説明

医薬組成物

【課題】高い生物学的利用能を有するアスコマイシンまたはアスコマイシン誘導体、例えばアスコマイシンまたは33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンを含む医薬組成物を提供すること。特に、33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンの簡便な経口投与可能な固体製剤を提供すること。
【解決手段】アスコマイシンまたはアスコマイシン誘導体、例えばアスコマイシンまたは33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンを、担体媒体とともに固体分散体に製剤化することにより目的の医薬組成物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、固体分散体中に、マクロライド、例えば、ラパマイシンまたはアスコマイシンを含む、経口医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンは、例えば、Streptomyces hygroscopicusから製造可能な、免疫抑制性ラクタムマクロライドである。ラパマイシンの構造は、Kesseler, H., et al.:1993;Helv. Chim. Acta;76:117に記載されている。ラパマイシンは、非常に強力な免疫抑制剤であり、抗腫瘍および抗真菌活性を有することもまた示されている。その医薬としての利用性は、しかしながら、その非常に低く、変化する生物学的利用能のために限定されている。更に、ラパマイシンは、水性媒体、例えば、水に非常に不溶性であり、安定なガレヌス製剤の調製を困難にしている。ラパマイシンの多くの誘導体が既知である。ある16−O−置換ラパマイシン類がWO94/02136に記載され、その内容を本明細書に引用して包含させる。40−O−置換ラパマイシン類が、例えば、US5258389およびWO94/09010(O−アリールおよびO−アルキルラパマイシン類);WO92/05179(カルボン酸エステル)、US5118677(アミドエステル)、US5118678(カルバメート)、US5100883(フッ素化エステル)、US5151413(アセタール)、US5120842(シリルエーテル)、WO93/11130(メチレンラパマイシンおよび誘導体)、WO94/02136(メトキシ誘導体)、WO94/02385およびWO95/14023(アルケニル誘導体)に記載され、その全てを本明細書に引用して包含させる。32−O−ジヒドロまたは置換ラパマイシンは、例えば、本明細書に引用して包含させるUS5256790に記載されている。
【0003】
更なるラパマイシン誘導体は、PCT出願番号EP96/02441に、例えば、実施例1に記載のような32−デオキソラパマイシンが、および実施例2および3に記載のような16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロラパマイシンが記載されている。PCT出願番号EP96/02441の内容は、本明細書に引用して包含させる。
【0004】
ラパマイシンおよびその構造類似アナログおよび誘導体を、本明細書で集合的に“ラパマイシン類”と呼ぶ。
【0005】
ヒトへの経口投与において、固体ラパマイシン類、例えばラパマイシンは、血流中に、有意な程度で吸収され得ない。ラパマイシン類、例えばラパマイシンに関して、慣用医薬賦形剤との単純な混合物が既知である;しかしながら、これらの組成物が遭遇する欠点は、予測できない溶解割合、不規則な生物学的利用能特性および不安定性を含む。今日まで、ラパマイシンまたはその誘導体に関する簡便な投与可能な経口固体製剤は存在していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、一つの態様において、本発明は、ラパマイシンおよび担体媒体を含む固体分散体の形の医薬組成物を提供する。
【0007】
医薬物質の高い生物学的利用能を提供する本発明の組成物は、投与が簡便であり、安定である。
【0008】
本発明の組成物に使用するラパマイシンは、上記または上記特許出願に記載のような任意のラパマイシンまたは誘導体であり得る。
【0009】
従って、本発明の固体分散体組成物に使用するラパマイシンは、ラパマイシンまたはラパマイシンのシクロヘキシルのヒドロキシル基が−OR(Rはヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、アシルアミノアルキルおよびアミノアルキル)で置換されているO−置換誘導体であり得る;例えば、WO94/09010に記載のような、例えば40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンおよび40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン。ラパマイシン誘導体は、26−または28−置換誘導体である。
【0010】
本発明の固体分散体組成物で使用する好ましいラパマイシン類は、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン、32−デオキソラパマイシンおよび16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロラパマイシンを含む。より好ましいラパマイシンは、40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン(以後、化合物Xと呼ぶ)である。
【0011】
本明細書で使用するラパマイシン誘導体の番号付は、その内容を本明細書に引用して包含させるPCT出願WO96/13273の4頁に式Aとして記載されている構造に基づく。
【0012】
本明細書で使用の固体分散体なる用語は、ラパマイシン、例えば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンまたはラパマイシンと、担体媒体の共沈殿を意味すると理解される。固体分散体中において、ラパマイシンは無定形または実質的に無定形であり、担体媒体に物理的結合している。
【0013】
本発明の組成物は、任意の慣用剤形、例えば、錠剤、カプセル、顆粒または例えば、サシェット中の粉末形で投与し得る。
【0014】
ラパマイシンは、組成物の重量(%w/w)に対して、約0.01から約30重量%の量で、好ましくは組成物の全重量に対して1から20%w/wの量で存在し得る。
【0015】
担体媒体は、組成物の全重量に対して、99.99重量%までの量、例えば、10から95重量%の量で存在する。
【0016】
一つの態様において、担体媒体は、水溶性ポリマー、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのようなセルロース誘導体またはポリビニルピロリドン(PVP)を含む。良好な結果が、2重量%水性溶液で20℃で測定して、例えば、100cpsより低い、例えば、50cpsより低い、好ましくは20cpsより低い、低い見掛けの動的粘度で、HPMC、例えばHPMC3cpsを使用した時に得られ得る。HPMCは既知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients, Second Edition, pub. Pharmaceutical Society of Great Britain and American Pharmaceutical Association, 1994, p.229-232に記載され、その内容は引用して本明細書に包含させる。HPMC 3cpsを含むHPMCは、信越化学からPharmacoat 603の商品名で商品として入手可能である。
【0017】
PVPは、例えば、Povidoneの名前で入手可能であり(Handbook of Pharmaceutical Excipients)、平均分子量が約8,000から約50,000ダルトンの間であるPVPが好ましい。
【0018】
他の態様において、担体媒体は、
−ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはその誘導体(HPC誘導体の例は、水性媒体、例えば水中で、2%水性溶液中で25℃で測定して、例えば、約400cpsより低い、例えば150cpsより低い、低い動的粘度を有するものを含む。好ましいHPC誘導体は、低い置換の程度を有し、平均分子量は200,000ダルトンより低い、例えば、50,000から150,000ダルトンの間である。商品として入手可能なHPCの例は、Aqualon社から入手可能なKlucel LF、Klucel EFおよびKlucel JF;および日本ソーダから入手可能なNisso HPC−Lを含む);
−ポリエチレングリコール(PEG)(例は、1000から9000ダルトンの間、例えば約1800から7000の間の分子量を有するPEG、例えば、PEG2000、PEG4000またはPEG6000(Handbook of Pharmaceutical Excipients)を含む);
−例えば、Gattefosse社から商品名Gelucir、例えば、Gelucir 44/14、53/10、50/13、42/12または35/10で入手可能な飽和ポリグリコシル化グリセリド;または
−シクロデキストリン、例えば、β−シクロデキストリンまたはα−シクロデキストリン(適当なβ−シクロデキストリンの例はメチル−β−シクロデキストリン;ジメチル−β−シクロデキストリン;ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;グリコシル−β−シクロデキストリン;マルトシル−β−シクロデキストリン;スルフォ−β−シクロデキストリン;β−シクロデキストリンのスルフォ−アルキルエーテル、例えば、スルフォ−C1−4アルキルエーテルを含む。α−シクロデキストリンの例は、グルコシル−α−シクロデキストリンおよびマルトシル−α−シクロデキストリンを含む。)
を含む。
【0019】
担体媒体は、更に、水溶性または水不溶性サッカロースまたはラクトースまたは微小結晶性セルロースのような他の許容される担体または充填剤を含み得る。充填剤は、存在する場合、一般的に組成物の約30重量%まで、例えば、0.5から20重量%、好ましくは約5から約15重量%の量である。微小結晶性セルロースは、例えば、FMC社から、Avicelの商品名で商品として入手可能である。
【0020】
担体媒体は、更に、1個またはそれ以上の界面活性剤、例えば、非イオン性、イオン性、アニオン性または両親媒性界面活性剤を含み得る。適当な界面活性剤の例は
−例えば、その内容を引用して本明細書に包含させるFiedler, H. P. “Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie, Kosmetik und Angrenzende Gebiete”, Editio Cantor, D-7960 Aulendorf, 3rd revised and expanded edition(1989)に記載のような、商品名、PluronicまたはPoloxamerとして既知のような、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−コポリマーおよびブロックコポリマー(好ましいポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーは、BASF社から入手可能なPoloxamer 188である);
−例えば、Amerchol社から商品として入手可能なSolulan、例えばSolulan C24として既知のエトキシル化コレステリン;
−ビタミン誘導体、例えばEastman社から入手可能なトコフェロールポリエチレングリコールサクシネート(TPGS)のようなビタミンE誘導体;
−ドデシル硫酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム;
−胆汁酸またはその塩、例えばコール酸、グリコール酸またはその塩、例えば、コール酸ナトリウム;または
−レシチン
を含む。
【0021】
本組成物中に存在する時、界面活性剤は一般に約20%まで、例えば1から15重量%までの量である。
【0022】
1個またはそれ以上の崩壊剤が本発明の組成物に含まれ得る。崩壊剤の例は、ISP社から商品として入手可能なPolyplasdone(Handbook of Pharmaceutical Excipients);Generichem社から商品として入手可能なナトリウム澱粉グリコレート;およびFMC社から商品名Ac-di-solとして入手可能なクロスカルメロースナトリウムを含む。1個またはそれ以上の滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはコロイド状シリコンジオキサイドが、更に、組成物の重量を基本にして約5重量%まで、例えば0.5から2重量%までの量で本発明の組成物に含まれ得る。
【0023】
本発明の組成物中に、1個またはそれ以上の香味剤を含むことが有利であり得る。
【0024】
本発明は、界面活性剤無しのラパマイシン組成物を使用して良好な結果を得られる。従って、他の態様において、本発明は本明細書に記載のラパマイシンを含む界面活性剤無し固体分散体組成物を提供する。
【0025】
抗酸化剤および/または安定化剤が、本発明の組成物に、約1重量%まで、例えば0.05から0.5重量%の間の量で含まれ得る。抗酸化剤の例は、ブチル化ヒドロキシトルエン、DL−α−トコフェロール、プロピルガレート、アスコルビルパルミテートおよびフマル酸を含む。マロン酸が適当な安定化剤である。
【0026】
本発明の一つの態様において、この組成物は、30重量%まで、例えば、1から20重量%までの40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン、および95%まで、例えば30から90重量%までのHPMCを含む。
【0027】
本発明の組成物におけるラパマイシン対担体媒体の重量比は、一般に、1:3を越えず、好ましくは1:4より小さい。
【0028】
他の態様において、本発明は本明細書に記載のような固体分散体組成物の製造法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
一つの態様において、本発明の組成物はラパマイシンおよび担体媒体を、溶媒または溶媒混合物に溶解または懸濁することにより得られ得る。溶媒は、単一溶媒または溶媒混合物であり得、溶媒へのラパマイシンと担体媒体の溶解および懸濁の順序は、変わり得る。本発明の固体分散体組成物の製造に適した溶媒は、アルコール、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロパノール;エステル、例えば酢酸エチル;エーテル、例えばジエチルエーテル;ケトン、例えばアセトン;またはハロゲン化炭化水素、例えばジクロロエタンのような有機溶媒である。簡便な溶媒混合物は、エタノール対アセトンの重量比約1:10から約10:1、例えば1:5から5:1を有するエタノール/アセトン混合物である。
【0030】
典型的に、ラパマイシンおよび担体媒体は、溶媒に対して1:0.1から1:20の重量比で存在する。溶媒を蒸発し、ラパマイシンを担体媒体と共沈澱させ得る。得られる残渣を、例えば、減圧下乾燥させ、ふるいにかけ、挽き得る。挽いた分散体物を、他の賦形剤と合わせ、例えば、錠剤として圧縮成形するか、またはサシェットまたはゼラチンカプセルに充填し得る。
【0031】
他の態様において、固体分散体組成物は、担体媒体を融解させ、融解物を形成させ、所望により本明細書記載のような溶媒または溶媒混合物存在下、融解物をラパマイシンと、例えば、撹拌により、混合することにより製造し得る。
【0032】
あるいは、本発明の固体分散体を、例えば、Theory and Practice of Industrial Pharmacy, Lachmann et al.,1986に記載のように噴霧乾燥法で製造し得る。上記のように形成した懸濁液を、例えば、20から80℃に維持したチャンバーに、ノズルから噴霧する。溶媒をノズルを通して蒸発させ、細かく分散した粒子を回収する。
【0033】
本発明の組成物は、粉砕後、典型的に約0.5mm以下、例えば、約350μm以下、例えば約100から約300μmの平均粒子サイズを有する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の経口組成物は、ラパマイシンの既知の適応症、例えば、下記の疾病に有用である:
a)例えば、心臓、肺、複合心肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜移植片の受容者の処置のための臓器または組織の同種または異種移植拒絶反応の処置および予防。例えば、骨髄移植の後のような移植片対宿主病の予防もまた適用される。
b)自己免疫疾患および炎症性疾病、特に、関節炎(例えば、関節リウマチ、慢性進行性関節炎および変形関節炎)およびリウマチ疾患のような自己免疫要素を含む病因の炎症性疾病の処置および予防。本発明の化合物を使用し得る具体的自己免疫疾患は、自己免疫血液学的疾患(例えば、溶血性貧血、形成不全貧血、赤芽球癆および特発性血小板減少症を含む)、全身性エリテマトーデス、多軟骨炎、硬皮症、ウェゲナー肉芽腫、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブン−ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫炎症性大腸炎(例えば、潰瘍性大腸炎およびクーロン病を含む)、内分泌性眼病、グレーブス病、結節炎、多発性硬化症、原発性胆汁性肝炎、若年性糖尿病(I型糖尿病)、ブドウ膜炎(前および後)、乾燥性角結膜炎および春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎(例えば、特発性ネフローゼ症候群または微小変化ネフローゼ症候群を含むネフローゼ症候群有りおよび無し)および若年性皮膚筋炎を含む。
c)喘息の処置および予防。
d)多剤耐性(MDR)の処置。MDRは、医薬がPgpにより細胞からポンプ輸送で出てしまうため、慣用の化学療法に反応しない癌患者およびAIDS患者で特に問題である。この組成物は、従って、多剤耐性癌または多剤耐性AIDSのような多剤耐性疾病の処置および制御における他の化学療法剤の効果を促進するために有用である。
e)増殖性疾患、例えば、腫瘍、過増殖性皮膚疾患等の処置。
f)真菌感染の処置。
g)炎症の処置および予防、特にステロイドの作用の強化。
h)感染、特にMipまたはMip様因子を有する病原体による感染の処置および予防。
i)FK−506および他のマクロフィリン結合性免疫抑制剤の過剰投与の処置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の医薬組成物が、例えば、錠剤、顆粒または粉末のような単位用量形である時、各単位用量は、好適には1mgから100mgの間、より好ましくは10から50mgの間;例えば15、20、25または50mgの医薬物質を含む。このような単位用量形は、具体的な治療の目的、治療相などに依存して、一日1から5回投与するのに適している。
【0036】
投与すべき組成物の正確な量は、幾つかの因子、例えば、所望の処置の期間およびラパマイシンの放出速度に依存する。
【0037】
医薬組成物の利用性は、75kg成人について一日当たり例えば、活性剤1mgから1000mg、例えば5mgから100mgの範囲の投与量を使用した、例えば、活性剤の平衡血中レベルを与える活性剤の投与の既知の処方における標準臨床試験および標準動物モデルで観察できる。組成物により提供される医薬物質の増加した生物学的利用能は、標準動物試験および臨床試験で観察できる。
【0038】
使用する投与形、例えば、錠剤は、例えば、腸溶性コーティングを使用してコートし得る。適当なコーティングは、セルロースアセテートフタレート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ポリメタクリル酸コポリマー、例えば、Eudragit L、S;またはヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネートを含む。
【0039】
本発明の組成物に使用するラパマイシン、例えば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンまたはラパマイシンは、固体分散体を製剤する前に結晶性または無定形形態であり得る。従って、本発明の利点は、ラパマイシンが結晶性である必要性がないことである。従って、ラパマイシンは、直接、例えば溶媒との組み合わせで使用し得、前以て単離しなくてもよい。本発明の他の利点は、固体分散体の溶解速度が、他の単純混合物中の結晶性ラパマイシンまたは無定形ラパマイシンより速いことである。
【0040】
他の態様において、本発明はアスコマイシンおよび担体媒体を含む固体分散体の形の医薬組成物を提供する。
【0041】
本発明の固体分散体組成物に使用するのに適当なアスコマイシン類は、アスコマイシンまたはその誘導体、例えば、33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンを含む。
【0042】
今日まで、33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンの利用可能な簡便な投与可能経口固体製剤は存在していない。他の態様において、従って、本発明は、33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンおよび担体媒体を含む固体分散体の形の医薬組成物を提供する。
【0043】
33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンは、公開欧州出願EP427680の実施例66aに記載されている。
【0044】
33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンは以後化合物Yと称する。
【0045】
医薬物質の高い生物学的利用能を提供する本発明のアスコマイシン、例えば化合物Y組成物は、投与に簡便であり、安定である。
【0046】
アスコマイシン、例えば化合物Yは、組成物中に、約0.01から約30%w/wの量、および好ましくは1から約20%w/wの量で存在し得る。
【0047】
担体媒体は、上記のような重量%の量の上記の成分を含み得る。本発明の33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシン組成物に使用するための適当な水溶性ポリマー、シクロデキストリンおよび他の賦形剤、例えば界面活性剤は、上記の通りである。
【0048】
好ましい態様において、本発明は、本明細書に記載のような固体分散体の形のアスコマイシン、例えば化合物Yを含む界面活性剤含有組成物を提供する。
【0049】
アスコマイシン、例えば化合物Y対担体媒体の重量比は、一般に1:3を越えず、好ましくは1:4以下である。
【0050】
アスコマイシン、例えば化合物Y固体分散体組成物は、上記の方法と類似の方法で製造し得る。
【0051】
本明細書に記載の化合物Yの経口組成物は、例えば、炎症性および過増殖性皮膚疾患および免疫学的媒介疾患の皮膚兆候の処置に有用である。より具体的に、本発明の組成物は
a)
−例えば、心臓、腎臓、肝臓、骨髄および皮膚の臓器または組織移植の拒絶反応
−骨髄移植の後のような移植片対宿主病、
−関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病およびぶどう膜炎のような自己免疫疾患、
−免疫学的媒介病気の皮膚兆候
の予防および処置
b)乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎および更なる湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性水腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、紅斑性狼瘡およびアクネのような炎症性および過増殖性皮膚疾患の処置;および
c)円形脱毛症
のような炎症性疾病、および免疫抑制を必要とする疾病の予防および処置に使用するための抗炎症剤および免疫抑制剤および抗増殖剤として有用である。
【0052】
本発明の医薬組成物が、例えば錠剤、カプセルまたは粉末のような単位投与形である時、各単位投与形は、適当には1mgから100mgの間より好ましくは10から50mgの間;例えば15、20、25または50mgの医薬物質を含む。このような単位投与形は、治療の目的、治療の進度その他に依存して、一日1から5回投与するのに適している。
【0053】
一つの態様において、組成物は、例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎または接触性皮膚炎に使用するための30重量%の化合物Yおよび70重量%のHPMCを、例えば10から50mg/日の投与量で含む。
【0054】
投与すべき組成物の正確な量は、幾つかの因子、例えば、所望の処置の期間および化合物Yの放出速度に依存する。
【0055】
化合物Yを含む医薬組成物の利用性は、例えば、75kg成人について一日当たり、活性剤1mgから1000mgの範囲の投与量を使用した、例えば、活性剤の平衡血中レベルを与える活性剤の投与の既知の処方における標準臨床試験および標準動物モデルで観察できる。組成物により提供される医薬物質の増加した生物学的利用能は、標準動物試験および臨床試験で観察できる。
【実施例】
【0056】
以下の記載は本発明の固体分散体組成物の説明のみのために記載する。
【0057】
実施例1
以下の成分を含む固体分散体組成物を製造する(重量部):
化合物X 9.1
HPMC 3cps 81.8
ラクトース200メッシュ 9.1
組成物(製剤A)は、ラパマイシンおよび担体媒体をエタノール/アセトン混合物に溶解して製造する。無水エタノールは、アセトンと共に1:1重量比で使用する。溶媒を次いで蒸発させ、得られる乾燥残渣を、平均粒子サイズ<0.5mmの細粉末に挽く。
【0058】
実施例2
以下の成分を含む固体分散体組成物を製造する(重量部):
化合物X 16.7
HPMC 3cps 66.7
Poloxamer 188(BASFから) 16.7
組成物(製剤B)は、実施例1と同様の方法で製造する。
【0059】
実施例3
以下の成分を含む固体分散体組成物を製造する(重量部):
化合物X 16.7
HPMC 3cps 66.7
TPGS* 16.7
組成物(製剤C)は、実施例1と同様の方法で製造する。
*トコフェロールポリエチレングリコールサクシネート
【0060】
実施例4
以下の成分を含む固体分散体組成物を製造する(重量部):
化合物X 10
HPMC 3cps 80
Solulan C24(Amercholから) 10
組成物(製剤D)は、実施例1と同様の方法で製造する。
上記製剤AからDは、錠剤に成形し、カプセルへ充填しまたは粉末化しサシェットにパッケージし得る。
【0061】
ラットへの40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン投与後の薬物動態
a)医薬投与
化合物X組成物の水性分散体0.5ml(4.0mg活性成分/ラットに対応)を、ポリエチレン管に結合した1mlシリンジで、短吸入麻酔間に胃内挿管法で投与した。6匹の動物を、各組成物製剤A、B、CおよびDで使用した。
b)採血
動物は、この実験の一日前に、頸静脈に永久カニューレを装着された。0.5ml静脈血(頸静脈)を各ラットから回収し、2.5ml EDTA管に貯蔵した。2匹の動物(1と2、3と4、5と6)の血液サンプルを貯蔵し、分析まで−80℃で貯蔵した。サンプルを投与前、投与後10分、30分、60分、120分、300分、480分および1440分に取った。
c)生物分析
血液サンプルを逆相HPLCを使用して分析した。
表1は、ラットに化合物Xを投与した後に回収した薬物動態データを示す。
【0062】
【表1】

【0063】
イヌでの試験
上記の見込みのある結果に続いて、相対的生物学的利用能の検討を、絶食ビーグル犬で、1mg/kg体重の投与量を使用して行った。それぞれ化合物X 10mg含有する硬ゼラチンカプセルを、8匹のイヌに、4方向ラテン方格法で投与した;イヌにカプセル投与6時間後に食事を与え、化合物Xの濃度を48時間にわたり測定した。化合物Xの同様の血中濃度プロフィールが全てのイヌで見られ、血中の化合物Xの最終半減期は10から40時間の間であった。平均ピークレベル140ng/mlおよび約1600ng.時間/mlの0−48時間の平均AUCレベルが観察された。
【0064】
実施例5
以下の成分を含む固体分散体組成物を製造する(重量部):
化合物Y 20
HPMC 3cps 80
組成物(製剤E)は、化合物Yおよび担体媒体をエタノール/アセトン混合物に溶解して製造する。溶媒を次いで蒸発させ、得られる乾燥残渣を挽く。
【0065】
実施例6
以下の成分を含む固体分散体組成物を製造する(重量部):
化合物Y 20
HPMC 3cps 70
Poloxamer 188 10
組成物(製剤F)は、実施例5と同様の方法で製造する。
【0066】
実施例7
以下の成分を含む固体分散体組成物を製造する(重量部):
化合物Y 20
HPMC 3cps 75
ラウリル硫酸ナトリウム 5
組成物(製剤G)は、実施例5と同様の方法で製造する。
上記製剤EからGは、錠剤に成形し、カプセルへ充填しまたは粉末化しサシェットにパッケージし得る。
【0067】
ラットへの33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシン投与後の薬物動態
a)医薬投与
医薬組成物の水性分散体0.5ml(4.0mg活性成分/ラットに対応)を、ポリエチレン管に結合した1mlシリンジで、短吸入麻酔間に胃内挿管法で投与した。6匹の動物を、各組成物製剤E、FおよびGで使用した。
b)採血
動物は、この実験の一日前に、頸静脈に永久カニューレを装着された。0.5ml静脈血(頸静脈)を各ラットから回収し、2.5ml EDTA管に貯蔵した。2匹の動物(1と2、3と4、5と6)の血液サンプルを貯蔵し、分析まで−80℃で貯蔵した。サンプルを投与前、投与後10分、30分、60分、120分、300分、480分および1440分に取った。
c)生物分析
血液サンプルを逆相HPLCを使用して分析した。
結果を図1および2にプロットし、その中でng/ml(垂直軸)が時間(水平軸)に対してプロットされている。
図1は、製剤Fが、製剤Eまたは製剤Gの投与後に観察される血中レベルよりも実質的に高い血中レベルをもたらすことを示す。
図2は、製剤Fが、餌と共に投与した時、高い血中レベルをもたらすことを示す。
化合物Yは、X線解析で測定して、組成物E、FおよびG中で、製剤中および6カ月貯蔵後に無定形の形である。
製剤E、FおよびGの、相対的溶解速度を試験する。37℃での撹拌したドデシル硫酸ナトリウムの0.2重量%水溶液において、30分後に、10mg化合物Yを含むそれぞれの挽いた組成物から、80%を越える利用可能な化合物Yが放出され、溶解することが判明する。92%の利用可能な組成物Yが製剤Eから放出される。これは、当量の結晶性化合物Yからの30分後の約5%放出に匹敵する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】製剤E、FおよびG投与後の時間の関数としてプロットした化合物Yの平均血中レベルを示す。
【図2】製剤EおよびF餌内投与後の化合物Yの血中レベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラパマイシンまたはアスコマイシンおよび担体媒体を含む固体分散体の形態の経口投与用医薬組成物。
【請求項2】
担体媒体が水溶性ポリマーまたはシクロデキストリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ラパマイシンまたは40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンおよび水溶性ポリマーを含む担体媒体を含む固体分散体の形態の経口投与用医薬組成物。
【請求項4】
ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
30重量%以下のラパマイシンを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
水溶性ポリマーが約95重量%以下のヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項2、3または4のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ラパマイシン対ポリマーの重量比が1:4より小さい、請求項2〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンおよび担体媒体を含む固体分散体の形態の経口投与用医薬組成物。
【請求項9】
担体媒体が水溶性ポリマーまたはシクロデキストリンを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
組成物がさらに界面活性剤を含む、請求項8または9に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−82217(P2012−82217A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−281577(P2011−281577)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2008−49742(P2008−49742)の分割
【原出願日】平成8年7月12日(1996.7.12)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】