説明

半中空形材製造用押出ダイス

【課題】十分な耐久性を備え、高品質の半中空形材を製造できる半中空形材製造用押出ダイスを提供する。
【解決手段】本発明の押出ダイス1は、成形孔3と、トング部成形部22と、トング開口部成形部23と、ウエルドチャンバ51と、メタルホール55とを備える。上流側から押出方向に沿って見た正面視状態において、各ブリッジ53上を通る仮想の区分け線Laによって、成形孔3が、各メタルホール55にそれぞれ対応し、かつ互いの面積がほぼ等しい複数の区分け部分3bに区分けされる。正面視状態において、各メタルホール55が、互いの面積がほぼ等しくなるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半中空形材を押出加工により製造する際に用いられる半中空形材製造用押出ダイスおよびその関連技術に関する。
【0002】
なお本明細書において、上流および下流とは、それぞれ押出方向に対し上流および下流を意味している。
【背景技術】
【0003】
周壁に長さ方向に沿ってスリット状のトング開口部(周壁開口部)を有する断面略C字状の半中空形材を押出加工により製造するには、ソリッドダイスを用いる方法や、ホローダイスを用いる方法が周知である。
【0004】
特許文献1に示すように、ソリッドダイスは、その中央部に半中空形材を成形する成形孔(ベアリング孔)が設けられている。この成形孔の内側には半中空形材の空所であるトング部を成形するトング部成形部が配置されるとともに、このトング部成形部が、半中空形材のトング開口部を成形するトング開口部成形部(片持ち支持部)にてダイス外周部に一体に繋がっている。
【0005】
また特許文献2に示すように、ホローダイスは、雌型としてのポートプレートと、雄型としてのホールプレートとの組合せからなり、両プレートのベアリング部間の隙間によって環状の成形孔(ベアリング孔)が形成されるとともに、その成形孔の一部を閉塞する態様に、開口部成形用の架橋片が設けられている。またホールプレートは、成形孔に対応して設けられるウエルドチャンバと、上流側からウエルドチャンバにかけて貫通し、かつ周方向に間隔をおいて複数設けられるメタルホールとを備え、各メタルホールを通過してウエルドチャンバに導入された成形材料が上記成形孔を通過して、半中空形材が成形されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−176536号
【特許文献2】特開昭63−16809号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献2に示すホローダイスのように、ホールプレートを有する押出ダイスは、上流側から押出方向に沿って見た際の正面視状態で、通常、各メタルホールの大きさ(面積)が異なっている。
【0008】
すなわち、従来のホローダイスにおいて、各メタルホールの大きさを決定するに際しては、メタルホールの設置数に合わせて、成形孔を周方向に均等に区分けし、その成形孔の各区分け部分の面積に合わせて、各メタルホールの大きさを決定するようにしていた。ここで、成形孔のトング開口部成形部は閉塞されているため、成形孔の区分け部分のうち、上記閉塞された部分(閉塞部)を含む区分け部分は、閉塞部を含まない区分け部分に比べて、面積が小さくなっている。従って、閉塞部を含む区分け部分に対応するメタルホールは、閉塞部を含まない区分け部分に対応するメタルホールに比べて、面積を小さく設定するようにしている。
【0009】
このように成形孔の形状によって、各メタルホールの面積が異なってしまい、そうすると、各メタルホールに導入される成形材料は、メタルホール毎に流速にバラツキが生じることがる。このため、各メタルホールから成形孔の各区分け部分に導入される成形材料の流速が、成形孔の導入位置によって異なってしまい、形材製品にねじれが発生して、高品質の半中空形材を得ることが困難である、という課題が発生する。
【0010】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高品質の半中空形材を製造することができる半中空形材製造用ダイスおよびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0012】
[1]半中空形材を成形する成形孔と、半中空形材のトング部を成形するトング部成形部と、半中空形材のトング開口部を成形するトング開口部成形部と、前記成形孔の上流側に設けられるウエルドチャンバと、上流側から前記ウエルドチャンバにかけて押出方向に沿って貫通し、かつ周方向に間隔をおいて複数設けられるメタルホールと、周方向に隣合うメタルホール間にそれぞれ設けられる複数のブリッジとを備え、前記複数のメタルホールから導入された成形材料が前記ウエルドチャンバを介して前記成形孔を通過するようにした半中空形材製造用押出ダイスであって、
上流側から押出方向に沿って見た正面視状態において、各ブリッジ上を通る仮想の区分け線によって、前記成形孔が、各メタルホールにそれぞれ対応し、かつ互いの面積がほぼ等しい複数の区分け部分に区分けされる一方、
正面視状態において、各メタルホールが、互いの面積がほぼ等しくなるように形成されることを特徴とする半中空形材製造用押出ダイス。
【0013】
[2]前記成形孔の各区分け部分の面積のうち、最大のものを「Bmax」、最小のものを「Bmin」としたとき、Bmax/Bminが1.2以下に設定される前項1に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0014】
[3]前記各メタルホールの面積のうち、最大のものを「Amax」、最小のものを「Amin」としたとき、Amax/Aminが1.2以下に設定される前項1または2に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0015】
[4]前記メタルホールの面積を「A」、前記成形孔の区分け部分の面積を「B」としたとき、対応し合う区分け部分およびメタルホールの面積比A/Bが1.1〜300に設定される前項1〜3のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0016】
[5]前記複数のメタルホールは、周方向にほぼ等間隔おきに配置される前項1〜4のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0017】
[6]正面視状態において、半中空形材の重心に対応する前記成形孔の重心が、押出ダイスの軸心に対し位置ずれした状態に配置される前項1〜5のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0018】
[7]正面視状態において、前記成形孔は非線対称の形状に形成される前項1〜6のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0019】
[8]ダイス本体と、その上流側に設けられるホールプレートとを別体に備え、
前記成形孔と、前記トング部成形部と、前記トング開口部成形部とが前記ダイス本体に設けられるとともに、
前記ウエルドチャンバと、前記メタルホールと、前記ブリッジとが前記ホールプレートに設けられる前項1〜7のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0020】
[9]前記ホールプレートにおける前記ウエルドチャンバ内に、前記ダイス本体の前記トング部成形部の上流側に対応して、ダミー成形部が設けられる前項8に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0021】
[10]前記ダミー成形部は、前記トング部成形部に対し非固定状態となっている前項9に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0022】
[11]前記ホールプレートにおける前記複数のメタルホールによって囲まれた部分が、軸心部として構成され、
前記軸心部の下流側端部に前記ダミー成形部が設けられる前項9または10に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0023】
[12]前記ダミー成形部が、前記トング部成形部に対し接触した状態に配置される前項9〜11のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0024】
[13]前記ダミー成形部が、前記トング部成形部に対し離間した状態に配置される前項9〜11のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0025】
[14]押出材料を押出加工して半中空形材を製造する押出ダイスを備えた半中空形材の製造装置であって、
前記押出ダイスが、前項1〜13のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイスによって構成されることを特徴とする半中空形材の製造装置。
【0026】
[15]前項1〜13のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイスを用いて押出材料を押出加工することにより、半中空形材を製造するようにしたことを特徴とする半中空形材の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
発明[1]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、成形材料が、各メタルホールに均等に分散して通過して、成形孔全域にバランス良く流入して均等な流速で通過するため、良好な流動特性を得ることができ、ねじれ等の不具合のない高品質の半中空形材を製造することができる。
【0028】
発明[2]〜[6]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0029】
発明[7]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、非線対称の断面を有し、かつねじれ等の不具合のない高品質の半中空形材をより一層確実に製造することができる。
【0030】
発明[8]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、製品形状を決定するベアリング部がダイス本体側に集約させて形成しているため、内周側および外周側ベアリング部間の位置調整等、各ベアリング部の寸法精度や形状の管理を精度良く簡単に行うことができ、高品質の半中空形材を簡単かつ確実に製造することができる。
【0031】
発明[9]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、トング部成形部の上流側にダミー成形部が設けられるため、押出加工時に、押出材料がダミー成形部の外周側を流動することにより、押出材料がトング部成形部の主要部に圧接せず、トング部成形部に作用する押出荷重が軽減される。このため、その押出荷重によりトング開口部成形部が破損する可能性を低く抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
【0032】
発明[10]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、押出荷重によってホールプレートに撓みが発生して、ダミー成形部が変位したとしても、その変位による悪影響がトング部成形部に及ぶようなことがなく、耐久性をより一層向上させることができる。
【0033】
発明[11]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、適切な位置にダミー成形部を確実に形成できて、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0034】
発明[12]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、ダミー成形部がトング部成形部に接触しているため、ダミー成形部およびトング部成形部間に押出材料が浸入するのを確実に防止でき、その浸入による不具合を防止することができる。
【0035】
発明[13]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、ダミー成形部とトング部成形部との間に隙間を形成しているため、押出荷重によってホールプレートに撓みが発生して、ダミー成形部が下流側に押し込まれたとしても、ダミー成形部がトング部成形部に圧接するのを有効に防止できる。このため、トング部成形部に多大な荷重が加わることがなく、トング開口部成形部の破損を確実に防止でき、耐久性を一層向上させることができる。
【0036】
発明[14]の半中空形材の製造装置によれば、上記と同様に、同様の効果を得ることができる。
【0037】
発明[15]の半中空形材の製造方法によれば、上記と同様に、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1はこの発明の実施形態である押出ダイスが適用された押出加工装置を示す断面図である。
【図2】図2は実施形態の押出ダイスを示す断面図である。
【図3】図3は実施形態の押出ダイスにおけるダミー成形部周辺を拡大して示す断面図である。
【図4】図4は実施形態の押出ダイスを分解して示す斜視図である。
【図5】図5は実施形態の押出ダイスを上流側から見た正面図である。
【図6】図6は実施形態の押出ダイスに適用されたダイス本体を上流側から見た正面図である。
【図7】図7は実施形態の押出ダイスに適用されたホールプレートを下流側から見た背面図である。
【図8】図8は実施形態の押出加工装置によって製造された半中空形材を示す断面図である。
【図9】図9は実施形態の押出加工装置におけるメタルホールおよび成形孔の位置関係等を説明するための正面図である。
【図10】図10はこの発明の変形例である押出加工装置におけるメタルホールおよび成形孔の位置関係等を説明するための正面図である。
【図11】図11はこの発明の要旨を逸脱する参考例としての押出加工装置におけるメタルホールおよび成形孔の位置関係等を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1はこの発明の実施形態である押出ダイス1が適用された押出加工装置10を示す断面図である。同図に示すように、この押出加工装置(半中空形材の製造装置)10は、直接押出加工方式のものであり、本実施形態の押出ダイス1を始め、その他に、コンテナ11、ステム12等を具備するものである。
【0040】
この押出加工装置10において製造される半中空形材8は図8に示すように、リップ溝型(リップチャンネル状)の形状を有しており、横寸法が縦寸法に比べて長い横長の断面形状で、かつトング比が高い略C字状の断面形状に形成されている。
【0041】
この半中空形材8の材質は、金属であり、本実施形態ではアルミニウム(その合金を含む。以下同じ)である。
【0042】
この半中空形材8は、その内側に設けられ、かつ長さ方向(押出方向E)に延びるトング部(ボイド部)82と、外周壁に設けられ、かつ長さ方向に延びるスリット状のトング開口部(周壁開口部)83とを備え、トング開口部83を介してトング部82が外部に開放されている。
【0043】
図1〜7に示すように、本実施形態の押出ダイス1は、押出方向Eに対し下流側に配置されるダイス本体2と、上流側に配置されるホールプレート5とを別体に備えている。なお後に詳述するように、ホールプレート5は、ベアリング部を備えず、ダイス(雄型)として機能するものではないが、便宜上、ダイス本体2を雌型、ホールプレート5を雄型と称する場合もある。
【0044】
押出ダイス1のダイス本体2は、その中央部に半中空形材8を成形する成形孔3が押出方向Eに貫通して設けられている。成形孔3の断面形状は、製造される半中空形材8の断面形状に対応した形状である横長の略C字状に形成されている。
【0045】
なお本実施形態において、ダイス本体2は、成形孔3を構成する内周側ベアリング部31および外周側ベアリング部32等の全てのベアリング部がダイス本体2に設定されるものであり、ソリッドダイスとして捉えることもできる。
【0046】
ダイス本体2の成形孔3の径方向内側には、半中空形材8のトング部82を成形するトング部成形部22が配置されるとともに、このトング部成形部22が、半中空形材8のトング開口部83を成形するトング開口部成形部23にてダイス本体2の外周部21と一体に繋がっている。従って、トング部成形部22は、ダイス本体外周部21にトング開口部成形部23としての片持ち支持部を介して片持ち状に支持されている。なおトング開口部成形部23は、トング部成形部22の基端くびれ部として捉えることもできる。
【0047】
トング部成形部22の上流側端面(正面)は、軸心方向(押出方向E)に対し直交する平坦面に形成されている。このトング部成形部22の断面形状(正面形状)は、半中空形材8のトング部82の断面形状に対応して、コーナーの曲率半径が大きい略矩形状(長方形状)に形成されている。
【0048】
またダイス本体2の上流側端面(正面)における外周縁部には、上流側に突出する嵌合凸縁部29が周方向に連続して形成されている。
【0049】
一方、ホールプレート5は、下流側(背面側)の内部にウエルドチャンバ51を備え、このウエルドチャンバ51が下流側に開放されている。さらにホールプレート5には、上流側端部がホールプレート5の上流側端面(正面)に開口し、下流側端部が上記ウエルドチャンバ51に開口するメタルホール55が形成されている。メタルホール55の断面形状(正面視形状)は、略1/4円形に形成されており、このメタルホール55が周方向にほぼ等間隔おきに4つ形成されている。
【0050】
なお言うまでもなく、本発明において、メタルホール55の設置数は、4つに限定されるものではなく、メタルホール55は、2つ以上であればいくつ形成しても良い。
【0051】
4つのメタルホール55の各間の領域は、ブリッジ53…として構成されている。各ブリッジ53は、正面視状態において、径方向外側(放射方向)に延びるように配置されており、隣合うメタルホール55,55がブリッジ53によってそれぞれ仕切られている。
【0052】
ホールプレート5における4つのメタルホール55によって囲まれた部分は、軸心に沿って配置される軸心部50として構成されている。この軸心部50における下流側端部には、下流側方向に向けて突出する突出部61が設けられるとともに、この突出部61の先端(下流側端部)が、背面視状態において矩形状のダミー成形部6として形成されている。このダミー成形部6は、ダイス本体2のトング部成形部22に位置的に対応しており、トング部成形部22に対向した状態に配置されるとともに、後に詳述するように、トング部成形部22に対し略相似形に形成されている。
【0053】
ここで、このダミー成形部6を備えた本実施形態のホールプレート5と、周知のポートホールダイス(ホローダイス)のホールプレートとを比較した場合、本実施形態のダミー成形部6は、周知のホールプレートにおける雄型ダイス(マンドレル)と同じ位置に配置されるものではあるが、半中空形材8の製品形状を決定するベアリング部(内周側ベアリング部)を有するものではなく、内周ベアリング部としてのトング部成形部22とは別体に形成されている。つまり、このダミー成形部6は、雄型ダイスの位置に配置されるものの、雄型ダイスとして機能することはないため、雄型ダイスのダミーとして捉えることができる。
【0054】
なお本実施形態のダミー成形部6は、後に詳述するように、押出加工時において、主として、押出材料81の流れ(メタルフロー)を制御して、トング部成形部22への圧力を調整するものであり、流動制御部や圧力制御部と称するようにしても良い。
【0055】
ダミー成形部6の下流側端面(先端面、背面)は、軸心方向(押出方向E)に対し直交する平坦面に形成されている。さらにこのダミー成形部6の断面形状(背面形状)は、ダイス本体2のトング部成形部22の断面形状(正面形状)に対応して、コーナーの曲率半径が大きい略矩形状(長方形状)に形成されている。
【0056】
さらにこのダミー成形部6は、正面視状態において、トング部成形部22に対し一回り小さく形成されている。具体的には、正面視または背面視の状態において、トング部成形部22の上流側端面(正面)の面積に対し、ダミー成形部6の下流側端面(背面)の面積の割合(百分率)、換言すれば、ダミー成形部6の背面によりトング部成形部22の正面が隠蔽される割合(隠蔽率)が、60〜97%に設定するのが良く、より好ましくは75〜95%に設定するのが良い。すなわちこのダミー成形部6によるトング部成形部22の隠蔽率が、小さ過ぎる場合には、後述するように、押出加工時におけるトング部成形部22への押出荷重を十分に軽減させることができず、押出荷重によりトング開口部成形部23が破損する可能性が高くなり、耐久性の低下を来すおそれがある。逆にダミー成形部6による隠蔽率が、大き過ぎる場合には、後述するように、押出加工時におけるメタルフローを適切に制御することが困難になり、安定した押出加工を行うことが困難になるおそれがある。
【0057】
もっとも本発明においては、トング部成形部22の圧力軽減効果のみを重要視する場合には、ダミー成形部6によるトング部成形部22の隠蔽率を100%以上に、つまりダミー成形部6の背面形状を、トング部成形部22の正面形状よりも大きく形成するようにしても良い。さらに隠蔽率を105%以上にすれば、圧力軽減効果は、より一層高くなる。
【0058】
ここで図6に示すように、本実施形態において、トング部成形部22とトング開口部成形部23との境界線は、成形孔3の内周側ベアリング部31の両端部を結ぶ仮想の直線Lによって構成されている。従ってこの仮想の直線Lと、内周側ベアリング部31とによって、トング部成形部22の輪郭線(外周形状)が特定されるとともに、その輪郭線によって囲まれる領域がトング部成形部22の領域となり、この領域の面積がトング部成形部22の正面の面積と等しくなる。
【0059】
さらに図6に示すように、トング長さ(仮想直線Lの長さ)を「W」、トング部成形部22の正面面積を「St」としたとき、トング比Tは、(トング部成形部正面面積St)/(トング長さW)で求められる。そして本発明は、トング比Tが4以上(T≧4)の高トング比の押出ダイスに好適に採用することができる。
【0060】
また本実施形態において、ダミー成形部6における背面の輪郭線と、トング部成形部22における正面の輪郭線との間隔は、全周にわたって一定の距離に設定されて、ダミー成形部6の背面形状(外周形状)は、トング部成形部22の正面形状(外周形状)に対し略相似形に形成されている。具体的には、正面視状態において、ダミー成形部6の外周形状は、トング部成形部22の輪郭線(成形孔3の内周側ベアリング部31)を基点列としたとき、その基点列の各基点を中心とする各等距離円の集合体における内側の輪郭線によって構成される形状となる。つまりダミー成形部6の外周形状は、トング部成形部22の輪郭線を基線とする等距離線によって構成される形状となっている。
【0061】
さらにダミー成形部6の背面(下流側端面)と、トング部成形部22の正面(上流側端面)とは略平行に配置されている。
【0062】
またホールプレート5の下流側端面(背面)における外周縁部には、上記ダイス本体2の嵌合凸縁部29に対応して、嵌合凹段部59が周方向に連続して形成されている。
【0063】
そしてこの構成のホールプレート5の嵌合凹段部59内に、上記ダイス本体2の嵌合凸縁部29が嵌合されるようにして、ダイス本体2とホールプレート5とが組み合わされて、本実施形態の押出ダイス1が製作される。
【0064】
図3に示すように、こうして組み立てられた本実施形態の押出ダイス1においては、ダミー成形部6の背面と、トング部成形部22の正面との間には隙間20が形成されている。この隙間20の幅寸法S2の下限値は、0.1mmに設定するのが好ましく、隙間20の幅寸法S2の上限値は、成形孔3の幅寸法(ベアリング幅)S1と同等に設定するのがより好ましい。つまり0.1mm≦「S2」≦「S1」の関係が成立するように構成するのが良い。なお言うまでもなく、成形孔3の幅寸法(ベアリング幅)S1は、半中空形材8の厚み(肉厚)寸法と等しくなる。
【0065】
ここで、隙間20の幅寸法S2が小さ過ぎる場合には、押出加工時にホールプレート5に加わる押出荷重によって、ホールプレート5が撓んだ際に、ホールプレート5のダミー成形部6が、ダイス本体2のトング部成形部22に圧接し、トング部成形部22に大きな荷重が加わって、その荷重によってトング開口部成形部23が破損する可能性が高くなるおそれがある。逆に幅寸法S2が大き過ぎる場合、つまり幅寸法S2が成形孔3の幅寸法S1を超える場合には、ビレットによって構成される押出材料(メタル)81が、ダミー成形部6およびトング部成形部22間の隙間20に浸入し易くなる。この隙間20に押出材料81が浸入して押出材料81をかみ込んでしまうと、押出荷重によってホールプレート5が撓んだ際に、ダミー成形部6が押出材料81を介してトング部成形部22を押圧し、トング部成形部22が撓んでトング開口部成形部23が破損する可能性が高くなるおそれがある。
【0066】
また本実施形態の押出ダイス1においては、ダミー成形部6とトング部成形部22とは、ボルトやねじ等で機械的に連結固定されることはなく、ダミー成形部6とトング部成形部22とは、非連結状態ないし非固定状態、つまり互いに連係されることのないフリーな状態となっている。
【0067】
本実施形態の押出ダイス1においては、図9に示すように、正面視状態で、成形孔3を通過する成形材料(半中空形材)の重心(製品重心)X3が、押出ダイス1の軸心X1に対し位置をずらせて配置されている。
【0068】
詳細に説明すると、本実施形態の押出ダイス1において、成形孔3、ブリッジ53およびメタルホール55の大きさや互いの位置関係等は、以下の手順に従って決定されるものである。
【0069】
まず、半中空形材の断面形状(成形孔3の正面形状)に応じて,メタルホール55(ブリッジ53)の数を決定する。例えばコーナー部が複数設けられた多角形状の成形孔3の場合には、その成形孔3のコーナー部の数と等しくなるように、ブリッジ53(メタルホール55)の数を設定する。本実施形態では、成形孔3が、略四角形状でコーナー部が4つ設けられるため、ブリッジ数およびメタルホール数はそれぞれ4つとなる。
【0070】
また正面視状態において、成形孔3の各コーナ−部に対応して、ブリッジ53が配置されるように、成形孔3とブリッジ53の位置との位置関係を設定する。言うまでもなく、メタルホール55は、隣合うブリッジ53,53間に対応して設けられることとなる。
【0071】
さらに正面視状態において、ブリッジ53の中心線上を通る仮想の区分け直線Laによって、成形孔3を、周方向に沿って、互いの面積(断面積)がほぼ等しい4つの区分け部分3bに区分けする。
【0072】
換言すれば、区分け直線Laによって区分けされた成形孔3の4つの区分け部分3bのうち、図9の紙面に向かって、右側に位置する区分け部分3bの面積を「B1」、中央下側に位置する区分け部分3bの面積を「B2」、左側に位置する区分け部分3bの面積を「B3」、中央上側に位置する区分け部分3bの面積を「B4」としたとき、各面積B1,B2,B3,B4は互いにほぼ等しく(実質的に等しく)設定されている。
【0073】
また正面視状態で、ブリッジ53の各間、つまり成形孔3の各区分け部分3bにそれぞれ対応して配置されるメタルホール55を、その各面積(各断面積)が互いに等しくなるように形成する。
【0074】
換言すれば、4つのメタルホール55のうち、同図の紙面に向かって、右側に位置するメタルホール55の面積を「A1」、中央下側に位置するメタルホール55の面積を「A2」、左側に位置するメタルホール55の面積を「A3」、中央上側に位置するメタルホール55の面積を「A4」としたとき、各面積A1,A2,A3,A4は互いにほぼ等しく(実質的に等しく)設定されている。
【0075】
なお、各メタルホール55の面積A1〜A4と、各区分け部分3bの面積B1〜B4とはそれぞれ等しいため、各区分け部分3bに対する各メタルホール55の面積比A1/B1,A2/B2,A3/B3,A4/B4も互いにほぼ等しく(実質的に等しく)設定される。
【0076】
数式的に示すと、本実施形態の押出ダイス1にいて、下記の関係式(1)〜(3)が成立するように、成形孔3およびメタルホール55の大きさや位置関係等を設定するものである。
【0077】
A1≒A2≒A3≒A4…(1)
B1≒B2≒B3≒B4…(2)
A1/B1≒A2/B2≒A3/B3≒A4/B4…(3)
【0078】
ここで、本発明において、各メタルホール55の面積A1〜A4のうち、最大のものを「Amax」、最小のものを「Amin」としたとき、Amax/Aminが1.2以下の場合には、各面積A1〜A4は互いにほぼ等しいものとする。なお本実施形態では、金型の精度を必要以上に高く設定したしても、それに見合う効果を十分に得ることができず、逆に製造コストを増大させるおそれがあるため、Amax/Aminは、1.005以上に設定するのが好ましい。
【0079】
さらに成形孔3の各区分け部分3bの面積B1〜B4のうち、最大のものを「Bmax」、最小のものを「Bmin」としたとき、Bmax/Bminが1.2以下の場合には、各面積B1〜B4は互いにほぼ等しいものとする。なおこのBmax/Bminにおいても、上記と同様、金型の精度を確保するための製造コストの増大を避けるため、1.005以上に設定するのが好ましい。
【0080】
また本実施形態において、各区分け部分3bに対する各メタルホール55の面積比A1/B1,A2/B2,A3/B3,A4/B4のいずれの面積比A/Bにおいて1.1〜300に設定するのが良い。
【0081】
すなわち面積A1〜A4が等しくない場合、B1〜B4が等しくない場合、あるいは面積比A/Bが上記特定範囲を逸脱する場合には、成形材料の流れ(メタルフロー)において、後述する良好な流動特性を得ることができず、高品質の形材製品を得ることが困難になるおそれがある。
【0082】
また本実施形態においては、(A1+A2+A3+A4)>(B1+B2+B3+B4)の関係を満足させるのが良く、より好ましくは、A1>B1,A2>B2,A3>B3およびA4>B4の関係を全て満足させるのが良い。すなわちこの関係を満たさない場合には、成形孔3に十分な材料が供給されず、形材断面形状によっては欠肉のおそれが生じるので、好ましくない。
【0083】
以上のように構成された本実施形態の押出ダイス1は、図1に示すように、押出加工装置10におけるコンテナ11の下流側にダイスホルダー(図示省略)を介して保持されている。
【0084】
そしてこの押出加工装置10を用いた押出加工(半中空形材の製造方法)は、周知の押出加工方法と同様である。すなわち押出加工装置10のコンテナ11内に装填された押出材料(成形材料)81としてのアルミニウムビレットをステム12でダミーブロック13を介して押出方向Eに押し込む。これにより押出材料81が、ホールプレート5のメタルホール55から流入してウエルドチャンバ51に至り、さらにウエルドチャンバ51から成形孔3を通って成形加工される。これにより成形孔3に対応した形状の図8に示す半中空形材8が製造される。
【0085】
なお本実施形態の押出ダイス1では、ダミー成形部6とトング部成形部22との間に隙間22があり、さらにダミー成形部6はトング部成形部22に対して非固定状態となっているため、押出加工時にダミー成形部6にかかる押出荷重は、トング部成形部22で支持されず、ブリッジ53のみで支持されることになる。
【0086】
本実施形態の押出加工装置10によれば、ダイス本体2におけるトング部成形部22の上流側にダミー成形部6を配置しているため、押出加工時に、押出材料81がダミー成形部6の外周側を流動することにより、押出材料81がトング部成形部22の中心部(主要部)に圧接することがことがなく、トング部成形部22に作用する押出荷重が軽減される。このため、その押出荷重によりトング開口部成形部23が破損する可能性を低く抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
【0087】
また本実施形態においては、ダミー成形部6をトング部成形部22に対し離間させているため、押出荷重によってホールプレート5に撓みが発生して、ダミー成形部6が下流側に押し込まれたとしても、ダミー成形部6がトング部成形部22に圧接するのを有効に防止できる。このため、トング部成形部22に多大な荷重が加わることがなく、この点からも、トング開口部成形部23の破損を確実に防止でき、耐久性を一層向上させることができる。
【0088】
その上さらに、本実施形態においては、ダミー成形部6をトング部成形部22に対し非固定状態としているため、ホールプレート5の撓みによりダミー成形部6が変位したとしても、その変位に追従してトング部成形部22が変位するようなことがなく、ダミー成形部6の変位による悪影響がトング部成形部22に及ぶようなことがない。従ってトング開口部成形部23の破損をより確実に防止でき、耐久性をより一層確実に向上させることができる。
【0089】
なお本実施形態においては、ダミー成形部6およびトング部成形部22間の隙間20の幅寸法S2を、成形孔3の幅寸法S1よりも狭く設定しているため、押出材料81は優先して成形孔3を通過するようになり、ダミー成形部6およびトング部成形部22間の隙間20に浸入するのを確実に防止することができる。このため、押出材料81の隙間20への浸入による不具合、例えば隙間20に押出材料81がかみ込むことによって、ホールプレート5の撓みによる悪影響がトング部成形部22に及ぶのを確実に防止でき、耐久性をより一層確実に向上させることができる。
【0090】
また本実施形態においては、内周側ベアリング部31や外周側ベアリング部32等、製品形状を決定するベアリング部をダイス本体2側にのみ形成しているため、一般的なホローダイスのように、内周側ベアリング部と外周側ベアリング部とが、雄型(ホールプレート)と雌型(ポートプレート)とに分散して形成されるものと比較して、寸法精度に優れた半中空形材8を製造することができる。
【0091】
すなわち、ベアリング部が雄型および雌型に分散して形成されていると、各ベアリング部の寸法精度や形状の維持・管理、例えば内周側および外周側ベアリング部間の位置関係の調整(ベアリング幅の調整)等が面倒となり、高い寸法精度を維持できず、高品質の半中空形材を製造することが困難になるおそれがある。
【0092】
これに対し、本実施形態においては、ベアリング部31,32をダイス本体2側に集約させているため、ベアリング部31,32間の位置調整等の各ベアリング部31,32の寸法精度や形状の維持・管理を精度良く簡単に行うことができ、高い寸法精度を維持できて、高品質の半中空形材を簡単かつ確実に製造することができる。
【0093】
また本実施形態においては、ダミー成形部6の外周形状をトング部成形部22の外周形状よりも一回り小さく形成しているため、ダミー成形部6の外周面近傍を流動する押出材料81は、トング部成形部22の外周部に圧接しその外周部にガイドされて、径方向外側(外径方向)への流れとなって、成形孔3に流入される。その一方、ウエルドチャンバ51の周壁面近傍を流動する押出材料81は、ダイス本体2の外周部21に圧接しその外周部21にガイドされて、径方向内側(内径方向)への流れとなって、成形孔3に流入される。このように押出材料81が、内径方向および外径方向の両側から成形孔3に流入されるという所望の理想的な押出材料81の流れ(メタルフロー)を形成することができ、安定した押出加工をスムーズに行えて、高品質の半中空形材製品をより一層確実に製造することができる。
【0094】
特に本実施形態においては、ダミー成形部6の外周形状は、トング部成形部22の輪郭線を基線とする等距離線によって構成される形状としているため、周方向全域において、押出材料81が径方向内側から外側へとスムーズに流動して成形孔3に流入させることができ、上記理想的なメタルフローをより確実に実現させることができ、より一層高品質の半中空形材製品をより確実に製造することができる。
【0095】
一方、本実施形態の押出ダイス1においては、図9に示すように、成形孔3を、面積がそれぞれ等しい区分け部分3bに区分けするととももに、各区分け部分3bに対応する各メタルホール55の面積A1〜A4をそれぞれ等しく設定しているため、コンテナ11内の成形材料は、各メタルホール55に均等に分散して導入されて、各メタルホール55内を等しい流速で通過する。
【0096】
その上さらに、本実施形態においては、成形孔3の各区分け部分3bに対するメタルホール55の面積比A1/B1,A2/B2,A3/B3,A4/B4もそれぞれ等しいため、成形材料が各メタルホール55から成形孔3の全域にバランス良く均等に流入し、成形孔3内で成形材料の流速にバラツキが発生するのを有効に防止することができる。このように成形孔3全域を等速で成形材料が通過するため、良好な流動特性を得ることができ、ねじれのない高品質の半中空形材を製造することができる。
【0097】
参考までに、以下に、従来のホローダイス等において、成形孔およびメタルホールの大きさや位置関係について説明する。
【0098】
すなわち図11に示すように、従来のホローダイスにおいて、正面視状態で、成形孔3の重心(製品重心)X3は、ダイスの軸心X1に一致しており、この成形孔3が、各ブリッジ53の中心を通る仮想の区分け直線Laによって、周方向に4つに区分けされるとともに、各区分け部分3bの大きさに合わせて、メタルホール55の大きさを設定するものである。ここで、従来のホローダイスでは、成形孔3を区分けする場合、周方向に単純に4分割するだけのものであり、このため、成形孔3の各区分け部分3bの面積B1〜B4が互いに等しくなることはない。例えばトング開口部成形部23を有する区分け部分3bの面積B1は、トング開口部成形部23のない区分け部分3bの面積B2〜B4よりも小さくなっている。
【0099】
そして、従来においては、成形孔3の各区分け部分3bの面積B1〜B4に対する各メタルホール55の面積A1〜A4の面積比A1/B1,A2/B2,A3/B3,A4/B4がそれぞれ等しくなるように、各メタルホール55の大きさ(面積A1〜A4)が設定されている。このため、トング開口部成形部23のある区分け部分3bに対応して配置されるメタルホール55の面積A1は、他の区分け部分3bに対応するメタルホール55の面積A2〜A4に比べて小さく設定されることになる。
【0100】
このように従来のホローダイス等の押出ダイスでは、成形孔3を周方向に単純に区分けして、各区分け部分3bの大きさに対応させて、各メタルホール55の大きさを決定するようにしているため、各メタルホール55の大きさが異なっている。
【0101】
このため従来のホローダイス等の押出ダイスでは、成形材料が、各メタルホール55に均等に分散して導入されず、各メタルホール55を異なる流速で通過することがあるため、各メタルホール55から異なる流速で成形材料が成形孔3に導入される。従って、成形孔3の導入位置によって、成形材料の流速にバラツキが生じ、本実施形態のような良好な流動特性を得ることが困難となる。その結果、形材製品に有害なねじれが発生し、高品質の形材製品を得ることが困難になってしまう。
【0102】
なお従来の押出ダイスにおいて、各メタルホール55の大きさを等しくしたとしても、良好な流動特性を得ることは困難である。
【0103】
すなわち図11に示す従来の押出ダイスでは、区分けされる成形孔3の各区分け部分3bの面積B1〜B4が異なっているため、各メタルホール55の大きさ(面積)を等しく設定したとしても、各区分け部分3bに対する各メタルホール55の面積比A1/B1,A2/B2,A3/B3,A4/B4が異なってしまう。このため、各メタルホール55から成形材料が成形孔3に流入される際に、成形孔3の流入位置によって、成形材料の流速にバラツキが発生する。従って、良好な流動特性を得ることができず、形材製品に有害なねじれが発生し、製品品質の低下を来していまう。
【0104】
これに対し、本実施形態の押出ダイス1においては、上記したように、成形孔3の導入位置にかかわらず、成形材料の流速にバラツキがない良好な流動特性を得ることができ、ねじれのない高品質の中空形材を製造することができる。
【0105】
図10はこの発明の変形例である押出ダイス1における成形孔3およびメタルホール55の位置関係を示す正面図である。
【0106】
同図に示すように、この押出ダイス1は、成形孔3が正面視状態において、線対称でない形状(非線対称形状)に形成されており、押出加工される半中空形材は、成形孔3に対応する非線対称の断面形状(異形断面形状)に形成されるものである。
【0107】
この変形例の押出ダイス1においても、上記実施形態と同様に、押出孔3およびメタルホール55の大きさや位置関係が設定されるものである。
【0108】
すなわち正面視状態で、押出孔3の各コーナー部に対応して配置される各ブリッジ53の中心線を通る仮想の区分け直線Laによって、成形孔3が、4つのメタルホール55に対応させて周方向に4つに区分けされる。この区分け時においては、上記実施形態と同様に、各区分け部分3bの面積B1〜B4がほぼ等しくなるように調整される。さらに各メタルホール55の面積A1〜A4がほぼ等しくなるように設定される。これにより、各区分け部分3bに対するメタルホール55の面積比A1/B1,A2/B2,A3/B3,A4/B4もほぼ等しく設定される。
【0109】
この変形例の押出ダイス1においても、上記実施形態と同様、正面視状態で、製品重心X3が、押出ダイス1の軸心X1に対し位置をずらせて配置されることとなる。
【0110】
また、この変形例において、他の構成は、上記実施形態と同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して、重複説明は省略する。
【0111】
この変形例の押出ダイス1においては、成形孔3の各区分け部分3bの形状はそれぞれ異なるものの、各区分け部分3bの面積B1〜B4はほぼ等しく設定されるとともに、各区分け部分3bに対応する各メタルホール55の面積A1〜A4もほぼ等しく設定されているため、上記実施形態と同様に、各メタルホール55から成形材料が成形孔3に導入される際に、導入位置にかかわらず、成形材料の流速にバラツキがなく良好な流動特性を得ることができ、ねじれ等の不具合のない高品質の形材製品を製造することができる。
【0112】
これ以外にも、この変形例においては、上記実施形態と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【0113】
なお本発明は、上記実施形態や変形例に示したものであることに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々に変更可能である。
【0114】
また上記実施形態では、押出材料(半中空形材)の材質として、アルミニウムを例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、アルミニウム以外の金属を用いることもできる。
【0115】
さらに本発明においては、ホールプレート5のメタルホール55の数や形状は、上記実施形態のものだけに限定されるものではない。
【0116】
また本発明においては、成形孔の形状(形材製品の断面形状)も上記実施形態等のものに限られず、どのような形状なものにも適用することができる。
【0117】
特に本発明は、3つ以上のコーナー部を有する略多角形状の成形孔を備えた押出ダイスに好適に適用することができる。さらに本発明を、コーナー部を有する成形孔を備えた押出ダイスに適用する場合には、上記実施形態のように、成形孔の各コーナー部に対応するようにブリッジを配置するのが良い。
【0118】
また上記実施形態では、ダミー成形部6とトング部成形部22とを離間させた状態に配置しているが、それだけに限られず、本発明においては、ダミー成形部6の下流側端面と、トング部成形部22の上流側端面とを接触させた状態に配置しても良い。
【0119】
また上記実施形態においては、ダイス本体1側に、ベアリング部31,32が設けられたソリッドダイス型の押出ダイスを例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、ホールプレートに雄型ダイス(内周側ベアリング部)が設けられ、ダイス本体(ポートプレート)に雌型ダイス(外周側ベアリング部)が設けられるセミホロー型の押出ダイスにも適用することができる。
【0120】
また上記実施形態では、ウエルドチャンバ51がホールプレート5に設けられた押出ダイスを例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、ウエルドチャンバをダイス本体側に形成していも良いし、ホールプレートおよびダイス本体の双方に跨がるように形成しても良い。要はウエルドチャンバは、ホールプレートおよびダイス本体の少なくともいずれか一方に設けられていれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0121】
この発明は、半中空形材を押出加工により製造する際に用いられる押出ダイス等に適用可能である。
【符号の説明】
【0122】
1:押出ダイス
10:押出加工装置
2:ダイス本体
22:トング部成形部
23:トング開口部成形部
3:成形孔
3b:区分け部分
5:ホールプレート
50:軸心部
51:ウエルドチャンバ
53:ブリッジ
55:メタルホール
6:ダミー成形部
8:半中空形材
81:押出材料
82:トング部
83:トング開口部
A,A1〜A4,Amax,Amin:区分け部分の面積
B,B1〜B4,Bmax,Bmin:メタルホールの面積
E:押出方向
La:区分け線(区分け直線)
X1:軸心
X3:製品重心(成形孔の重心)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半中空形材を成形する成形孔と、半中空形材のトング部を成形するトング部成形部と、半中空形材のトング開口部を成形するトング開口部成形部と、前記成形孔の上流側に設けられるウエルドチャンバと、上流側から前記ウエルドチャンバにかけて押出方向に沿って貫通し、かつ周方向に間隔をおいて複数設けられるメタルホールと、周方向に隣合うメタルホール間にそれぞれ設けられる複数のブリッジとを備え、前記複数のメタルホールから導入された成形材料が前記ウエルドチャンバを介して前記成形孔を通過するようにした半中空形材製造用押出ダイスであって、
上流側から押出方向に沿って見た正面視状態において、各ブリッジ上を通る仮想の区分け線によって、前記成形孔が、各メタルホールにそれぞれ対応し、かつ互いの面積がほぼ等しい複数の区分け部分に区分けされる一方、
正面視状態において、各メタルホールが、互いの面積がほぼ等しくなるように形成されることを特徴とする半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項2】
前記成形孔の各区分け部分の面積のうち、最大のものを「Bmax」、最小のものを「Bmin」としたとき、Bmax/Bminが1.2以下に設定される請求項1に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項3】
前記各メタルホールの面積のうち、最大のものを「Amax」、最小のものを「Amin」としたとき、Amax/Aminが1.2以下に設定される請求項1または2に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項4】
前記メタルホールの面積を「A」、前記成形孔の区分け部分の面積を「B」としたとき、対応し合う区分け部分およびメタルホールの面積比A/Bが1.1〜300に設定される請求項1〜3のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項5】
前記複数のメタルホールは、周方向にほぼ等間隔おきに配置される請求項1〜4のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項6】
正面視状態において、半中空形材の重心に対応する前記成形孔の重心が、押出ダイスの軸心に対し位置ずれした状態に配置される請求項1〜5のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項7】
正面視状態において、前記成形孔は非線対称の形状に形成される請求項1〜6のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項8】
ダイス本体と、その上流側に設けられるホールプレートとを別体に備え、
前記成形孔と、前記トング部成形部と、前記トング開口部成形部とが前記ダイス本体に設けられるとともに、
前記ウエルドチャンバと、前記メタルホールと、前記ブリッジとが前記ホールプレートに設けられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項9】
前記ホールプレートにおける前記ウエルドチャンバ内に、前記ダイス本体の前記トング部成形部の上流側に対応して、ダミー成形部が設けられる請求項8に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項10】
前記ダミー成形部は、前記トング部成形部に対し非固定状態となっている請求項9に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項11】
前記ホールプレートにおける前記複数のメタルホールによって囲まれた部分が、軸心部として構成され、
前記軸心部の下流側端部に前記ダミー成形部が設けられる請求項9または10に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項12】
前記ダミー成形部が、前記トング部成形部に対し接触した状態に配置される請求項9〜11のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項13】
前記ダミー成形部が、前記トング部成形部に対し離間した状態に配置される請求項9〜11のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項14】
押出材料を押出加工して半中空形材を製造する押出ダイスを備えた半中空形材の製造装置であって、
前記押出ダイスが、請求項1〜13のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイスによって構成されることを特徴とする半中空形材の製造装置。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイスを用いて押出材料を押出加工することにより、半中空形材を製造するようにしたことを特徴とする半中空形材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−20289(P2012−20289A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157562(P2010−157562)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】