説明

半導体デバイスの製造方法及び太陽電池

【課題】効率よくp型半導体とn型半導体とを含む半導体層を備える半導体デバイスを製造する方法を提供する。
【解決手段】その一方がp型半導体材料であり他方がn型半導体材料である、第1の半導体材料と第2の半導体材料とを含む半導体層を備える半導体デバイスを製造する、半導体デバイスの製造方法である。第1の半導体材料と第3の材料とを含む層に対して、第3の材料を第2の半導体材料で置換する置換工程を備え、前記第3の材料は半導体材料ではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造方法、特に光電変換素子の製造方法及びこの方法に従って製造された光電変換素子を含む太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、とりわけ光電変換素子の製造においては、半導体層及び半導体層の製造方法が性能を決定する上で重要となる。
【0003】
例えば非特許文献1には、電子供与体である銅フタロシアニンと電子受容体であるペリレン誘導体とを組み合わせた光電変換素子が開示されている。また、非特許文献2及び特許文献1には、電子供与体であるポリフェニレンビニレンと、電子受容体であるフラーレン誘導体とを組み合わせた光電変換素子が開示されている。また非特許文献3には、電子供与体であるベンゾポルフィリンと、電子受容体であるフラーレン誘導体とを組み合わせた光電変換素子を、ベンゾポルフィリンの前駆体を用いることにより塗布法で作製した光電変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平8−500701号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C.W.Tang著、「Two−Layer organic photovoltaic cell」、Applied Physics Letters、48巻、183−185頁、1986年
【非特許文献2】G.Yu等著、「Polymer Photovoltaic Cells:Enhanced Efficiencies via a Network of Internal Donor−Acceptor Heterojunctions」、Science、270巻、1789頁、1995年
【非特許文献3】Y.Sato等著「Organic photovoltaics based on solution−processed benzoporphyrin」、Proceedings of SPIE、6656巻、66560U頁、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイスの製造費用を低減するためには、半導体層を塗布法を用いて作製することが好ましい。しかしながら、光電変換素子として利用する際の変換効率はまだまだ低く、実用化に向けて更なる変換効率の向上が求められている。このために、単純にp型半導体とn型半導体とを順番に塗布して作製してできる半導体デバイスよりも高い性能を持つ半導体デバイスを、塗布法により製造する方法が望まれている。
【0007】
p型半導体とn型半導体との双方を含む半導体層を用いた、いわゆるバルクヘテロ型太陽電池は、単純にp型半導体とn型半導体とを順番に塗布して作製されるヘテロ型太陽電池と比べて、p型半導体とn型半導体との接触面積が大きくなるため、変換効率が向上することが期待される。しかしながら、そのような半導体層を得るために、p型半導体とn型半導体との双方を含む溶液を用い、これを塗布してp型半導体とn型半導体との双方を含む半導体層を作製することは容易ではない。なぜなら、p型半導体やn型半導体を含む溶液は酸化等による劣化が起こりやすいからである。さらに、非特許文献2及び特許文献1に開示されているような、p型半導体とn型半導体との双方を含む溶液に光が当たった場合、p型半導体からn型半導体への電荷の移動が起こることが、p型半導体とn型半導体との双方を含む溶液の不安定性を招くものと考えられる。また、元来溶解性の低いp型半導体とn型半導体とを同時に溶解可能な溶剤の探索も困難である。本発明は、効率よくp型半導体とn型半導体とを含む半導体層を備える半導体デバイスを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、半導体材料である第1の化合物と半導体材料ではない第3の化合物とを含む層に対して、第3の化合物を半導体材料である第2の化合物で置換することで、第1の化合物と第2の化合物とを含む半導体層を得る方法を見出した。そして、この半導体層を用いた半導体デバイス及び光電変換素子の製造方法を見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の半導体デバイスの製造方法は以下の構成を備える。
【0010】
すなわち、
その一方がp型半導体材料であり他方がn型半導体材料である、第1の半導体材料と第2の半導体材料とを含む半導体層を備える半導体デバイスを製造する、半導体デバイスの製造方法であって、
前記第1の半導体材料と第3の材料とを含む層に対して、前記第3の材料を前記第2の半導体材料で置換する置換工程を備え、
前記第3の材料は半導体材料ではない
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、効率よくp型半導体とn型半導体とを含む半導体層を備える半導体デバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る第2の化合物による第3の化合物の置換の一例を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、半導体材料である第1の化合物(A)と半導体材料ではない第3の化合物(C)とを含む層に対して、第3の化合物(C)を半導体材料である第2の化合物(B)で置換することを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。
【0014】
式1に本発明の概念を示す。また、図1に本発明の一例を示す。
【0015】
A + C → A + B ・・・(1)
図1において、Aは半導体材料である第1の化合物を、Bは半導体材料である第2の化合物を、Cは半導体材料ではない第3の化合物を示す。本発明の製造方法では、第1の化合物(A)と第3の化合物(C)とを含む層に対して、第3の化合物(C)を第2の化合物(B)で置換する。この結果、第1の化合物(A)と第2の化合物(B)とを含む層が形成される。
【0016】
[1 本発明に係る半導体デバイスに含まれる半導体材料]
本発明で用いられる化合物A及びBは各々異なる極性の半導体の材料であり、Aがp型半導体の材料である場合は、Bはn型半導体の材料であるし、Aがn型半導体の材料である場合は、Bはp型半導体の材料である。半導体は、p型半導体とn型半導体に大きく分けられる。また、p型とn型の両極性を示すものが知られているが、特性が強い方の極性を用いて活用されることが望ましい。また、化合物Aに無機半導体材料を、化合物Bに有機半導体材料を用い、ハイブリッド型半導体デバイスとすることも可能である。なお、本発明における半導体とは、成膜した際に移動度が10−4cm/V・s以上を示すものである。移動度は、FET特性、Time of Flight法、SCLC法等によって求める事ができる。
【0017】
[1−1 本発明に係る半導体デバイスに含まれるp型半導体]
本発明に係る半導体デバイスに用いられるp型半導体は、電子供与体として機能すれば特に限定されない。なお、本発明に係るp型半導体デバイスに用いられる半導体は、一種の化合物により構成されても、複数種の化合物の混合物として構成されてもよい。
【0018】
本発明で用いられる好ましいp型半導体の材料となる化合物は、高分子化合物、ポルフィリン化合物又はフタロシアニン化合物である。p型半導体材料の材料として用いられる高分子化合物としては、例えば、ポリチオフェン、ポリチアゾール、ポリチアジアゾール、ポリセレノフェン、及びこれらの共重合体等の複素環高分子を用いることができる。これらの中でもポリチオフェンは、種々の置換基が結合しているものが存在することで、種々の構造が存在し、多種多様なポリマーを合成できるために好ましい。
【0019】
p型の半導体的特性を示す低分子材料の例としては、フタロシアニン及びその金属錯体;ポルフィリン及びその金属錯体;テトラセン(ナフタセン)、ペンタセン、ピレン、ペリレン等のポリアセン;セキシチオフェン等のオリゴチオフェン類;及び、これら化合物を骨格として含む誘導体などが挙げられ、高分子材料の例としては、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン及び、それらの誘導体等が挙げられる。p型半導体の材料として用いられるポルフィリン化合物(以下の式においてQがCH)、フタロシアニン化合物(以下の式においてQがN)としては、例えば、以下のような構造の化合物が挙げられる。
【0020】
【化1−1】

【化1−2】

【化1−3】

上式において、Mは金属あるいは2個の水素原子を表し、金属としては、Cu、Zn、Pb、Mg、Co、Ni等の2価の金属のほか、軸配位子を有する3価以上の金属、例えば、TiO、VO、SnCl、AlCl、InCl、さらには、Si等を用いることができる。これらの化合物は、後に示す式(A2)のように、ビシクロ構造を有する前駆体から誘導できるものであることが望ましい。
【0021】
[1−2 本発明に係る半導体デバイスに含まれるn型半導体]
本発明に係る半導体デバイスに用いられるn型半導体は、電子受容体として機能すれば特に限定されない。n型半導体の材料として例えば、フラーレン及びフラーレン誘導体、ペリレン及びペリレン誘導体、キノリン及びキノリン誘導体、ナフタレン及びナフタレン誘導体、フルオレン誘導体、多環キノン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。また、上記骨格を持つオリゴマーやポリマー、シアノポリフェニレンビニレン等のポリマーも挙げられる。なお、本発明に係る半導体デバイスに用いられるn型半導体は、一種の化合物で構成されても、複数種の化合物の混合物として構成されてもよい。また、本発明で用いられる好ましいn型半導体の材料は、フラーレン誘導体である。
【0022】
[1−3 本発明に係る半導体デバイスに含まれる半導体材料の前駆体]
本発明で用いられる半導体材料には、膜を形成した際には半導体特性を示さないが、変換を施すことで半導体特性を示すようになる材料も用いられる。変換を施す前の材料を前駆体と呼ぶ。
【0023】
本発明に係る前駆体は、成膜性に優れるものが好ましい。成膜性が良好でない半導体材料であっても、前駆体の状態で成膜してから半導体材料に変換することにより、成膜時のコストを抑制することができるからである。特に、塗布法を適用できるようにするためには、前駆体が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲を挙げると、前駆体の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
【0024】
さらに、本発明に係る前駆体は、容易に半導体材料に変換できることが好ましい。前駆体から半導体材料への変換工程において、どのような外的な刺激を前駆体に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理、光照射等を行う。
【0025】
また、本発明に係る前駆体は、変換工程を経て、高い収率で半導体材料に変換されることが好ましい。この際、前駆体から変換して得られる半導体材料の収率は半導体デバイスの性能を著しく損なわない限り任意である。収率の好適な範囲を挙げると、前駆体から得られる半導体材料の収率は高いほど好ましく、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
【0026】
具体的には、好適な前駆体の例としては、式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化2−1】

【0028】
式(A1)において、X及びXの少なくとも一方はπ共役した2価の芳香族環を形成する基を表し、Z−Zは熱又は光により脱離可能な基であって、Z−Zが脱離して得られるπ共役化合物が半導体材料となるものを表す。また、X及びXのうちπ共役した2価の芳香族環を形成する基でないものは、置換又は無置換のエテニレン基を表す。
【0029】
式(A1)で表される化合物は、式(A2)に示すように、熱又は光によりZ−Zが脱離して、平面性の高いπ共役化合物を生成する。この生成されたπ共役化合物が本発明に係る半導体材料である。
【0030】
【化2−2】

【0031】
式(A1)で表される化合物の例としては、式(A3)、式(A4)、式(A5)、又は式(A6)で表される化合物が挙げられる。また、式(A1)で表される前駆体は、例えば式(A7)又は式(A8)で表されるように、半導体材料へと変換される。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
[1−4 本発明に係る半導体デバイスの製造に使用される半導体材料ではない化合物C(第3の化合物)]
本発明に係る半導体デバイスの製造に用いられる化合物C(第3の化合物)は、化合物A(第1の化合物)との混合溶液を作製する時に使用する溶媒に可溶なものであれば、特に限定されない。ただし、化合物Cが半導体材料であると、化合物Aと化合物Cとの混合溶液が不安定で変質しやすくなるため、化合物Cとしては半導体材料ではない化合物を用いる。本発明に係る化合物Cの第一還元電位は、−1.2Vよりマイナス方向にシフトした値であることが好ましい。さらに好ましくは、−1.3Vよりマイナス方向にシフトした値である。第一還元電位がプラス方向にシフトした値であると、化合物Aと化合物Cとの混合溶液において化合物Aからの電子移動が起きやすく、混合溶液の安定性が悪くなる可能性がある。なお還元電位の値は、サイクリックボルタンメトリー法によって測定されることができる。また本明細書における還元電位は、フェロセンの酸化還元電位を基準とした値である。化合物Cは有機溶媒に対して0.1重量%以上溶解するものであればよいが、0.5重量%以上の溶解度を有することが好ましい。化合物Aと化合物Cとの混合溶液に使用されうる溶媒の例を挙げると、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。また、化合物Cは、常温常圧で固体であることが望ましい。
【0037】
以下で述べるように化合物Cは、化合物Aと化合物Cとの混合膜を作製した後、化合物Bによって置換される。すなわち、後述の化合物Bの溶液中の溶媒、後述の化合物Bの前駆体の溶液中の溶媒、又は後述の化合物Cを洗い流すための溶剤に、化合物Cが可溶でなければならない。一方、化合物Bの溶液中の溶媒、化合物Bの前駆体の溶液中の溶媒、又は化合物Cを洗い流すための溶剤に、化合物Aは難溶又は不溶でなければならない。つまり、化合物Aと化合物Cとの混合膜に対して、化合物Bの溶液を塗布して化合物Cを置換する場合には、化合物Aは化合物Bの溶液中の溶媒に難溶又は不溶であって、化合物Cは化合物Bの溶液中の溶媒に可溶でなければならない。また、化合物Aと化合物Cとの混合膜に対して、化合物Bの前駆体の溶液を塗布して化合物Cを置換する場合には、化合物Aは化合物Bの前駆体の溶液中の溶媒に難溶又は不溶であって、化合物Cは化合物Bの前駆体の溶液中の溶媒に可溶でなければならない。また、化合物Aと化合物Cとの混合膜に対して、化合物Cを化合物Cの溶剤で洗い流してから化合物Bの溶液又は化合物Bの前駆体の溶液を塗布する場合は、もちろん化合物Cは化合物Cの溶剤に可溶であるが、化合物Aは化合物Cの溶剤に難溶又は不溶でなければならない。ここで、可溶であるとは溶媒又は溶液に対する溶解度が0.1重量%以上であることを示す。溶解度が0.1重量%未満の場合に難溶又は不溶であるものとする。
【0038】
[1−5 本発明に係る半導体デバイスの製造に使用される化合物Aと化合物Cとの混合膜の作製]
本発明に係る半導体デバイスの製造に用いられる、化合物Aと化合物Cとを含む層は、湿式の塗布法によって化合物Aと化合物Cとの混合膜として形成すればよい。具体的にはダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が挙げられる。これらの塗布法を用いて、化合物Aと化合物Cとの混合溶液を塗布することにより、混合膜が作製される。混合膜が薄すぎると混合膜に欠陥が生じる可能性がある。混合膜の好ましい厚みは10nmから1000nmであり、さらに好ましくは、50nmから200nmである。また、化合物Aの前駆体を用いる場合は、上記の塗布法により化合物Aの前駆体と化合物Cとの溶液から混合膜を作製する。その後熱処理を施すことによって、化合物Aと化合物Cとの混合膜を作製することができる。この時、化合物Aと化合物Cとの混合膜を作製する際に用いる、化合物Aと化合物Cとの混合溶液は、保存安定性の良好なものである事が好ましい。保存安定性が良好であるとは、有機溶媒中に化合物A及び化合物Cを各0.1重量%以上溶解して作製した混合溶液を、窒素下で1週間保管してから本発明の方法に従って塗布して作製した半導体デバイスの光電変換効率が、混合溶液を作製後すぐに塗布して作製した半導体デバイスの光電変換効率の75%以上となることを示す。化合物Aの前駆体と化合物Cとの混合溶液を用いて、化合物Aと化合物Cとの混合膜を作製する場合も、化合物Aの前駆体と化合物Cとの混合溶液は、保存安定性の良好なものである事が好ましい。化合物Aの前駆体は、半導体材料である化合物Aよりも一般には安定であるため、化合物Aの前駆体と化合物Cとの混合溶液の保存安定性はより良好であることが期待される。
【0039】
化合物Aと化合物Cとの混合膜を作製する際に用いる、化合物Aと化合物Cとの混合溶液(又は化合物Aの前駆体と化合物Cとの混合溶液)は、耐久性が高いことが好ましい。ここで耐久性が高いとは、混合溶液の経時変化による不純物の増大が一定以下であることを示す。例えば、不純物量が0.1%以下となるように調製した混合溶液の、耐久性試験後の不純物量は、1%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。ここで不純物量は、液体クロマトグラフィー測定を行った場合の、化合物Aのピーク面積に対する不純物のピーク面積として求めることができる。耐久性試験としては例えば、混合溶液を室内光下かつ大気下において、室温で11日間放置してさらに60℃で12時間35分加熱し、そして88mW/cmのAM1.5Gの光を25分間照射する方法を採用することができる。半導体材料の溶液は前述のように劣化しやすいため、半導体化合物ではない化合物Cを用いると耐久性を高めることができる。
【0040】
[1−6 本発明に係る半導体デバイスの製造における、化合物Bによる化合物Cの置換]
本発明に係る半導体デバイスの製造における、化合物Bによる化合物Cの置換方法としては、二通りある。一つは、化合物Bの溶液を、化合物Aと化合物Cとの混合膜上へ直接塗布する方法である。もう一つは、化合物Bの溶液を化合物Aと化合物Cの混合膜上に塗布する前に、化合物Cを化合物Cの溶剤を用いて洗い流すことで除去し、その後に化合物Bの溶液を塗布する方法である。前者は化合物Cが電荷の輸送を妨げない物質である場合に好ましく用いられ、後者は化合物Cが電荷の輸送を妨げる物質である場合に好ましく用いられる方法である。
【0041】
化合物Bの溶液とは、化合物Aが難溶又は不溶である溶媒に、化合物Bを溶解させた溶液である。化合物Aが難溶又は不溶である溶媒とは、前述の通り、化合物A分子の溶解度が0.1重量%未満の溶媒のことである。化合物Bの溶液を作製するのに用いられる溶媒は、化合物Aが難溶又は不溶である溶媒であれば、特に制限されない。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0042】
また、化合物Aが難溶又は不溶である溶媒に、化合物Bの前駆体を溶解させた溶液を塗布することも可能である。化合物Bの前駆体とは、前出の化合物Aの前駆体と同様、変換処理によって化合物Bへと変換することができる化合物である。化合物Bの前駆体を用いる場合には、化合物Bの前駆体溶液を塗布後に、化合物Bへと熱変換又は光変換する工程が必要である。
【0043】
化合物Bとしては、不溶な半導体材料を用いることもできる。たとえば、酸化亜鉛のような無機半導体を用いることもできる。この場合、化合物Aと化合物Cとの混合膜を作製した後、化合物Cの溶剤を用いて化合物Cを除去する。その後、酸化亜鉛のような不溶な半導体材料である化合物Bを蒸着法によって積層すれば、化合物Aと不溶な化合物Bとを含む半導体膜を作製することができる。
【0044】
[2 本発明に係る半導体デバイス]
本発明に係る半導体デバイスは、1対の電極と、化合物Aと化合物Bとを含む層とを有する。化合物Aと化合物Bとを含む層は、電極間に配置されている。また、化合物Aと化合物Bとを含む層は、化合物Aと化合物Cを含む層に対して、化合物Cを化合物Bによって置換することにより作製される。
【0045】
本発明に係る光電変換素子において、電極に用いられる材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化スズ、酸化亜鉛、金、コバルト、ニッケル、白金等の仕事関数の高い材料と、アルミニウム、銀、リチウム、インジウム、カルシウム、マグネシウム等を組み合わせて用いることが好ましい。なかでも、光が透過する位置にある電極は、ITO,酸化スズ、酸化亜鉛等の透明電極を用いることが好ましい。
【0046】
電極の膜厚に制限はない。ただし、通常10nm以上、中でも50nm以上、また、通常1000nm以下、中でも300nm以下とすることが好ましい。電極が厚すぎると透明性が低下し、高コストとなる可能性があり、薄すぎると直列抵抗が大きく、性能が低下する可能性がある。
【0047】
電極の形成方法にも制限はない。例えば、真空蒸着、スパッタ等のドライプロセスにより形成することができる。また、例えば、導電性インク等を用いたウェットプロセスにより形成することもできる。この際、導電性インクとしては任意のものを使用することができ、例えば、導電性高分子、金属粒子分散液等を用いることができる。さらに、電極は2層以上積層してもよく、表面処理により特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
【0048】
本発明に係る光電変換素子において、化合物Aと化合物Bとを含む層の厚さは特に限定されないが、10nm未満では均一性が十分ではなく、短絡を起こしやすいという問題が生じる。他方、化合物Aと化合物Bとを含む層の厚さが1000nmを超えると内部抵抗が大きくなり、また電極間の距離が離れて電荷の拡散が悪くなる問題が生じるため、好ましくない。そこで、化合物Aと化合物Bとを含む層の厚さは10〜1000nmが好ましく、50〜200nmがさらに好ましい。
【0049】
本発明に係る半導体デバイスは、通常は支持体となる基板を有する。すなわち、基板上に、電極と、化合物Aと化合物Bとを含む層とが形成される。また、さらに正孔取り出し層と電子取り出し層との少なくとも一方が形成されてもよい。基板の材料(基板材料)は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。基板材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイア、チタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン等の有機材料;紙、合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート或いはラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。
【0050】
基板の形状に制限はなく、例えば、板、フィルム、シート等の形状を用いることができる。基板の厚みに制限はない。ただし、通常5μm以上、中でも20μm以上、また、通常20mm以下、中でも10mm以下に形成することが好ましい。基板が薄すぎると半導体デバイスの強度が不足する可能性があり、基板が厚すぎるとコストが高くなったり重量が重くなりすぎたりする可能性がある。
【0051】
本発明に係る半導体デバイスは、例えば、以下の製造方法に従って製造することができる。まず、基板を用意し、基板上に上述の通りに電極層を形成する。次いで、化合物Aと化合物Bとを含む層を、上述の通りに電極層上に形成する。さらに、化合物Aと化合物Bとを含む層上に、上述の通りにもう1つの電極層を形成すればよい。
【0052】
本発明に係る光電変換素子は、1対の電極、及び化合物Aと化合物Bとを含む層の他に、さらに正孔取り出し層と電子取り出し層との少なくとも一方を有することができる。
【0053】
正孔取り出し層の材料は、化合物Aと化合物Bとを含む層から電極へ正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン等の導電性有機化合物や前述のp型半導体等が挙げられる。また、金、インジウム、銀、パラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。さらに、金属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
【0054】
電子取り出し層の材料は、化合物Aと化合物Bとを含む層から電極へ電子の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、バソキュプロイン(BCP)又は、バソフェナントレン(Bphen)、及びこれらにアルカリ金属又はアルカリ土類金属をドープした層が挙げられる。また、電子取り出し層の材料にフラーレン類等のn型半導体材料やシロール類等を用いることも可能である。上記のバソキュプロイン(BCP)層、バソフェナントレン(Bphen)層、及びバソキュプロイン(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)にアルカリ金属又はアルカリ土類金属をドープした層から、いくつかを組み合わせて用いることもできる。
【0055】
正孔取り出し層と電子取り出し層とは、1対の電極間に、化合物Aと化合物Bとを含む層を挟むように配置される。すなわち、本発明に係る半導体デバイスが正孔取り出し層と電子取り出し層の両者を含む場合、電極、正孔取り出し層、化合物Aと化合物Bとを含む層、電子取り出し層、電極がこの順に配置されている。また、本発明に係る半導体デバイスが正孔取り出し層を含み電子取り出し層を含まない場合は、電極、正孔取り出し層、化合物Aと化合物Bとを含む層、電極がこの順に配置されている。本発明に係る光電変換素子が電子取り出し層を含み正孔取り出し層を含まない場合は、電極、化合物Aと化合物Bとを含む層、電子取り出し層、電極がこの順に配置されている。正孔取り出し層と電子取り出し層とは積層順序が逆であってもよいし、また正孔取り出し層と電子取り出し層との少なくとも一方が異なる複数の膜により構成されていてもよい。
【0056】
正孔取り出し層と電子取り出し層との形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。正孔取り出し層又は電子取り出し層に半導体材料を用いる場合は、化合物A及び化合物Bと同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体材料に変換してもよい。
【0057】
本発明に係る半導体デバイスは、光電変換素子として用いることができ、本発明に係る半導体デバイスを用いて太陽電池を構成することができる。本発明に係る光電変換素子の用途は太陽電池には限られず、光スイッチング装置、センサ等の各種の光電変換装置に好適に使用することができる。また、本発明に係る半導体デバイスは光電変換素子として用いることができるにとどまらず、例えばバイポーラーのトランジスタやダイオード等にも用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1] 第3の化合物としてアダマンタンを用いた光電変換素子 その1
[正孔取り出し層の成膜(1)]
ガラス基板上に電極としてITO電極がパターニングされた、ITO付きガラス基板上に、1層目の正孔取り出し層としてポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート水分散液(スタルクヴィテック社製 商品名「Baytron PH」)をスピンコート法により塗布した。塗布後のガラス基板を120℃のホットプレート上で大気中10分間、加熱処理を施して、1層目の正孔取り出し層を成膜した。ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート層の膜厚は40nmであった。
【0060】
[正孔取り出し層の成膜(2)]
ガラス基板をグローブボックス中に持ち込み、ガラス基板を窒素雰囲気下180℃で3分間加熱処理して乾燥させた。続けてクロロホルム/モノクロロベンゼンの重量比1:2の混合溶媒に式(B1)で表される化合物を0.5重量%溶解した液をろ過し、ろ液を得た。得たろ液をグローブボックス中でガラス基板上の1層目の正孔取り出し層上に1500rpmでスピンコート法により塗布し、塗布後のガラス基板をグローブボックス中180℃で20分間加熱した。式(B1)で表される化合物は、p型半導体材料であるテトラベンゾポルフィリンの前駆体である。加熱により式(B1)で表される化合物はテトラベンゾポルフィリンへと変換される。こうして、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート層の上に2層目の正孔取り出し層であるテトラベンゾポルフィリン層を形成した。
【0061】
【化7】

【0062】
[化合物Aと化合物Cとを含む層の成膜]
クロロホルム/モノクロロベンゼンの1:1混合溶媒(重量)に、式(B1)で表される化合物を0.6重量%、アダマンタン(アルドリッチ社製)を1.4重量%溶解した液(以下溶液Sと称する)を調製し、ろ過してろ液を得た。得たろ液をグローブボックス中で窒素雰囲気下、2層目の正孔取り出し層上に1500rpmでスピンコートし、グローブボックス中180℃で20分間加熱した。加熱により式(B1)で表される化合物は、テトラベンゾポルフィリンへと変換される。テトラベンゾポルフィリンはp型半導体材料である化合物Aであり、アダマンタンは半導体材料ではない化合物Cである。こうして、正孔取り出し層の上に化合物A(テトラベンゾポルフィリン)と化合物C(アダマンタン)とを含む層を形成した。
【0063】
[化合物Bによる化合物Cの置換]
トルエンに式(B2)で表されるフラーレン誘導体を1.2重量%溶解した液を調整し、ろ過してろ液を得た。得たろ液をグローブボックス中で窒素雰囲気下3000rpmで化合物Aと化合物Cとを含む層上にスピンコートし、グローブボックス中65℃で10分間加熱処理を施した。加熱処理後のガラス基板を真空蒸着装置内に設置し、クライオポンプを用いて排気した。式(B2)で表されるフラーレン誘導体はn型半導体材料である。こうして、化合物C(アダマンタン)を化合物B(フラーレン誘導体)で置換して、化合物Aと化合物Bとを含む層を形成した。
【0064】
【化8】

【0065】
[電子取り出し層の形成]
真空蒸着装置内に配置されたメタルボートにフェナントロリン誘導体(バソキュプロイン:BCP)を入れ、加熱した。化合物Aと化合物Bとを含む層上にフェナントロリン誘導体(バソキュプロイン:BCP)を膜厚6nmになるまで蒸着し、電子取り出し層を形成した。
【0066】
[電極の形成]
電子取り出し層の上に真空蒸着により厚さ80nmのアルミニウム膜を電極として設けた。作製したITO付きガラス基板、正孔取り出し層、化合物Aと化合物Bとを含む層、電子取り出し層、アルミニウム膜からなる積層体に対して、ITO付きガラス基板側に透明ガラス基板(非図示)を取り付けた。取り付けには封止剤を用い、積層体の全体を封止剤でシールするとともに積層体を封止剤で透明ガラス基板へと固定して、光電変換素子を作製した。
【0067】
作製した光電変換素子に対して、ITO付きガラス基板側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射した。ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極との間における電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を算出したところ、0.9%であった。
【0068】
[実施例2] 第3の化合物としてアダマンタンを用いた光電変換素子 その2
実施例1においては、式(B2)で示されるフラーレン誘導体のトルエン溶液を化合物Aと化合物Cとを含む層上にスピンコートすることによって、アダマンタンを式(B2)で示されるフラーレン誘導体で置換した。実施例2では、化合物Aと化合物Cとを含む層にトルエンを2回スピンコートすることにより、アダマンタンを洗い流した後、式(B2)で示されるフラーレン誘導体のトルエン溶液を実施例1と同様にスピンコートした。他の工程は実施例1と同様に行い、光電変換素子を作製した。
【0069】
作製した光電変換素子に対して、ITO付きガラス基板側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射した。ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極と間における電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を算出したところ、1.0%であった。
【0070】
[実施例3] 第3の化合物としてp−Terphenylを用いた光電変換素子
実施例2では、化合物Cとしてアダマンタンを用いたが、実施例3では化合物Cとしてp−Terphenylを用いた。また、実施例2では化合物Aと化合物Cとを含む層にトルエンを2回スピンコートすることによりアダマンタンを洗い流したが、実施例3では化合物Aと化合物Cとを含む層にクロロホルムを1回、トルエンを1回スピンコートしてp−Terphenylを洗い流した。他の工程は実施例2と同様に行い、光電変換素子を作製した。
【0071】
作製した光電変換素子に対して、ITO付きガラス基板側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射した。ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極と間における電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を算出したところ、0.8%であった。
【0072】
[実施例4] 第3の化合物としてカリックス[4]アレンテトラ−n−プロピルエーテルを用いた光電変換素子
実施例2では、化合物Cとしてアダマンタンを用いたが、実施例4では化合物Cとして式(B3)に示すカリックス[4]アレンテトラ−n−プロピルエーテルを用いた。他の工程は実施例2と同様に行い、光電変換素子を作製した。
【0073】
【化9】

【0074】
作製した光電変換素子に対して、ITO付きガラス基板側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射した。ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極と間における電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を算出したところ、0.1%であった。
【0075】
[実施例5] 第3の化合物としてフタロシアニン様化合物(B4)を用いた光電変換素子
実施例2では、化合物Cとしてアダマンタンを用いたが、実施例5では化合物Cとして、式(B4)に示すフタロシアニン様化合物を用いた。また、実施例2では化合物Aとして式(B2)のフラーレン誘導体を用いたが、実施例5では式(B5)のフラーレン誘導体を用いた。他の工程は実施例2と同様に行い、光電変換素子を作製した。
【0076】
【化10】

【0077】
【化11】

【0078】
作製した光電変換素子に対して、ITO付きガラス基板側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射した。ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極と間における電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を算出したところ、0.8%であった。
【0079】
[実施例6] 化合物Aと化合物Cとを含む層の成膜に使用した溶液Sの耐久性
以下のようにして、実施例1における、式(B1)で表される化合物(化合物A)とアダマンタン(化合物C)とを含む層の成膜時に使用した上述の溶液Sの耐久性を評価した。すなわち、溶液Sを透明のサンプル管に入れ、大気下室温にて11日間保管し、その後60℃のホットプレート上で12時間35分加熱した。この間溶液Sは室内光に晒されていた。さらにその後、溶液Sの入ったサンプル管に対してソーラシミュレーター(AM1.5G)で88mW/cmの強度の光を25分間照射した。以上の方法により、溶液Sに対して耐久性試験のための負荷を与えた。
【0080】
負荷を加える前および負荷を加えた後の溶液Sの不純物量を液体クロマトグラフィーで分析した。式(B1)で表される化合物のピーク面積に対する不純物のピーク面積を不純物量(%)とした。結果を表1に示した。液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。カラムとして、ナカライテスク社のコスモシールBuckyprepを使用した。展開溶媒としては、体積比でトルエン/イソプロパノール=70/30の混合溶媒を使用した。溶媒の流速は1.5ml/minであり、検出波長はUV350nmであった。
【0081】
[比較例]
溶液Sを調製する際に、アダマンタン(化合物C)の代わりに、式(B2)で表されるフラーレン誘導体を用いた。それ以外は、実施例6と同様に試験を行った。結果を表1に示した。
【0082】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
その一方がp型半導体材料であり他方がn型半導体材料である、第1の半導体材料と第2の半導体材料とを含む半導体層を備える半導体デバイスを製造する、半導体デバイスの製造方法であって、
前記第1の半導体材料と第3の材料とを含む層に対して、前記第3の材料を前記第2の半導体材料で置換する置換工程を備え、
前記第3の材料は半導体材料ではない
ことを特徴とする、半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記置換工程では、前記第2の半導体材料の溶液を、前記第1の半導体材料と第3の材料とを含む層に塗布することにより、前記第3の材料を前記第2の半導体材料で置換することを特徴とする、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記置換工程は、前記第1の半導体材料と第3の材料とを含む層から前記第3の材料を当該第3の材料の溶剤を用いて除去する工程と、前記工程において前記第3の材料が除去された前記層に前記第2の半導体材料の溶液を塗布することにより、前記第2の半導体材料を含有させる工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記置換工程は、前記第2の半導体材料の前駆体の溶液を、前記第1の半導体材料と第3の材料とを含む層に塗布することにより、前記第3の材料を前記第2の半導体材料の前駆体で置換する工程と、前記工程において第2の半導体材料の前駆体で置換された前記層を加熱することにより、前記第2の半導体材料の前駆体を前記第2の半導体材料へと変換する工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記置換工程は、前記第1の半導体材料と第3の材料とを含む層から前記第3の材料を当該第3の材料の溶剤を用いて除去する工程と、前記工程において前記第3の材料が除去された前記層に前記第2の半導体材料の前駆体の溶液を塗布することにより、前記第2の半導体材料の前駆体を含有させる工程と、前記工程において第2の半導体材料の前駆体を含有させた前記層を加熱することにより、前記第2の半導体材料の前駆体を前記第2の半導体材料へと変換する工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第1の半導体材料は、前記第2の半導体材料の溶液中の溶媒に難溶又は不溶であり、前記第3の材料は、前記第2の半導体材料の溶液中の溶媒に可溶であることを特徴とする、請求項2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第1の半導体材料は、前記第2の半導体材料の前駆体の溶液中の溶媒に難溶又は不溶であり、前記第3の材料は、前記第2の半導体材料の前駆体の溶液中の溶媒に可溶であることを特徴とする、請求項4に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1の半導体材料は、前記第3の材料の溶剤に難溶又は不溶であることを特徴とする、請求項3又は5に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記第1の半導体材料と第3の材料とを含む層は、前記第1の半導体材料の前駆体と前記第3の材料との混合液を塗布して得た層を加熱し、前記第1の半導体材料の前駆体を前記第1の半導体材料へと変換することにより得たものであることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記半導体デバイスは光電変換素子であることを特徴とする、請求項1乃至9の何れか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法により製造された光電変換素子を含むことを特徴とする、太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2010−192891(P2010−192891A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12546(P2010−12546)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】