説明

半動的および動的用途用のゴムシール

蟻溝の形態の環状の溝に使用するための弾性シールであって、断面において、基部と、凸状の弧線によって結合される等しい長さの2つの側壁とを含む弾性シール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半動的および/または動的用途用として設計されるゴムシール要素であって、蟻溝形状の溝の形態を利用するゴムシール要素に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムまたは合成ゴム製のOリングは、各種の流体を閉じ込めるための、2つの嵌合する表面間に設けられる環状の溝内のシール装置として用いられることがよく知られている。腐食性の流体および強力な溶剤用のシール、あるいは高温用途用のシールの場合は、ゴムをフルオロエラストマーまたはパーフルオロエラストマーとすることが必要になることが多い。
【0003】
Oリングと接触する嵌合表面の一方が可動である半動的または動的用途の場合は、その動きによって、Oリングの座すなわちOリングが装着される溝内におけるOリングの移動および/または捩れが惹起される。移動および/または捩れは、Oリングを物理的に損傷する、ひいては破損する可能性があり、漏洩の原因となることがある。歴史的には、Oリングを所定位置にさらに堅固に保持するあり溝形状の断面を有する座を設計することによって、この問題に対処してきた。しかし、Oリングシールを蟻溝形状の溝の中に、シールを損傷または捩ることなく装着することは困難である可能性が高い。装着中にその座の中で損傷されまたは捩られたシールは、すぐ機能しなくなる可能性があるか、あるいは、有用な稼動寿命が実質的に短縮される場合がある。従って、蟻溝形状の座の中への装着が好適かつ容易なゴムシール要素であって、装着した場合、優れた半動的および動的シール特性を発揮するゴムシール要素を提供することは有益であると思われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、1つの実施形態によれば、環状の溝の中に装着するための弾性シールであって、断面において、長さがW4の基部を有し、かつ、等しい長さの対向する側壁を含む弾性シールに関する。各側壁は、基部の下部に位置する交差点から基部の上部の終端点に延びる線によって画成され、かつ、側壁は、95°〜125°の範囲とすることができる夾角αを有する。弧線が各終端点を結び、基部に対して凸面を形成する。
【0005】
本発明の弾性シールは、環状の溝が蟻溝の形態を有する用途に特に好適である。溝は幅がW1の入口を含む。この入口から、互いに離れていくように延びるほぼ同じ長さの2つの側壁が広がる。基部の壁面が2つの側壁を結び、それによって蟻溝の形態を形成する。
【0006】
弾性シールの基部は一般的に平坦であり、その長さW4は、蟻溝の入口の幅W1よりも小さい。各側壁の終端点間の距離W3は、環状溝の入口の幅W1より大きい。
【0007】
本発明によるゴムシール要素は蟻溝形状の座の中への装着が好適かつ容易であり、優れた半動的および動的シール特性を長い有用期間にわたって発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるシール要素の断面図である。
【図2】関連寸法の蟻溝形状の溝の輪郭に重ね合わせて示した本発明によるシール要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、動的および半動的シール用途用として有用な一般的に環状の装着容易なゴムシール要素に関する。このゴムシール要素は、蟻溝形状の溝の形態を有するシール座を利用する。「一般的に環状の」という用語は、本発明のシール要素が円形リングである必要はなく、例えば正方形または長方形のリングをも包含し得ることを意味している。本発明のシールの具体的な用途には、例えばスリットバルブドアおよびゲート弁が含まれる。
【0010】
本発明のシール要素は天然ゴムまたは合成ゴム製とすることが可能であり、一般的に環状に成形される。フルオロエラストマーおよびパーフルオロエラストマーは、腐食性または高温の環境に用いられるシール用の好ましいゴムである。パーフルオロエラストマーは、特に、高温環境、腐食性化学物質環境、および、例えば半導体製造において見られるようなプラズマの環境において特に好ましい。しかし、本発明の実践において他の天然ゴムまたは合成ゴムを使用しても、被シール流体に対するゴムの耐久性とシールの使用環境の温度とに応じて、満足の行く結果が得られるであろう。
【0011】
ここで図を参照すると、図1は本発明によるシール要素10の断面図である。このシールは、長さがW4の基部12(図2参照)と、等しい長さの対向側壁14aおよび14bとを有する。各対向側壁14aおよび14bは、基部12の下部の交差点P1から終端点PaおよびPbにそれぞれ延びる線によって画成される。側壁14aおよび14bは、95°〜125°の範囲とすることができる夾角αを有する。終端点PaおよびPbは、弧線16によって結合され、この弧線16は図示のように凸面を画成する。
【0012】
本発明の弾性シール要素10は、蟻溝の形態の環状溝内において使用するように設計される。図2は、関連するまたは対応する寸法の蟻溝形状の溝の輪郭に重ね合わせた状態の本発明によるシール要素10を示す。当業者は、本発明のシール要素10の全体的な大きさが、シールを装着する蟻溝の大きさおよび形状によって決定されることを容易に認めるであろう。
【0013】
本発明が想定する蟻溝の形態は、幅がW1の入口を有する。2つの側壁18aおよび18bがこの入口から広がっており、図示のように互いに離れていくように延びている。一般的に平坦な基部20が各側壁18aおよび18bを結び、それによって蟻溝の形態を形成する。
【0014】
図1および図2から分かるように、弾性シール10の基部12は一般的に平坦であり、基部と側壁14aおよび14bとの交差点または接続部を画定する角部は丸められている。任意の好適な半径「r」を用いることができる。
【0015】
図2から分かるように、基部の長さW4は蟻溝の幅W1よりも小さい。さらに、各側壁の終端点PaおよびPb間の幅W3は蟻溝の入口の幅W1よりも大きい。本発明の好ましい実施形態においては、W4の長さの寸法がW1×(0.55〜0.75)の値に等しく、W3の長さの寸法がW1×(1.12〜1.15)の値に等しい。実際には、そして最良のシール性能のためには、シール10の高さH2の値が、蟻溝の深さをH1としてH1×(1.15〜1.35)に等しい。
【0016】
以上の説明から、本発明は、蟻溝の形態の環状の溝に装着するための弾性シール要素を含むことが分かる。当業者は、本発明の上記の実施形態に、本発明の広範な概念から離れることなく変更を加え得ることを認めるであろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲とその考え方とに属するあらゆる変更を含むことが意図されていることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の溝の中に装着するための弾性シールであって、断面において、
(a)長さがW4の基部と、
(b)等しい長さの対向する側壁であり、前記基部の下部の交差点から前記基部の上部の終端点に延びる線によって画成されかつ95°〜125°の夾角αを有する側壁と、
(c)凸面を有する弧線であり、前記各終端点を結ぶ弧線と、
を含む弾性シール。
【請求項2】
前記環状の溝が、W1の幅の入口と、その入口から互いに離れていくように広がる2つの側壁と、この2つの側壁に結合され、かつそれによって蟻溝の形態を形成する基部の壁面とを含む、蟻溝の形態である請求項1に記載の弾性シール。
【請求項3】
(i)前記基部が平坦であり、かつその長さW4は、前記蟻溝の入口の幅W1よりも小さく、(ii)各側壁の終端点間の距離W3は、前記蟻溝の入口の幅W1より大きい、請求項2に記載の弾性シール。
【請求項4】
W4の長さがW1×(0.55〜0.75)の値に等しく、W3の長さがW1×(1.12〜1.15)の値に等しい、請求項3に記載の弾性シール。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−525603(P2011−525603A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516490(P2011−516490)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/048106
【国際公開番号】WO2010/008787
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】