説明

半中空形材製造用押出ダイス

【課題】製品品質を向上できる半中空形材製造用押出ダイスを提供する。
【解決手段】本発明の押出ダイス1は、成形孔3と、トング部成形部22と、トング開口部成形部23と、ウエルドチャンバ51と、メタルホール55と、ブリッジ53とを有する。正面視状態において、成形孔3の上流側端面における一端閉塞部35aから、ブリッジ壁面54までの距離Daが、成形孔3の他端閉塞部35bから、ブリッジの壁面54までの距離Dbに対し、ほぼ等しく設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半中空形材を押出加工により製造する際に用いられる半中空形材製造用押出ダイスおよびその関連技術に関する。
【0002】
なお本明細書において、上流および下流とは、それぞれ押出方向に対し上流および下流を意味している。
【背景技術】
【0003】
周壁に長さ方向に沿ってスリット状のトング開口部(周壁開口部)を有する断面略C字状の半中空形材を押出加工により製造するには、ソリッドダイスを用いる方法や、ホローダイスを用いる方法が周知である。
【0004】
特許文献1に示すように、ソリッドダイスは、その中央部に半中空形材を成形する成形孔(ベアリング孔)が設けられている。この成形孔の内側には半中空形材の空所であるトング部を成形するトング部成形部が配置されるとともに、このトング部成形部が、半中空形材のトング開口部を成形するトング開口部成形部(片持ち支持部)にてダイス外周部に一体に繋がっている。
【0005】
また特許文献2に示すように、ホローダイスは、雌型としてのポートプレートと、雄型としてのホールプレートとの組合せからなり、両プレートのベアリング部間の隙間によって環状の成形孔(ベアリング孔)が形成されるとともに、その成形孔の一部を閉塞する態様に、開口成形用の架橋片が設けられている。またホールプレートは、成形孔に対応して設けられるウエルドチャンバと、上流側からウエルドチャンバにかけて貫通し、かつ周方向に間隔をおいて複数設けられるメタルホールとを備え、各メタルホールを通過してウエルドチャンバに導入された成形材料が上記成形孔を通過するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−176536号
【特許文献2】特開昭63−16809号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に示すように、ホールプレートを有するホローダイス等を用いて、半中空形材を製造する場合、ウエルドチャンバ内での成形材料に流速のバラツキが生じることがあり、例えばウエルドチャンバ内におけるメタルホールに対応する部分の成形材料の流速が、隣合うメタルホール間のブリッジに対応する部分の成形材料の流速よりも速くなることがある。このため、成形孔の上流側端面(正面)から導入される成形材料の流速が、成形孔への導入位置によってバラツキが発生し、成形材料が成形孔の上流側端面の全域において均等な流速で成形材料が導入されないことがある。そうなると場合によっては、形材製品にねじれが発生し、高品質の半中空形材を得ることが困難である、という課題が発生する。
【0008】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高品質の半中空形材を製造することができる半中空形材用押出ダイスおよびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0010】
[1]半中空形材を成形する成形孔と、半中空形材のトング部を成形するトング部成形部と、半中空形材のトング開口部を成形するトング開口部成形部と、前記成形孔の上流側に設けられるウエルドチャンバと、上流側から前記ウエルドチャンバにかけて押出方向に沿って貫通し、かつ周方向に間隔をおいて複数設けられるメタルホールと、周方向に隣合うメタルホール間に設けられるブリッジとを備え、前記複数のメタルホールから導入された成形材料が前記ウエルドチャンバを介して前記成形孔を通過するようにした半中空形材製造用押出ダイスであって、
上流側から押出方向に沿って見た正面視状態において、前記成形孔の上流側端面における一端閉塞部から、近傍のブリッジの壁面までの距離が、前記成形孔の上流側端面における他端閉塞部から、近傍のブリッジの壁面までの距離に対し、ほぼ等しく設定されていることを特徴とする半中空形材製造用押出ダイス。
【0011】
なお、本発明の押出ダイスは、正面視状態において、前記成形孔の両端閉塞部が共に、前記メタルホールに対応する領域、前記ブリッジに対応する領域、および前記ブリッジ壁面上に対応する領域のうち、いずれかの一つの領域に配置されている。
【0012】
[2]前記成形孔の一端閉塞部から近傍のブリッジ壁面までの距離を「Da」、他端閉塞部から近傍のブリッジ壁面までの距離を「Db」としたとき、Db/Daが0.9〜1.1に設定される前項1に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0013】
[3]正面視状態において、前記成形孔は非線対称の形状に形成されている前項1または2に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0014】
[4]正面視状態において、前記成形孔の一端閉塞部から前記ダイス本体の軸心までの距離が、前記成形孔の他端閉塞部から前記ダイス本体の軸心までの距離に対し、ほぼ等しく設定されている前項1〜3のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0015】
[5]ダイス本体と、その上流側に設けられるホールプレートとを別体に備え、
前記成形孔と、前記トング部成形部と、前記トング開口部成形部とが前記ダイス本体に設けられるとともに、
前記ウエルドチャンバと、前記メタルホールと、前記ブリッジとが前記ホールプレートに設けられる前項1〜4のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0016】
[6]前記ホールプレートにおける前記ウエルドチャンバ内に、前記ダイス本体の前記トング部成形部の上流側に対応して、ダミー成形部が設けられる前項5に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0017】
[7]前記ダミー成形部は、前記トング部成形部に対し非固定状態となっている前項6に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0018】
[8]前記ホールプレートにおける前記複数のメタルホールによって囲まれた部分が、軸心部として構成され、
前記軸心部の下流側端部に前記ダミー成形部が設けられる前項6または7に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0019】
[9]前記ダミー成形部が、前記トング部成形部に対し接触した状態に配置される前項6〜8のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0020】
[10]前記ダミー成形部が、前記トング部成形部に対し離間した状態に配置される前項6〜9のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【0021】
[11]押出材料を押出加工して半中空形材を製造する押出ダイスを備えた半中空形材の製造装置であって、
前記押出ダイスが、前項1〜10のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイスによって構成されることを特徴とする半中空形材の製造装置。
【0022】
[12]前項1〜10のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイスを用いて押出材料を押出加工することにより、半中空形材を製造するようにしたことを特徴とする半中空形材の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
発明[1]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、成形孔の上流側端面における一端閉塞部側から流入する成形材料と、他端閉塞部側から流入する成形材料との流速がほぼ等しくなるため、成形孔の全域において、均等な流速で成形材料が流入して通過し、形材製品にねじれ等の不具合が発生するのを防止でき、高品質の半中空形材を確実に得ることができる。
【0024】
発明[2]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0025】
発明[3]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、非線対称の断面を有し、かつねじれ等の不具合のない高品質の半中空形材を確実に製造することができる。
【0026】
発明[4]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0027】
発明[5]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、製品形状を決定するベアリング部がダイス本体側に集約させて形成しているため、内周側および外周側ベアリング部間の位置調整等、各ベアリング部の寸法精度や形状の管理を精度良く簡単に行うことができ、高品質の半中空形材を簡単かつ確実に製造することができる。
【0028】
発明[6]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、トング部成形部の上流側にダミー成形部が設けられるため、押出加工時に、押出材料がダミー成形部の外周側を流動することにより、押出材料がトング部成形部の主要部に圧接せず、トング部成形部に作用する押出荷重が軽減される。このため、その押出荷重によりトング開口部成形部が破損する可能性を低く抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
【0029】
発明[7]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、押出荷重によってホールプレートに撓みが発生して、ダミー成形部が変位したとしても、その変位による悪影響がトング部成形部に及ぶようなことがなく、耐久性をより一層向上させることができる。
【0030】
発明[8]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、適切な位置にダミー成形部を確実に形成できて、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0031】
発明[9]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、ダミー成形部がトング部成形部に接触しているため、ダミー成形部およびトング部成形部間に押出材料が浸入するのを確実に防止でき、その浸入による不具合を防止することができる。
【0032】
発明[10]の半中空形材製造用押出ダイスによれば、ダミー成形部とトング部成形部との間に隙間を形成しているため、押出荷重によってホールプレートに撓みが発生して、ダミー成形部が下流側に押し込まれたとしても、ダミー成形部がトング部成形部に圧接するのを有効に防止できる。このため、トング部成形部に多大な荷重が加わることがなく、トング開口部成形部の破損を確実に防止でき、耐久性を一層向上させることができる。
【0033】
発明[11]の半中空形材の製造装置によれば、上記と同様に、同様の効果を得ることができる。
【0034】
発明[12]の半中空形材の製造方法によれば、上記と同様に、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1はこの発明の実施形態である押出ダイスが適用された押出加工装置を示す断面図である。
【図2】図2は実施形態の押出ダイスを示す断面図である。
【図3】図3は実施形態の押出ダイスにおけるダミー成形部周辺を拡大して示す断面図である。
【図4】図4は実施形態の押出ダイスを分解して示す斜視図である。
【図5】図5は実施形態の押出ダイスを上流側から見た正面図である。
【図6】図6は実施形態の押出ダイスに適用されたダイス本体を上流側から見た正面図である。
【図7】図7は実施形態の押出ダイスに適用されたホールプレートを下流側から見た背面図である。
【図8】図8は実施形態の押出加工装置によって製造された半中空形材を示す断面図である。
【図9】図9は実施形態の押出ダイスにおけるブリッジおよび成形孔の位置関係を示す正面図である。
【図10】図10は図9の成形孔両端閉塞部周辺を拡大して示す正面図である。
【図11A】図11Aはこの発明の第1変形例である押出ダイスにおけるブリッジおよび成形孔の位置関係を示す正面図である。
【図11B】図11Bはこの発明の第2変形例である押出ダイスにおけるブリッジおよび成形孔の位置関係を示す正面図である。
【図11C】図11Cはこの発明の第3変形例である押出ダイスにおけるブリッジおよび成形孔の位置関係を示す正面図である。
【図11D】図11Dはこの発明の第4変形例である押出ダイスにおけるブリッジおよび成形孔の位置関係を示す正面図である。
【図12A】図12Aは本発明の要旨を逸脱する第1参考例としての押出ダイスにおけるブリッジおよび成形孔の位置関係を示す正面図である。
【図12B】図12Bは本発明の要旨を逸脱する第2参考例としての押出ダイスにおけるブリッジおよび成形孔の位置関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1はこの発明の実施形態である押出ダイス1が適用された押出加工装置10を示す断面図である。同図に示すように、この押出加工装置(半中空形材の製造装置)10は、直接押出加工方式のものであり、本実施形態の押出ダイス1を始め、その他に、コンテナ11、ステム12等を具備するものである。
【0037】
この押出加工装置10において製造される半中空形材8は図8に示すように、リップ溝型(リップチャンネル状)の形状を有しており、トング比が高い略C字状の断面形状に形成されている。
【0038】
この半中空形材8の材質は、金属であり、本実施形態ではアルミニウム(その合金を含む。以下同じ)である。
【0039】
この半中空形材8は、その内側に設けられ、かつ長さ方向(押出方向E)に延びるトング部(ボイド部)82と、外周壁に設けられ、かつ長さ方向に延びるスリット状のトング開口部(周壁開口部)83とを備え、トング開口部83を介してトング部82が外部に開放されている。
【0040】
図1〜7に示すように、本実施形態の押出ダイス1は、押出方向Eに対し下流側に配置されるダイス本体2と、上流側に配置されるホールプレート5とを別体に備えている。なお後に詳述するように、ホールプレート5は、ベアリング部を備えず、ダイス(雄型)として機能するものではないが、便宜上、ダイス本体2を雌型、ホールプレート5を雄型と称する場合もある。
【0041】
押出ダイス1のダイス本体2は、その中央部に半中空形材8を成形する成形孔3が押出方向Eに貫通して設けられている。成形孔3の断面形状は、製造される半中空形材8の断面形状に対応した形状の略C字状に形成されている。
【0042】
なお本実施形態において、ダイス本体2は、成形孔3を構成する内周側ベアリング部31および外周側ベアリング部32等の全てのベアリング部がダイス本体2に設定されるものであり、ソリッドダイスとして捉えることもできる。
【0043】
ダイス本体2の成形孔3の径方向内側には、半中空形材8のトング部82を成形するトング部成形部22が配置されるとともに、このトング部成形部22が、半中空形材8のトング開口部83を成形するトング開口部成形部23にてダイス本体2の外周部21と一体に繋がっている。従って、トング部成形部22は、ダイス本体外周部21にトング開口部成形部23としての片持ち支持部を介して片持ち状に支持されている。なおトング開口部成形部23は、トング部成形部22の基端くびれ部として捉えることもできる。
【0044】
ここで、本実施形態においては、ダイス本体2の成形孔3の上流側端面(上流側端部)におけるトング開口部成形部23によって閉塞される部分を、成形孔3の上流側端面における両端閉塞部35a,35bとして規定する。換言すれば、ダイス本体2における成形孔3の両端閉塞部35a,35b間の領域によって、トング開口部成形部23が形成されるものである。
【0045】
トング部成形部22の上流側端面(正面)は、軸心方向(押出方向E)に対し直交する平坦面に形成されている。このトング部成形部22の断面形状(正面形状)は、半中空形材8のトング部82の断面形状に対応して、コーナーの曲率半径が大きい略矩形状(四角形状)に形成されている。
【0046】
またダイス本体2の上流側端面(正面)における外周縁部には、上流側に突出する嵌合凸縁部29が周方向に連続して形成されている。
【0047】
一方、ホールプレート5は、下流側(背面側)の内部にウエルドチャンバ51を備え、このウエルドチャンバ51が下流側に開放されている。さらにホールプレート5には、上流側端部がホールプレート5の上流側端面(正面)に開口し、下流側端部が上記ウエルドチャンバ51に開口するメタルホール55が形成されている。メタルホール55の断面形状(正面視形状)は、略1/4円形に形成されており、このメタルホール55が周方向に等間隔おきに4つ形成されている。
【0048】
なお言うまでもなく、本発明において、メタルホール55の設置数は、4つに限定されるものではなく、メタルホール55は、2つ以上であればいくつ形成しても良い。
【0049】
4つのメタルホール55の各間の領域は、ブリッジ53…として構成されており、隣合うメタルホール55,55がブリッジ53によって仕切られている。
【0050】
ホールプレート5における4つのメタルホール55によって囲まれた部分は、軸心に沿って配置される軸心部50として構成されている。この軸心部50における下流側端部には、下流側方向に向けて突出する突出部61が設けられるとともに、この突出部61の先端(下流側端部)が、背面視状態において矩形状のダミー成形部6として形成されている。このダミー成形部6は、ダイス本体2のトング部成形部22に位置的に対応しており、トング部成形部22に対向した状態に配置されるとともに、後に詳述するように、トング部成形部22に対し略相似形に形成されている。
【0051】
ここで、このダミー成形部6を備えた本実施形態のホールプレート5と、周知のポートホールダイス(ホローダイス)のホールプレートとを比較した場合、本実施形態のダミー成形部6は、周知のホールプレートにおける雄型ダイス(マンドレル)と同じ位置に配置されるものではあるが、半中空形材8の製品形状を決定するベアリング部(内周側ベアリング部)を有するものではなく、内周ベアリング部としてのトング部成形部22とは別体に形成されている。つまり、このダミー成形部6は、雄型ダイスの位置に配置されるものの、雄型ダイスとして機能することはないため、雄型ダイスのダミーとして捉えることができる。
【0052】
なお本実施形態のダミー成形部6は、後に詳述するように、押出加工時において、主として、押出材料81の流れ(メタルフロー)を制御して、トング部成形部22への圧力を調整するものであり、流動制御部や圧力制御部と称するようにしても良い。
【0053】
ダミー成形部6の下流側端面(先端面、背面)は、軸心方向(押出方向E)に対し直交する平坦面に形成されている。さらにこのダミー成形部6の断面形状(背面形状)は、ダイス本体2のトング部成形部22の断面形状(正面形状)に対応して、コーナーの曲率半径が大きい略矩形状(四角形状)に形成されている。
【0054】
さらにこのダミー成形部6は、正面視状態において、トング部成形部22に対し一回り小さく形成されている。具体的には、正面視または背面視の状態において、トング部成形部22の上流側端面(正面)の面積に対し、ダミー成形部6の下流側端面(背面)の面積の割合(百分率)、換言すれば、ダミー成形部6の背面によりトング部成形部22の正面が隠蔽される割合(隠蔽率)が、60〜97%に設定するのが良く、より好ましくは75〜95%に設定するのが良い。すなわちこのダミー成形部6によるトング部成形部22の隠蔽率が、小さ過ぎる場合には、後述するように、押出加工時におけるトング部成形部22への押出荷重を十分に軽減させることができず、押出荷重によりトング開口部成形部23が破損する可能性が高くなり、耐久性の低下を来すおそれがある。逆にダミー成形部6による隠蔽率が、大き過ぎる場合には、後述するように、押出加工時におけるメタルフローを適切に制御することが困難になり、安定した押出加工を行うことが困難になるおそれがある。
【0055】
もっとも本発明においては、トング部成形部22の圧力軽減効果のみを重要視する場合には、ダミー成形部6によるトング部成形部22の隠蔽率を100%以上に、つまりダミー成形部6の背面形状を、トング部成形部22の正面形状よりも大きく形成するようにしても良い。さらに隠蔽率を105%以上にすれば、圧力軽減効果は、より一層高くなる。
【0056】
ここで図6に示すように、本実施形態において、トング部成形部22とトング開口部成形部23との境界線は、成形孔3の内周側ベアリング部31の両端部を結ぶ仮想の直線Lによって構成されている。従ってこの仮想の直線Lと、内周側ベアリング部31とによって、トング部成形部22の輪郭線(外周形状)が特定されるとともに、その輪郭線によって囲まれる領域がトング部成形部22の領域となり、この領域の面積がトング部成形部22の正面の面積と等しくなる。
【0057】
さらに図6に示すように、トング長さ(仮想直線Lの長さ)を「W」、トング部成形部22の正面面積を「St」としたとき、トング比Tは、(トング部成形部正面面積St)/(トング長さW)で求められる。そして本発明は、トング比Tが4以上(T≧4)の高トング比の押出ダイスに好適に採用することができる。
【0058】
また本実施形態において、ダミー成形部6における背面の輪郭線と、トング部成形部22における正面の輪郭線との間隔は、全周にわたって一定の距離に設定されて、ダミー成形部6の背面形状(外周形状)は、トング部成形部22の正面形状(外周形状)に対し略相似形に形成されている。具体的には、正面視状態において、ダミー成形部6の外周形状は、トング部成形部22の輪郭線(成形孔3の内周側ベアリング部31)を基点列としたとき、その基点列の各基点を中心とする各等距離円の集合体における内側の輪郭線によって構成される形状となる。つまりダミー成形部6の外周形状は、トング部成形部22の輪郭線を基線とする等距離線によって構成される形状となっている。
【0059】
さらにダミー成形部6の背面(下流側端面)と、トング部成形部22の正面(上流側端面)とは略平行に配置されている。
【0060】
またホールプレート5の下流側端面(背面)における外周縁部には、上記ダイス本体2の嵌合凸縁部29に対応して、嵌合凹段部59が周方向に連続して形成されている。
【0061】
そしてこの構成のホールプレート5の嵌合凹段部59内に、上記ダイス本体2の嵌合凸縁部29が嵌合されるようにして、ダイス本体2とホールプレート5とが組み合わされて、本実施形態の押出ダイス1が製作される。
【0062】
図3に示すように、こうして組み立てられた本実施形態の押出ダイス1においては、ダミー成形部6の背面と、トング部成形部22の正面との間には隙間20が形成されている。この隙間20の幅寸法S2の下限値は、0.1mmに設定するのが好ましく、隙間20の幅寸法S2の上限値は、成形孔3の幅寸法(ベアリング幅)S1と同等に設定するのがより好ましい。つまり0.1mm≦「S2」≦「S1」の関係が成立するように構成するのが良い。なお言うまでもなく、成形孔3の幅寸法(ベアリング幅)S1は、半中空形材8の厚み(肉厚)寸法と等しくなる。
【0063】
ここで、隙間20の幅寸法S2が小さ過ぎる場合には、押出加工時にホールプレート5に加わる押出荷重によって、ホールプレート5が撓んだ際に、ホールプレート5のダミー成形部6が、ダイス本体2のトング部成形部22に圧接し、トング部成形部22に大きな荷重が加わって、その荷重によってトング開口部成形部23が破損する可能性が高くなるおそれがある。逆に幅寸法S2が大き過ぎる場合、つまり幅寸法S2が成形孔3の幅寸法S1を超える場合には、ビレットによって構成される押出材料(メタル)81が、ダミー成形部6およびトング部成形部22間の隙間20に浸入し易くなる。この隙間20に押出材料81が浸入して押出材料81をかみ込んでしまうと、押出荷重によってホールプレート5が撓んだ際に、ダミー成形部6が押出材料81を介してトング部成形部22を押圧し、トング部成形部22が撓んでトング開口部成形部23が破損する可能性が高くなるおそれがある。
【0064】
また本実施形態の押出ダイス1においては、ダミー成形部6とトング部成形部22とは、ボルトやねじ等で機械的に連結固定されることはなく、ダミー成形部6とトング部成形部22とは、非連結状態ないし非固定状態、つまり互いに連係されることのないフリーな状態となっている。
【0065】
図9,10に示すように、本実施形態の押出ダイス1において、正面視状態で、成形孔3の上流側端面における両端閉塞部35a,35bは共に、ブリッジ53に対応する領域(ブリッジ53に隠蔽される領域)に配置されている。
【0066】
さらに本実施形態の押出ダイス1では、正面視状態で、成形孔3の上流側端面における一端閉塞部35aと、ホールプレート5のメタルホール55の内周面におけるブリッジ53の壁面54との距離を「Da」とし、他端閉塞部35bと、ブリッジ53の壁面54との距離を「Db」としたとき、両距離Da,Dbがほぼ(実質的に)等しくなるように調整されている。
【0067】
ここで本実施形態において、ブリッジ53の壁面(以下「ブリッジ壁面」とも言う)54は、必ずしも、ブリッジ53の壁面全域で構成されるものではなく、各ブリッジ53の壁面全域のうち、押出方向(軸心方向)に対し平行に配置される平坦面の部分によって構成されるものである。なお、本発明においては、ブリッジ53の壁面全域のうち、メタルホール55内に最も内側に張り出した部分を、ブリッジ壁面として規定することも可能である。
【0068】
さらにブリッジ壁面54と、各閉塞部35a,35bとの距離Da,Dbは、正面視状態において、各閉塞部35a,35bから、ブリッジ壁面54によって規定される直線(壁面線)またはその壁面線の延長線に垂線を引いたとき、各閉塞部35a,35bから、各垂線のブリッジ壁面54(壁面線またはその延長線)との交点(足)までの長さである。換言すれば、閉塞部35a,35bからブリッジ壁面54へ距離Da,Dbは、正面視状態において、閉塞部35a,35bを通り、かつ対応するブリッジ壁面54,54(壁面線)と平行な仮想の直線La,Lbと、ブリッジ壁面54,54との間の長さ(間隔)である。
【0069】
さらに本発明においては、Db/Daが、0.9〜1.1、より好ましくは0.93〜1.07の場合、両距離Da,Dbはほぼ(実質的に)等しいものとする。
【0070】
また本発明においては、正面視状態で、一端閉塞部35aと、他端閉塞部35bとを共に、メタルホール55に対応する領域、ブリッジ53に隠蔽される領域およびブリッジ壁面54上に一致する領域のうち、いずれかの領域内に配置させる必要がある。すなわち仮に、閉塞部35a,35bがブリッジ53内の領域に位置する場合に、距離Da,Dbを正数で表し、めたるホール55内の領域に位置する場合に、距離Da,Dbを負数で表したとき、距離Daと距離Dbとの正負も一致させる必要がある。従って、本発明においては、距離Daと距離Dbとの絶対値が等しくとも、正負が異なる場合には、距離Da,Dbは等しいものではなく、不一致となる。
【0071】
また言うまでもなく、各閉塞部35a,35bに対して、距離Da,Dbの測定対象となるブリッジ壁面54とは、全てのブリッジ壁面54…のうち、各閉塞部35a,35bに対して最も近い位置に配置されるブリッジ壁面54であり、この最も近いブリッジ壁面54を、本発明においては、各閉塞部35a,35bに対して、近傍のブリッジ53の壁面または対応のブリッジ53の壁面54と称する。
【0072】
また本実施形態においては、正面視状態で、成形孔3の一端閉塞部35aから軸心(重心)Xまで距離と、他端閉塞部35bから軸心Xまでの距離とがほぼ等しく設定されている。
【0073】
なお、後述する第3,4変形例から明らかなように、本発明においては、正面視状態で、成形孔3の一端閉塞部35aから軸心(重心)Xまで距離と、他端閉塞部35bから軸心Xまでの距離とが必ずしも等しく設定する必要はなく、異なっていても良い。もっとも本発明においては、一端閉塞部35aおよび軸心X間の距離と、他端閉塞部35bおよび軸心X間の距離とを、本実施形態のように等しく設定するのが、より一層好ましい。
【0074】
以上のように構成された本実施形態の押出ダイス1は、図1に示すように、押出加工装置10におけるコンテナ11の下流側にダイスホルダー(図示省略)を介して保持されている。
【0075】
そしてこの押出加工装置10を用いた押出加工(半中空形材の製造方法)は、周知の押出加工方法と同様である。すなわち押出加工装置10のコンテナ11内に装填された押出材料(成形材料)81としてのアルミニウムビレットをステム12でダミーブロック13を介して押出方向Eに押し込む。これにより押出材料81が、ホールプレート5のメタルホール55から流入してウエルドチャンバ51に至り、さらにウエルドチャンバ51から成形孔3を通って成形加工される。これにより成形孔3に対応した形状の図8に示す半中空形材8が製造される。
【0076】
なお本実施形態の押出ダイス1では、ダミー成形部6とトング部成形部22との間に隙間22があり、さらにダミー成形部6はトング部成形部22に対して非固定状態となっているため、押出加工時にダミー成形部6にかかる押出荷重は、トング部成形部22で支持されず、ブリッジ53のみで支持されることになる。
【0077】
本実施形態の押出加工装置10によれば、ダイス本体2におけるトング部成形部22の上流側にダミー成形部6を配置しているため、押出加工時に、押出材料81がダミー成形部6の外周側を流動することにより、押出材料81がトング部成形部22の中心部(主要部)に圧接することがことがなく、トング部成形部22に作用する押出荷重が軽減される。このため、その押出荷重によりトング開口部成形部23が破損する可能性を低く抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
【0078】
また本実施形態においては、ダミー成形部6をトング部成形部22に対し離間させているため、押出荷重によってホールプレート5に撓みが発生して、ダミー成形部6が下流側に押し込まれたとしても、ダミー成形部6がトング部成形部22に圧接するのを有効に防止できる。このため、トング部成形部22に多大な荷重が加わることがなく、この点からも、トング開口部成形部23の破損を確実に防止でき、耐久性を一層向上させることができる。
【0079】
その上さらに、本実施形態においては、ダミー成形部6をトング部成形部22に対し非固定状態としているため、ホールプレート5の撓みによりダミー成形部6が変位したとしても、その変位に追従してトング部成形部22が変位するようなことがなく、ダミー成形部6の変位による悪影響がトング部成形部22に及ぶようなことがない。従ってトング開口部成形部23の破損をより確実に防止でき、耐久性をより一層確実に向上させることができる。
【0080】
なお本実施形態においては、ダミー成形部6およびトング部成形部22間の隙間20の幅寸法S2を、成形孔3の幅寸法S1よりも狭く設定しているため、押出材料81は優先して成形孔3を通過するようになり、ダミー成形部6およびトング部成形部22間の隙間20に浸入するのを確実に防止することができる。このため、押出材料81の隙間20への浸入による不具合、例えば隙間20に押出材料81がかみ込むことによって、ホールプレート5の撓みによる悪影響がトング部成形部22に及ぶのを確実に防止でき、耐久性をより一層確実に向上させることができる。
【0081】
また本実施形態においては、内周側ベアリング部31や外周側ベアリング部32等、製品形状を決定するベアリング部をダイス本体2側にのみ形成しているため、一般的なホローダイスのように、内周側ベアリング部と外周側ベアリング部とが、雄型(ホールプレート)と雌型(ポートプレート)とに分散して形成されるものと比較して、寸法精度に優れた半中空形材8を製造することができる。
【0082】
すなわち、ベアリング部が雄型および雌型に分散して形成されていると、各ベアリング部の寸法精度や形状の維持・管理、例えば内周側および外周側ベアリング部間の位置関係の調整(ベアリング幅の調整)等が面倒となり、高い寸法精度を維持できず、高品質の半中空形材を製造することが困難になるおそれがある。
【0083】
これに対し、本実施形態においては、ベアリング部31,32をダイス本体2側に集約させているため、ベアリング部31,32間の位置調整等の各ベアリング部31,32の寸法精度や形状の維持・管理を精度良く簡単に行うことができ、高い寸法精度を維持できて、高品質の半中空形材を簡単かつ確実に製造することができる。
【0084】
また本実施形態においては、ダミー成形部6の外周形状をトング部成形部22の外周形状よりも一回り小さく形成しているため、ダミー成形部6の外周面近傍を流動する押出材料81は、トング部成形部22の外周部に圧接しその外周部にガイドされて、径方向外側(外径方向)への流れとなって、成形孔3に流入される。その一方、ウエルドチャンバ51の周壁面近傍を流動する押出材料81は、ダイス本体2の外周部21に圧接しその外周部21にガイドされて、径方向内側(内径方向)への流れとなって、成形孔3に流入される。このように押出材料81が、内径方向および外径方向の両側から成形孔3に流入されるという所望の理想的な押出材料81の流れ(メタルフロー)を形成することができ、安定した押出加工をスムーズに行えて、高品質の半中空形材製品をより一層確実に製造することができる。
【0085】
特に本実施形態においては、ダミー成形部6の外周形状は、トング部成形部22の輪郭線を基線とする等距離線によって構成される形状としているため、周方向全域において、押出材料81が径方向内側から外側へとスムーズに流動して成形孔3に流入させることができ、上記理想的なメタルフローをより確実に実現させることができ、より一層高品質の半中空形材製品をより確実に製造することができる。
【0086】
一方図9,10に示すように、本実施形態の押出ダイス1によれば、成形孔3の一端閉塞部35aとブリッジ壁面54との距離Daを、他端閉塞部35bとブリッジ壁面54との距離Dbに対しほぼ等しく設定しているため、押出加工される半中空形材製品にねじれ等の不具合が発生するのを確実に防止でき、形材製品の品質をより一層向上させることができる。
【0087】
すなわちホールプレート5を備える押出ダイス1においては、ブリッジ壁面54等のメタルホール55の内周面に沿って流動する成形材料は、メタルホール55の中心部を流動する成形材料と比べて流速が遅くなる。このため、ウエルドチャンバ51内のメタルホール55に対応する部分では、ブリッジ壁面54に近づくに従って成形材料の流速は遅くなる。
【0088】
また、ウエルドチャンバ51内のブリッジ53に対応する部分では、成形材料がメタルホール55から回り込むため、ブリッジ壁面54に近づくに従って成形材料の流速は速くなる。
【0089】
つまり、ウエルドチャンバ51内では、ブリッジ壁面54からの距離に応じて、成形材料の流速が変化するのが通例である。
【0090】
ここで仮に図12Aに示す押出ダイス101のように、成形孔3の一端閉塞部35aとブリッジ壁面54との距離Daが、他端閉塞部35bとブリッジ壁面54との距離Dbに対し異なる場合には、成形孔3の一端閉塞部35a近傍から流入する成形材料と、他端閉塞部35b近傍から流入する成形材料との流速が大きく異なってしまう。そうすると成形孔3の一端閉塞部135a側を通過する押出材料と、他端閉塞部35b側を通過する押出材料との流速が等しくならず、成形加工される形材製品にねじれが発生し、品質を著しく低下させるおそれがある。
【0091】
そこで、本実施形態の押出ダイス1では、図9,10に示すように、成形孔3における両端閉塞部35a,35bのブリッジ壁面54,54に対する距離Da,Dbを等しく設定しているため、成形孔3の一端閉塞部35a近傍から流入する成形材料と、他端閉塞部35b近傍から流入する成形材料との流速がほぼ等しくなる。このため、成形孔3の一端閉塞部35a側と、他端閉塞部35b側とで等速で押出材料が通過することにより、正面視の状態で、成形孔3の全域において押出材料が等速で通過する。従って、成形加工される形材製品にねじれ等の不具合が発生せず、品質を一段と向上させることができる。
【0092】
図11Aはこの発明の第1変形例である押出ダイス1におけるブリッジ53および成形孔3の位置関係を示す正面図である。
【0093】
同図に示すように、この第1変形例の押出ダイス1においては、正面視状態で、ダイス本体1における成形孔3の両端閉塞部35a,35bがメタルホール55内に対応する領域に配置されるとともに、成形孔3における各閉塞部35a,35bのブリッジ壁面54,54に対する距離Da,Dbが等しく設定されている。その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0094】
この第1変形例の押出ダイス1においても、成形孔3の上流側端面における一端閉塞部35aから流入する成形材料と、他端閉塞部35bから流入する成形材料との流速が等しくなり、上記実施形態と同様に、ねじれのない高品質の半中空押出形材を製造することができる。
【0095】
またこれ以外の作用効果についても、上記実施形態と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【0096】
図11Bはこの発明の第2変形例である押出ダイス1におけるブリッジ53および成形孔3の位置関係を示す正面図である。同図に示すように、この第2変形例の押出ダイス1においては、正面視状態で、成形孔3の両端閉塞部35a,35bが、一つのブリッジ53に隠蔽される領域に配置され、成形孔3の4つのコーナー部が、4つのメタルホール55にそれぞれ対応して配置されている。さらに各閉塞部35a,35bのブリッジ壁面54,54に対する距離Da,Dbが等しく設定されている。その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0097】
この第1変形例の押出ダイス1においても、上記実施形態と同様に、同様の作用効果を奏するものである。
【0098】
図11Cはこの発明の第3変形例である押出ダイス1におけるブリッジ53および成形孔の位置関係を示す正面図である。同図に示すように、この第3変形例の押出ダイス1は、成形孔3が正面視において、左右非対称形状で線対称でない形状(非線対称形状)に形成されており、押出加工される押出形材は、成形孔3の形状に対応する左右非対称形状の異形断面形状に形成されるものである。
【0099】
この第3変形例の押出ダイス1においては、正面視状態で、成形孔3の両端閉塞部35a,35bがブリッジ55内の領域に配置されるとともに、各閉塞部35a,35bのブリッジ壁面54,54に対する距離Da,Dbが等しく設定されている。さらにこの第2変形例の押出ダイスでは、正面視状態において、成形孔3の一端閉塞部35aから軸心(重心)Xまでの距離と、他端閉塞部35bから軸心Xまでの距離とが異なっている(後述の第4変形例においても同様である)。
【0100】
その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0101】
この第3変形例の押出ダイス1においても、上記実施形態等と同様に、同様の作用効果を奏するものである。
【0102】
特に形材製品として、断面が非線対称のものを製造する場合には、図12Bに示す押出ダイス101のように、成形孔3における一端閉塞部35aからブリッジ壁面54までの距離Daと、他端閉塞部35bからブリッジ壁面54までの距離Dbとが大きく異なるのが通例であり、その構成では、上記したように、形材製品に有害なねじれが発生し易いものとなっている。
【0103】
これに対し、この第3変形例の押出ダイス1では、上記実施形態と同様に、正面視において、成形孔3の全域で等速で成形材料が通過し、ねじれのない高品質の半中空押出形材製品を確実に製造することができる。
【0104】
図11Dはこの発明の第4変形例である押出ダイスに1おけるブリッジ53および成形孔3の位置関係を示す正面図である。この押出ダイス1においては、正面視状態で、成形孔3の両端閉塞部35a,35bがブリッジ壁面54,54(ブリッジ壁面線)上に配置されており、一端閉塞部35aからブリッジ壁面54までの距離Daと、他端閉塞部35bからブリッジ壁面54までの距離Dbとが共に実質0mmに設定されている。その他の構成は、上記実施形態等と同様である。
【0105】
この第4変形例の押出ダイスにおいても、上記実施形態等と同様に、同様の作用効果を奏するものである。
【0106】
なお本発明は、上記実施形態や変形例に示したものであることに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々に変更可能である。
【0107】
また上記実施形態では、押出材料(半中空形材)の材質として、アルミニウムを例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、アルミニウム以外の金属を用いることもできる。
【0108】
さらに本発明においては、ホールプレート5のメタルホール55の数や形状は、上記実施形態のものだけに限定されるものではない。
【0109】
また上記実施形態では、ダミー成形部6とトング部成形部22とを離間させた状態に配置しているが、それだけに限られず、本発明においては、ダミー成形部6の下流側端面と、トング部成形部22の上流側端面とを接触させた状態に配置しても良い。
【0110】
また上記実施形態においては、ダイス本体1側に、ベアリング部31,32が設けられたソリッドダイス型の押出ダイスを例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、ホールプレートに雄型ダイス(内周側ベアリング部)が設けられ、ダイス本体(ポートプレート)に雌型ダイス(外周側ベアリング部)が設けられるセミホロー型の押出ダイスにも適用することができる。
【0111】
また上記実施形態では、ウエルドチャンバ51がホールプレート5に設けられた押出ダイスを例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、ウエルドチャンバをダイス本体側に形成していも良いし、ホールプレートおよびダイス本体の双方に跨がるように形成しても良い。要はウエルドチャンバは、ホールプレートおよびダイス本体の少なくともいずれか一方に設けられていれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0112】
この発明は、半中空形材を押出加工により製造する際に用いられる押出ダイス等に適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
1:押出ダイス
10:押出加工装置
2:ダイス本体
22:トング部成形部
23:トング開口部成形部
3:成形孔
35a:一端閉塞部
35b:他端閉塞部
5:ホールプレート
50:軸心部
51:ウエルドチャンバ
53:ブリッジ
54:ブリッジ壁面
55:メタルホール
6:ダミー成形部
8:半中空形材
81:押出材料
82:トング部
83:トング開口部
Da,Db:閉塞部からブリッジ壁面までの距離
E:押出方向
X:軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半中空形材を成形する成形孔と、半中空形材のトング部を成形するトング部成形部と、半中空形材のトング開口部を成形するトング開口部成形部と、前記成形孔の上流側に設けられるウエルドチャンバと、上流側から前記ウエルドチャンバにかけて押出方向に沿って貫通し、かつ周方向に間隔をおいて複数設けられるメタルホールと、周方向に隣合うメタルホール間に設けられるブリッジとを備え、前記複数のメタルホールから導入された成形材料が前記ウエルドチャンバを介して前記成形孔を通過するようにした半中空形材製造用押出ダイスであって、
上流側から押出方向に沿って見た正面視状態において、前記成形孔の上流側端面における一端閉塞部から、近傍のブリッジの壁面までの距離が、前記成形孔の上流側端面における他端閉塞部から、近傍のブリッジの壁面までの距離に対し、ほぼ等しく設定されていることを特徴とする半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項2】
前記成形孔の一端閉塞部から近傍のブリッジ壁面までの距離を「Da」、他端閉塞部から近傍のブリッジ壁面までの距離を「Db」としたとき、Db/Daが0.9〜1.1に設定される請求項1に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項3】
正面視状態において、前記成形孔は非線対称の形状に形成されている請求項1または2に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項4】
正面視状態において、前記成形孔の一端閉塞部から前記ダイス本体の軸心までの距離が、前記成形孔の他端閉塞部から前記ダイス本体の軸心までの距離に対し、ほぼ等しく設定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項5】
ダイス本体と、その上流側に設けられるホールプレートとを別体に備え、
前記成形孔と、前記トング部成形部と、前記トング開口部成形部とが前記ダイス本体に設けられるとともに、
前記ウエルドチャンバと、前記メタルホールと、前記ブリッジとが前記ホールプレートに設けられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項6】
前記ホールプレートにおける前記ウエルドチャンバ内に、前記ダイス本体の前記トング部成形部の上流側に対応して、ダミー成形部が設けられる請求項5に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項7】
前記ダミー成形部は、前記トング部成形部に対し非固定状態となっている請求項6に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項8】
前記ホールプレートにおける前記複数のメタルホールによって囲まれた部分が、軸心部として構成され、
前記軸心部の下流側端部に前記ダミー成形部が設けられる請求項6または7に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項9】
前記ダミー成形部が、前記トング部成形部に対し接触した状態に配置される請求項6〜8のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項10】
前記ダミー成形部が、前記トング部成形部に対し離間した状態に配置される請求項6〜9のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイス。
【請求項11】
押出材料を押出加工して半中空形材を製造する押出ダイスを備えた半中空形材の製造装置であって、
前記押出ダイスが、請求項1〜10のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイスによって構成されることを特徴とする半中空形材の製造装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の半中空形材製造用押出ダイスを用いて押出材料を押出加工することにより、半中空形材を製造するようにしたことを特徴とする半中空形材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12A】
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【図12B】
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【公開番号】特開2012−51012(P2012−51012A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196734(P2010−196734)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】