半固形物吐出器
【課題】味噌や酒粕等の半固形物の必要量をバラツキなく容器内に充填した後、充填した半固形物を押圧することにより筒体外に小断面の紐状に吐出することのできる半固形物吐出器を提供する。
【解決手段】平坦部に密着させて閉塞することができる周縁を備えた充填口3を一方の端に形成した筒体1と、該筒体1の内周に摺動嵌合する押し板5と、該押し板5を一体的に保持し前記筒体1の軸方向に移動する押し軸と、充填口3を閉塞した後前記押し板5に押圧された半固形物を小断面の紐状に形成して筒体1外へ吐出させる前記筒体1の円周になくとも1個以上形成された吐出口2とで半固形物吐出器を構成している。
【解決手段】平坦部に密着させて閉塞することができる周縁を備えた充填口3を一方の端に形成した筒体1と、該筒体1の内周に摺動嵌合する押し板5と、該押し板5を一体的に保持し前記筒体1の軸方向に移動する押し軸と、充填口3を閉塞した後前記押し板5に押圧された半固形物を小断面の紐状に形成して筒体1外へ吐出させる前記筒体1の円周になくとも1個以上形成された吐出口2とで半固形物吐出器を構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味噌や酒粕等の湯に溶けやすい半固形物(以下半固形物と称する)を湯中に溶かして調理する際に、半固形物を必要量だけ半固形物容器から計量して取り出し、湯中に溶けやすい形態にして吐出する調理具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、味噌が収納された容器から使う分量だけ掬い出して湯中に溶かす調理具として、柄の先に椀形の器を設けたお玉があった。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、円形の枠の下部に椀形の網目状の容器を設け、枠に取手兼用の円筒形の秤を設けた味噌溶かし器があった。(例えば、特許文献2参照)
【0004】
また、一方の開口部に小孔を形成した盤を設けた筒状本体に味噌を装填し、ピストンで押圧しながら所定の寸法だけ移動することにより前記の小孔から湯中に所定の量の味噌を線状に押し出す技術があった。(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】意匠登録第1300416号公報(第1頁、参考斜視図)
【特許文献2】実用新案登録第3051953号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】特開2006−026366号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、味噌を湯の中で溶かすには、お玉で味噌を味噌容器から掬い出しそのまま鍋の湯を少し入れて掬い出した味噌の小塊を菜箸で崩しながら徐々に湯で溶かすという作業を行う。
或いはお玉で掬い出した味噌の小塊を湯中に放し、お玉の裏底で小塊を潰しながら崩して溶かす作業を行う。
菜箸で味噌を溶かす作業は、細い箸先で湯の入った椀の中の味噌の小塊を探しながら崩して行うので、効率が悪く時間がかかり煩わしいという欠点があった。
また、お玉の裏底で味噌の小塊を潰しながら溶かす作業は、湯の中に放した味噌の塊をお玉の裏底で鍋底に押し付けて潰しながら崩していくが、湯の中にあるまだ溶けていない見えない味噌の小塊を探すのは容易ではなく、時間がかかり煩わしかった。
さらに、湯中に入っている他の具が邪魔となり味噌を潰しにくいので作業が煩わしいという欠点があった。
また、お玉で掬い出す味噌の量は、作業する人の勘に頼るので毎回バラツキは避けられず、味噌汁の味が濃過ぎたり薄過ぎたりするという不具合があった。
また、家庭調理用に市販されている味噌容器は一般的に方形で角部の円弧はお玉の外形の円弧より小さいので、味噌容器からお玉で味噌を取り出すと角部に付着した味噌は残って乾燥するから風味を損ねるという欠点があった。
残った角部の味噌をその都度箸或いは小さじで取り出すことができるが作業が煩わしいという欠点があった。
【0007】
特許文献2によれば、スプーン或いはお玉を使って味噌容器から必要な量の味噌の小塊を掬い上げて円形の枠の下部に設けた椀形の網目状容器に入れ、該容器を湯中に浸漬した後スプーン或いはお玉で容器内の味噌を押しながら崩して溶かしていた。
押された部分の味噌は網目状容器の底の網目から線状に押し出されると、線状の表面が湯に溶けて粘性が無くなり順次崩れて線状全体が湯に溶ける。
しかし、スプーン或いはお玉で押されなかった部分の味噌は、スプーン或いはお玉の底面で網の底部に数回押し付けられることにより崩されて溶ける部分と、押されて網目から線状に押し出されて溶ける部分があり、網目状容器を数回湯から引き上げて味噌が溶けて網目状容器内から無くなったことを確認しなければならないという煩わしさがあった。
また、必要な味噌の量を決めるには、枠に取付けた円筒形の秤で計測しながら前記容器内に必要な量の味噌を入れるので何回かに分けて前記容器に味噌を投入しなければならない。そして、必要量よりも投入し過ぎた時は、所定の量になるまで味噌容器に戻さなければならないという煩わしさがあった。
【0008】
特許文献3によれば、予め筒状本体に味噌の入った袋を装填しておくが、いろいろな種類の味噌を使いたいときは、味噌が混じらないために筒状本体から味噌の袋を取り出し付着した味噌を洗い流してから別の味噌の袋を装填するか、或いは使う味噌の種類の数だけ筒状本体を用意しなければならないという欠点があった。
また、使用後は味噌を吐出させる盤の表面及び小孔付近には味噌が付着して残り、時間が経過すると付着した味噌が乾いて硬く固まってしまうという欠点があった。
また、吐出口付近は開放されているので埃が付着して不衛生であり、また乾燥固着して風味を損ねた味噌は、時々盤周辺を洗浄して取り除かなくてはならないという欠点があった。
また、味噌の袋を筒状本体に装填するので、味噌が無くなった時に、筒状本体の奥に空になって潰れている袋を取り出すのが煩わしかった。
【0009】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、味噌や酒粕等の半固形物を必要な量だけ容易にバラツキなく筒体内に充填した後押圧して筒体の外周から小断面の紐状に吐出すれば、紐状の表面が溶け出すと粘性がなって崩れ、順次紐状の芯まで短時間で溶ける半固形物吐出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に本発明は、円周に少なくとも1個以上の吐出口を形成した筒体と、該筒体の内周に摺動嵌合する押し板と、該押し板を一体的に保持する押し軸とで半固形物吐出器を構成している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば次のような効果が得られる。
【0012】
請求項1において、調理容器内底の平坦部に密着させて閉塞することができる周縁を備えた充填口を一方の端に形成した筒体と、該筒体の内周に摺動嵌合する押し板と、該押し板を一体的に保持し前記筒体の軸方向に移動する押し軸と、前記周縁から押し板までの筒体内に半固形物を充填して前記周縁を調理容器内底の平坦部に密着させて充填口を閉塞した後押し軸を充填口側へ移動することにより前記押し板に押圧された半固形物を小断面の紐状に形成して筒体外へ吐出させる前記筒体の円周になくとも1個以上形成された吐出口とで半固形物吐出器を構成しているので、周縁から押し板までの筒体内に味噌や酒粕等の湯に溶けやすい半固形物(以下半固形物と称する)を充填し周縁を湯の入った調理容器内底の平坦部に密着させて充填口を閉塞した後、押し軸を充填口側へ移動させることにより筒体内の半固形物は押し板に押圧され吐出口から吐出される。
従って、小断面の吐出口から吐出される半固形物は小断面の紐状に形成されるので紐状の表面が溶け出すと粘性がなくなって崩れ順次紐状の芯まで短時間に溶けるので、半固形物の小塊を崩す作業や崩し残しの小塊を探しながら潰すという煩わしい作業が必要なくなるという効果が得られる。
【0013】
また、筒体に充填した半固形物を湯中に吐出した後、筒体を湯中で揺動させれば筒体の内外に付着した少量の半固形物も容易に湯中に溶けて遊離するので使用後保管するには水で軽く洗い流すだけで清浄になり格納できる。
従って、使いたい半固形物の種類が多くても本発明の1ケの半固形物吐出器があれば、水で軽く洗い流すだけで清浄になるので即座に次に選んだ半固形物を使って調理することができるという効果が得られる。
【0014】
また、本発明の筒体の外周形上は全体あるいは一部が円弧形状であって、筒体の充填口の周縁の円弧の大きさは家庭調理用に市販されている味噌容器の角部の円弧と同等以下にしているので、周縁は味噌容器の角部の円弧の全ての位置に接触できるから周縁を前記角部の円弧に接触させて押し下げれば角部に残って付着した味噌も容易に筒体内に収容することができるという利点がある。
【0015】
請求項2において、前記周縁を備えた充填口を形成した筒体は、該筒体の充填口を半固形物の塊に挿し込んで充填口の周縁から押し板までの筒体内に半固形物を充填した後筒体内に充填された半固形物を周縁位置で半固形物の塊から切り離す切り分け手段を充填口の周縁位置に設けていることで請求項1の半固形物吐出器を構成している。
従って、充填口から筒体内に充填された半固形物を切り分け手段により半固形物の塊から切り離した後に筒体を引き上げると筒体内の半固形物は半固形物の塊に引き戻されること無く筒体内に残るので、常に必要な量の半固形物をバラツキなく取り出すことができるという効果が得られる。
【0016】
請求項3において、前記周縁を備えた充填口を形成した筒体は、該筒体の充填口と反対側の開口部を保持すると共に前記押し軸の軸方向移動を案内する案内穴を設けた保持部材と、該保持部材に設けられて前記押し軸の軸方向移動を停止或いは停止解除させる係止手段とを備えていることで請求項1の半固形物吐出器を構成している。
従って、充填口の周縁から押し板までの筒体内に充填される半固形物の充填量を希望する充填量になる位置まで押し板を移動させ、係止手段により押し軸の移動を係止すれば該押し軸と一体的に設けられた押し板の位置が固定するので、充填口から充填される半固形物が押し板に当接して圧力を加えたとしても押し板は動かされることないから必要量の半固形物をバラツキなく充填することが出来るという効果が得られる。
また、半固形物の充填量は可変であるが、押し板を繰り返し必要な充填量の位置に移動して係止手段にて押し軸の移動を係止すれば、充填口の周縁から押し板までの筒体内の容積は常に同じになるので、繰り返し充填作業を行った時に作業する人が変わっても同じ量の半固形物をバラツキなく充填することが出来るという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態における正面図及び矢視図。
【図2】第1の実施の形態における斜視図及び矢視図。
【図3】第1の実施の形態における使用例。
【図4】第2の実施の形態における斜視図。
【図5】第3の実施の形態における斜視図。
【図6】第4の実施の形態における斜視図。
【図7】第1の実施の形態における吐出口の他の形状図。
【図8】第1の実施の形態における筒体の他の形状図。
【図9】第5の実施の形態における正面図及び断面図。
【図10】第6の実施の形態における正面図及び矢視図。
【図11】第7の実施の形態における正面図。
【図12】第7の実施の形態における側面図。
【図13】第8の実施の形態における係止手段の他の形態図。
【図14】第8の実施の形態における付勢手段の他の形態図。
【図15】第9の実施の形態における正面図。
【図16】第10の実施の形態における正面図及び断面図。
【図17】市販の味噌容器の味噌塊に筒体を挿し込む図。
【図18】市販の味噌容器とお玉の関係図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、図1に示すように平坦部に密着させて閉塞できる周縁9を備えた充填口3を筒体1の一方の端に形成し、該筒体1の円周に形成された吐出口2、吐出口2aの一方或いは両方と、筒体1の内周に摺動嵌合して充填口3から充填される半固形物を滞留させ或いは充填された半固形物を押圧する押し板5と、押し板5を一体的に保持して押し板5と共に筒体1の軸方向に移動、或いは移動停止する押し軸6とで実施の主たる形態を構成している。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
説明では理解を早めるために半固形物を代表して味噌を取り上げている。
【実施例1】
【0019】
図1における本発明の第1の実施の形態において、筒体1の円周には吐出口2が形成さ
れ、筒体1の一方の開口部は味噌を充填する周縁9を備えた充填口3であり該周縁9には切り欠き状の吐出口2aが設けられることもある。
吐出口2、吐出口2aはいずれか一方或いは両方設けても良い。
筒体1の他方の開口部は保持部材7で保持されている。
筒体1の筒内には筒体1の内側形状と同じで筒体1の内周に摺動嵌合する押し板5が設けられている。
【0020】
押し板5を一体的に保持する押し軸6は、保持部材7の案内穴8にガイドされているので押し板5と共に筒体1の軸方向に移動することができる。
【0021】
筒体1内周の対向する位置には長手方向にガイド片11を筒体1と一体的に設け、押し板5の外周には案内溝10を形成し、ガイド片11と案内溝10を摺動可能に係合してるので、押し板5は長手方向に移動できるが回転方向には移動できない。
【0022】
図2は図1の保持部材7周辺部を表している。
押し軸6の外周には軸方向に等間隔で溝12が複数形成されている。保持部材7にはガイド溝13、13が設けられ、ガイド溝13、13に案内されてスライドするストッパー14の中央部付近には2段スリット15が形成され、押し軸6が2段スリット15に挿通している。
2段スリット15はスリット幅が2段になっており、幅の広いスリット15aが押し軸6の位置にある時は押し軸6は自由に軸方向に移動でき、幅の狭いスリット15bが押し軸6の位置にある時はスリットが溝12に入り込み、押し軸6の軸方向の移動が拘束されることで係止手段を構成している。
【0023】
ここで必要量の味噌を筒体1に充填し、吐出口2、吐出口2aのいずれか一方或いは両方から味噌を吐出する作業の手順を説明する。
図2において、最初にストッパー14をスライドさせ幅の広いスリット15aの位置を押し軸6側にして、押し軸6が軸方向に自由に移動できるようにする。
次に、図1に示すように押し軸6を引き上げ、押し板5を充填口3から筒体1の上方へ引き上げて周縁9から押し板5までの筒体1内の容積を必要とする味噌の容積になるよう押し板5の位置を決めたら、ストッパー14を反対方向にスライドさせ、幅の狭いスリット15bを溝12に係合させて押し軸6の軸方向の移動を停止させる。
【0024】
次に、筒体1を充填口3から味噌容器に収容されている味噌塊の中に挿し込み、周縁9から押し板5までの筒体1の中に味噌を充満させる。
充填口3を挿し込むと味噌で押された筒体1内の空気は吐出口2或いは筒体1と押し板5の摺動嵌合部の隙間から逃げるので味噌を押し板5の面まで十分に充満させることができる。
味噌を充填した後さらに筒体1を味噌塊の中に挿し込むと味噌が押し板5を押し上げる力が作用するが、押し板5を一体的に保持した押し軸6は軸方向の移動を停止されているので、押し板5は押し上げられることはない。
そして充填口3から味噌が更に押し込まれると筒体1の中にある味噌が押し込まれた分だけ押圧されて吐出口2から吐出されて味噌塊に戻る。
従って常に設定された味噌の量を安定して充填することができる。
筒体1内に味噌を充満させたら、ストッパー14を幅の広いスリット15a側にスライドさせると押し軸6の係止が解除されるので、押し軸6が自由に軸方向に移動できるようになる。
【0025】
次に、図3に示すように、鍋21に入れた湯の中に充填口3を下にして筒体1を沈めて行き、鍋底の平坦部に充填口3の周縁9を密着させて充填口3を閉塞した後押し軸6を鍋底に向けて移動させると、充填された味噌は押し板5に押圧されて吐出口2、吐出口2aのいずれか一方或いは両方からそれぞれの吐出口断面の紐状の味噌Rに形成されて連続的に吐出される。
充填口3の周縁9に吐出口2aが形成されている場合は充填口3が閉塞された状態であっても充填された味噌は押し板5に押圧されると吐出口2aから吐出される。
従って、吐出口2、吐出口2aは小断面に形成しておけば小断面の紐状に吐出された味噌Rは、湯の中で表面が溶け出すと粘性が無くなって崩れ順次紐状の芯まで短時間に溶けるので、味噌の小塊を崩す押しつぶし作業或いは崩し残しの小塊を探しながらさらに潰して溶かすという煩わしい作業が不要になるという利点がある。
【0026】
吐出口2、吐出口2aは少なくとも1個あれば小断面の紐状に吐出された味噌は短時間に溶けるが、吐出時間を短くするには吐出口2、吐出口2aの数を多く設けた方が良い。
吐出時間が短くなれば充填された味噌の全量が湯に溶ける時間も短縮される。
【0027】
充填した味噌を吐出完了したとき、筒体1の内外面及び押し板5には味噌が僅かに付着して残るが、筒体1が湯の中にいる間に付着した味噌は表面が溶け出すから粘性が無くなり溶けながら遊離する。
筒体1にまだ付着した味噌があったとしても、鍋21の中全体の味を均一にするため筒体1で湯を攪拌すれば味が均一になると共に、付着している味噌は湯の流れが当たるから溶かされて筒体1から遊離する。
また、押し板5の下面である味噌の押圧面に味噌が付着して残ったとしても、充填口3の周縁9を鍋21の底の平坦部に密着した状態で押し軸6を最下端から数回上下すれば、鍋底と押し板5の間に湯の流れが生じるから付着した味噌は粘性がなくなり溶けて遊離する。
【0028】
図17は家庭調理用に市販されている方形の味噌容器36に収容されている味噌塊の中に筒体1を挿し込む図である。
味噌容器36は4方の角部37が円弧状になっているが、図18に示すように味噌容器36からお玉で味噌を取り出すと、お玉の椀部38の周縁の円弧は角部37の円弧より大きいため角部37に付着した味噌は掬うことができずに残る。
しかし、本発明の筒体1の外周形上は全体あるいは一部が円弧形状であって、筒体1の充填口3の周縁9の円弧は味噌容器36の角部37の円弧と同等以下のサイズにしているので、図17に示すように角部37の円弧のどの位置でも周縁9を接触できるから周縁9を角部37の円弧に接触させて押し下げれば角部に残って付着した味噌を容易に筒体1内に収容することができるという利点がある。
【0029】
また、筒体1は断面形状が円筒だけでなく、図8−(1)に示すように円周の一部が平坦部に形成されたもの、或いは図8−(2)に示すように円周の対向する位置に平坦部を形成したもの、或いは図8−(3)に示すように角が円弧状の方形に形成されたとしても前記と同様の作用効果を得ることができる。
平坦部があると、例えば味噌容器内の味噌が少なくなった時に味噌容器内の内壁の平坦部に終焉9の平坦部を接触させて押し下げれば平坦部に残って付着した味噌を容易に筒体1内に収容することができるという利点がある。
筒体1の断面形状が変われば押し板5の外形状もこれに合わせた形状にすることになる。
【0030】
なお、吐出口2は図7に示すように細いスリット状に形成した吐出口2bとしても良い。
充填された味噌は押し板5で押圧されると薄い紐状となって押し出されるので、前述の紐状の味噌Rと同様に湯のなかで表面が溶け出すと粘性が無くなって崩れ順次紐状の芯まで短時間に溶けるという効果が得られる。
【実施例2】
【0031】
次に本発明の異なる実施の形態について説明する。
なお、これらの本発明の異なる実施の形態の説明に当たって、前記本発明の実施例1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】
図4における本発明の第2の実施の形態において、前記本発明の第1の実施の形態と主に異なる点は、前記筒体1の充填口3の周縁9の対向する位置に丸棒状の細い切り分け片4の両端をそれぞれ固定して切り分け手段を設けたことで半固形物吐出器を構成している。
図4は本発明の半固形物吐出器の底面の斜視図であり、図4−(1)は切り分け片4の両端が筒体1に一体的に設けられたガイド片11に固定されている状態を示し、図4−(2)はガイド片11を設けない場合で切り分け片4の両端を周縁9に直接固定した状態を示している。
【0033】
筒体1を充填口3から味噌容器の味噌塊に挿し込んで味噌を充填した後筒体1を引き上げると、味噌の粘性により充填された味噌の一部が味噌塊に引っ張られて筒体1の中から引き戻され設定した必要な充填量が得られないことがある。
そこで、図4に示すように切り分け片4を充填口3の周縁9に筒体1の軸方向に直角に設けることにより、筒体1を充填口3から味噌塊に挿し込んで筒体1内に味噌を充満させた後筒体1を矢印P−P方向に回転させれば、切り分け片4は筒体1と共に回転して周縁9の位置で味噌を切り分けるので、筒体1を引き上げた時に充填された味噌は味噌塊に引っ張られることなく引き上げられるから、繰り返し同じ必要量の味噌が取り出しできるという効果が得られる。
【実施例3】
【0034】
図5における本発明の第3の実施の形態において、前記本発明の第2の実施の形態と主に異なる点は、筒体1の充填口3の周縁9の対向する位置に平板状の細い切り分け片4aの両端をそれぞれ固着して切り分け手段を設けたことで半固形物吐出器を構成している。
従って、筒体1を充填口3から味噌容器の味噌塊に挿し込んで筒体1内に味噌を充填した後筒体1を矢印P−P方向に回転させれば、切り分け片4aは筒体1と共に回転して周縁9の位置で味噌を切り分けるので、筒体1を引き上げた時に充填された味噌は味噌塊に引っ張られることなく引き上げられるから、前記本発明の第2の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【実施例4】
【0035】
図6における本発明の第4の実施の形態において、前記本発明の第3の実施の形態と主に異なる点は、十字状に形成された平板状の細い切り分け片4bの4箇所の端部が充填口3の周縁9の4箇所に固着して切り分け手段を設けたことで半固形物吐出器を構成している。
従って、充填口3を味噌容器の味噌塊に挿し込み、味噌を充填した後筒体1を矢印P−P方向に回転させると切り分け片4bは筒体1と共に回転して周縁9の位置で味噌を切り分けできる。
従って、前記本発明の第2の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0036】
本発明の第2或いは第3の実施の形態では、切り分け片4或いは切り分け片4aは筒体1を180度回転して味噌を切り分け完了できるが、第4の実施の形態においては切り分け片4bは十字状に形成されているので筒体1を90度回転させれば味噌を切り分け完了できる。
筒体1を回す角度が少なければ切り分け作業も楽になるという利点がある。
【実施例5】
【0037】
図9における本発明の第5の実施の形態において、前記本発明の第1の実施の形態と主に異なる点は、前記本発明の第1の実施の形態における保持部材7に代わり筒体1の充填口3と反対側の開口部に中空部材の一方を嵌入固定して筒体1を保持すると共に他方側に押し軸6を案内する案内穴8aを形成した保持部材7aで半固形物吐出器を構成している。
保持部材7aにはストッパー14のガイド穴25が軸方向と直角に貫通しており、ストッパー14がガイド穴25の中をスライドできるようにしている。
前記本発明の第1の実施の形態と同様に、ストッパー14の2段スリット15に押し軸6が挿通しており、幅の広いスリット15a側が押し軸6の位置にある時は、押し軸6は自由に軸方向に移動できるが、幅の狭いスリット15b側が押し軸6の位置にくれば幅の狭いスリット15bが溝12に係合し、押し軸6の軸方向の移動が拘束されることで押し軸6の係止手段を構成しているので、前記本発明の第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0038】
また、図9においては筒体1と一体的に設けられたガイド片11の充填口3側の端部に切り分け片4が固定されており、味噌を充填した後筒体1を回転させて切り分け作業を行う時、押し軸6の上端部の握り16か或いは保持部材7aのどちらか一方を持って回せば筒体1が回転すると共に切り分け片4も回転するので、周縁9の位置で味噌を切り分けることができる。
即ち、筒体1は保持部材7aに嵌合固定されているので、保持部材7aを手で持って回す時は筒体1が回転するので、切り分け片4も回転して味噌の切り分けが行われる。
また、押し軸6に一体的に固定された押し板5の案内溝10がガイド片11と係合しているので、押し軸6の上端部に固定された握り16を持って押し軸6を回すと押し板5が回転し、筒体1も回転できるので、切り分け片4も回転して味噌の切り分けが行われる。
【0039】
押し板5の下面に形成されている溝22は、味噌を吐出する際押し板5の下面を鍋21の底面に密着させる時に切り分け片4に当接しないための逃がし溝である。
【実施例6】
【0040】
図10における本発明の第6の実施の形態において、前記本発明の第2の実施の形態と主に異なる点は、周縁9の位置に軸に直角に配置された切り分け片4は両端を上方に直角に延長して腕部17とし、腕部17の延長端部を内側に直角に曲げて掛止部18を形成している。
保持部材7aの筒体1嵌入部の外周には腕部17の上部を嵌入保持する保持溝19を形成し、さらに掛止部18を嵌入保持する保持穴20を形成している。
腕部17の上部及び掛止部18は嵌入された後保持部材7aに筒体1を嵌入すると腕部17の上部は保持溝19と保持穴20から抜け出さないよう抑えられるので切り分け片4は周縁9の位置に固定されて切り分け手段を構成している。
押し板5の外周には案内溝10を形成し、腕部17と案内溝10は摺動可能に係合してるので、押し板5は軸方向に移動できるが回転移動はできない。
従って、保持部材7aを手で持って回すと保持溝19に保持された腕部17も回転するので、切り分け片4も共に回転する。
また、押し軸6を回すと、押し軸6と一体的に固定された押し板5の案内溝10に係合している腕部17を回転させるので切り分け片4も共に回転する。
従って、本発明の第6の実施の形態における切り分け手段においても前記本発明の第2の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【実施例7】
【0041】
図11における本発明の第7の実施の形態において、前記本発明の第5の実施の形態と主に異なる点は、押し軸6の外径にノコ歯状の係止溝26が形成されている。
押し軸6に直角の方向にスライドするストッパー27には係止溝26と噛み合う係止爪28が形成され、ストッパー27はばね29により付勢されるので係止爪28が係止溝26の溝に入り込んで係合するから、押し軸6の軸方向移動を係止することで押し軸6の係止手段を構成している。
【0042】
味噌の充填量を設定する時は、最初にばね29を圧縮する方向にストッパー27を押して係止爪28と係止溝26の噛み合いを外して押し軸6を自由に移動できるようにする。
次に必要な充填量になる位置に押し板5を上方へ移動させた後ストッパー27の押し力を解放すればばね29の付勢力により係止爪28を再び係止溝26に係合させて押し軸6を移動停止させることにより押し板5も停止する。
次に筒体1を充填口3から味噌塊の中に挿し込めば、周縁9から押し板5までの筒体1の中に味噌を充填できる。
図11に示すように、係止溝26の溝面のうち押し板5側の溝面は押し軸6の軸に直角であり他方の溝面は傾斜面となっており、係止爪28の爪先の角度は係止溝26のそれぞれの溝面に面接触するように合わせてある。
従って、筒体1に味噌が充満してから更に充填しようとすると、味噌は押し板5と共に押し軸6を押し上げるが、係止溝26の押し軸6及び係止爪28の直角な面に押し力が作用するので外れることがないから押し板5は設定した位置を動かされることはない。
そして充填口3から更に押し込まれた分の味噌は吐出口2から吐出されて味噌塊に戻る。
従って常に設定された味噌の量をバラツキなく充填することができる。
【0043】
充填された味噌を鍋21の中で吐出する時は、充填口3の周縁9を鍋底の平坦部に密着して充填口3を閉塞した後押し軸6を押して押し板5で味噌を押圧するが、押し軸6の押し力は係止溝26及び係止爪28の傾斜面に作用するので係止爪28はばね29の付勢力に打ち勝って押し戻され係止爪28が係止溝26の溝から外れるので、ストッパー27を押して係止爪28と係止溝26の係止を外さなくても押し軸6は自由に下方へ移動させることができる。
【0044】
また、図12は図11の側面図であるが、筒体1の長手方向にスリット30を形成し、スリット30の横に目盛り線23と目盛数字24が刻印されている。
この目盛り線に筒体1の中を移動する押し板5の外周の稜線を合わせれば充填したい味噌の量にセットすることができる。
味噌の量を表す目盛数字は重量或いは容積で表してもよいが、図12においては味噌汁椀の数(例えば、1杯、2杯のように)であらわしている。
【実施例8】
【0045】
図13における本発明の第8の実施の形態において、前記本発明の第7の実施の形態と主に異なる点は、前記本発明の第7の実施の形態のストッパー27に代わり、押し軸6に直角にスライドする平板材で形成されたストッパー27aを設けている。
ストッパー27aの中央部付近には押し軸6の挿通穴31を成形し挿通穴31の片側には押し軸6の係止溝26に係合する係止爪28aを形成して押し軸6の係止手段を構成している。
ストッパー27aはばね29aにより付勢され係止爪28aが係止溝26の溝に入り込んで係合し、押し軸6の軸方向移動を係止している。
係止爪28aは前記本発明の第6の実施の形態と同様に、係止溝26の溝面のうち押し板5側の溝面は押し軸6の軸に直角であり他方の溝面は傾斜面であって、係止爪28aの爪先の角度は係止溝26のそれぞれの溝面に面接触するように合わせてある。
従って、前記本発明の第7の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0046】
図14に示すのは、前記本発明の第7の実施の形態における保持部材7aの内部に設けたばね29aに代わって保持部材7aの外部にばね29bを設けているので、前記本発明の第7の実施の形態と同様にストッパー27aを付勢している。
従って、前記本発明の第7の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【実施例9】
【0047】
図15における本発明の第9の実施の形態において、前記本発明の第7の実施の形態と主に異なる点は、把持部材7aに設けられたピン32に枢支されて回動するレバー33の押し軸6側の先端に係止爪34が形成さればね35によりレバー33が付勢されるので、係止爪34が押し軸6に形成されたノコ歯状の係止溝26に係合することで押し軸6の係止手段を構成している。
必要な味噌の充填量に押し板5の位置を決める時は、レバー33の端部を上方に押し回動させて係止爪34を係止溝26から外し、必要な充填量になる位置まで押し板5を上方へ移動させた後レバー33を離してばね35の付勢力で係止爪34を係止溝26に係合させれば、押し軸6が移動を係止され押し板5も固定できる。
従って、前記本発明の第7の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【実施例10】
【0048】
図16における本発明の第10の実施の形態において、前記本発明の第5の実施の形態と主に異なる点は、外周に係止溝12を設けていない押し軸6と直角方向にスライドし押し軸6が滑合する穴40を形成した押さえ板41を設けており、押さえ板41の一方には把持部材7aの外部に突出するネジ部42を形成し、ネジ部42に螺合するナット43とで押し軸6の係止手段を構成している。
ナット43を締めると押さえ板41がネジ部42側にスライドし、押し軸6を横方向に引く力が作用するので押し軸6は把持部材7aに形成された押し軸6の案内穴8bとの摩擦抵抗及び押し軸6と押さえ板41との摩擦抵抗により移動を固定され、ナット43を緩めると押し軸6は自由に移動できる。
【0049】
味噌を充填するときは、ナット43を緩めて必要な充填量になる位置まで押し板5を上方に移動させた後ナット43を締めると押し軸6は固定されるから、設定した位置から動かされることは無いので、味噌を充填するときに押し板5が味噌に押されても設定した充填量が変動することはない。
充填された味噌を押し出す時は、ナット43を緩めれば押し軸6と押さえ板41との摩擦抵抗及び押し軸6と案内穴8bとの摩擦抵抗が無くなり押し軸6は自由に移動できるので押し軸6を充填口3側へ押すことができる。
従って、前記本発明の第5の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0050】
本発明の実施の形態のそれぞれの説明において、半固形物を代表して味噌を取り上げているが、味噌に限らず酒粕や小麦粉、魚介類の練り物或いは乳製品や食品以外の練り物等の半固形物を小断面に連続的に吐出する場合にも適用できる。
味噌、酒粕は押し出して溶かすが、押し出して紐状のまま麺のように成形する目的にも適用出来る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、味噌や酒粕等の湯に溶けやすい半固形物を湯中に溶かして調理する際に、半固形物を必要量だけ半固形物容器から計量して充填し、湯中に溶けやすい形態にして吐出する調理具を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0052】
1:筒体 2、2a、2b:吐出口
3:充填口 4、4a、4b:切り分け片
5:押し板 6:押し軸
7、7a:保持部材 8、8a、8b:案内穴
9:周縁 10:案内溝
11:ガイド片 12:溝
13:ガイド溝 14:ストッパー
15:2段スリット 15a:幅の広いスリット
15b:幅の狭いスリット 16:握り
17:腕部 18:掛止部
19:保持溝 20:保持穴
21:鍋 22:溝
23:目盛り線 24:目盛数字
25:ガイド穴 26:係止溝
27、27a:ストッパー 28、28a:係止爪
29、29a、29b:ばね 30:スリット
31:挿通穴 32:ピン
33:レバー 34:係止爪
35:ばね 36:味噌容器
37:角部 38:お玉の椀部
40:穴 41:押さえ板
42:ネジ部 43:ナット
R:紐状の味噌
【技術分野】
【0001】
本発明は、味噌や酒粕等の湯に溶けやすい半固形物(以下半固形物と称する)を湯中に溶かして調理する際に、半固形物を必要量だけ半固形物容器から計量して取り出し、湯中に溶けやすい形態にして吐出する調理具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、味噌が収納された容器から使う分量だけ掬い出して湯中に溶かす調理具として、柄の先に椀形の器を設けたお玉があった。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、円形の枠の下部に椀形の網目状の容器を設け、枠に取手兼用の円筒形の秤を設けた味噌溶かし器があった。(例えば、特許文献2参照)
【0004】
また、一方の開口部に小孔を形成した盤を設けた筒状本体に味噌を装填し、ピストンで押圧しながら所定の寸法だけ移動することにより前記の小孔から湯中に所定の量の味噌を線状に押し出す技術があった。(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】意匠登録第1300416号公報(第1頁、参考斜視図)
【特許文献2】実用新案登録第3051953号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】特開2006−026366号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、味噌を湯の中で溶かすには、お玉で味噌を味噌容器から掬い出しそのまま鍋の湯を少し入れて掬い出した味噌の小塊を菜箸で崩しながら徐々に湯で溶かすという作業を行う。
或いはお玉で掬い出した味噌の小塊を湯中に放し、お玉の裏底で小塊を潰しながら崩して溶かす作業を行う。
菜箸で味噌を溶かす作業は、細い箸先で湯の入った椀の中の味噌の小塊を探しながら崩して行うので、効率が悪く時間がかかり煩わしいという欠点があった。
また、お玉の裏底で味噌の小塊を潰しながら溶かす作業は、湯の中に放した味噌の塊をお玉の裏底で鍋底に押し付けて潰しながら崩していくが、湯の中にあるまだ溶けていない見えない味噌の小塊を探すのは容易ではなく、時間がかかり煩わしかった。
さらに、湯中に入っている他の具が邪魔となり味噌を潰しにくいので作業が煩わしいという欠点があった。
また、お玉で掬い出す味噌の量は、作業する人の勘に頼るので毎回バラツキは避けられず、味噌汁の味が濃過ぎたり薄過ぎたりするという不具合があった。
また、家庭調理用に市販されている味噌容器は一般的に方形で角部の円弧はお玉の外形の円弧より小さいので、味噌容器からお玉で味噌を取り出すと角部に付着した味噌は残って乾燥するから風味を損ねるという欠点があった。
残った角部の味噌をその都度箸或いは小さじで取り出すことができるが作業が煩わしいという欠点があった。
【0007】
特許文献2によれば、スプーン或いはお玉を使って味噌容器から必要な量の味噌の小塊を掬い上げて円形の枠の下部に設けた椀形の網目状容器に入れ、該容器を湯中に浸漬した後スプーン或いはお玉で容器内の味噌を押しながら崩して溶かしていた。
押された部分の味噌は網目状容器の底の網目から線状に押し出されると、線状の表面が湯に溶けて粘性が無くなり順次崩れて線状全体が湯に溶ける。
しかし、スプーン或いはお玉で押されなかった部分の味噌は、スプーン或いはお玉の底面で網の底部に数回押し付けられることにより崩されて溶ける部分と、押されて網目から線状に押し出されて溶ける部分があり、網目状容器を数回湯から引き上げて味噌が溶けて網目状容器内から無くなったことを確認しなければならないという煩わしさがあった。
また、必要な味噌の量を決めるには、枠に取付けた円筒形の秤で計測しながら前記容器内に必要な量の味噌を入れるので何回かに分けて前記容器に味噌を投入しなければならない。そして、必要量よりも投入し過ぎた時は、所定の量になるまで味噌容器に戻さなければならないという煩わしさがあった。
【0008】
特許文献3によれば、予め筒状本体に味噌の入った袋を装填しておくが、いろいろな種類の味噌を使いたいときは、味噌が混じらないために筒状本体から味噌の袋を取り出し付着した味噌を洗い流してから別の味噌の袋を装填するか、或いは使う味噌の種類の数だけ筒状本体を用意しなければならないという欠点があった。
また、使用後は味噌を吐出させる盤の表面及び小孔付近には味噌が付着して残り、時間が経過すると付着した味噌が乾いて硬く固まってしまうという欠点があった。
また、吐出口付近は開放されているので埃が付着して不衛生であり、また乾燥固着して風味を損ねた味噌は、時々盤周辺を洗浄して取り除かなくてはならないという欠点があった。
また、味噌の袋を筒状本体に装填するので、味噌が無くなった時に、筒状本体の奥に空になって潰れている袋を取り出すのが煩わしかった。
【0009】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、味噌や酒粕等の半固形物を必要な量だけ容易にバラツキなく筒体内に充填した後押圧して筒体の外周から小断面の紐状に吐出すれば、紐状の表面が溶け出すと粘性がなって崩れ、順次紐状の芯まで短時間で溶ける半固形物吐出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に本発明は、円周に少なくとも1個以上の吐出口を形成した筒体と、該筒体の内周に摺動嵌合する押し板と、該押し板を一体的に保持する押し軸とで半固形物吐出器を構成している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば次のような効果が得られる。
【0012】
請求項1において、調理容器内底の平坦部に密着させて閉塞することができる周縁を備えた充填口を一方の端に形成した筒体と、該筒体の内周に摺動嵌合する押し板と、該押し板を一体的に保持し前記筒体の軸方向に移動する押し軸と、前記周縁から押し板までの筒体内に半固形物を充填して前記周縁を調理容器内底の平坦部に密着させて充填口を閉塞した後押し軸を充填口側へ移動することにより前記押し板に押圧された半固形物を小断面の紐状に形成して筒体外へ吐出させる前記筒体の円周になくとも1個以上形成された吐出口とで半固形物吐出器を構成しているので、周縁から押し板までの筒体内に味噌や酒粕等の湯に溶けやすい半固形物(以下半固形物と称する)を充填し周縁を湯の入った調理容器内底の平坦部に密着させて充填口を閉塞した後、押し軸を充填口側へ移動させることにより筒体内の半固形物は押し板に押圧され吐出口から吐出される。
従って、小断面の吐出口から吐出される半固形物は小断面の紐状に形成されるので紐状の表面が溶け出すと粘性がなくなって崩れ順次紐状の芯まで短時間に溶けるので、半固形物の小塊を崩す作業や崩し残しの小塊を探しながら潰すという煩わしい作業が必要なくなるという効果が得られる。
【0013】
また、筒体に充填した半固形物を湯中に吐出した後、筒体を湯中で揺動させれば筒体の内外に付着した少量の半固形物も容易に湯中に溶けて遊離するので使用後保管するには水で軽く洗い流すだけで清浄になり格納できる。
従って、使いたい半固形物の種類が多くても本発明の1ケの半固形物吐出器があれば、水で軽く洗い流すだけで清浄になるので即座に次に選んだ半固形物を使って調理することができるという効果が得られる。
【0014】
また、本発明の筒体の外周形上は全体あるいは一部が円弧形状であって、筒体の充填口の周縁の円弧の大きさは家庭調理用に市販されている味噌容器の角部の円弧と同等以下にしているので、周縁は味噌容器の角部の円弧の全ての位置に接触できるから周縁を前記角部の円弧に接触させて押し下げれば角部に残って付着した味噌も容易に筒体内に収容することができるという利点がある。
【0015】
請求項2において、前記周縁を備えた充填口を形成した筒体は、該筒体の充填口を半固形物の塊に挿し込んで充填口の周縁から押し板までの筒体内に半固形物を充填した後筒体内に充填された半固形物を周縁位置で半固形物の塊から切り離す切り分け手段を充填口の周縁位置に設けていることで請求項1の半固形物吐出器を構成している。
従って、充填口から筒体内に充填された半固形物を切り分け手段により半固形物の塊から切り離した後に筒体を引き上げると筒体内の半固形物は半固形物の塊に引き戻されること無く筒体内に残るので、常に必要な量の半固形物をバラツキなく取り出すことができるという効果が得られる。
【0016】
請求項3において、前記周縁を備えた充填口を形成した筒体は、該筒体の充填口と反対側の開口部を保持すると共に前記押し軸の軸方向移動を案内する案内穴を設けた保持部材と、該保持部材に設けられて前記押し軸の軸方向移動を停止或いは停止解除させる係止手段とを備えていることで請求項1の半固形物吐出器を構成している。
従って、充填口の周縁から押し板までの筒体内に充填される半固形物の充填量を希望する充填量になる位置まで押し板を移動させ、係止手段により押し軸の移動を係止すれば該押し軸と一体的に設けられた押し板の位置が固定するので、充填口から充填される半固形物が押し板に当接して圧力を加えたとしても押し板は動かされることないから必要量の半固形物をバラツキなく充填することが出来るという効果が得られる。
また、半固形物の充填量は可変であるが、押し板を繰り返し必要な充填量の位置に移動して係止手段にて押し軸の移動を係止すれば、充填口の周縁から押し板までの筒体内の容積は常に同じになるので、繰り返し充填作業を行った時に作業する人が変わっても同じ量の半固形物をバラツキなく充填することが出来るという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態における正面図及び矢視図。
【図2】第1の実施の形態における斜視図及び矢視図。
【図3】第1の実施の形態における使用例。
【図4】第2の実施の形態における斜視図。
【図5】第3の実施の形態における斜視図。
【図6】第4の実施の形態における斜視図。
【図7】第1の実施の形態における吐出口の他の形状図。
【図8】第1の実施の形態における筒体の他の形状図。
【図9】第5の実施の形態における正面図及び断面図。
【図10】第6の実施の形態における正面図及び矢視図。
【図11】第7の実施の形態における正面図。
【図12】第7の実施の形態における側面図。
【図13】第8の実施の形態における係止手段の他の形態図。
【図14】第8の実施の形態における付勢手段の他の形態図。
【図15】第9の実施の形態における正面図。
【図16】第10の実施の形態における正面図及び断面図。
【図17】市販の味噌容器の味噌塊に筒体を挿し込む図。
【図18】市販の味噌容器とお玉の関係図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、図1に示すように平坦部に密着させて閉塞できる周縁9を備えた充填口3を筒体1の一方の端に形成し、該筒体1の円周に形成された吐出口2、吐出口2aの一方或いは両方と、筒体1の内周に摺動嵌合して充填口3から充填される半固形物を滞留させ或いは充填された半固形物を押圧する押し板5と、押し板5を一体的に保持して押し板5と共に筒体1の軸方向に移動、或いは移動停止する押し軸6とで実施の主たる形態を構成している。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
説明では理解を早めるために半固形物を代表して味噌を取り上げている。
【実施例1】
【0019】
図1における本発明の第1の実施の形態において、筒体1の円周には吐出口2が形成さ
れ、筒体1の一方の開口部は味噌を充填する周縁9を備えた充填口3であり該周縁9には切り欠き状の吐出口2aが設けられることもある。
吐出口2、吐出口2aはいずれか一方或いは両方設けても良い。
筒体1の他方の開口部は保持部材7で保持されている。
筒体1の筒内には筒体1の内側形状と同じで筒体1の内周に摺動嵌合する押し板5が設けられている。
【0020】
押し板5を一体的に保持する押し軸6は、保持部材7の案内穴8にガイドされているので押し板5と共に筒体1の軸方向に移動することができる。
【0021】
筒体1内周の対向する位置には長手方向にガイド片11を筒体1と一体的に設け、押し板5の外周には案内溝10を形成し、ガイド片11と案内溝10を摺動可能に係合してるので、押し板5は長手方向に移動できるが回転方向には移動できない。
【0022】
図2は図1の保持部材7周辺部を表している。
押し軸6の外周には軸方向に等間隔で溝12が複数形成されている。保持部材7にはガイド溝13、13が設けられ、ガイド溝13、13に案内されてスライドするストッパー14の中央部付近には2段スリット15が形成され、押し軸6が2段スリット15に挿通している。
2段スリット15はスリット幅が2段になっており、幅の広いスリット15aが押し軸6の位置にある時は押し軸6は自由に軸方向に移動でき、幅の狭いスリット15bが押し軸6の位置にある時はスリットが溝12に入り込み、押し軸6の軸方向の移動が拘束されることで係止手段を構成している。
【0023】
ここで必要量の味噌を筒体1に充填し、吐出口2、吐出口2aのいずれか一方或いは両方から味噌を吐出する作業の手順を説明する。
図2において、最初にストッパー14をスライドさせ幅の広いスリット15aの位置を押し軸6側にして、押し軸6が軸方向に自由に移動できるようにする。
次に、図1に示すように押し軸6を引き上げ、押し板5を充填口3から筒体1の上方へ引き上げて周縁9から押し板5までの筒体1内の容積を必要とする味噌の容積になるよう押し板5の位置を決めたら、ストッパー14を反対方向にスライドさせ、幅の狭いスリット15bを溝12に係合させて押し軸6の軸方向の移動を停止させる。
【0024】
次に、筒体1を充填口3から味噌容器に収容されている味噌塊の中に挿し込み、周縁9から押し板5までの筒体1の中に味噌を充満させる。
充填口3を挿し込むと味噌で押された筒体1内の空気は吐出口2或いは筒体1と押し板5の摺動嵌合部の隙間から逃げるので味噌を押し板5の面まで十分に充満させることができる。
味噌を充填した後さらに筒体1を味噌塊の中に挿し込むと味噌が押し板5を押し上げる力が作用するが、押し板5を一体的に保持した押し軸6は軸方向の移動を停止されているので、押し板5は押し上げられることはない。
そして充填口3から味噌が更に押し込まれると筒体1の中にある味噌が押し込まれた分だけ押圧されて吐出口2から吐出されて味噌塊に戻る。
従って常に設定された味噌の量を安定して充填することができる。
筒体1内に味噌を充満させたら、ストッパー14を幅の広いスリット15a側にスライドさせると押し軸6の係止が解除されるので、押し軸6が自由に軸方向に移動できるようになる。
【0025】
次に、図3に示すように、鍋21に入れた湯の中に充填口3を下にして筒体1を沈めて行き、鍋底の平坦部に充填口3の周縁9を密着させて充填口3を閉塞した後押し軸6を鍋底に向けて移動させると、充填された味噌は押し板5に押圧されて吐出口2、吐出口2aのいずれか一方或いは両方からそれぞれの吐出口断面の紐状の味噌Rに形成されて連続的に吐出される。
充填口3の周縁9に吐出口2aが形成されている場合は充填口3が閉塞された状態であっても充填された味噌は押し板5に押圧されると吐出口2aから吐出される。
従って、吐出口2、吐出口2aは小断面に形成しておけば小断面の紐状に吐出された味噌Rは、湯の中で表面が溶け出すと粘性が無くなって崩れ順次紐状の芯まで短時間に溶けるので、味噌の小塊を崩す押しつぶし作業或いは崩し残しの小塊を探しながらさらに潰して溶かすという煩わしい作業が不要になるという利点がある。
【0026】
吐出口2、吐出口2aは少なくとも1個あれば小断面の紐状に吐出された味噌は短時間に溶けるが、吐出時間を短くするには吐出口2、吐出口2aの数を多く設けた方が良い。
吐出時間が短くなれば充填された味噌の全量が湯に溶ける時間も短縮される。
【0027】
充填した味噌を吐出完了したとき、筒体1の内外面及び押し板5には味噌が僅かに付着して残るが、筒体1が湯の中にいる間に付着した味噌は表面が溶け出すから粘性が無くなり溶けながら遊離する。
筒体1にまだ付着した味噌があったとしても、鍋21の中全体の味を均一にするため筒体1で湯を攪拌すれば味が均一になると共に、付着している味噌は湯の流れが当たるから溶かされて筒体1から遊離する。
また、押し板5の下面である味噌の押圧面に味噌が付着して残ったとしても、充填口3の周縁9を鍋21の底の平坦部に密着した状態で押し軸6を最下端から数回上下すれば、鍋底と押し板5の間に湯の流れが生じるから付着した味噌は粘性がなくなり溶けて遊離する。
【0028】
図17は家庭調理用に市販されている方形の味噌容器36に収容されている味噌塊の中に筒体1を挿し込む図である。
味噌容器36は4方の角部37が円弧状になっているが、図18に示すように味噌容器36からお玉で味噌を取り出すと、お玉の椀部38の周縁の円弧は角部37の円弧より大きいため角部37に付着した味噌は掬うことができずに残る。
しかし、本発明の筒体1の外周形上は全体あるいは一部が円弧形状であって、筒体1の充填口3の周縁9の円弧は味噌容器36の角部37の円弧と同等以下のサイズにしているので、図17に示すように角部37の円弧のどの位置でも周縁9を接触できるから周縁9を角部37の円弧に接触させて押し下げれば角部に残って付着した味噌を容易に筒体1内に収容することができるという利点がある。
【0029】
また、筒体1は断面形状が円筒だけでなく、図8−(1)に示すように円周の一部が平坦部に形成されたもの、或いは図8−(2)に示すように円周の対向する位置に平坦部を形成したもの、或いは図8−(3)に示すように角が円弧状の方形に形成されたとしても前記と同様の作用効果を得ることができる。
平坦部があると、例えば味噌容器内の味噌が少なくなった時に味噌容器内の内壁の平坦部に終焉9の平坦部を接触させて押し下げれば平坦部に残って付着した味噌を容易に筒体1内に収容することができるという利点がある。
筒体1の断面形状が変われば押し板5の外形状もこれに合わせた形状にすることになる。
【0030】
なお、吐出口2は図7に示すように細いスリット状に形成した吐出口2bとしても良い。
充填された味噌は押し板5で押圧されると薄い紐状となって押し出されるので、前述の紐状の味噌Rと同様に湯のなかで表面が溶け出すと粘性が無くなって崩れ順次紐状の芯まで短時間に溶けるという効果が得られる。
【実施例2】
【0031】
次に本発明の異なる実施の形態について説明する。
なお、これらの本発明の異なる実施の形態の説明に当たって、前記本発明の実施例1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】
図4における本発明の第2の実施の形態において、前記本発明の第1の実施の形態と主に異なる点は、前記筒体1の充填口3の周縁9の対向する位置に丸棒状の細い切り分け片4の両端をそれぞれ固定して切り分け手段を設けたことで半固形物吐出器を構成している。
図4は本発明の半固形物吐出器の底面の斜視図であり、図4−(1)は切り分け片4の両端が筒体1に一体的に設けられたガイド片11に固定されている状態を示し、図4−(2)はガイド片11を設けない場合で切り分け片4の両端を周縁9に直接固定した状態を示している。
【0033】
筒体1を充填口3から味噌容器の味噌塊に挿し込んで味噌を充填した後筒体1を引き上げると、味噌の粘性により充填された味噌の一部が味噌塊に引っ張られて筒体1の中から引き戻され設定した必要な充填量が得られないことがある。
そこで、図4に示すように切り分け片4を充填口3の周縁9に筒体1の軸方向に直角に設けることにより、筒体1を充填口3から味噌塊に挿し込んで筒体1内に味噌を充満させた後筒体1を矢印P−P方向に回転させれば、切り分け片4は筒体1と共に回転して周縁9の位置で味噌を切り分けるので、筒体1を引き上げた時に充填された味噌は味噌塊に引っ張られることなく引き上げられるから、繰り返し同じ必要量の味噌が取り出しできるという効果が得られる。
【実施例3】
【0034】
図5における本発明の第3の実施の形態において、前記本発明の第2の実施の形態と主に異なる点は、筒体1の充填口3の周縁9の対向する位置に平板状の細い切り分け片4aの両端をそれぞれ固着して切り分け手段を設けたことで半固形物吐出器を構成している。
従って、筒体1を充填口3から味噌容器の味噌塊に挿し込んで筒体1内に味噌を充填した後筒体1を矢印P−P方向に回転させれば、切り分け片4aは筒体1と共に回転して周縁9の位置で味噌を切り分けるので、筒体1を引き上げた時に充填された味噌は味噌塊に引っ張られることなく引き上げられるから、前記本発明の第2の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【実施例4】
【0035】
図6における本発明の第4の実施の形態において、前記本発明の第3の実施の形態と主に異なる点は、十字状に形成された平板状の細い切り分け片4bの4箇所の端部が充填口3の周縁9の4箇所に固着して切り分け手段を設けたことで半固形物吐出器を構成している。
従って、充填口3を味噌容器の味噌塊に挿し込み、味噌を充填した後筒体1を矢印P−P方向に回転させると切り分け片4bは筒体1と共に回転して周縁9の位置で味噌を切り分けできる。
従って、前記本発明の第2の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0036】
本発明の第2或いは第3の実施の形態では、切り分け片4或いは切り分け片4aは筒体1を180度回転して味噌を切り分け完了できるが、第4の実施の形態においては切り分け片4bは十字状に形成されているので筒体1を90度回転させれば味噌を切り分け完了できる。
筒体1を回す角度が少なければ切り分け作業も楽になるという利点がある。
【実施例5】
【0037】
図9における本発明の第5の実施の形態において、前記本発明の第1の実施の形態と主に異なる点は、前記本発明の第1の実施の形態における保持部材7に代わり筒体1の充填口3と反対側の開口部に中空部材の一方を嵌入固定して筒体1を保持すると共に他方側に押し軸6を案内する案内穴8aを形成した保持部材7aで半固形物吐出器を構成している。
保持部材7aにはストッパー14のガイド穴25が軸方向と直角に貫通しており、ストッパー14がガイド穴25の中をスライドできるようにしている。
前記本発明の第1の実施の形態と同様に、ストッパー14の2段スリット15に押し軸6が挿通しており、幅の広いスリット15a側が押し軸6の位置にある時は、押し軸6は自由に軸方向に移動できるが、幅の狭いスリット15b側が押し軸6の位置にくれば幅の狭いスリット15bが溝12に係合し、押し軸6の軸方向の移動が拘束されることで押し軸6の係止手段を構成しているので、前記本発明の第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0038】
また、図9においては筒体1と一体的に設けられたガイド片11の充填口3側の端部に切り分け片4が固定されており、味噌を充填した後筒体1を回転させて切り分け作業を行う時、押し軸6の上端部の握り16か或いは保持部材7aのどちらか一方を持って回せば筒体1が回転すると共に切り分け片4も回転するので、周縁9の位置で味噌を切り分けることができる。
即ち、筒体1は保持部材7aに嵌合固定されているので、保持部材7aを手で持って回す時は筒体1が回転するので、切り分け片4も回転して味噌の切り分けが行われる。
また、押し軸6に一体的に固定された押し板5の案内溝10がガイド片11と係合しているので、押し軸6の上端部に固定された握り16を持って押し軸6を回すと押し板5が回転し、筒体1も回転できるので、切り分け片4も回転して味噌の切り分けが行われる。
【0039】
押し板5の下面に形成されている溝22は、味噌を吐出する際押し板5の下面を鍋21の底面に密着させる時に切り分け片4に当接しないための逃がし溝である。
【実施例6】
【0040】
図10における本発明の第6の実施の形態において、前記本発明の第2の実施の形態と主に異なる点は、周縁9の位置に軸に直角に配置された切り分け片4は両端を上方に直角に延長して腕部17とし、腕部17の延長端部を内側に直角に曲げて掛止部18を形成している。
保持部材7aの筒体1嵌入部の外周には腕部17の上部を嵌入保持する保持溝19を形成し、さらに掛止部18を嵌入保持する保持穴20を形成している。
腕部17の上部及び掛止部18は嵌入された後保持部材7aに筒体1を嵌入すると腕部17の上部は保持溝19と保持穴20から抜け出さないよう抑えられるので切り分け片4は周縁9の位置に固定されて切り分け手段を構成している。
押し板5の外周には案内溝10を形成し、腕部17と案内溝10は摺動可能に係合してるので、押し板5は軸方向に移動できるが回転移動はできない。
従って、保持部材7aを手で持って回すと保持溝19に保持された腕部17も回転するので、切り分け片4も共に回転する。
また、押し軸6を回すと、押し軸6と一体的に固定された押し板5の案内溝10に係合している腕部17を回転させるので切り分け片4も共に回転する。
従って、本発明の第6の実施の形態における切り分け手段においても前記本発明の第2の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【実施例7】
【0041】
図11における本発明の第7の実施の形態において、前記本発明の第5の実施の形態と主に異なる点は、押し軸6の外径にノコ歯状の係止溝26が形成されている。
押し軸6に直角の方向にスライドするストッパー27には係止溝26と噛み合う係止爪28が形成され、ストッパー27はばね29により付勢されるので係止爪28が係止溝26の溝に入り込んで係合するから、押し軸6の軸方向移動を係止することで押し軸6の係止手段を構成している。
【0042】
味噌の充填量を設定する時は、最初にばね29を圧縮する方向にストッパー27を押して係止爪28と係止溝26の噛み合いを外して押し軸6を自由に移動できるようにする。
次に必要な充填量になる位置に押し板5を上方へ移動させた後ストッパー27の押し力を解放すればばね29の付勢力により係止爪28を再び係止溝26に係合させて押し軸6を移動停止させることにより押し板5も停止する。
次に筒体1を充填口3から味噌塊の中に挿し込めば、周縁9から押し板5までの筒体1の中に味噌を充填できる。
図11に示すように、係止溝26の溝面のうち押し板5側の溝面は押し軸6の軸に直角であり他方の溝面は傾斜面となっており、係止爪28の爪先の角度は係止溝26のそれぞれの溝面に面接触するように合わせてある。
従って、筒体1に味噌が充満してから更に充填しようとすると、味噌は押し板5と共に押し軸6を押し上げるが、係止溝26の押し軸6及び係止爪28の直角な面に押し力が作用するので外れることがないから押し板5は設定した位置を動かされることはない。
そして充填口3から更に押し込まれた分の味噌は吐出口2から吐出されて味噌塊に戻る。
従って常に設定された味噌の量をバラツキなく充填することができる。
【0043】
充填された味噌を鍋21の中で吐出する時は、充填口3の周縁9を鍋底の平坦部に密着して充填口3を閉塞した後押し軸6を押して押し板5で味噌を押圧するが、押し軸6の押し力は係止溝26及び係止爪28の傾斜面に作用するので係止爪28はばね29の付勢力に打ち勝って押し戻され係止爪28が係止溝26の溝から外れるので、ストッパー27を押して係止爪28と係止溝26の係止を外さなくても押し軸6は自由に下方へ移動させることができる。
【0044】
また、図12は図11の側面図であるが、筒体1の長手方向にスリット30を形成し、スリット30の横に目盛り線23と目盛数字24が刻印されている。
この目盛り線に筒体1の中を移動する押し板5の外周の稜線を合わせれば充填したい味噌の量にセットすることができる。
味噌の量を表す目盛数字は重量或いは容積で表してもよいが、図12においては味噌汁椀の数(例えば、1杯、2杯のように)であらわしている。
【実施例8】
【0045】
図13における本発明の第8の実施の形態において、前記本発明の第7の実施の形態と主に異なる点は、前記本発明の第7の実施の形態のストッパー27に代わり、押し軸6に直角にスライドする平板材で形成されたストッパー27aを設けている。
ストッパー27aの中央部付近には押し軸6の挿通穴31を成形し挿通穴31の片側には押し軸6の係止溝26に係合する係止爪28aを形成して押し軸6の係止手段を構成している。
ストッパー27aはばね29aにより付勢され係止爪28aが係止溝26の溝に入り込んで係合し、押し軸6の軸方向移動を係止している。
係止爪28aは前記本発明の第6の実施の形態と同様に、係止溝26の溝面のうち押し板5側の溝面は押し軸6の軸に直角であり他方の溝面は傾斜面であって、係止爪28aの爪先の角度は係止溝26のそれぞれの溝面に面接触するように合わせてある。
従って、前記本発明の第7の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0046】
図14に示すのは、前記本発明の第7の実施の形態における保持部材7aの内部に設けたばね29aに代わって保持部材7aの外部にばね29bを設けているので、前記本発明の第7の実施の形態と同様にストッパー27aを付勢している。
従って、前記本発明の第7の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【実施例9】
【0047】
図15における本発明の第9の実施の形態において、前記本発明の第7の実施の形態と主に異なる点は、把持部材7aに設けられたピン32に枢支されて回動するレバー33の押し軸6側の先端に係止爪34が形成さればね35によりレバー33が付勢されるので、係止爪34が押し軸6に形成されたノコ歯状の係止溝26に係合することで押し軸6の係止手段を構成している。
必要な味噌の充填量に押し板5の位置を決める時は、レバー33の端部を上方に押し回動させて係止爪34を係止溝26から外し、必要な充填量になる位置まで押し板5を上方へ移動させた後レバー33を離してばね35の付勢力で係止爪34を係止溝26に係合させれば、押し軸6が移動を係止され押し板5も固定できる。
従って、前記本発明の第7の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【実施例10】
【0048】
図16における本発明の第10の実施の形態において、前記本発明の第5の実施の形態と主に異なる点は、外周に係止溝12を設けていない押し軸6と直角方向にスライドし押し軸6が滑合する穴40を形成した押さえ板41を設けており、押さえ板41の一方には把持部材7aの外部に突出するネジ部42を形成し、ネジ部42に螺合するナット43とで押し軸6の係止手段を構成している。
ナット43を締めると押さえ板41がネジ部42側にスライドし、押し軸6を横方向に引く力が作用するので押し軸6は把持部材7aに形成された押し軸6の案内穴8bとの摩擦抵抗及び押し軸6と押さえ板41との摩擦抵抗により移動を固定され、ナット43を緩めると押し軸6は自由に移動できる。
【0049】
味噌を充填するときは、ナット43を緩めて必要な充填量になる位置まで押し板5を上方に移動させた後ナット43を締めると押し軸6は固定されるから、設定した位置から動かされることは無いので、味噌を充填するときに押し板5が味噌に押されても設定した充填量が変動することはない。
充填された味噌を押し出す時は、ナット43を緩めれば押し軸6と押さえ板41との摩擦抵抗及び押し軸6と案内穴8bとの摩擦抵抗が無くなり押し軸6は自由に移動できるので押し軸6を充填口3側へ押すことができる。
従って、前記本発明の第5の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0050】
本発明の実施の形態のそれぞれの説明において、半固形物を代表して味噌を取り上げているが、味噌に限らず酒粕や小麦粉、魚介類の練り物或いは乳製品や食品以外の練り物等の半固形物を小断面に連続的に吐出する場合にも適用できる。
味噌、酒粕は押し出して溶かすが、押し出して紐状のまま麺のように成形する目的にも適用出来る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、味噌や酒粕等の湯に溶けやすい半固形物を湯中に溶かして調理する際に、半固形物を必要量だけ半固形物容器から計量して充填し、湯中に溶けやすい形態にして吐出する調理具を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0052】
1:筒体 2、2a、2b:吐出口
3:充填口 4、4a、4b:切り分け片
5:押し板 6:押し軸
7、7a:保持部材 8、8a、8b:案内穴
9:周縁 10:案内溝
11:ガイド片 12:溝
13:ガイド溝 14:ストッパー
15:2段スリット 15a:幅の広いスリット
15b:幅の狭いスリット 16:握り
17:腕部 18:掛止部
19:保持溝 20:保持穴
21:鍋 22:溝
23:目盛り線 24:目盛数字
25:ガイド穴 26:係止溝
27、27a:ストッパー 28、28a:係止爪
29、29a、29b:ばね 30:スリット
31:挿通穴 32:ピン
33:レバー 34:係止爪
35:ばね 36:味噌容器
37:角部 38:お玉の椀部
40:穴 41:押さえ板
42:ネジ部 43:ナット
R:紐状の味噌
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器内底の平坦部に密着させて閉塞することができる周縁を備えた充填口を一方の端に形成した筒体と、該筒体の内周に摺動嵌合する押し板と、該押し板を一体的に保持し前記筒体の軸方向に移動する押し軸と、前記周縁から押し板までの筒体内に半固形物を充填して前記周縁を調理容器内底の平坦部に密着させて充填口を閉塞した後押し軸を充填口側へ移動することにより前記押し板に押圧された半固形物を小断面の紐状に形成して筒体外へ吐出させる前記筒体の円周になくとも1個以上形成された吐出口とからなることを特徴とする半固形物吐出器。
【請求項2】
前記周縁を備えた充填口を形成した筒体は、該筒体の充填口を半固形物の塊に挿し込んで充填口の周縁から押し板までの筒体内に半固形物を充填した後筒体内に充填された半固形物を周縁位置で半固形物の塊から切り離す切り分け手段を充填口の周縁位置に設けていることを特徴とする請求項1の半固形物吐出器。
【請求項3】
前記周縁を備えた充填口を形成した筒体は、該筒体の充填口と反対側の開口部を保持すると共に前記押し軸の軸方向移動を案内する案内穴を設けた保持部材と、該保持部材に設けられて前記押し軸の軸方向移動を停止或いは停止解除させる係止手段とを備えていることを特徴とする請求項1の半固形物吐出器。
【請求項1】
調理容器内底の平坦部に密着させて閉塞することができる周縁を備えた充填口を一方の端に形成した筒体と、該筒体の内周に摺動嵌合する押し板と、該押し板を一体的に保持し前記筒体の軸方向に移動する押し軸と、前記周縁から押し板までの筒体内に半固形物を充填して前記周縁を調理容器内底の平坦部に密着させて充填口を閉塞した後押し軸を充填口側へ移動することにより前記押し板に押圧された半固形物を小断面の紐状に形成して筒体外へ吐出させる前記筒体の円周になくとも1個以上形成された吐出口とからなることを特徴とする半固形物吐出器。
【請求項2】
前記周縁を備えた充填口を形成した筒体は、該筒体の充填口を半固形物の塊に挿し込んで充填口の周縁から押し板までの筒体内に半固形物を充填した後筒体内に充填された半固形物を周縁位置で半固形物の塊から切り離す切り分け手段を充填口の周縁位置に設けていることを特徴とする請求項1の半固形物吐出器。
【請求項3】
前記周縁を備えた充填口を形成した筒体は、該筒体の充填口と反対側の開口部を保持すると共に前記押し軸の軸方向移動を案内する案内穴を設けた保持部材と、該保持部材に設けられて前記押し軸の軸方向移動を停止或いは停止解除させる係止手段とを備えていることを特徴とする請求項1の半固形物吐出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−188966(P2011−188966A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56892(P2010−56892)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(306034147)有限会社 サキヤマ (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(306034147)有限会社 サキヤマ (3)
【Fターム(参考)】
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