説明

半導体の製造方法

【課題】 拡散後の表面抵抗値が低い半導体製造方法を提供すること。
【解決手段】 有機系バインダーと不純物を含有する層を半導体基板上に設け、これを特定少量(0.1〜10%)の酸素を含む雰囲気ガス中で拡散する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造方法に関し、さらに詳しくは表面抵抗値が低い半導体が得られる半導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ、ダイオードなどの半導体素子に用いられる半導体の製造法として、ゲルマニウム、シリコン等の半導体基板上にリンやホウ素などの不純物を含有する液状材料を塗布、乾燥した後に焼成し、有機成分を分解燃焼除去して不純物の無機質被膜を形成したのち、加熱することによって基板中に不純物の拡散層を形成する方法が広く用いられている。
【0003】
近時、製造コスト削減のために従来の直径3インチ以下のウェハーから直径4インチ以上の大型ウェハーへと移行しつつある。かかるウェハーに不純物を含有する塗布液を塗布するにあたり、小型ウェハーに対してはスピンコート法が用いられているが、かかる方法を大型ウェハーに適用した場合には、中心部と周縁部で膜厚が不均一になるという欠点が生じる。
そこで、大型のウェハーに対しても均一な塗布が可能な方法として、スクリーン印刷法が検討されている。
【0004】
そして、かかるスクリーン印刷に好適で、大型ウェハーを用いた場合でも、不純物を高濃度で均一に拡散でき、抵抗値のばらつきがない半導体が得られる塗布液として、ホウ素化合物やリン化合物などの不純物源、水溶性高分子および水を含有し、特定の粘度範囲である塗布液が提案されている。(例えば、特許文献1、2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−035719号公報
【特許文献2】特開2007−053353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる特許文献に記載されているような水溶性高分子などの有機系バインダーを用いた塗布液を使用した場合、拡散後の表面抵抗値が高くなる場合があった。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、有機系バインダーを含む不純物拡散用塗布液を用いた場合に、拡散後の表面抵抗値が低い半導体が得られる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、有機系バインダーと不純物を含有する層を半導体基板上に設け、これを酸素を0.1〜10%含有する雰囲気ガス中で拡散することによって本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
有機物を含む不純物層を用いる場合の拡散条件としては、有機物に由来する炭素残渣が発生しないように、酸素100%、またはそれに近い酸素リッチ、少なくとも空気よりも高酸素濃度の雰囲気ガス中で実施するのが通常である。
ところが、本発明は、有機系バインダーを含む系において、特定少量、すなわち酸素濃度0.1〜10%の雰囲気下で不純物の拡散を実施することによって、良好な結果が得られることを見出したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法を用いることで、表面抵抗値が低い半導体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施様態の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0012】
<有機系バインダー(A)>
まず、本発明の拡散層に用いられる有機系バインダー(A)について説明する。
本発明の有機系バインダー(A)としては、半導体の製造において不純物の塗布液に用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族系石油樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、キシレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイソブチル系樹脂等などを挙げることができる。有機系バインダーは1種または2種以上混合して用いることができる。
なかでもポリビニルアルコール系樹脂は水を主溶剤とする水系の塗布液に使用でき、揮発性が低く、粘度の安定性が高い塗布液が得られる点で好適である。
【0013】
かかるポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する。)は、酢酸ビニルに代表されるビニルエステルの重合体であるポリビニルエステルをアルカリまたは酸によりケン化することにより得られる水溶性樹脂である。
PVA系樹脂を用いる場合、その重合度及びケン化度の選択が重要であり、これらの選択と使用量によって、塗布液の粘度を微調整することができる。
本発明の目的に対して用いられるPVA系樹脂の平均重合度は、通常200〜8000であり、特に300〜3000、殊に300〜2600のものが好ましく用いられる。かかる平均重合度が小さすぎると、塗布液の粘度が低く、塗膜が薄膜となり、よって、不純物の供給量が不足する傾向がある。また、平均重合度が高すぎると、塗布液の粘度が高くなり過ぎて塗布時に気泡が発生したり、レベリング不足に伴う半導体デバイスの抵抗値のバラツキの原因となる傾向がある。
なお、PVA系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準じて測定されるもので、、PVA系樹脂を完全にケン化した後、その水溶液粘度をオストワルド粘度計を用いて測定し、水との相対粘度から算出した値である。
【0014】
PVA系樹脂のケン化度は、通常50モル%以上であり、特に60〜99.99モル%、殊に90〜99.99モル%の範囲が好ましく用いられる。かかるケン化度が低すぎると、PVA系樹脂の水への溶解性が低下し、均一な塗布液ができ難くなる傾向がある。
【0015】
また、本発明においては、PVA系樹脂として、ビニルエステルと共重合性を有する単量体とビニルエステルとの共重合体のケン化物、すなわち変性PVA系樹脂を用いることもできる。かかる変性PVA系樹脂の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基等を側鎖に有するアニオン変性PVA系樹脂、4級アンモニウム塩基等を有するカチオン変性PVA系樹脂、アルキル基、α―ヒドロキシアルキル基、オキシアルキレン基等を有するノニオン変性PVA系樹脂を挙げることができる。
【0016】
特に本発明では、PVA系樹脂として、下記一般式(1)で示される構造単位を有するものが特に好適に用いられる。ここで、一般式(1)におけるR、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示すものである。
【0017】
【化1】

【0018】
特に、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR〜R、及びR〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合であるものが最も好ましく、下記一般式(1’)で表わされる構造単位を有するPVA系樹脂が好適に用いられる。
【化2】

【0019】
なお、かかる一般式(1)で表わされる構造単位中のR〜R、及びR〜Rとして有機基を用いる場合には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、かかる有機基は、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の官能基を有していてもよい。
【0020】
また、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のXは熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で単結合であるものが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよく、かかる結合鎖としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CHO)−、−(OCH−、−(CHO)CH−、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CO(C)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)が挙げられる。中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CHOCH−が好ましい。
【0021】
一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂の製造法としては、特に限定されないが、例えば、特開2006−95825に説明されている方法を用いることができる。
【0022】
<不純物(B)>
次に、本発明に用いられる不純物(B)について説明する。
かかる不純物(B)としては、P型半導体では、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどの13族元素が挙げられ、N型半導体では、リン、ヒ素、アンチモンなどの15族元素を挙げることができる。中でも、ホウ素、またはリンが広く用いらている。
通常、拡散用塗布液に配合される不純物は、上記不純物元素を含む化合物である。
例えば、ホウ素を含む化合物としては、具体的には、ホウ酸、無水ホウ酸、四ホウ酸アンモニウム(水和物)、アルキルホウ酸エステル、塩化ホウ素、ホウ酸メラミンなどを挙げることができる。中でも水溶性のものが好ましく、特にホウ酸、および無水ホウ酸が好ましく用いられる。
なお、かかるホウ素化合物は、単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0023】
また、かかるリンを含む化合物としては、具体的には、無水リン酸(P)、リン酸(HPO)などのリン酸類、リン酸メラミン、リン酸アンモニウムなどのリン酸塩類、アシッドホスホキシメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシエチルメタクリレート、アシッドホスホキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレートなどのリン酸エステル類、およびその塩、塩化リンなどを挙げることができる。中でも水溶性のものが好ましく、特にリン酸類が好ましく用いられる。
なお、かかるリン化合物は、単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0024】
<塗布液>
スクリーン印刷法に用いる塗布液は、上述の有機系バインダー(A)、不純物(B)、および溶剤を含有するものであり、必要に応じて、その他の添加剤を配合してなるものである。
【0025】
<溶剤>
溶剤としては、アルコール系、エーテル系、エステル系、炭化水素系等の有機溶剤や水、これらの混合溶剤などを挙げることができる。
なかでも、塗料の揮発性が低く、塗料粘度が安定している点で、水が好適である。水としては、超純水、イオン交換水、蒸留水が用いられ、特に超純水が好ましい。なかでも、水中のアルカリ金属や重金属元素などの不純物元素及び異物は少ないほど好ましい。
【0026】
塗布液中の溶剤の含有量は、塗布液中、25〜85重量%が好ましく、35〜65重量%がより好ましい。溶剤の含有量が25重量%未満では、粘度が高くなり過ぎて塗布時に気泡が発生したり、レベリング不足に伴う半導体デバイスの抵抗値のバラツキの原因となり好ましくない傾向がある。また、溶剤の含有量が85重量%をこえると、逆に粘度が低くなり過ぎて塗膜が薄膜になり不純物供給量が不足し好ましくない傾向がある。
【0027】
さらに、塗布液の溶剤として水を用いる場合には、アルコール類を併用することが好ましい。かかるアルコール類を配合することによって、塗布液の保存安定性や流動安定性、塗布膜のレベリング性を改善することが可能である。
かかるアルコール類としては、具体的には、メタノール(65℃)、エタノール(78℃)、イソプロパノール(82℃)などの一価アルコール類;エチレングリコール(197℃)、ジエチレングリコール(244℃)、トリエチレングリコール(287℃)、テトラエチレングリコール(314℃)、プロピレングリコール(188℃)などのニ価アルコール類;グリセリン(290℃)、トリメチロールプロパン(292℃)、ソルビトール(296℃)、マンニトール(290〜295℃)、ペンタエリスリトール(276℃)、ポリグリセリンなどの三価以上の多価アルコール類;および、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、エチレングリコールノモエチルエーテル(136℃)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(171℃)、プロピレングリールモノメチルエーテル(120℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)(194℃)などのアルコール誘導体を挙げることができる。なお、( )内の値は沸点である。
これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0028】
特に、印刷後の塗膜の急速な乾燥が抑制され、レベリング性の改善効果が大きい点で、水よりも沸点が高い、すなわち沸点が100℃以上であるアルコール類を用いることが好ましく、さらに150〜350℃、特に200〜300℃のものが好ましく用いられる。
【0029】
塗布液に配合されるアルコール類の配合量は、通常、塗布液の全量に対して1〜60重量部、特に10〜55重量部、殊に20〜50重量部の範囲が好ましく用いられる。
また、アルコール類の水100重量部に対する配合量は、通常5〜200重量部であり、特に50〜150重量部、殊に80〜120重量部の範囲が用いられる。
かかるアルコール類の含有量が少なすぎると流動性の改善効果、およびレベリング効果が充分得られなくなり、逆に多すぎるとPVA系樹脂の溶解性が低下し、均一な塗布液が得られなくなったり、高沸点のアルコール類を用いた場合には乾燥に高温長時間を要する傾向があるため、好ましくない。
【0030】
<界面活性剤>
さらに、塗布液には、界面活性剤を配合することが好ましい実施態様である。かかる界面活性剤を配合することによって、半導体表面への濡れ性が向上し、さらに塗布液の発泡が抑制され、気泡に起因する印刷不良を防止することが可能となる。
水性液に用いられる界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤に大別でき、いずれも使用することができるが、半導体への金属成分等の持込が少ないことから、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
かかるノニオン系界面活性剤としては、公知のものを使用することが可能であり、具体的にはエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロック共重合体、アセチレングリコール誘導体などの炭化水素系界面活性剤や、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
中でも、塗布液において発泡の抑制、および消泡性に優れている点で、炭化水素系界面活性剤、特にアセチレングリコール誘導体が好ましく用いられる。
【0031】
塗布液に配合される界面活性剤の配合量は、通常、塗布液中0.1〜10重量%であり、特に0.3〜8重量%、殊に0.5〜5重量%の範囲が好ましく用いられる。かかる界面活性剤の配合量が少なすぎると、抑泡・消泡効果が不充分である場合があり、逆に多すぎると液から分離して均一溶液が得られなくなる場合がある。
【0032】
<その他の添加剤>
さらに、塗布液には、スクリーン印刷特性を改善する目的で、各種の無機微粒子を配合することが可能である。
かかる無機微粒子としては、コロイダルシリカ、非晶質シリカ、フュームドシリカなどのシリカ類が好適であり、中でもコロイダルシリカが好ましく用いられる。
かかる無機微粒子の配合量は、通常、塗布液中0.5〜20重量%であり、特に1〜10重量%の範囲が好ましく用いられる。
【0033】
<塗布液の調整法>
かかる調製法としては、有機系バインダー(A)を溶剤に溶かして溶液とした後、これに不純物(B)、および他の添加剤を配合する方法や、予め有機系バインダー(A)と不純物(B)を混合しておき、これを溶剤中に投入、撹拌しながら加熱し溶解した後、他の添加剤を配合する方法などを挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0034】
塗布液中の有機系バインダー(A)の含有量は、通常3〜25重量%であり、特に5〜20重量%の範囲が好ましく用いられる。有機系バインダー(A)の含有量が少なすぎると、塗布液の粘度が低くなり、よって不純物の供給量不足となる傾向がある。また、有機系バインダー(A)の含有量が多すぎると、塗布液の粘度が高くなりすぎ、塗布時に気泡が発生したり、レベリング不足に伴う半導体デバイスの抵抗値のバラツキの原因となり好ましくない傾向がある。
【0035】
塗布液中の不純物(B)の含有量は、通常0.1〜30重量%であり、特に0.1〜10重量%、殊に0.1〜5重量%の範囲が好ましく用いられる。
また、不純物(B)の有機系バインダー(A)100重量部に対する含有量は、通常1〜300重量部であり、特に3〜200重量部、殊に5〜50重量部の範囲が用いられる。
かかる不純物(B)の含有量が小さすぎると、拡散層中の不純物の含有量が少なくなり、充分な抵抗値が得られない場合がある。また、不純物(B)の含有量が多すぎると、有機系バインダー(A)の溶解性が不充分となる場合がある。
【0036】
かかる素塗布液の20℃における粘度は通常300〜100,000mPa・sであり、特に500〜10,000mPa・s、殊に700〜5,000mPa・sの範囲が好ましく用いられる。なお、かかる粘度はB型粘度計を用いた測定したものである。
かかる塗布液の濃度、および粘度が小さすぎると塗膜が安定して形成されにくくなったり、拡散層中の不純物の含有量が不十分になる場合があり、逆に濃度、および粘度が大きすぎると、塗布作業性が低下したり、スクリーン印刷におけるスクリーンメッシュの目詰まりが起りやすくなる傾向がある。
【0037】
<半導体>
次に、半導体の製造条件について説明する。
かかる半導体は、シリコンやゲルマニウムなどの半導体基板上に不純物を含有する塗布液を塗布し、乾燥、焼成、拡散の各工程を経て、半導体基板中に不純物の拡散層を形成することで製造される。
【0038】
半導体基板上に塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることが可能で、具体的には、ドライプロセスによる製膜法、およびウェットプロセスによる製膜法が利用できる。具体的には、ドライプロセスによる製膜法として、真空蒸着やイオンプレーティング、スパッタリング、CVD(化学的気相法)、溶射等が挙げられる。ウェットプロセスによる製膜法として、ゾル‐ゲル法、めっき法、インクジェット塗布法、スピンコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
特に、大型の設備を必要としなく、製膜速度が速いことから、ウェットプロセスによる塗布液を塗布する方法が好適である。中でも、4インチ以上の大型ウェハーに対しても均一な塗布膜を得ることができる点で、スクリーン印刷法が好ましい。
半導体基板上への塗布液の塗布量は、基板の種類や半導体の用途、塗布液中の不純物の含有量と所望の不純物量によって異なるが、通常、1〜100g/mであり、特に1〜50g/mの範囲で実施される。塗布量が少なすぎると、塗布物の面内均一性が悪くなり、不純物のドープが均一にされなくなる。塗布量が多すぎると、焼成工程時に多量の有機系バインダーが焼けきらずに基板上に残る。
【0039】
塗布工程の温度は、通常、10〜40℃、特に20〜30℃で実施される。温度が低すぎると、塗布液の粘度が上がり、印刷時のかすれにつながる。一方で、温度が高すぎると、印刷時の乾燥が顕著になり、版が詰まる不具合が起こる。
塗布工程の湿度は、通常、20〜80%、特に30〜70%で実施される。湿度が低すぎると、印刷時の乾燥が顕著になり、版が詰まる不具合が起こる。一方で、湿度が高すぎると、印刷後の塗布物が水を吸って基板上でにじむ問題が起こる。
【0040】
続く乾燥工程にて塗布膜から水等の揮発成分が除去され、その条件としては、適宜設定すればよいが、通常、20〜300℃、特に100〜200℃での温度条件下、1〜60分、特に5〜30分の乾燥時間が用いられる。乾燥方法についても特に限定されず、熱風乾燥、赤外線加熱乾燥、真空乾燥、などの公知の方法を用いることができる。乾燥温度が低いと、塗布物に溶剤が残り、焼成工程で基板をボートに立てた際に、塗布物が流れ出るおそれがある。一方で、乾燥温度が高いと、乾燥機から出す際に作業が危険になり、作業性が損なわれる。
なお、必要に応じて塗布工程と乾燥工程を連続して実施することも可能である。
【0041】
続く焼成工程(脱脂工程)では、電気炉等を用いて、塗布膜中の有機成分が除去される。
かかる工程で用いられる電気炉は、特に限定されることなく、たとえば、マッフル炉、ベルト炉、チューブ炉、コンベア炉、るつぼ炉、ホットプレートなどを用いることができる。中でも、一度に大量の基板を処理することができ、ガスを注入できることから、チューブ炉が好適に用いられる。
かかるチューブ炉としては、チューブ状の石英管を有したものを用いることが一般的であり、チューブの直径は通常80〜400mm、特に100〜300mmである。電気炉が小さすぎると、生産効率が低下する。一方で、電気炉が大きすぎると、消費エネルギーが大きくなる問題がある。
【0042】
本発明では、焼成工程の雰囲気として、通常、0.1〜10%、特に0.5〜5%の酸素を含む雰囲気下で実施されることが好ましい。雰囲気中に含まれる酸素の量が高すぎると、基板表面にSiO2が多量に形成されてしまい、光電変換効率が低下する原因となる。一方で、酸素の量が低すぎると、有機系バインダーが焼けきらずに基板上に残り、得られた半導体の表面抵抗値が上がる原因となる。
かかる雰囲気下で用いられるガスとしては、酸素を含む雰囲気であれば特に制限なく用いることが可能である。具体的には、酸素以外のその他のガスとして、窒素、またはアルゴンなどの不活性ガスを挙げることができる。中でも汎用性の点から窒素が好ましく用いられる。
【0043】
電気炉等に封入するガス流量は、通常、2〜150L/min、特には5〜100L/minである。封入するガス流量が多すぎると電気炉の温度低下の原因となる。一方で、低すぎると基板上の温度分布が不均一となり、不具合の原因となる。
焼成工程の温度の好ましい範囲は、通常、300〜1000℃、特には400〜800℃である。焼成工程の温度が高すぎると、焼成と拡散が同時に起こり、表面状態が不均一になるため、光電変換効率低下の原因となる。一方で、焼成工程の温度が低すぎると十分に焼成されない原因となる。
【0044】
かかる焼成工程の条件としては、適宜設定すればよいが、通常、300〜1000℃、特に400〜800℃での温度条件下の電気炉等に半導体基板を投入し、3〜60分、特には5〜30分保持する。焼成工程の温度が高すぎると、焼成と拡散が同時に起こり、表面状態が不均一になるため、光電変換効率低下の原因となる。一方で、焼成工程の温度が低すぎると十分に焼成されない原因となる。
なお、焼成工程の条件として、半導体基板の投入後に昇温させることも可能である。
その際の昇温速度は、通常、10〜100℃/min、特には20〜50℃/minであり、昇温終了後に、通常、3〜60分、特には5〜30分保持する。昇温速度が速いと、電気炉が温度追随できない原因となる。一方で、昇温速度が遅いと、生産性低下の原因となる。
【0045】
拡散工程で半導体基板中に不純物が拡散され、拡散層が形成されるが、焼成工程と同様に電気炉等を用い、枚葉、あるいは複数枚を重ね合わせた状態で行われる。
かかる工程で用いられる電気炉は、特に限定されることなく、たとえば、マッフル炉、ベルト炉、チューブ炉、コンベア炉、るつぼ炉、ホットプレートなどを用いることができる。中でも、一度に大量の基板を処理することができ、ガスを注入できることから、チューブ炉が好適に用いられる。
かかるチューブ炉としては、チューブ状の石英管を有したチューブ炉を用いることが一般的であり、チューブの直径は通常80〜400mm、特に100〜300mmである。電気炉が大きすぎると、消費エネルギーが大きくなる問題がある。一方で、電気炉が小さすぎると、生産効率が低下する。
なお、拡散工程と焼成工程は、同一の電気炉等で行うことも可能である。
【0046】
拡散工程の雰囲気は、通常、0.1〜10%、特に0.5〜5%の酸素を含む雰囲気下で実施される。雰囲気中に含まれる酸素の量が高すぎると、得られた半導体の表面抵抗値が上がる原因となる。また、拡散工程の前半を、窒素のみの雰囲気下で行うことも可能である。
かかる雰囲気下で用いられるガスとしては、酸素を含む雰囲気であれば特に制限なく用いることが可能である。具体的には、酸素以外のその他のガスとして、窒素、またはアルゴンなどの不活性ガスを挙げることができる。中でも汎用性の点から窒素が好ましく用いられる。
電気炉等に封入するガス流量は、通常、2〜150L/min、特には5〜100L/minである。封入するガス流量が多すぎると炉内温度が下がってしまい、正常にドープされない。一方で、低すぎると基板上の温度分布が不均一となり、不具合の原因となる。
【0047】
拡散工程の温度の好ましい範囲は、通常、800〜1000℃、特には850〜950℃である。拡散工程の温度が高すぎると、ドープされすぎて表面抵抗が下がりすぎ、光電変換効率が下がる。一方で、拡散工程の温度が低すぎるとドープが不十分で表面抵抗が上がりすぎ、光電変換効率が下がる。
拡散工程の時間の好ましい範囲は、通常、5〜60分、特に10〜30分である。拡散工程の時間が長すぎると、ドープされすぎて表面抵抗が下がりすぎ、光電変換効率が下がる。一方で、拡散工程の時間が短すぎると、ドープが不十分で表面抵抗が上がりすぎ、光電変換効率が下がる。
【0048】
焼成工程から拡散工程へ移る際の昇温速度は、通常、5〜50℃/min、特には10〜30℃/minである。昇温速度が速いと、電気炉が温度追随できない原因となる。一方で、昇温速度が遅いと、生産性低下の原因となる。
拡散工程の降温速度は、通常、2〜50℃/min、特には3〜20℃/minである。降温速度が速いと、ライフタイム低下の原因となる。一方で、降温速度が遅いと、生産性低下の原因となる。
【0049】
なお、焼成工程を省略し、焼成工程と拡散工程を一工程で拡散工程として実施し、拡散工程において塗布膜中の有機成分を除去することも可能である。焼成工程を省略することは、製造工程を簡略化できるため、好適に用いることができる。
半導体の表面抵抗値は、不純物の含有量や拡散温度、拡散時間などによって制御することができ、通常、0.03〜10000Ω/□の範囲で、目的とする用途に適した表
面抵抗のものを得ることが可能である。半導体の表面抵抗が低すぎると、不純物のドープ過多となり、光電変換効率が低下する。一方で、半導体の表面抵抗が高すぎると、不純物のドープ不足により、光電変換効率が低下する。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0051】
実施例1
<PVA系樹脂の製造>
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル1500部、メタノール800部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン240部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.05モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が87%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
【0052】
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂を作製した。
【0053】
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、99.8モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、350であった。また、一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は、H−NMR(300MHzプロトンNMR、d6−DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、8モル%であった。
【0054】
<リン酸塗布液の作製>
溶剤として超純水37gに得られたPVA系樹脂の50wt%水溶液22gを加え、加熱撹拌しながら溶解し、溶液Xを作製した。
また、アルコールであるグリセリン40gを用い、これに界面活性剤であるアセチレングリコール誘導体である2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物0.5gを添加して溶液Yを作製した。
かかる溶液Xに不純物(B)としてリン酸0.5gを添加し、さらに溶液Yを添加、撹拌してリン酸塗布液を作製した。
【0055】
<不純物層の形成>
得られたリン酸塗布液を半導体基板(多結晶シリコン、156mm角、200μm厚)に下記の印刷条件にてスクリーン印刷し、基板上に不純物層を形成した。
印刷条件
印刷機 :ニューロング精密工業社製「LS−34GX」
スキージー :ニューロング精密工業社製NMスキージー(硬度:60)
スキージー角 :80度
スクレッパー :ニューロング精密工業社製NMスキージー(硬度:60)
スクレッパー角:86度
印圧 :0.2MPa
スクリーン版 :東京プロセスサービス社製
版サイズ :450mm角
メッシュ種 :V330
乳剤種 :TN−1
乳剤厚 :10μm
パターン :L/S=80〜220μm、20μm毎/L×3
30mm角のベタパターンが2箇所
印刷環境 :23℃、60%RH
【0056】
<拡散>
上記、PVA系樹脂、およびリン酸を含む塗布液がスクリーン印刷され、不純物層が形成された半導体基板を熱風循環乾燥機中150℃で2分間乾燥した後、電気炉(チューブ炉、光洋サーモシステム製、MT−12X43−A、チューブ内径300mm、チューブ長1080mm)のボート上に、2.38mm間隔で、風下側が塗布面となるように、10枚程度立てて配置し、予め700℃、酸素流量2L/min、窒素流量98L/minに保持した電気炉(チューブ炉)に、ボート上に立てた状態で投入した。その後、20分かけて875℃まで昇温し、875℃で20分保持後、40分かけて700℃まで降温した。電気炉(チューブ炉)からボート及び基板を取り出し、室温まで空冷後、46%フッ化水素水溶液中に基板を浸漬後、揺動させながら洗浄した後、超純水を満たした第一水洗槽および第二水洗槽でフッ化水素を洗い流し、風乾することで半導体基板中にリンの拡散層を有する半導体を得た。
【0057】
<膜残り評価>
得られた半導体について、半導体基板上の膜残りを評価した。結果を表1に示す
○:半導体基板上にリン拡散用塗布層の膜残りなし
×:半導体基板上にリン拡散用塗布層の膜残りあり
【0058】
<表面抵抗値測定>
得られた半導体の30mm角パターンの中心位置の表面抵抗値を、抵抗測定器(三菱アナリテック社製「ロレスター」、PSPプローブ使用)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0059】
実施例2
実施例1において、ガス流量を酸素流量2L/min、窒素流量18L/minとした以外は、実施例1と同様に半導体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0060】
実施例3
実施例1において、ガス流量を酸素流量0.2L/min、窒素流量9.8L/minとした以外は、実施例1と同様に半導体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0061】
比較例1
実施例1において、ガス種を窒素(100%)とした以外は、実施例1と同様に半導体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0062】
比較例2
実施例1において、ガス種を窒素(77%)、酸素(23%)とした以外は、実施例1と同様に半導体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0063】
比較例3
<塗布液の作製>
エタノール90部に、エチルシリケート48「コルコート製」3部、五酸化二リン:7部を滴下して混合し、塗布液を作製した。<半導体基板への塗布>
温度23℃、湿度50%において、半導体基板(多結晶シリコン、156mm角、200μm厚)にスピンコーター法にて2cc、2000rpm、30秒の条件下で塗布を行った。
上記条件にて得られた半導体基板を用いた以外は、実施例3と同様に半導体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0064】
[表1]

【0065】
表1に示した結果からわかるように、本発明の特定少量の酸素を含む雰囲気下で焼成した実施例では、フッ化水素処理後の膜残りがなく、また表面抵抗値が低い良好な半導体が得られた。
一方、酸素を含まない雰囲気下で焼成した比較例1、および酸素含有量が多い雰囲気で焼成した比較例2では、膜残りが発生し、表面抵抗値が高い結果となった。また、スピンコーター法にて塗布した比較例3では、表面抵抗値が高い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の半導体の製造方法は、拡散後の表面抵抗値が低い半導体製造方法を提供できることから、工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系バインダーと不純物を含有する層を半導体基板上に設け、これを酸素を0.1〜10%含有する雰囲気ガス中で拡散する工程を含む半導体の製造方法。
【請求項2】
有機系バインダーがポリビニルアルコール系樹脂である請求項1記載の半導体の製造方法。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系樹脂が下記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するものである請求項1または2記載の半導体の製造方法。
【化1】

【請求項4】
有機系バインダーと不純物を含有する層を半導体基板上に設ける方法がスクリーン印刷である請求項1〜3いずれか記載の半導体の製造方法。