説明

半導体ウェハの処理方法

【課題】チッピングの発生を抑えたダイシングを可能とする半導体ウェハ処理方法を提供する。
【解決手段】次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面2側に表面保護テープ3を貼合された状態で半導体ウェハ1の裏面を研削する工程、
(b)半導体ウェハ1のストリートに沿って該表面保護テープ3のみを切断し溝9を入れる工程
(c)(b)工程の前、又は(b)工程の後に、支持固定用テープ13をリングフレームにて支持固定した状態で、半導体ウェハ1の裏面側に支持固定用テープ13を貼合する工程、
(d)溝9を入れ個片化された表面保護テープ3側からプラズマ10で処理し、該溝9においてむき出しにされた半導体ウェハ1をエッチングしてチップに個片化する工程、
(e)パターン面側の個片化された表面保護テープ3を剥離する工程、及び
(f)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハをチップに処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ最近における半導体チップの薄膜化・小チップ化への進化はめざましく、特に、メモリカードやスマートカードの様な半導体ICチップが内蔵されたICカードの場合、半導体チップの厚さとしては75μm以下が要求されるものであり、今後これらの需要が増えるにつれ上記の薄膜化・小チップ化のニーズはより一層高まるものと考えられる。
【0003】
これらの半導体チップは、半導体ウェハをバックグラインド工程やエッチング工程等において所定厚みに薄膜化した後、ダイシング工程にてチップ化する事により得られるものであるが、このダイシング工程においては、半導体ウェハはダイシングブレードにより切断されるブレードカット方式が用いられるのが一般的である。この場合、切断時にはブレードによる切削抵抗が半導体ウェハに直接かかる事になるわけであるが、この切削抵抗によって半導体チップには微小な欠け(チッピング)が発生する事がある。このチッピング発生は半導体チップの外観を損なうだけでなく、場合によってはチップ上の回路パターンまで破損してしまう可能性があり、昨今、重要な問題のうちの1つとして捉えられこれまでにも検討が種々行われてきた。前述の様な薄膜小チップの場合は、許容されるチッピングレベルも厳しくなってくるため、今後の半導体チップの薄膜化・小チップの傾向がますます進むことにより、このチッピングの問題は今後より一層深刻化してくるものと容易に推測されるものである。
【0004】
また、個々に分割された半導体チップは、その裏面にエポキシ樹脂等で形成された厚さ20〜40μmのダイアタッチフィルム(以下、DAFと呼ぶ)と称するダイボンディング用の接着フィルムが装着され、この接着フィルムを介して半導体チップを支持するダイボンディングフレームに加熱することによりボンディングされる場合がある。半導体チップの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着する方法としては、従来、半導体ウェハの裏面に接着フィルムを貼着し、この接着フィルムを介して半導体ウェハをダイシングテープに貼着した後、半導体ウェハの表面に形成されたストリートに沿って切削ブレードにより接着フィルムと共に切削することにより、裏面に接着フィルムが装着された半導体チップを形成している。しかし、切削ブレードにより半導体ウエハとともに接着フィルムを切断して個々の半導体チップに分割する際に、半導体チップの裏面に欠けが生じたり、接着フィルムに髭状のバリが発生してワイヤボンディングの際に断線の原因になるという問題がある。
【0005】
特許文献1には、ウェハ裏面にレジスト膜等からなるマスク層を形成して、レーザー光によるダイシング用のマスクパターンを形成し、プラズマエッチングにより個々のチップに分割する方法が提案されているが、レジスト等による被膜、およびマスク層の剥離が必要であるため工程が煩雑なものとなる。また、マスク層の膜厚さやエッチングレートの制御が困難であり、分割自体が完全にできない等の不具合がでることが想定される。また、DAFが介在する場合については記載がない。
また、特許文献2および3には、先ダイシング及びDAFのレーザー切断による方法が提案されている。特許文献2にはダイシングテープ側からレーザーを照射しDAFのみを分割する方法が記載されているが、レーザーがダイシングテープを透過し、DAFを完全に切断するためのレーザー強度の制御が困難であったり、ダイシングテープ材料選定において制限があった。また、DAFとダイシングテープ粘着剤層との界面においてレーザー照射によるデブリ等が発生し、DAF切断面の品質に問題を有していた。また、特許文献3は先ダイシングで分割後、ウェハ裏面にDAFを貼合しチップ分割ラインに合わせてDAFを切断するのは制御が非常に困難であった。
【特許文献1】特開2005−191039号公報
【特許文献2】特開2003−334812号公報
【特許文献3】特開2004−001076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、チッピングの発生を抑えてダイシングすることを可能とする半導体ウェハ処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の半導体ウェハの製造方法を提供するものである。
(1)次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)半導体ウェハのストリートに沿って該表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(c)前記(b)工程の前、又は(b)工程の後に、支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、半導体ウェハの裏面側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(d)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハをエッチングしてチップに個片化する工程、
(e)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(f)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
(2)次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削し、研削された裏面側に接着フィルムを貼合する工程、
(b)半導体ウェハのストリートに沿って該表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(c)前記(b)工程の前、又は、(b)工程の後に、支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、接着フィルム側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(d)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハと該半導体ウェハ裏面側にある接着フィルムを一括してエッチングしてチップに個片化する工程、
(e)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(f)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
(3)次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削し、研削された裏面側に接着フィルムを貼合する工程、
(b)半導体ウェハのストリートに沿って該接着フィルムのみを切断し溝を入れる工程、
(c)半導体ウェハのストリートに沿って該表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(d)前記(c)工程の前、又は、(c)工程の後に、支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、個片化された該接着フィルム側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(e)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハをエッチングしてチップに個片化する工程、
(f)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(g)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
(4)前記表面保護テープの基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する樹脂組成物からなる(1)〜(3)のいずれか1項に記載の半導体ウェハの処理方法。
【0008】
(5)次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)該表面保護テープを半導体ウェハから剥離し、別の表面保護テープをパターン面側に貼合する工程、
(c)半導体ウェハのストリートに沿ってパターン面側に貼合されている表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(d)前記(b)工程の前、又は(b)工程の後、又は(c)工程の後に支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、半導体ウェハの裏面側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(e)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハをエッチングしてチップに個片化する工程、
(f)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(g)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
(6)次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)該表面保護テープを半導体ウェハから剥離する工程、
(c)別の表面保護テープをパターン面側に貼合する工程、
(d)前記(b)工程の前、又は、(b)工程の後、又は(c)工程の後に研削された裏面側に接着フィルムを貼合する工程、
(e)半導体ウェハのストリートに沿ってパターン面側に貼合されている表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(f)前記(b)〜(e)の工程のいずれかの前、又は、後に支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、接着フィルム側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(g)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハと該半導体ウェハ裏面側にある接着フィルムを一括してエッチングしてチップに個片化する工程、
(h)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(i)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
【0009】
(7)次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)該表面保護テープを半導体ウェハから剥離する工程、
(c)別の表面保護テープをパターン面側に貼合する工程、
(d)前記(b)工程の前、又は、(b)工程の後、又は(c)工程の後に研削された裏面側に接着フィルムを貼合する工程、
(e)半導体ウェハのストリートに沿って該接着フィルムのみを切断し溝を入れる工程、
(f)半導体ウェハのストリートに沿ってパターン面側に貼合されている表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(g)前記(b)〜(f)の工程のいずれかの前、又は、後に支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、個片化された該接着フィルム側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(h)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハをエッチングしてチップに個片化する工程、
(i)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(j)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
(8)前記別の表面保護テープの基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する樹脂組成物からなる(5)〜(7)のいずれか1項に記載の半導体ウェハの処理方法。
(9)前記支持固定用テープがダイシングテープであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の半導体ウェハの処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、チップ切断面のチッピングを低減することできる。また接着フィルムを用いた場合には、接着フィルムは裏面保護テープに貼着された状態で一括してレーザー光線により切断することができ、レーザー強度の制御が比較的簡単となり、これによりDAFの切断性が良くなるため溶融されたデブリが飛散することがなく、半導体チップのボンディングパッドを汚染することはない。また、ブレードにて切断する場合もDAFの切断に何ら問題はなく溶融されたデブリが飛散することはない。また、本発明の方法のそれぞれの工程においては、従来、半導体ウェハ加工に用いられている装置を使用することができ、使用条件の制御が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の半導体ウェハの処理方法の好ましい実施態様を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下に示される工程に用いられる装置及び材料は、特に断りのない限り、従来、半導体ウェハ加工に用いられているものを使用することができ、装置の使用条件は常法により適切な条件を設定することができる。
【0012】
まず、本発明の参考実施態様を図1−1および1−2の概略断面図を参照して説明する。
図1−1(a)は、半導体ウェハ1のパターン面2側に表面保護テープ3を貼合された状態で半導体ウェハ1の裏面を研削し、研削された裏面側に裏面保護テープ4が貼合された半導体ウェハ1の概略断面図である。なお、図中、5は表面保護テープ3の粘着剤層を、6は裏面保護テープ4の粘着剤層をそれぞれ示すものである。また、図示はしないが、パターン面2には複数のストリートが平面図において格子状に形成されている。
【0013】
次いで図1−1(b)に示されるように、レーザー光照射手段7から照射されたレーザー光8により、半導体ウェハ1のストリートに沿って、裏面保護テープ4のみ切断し、図1−1(c)に示されるように溝9を入れる。溝9の幅は、ストリート幅以下とすることが好ましい。また、図示された態様では、レーザー光により裏面保護テープを切断して溝9を作成しているが、また、裏面保護テープ4の切断方法はこれに限定されるものでなく、例えばブレードによる切断等、溝を作成することができれば任意の方法を用いることができる。
【0014】
次いで、図1−1(d)に示されるように、エッチングガス発生ガスが供給された処理空間において、個片化された裏面保護テープ側からプラズマ10による処理を行い、該溝においてむき出しにされたウェハをエッチングし、図1−1(e)に示されるように半導体ウェハがチップに個片化する。
プラズマ10による処理は、例えば、プラズマ発生ガス供給手段11の下面の噴出部からプラズマ発生ガスを噴出させると共に、プラズマ発生ガス供給手段11と表面保護テープ3の粘着剤層5とは反対側の面が載置された高周波側電極(図示せず)との間に高周波電圧を印加してプラズマ発生ガスをプラズマ化させ、溝9に供給する。そうすると、プラズマのエッチング効果により、ダイシングテープ4が被覆されていない部分、すなわち、溝9によりむき出しされた半導体ウェハ1がエッチングされ、個々のデバイスに分割される。
【0015】
次いで、分割され個片化された半導体ウェハ1は、続いて、図1−2の概略断面図で示される工程が行われる。なお、図1−2において、図1−1と同じ符号で示されるものは、図1−1におけるものと同じ意味を有する。
まず、図1−2(f)で示されるように、ダイシングされ個片化された裏面保護テープ4側に支持固定用テープ13を矢印方向に貼合する。なお、図中、14は支持固定用テープ13の粘着剤層を示すものである。
次に、個片化された裏面保護テープ4側に貼合された支持固定用テープ13をリングフレーム(図示しない)にて支持固定し、図1−2(g)に示すように、パターン面2側の表面保護テープ3を矢印方向に剥離する。図1−2(h)は、表面保護テープ3の剥離が完了した状態を示すものである。
次に、図1−2(i)に示すようにピン15によりチップを突き上げコレット16により吸着してチップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す。
この態様の半導体ウェハの処理方法では、半導体ウェハをプラズマでエッチングするため、チップ切断面のチッピングを低減することができる。
【0016】
図1−2(i)に示すピックアップにおいて、半導体ウェハ1のチップに貼合された裏面保護テープ4の粘着力は、リングフレームにて支持固定している支持固定用テープ13の粘着力より低いことが好ましい。裏面保護テープ4の粘着力が支持固定用テープ13の粘着力より低いことで、裏面保護テープを支持固定用テープに残してチップまたは接着フィルム付きのチップのみをピックアップすることができる。
半導体ウェハ1のチップまたは接着フィルム12に貼合された裏面保護テープ4の粘着力を、リングフレームにて支持固定している支持固定用テープ13の粘着力より低くする方法は、特に限定されるものではないが、例えば、チップまたは接着フィルム12に貼合された裏面保護テープ4の粘着剤層6として紫外線硬化型粘着剤層を有するUV硬化型のテープを用い、リングフレームにて支持固定している支持固定用テープ13の粘着剤層14として非紫外線硬化型粘着剤層を有する非UV硬化型のテープを用い、常法により紫外線処理することで行うことができる。
【0017】
また、図1に示す実施態様においては、ダイシングされ個片化された裏面保護テープ4の側にリングフレームにて支持固定した支持固定用テープ13を貼合し、パターン面2側の表面保護テープを剥離した後、支持固定用テープ13側からピン15にて突き上げチップをピックアップする方法であるが、支持固定用テープを用いず、表面保護テープ3側からピンで突き上げピックアップしても良い。その場合、表面保護テープ2を半導体ウェハ1のパターン面2に貼合する段階から表面保護テープ3をリングフレームにて支持固定した状態にしておけば、表面保護テープ3側からピンで突き上げが可能となる。この場合、そのまま突き上げるとチップのパターン面3が下側となり、チップの裏面、又は接着フィルム12面が上側となるため、ダイボンディング時にチップを反転させボンディングさせる必要がある場合がある。
支持固定用テープを用いず、表面保護テープ3側からピンで突き上げピックアップすることで支持固定用テープを貼合する工程および表面保護テープを剥離する工程が無くなるため、所要時間を短縮することができる。
【0018】
図2は本発明の好ましい第1の態様を説明する概略断面図である。
図2(a)は、半導体ウェハ1のパターン面2側に表面保護テープ3を貼合された状態で半導体ウェハ1の裏面を研削し、研削された裏面側に支持固定用テープ13が貼合された半導体ウェハ1の概略断面図である。なお、図中、5は表面保護テープ3の粘着剤層を、14は支持固定用テープ13の粘着剤層をそれぞれ示すものである。支持固定用テープ13はリングフレーム(図示せず)にて支持固定された状態である。
次いで図2(b)に示されるように、レーザー光照射手段7から照射されたレーザー光8により、半導体ウェハ1のストリートに沿って、表面保護テープ3を切断し、図2(c)に示されるように溝9を入れる。また、表面保護テープ3の好ましい切断手段については、上記の参考実施態様における好ましい裏面保護テープ4の切断手段と同様である。
次いで、上記の参考実施態様と同様に、図2(d)に示されるように、エッチングガス供給手段11から噴出させ個片化された表面保護テープ3側からプラズマ10による処理を行い、該溝においてむき出しにされたウェハをエッチングし、図2(e)に示されるように半導体ウェハがチップに個片化する。
次いで、図2(f)に示すように個片化された表面保護テープ3を除去する。除去する方法は様々な方法が適用可能であるが、図示はしないが、例えば個片化された表面保護テープ3の上から剥離用テープを貼合し密着させ、その後剥離用テープを剥離する事で個片化された表面保護テープ3を一緒に剥がす方法などが挙げられる。
個片化された半導体ウェハ1のチップは、図2(g)に示されるようにピン15によりチップを突き上げコレット16により吸着してチップをピックアップし、ダイボンディング工程に移される。
この態様の半導体ウェハの処理方法では、表面保護テープをプラズマエッチングのマスク材として用いることで、マスク用のテープあるいはシートを改めて貼合する必要が無く、所要時間を短縮することができる。
【0019】
上記の図2に示す態様では、支持固定用テープ13は、レーザー光8により表面保護テープ3を切断し溝9を入れる工程の前に、半導体ウェハ1の裏面側に貼合しているが、溝9を入れる工程の後で支持固定用テープ13を半導体ウェハ1の裏面側に貼合しても良い。
【0020】
また、上記の図2に示す態様では、半導体ウェハ1の裏面の研削時に貼合されていた表面保護テープ(以下、「最初の表面保護テープ」ともいう)に溝9を入れているが、半導体ウェハ1の裏面の研削後、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離し、別の表面保護テープをパターン面に貼合し、その別の表面保護テープに溝を入れる態様であっても良い。
この態様では、支持固定用テープ13を半導体ウェハの裏面側に貼合する時点は、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離する前でも良いし、最初の表面保護テープを剥離後、別の表面保護テープの貼合前でも良いし、別の表面保護テープに溝を入れた後であっても良い。
別の表面保護テープを用いることでプラズマエッチングには耐えられない表面保護テープを裏面研削に適応することができる。
【0021】
図3は本発明の好ましい第2実施態様を説明する概略断面図である。
図3(a)は、半導体ウェハ1のパターン面2側に表面保護テープ3を貼合された状態で半導体ウェハ1の裏面を研削し、研削された裏面側に接着フィルム12を貼合し、該接着フィルム12の上面から支持固定用テープ13が貼合された半導体ウェハ1の概略断面図である。なお、図中、5は表面保護テープ3の粘着剤層を、14は支持固定用テープ13の粘着剤層をそれぞれ示すものである。また上記の態様では、接着フィルム12を貼合し、該接着フィルム12の上面から支持固定用テープ13を貼合しているが、ダイボンディング用の接着フィルムと支持固定用テープが積層された一体型のものを半導体ウェハ1の裏面に貼合しても良い。支持固定用テープ13はリングフレーム(図示せず)にて支持固定された状態である。
次いで図3(b)に示されるように、レーザー光照射手段7から照射されたレーザー光8により、半導体ウェハ1のストリートに沿って、表面保護テープ3を切断し、図3(c)に示されるように溝9を入れる。また、表面保護テープ3の好ましい切断手段については、上記の参考実施態様における好ましい裏面保護テープ4の切断手段と同様である。
次いで、上記の参考実施態様と同様に、図3(d)に示されるように、エッチングガス供給手段11から噴出させ個片化された表面保護テープ3側からプラズマ10による処理を行い、該溝においてむき出しにされたウェハ及びその裏面側にある接着フィルム12をエッチングし、図3(e)に示されるように半導体ウェハ及び接着フィルム12がチップに個片化する。
次いで、図3(f)に示すように個片化された表面保護テープ3を除去する。除去する方法は様々な方法が適用可能であるが、図示はしないが、例えば個片化された表面保護テープ3の上から剥離用テープを貼合し密着させ、その後剥離用テープを剥離することで個片化された表面保護テープ3を一緒に剥がす方法などが挙げられる。
個片化された半導体ウェハ1のチップは、図3(g)に示されるようにピン15によりチップを突き上げコレット16により吸着してチップをピックアップし、ダイボンディング工程に移される。図3(g)に示すようなコレット16による吸着の際には接着フィルム12は半導体ウェハ1のチップに接着して移動することになる。
【0022】
上記の図3に示す態様では支持固定用テープ13は、レーザー光8により表面保護テープ3を切断し溝9を入れる工程の前に、接着フィルム12の上面に貼合しているが、溝9を入れる工程の後で支持固定用テープ13を接着フィルム12の上面に貼合しても良い。
【0023】
また、上記の図3に示す態様では、半導体ウェハ1の裏面の研削時に貼合されていた表面保護テープ(最初の表面保護テープ)に溝9を入れているが、半導体ウェハ1の裏面の研削後、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離し、別の表面保護テープをパターン面に貼合し、その別の表面保護テープに溝を入れる態様であっても良い。
この態様では、接着フィルム12を半導体ウェハの裏面側に貼合する時点は、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離する前でも良いし、最初の表面保護テープを剥離後、別の表面保護テープの貼合前でも良いし、別の表面保護テープに溝を入れた後であっても良い。
また、この態様では、支持固定用テープ13を接着フィルム12側に貼合する時点は、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離する前から別の表面保護テープに溝を入れた後の間のいずれかの工程の前後であれば良い。
【0024】
図4−1及び図4−2は本発明の好ましい第3の実施態様を説明する概略断面図である。
図4−1(a)は、半導体ウェハ1のパターン面2側に表面保護テープ3を貼合された状態で半導体ウェハ1の裏面を研削し、研削された裏面側に接着フィルム12が貼合された半導体ウェハ1の概略断面図である。なお、図中、5は表面保護テープ3の粘着剤層を示すものである。
次いで図4−1(b)に示されるように、レーザー光照射手段7から照射されたレーザー光8により、半導体ウェハ1のストリートに沿って、接着フィルム12を切断し、図4−1(c)に示されるように溝9を入れる。また、接着フィルム12の好ましい切断手段については、上記の参考実施態様における好ましい裏面保護テープ4の切断手段と同様である。
【0025】
次いで図4−1(d)に示されるように、支持固定用テープ13をリングフレームにて支持固定した状態で、個片化された該接着フィルム12側に支持固定用テープ13を貼合し、レーザー光照射手段7から照射されたレーザー光8により、半導体ウェハ1のストリートに沿って、表面保護テープ3を切断し、図4−1(e)に示されるように溝9を入れる。また、表面保護テープ3の好ましい切断手段については、上記の参考実施形態における好ましい裏面保護テープ4の切断手段と同様である。図中、14は支持固定用テープ13の粘着剤層を示す。
次いで、上記の参考実施態様と同様に、図4−2(f)に示されるように、エッチングガス供給手段11から噴出させ個片化された表面保護テープ3側からプラズマ10による処理を行い、該溝においてむき出しにされたウェハをエッチングし、図4−2(g)に示されるように半導体ウェハがチップに個片化する。
次いで、図4−2(h)に示すように個片化された表面保護テープ3を除去する。除去する方法は様々な方法が適用可能であるが、図示はしないが、例えば個片化された表面保護テープ3の上から剥離用テープを貼合し密着させ、その後剥離用テープを剥離することで個片化された表面保護テープ3を一緒に剥がす方法などが挙げられる。
個片化された半導体ウェハ1のチップは、図4−2(i)に示されるようにピン15によりチップを突き上げコレット16により吸着してチップをピックアップし、ダイボンディング工程に移される。図4−2(i)に示すようなコレット16による吸着の際には接着フィルム12は半導体ウェハ1のチップに接着して移動することになる。
【0026】
上記の図4に示す態様では支持固定用テープ41は、接着フィルム12に溝9を入れた後であって、表面保護テープ3に溝9を入れる工程の前に、接着フィルム12の上面に貼合しているが、表面保護テープ3に溝9を入れる工程の後で支持固定用テープ13を接着フィルム12の上面に貼合しても良い。
【0027】
また、上記の図4に示す態様では、半導体ウェハ1の裏面の研削時に貼合されていた表面保護テープ(最初の表面保護テープ)に溝9を入れているが、半導体ウェハ1の裏面の研削後、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離し、別の表面保護テープをパターン面に貼合し、その別の表面保護テープに溝を入れる態様であっても良い。
この態様では、接着フィルム12を半導体ウェハの裏面側に貼合する時点は、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離する前でも良いし、最初の表面保護テープを剥離後、別の表面保護テープの貼合前でも良いし、別の表面保護テープに溝を入れた後であっても良い。
また、この態様では、支持固定用テープ13を接着フィルム12側に貼合する時点は、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離する前から別の表面保護テープに溝を入れた後の間のいずれかの工程の前後であれば良い。
【0028】
以上のように、第1〜第3実施態様における表面保護テープ3は、半導体ウェハ1の裏面研削の工程に表面保護用として使用され、更にその後の工程においても表面保護用として使用しても良いし、裏面研削時の表面保護テープとその後の工程における表面保護テープは全く別のものとしても何ら問題無い。裏面研削時の表面保護テープに必要とされる性能と、その後の工程おいて使用される表面保護テープに必要とされる性能は異なるため、1つの表面保護テープにこれらの要求性能を盛り込むことにより表面保護テープのコストアップに繋がる場合は、それぞれの要求性能を有した表面保護テープをそれぞれの工程で使い分ける方法でも良い。
【0029】
ところで、本願発明の上記の第1〜第3の実施態様では表面保護テープ3が、プラズマ処理時のマスク材として機能する。しかしながら、そのマスク材として耐熱性が不十分であると、プラズマ処理時にマスク材が軟化、溶融、あるいは熱膨張によって半導体ウェハ1のストリート領域にはみ出し、目的とするエッチング効率が十分に得られない場合がある。
これに対しては、表面保護テープ3の基材に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド及びポリイミド等の耐熱性の高い樹脂を用いることによって、より高いエッチング効率を得ることができる。
【0030】
また、前記ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド及びポリイミドは、それぞれ単体もしくは2種以上を混合させたものを用いても良い。さらに、耐熱性を大きく低下させない範囲でそれら以外の樹脂や充填材、添加剤等が配合された樹脂組成物を用いても良い。
【0031】
なお、前記ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド及びポリイミドについて特に制限はなく、例えば容易に入手可能な市販品を用いることができる。前記ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド及びポリイミドのうちいずれか1種の市販品シートを用いるのが最も容易かつ効率的である。
【0032】
また、本発明においては、プラズマ処理時のマスクとして、裏面保護テープ、又は表面保護テープの粘着剤層を放射線硬化型粘着剤とし、それを放射線により硬化させた層を利用する方法もある。尚、ここで言う放射線とは、紫外線のような光線、または電子線のような電離性放射線の事をさす。粘着剤は一般的にプラズマ発生用ガスを選定すればプラズマにより簡単にエッチングされる事になるが、放射線により硬化された後の粘着剤層は架橋構造をとる事によりエッチングされ難くなる。よって、エッチングされるべきではない部分に選択的に放射線を照射し、エッチングにより除去したい部分のみ選択的に照射をしなければ、照射をした部分のみマスクとして利用出来るわけである。具体的には、裏面保護テープ、又は表面保護テープを半導体ウェハの裏面、又はパターン面、又は接着フィルム面に貼合した後、裏面保護フィルム、表面保護フィルムの基材フィルムのみを剥離し、むき出しにされた粘着剤層のストリート部に相当する部分のみをマスキングする等して放射線を照射すれば良い。或いは、基材フィルムを剥離する前に、基材フィルム上でマスキングをして放射線を照射した後に、基材フィルムを剥離する方法でも良い。又、基材フィルムそのものに予めマスキング機能を持たせても良い。その方法として、例えば放射線が紫外線である場合、ストリートに相当する部分のみ紫外線が透過しないような色を付ける方法や、或いは、ストリートに相当する部分のみ紫外線の透過率が低い材料で構成された基材フィルムを使用する方法等が挙げられる。
【0033】
基材フィルムを剥離した後は、ストリートに相当する部分以外のみ放射線が照射され硬化した粘着剤層がむき出しとなり、その面からプラズマ処理をする事により、ストリートに相当する部分のみがエッチングされ除去される事になる。これにより半導体ウェハのストリート部や接着フィルムのストリートに相当する部分がプラズマ処理によりエッチングされチップに個片化する事が可能となるものである。基材フィルムの粘着剤層からの剥離については、基材フィルムと粘着剤層との密着力を必要以上に高めず、貼合した後に剥離可能な程度の密着力に設定しておく。必要なレベルとしては、半導体ウェハの裏面、又は表面、又は接着フィルム面に貼合する際に基材フィルムと粘着剤層が剥がれない程度であれば良く、特別高い密着力を必要とするわけではない。
【0034】
図5は、上記の第1の実施態様においてプラズマ処理時のマスクとして、表面保護テープの粘着剤層を放射線硬化型粘着剤とし、それを放射線により硬化させた層を利用した1例の変形実施態様の説明図である。図5のうち(a)〜(c)は概略断面図、(d)および(e)は平面図である。
まず図5(a)に示すパターン面2側に基材フィルム51と放射線硬化型粘着剤層52からなる表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハ1の裏面を研削し、図5(b)に示す状態とする。
次いで、該表面保護テープの基材フィルム51のみを剥離して、図5(c)に示すように粘着剤層52をむき出しにする。図5(d)は、図5(c)の状態の粘着剤層52側から見た半導体ウェハ1の平面図である。むき出しにされた未硬化の粘着剤層52aのうち、半導体ウェハ1のストリート17以外の部分に放射線を照射し、図5(e)に示すように、ストリート17以外の部分を硬化した粘着剤層52bとする。
その後、上記の第6の実施態様と同様に、支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、半導体ウェハ1の裏面側に該支持固定用テープを貼合する。
次いで、該粘着剤層52側から第1の実施態様と同様にプラズマ処理し、ストリート部に相当する粘着剤層52の放射線の照射されていない部分、及び半導体ウェハ1のストリート部をエッチングしてチップに個片化する。
次いで、第1の実施態様で、個片化された表面保護テープを剥離するのと同様な方法で、パターン面2側の個片化された放射線照射後の粘着剤層52を剥離する。
次いで、第1の実施態様と同様に、チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す。
【0035】
図6は、上記の第1の実施態様において、半導体ウェハ1の裏面の研削後、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離し、別の表面保護テープをパターン面に貼合し、プラズマ処理時のマスクとして表面保護テープの粘着剤層を放射線硬化型粘着剤とし、それを放射線により硬化させた層を利用した1例の変形実施態様の説明図である。図6のうち(a)〜(e)は概略断面図、(f)および(g)は平面図である。
まず図6(a)に示すパターン面2側に表面保護テープ5を貼合された状態で半導体ウェハ1の裏面を研削し、図6(b)に示す状態とする。図中、5は表面保護テープ3の粘着剤層である。
次いで、図6(c)に示すように、表面保護テープ5を半導体ウェハ1から剥離し、図6(d)に示すように、基材フィルム61と放射線硬化型粘着剤層62からなる別の表面保護テープをパターン2面側に貼合する。
次いで、図6(e)に示すように別の表面保護テープの基材フィルム61のみを剥離し粘着剤層62をむき出しにする。図6(f)は、図6(e)の状態の粘着剤層62側から見た半導体ウェハ1の平面図である。むき出しにされた未硬化の粘着剤層62aのうち、半導体ウェハ1のストリート17以外の部分に放射線を照射し、図6(g)に示すように、ストリート17以外の部分を硬化した粘着剤層62bとする。
その後、上記の第1の実施態様と同様に、支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、半導体ウェハ1の裏面側に該支持固定用テープを貼合する。
次いで、該粘着剤層62側から第1の実施態様と同様にプラズマ処理し、ストリート部に相当する粘着剤層62の放射線の照射されていない部分、及び半導体ウェハ1のストリート部をエッチングしてチップに個片化する。
次いで、第1の実施態様で、個片化された表面保護テープを剥離するのと同様な方法で、パターン面2側の個片化された放射線照射後の粘着剤層62を剥離する。
次いで、第1の実施態様と同様に、チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す。
【0036】
また、図示はしないが上記第2の実施態様においても同様にして、プラズマ処理時のマスクとして、表面保護テープの粘着剤層を放射線硬化型粘着剤とし、それを放射線により硬化させた層を利用することができる。
【0037】
上記の裏面保護テープ、又は表面保護テープに適用される放射線硬化型粘着剤層については特に限定されるものではなく、一般的には、通常のアクリル系粘着剤と放射線重合性化合物とを主成分としてなるものである。又、粘着剤層も特に限定されるものではなく、通常のアクリル系粘着剤等が適用可能であり、又、放射線硬化型である場合は上記と同じようにアクリル系粘着剤と放射線重合性化合物とを主成分としてなる組成のものが適用される。これらアクリル系粘着剤、及び放射線重合性化合物については具体的には以下のものが適用可能である。
【0038】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系共重合体及び硬化剤を成分とするものである。(メタ)アクリル系共重合体は、例えば(メタ)アクリル酸エステルを重合体構成単位とする重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の(メタ)アクリル系重合体、或いは官能性単量体との共重合体、及びこれらの重合体の混合物等が挙げられる。これらの重合体の分子量としては重量平均分子量が50万〜100万程度の高分子量のものが一般的に適用される。又、硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基と反応させて粘着力及び凝集力を調整するために用いられるものである。例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。硬化剤の添加量は、書房の粘着力に応じて調整すればよく、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜5.0質量部が適当である。
【0039】
放射線硬化型粘着剤は、前記のアクリル系粘着剤と放射線重合性化合物とを主成分としてなるのが一般的である。放射線重合性化合物とは、例えば紫外線の照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分量化合物が広く用いられ、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等が広く適用可能である。
【0040】
また、上記の様なアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いる事も出来る。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。
【0041】
放射線硬化型粘着剤中のアクリル系粘着剤と放射線重合性化合物との配合比としては、アクリル系粘着剤100質量部に対して放射線重合性化合物を50〜200質量部、好ましくは50〜150質量部の範囲で配合されるのが望ましい。この配合比の範囲である場合、放射線照射後に粘着剤層の粘着力は大きく低下する。
【0042】
更には、放射線硬化型粘着剤は、上記の様にアクリル系粘着剤に放射線重合性化合物を配合する替わりに、アクリル系粘着剤自体を放射線重合性アクリル酸エステル共重合体とする事も可能である。
【0043】
また、放射線により粘着剤層を重合させる場合には、光重合性開始剤、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を併用する事が出来る。これらのうち少なくとも1種類を粘着剤層に添加する事により、効率よく重合反応を進行させる事が出来る。
【0044】
また、本発明における裏面保護フィルム、支持固定用テープはピックアップ工程において良好なピックアップ性や場合によってはエキスパンド性等も求められるため、該裏面保護フィルム、支持固定用テープにはダイシングテープを用いるのが好ましい。又、ダイボンディング用の接着フィルムと裏面保護テープが積層された一体型のものを適用する場合は、ダイシングダイボンドフィルムを用いるのが好ましい。
【0045】
以下、好ましい実施態様に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。
【0046】
8インチウェハのパターン面側にウェハと略同径となるように紫外線(UV)硬化型表面保護テープ(SP−575B−150(古河電工製))を貼合し、バックグラインダー(DFD8540(ディスコ社製))にてウェハ厚が50μmになるまで研削した。次いで、研削されたウェハ裏面側にウェハと略同径になるようにダイアタッチフィルム(DAF)を貼合し、更に該DAFの上にウェハと略同径になるように、UV硬化型ダイシングテープ(UC−353EP−110(古河電工製))を貼合した。次いで、半導体ウェハのパターン面側のストリート部に沿って、ダイサー(DFD6340(ディスコ社製))にてダイシングテープおよびDAFを切断した後、その面側からプラズマを照射して、プラズマエチングし、ウェハをダイシングしてチップに分割した。プラズマエチングには、図7の説明図で示される以下のプラズマエッチング装置を用いた。
【0047】
図7において、真空チャンバ21の内部はプラザ処理を行うための密閉された処理空間となっており、高周波側電極22、ガス供給電極23が対向して配置されている。高周波側電極22には半導体ウェハ24が周囲を絶縁リング25により囲まれ載置され真空吸引、又は静電吸引により保持されている。ガス供給電極23に設けられたガス供給孔26には制御バブル27を介してプラズマ発生用ガス供給部28によりフッ素系のプラズマ発生用ガスが供給される。供給されたプラズマ発生用ガスは、ガス供給電極23の下面に装着された多孔質プレート29を介して高周波側電極22上の半導体ウェハ24に対して均一に吹き付けられる。
この状態で、高周波電源部30を駆動して高周波側電極22に高周波電圧を印加することにより、ガス供給電極23と高周波側電極22との間にはフッ素系ガスのプラズマが発生し、これにより半導体ウェハ24のストリート部分のみをプラズマエッチングによって除去するプラズマダイシングが行われる。このプラズマダイシング過程においては、冷却ユニット31を駆動して冷媒を高周波電極22内に循環させ、プラズマの熱によって半導体ウェハ24が昇温するのを防止するものである。
【0048】
また、プラズマ発生用ガスとしてSF及びOの混合ガスを用い、0.5μm/sのエッチングレートでプラズマエッチングを行った。
更に、市販の非UV硬化型ダイシングテープを分割されたUV硬化型ダイシングテープ側に貼合しリングフレームにて支持固定し、更にパターン面側のUV硬化型表面保護テープにUVを照射した後、剥離させた。その後、ダイシングテープ側からUVを照射しDAFに直接貼合されているUV硬化型ダイシングテープの粘着力を低減させ、ピックアップ工程にて、裏面側にDAFが貼合された状態のチップをピックアップした。
上記処理においては、ダイシングにおいて、チッピングは観測されず、また良好にピックアップすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1−1】本発明の参考実施態様における半導体ウェハ1の個片化までの工程を説明する概略断面図である。
【図1−2】本発明の参考実施態様における半導体ウェハ1の個片化後からダイボンディング工程へ移されるまでを説明する概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施態様を説明する概略断面図である。
【図3】本発明の第2の実施態様を説明する概略断面図である。
【図4−1】本発明の第3実施態様における表面保護テープ3の切断までの工程を説明する概略断面図である。
【図4−2】本発明の第3実施態様におけるエッチング工程からダイボンディング工程へ移されるまでを説明する概略断面図である。
【図5】第1の実施態様においてプラズマ処理時のマスクとして、表面保護テープの粘着剤層を放射線硬化型粘着剤とし、それを放射線により硬化させた層を利用した変形実施態様の説明図である。
【図6】上記の第1の実施態様において、半導体ウェハ1の裏面の研削後、最初の表面保護テープを半導体ウェハから剥離し、別の表面保護テープをパターン面に貼合し、プラズマ処理時のマスクとして表面保護テープの粘着剤層を放射線硬化型粘着剤とし、それを放射線により硬化させた層を利用した変形実施態様の説明図である。
【図7】プラズマエッチング装置の説明図である。
【0050】
1 半導体ウェハ
2 パターン面
3 表面保護テープ
4 裏面保護テープ
5 表面保護テープの粘着剤層
6 裏面保護テープの粘着剤層
7 レーザー光照射手段
8 レーザー光
9 溝
10 プラズマ
11 エッチングガス供給手段
12 接着フィルム(DAF)
13 支持固定用テープ
14 支持固定用テープの粘着剤層
15 ピン
16 コレット
21 真空チャンバ
22 高周波電極
23 ガス供給電極
24 半導体ウェハ
25 絶縁リング
26 ガス供給孔
27 制御バブル
28 プラズマ発生用ガス供給部
29 多孔質プレート
30 高周波電源部
31 冷却ユニット
51 表面保護テープの基材フィルム
52 放射線硬化型粘着剤層
52a 放射線照射前の放射線硬化型粘着剤層
52b 放射線照射後の放射線硬化型粘着剤層
61 表面保護テープの基材フィルム
62 放射線硬化型粘着剤層
62a 放射線照射前の放射線硬化型粘着剤層
62b 放射線照射後の放射線硬化型粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)半導体ウェハのストリートに沿って該表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程
(c)前記(b)工程の前、又は(b)工程の後に、支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、半導体ウェハの裏面側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(d)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハをエッチングしてチップに個片化する工程、
(e)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(f)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
【請求項2】
次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削し、研削された裏面側に接着フィルムを貼合する工程、
(b)半導体ウェハのストリートに沿って該表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程
(c)前記(b)工程の前、又は、(b)工程の後に、支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、接着フィルム側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(d)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハと該半導体ウェハ裏面側にある接着フィルムを一括してエッチングしてチップに個片化する工程、
(e)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(f)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
【請求項3】
次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削し、研削された裏面側に接着フィルムを貼合する工程、
(b)半導体ウェハのストリートに沿って該接着フィルムのみを切断し溝を入れる工程、
(c)半導体ウェハのストリートに沿って該表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(d)前記(c)工程の前、又は、(c)工程の後に、支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、個片化された該接着フィルム側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(e)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハをエッチングしてチップに個片化する工程、
(f)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(g)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
【請求項4】
前記表面保護テープの基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する樹脂組成物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体ウェハの処理方法。
【請求項5】
次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)該表面保護テープを半導体ウェハから剥離し、別の表面保護テープをパターン面側に貼合する工程、
(c)半導体ウェハのストリートに沿ってパターン面側に貼合されている表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(d)前記(b)工程の前、又は(b)工程の後、又は(c)工程の後に支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、半導体ウェハの裏面側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(e)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハをエッチングしてチップに個片化する工程、
(f)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(g)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
【請求項6】
次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)該表面保護テープを半導体ウェハから剥離する工程、
(c)別の表面保護テープをパターン面側に貼合する工程、
(d)前記(b)工程の前、又は、(b)工程の後、又は(c)工程の後に研削された裏面側に接着フィルムを貼合する工程、
(e)半導体ウェハのストリートに沿ってパターン面側に貼合されている表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(f)前記(b)〜(e)の工程のいずれかの前、又は、後に支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、接着フィルム側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(g)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハと該半導体ウェハ裏面側にある接着フィルムを一括してエッチングしてチップに個片化する工程、
(h)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(i)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
【請求項7】
次の各工程を有することを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(a)パターン面側に表面保護テープを貼合された状態で半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)該表面保護テープを半導体ウェハから剥離する工程、
(c)別の表面保護テープをパターン面側に貼合する工程、
(d)前記(b)工程の前、又は、(b)工程の後、又は(c)工程の後に研削された裏面側に接着フィルムを貼合する工程、
(e)半導体ウェハのストリートに沿って該接着フィルムのみを切断し溝を入れる工程、
(f)半導体ウェハのストリートに沿ってパターン面側に貼合されている表面保護テープのみを切断し溝を入れる工程、
(g)前記(b)〜(f)の工程のいずれかの前、又は、後に支持固定用テープをリングフレームにて支持固定した状態で、個片化された該接着フィルム側に該支持固定用テープを貼合する工程、
(h)溝を入れ個片化された表面保護テープ側からプラズマ処理し、該溝においてむき出しにされた半導体ウェハをエッチングしてチップに個片化する工程、
(i)パターン面側の個片化された表面保護テープを剥離する工程、及び
(j)チップをピックアップし、ダイボンディング工程に移す工程。
【請求項8】
前記別の表面保護テープの基材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する樹脂組成物からなる請求項5〜7のいずれか1項に記載の半導体ウェハの処理方法。
【請求項9】
前記支持固定用テープがダイシングテープであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体ウェハの処理方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−33155(P2009−33155A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176885(P2008−176885)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【分割の表示】特願2007−314070(P2007−314070)の分割
【原出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)