説明

半導体パッケージ

【課題】 多層配線板を脱落させることなくヒートシンクを取り付けることができ、かつヒートシンクの汎用化が可能であり、しかも高い放熱性を確保することができる半導体パッケージを提供すること。
【解決手段】 半導体パッケージ11は、多層配線板12とベースユニット25とからなる。多層配線板12は、高熱伝導性基板13の片面にビルドアップ多層配線層B1 を設け、その上に電子部品搭載部17及び第1の接続端子22群を設けてなる。ベースユニット25は、入出力ピン29群が存在するプリント配線板25aのほぼ中央部に窓部26を設けてなる。プリント配線板25aのピン非突出側面S2 には、両面が平坦な高熱伝導性板材37が接合される。窓部26から露出する部分に対しては、多層配線板12が高熱伝導性接合材39を介して接合される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数個の半導体チップが搭載される多層配線板を配線板装着用のベースユニットに装着してなる半導体パッケージ〔MCM (Multi Chip Module):マルチチップモジュール〕に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、複数個のベアチップを高密度に実装した半導体パッケージとして、いわゆるMCMと呼ばれる電子部品搭載装置がいくつか提案されている。ここで、図7にその一例を示す。
【0003】この半導体パッケージ61は、大まかにいって、矩形状の多層配線板62及びそれを装着するためのベースユニット63という2つの部分から成り立っている。多層配線板62を構成する銅基板64の片面には、絶縁層と導体層とが交互に積層されたビルドアップ多層配線層B1 が設けられている。そのビルドアップ多層配線層B1 上の中央部には、ベアチップ65を搭載するための複数の電子部品搭載部が設けられている。また、多層配線層B1 上の外縁部には、第1のボンディングパッド66群が配設されている。
【0004】一方、ベースユニット63を構成するプリント配線板67の片面における外縁部には、マザーボードM1 側との導通を図るための入出力ピン68が多数突設されている。同面の中央部には、多層配線板62の外形寸法に相当する窓部69が貫設されている。窓部69の内周面には接着面を有する段部70が形成されており、その段部70の上面には多層配線板62の底面が支持されている。この窓部69とそれを包囲する入出力ピン68群との間の領域には、第2のボンディングパッド71群が設けられている。そして、両ボンディングパッド66,71群同士は、ボンディングワイヤ72を介して互いに電気的に接続されている。
【0005】このように構成された半導体パッケージ61は、前記入出力ピン68によりマザーボードM1 に対してフェースダウン式に実装される。そのとき、マザーボードM1 側とならない面、即ちピン非突出側面においては、多層配線板62の銅基板64の底面が窓部69から露出する。そして、この露出した面から、ベアチップ65の熱が放散されるようになっている。
【0006】また、この種の半導体パッケージ61では、例えばベースユニット63のピン非突出側面に、フィン構造やタワー構造等を持つヒートシンク73をねじ74等によって取り付けるという構成を採る場合がある。即ち、表面積の大きなヒートシンク73を設けることによって、熱放散効率のさらなる向上が期待できるからである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の半導体パッケージ61には、以下のような問題があった。
i)ピン非突出側面の中央が凹部になっているため、銅基板64の底面との接触を図るためには、ヒートシンク73側の接合面73aをそれに合致した凸形状に形成する必要があった。従って、この半導体パッケージ61においては、通常よく用いられる単純な形状のヒートシンクを使用することができなかった。また、凹部の外形・大きさ・深さは半導体パッケージ61の仕様によって変わるものであるため、ヒートシンク73の汎用化を図ることができなかった。
【0008】ii) 銅のような材料は軟質で切削しにくいため、ヒートシンク73の接合面73aを所望の凸形状に加工することは難しい。また、このような加工における困難性があることで、コスト的にも不利益が多かった。
【0009】iii)ねじ74を用いてヒートシンク73を取り付けようとすると、ヒートシンク73によって多層配線板62がピン突出側面に押圧されることにより、多層配線板62と段部70との接合面に応力が加わる。そして、この応力によって当該部分の接合強度が低下する。このため、ベースユニット63から多層配線板62が脱落しやすくなり、このことが信頼性の低下を引き起こす一原因となっていた。よって、ねじ止めによる取り付けに充分耐えうる構造が要求されていた。
【0010】iv) 窓部69に段部70を設けた場合には、その分だけベースユニット63の外形寸法を大きくしなければならない。よって、半導体パッケージ61のダウンサイジングを図るうえでも、段部70を必要としないパッケージ構造が望まれていた。
【0011】v)窓部69から露出している銅基板64の底面の表面積には限りがあるため、そこに取り付けうるヒートシンク73の大きさにはおのずと制約があった。よって、さらなる放熱効率の向上を図るうえでも、大きなヒートシンク73を取り付けることが可能なパッケージ構造が望まれていた。
【0012】本発明は上記の課題を解決するためなされたものであり、その目的は、多層配線板を脱落させることなくヒートシンクを取り付けることができ、かつヒートシンクの汎用化・大型化が可能であり、しかも高い放熱性を確保することができる半導体パッケージを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、高熱伝導性基板の片面に絶縁層と導体層とが交互に積層されたビルドアップ多層配線層が設けられ、その多層配線層上に電子部品搭載部及び第1の接続端子群が設けられてなる多層配線板と、片面に入出力端子群が存在するプリント配線板に前記多層配線板の外形寸法に相当する貫通孔が設けられ、前記入出力端子群と前記貫通孔との間の領域に前記第1の接続端子と電気的に接続される第2の接続端子群が設けられてなる配線板装着用のベースユニットとからなる半導体パッケージであって、前記プリント配線板の入出力端子側面の反対側面に、少なくとも片面が平坦な高熱伝導性板材が接合され、かつその板材における前記貫通孔から露出する部分に対し、前記多層配線板が高熱伝導性接合材を介して接合されてなる半導体パッケージをその要旨とする。
【0014】請求項2に記載の発明では、請求項1において、前記高熱伝導性板材の外形寸法は前記プリント配線板の外形寸法と同程度であるとしている。請求項3に記載の発明では、請求項1または2において、前記高熱伝導性板材は両面が平坦な銅板であるとしている。
【0015】請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記高熱伝導性基板は銅板でありかつ前記接合材ははんだであるとしている。請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記高熱伝導性板材は前記プリント配線板に対して絶縁性接着剤を介して接着されてなるとしている。
【0016】次に本発明の「作用」について説明する。請求項1に記載の発明によると、プリント配線板に接合された高熱伝導性板材の少なくとも片面が平坦になっている。このため、通常よく使用される単純な形状の、即ち接合面が平坦なヒートシンクであっても、ベースユニットの片面に対して取り付けることができる。即ち、この構成であるとヒートシンクの汎用化を図ることができる。
【0017】また、ヒートシンクの接合面を凹形状に切削する必要がなくなることにより、ヒートシンクの加工コストが低減され、ひいては半導体パッケージの低コスト化が達成される。
【0018】さらに、多層配線板とヒートシンクとの間に高熱伝導性板材が介在するこの構成であると、例えばベースユニットに対してヒートシンクをねじ止めしたとしても、多層配線板の接合部分にじかに応力が付加することはない。よって、多層配線板がベースユニットから脱落する心配もない。そして、このようにヒートシンクのねじ止めが可能になることにより、リペア作業等が容易になる。
【0019】また、高熱伝導性板材は、多層配線板のときほど面積上の制約を受けることがないため、ヒートシンクが接合されるべき平坦な面を比較的容易に拡大することができる。このため、従来よりも大きなヒートシンクをベースユニットに取り付けることが可能となる。その結果、さらなる放熱効率の向上を図ることができる。
【0020】さらに、前記プリント配線板の入出力端子側面の反対側面に接合される板材は高い熱伝導性を有するものであるため、多層配線板とヒートシンクとの間に介在させたとしても、そこに好適な放熱経路が確保される。つまり、ビルドアップ多層配線層上に実装された電子部品の熱は、高熱伝導性基板、高熱伝導性板材及びヒートシンクへと確実に伝導し、同ヒートシンクから外部へと放散される。
【0021】また、前記発明では、高熱伝導性板材における貫通孔から露出する部分に対し、多層配線板が高熱伝導性接合材を介して接合されている。即ち、多層配線板は、高熱伝導性板材に支持された状態でベースユニットに固定される。よって、従来の構成とは異なり、多層配線板を支持するために貫通孔内に段部を形成することは必ずしも不要になる。そして、例えば段部を省略した構成を採った場合には、そのためのざぐり加工が不要になることによって、工程の簡略化が図られる。また、プリント配線板を薄くすることができる等、ベースユニットの厚さの自由度が大きくなる。さらに、段部がなくなる分だけ外形寸法を小さくすることができ、半導体パッケージのダウンサイジングを達成することができる。
【0022】請求項2に記載の発明によると、高熱伝導性板材の外形寸法がプリント配線板の外形寸法と同程度になることにより、ベースユニットの片面全体がヒートシンクを取り付けるための平坦な面となる。このため、かなり大きなヒートスラグを取り付けることができ、しかもその取付安定性も増す。
【0023】また、ベースユニットの片面全体が金属製の板材によってカバーされることになるため、好適なノイズ対策にもなる。即ち、周辺機器へ与える電磁波妨害及び周辺機器から受ける電磁波防止が、ともに軽減される。従って、半導体パッケージの信頼性の向上等が図られ、高性能のMCMを実現することができる。
【0024】さらに、前記板材を例えばグランド層として利用すれば、電気的特性に優れたMCMを実現することができる。加えて、入出力端子側面の反対側面にこのような広い面積の高熱伝導性板材を設けると、同面における封止距離が長くなることによって、多層配線板の封止性が向上する。そして、このことは半導体パッケージの信頼性向上につながる。
【0025】なお、高熱伝導性板材の外形寸法はプリント配線板の外形寸法と同程度であるため、特に半導体パッケージのダウンサイジングを妨げるということもない。請求項3に記載の発明によると、高熱伝導性板材は両面が平坦な銅板であるため、高熱伝導性基板の底面が接合されるべき領域、即ち貫通孔から部分的に露出しているダイアタッチ部も同様に平坦になっている。このため、前記銅板に対して、多層配線板を容易にかつ確実に接合することができる。また、上記のような銅板の作製には、凹凸の形成のための加工を伴わないため、低コスト化に好都合である。また、銅は廉価であるということも低コスト化に好都合である。さらに、銅は熱伝導性が高く、はんだ濡れ性もよいという性質を有している。
【0026】請求項4に記載の発明によると、高熱伝導性基板は銅板でありかつ前記接合材ははんだである。このため、はんだを高熱伝導性基板と高熱伝導性板材との間に介在させた状態で熱をかければ、両者を確実に接合することができる。また、はんだは接合材のなかでも熱伝導率が高いものに属し、しかも比較的廉価であるという好ましい性質を持つ。よって、はんだの選択は、半導体パッケージのさらなる放熱性の向上及び低コスト化に貢献しうる。また、高熱伝導性基板が銅板であることも、同様に放熱性の向上及び低コスト化に貢献しうる。
【0027】請求項5に記載の発明によると、高熱伝導性板材はプリント配線板に対して絶縁性接着剤を介して接着されている。よって、例えば導電性を有するものを前記板材として選択した場合であっても、プリント配線板側との間に絶縁を確保することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施形態の半導体パッケージを図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0029】本実施例の半導体パッケージ11は、図5に示されるように、大まかにいって多層配線板12と、それを装着するためのPGAタイプのベースユニット25とによって構成されている。
【0030】多層配線板12は、図3に示されるように、高熱伝導性基板としてのタフピッチ銅基板13を主材料として形成されている。このタフピッチ銅基板13の片側面全体は放熱領域となっており、かつその反対側面全体は電子部品搭載領域となっている。電子部品搭載領域の全体には、ビルドアップ多層配線層B1 が形成されている。本実施形態では、前記ビルドアップ多層配線層B1 は、絶縁層14と、導体層としての極めてファインな配線パターン15とを交互に積層した構成を有している。各層の配線パターン15どうしは、絶縁層14に形成されたバイアホール16によって互いに接続されている。
【0031】図3に示されるように、ビルドアップ多層配線層B1 上には、電子部品搭載部としてのダイパッド17が複数個設けられている。ダイパッド17上には、電子部品としてのLSIチップ18,19が搭載されている。LSIチップ18,19とそれを取り巻くビルドアップ多層配線層B1 上のボンディングパッド20とは、ボンディングワイヤ21を介して電気的に接続されている。ビルドアップ多層配線層B1 の外縁部には、第1の接続端子としての多数のボンディングパッド22が規則的に配設されている。そして、LSIチップ18,19側と前記ボンディングパッド22とは、ビルドアップ多層配線層B1 の内層または外層の配線パターン15を介して電気的に接続されている。
【0032】ベースユニット25は、プラスティック製の板材(本実施形態ではガラスエポキシ製の銅張積層板)を主形成材料とするプリント配線板25aを用いて作製される。この種の板材には、基本的に加工し易いという利点があるからである。図1,図2に示されるように、ベースユニット25を構成するプリント配線板25aのほぼ中央部には、貫通孔としての矩形状の窓部26が形成されている。なお、この窓部26は、被収容物である多層配線板12の外形寸法にほぼ等しくなっている。窓部26よりも外側の領域には、表裏を貫通するスルーホール28が多数形成されている。各スルーホール28には、入出力端子としての金属製の入出力ピン29が挿入されている。なお、前記入出力ピン29群は窓部26を包囲している。
【0033】図1に示されるように、ピン突出面側S1 において窓部26の周囲には、その窓部26を取り囲むように矩形状のボンディングパッド30が配設されている。前記ボンディングパッド30とスルーホール28のランド31とは、配線パターン32を介して電気的に接続されている。また、ベースユニット25側のボンディングパッド30と、多層配線板12のボンディングパッド22とは、ボンディングワイヤ33を介して電気的に接続されている。また、ベースユニット25において配線パターン32が形成されている面は、配線パターン32を湿気等から保護するためのソルダーレジスト34によって被覆されている。そして、ベースユニット25においてボンディングパッド30群と入出力ピン29群との間の領域には、封止樹脂35の流動を防止するダム36が接着されている。
【0034】図2,図3に示されるように、プリント配線板25aのピン突出面側S1 の反対側面(ピン非突出側面S2 )には、高熱伝導性板材37が接合されている。この板材37は、矩形状であって両面が平坦になっており、プリント配線板25aと同程度の外形寸法を有している。前記板材37は、ベースユニット25のピン非突出側面S2 に対して絶縁性接着剤38を介して接着されている。窓部26から露出するダイアタッチ部に対しては、高熱伝導性接合材39を介して多層配線板12が接合されている。つまり、多層配線板12は高熱伝導性板材37によって支持されている。
【0035】ここで「高熱伝導性」の板材37とは、100W/mK以上、好ましくは150W/mK以上の熱伝導率を有する材料からなる板材37をいう。このような材料としては、例えば無酸素銅(390W/mK)、タフピッチ銅(360W/mK)、各種の銅合金(100〜350W/mK)、アルミニウム(229W/mK)、金(318W/mK)、モリブデン(130W/mK)、Cu−W(210W/mK)等の金属が挙げられる。また、これら金属以外にも、窒化アルミニウム(100〜200W/mK)、窒化珪素(260W/mK)、ベリリア(210W/mK)等のセラミック焼結体が挙げられる。
【0036】本実施形態では、高熱伝導性板材37としてタフピッチ銅板37が選択されている。なお、上述した高熱伝導性基板13のための材料とは、少なくともプラスティック材料に比べて熱伝導性の高い材料をいい、特には先に列挙した金属またはセラミックから選択されることがよい。
【0037】また「高熱伝導性」の接合材39とは、10W/mK以上、好ましくは30W/mK以上の熱伝導率を有する接合材39をいう。このような材料としては、例えばPb−Sn系のはんだ、Au系のはんだ、In系のはんだ、Bi系のはんだ等がある。特に、Pb−Sn系のはんだの代表例としては、Pb:Sn=37:63という組成のもの(いわゆる共晶はんだ,49W/mK)、Pb:Sn=90:10という組成のもの(37W/mK)、Pb:Sn=95:5という組成のもの(23W/mK)などがある。また、はんだ以外にも、Au/Snなどの各種のろう材や、金属粒子を分散させた熱伝導性接着剤が使用可能である。
【0038】本実施形態では、高熱伝導性接合材39として、共晶はんだ39が選択されている。図2,図4に示されるように、高熱伝導性板材としてのタフピッチ銅板37の外周部の複数箇所には、その厚さ方向に沿って延びるねじ孔40が形成されている。そして、ヒートシンク41のベースユニット25への取り付けは、これらのねじ孔40にねじ42を螺合することによってなされるようになっている。
【0039】図2,図3に示されるように、LSIチップ18,19側と多層配線板12側との電気的接続部分や、多層配線板12側とベースユニット25側との電気的接続部分は、封止樹脂35によって封止されている。このような封止部分には、金属製のキャップ43が装着されている。そして、この半導体パッケージ11は、入出力ピン29によってマザーボードM1 にフェースダウン式に実装されるようになっている。
【0040】次に、この半導体パッケージ11を作製する手順の一例を紹介する。半導体パッケージ11を構成する多層配線板12は、次のようにして作製される。まず出発材料であるタフピッチ銅基板13の片面を黒化処理し、その上に感光性エポキシ樹脂を塗布する。次に露光・現像を行うことにより、内径40μmのバイアホール形成用穴を有する厚さ15μmの絶縁層14を形成する。次に、スパッタリングすることによって絶縁層14上に厚さ0.1μmのCr薄層を形成し、さらにその上にスパッタリングすることによって厚さ0.2μmのCu薄層を形成する。次に、L/S=25μm/25μmの配線パターン15を形成するためのめっきレジストをCu薄層上に配置する。この状態で電解Cuめっき及び電解Niめっきを順次行うことにより、厚さ6μmのCuめっき層及び厚さ1μmのNiめっき層をそれぞれ形成する。めっきレジストを剥離した後、塩化第二銅溶液と20%塩酸水溶液とを用いて非めっき部分のCu薄層及びCr薄層をエッチングする。そして、以上の工程を必要に応じて繰り返すことにより、絶縁層14と複数種の金属からなる配線パターン15とを交互に形成する。その結果、配線パターン15を5層備えた多層配線板(35mm角,1.0mm厚)12が完成する。そして、この後にオープン・ショートテストを行う。
【0041】一方、ベースユニット25は次のようにして作製される。まず、従来公知のサブトラクティブプロセスによりベース基板を作製し、その両面にプリプレグ及び銅箔を貼り付ける。この後、スルーホールの孔あけ及び窓部26の形成のための貫通ざぐり加工(36mm角)を実施する。この後、常法に従ってパネルめっき及びパターンめっきを行うことにより、スルーホール28、ボンディングパッド30及び配線パターン32等を形成する。この後、スルーホール28のランド31及びボンディングパッド30以外の部分を被覆するようにソルダーレジスト34を形成する。このようにして得られた4層板に対し、さらにダム36の接着及びスルーホール28内への入出力ピン29の挿入を行い、ベースユニット(60mm角,1.0mm厚)25を完成させる。そして、この後にオープン・ショートテストを行う。
【0042】次に、オープン・ショートテストをパスしたベースユニット25に対し、絶縁性接着剤(本実施形態では、エイブルスティック社製のエポキシ系接着剤,商品名「5020k」)38を介して、タフピッチ銅板37を接合する。次に、その接合されたタフピッチ銅板37のダイアタッチ部に、共晶はんだからなるはんだシート(35mm角,50μm厚)を載置する。そして、さらにその上にオープン・ショートテストをパスした多層配線板12を載置する。この状態でリフローソルダリングを行うことにより、共晶はんだ39を介してタフピッチ銅板37と多層配線板12とを接合する。
【0043】次いで、ダイボンダを使用して、ダイパッド17上にテスト済のCPU用LSIチップ18を1個、メモリ用LSIチップ19を6個搭載する。ここで、ワイヤボンディング装置(九州松下製,商品名:HW−2200)を用いて、LSIチップ18,19をワイヤボンディングする。このとき、同じ装置を用いてボンディングパッド22,30間もワイヤボンディングする。
【0044】そして、最後にポッティング法による樹脂封止を行って電気的接続部分を封止した後、キャップ43を接合する。半導体パッケージ11は、以上のような手順を経て完成する。
【0045】次に、本実施形態において特徴的な作用効果を以下に列挙する。
(イ)本実施形態によると、プリント配線板25aに接合された高熱伝導性板材37の外側の面が平坦になっている。このため、通常よく使用される単純な形状の、即ち接合面41aが平坦なヒートシンク41であっても、ベースユニット25のピン非突出側面S2 に対して取り付けることができる。即ち、この構成であるとヒートシンク41の汎用化を図ることができる。
【0046】また、ヒートシンク41の接合面41aを凹形状に切削する必要がなくなることにより、ヒートシンク41の加工コストが低減され、ひいては半導体パッケージ11の低コスト化が達成される。
【0047】さらに、多層配線板12とヒートシンク41との間に高熱伝導性板材37が介在させているため、ベースユニット25に対してヒートシンク41をねじ止めしたとしても、多層配線板12の接合部分にじかに応力が付加することはない。よって、多層配線板12がベースユニット25から脱落する心配もない。そして、このようにヒートシンク41のねじ止めが可能になることにより、リペア作業等が容易になる。
【0048】また、高熱伝導性板材37は、多層配線板12のときほど面積上の制約を受けることがないため、ヒートシンク41が接合されるべき平坦な面を比較的容易に拡大することができる。このため、従来よりも大きなヒートシンク41をベースユニット25に取り付けることが可能となる。その結果、さらなる放熱効率の向上を図ることができる。
【0049】さらに、ピン非突出側面S2 に接合される板材37は高い熱伝導性を有するものであるため、それを多層配線板12とヒートシンク41との間に介在させたとしても、そこには好適な放熱経路が確保される。つまり、ビルドアップ多層配線層B1 上に実装されたLSIチップ18,19の熱は、タフピッチ銅基板13、、高熱伝導性接合材39、高熱伝導性板材としてのタフピッチ銅板37及びヒートシンク41へと確実に伝導する。そして、その熱は同ヒートシンク41のタワー部41bから外部へと効率よく放散される。
【0050】(ロ)本実施形態では、窓部26から露出する高熱伝導性板材37のダイアタッチ部に対し、多層配線板12が高熱伝導性接合材39を介して接合されている。即ち、多層配線板12は、高熱伝導性板材37に支持された状態でベースユニット25に固定される。よって、従来の構成とは異なり、多層配線板12を支持するための段部を窓部26内に形成することは必ずしも不要になる。その結果、ざぐり加工が不要になり、工程の簡略化が図られる。また、プリント配線板25aを薄くすることができる等、ベースユニット25の厚さの自由度が大きくなる。さらに、段部がなくなる分だけ外形寸法を小さくすることができ、半導体パッケージ11のダウンサイジングを達成することができる。
【0051】(ハ)本実施形態によると、高熱伝導性板材37の外形寸法がプリント配線板25aの外形寸法と同程度になることにより、ピン非突出側面S2 全体がヒートシンク41を取り付けるための平坦な面となる。このため、図4に示されるように、かなり大きなヒートスラグ41を取り付けることができ、しかもその取付安定性も増す。
【0052】また、ピン非突出側面S2 全体が金属製の板材37によってカバーされることになるため、好適なノイズ対策にもなる。即ち、周辺機器へ与える電磁波妨害及び周辺機器から受ける電磁波防止が、ともに軽減される。従って、半導体パッケージ11の信頼性の向上等が図られ、高性能のMCMを実現することができる。さらに、前記板材37を例えばグランド層として利用すれば、電気的特性に優れたMCMを実現することができる。
【0053】加えて、ピン非突出側面S2 にこのような広い面積の高熱伝導性板材37を設けると、同面における封止距離が長くなることによって、多層配線板12の封止性が向上する。そして、このことは半導体パッケージ11の信頼性向上につながる。
【0054】なお、高熱伝導性板材37の外形寸法はプリント配線板25aの外形寸法と同程度に止められているため、特に半導体パッケージ11のダウンサイジングを妨げるということもない。
【0055】(ニ)本実施形態によると、高熱伝導性板材37として両面が平坦なタフピッチ銅板37が選択されているため、ダイアタッチ部も同様に平坦になっている。このため、タフピッチ銅板37に対して、多層配線板12を容易にかつ確実に接合することができる。また、上記のようなタフピッチ銅板37の作製には、凹凸の形成のための加工を伴わないため、低コスト化に好都合である。また、銅は廉価であるということも低コスト化に好都合である。さらに、銅は熱伝導性が高く、はんだ濡れ性もよいという性質を有している。
【0056】(ホ)本実施形態によると、高熱伝導性基板13としてタフピッチ銅基板13が選択され、かつ高熱伝導性接合材39として共晶はんだ39が選択されている。このため、はんだシートを多層配線板12とタフピッチ銅板37との間に介在させた状態で熱をかければ、両者12,37を共晶はんだ39を介して確実に接合することができる。また、共晶はんだ39は上述した接合材のなかでもとりわけ熱伝導率が高く、しかも比較的廉価であるという好ましい性質を持つ。よって、共晶はんだ39の選択は、半導体パッケージ11のさらなる放熱性の向上及び低コスト化に貢献しうる。また、高熱伝導性基板13がタフピッチ銅基板13であることも、同様に放熱性の向上及び低コスト化に貢献しうる。
【0057】また、本実施形態では、共晶はんだ39で銅と銅とを、即ち金属同士を接合しているため、例えば金属とセラミックスとを接合する場合に比べ、工程簡略化が図られる。後者の場合にははんだ濡れ性の悪いセラミックス面をメタライズしておく必要があるのに対して、前者の場合にはその必要がないからである。
【0058】(ヘ)本実施形態によると、高熱伝導性板材37はプリント配線板25aに対して絶縁性接着剤38を介して接着されているため、プリント配線板25a側との間に絶縁を確保することができる。よって、プリント配線板25aの最表層にある導体層とのショートを心配する必要がなくなる。
【0059】(ト)本実施形態では、高熱伝導性板材であるタフピッチ銅板37の複数箇所に、ヒートシンク41を取り付けるためのねじ孔40が設けられている。よって、ねじ42によるヒートシンク41の取り付けを容易に行うことができる。
【0060】なお、本発明は例えば次のように変更することが可能である。
(1)図5に示される別例1では、ベースユニット51を構成するプリント配線板25aの窓部26に従来通り段部26aを設け、そこに多層配線板12を支持させている。さらに、ここでは多層配線板12を構成するタフピッチ銅基板13の底面が、タフピッチ銅板37のダイアタッチ部に対し、いくぶん厚めの共晶はんだ層52を介して接合されている。このような構成であると、段部26を省略することによる利益は得られないものの、それ以外の点については前記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0061】(2)図6に示される別例2においても、ベースユニット51を構成するプリント配線板25aの窓部26に従来通り段部26aを設け、そこに多層配線板12を支持させている。さらに、ここではタフピッチ銅基板13の底面とタフピッチ銅板37のダイアタッチ部とがなす空間内に、高熱伝導性の小片56(例えばタフピッチ銅製の小片など)を介在させ、その隙間に熱伝導性接着剤57を充填している。このような構成であっても、別例1と同様の作用効果(即ち、前記実施形態に準ずる作用効果)を奏する。この構成であると、ダイアタッチ部上にある空間が大きいときに、その空間を確実に埋設できるという利点がある。
【0062】(3)高熱伝導性板材37はプリント配線板25aに対して接着されるばかりでなく、ねじ止めされていたり、爪のような構造で係止されていてもよい。
(4)ピン非突出側面S2 上にある導体層がグランド層であるとき、そのグランド層に対して高熱伝導性板材37を導電性接着剤で接合してもよい。この場合、高熱伝導性板材37もグランド層の一部として機能することになるため、電気的特性に優れたMCMを実現することができる。
【0063】ここで、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
(1) 請求項1〜5において、前記高熱伝導性板材の複数箇所にヒートシンク取り付け用のねじ孔を設けた半導体パッケージ。この構成であると、ねじによってヒートシンクを容易に取り付けることができる。
【0064】(2) 請求項1〜3において、前記高伝導性板材における前記貫通孔から露出する部分と前記多層配線板とがなす空間に高熱伝導性の小片を収容するとともに、その隙間を前記高熱伝導性接合材で封止してなる半導体パッケージ。
【0065】(3) 片面に入出力端子群が存在するプリント配線板のほぼ中央部に多層配線板の外形寸法に相当する貫通孔が設けられ、前記入出力端子群と前記貫通孔との間の領域に前記多層配線板における接続端子群と電気的に接続される接続端子群が設けられてなる配線板装着用のベースユニットであって、前記プリント配線板の入出力端子側面の反対側面に、少なくとも片面が平坦な高熱伝導性板材が接合されてなる配線板装着用のベースユニット。
【0066】この構成であると、その上にビルドアップ多層配線層を有する多層配線板を搭載すれば、本発明の優れた半導体パッケージを確実に得ることができる。なお、本明細書中において使用した技術用語を次のように定義する。
【0067】「はんだ: 金属合金からなる接合材であって、例えばAu系のはんだ、In系のはんだ、Bi系のはんだ、共晶はんだ等に代表されるPb−Sn系のはんだなどがある。」
【0068】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によれば、多層配線板を脱落させることなくヒートシンクを取り付けることができ、かつヒートシンクの汎用化・大型化が可能であり、しかも高い放熱性を確保することができる半導体パッケージを提供することができる。
【0069】請求項2に記載の発明によれば、前記効果に加え、より大きなヒートスラグを取り付けることができ、しかもその取付安定性も増大ことができる。また、好適なノイズ対策が図られかつ封止性もよくなることにより、半導体パッケージの信頼性の向上を図ることができる。請求項3に記載の発明によれば、前記効果に加え、銅板に対して多層配線板を容易にかつ確実に接合することができるとともに、低コスト化を図ることができる。請求項4に記載の発明によれば、前記効果に加えて、さらなる放熱性の向上及び低コスト化を図ることができる。請求項5に記載の発明によれば、前記効果に加えて、ベースユニット側との間に絶縁を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は一実施形態における半導体パッケージのベースユニットを示す平面図、(b)はその部分破断底面図。
【図2】同じくその半導体パッケージの部分破断概略断面図。
【図3】同じくその半導体パッケージの要部拡大概略断面図。
【図4】半導体パッケージ及びヒートシンクを示す斜視図。
【図5】別例1の半導体パッケージを示す概略断面図。
【図6】別例2の半導体パッケージを示す概略断面図。
【図7】従来の半導体パッケージを示す部分破断概略断面図。
【符号の説明】
11…半導体パッケージ、12…多層配線板、13…高熱伝導性基板としてのタフピッチ銅基板、14…絶縁層、15…導体層としての配線パターン、17…電子部品搭載部としてのダイパッド、22…第1の接続端子としての第1のボンディングパッド、25…配線板装着用のベースユニット、25a…プリント配線板、26…貫通孔としての窓部、29…入出力端子としての入出力ピン、30…第2の接続端子としての第2のボンディングパッド、37…高熱伝導性板材としてのタフピッチ銅板、38…絶縁性接着剤、39…高熱伝導性接合材としての共晶はんだ、B1 …ビルドアップ多層配線層、S2 …入出力端子側面の反対側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】高熱伝導性基板の片面に絶縁層と導体層とが交互に積層されたビルドアップ多層配線層が設けられ、その多層配線層上に電子部品搭載部及び第1の接続端子群が設けられてなる多層配線板と、片面に入出力端子群が存在するプリント配線板に前記多層配線板の外形寸法に相当する貫通孔が設けられ、前記入出力端子群と前記貫通孔との間の領域に前記第1の接続端子と電気的に接続される第2の接続端子群が設けられてなる配線板装着用のベースユニットとからなる半導体パッケージであって、前記プリント配線板の入出力端子側面の反対側面に、少なくとも片面が平坦な高熱伝導性板材が接合され、かつその板材における前記貫通孔から露出する部分に対し、前記多層配線板が高熱伝導性接合材を介して接合されてなる半導体パッケージ。
【請求項2】前記高熱伝導性板材の外形寸法は前記プリント配線板の外形寸法と同程度である請求項1に記載の半導体パッケージ。
【請求項3】前記高熱伝導性板材は両面が平坦な銅板である請求項1または2に記載の半導体パッケージ。
【請求項4】前記高熱伝導性基板は銅板でありかつ前記接合材ははんだである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体パッケージ。
【請求項5】前記高熱伝導性板材は前記プリント配線板に対して絶縁性接着剤を介して接着されてなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体パッケージ。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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