空間のうち少なくとも1つが、嚥下補助物質収容室430である。嚥下補助物質収容室430に嚥下補助物質502が収容されている。空間430,432,434のうち少なくとも1つである包蔵物収容室432に、包蔵物500,700が収容されている。包蔵物500,700は、少なくとも表面が嚥下補助物質502の成分に対して溶解する。包蔵物500,700が、医薬組成物540が入っている筒形部510と、一対の閉塞部512,514とを有している。閉塞部512,514は、筒形部510の両端を閉塞する。筒形部510は、外径が0ミリメートルを超え14ミリメートル以下かつ長さが0ミリメートルを超え50ミリメートル以下という要件と、外径が0ミリメートルを超え7ミリメートル以下かつ長さが0ミリメートルを超え60ミリメートル以下という要件とのうち少なくとも一方を満たしている。容器本体402が、複数の空間430,432,434に加え、出口形成予定部436を有している。出口形成予定部436での出口の形成が予定されている。出口から嚥下補助物質502と包蔵物500,700とが出る。
【0012】
また、上述した嚥下補助物質502の荷重強度が196パスカル以上980パスカル以下であることが好ましい。
【0013】
また、上述した筒形部510が、可食フィルム530を筒形に巻くことで形成されていることが好ましい。この場合、可食フィルム530の端が筒形部510に貼り付けられていることが好ましい。
【0014】
また、上述した一対の閉塞部512,514が軟化片522,524をそれぞれ有することが好ましい。軟化片522,524は、嚥下補助物質502に接触すると軟化する。
【0015】
容器本体402において隣り合う2つの空間430,432,434の間を順次開くと、いずれ、嚥下補助物質収容室430と包蔵物収容室432とが連通する。嚥下補助物質収容室430と包蔵物収容室432とが連通した後、嚥下補助物質収容室430から包蔵物収容室432へ嚥下補助物質502を移動させると、嚥下補助物質502は包蔵物500,700を取囲む。嚥下補助物質502が包蔵物500,700を取囲むと、嚥下補助物質502が軟化片522,524に接触する。嚥下補助物質502に接触した軟化片522,524は軟化する。軟化した軟化片522,524は、出口から出た包蔵物500,700を患者が嚥下するとき、患者の口内および喉に接触する。軟化した軟化片522,524が接触することで、軟化片522,524が設けられていない場合に比べ、包蔵物500,700を嚥下している患者が痛みを感じる可能性は低下する。
【0016】
もしくは、上述した一対の閉塞部512,514の一方が有する軟化片522,524が、一対の閉塞部512,514の他方が有する軟化片522,524に対して傾いていることが好ましい。
【0017】
一対の閉塞部512,514の一方が有する軟化片522,524が、一対の閉塞部512,514の他方が有する軟化片522,524に対して傾いていると、軟化片522,524、および、軟化片522,524に隣接する筒形部510の端部のいずれかが、包蔵物収容室432の内壁から筒形部510の中央部分を離すこととなる。包蔵物収容室432の内壁から筒形部510の中央部分が離れていると、そうでない場合に比べ、包蔵物収容室432の内壁に包蔵物700が貼りつきにくくなる。包蔵物収容室432の内壁に包蔵物700が貼りつきにくくなると、そうでない場合に比べ、医薬組成物容器400から包蔵物700を取り出しやすくなる。
【0018】
また、上述した医薬組成物容器が、容器本体402に加え、容器本体402と一体になっているカバー404をさらに備えていることが好ましい。この場合、容器本体402の複数の空間430,432,434と出口形成予定部436とカバー404とが1つの列を形成するように並んでいる。出口形成予定部436が列の一端に配置されている。カバー404が列の他端に配置されている。容器本体402とカバー404とが折り曲げ可能である。容器本体402とカバー404とが折り曲げられていることにより、出口形成予定部436をカバー404が覆っている。
【0019】
容器本体402のうち出口形成予定部436は、そこが包蔵物500,700を嚥下しようとする者の口にあてられる前、カバー404によって覆われている。これにより、その部分の清潔性は保たれている。その結果、医薬組成物540を嚥下する際の清潔性を高めることができる。
【0020】
また、上述した出口形成予定部436が通路を有していることが好ましい。この場合、通路は、容器本体402の外部と容器本体402の内部とを連通させる。この通路は、力が加えられると開くように閉塞されている。力が加えられると開くように通路が閉塞されているので、容器本体402の外部から嚥下補助物質502を押してこれを通路に向かって移動させると、嚥下補助物質502が通路に力を加える。力が加えられると通路は開く。これにより、容器本体402のうち出口形成予定部436付近を触らなくても通路を開くことが可能になる。通路を開くことが可能になるので、出口形成予定部436が上述したような通路を有していない場合に比べ、医薬組成物540を嚥下する際の清潔性を高めることができる。
【0021】
また、上述した医薬組成物540が、固体分散体、マトリックス製剤、および、混合製剤のうちのいずれかであることが好ましい。
【0022】
また、上述した医薬組成物540が活性炭を含有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、同程度の大きさの硬カプセルよりも喉越しがよく、かつ、同程度の喉越しの硬カプセルに比べて大量の医薬組成物を一度に服用することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態にかかる医薬組成物容器の一部破断図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる医薬組成物容器の先端部分がカバーに挿入されている状況を示す図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる包蔵物の一部破断図である。
【図4】包蔵物の服用性を示す図である。
【図5】硬カプセルなどの服用性を示す図である。
【図6】荷重強度の測定方法を示す概念図である。
【図7】荷重強度の測定結果と粘性の測定結果とを対比して示す図である。
【図8】ゼリーの荷重強度の影響を示す図である。
【図9】変形例にかかる包蔵物の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0026】
<医薬組成物容器の構造の説明>
図1は本実施形態にかかる医薬組成物容器400の一部破断図である。医薬組成物容器400のうち、シートの端と端とが貼り合わされた部分が側部強シール410である。
【0027】
医薬組成物容器400は、容器本体402と、カバー404とを備える。容器本体402はその中に複数の空間を有する。カバー404は、容器本体402の一端に設けられている。カバー404は容器本体402と一体となっている。容器本体402とカバー404との境界部分には、端部強シール412が設けられている。
【0028】
容器本体402内部の空間の1つが嚥下補助物質収容室430である。嚥下補助物質収容室430内には、嚥下補助物質502が収容されている。本実施形態において、嚥下補助物質502とは、水分を含有する滅菌された粘液状の外観を呈しているゼリーのことである。後述するように、そのようなゼリー以外の物質を嚥下補助物質収容室430内に収容してもよい。そのようなゼリー以外の物質を嚥下補助物質収容室430内に収容した場合、その物質は嚥下補助物質502である。この場合、その嚥下補助物質502は、後述する荷重強度が294パスカル以上392パスカル以下であるという要件を満たすことが好ましい。
【0029】
容器本体402内部の空間の1つが包蔵物収容室432である。図1から明らかなように、包蔵物収容室432の形状は縦長で先が細くなった筒形またはそれを平たく潰したような形状である。ここには包蔵物500が収容されている。包蔵物500は、後述する筒形部510の長手方向が包蔵物収容室432の長手方向を向くように収容される。包蔵物収容室432の一端には出口形成予定部436が設けられている。本実施形態にかかる出口形成予定部436は、閉塞された通路である。この通路は、予め定められた大きさの力を受けると開く。これは、出口形成予定部436の強度が、側部強シール410および端部強シール412に比べて低いためである。この通路は、力を受けて開いたとき、容器本体402の外部と容器本体402の内部とを連通させる。そのため、この通路は、包蔵物500と嚥下補助物質502とが出るための出口となる。
【0030】
容器本体402内部の空間の1つが空き室434である。本実施形態の場合、空き室434には何も入っていない。ただし、例えば空気といった包蔵物500と嚥下補助物質502とに悪影響を及ぼすことのないガスが空き室434に収容されていてもよい。
【0031】
上述した嚥下補助物質収容室430と空き室434との間は第1弱シール420によって閉塞されている。空き室434と包蔵物収容室432との間は第2弱シール422によって閉塞されている。医薬組成物容器400の外部から嚥下補助物質502に力が加えられると、嚥下補助物質502から受ける圧力によって、第1弱シール420が容易に開く。これは、第1弱シール420の強度が、側部強シール410および端部強シール412に比べて低いためである。このため、医薬組成物容器400の外部から嚥下補助物質502に力が加えられても端部強シール412は開かない。なお、第1弱シール420が開くと空き室434に嚥下補助物質502が押出される。その後、医薬組成物容器400の外部から嚥下補助物質502に引続き力が加えられると、嚥下補助物質502から受ける圧力によって、第2弱シール422が容易に開く。これも、第2弱シール422の強度が、側部強シール410および端部強シール412に比べて低いためである。
【0032】
<医薬組成物容器の製造方法の説明>
本実施形態にかかる医薬組成物容器400の製造方法は次の通りである。まず、1枚の合成樹脂(低密度ポリエチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、その複合樹脂などのように折り曲げ可能な柔らかいものであってヒートシールが可能なもの)製のシートを2つ折りとする。次に、2つ折りとされたシートの端と端とを貼り合わせる。医薬組成物容器400の素材がこういった柔らかいものなので、容器本体402のうち第1弱シール420から第2弱シール422までの部分と端部強シール412とが屈伸可能となる。シートの端と端とが貼り合わされたら、そのシートの内面同士の貼り合わせと嚥下補助物質502の充填および包蔵物500の挿入とを繰り返す。シートの内面同士の貼り合わせは、2つ折りとされたシートの外部から熱を加えることによってシートの内面同士を融着させることにより実現する。これにより、カバー404と、端部強シール412と、嚥下補助物質収容室430と、第1弱シール420と、空き室434と、第2弱シール422と、包蔵物収容室432と、出口形成予定部436とが順次形成される。それらが形成されたら、2つ折りとされたシートのうち貼り合わされた部分を切り取って外形を整える。
【0033】
外形が整えられたら、容器本体402のうち第1弱シール420から第2弱シール422までの部分と端部強シール412とを曲げて、容器本体402のうち出口形成予定部436が設けられている部分を、カバー404に挿入する。なお、容器本体402のうち出口形成予定部436が設けられている部分のことを、以下、「先端部分」と称する。図2は、先端部分がカバー404に挿入されている状況を示す。先端部分がカバー404に挿入されると、医薬組成物容器400を包装し、出荷する。
【0034】
<医薬組成物容器の使用方法の説明>
本実施形態にかかる医薬組成物容器400を使用するには、患者または介護者は、まず、容器本体402の先端部分をカバー404から引き抜く。先端部分がカバー404から引き抜かれると、患者または介護者は、その先端部分を患者の口に入れる。先端部分が患者の口に入ると、患者または介護者は、容器本体402のうち嚥下補助物質収容室430が形成されている部分に力を加える。これにより第1弱シール420と第2弱シール422とが順次開く。その後も、患者または介護者は、嚥下補助物質収容室430から出口形成予定部436へ向かう方向に医薬組成物容器400をしごく。そうすると、出口形成予定部436が開く。嚥下補助物質502から力を受けるためである。出口形成予定部436が開くと、嚥下補助物質502や包蔵物500(ひいては医薬組成物540)が患者の口に入る。
【0035】
<包蔵物の構造の説明>
図3は、本実施形態に係る包蔵物500の一部破断図である。上述したように、本実施形態にかかる包蔵物500には医薬組成物540が入っている。包蔵物500は、筒形部510と、口側閉塞部512と、底側閉塞部514とを有する。
【0036】
本実施形態において、筒形部510は、オブラート530(可食フィルムの一例)の層が2層重なったものである。これらは、1枚のオブラート530を筒形に巻くことで形成されている。本実施形態においては、厚さ10μmのデンプン製のオブラートを用いている。嚥下補助物質502が包蔵物500の表面を覆った時から包蔵物500が完全に溶けるまでの時間を制御する必要がある場合、オブラート530の材質とオブラート530の厚さとオブラート530の層の数とは、適宜選択されるべきものである。なお、本実施形態において、筒形部510は、オブラート530の自重と医薬組成物540の自重とによって平たく変形することが多い。可食フィルムの原料はデンプンに限らない。可食フィルムの原料は高分子その他の原料を単一あるいは複数混ぜたものであってもよい。
【0037】
口側閉塞部512は、筒形部510の一端を融着することで形成されたものである。底側閉塞部514は、筒形部510の他端を融着することで形成されたものである。底側閉塞部514と口側閉塞部512とによって筒形部510の両端が閉塞されている。
【0038】
口側閉塞部512の途中から先端までの部分は、口側軟化片522となっている。底側閉塞部514の途中から先端までの部分は、底側軟化片524となっている。本実施形態の場合、これらは、デンプン製のオブラートを融着することで形成されるものである。したがって、口側軟化片522と底側軟化片524とは、嚥下補助物質502に接触すると軟化する。
【0039】
<包蔵物の製造方法の説明>
本実施形態にかかる包蔵物500の製造方法を説明する。本実施形態にかかる包蔵物500の製造方法は、筒形部形成工程と、底部閉塞工程と、医薬組成物充填工程と、口部閉塞工程とを有する。筒形部形成工程は、オブラート530を巻いて筒形部510を形成する工程である。本実施形態の場合、この工程において、オブラート530の端536を筒形部510に貼り付ける。底部閉塞工程は、筒形部形成工程を経て形成されたオブラート530の筒の一端を潰し、潰されたその一端を融着によって閉塞することにより、底側閉塞部514を形成する工程である。医薬組成物充填工程は、筒形部510の中に医薬組成物540を充填する工程である。口部閉塞工程は、医薬組成物充填工程を経たオブラートの筒の他端を潰し、潰されたその他端を融着によって閉塞することにより、口側閉塞部512を形成する工程である。
【0040】
<効果の説明>
本実施形態にかかる医薬組成物容器400は、同程度の大きさの硬カプセルよりも喉越しがよく、かつ、同程度の喉越しの硬カプセルに比べて大量の医薬組成物540を一度に服用することができる。これは、大きさが所定の範囲に属する包蔵物500を収容しているためである。以下、そのことをデータに基づいて具体的に説明する。
【0041】
[包蔵物500の大きさの影響に関する説明]
筒形部510の外径と筒形部510の全長とが異なる包蔵物500を、それぞれ医薬組成物容器400に収容した。その後、それらの医薬組成物容器400を用いて包蔵物500を嚥下補助物質502ごと5人の被験者に服用してもらった。さらに、それらの被験者から各包蔵物500の喉越しの良さについて5段階で評価を受けた。包蔵物500の製造方法は上述した通りである。医薬組成物540として包蔵物500が包蔵するのは、乳糖である。図4は、その結果を示す図である。図4における「服用性」は、被験者「A」〜「E」による評価を表す。図4における「服用性」において「1」は非常に飲みにくいまたは飲めないことを意味する。「2」は「1」より飲みやすく「3」より飲みにくいことを意味する。「3」は平均的な飲みやすさであることを意味する。「4」は「3」より飲みやすく「5」より飲みにくいことを意味する。「5」は非常に飲みやすいことを意味する。なお、嚥下補助物質502の荷重強度は294パスカルである。荷重強度の具体的な説明は後に行う。図4における「最多」欄は、「1」〜「5」のうち同じ評価をした者の人数が最も多かったものを示す。ただし、たとえば「2」という評価をした者が2人で「4」という評価をした者も2人というように、2種類以上の評価について評価をした者の人数が同数である場合、「最多」欄はそれらの平均を示す。
【0042】
また、0号カプセル、1号カプセル、および、2号カプセルを上述した5人の被験者に服用してもらい、それらの被験者から各硬カプセルの喉越しの良さについて5段階で評価を受けた。図5は、その結果を示す図である。図5における「服用性」は、図4における「服用性」と同様の評価を表す。図5における「最多」も、図4における「最多」と同じ意味である。
【0043】
図4および図5に示す結果を比較すると、0号カプセルとほぼ同じ大きさの包蔵物500は実施例6にかかるものである。0号カプセルの概算体積は0.68マイクロ立方メートル(すなわち0.68ミリリットル)である。実施例6にかかる包蔵物500の概算体積は0.653マイクロ立方メートル(すなわち0.653ミリリットル)である。一方、0号カプセルの喉越しについて最も多かった評価は「2」と「3」とである。実施例6にかかる包蔵物500の喉越しについて最も多かった評価は「4」である。これらの事実から言えることは、同程度の大きさであれば、硬カプセルより包蔵物500の方が明らかに喉越しがよいということである。
【0044】
また、喉越しが0号カプセルとほぼ同程度の包蔵物500は、実施例23と実施例32と実施例34とにかかるものである。実施例23にかかる包蔵物500の喉越しについて最も多かった評価は「3」である。実施例23にかかる包蔵物500の概算体積は6.158マイクロ立方メートル(すなわち6.158ミリリットル)である。実施例32にかかる包蔵物500の喉越しについて最も多かった評価は「3」である。実施例32にかかる包蔵物500の概算体積は7.697マイクロ立方メートル(すなわち7.697ミリリットル)である。実施例34にかかる包蔵物500の喉越しについて最も多かった評価は「3」である。実施例34にかかる包蔵物500の概算体積は2.309マイクロ立方メートル(すなわち2.309ミリリットル)である。これらの事実から言えることは、同程度の喉越しのよさであれば、硬カプセルよりも包蔵物500の方が概算体積は大きいということである。概算体積が大きければ、より大量の医薬組成物540を一度に服用できると言える。同様のことは1号カプセル(1号カプセルとほぼ同じ大きさの包蔵物は実施例4にかかるもの)および2号カプセル(2号カプセルとほぼ同じ大きさの包蔵物は実施例1にかかるもの)についても言える。
【0045】
つまり、次に述べる2つの要件のうち少なくとも一方を満たすものは、いずれも、0号カプセル、1号カプセル、および、2号カプセルとほぼ同等またはそれ以上の喉越しのよさをもっている。その第1の要件は、筒形部510の外径が0ミリメートルを超え14ミリメートル以下かつ筒形部510の長さが0ミリメートルを超え50ミリメートル以下の長さという要件である。第2の要件は、筒形部510の外径が0ミリメートルを超え7ミリメートル以下かつ長さが0ミリメートルを超え60ミリメートル以下の長さという要件である。
【0046】
また、一般に用いられている硬カプセルの中で最も大きいのは、000号カプセルである。この硬カプセルの概算体積は1.37マイクロ立方メートル(すなわち1.37ミリリットル)である。これに対し、図4に示した実施例において、次に述べる2つの要件を満たすものは、いずれも、000号カプセルより概算体積が大きい。その第1の要件は、筒形部510の外径が10ミリメートル以上11ミリメートル以下であるというものである。第2の要件は、筒形部510の長さが40ミリメートル以上50ミリメートル以下であるというものである。しかも、これらの要件を満たす包蔵物は、0号カプセルより服用性が優れている。0号カプセルより000号カプセルの方が服用性の点で劣ることは実験するまでもなく明らかなことである。したがって、上述した2つの要件を満たす包蔵物は、000号カプセルよりも大量の医薬組成物540を一度に服用することが容易であると言える。
【0047】
[荷重強度の影響に関する説明]
嚥下補助物質502としての性能を評価するには、粘性よりもこれから述べる荷重強度の方が適している。図6は、荷重強度の測定方法を示す概念図である。
【0048】
荷重強度は、以下の手順により測定する。まず、嚥下補助物質502をトレイ600の中に入れる。トレイ600の大きさは任意である。分銅容器602をその嚥下補助物質502の上に静かに置く。分銅容器602の底面の直径は43ミリメートルである。分銅容器602の縁の直径は58ミリメートルである。分銅容器602の高さは29ミリメートルである。分銅容器602は透明なポリエチレンでできている。分銅容器602の側面に赤線610が引かれている。分銅容器602の底から赤線610までの高さは11ミリメートルである。分銅容器602が嚥下補助物質502の上に置かれたら、分銅容器602の中に分銅604を順次入れる。分銅容器602の中に分銅604を順次入れることで、分銅容器602は嚥下補助物質502の中へ次第に沈む。分銅容器602が嚥下補助物質502の中へ沈むことで、上述した赤線610が嚥下補助物質502の表面まで下がる。赤線610が嚥下補助物質502の表面まで下がった時の分銅602の重量を測定する。この分銅602の重量と分銅容器602の重量との和を、分銅容器602の底面積で除算する。そのようにして得られた値が嚥下補助物質502の荷重強度である。以上の説明から明らかなように、荷重強度は、嚥下補助物質502が分銅容器602と分銅604とに加える浮力に密接な関係がある。
【0049】
次に、嚥下補助物質502としての性能を評価するには粘性よりも荷重強度の方が適している理由を説明する。その理由は2つある。第1の理由は、粘性よりも荷重強度の方が医薬組成物容器400から包蔵物500を押出す能力をよく反映するためである。上述した通り、荷重強度は嚥下補助物質502が加える浮力と密接な関係がある。浮力は、流体の上に物を載せたときその物に対して加える力である。このため、流体が物から力を受けたときその物に加える力は浮力と相関関係を持つ。一方、医薬組成物容器400から包蔵物500を押出すためには、医薬組成物容器400をしごく必要がある。医薬組成物容器400をしごくと嚥下補助物質502は包蔵物500に接触する。このとき、嚥下補助物質502は包蔵物500から力を受ける。包蔵物500は嚥下補助物質502から力を受ける。この包蔵物500が嚥下補助物質502から受ける力は浮力と相関関係がある。浮力と相関関係があるので、包蔵物500が嚥下補助物質502から受ける力は荷重強度とも関係がある。これに対し、粘度は流体のねばり具合を示している。ねばりは、物に貼りつきやすく伸びやすい性質を示す。物に貼りつきやすく伸びやすいことは浮力に比べて包蔵物500を押出す能力を反映しない。これが、第1の理由である。第2の理由は、測定値のバラツキが少ないことである。図7は、「ゼリーA」ないし「ゼリーF」という6種類の嚥下補助物質502における、荷重強度の測定結果と粘性の測定結果とを対比して示す図である。図7に示した結果は、同一の嚥下補助物質502について、荷重強度と粘性とを繰返し測定した結果を示す。これらの結果によれば、荷重強度の測定値のバラツキは粘性の測定値のバラツキに比べて小さい。このことから、粘性に基づいて嚥下補助物質502の性能を評価すると、荷重強度に基づいて嚥下補助物質502の性能を評価した場合に比べ、性能が低い嚥下補助物質502を性能が高い嚥下補助物質502だと誤認する恐れが生じる。また、性能が高い嚥下補助物質502を性能が低い嚥下補助物質502だと誤認する恐れも生じる。これが、第2の理由である。
【0050】
図8は、荷重強度の影響を示す図である。図8における「服用性」は、被験者「A」〜「K」による各包蔵物の喉越しの良さを表す。「服用性」における「1」ないし「5」の意味は図4の場合と同様である。図8から明らかなように、嚥下補助物質502の荷重強度が196パスカル以上980パスカル以下であるとき、服用性について好ましい評価を受けたといえる。なお、嚥下補助物質502の荷重強度が294パスカル以上392パスカル以下であるとき、服用性について最も多かった評価はいずれも「5」である。このことは、嚥下補助物質502の荷重強度が294パスカル以上392パスカル以下であるとき、包蔵物500の喉越しが極めてよいことを意味する。したがって、荷重強度は294パスカル以上392パスカル以下であることが好ましい。
【0051】
<変形例の説明>
本実施例で説明した医薬組成物容器400は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。これは、シートの材質を上述した実施例に限定するものではない。これは、シートの形状、各空間の形状、開口の形状、それらの寸法、それらの構造、およびそれらの配置などを上述した実施例に限定するものでもない。本実施例で説明した医薬組成物容器400は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0052】
例えば、本発明にかかる医薬組成物容器400は、シートを2つ折りにして貼り合わせたものに限定されない。医薬組成物容器400は、2枚のシートを貼り合せたものであってもよいし、1本のチューブのところどころを貼り合わせたものであってもよい。医薬組成物容器400は、ブロー成形によって形成されるものであってもよい。また、医薬組成物容器400の素材も上述したものに限定されない。たとえば、医薬組成物容器400の素材は、表面と裏面とに合成樹脂の層が形成されている、アルミのフィルムであってもよい。
【0053】
また、嚥下補助物質502は、水分を含有する滅菌された粘液状の外観を呈しているゼリー状のものに限られない。嚥下補助物質502は滅菌されていないものでもよい。嚥下補助物質502は防腐剤入りのものでもかまわない。ただし、嚥下補助物質収容室430に収容される嚥下補助物質502は、人または人以外の動物の口内を移動する際に包蔵物500を伴って移動する程度の荷重強度を有し、かつ、人または人以外の動物が嚥下できる流動体であることを必要とする。そういった嚥下補助物質502の例には、濃厚なシロップ、ハチミツ、カスタードクリーム、ピーナツ・スプレッド、チーズ・スプレッドがある。
【0054】
また、包蔵物500の形態は上述したものに限定されない。図9は、上述した包蔵物500に代えて医薬組成物容器400に収容され得る包蔵物700の外観図である。この包蔵物700は、底側閉塞部514が有する底側軟化片524が、口側閉塞部512が有する口側軟化片522に対して傾いていることを特徴とする。このような形態であるため、この包蔵物700を医薬組成物容器400に収容すると、口側軟化片522、および、口側軟化片522に隣接する筒形部510の端部が、包蔵物収容室432の内壁から筒形部510の中央部分を離すこととなる。または、底側軟化片524、および、底側軟化片524に隣接する筒形部510の端部が、包蔵物収容室432の内壁から筒形部510の中央部分を離すこととなる。包蔵物収容室432の内壁から筒形部510の中央部分が離れていると、そうでない場合に比べ、包蔵物収容室432の内壁に包蔵物700が貼りつきにくくなる。包蔵物収容室432の内壁に包蔵物700が貼りつきにくくなると、そうでない場合に比べ、医薬組成物容器400から包蔵物700を取り出しやすくなる。
【0055】
また、包蔵物500,700が包蔵する医薬組成物540の種類は特に限定されない。特に好ましい医薬組成物540の種類の例には、活性炭、抗生物質、栄養剤、抗がん剤、レボフロキサシン水和物、セフォチアムヘキセチル塩酸塩、および、これらのうちの少なくとも一種類を成分とする混合物がある。なお、医薬組成物540が活性炭を含有している場合、特に好ましい効果が得られる。活性炭を医薬品として服用する場合、一度に服用すべき量が多くなる。一度に服用すべき量が多いので、活性炭を硬カプセルに入れて服用すると、喉越しが悪くなる。場合によっては服用できなくなる。これに対し、上述した医薬組成物容器400を用いれば、喉越しがよくなる。喉越しがよくなるので、活性炭を容易に服用できる。これが、特に好ましい効果が得られる理由である。
【0056】
また、包蔵物500,700が包蔵する医薬組成物540の形態も、特に限定されない。特に好ましい医薬組成物540の形態の例には、固体分散体、マトリックス製剤、および、混合製剤がある。
【0057】
また、出口形成予定部436の具体的な形態は上述したものに限定されない。例えば、出口形成予定部436は、容器本体402の一端を人の指で引き裂くための切れ目であってもよい。
【0058】
また、口側閉塞部512は口側軟化片522を有していなくともよい。底側閉塞部514は底側軟化片524を有していなくともよい。
【符号の説明】
【0059】
400…医薬組成物容器
402…容器本体
404…カバー
410…側部強シール
412…端部強シール
420…第1弱シール
422…第2弱シール
430…嚥下補助物質収容室
432…包蔵物収容室
434…空き室
436…出口形成予定部
500,700…包蔵物
502…嚥下補助物質
510…筒形部
512…口側閉塞部
514…底側閉塞部
522…口側軟化片
524…底側軟化片
530…オブラート
536…端
540…医薬組成物
600…トレイ
602…分銅容器
604…分銅
610…赤線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空間を有する容器本体を備え、
隣り合う2つの前記空間の間は力が加えられると開くよう閉塞されており、
前記空間のうち少なくとも1つである嚥下補助物質収容室に嚥下補助物質が収容されている医薬組成物容器であって、
前記空間のうち少なくとも1つである包蔵物収容室に、少なくとも表面が前記嚥下補助物質の成分に対して溶解する包蔵物が収容されており、
前記包蔵物が、
医薬組成物が入っている筒形部と、
前記筒形部の両端を閉塞する一対の閉塞部とを有しており、
前記筒形部は、外径が0ミリメートルを超え14ミリメートル以下かつ長さが0ミリメートルを超え50ミリメートル以下という要件と、外径が0ミリメートルを超え7ミリメートル以下かつ長さが0ミリメートルを超え60ミリメートル以下という要件とのうち少なくとも一方を満たしており、
前記容器本体が、前記複数の空間に加え、出口の形成が予定される出口形成予定部を有しており、
前記出口から前記嚥下補助物質と前記包蔵物とが出ることを特徴とする、医薬組成物容器。
【請求項2】
前記嚥下補助物質の荷重強度が196パスカル以上980パスカル以下であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物容器。
【請求項3】
前記筒形部が、可食フィルムを筒形に巻くことで形成されており、
前記可食フィルムの端が前記筒形部に貼り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物容器。
【請求項4】
前記一対の閉塞部が軟化片をそれぞれ有しており、
前記軟化片が、前記嚥下補助物質に接触すると軟化することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物容器。
【請求項5】
前記一対の閉塞部の一方が有する前記軟化片が、前記一対の閉塞部の他方が有する前記軟化片に対して傾いていることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物容器。
【請求項6】
前記医薬組成物容器が、前記容器本体に加え、前記容器本体と一体とになっているカバーをさらに備えており、
前記容器本体の複数の空間と前記出口形成予定部と前記カバーとが1つの列を形成するように並んでおり、
前記出口形成予定部が前記列の一端に配置されており、
前記カバーが前記列の他端に配置されており、
前記容器本体と前記カバーとが折り曲げ可能であり、前記容器本体と前記カバーとが折り曲げられていることにより、前記出口形成予定部を前記カバーが覆っていることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物容器。
【請求項7】
前記出口形成予定部が、前記容器本体の外部と前記容器本体の内部とを連通させる通路を有しており、
前記通路が、力が加えられると開くように閉塞されていることを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物容器。
【請求項8】
前記医薬組成物が、固体分散体、マトリックス製剤、および、混合製剤のうちのいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物容器。
【請求項9】
前記医薬組成物が活性炭を含有していることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−65910(P2012−65910A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214222(P2010−214222)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(505180313)株式会社モリモト医薬 (9)
【Fターム(参考)】