半導体レーザ素子の製造装置および製造方法
【課題】複数の半導体レーザ素子を同時に精度よく位置決めすることができる。
【解決手段】半導体レーザチップ6の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行い、当該位置決めした位置に吸引固定する治具4と、半導体レーザチップ6を位置決め固定した状態の複数の治具4を、各半導体レーザチップ6のコーティングを施す端面の位置が揃うように、それらの端面を上向きに並べて固定する台座8、Y方向押さえ30、および、Z方向押さえ31,32とを備えた半導体レーザ素子の製造装置である。また、台座8およびY方向押さえ30に、露光用マスクとの位置決めを行うためのアライメント9も設けた。これにより、半導体レーザチップ6の端面に、マスクパターンを用いて高精度に区分けされたコーティングを施すことが可能である。
【解決手段】半導体レーザチップ6の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行い、当該位置決めした位置に吸引固定する治具4と、半導体レーザチップ6を位置決め固定した状態の複数の治具4を、各半導体レーザチップ6のコーティングを施す端面の位置が揃うように、それらの端面を上向きに並べて固定する台座8、Y方向押さえ30、および、Z方向押さえ31,32とを備えた半導体レーザ素子の製造装置である。また、台座8およびY方向押さえ30に、露光用マスクとの位置決めを行うためのアライメント9も設けた。これにより、半導体レーザチップ6の端面に、マスクパターンを用いて高精度に区分けされたコーティングを施すことが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体レーザ素子の製造装置および製造方法に関し、特に、半導体レーザ素子を精度良く配置し、レジストを塗布し、端面上にマスクによる露光を行うための、半導体レーザ素子の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを用いて半導体レーザ素子等を製造する際には、まず、基板上に結晶を成長させる結晶成長装置を用いて、レーザの誘導放出が行なわれる活性層を含む多層構造を有する半導体基板(半導体ウェハ)を生成する。半導体基板の生成方法としては、例えば、GaAs、InP、GaNなどからなる基板上に、気相エピタキシャル法、液相エピタキシャル法、または、分子線エピタキシャル法などを用いて、例えば、InGaAs、InGaAsP、InGaP,AlGaInP,InGaN、AlGaNなどからなる活性層および半導体層を順次積層して生成する。なお、活性層および半導体層には、添加不純物として、例えば、Si、Mg、Znなどが用いられる。
【0003】
こうして生成した半導体基板(半導体ウェハ)に対し、次に、電極を形成する。電極は、基板上面にp型電極を形成し、基板下面にn型電極を形成する。p型電極およびn型電極は、半導体基板(半導体ウェハ)から最終的に形成される複数の半導体レーザチップ(レーザダイオード)に対してそれぞれ1つずつ形成されるので、それらの位置を意識しながら、縦方向および横方向にアレイ状に並ぶように互いに離間して形成される。電極形成には、例えば、リフトオフ法、真空蒸着法、スパッタリング法などの方法が用いられる。
【0004】
こうして電極を形成した後に、レーザ光導波路となる方向に対して垂直な方向に、半導体基板(半導体ウェハ)をへき開し、複数の半導体レーザチップ(レーザダイオード)がバー状(短冊状)に一列に並んだ半導体レーザバーを形成する。このへき開によって形成された半導体レーザバーの両方のへき開面(端面)は、いずれか一方が出射端面(透過面)となり、他方が後端面(反射面)となる。これらのへき開面には誘電体膜のコーティングが施される。
【0005】
半導体レーザバーは誘電体膜でコーティングした後に、さらにへき開され、個々の半導体レーザチップ(レーザダイオード)に分離される。場合によっては、半導体レーザバーの形態のまま、使用される場合もある。当該分離により生成される面、すなわち、半導体レーザチップの電極が形成された上面および下面、及び、透過面または反射面となるへき開面と交差する面は、側壁面となる。また、透過面及び反射面の間の距離は、半導体レーザチップ(レーザダイオード)の共振器長となる。
【0006】
上述したように、半導体レーザバーのへき開面には誘電体膜によるコーティングを施すが、従来のコーティング装置においては、図11に示すように、1対の治具によって、半導体レーザチップ(半導体レーザバー)の両面から半導体レーザチップを挟み込むことにより、半導体レーザチップのへき開面を当該治具で固定した上で、当該へき開面に対してコーティングを行っていた。
【0007】
その際に、コーティング膜のへき開面以外への回り込みの防止を図ったもの(例えば、特許文献1参照)や、へき開面の上下面のコーティングを可能にするもの(例えば、特許文献2参照)、あるいは、コーティング膜厚調整のため、蒸着ビームの角度を調整するもの(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3661919号公報
【特許文献2】特開2000−208863号公報
【特許文献3】特許第3784639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図11に記載のものや、特許文献1〜3に記載のコーティング装置にあっては、単に、半導体レーザバーを挟んで固定するだけで、コーティングを行うへき開面(ファセット)を精度よく位置決めするための構成は設けられておらず、また、位置決めについては何ら考慮もされていなかった。特に、ビームに垂直かつ半導体レーザ素子に平行な方向において位置を正確に決めることができなかった。
【0010】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、複数の半導体レーザ素子を同時に精度よく位置決めすることが可能な、半導体レーザ素子の製造装置および製造方法を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、半導体レーザ素子の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行う第1の治具手段と、前記半導体レーザ素子を位置決めした状態の複数の前記第1の治具手段を、各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて固定する、第2の治具手段とを備えた半導体レーザ素子の製造装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、半導体レーザ素子の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行う第1の治具手段と、前記半導体レーザ素子を位置決めした状態の複数の前記第1の治具手段を、各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて固定する、第2の治具手段とを備えた半導体レーザ素子の製造装置であるので、複数の半導体レーザ素子を同時に精度よく位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置で用いる治具の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置の治具に半導体レーザチップを固定した様子を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置の治具への半導体レーザチップの配置作業を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置で用いる台座上に、半導体レーザチップを載置した治具を設置した様子を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置で用いる露光用マスクを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置において、台座上に半導体レーザチップを載置した治具を設置し、その上に、露光用マスクを配置した様子を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る半導体レーザ素子の製造装置で用いる治具補助具の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る半導体レーザ素子の製造装置の治具への半導体レーザチップの配置作業を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る半導体レーザ素子の製造装置の治具への半導体レーザチップの配置し固定した状態を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る半導体レーザ素子の製造装置のコーティング方法を説明する図である。
【図11】従来の半導体レーザ素子の製造装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明は、半導体レーザチップまたは半導体レーザバー等の半導体レーザ素子におけるへき開によって得られたへき開面に対して垂直な方向と、当該へき開面に平行な方向のうちの1方向に対して、位置決めする機構、および、複数の半導体レーザ素子のへき開面を揃えて並べる機構を設けた、露光マスク装置およびコーティング装置などの、半導体レーザ素子の製造装置に関する。この発明の半導体レーザ素子の製造装置は、その範疇として、露光マスク装置およびコーティング装置などの、半導体レーザ素子を製造するための装置全般を含むものとする。また、半導体レーザ素子は、その範疇として、半導体レーザチップおよび半導体レーザバーなどの、半導体レーザ素子全般を含むものとする。
【0015】
また、この発明は、半導体レーザチップまたは半導体レーザバー等の半導体レーザ素子におけるへき開によって得られたへき開面の一部に対して透過率の異なるコーティングを行うコーティング方法において、へき開面の少なくとも一方に対し、コーティングを施さなかった場合よりも透過率が高い保護コーティングを施し、その後、へき開面の一部にマスクを施して、へき開面の一部にコーティングを施す、半導体レーザ素子の製造方法にも関する。
【0016】
以下、この発明の実施の形態について説明する。なお、この発明の特徴は、レジスト塗布、露光、コーティング工程に関する部分であり、半導体基板の生成方法およびへき開方法については、上述したような、公知の任意の生成方法でよいため、ここではその説明は省略し、この発明の特徴部分を中心に説明する。
【0017】
また、以下の説明においては、半導体レーザ素子として、半導体レーザチップ(レーザダイオード)を例に挙げて説明するが、その場合に限らず、他の半導体レーザ素子、例えば、半導体レーザチップ(レーザダイオード)に分離する前の半導体レーザバーに対しても、この発明の半導体レーザ素子の製造装置および製造方法を適用することができることは言うまでもなく、その場合においても、同様の効果が得られる。
【0018】
実施の形態1.
以下、図面を用いて、この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置(以下、単に、半導体製造装置とする。)について説明する。図1は、本実施の形態1に係る半導体製造装置において用いられる治具(第1の治具手段)の構成を示す図である。図1(a)は正面断面図、図1(b)は平面図、図1(c)は側面図である。また、図2は、半導体レーザチップを半導体製造装置の治具に吸着固定した様子を示す図である。図2(a)は正面図、図2(b)は平面図、図2(c)は側面図である。これらの図において、1はばね、2はバルブ、3は空気穴、4は治具、5は溝、6は半導体レーザチップ(レーザダイオード)である。
【0019】
図1(b)の平面図に示すように、本実施の形態1に係る半導体製造装置で用いる治具4は、略々直方体の外形を有し、治具4の上面には、吸着用の空気穴3および溝5が形成されている。この空気穴3と溝5とが設けられている箇所が、半導体レーザチップ6の載置部となる。載置部の表面は、空気穴3および溝5を除いて、平坦な面となっている。空気穴3は、治具4の上面において、治具4の長手方向(以下、Y軸方向とする。)の略々中央の位置で、かつ、長手方向に垂直な方向(以下、X軸方向とする。)における中央よりも端に寄った位置(図の例では、右寄り)に形成されている。空気穴3は略々円形に形成されており、溝5はその空気穴3を挟んで、2本形成されている。これらの2本の溝5は、Y軸方向に延びており、互いに平行になるように設けられている。各溝5と空気穴3とはそれぞれ1点で接触しており、互いに連結していて、空気穴3に対して空気が出入りするときには、その空気が溝5内も流れる構造となっている。
【0020】
図1(a)の正面断面図に示されるように、空気穴3は、治具4の内部において、L字型に形成されている。すなわち、治具4の上面から、X軸およびY軸に垂直な方向(以下、Z方向とする。)に所定の長さ(治具4のZ方向の長さの約1/2程度の長さ)だけ延びるように形成されて、そこから、直角に曲がって、Y軸方向に、治具4の一方の端面まで延びて、外部空間に向かって開口している。なお、当該開口部の付近では、空気穴3の内径が他の部分よりも広くなっており、バルブ2が挿入されている。バルブ2は、図1(a)に示すように、内径が広くなった部分の空気穴3に対してちょうど嵌る大きさの外径を有する頭部と、当該頭部より外径の小さい脚部とから構成されている。バルブ2は、その頭部の先端に当接したばね1の作用により、Y軸方向に移動可能に設けられている。通常時は、バルブ2の脚部だけが治具4から外に突き出ている(図1(a)では、バルブ2が押し込まれた状態が記載されている。)。このように、空気穴3は、一端が、半導体レーザチップ6が搭載される載置部に開口し、他端が、治具4の他の端面において外部に向かって開口した、貫通穴となっている。この他の端面は、図1(a)の例に限らず、載置部が設けられている面以外の端面であれば、いずれの端面であってもよい。
【0021】
このとき、図2(b)に示すように、空気穴3と溝5とを覆うように、治具4の上面に、半導体レーザチップ6を載置して、作業員がY軸方向にバルブ2を押し込み、その状態で、バルブ2から手を放すと、ばね1の作用によって、空気穴3内の空気によって、空気穴3および溝5とで半導体レーザチップ6を真空吸着し、固定できる。このとき、バルブ2の脚部の先端の一部のみが、治具4から外に突き出た状態となって、その位置で、作用と反作用の力のつりあいが保たれ、バルブ2の位置は安定する。なお、上述したように、空気穴3と溝5とは連結しているため、吸着力が、空気穴3部分だけでなく、溝5部分でも働くため、半導体レーザチップ6のほぼ全体に対して吸着力が働き、半導体レーザチップ6のほぼ全体で吸着固定されるので、固定状態は非常に安定する。そのため、半導体レーザチップ6が治具4から脱落することはない。このように、ばね1と空気穴3と溝5とは、半導体レーザチップ6を吸引固定するための吸引手段となっている。
【0022】
なお、図3は、図2の状態になるよう半導体レーザチップ6を治具4へ載置する作業を示す図である。図3において、7は顕微鏡である。他の構成については、図1,2で説明したものであるため、ここでは、その説明を省略し、同一符号を付して示す。図3に示すように、治具4に半導体レーザチップ6を吸着固定する前に、作業員が顕微鏡7などで、Z軸方向またはそれに平行な方向から、半導体レーザチップ6と治具4との位置関係を目視確認しながら、μm単位で精度良く半導体レーザチップ6の位置決めをする。その状態で、バルブ2を押しこんで、手を離すと、ばね1の作用で、空気穴3および溝5による真空吸着によって固定することができる。位置決めの際には、半導体レーザチップ6のへき開面と治具4の1つの端面とが一致するように位置決めする(へき開面が、治具4からはみ出ることなく、へこむことなく、正確に一致するように位置決めする。)。これにより、X軸方向(へき開面に対して垂直な方向)における位置決めが精度よく行うことができる。また、同時に、治具4の半導体レーザチップ6を載せる面は、平坦に形成されているので、治具4の当該面に密着させて辺導体レーザチップ6を搭載させることにより、Z軸方向(へき開面に対して平行な一方向)の位置決めも精度よく行なうことができる。なお、ここでは、顕微鏡7を用いた目視による確認を実施の形態1として示したが、その場合に限らず、治具4を自動ステージに載せ、半導体レーザチップ6をコレット等に吸着し、カメラをCCDカメラに画像として取り込んで、パソコン上に取り込んだ画面で両者を比較しながら位置決めしても良い。また、バルブ2の押しこみも、作業員の手によって行なわずに、機械アーム等の装置を用いて、押し込むようにしてもよい。このようにして、顕微鏡やカメラによりμm単位で位置決めすれば、より正確な位置決めが可能である。また、Y軸方向への位置決めは、特に精度よく行なわなくてもよいが、もし、Y軸方向へ精度よく位置決めしたい場合には、治具4の溝5の両端付近に、半導体レーザチップ6を位置合わせするためのアライメントを設けておき、当該アライメントに半導体レーザチップ6の端を合わせて配置するようにすればよい。
このようにすることにより、位置決めの際には、目標とする公差の範囲内に位置決めすることができる。このように、へき開面が、治具4から大きくはみ出ることなく、へこむことなく正確に位置決めできるため、次のような効果がある。半導体レーザチップ端面に付着するレジストの厚みが著しく不均等になったり、つかなかったりする現象を避けることができ、また、レジスト除去の際、除去するべき箇所に残ったり、除去すべきでない箇所に残らなかったりする不具合を避けることができる。
【0023】
このように、治具4は、半導体基板(半導体ウェハ)をへき開することによって得られた半導体レーザチップ6のへき開面に対して垂直な方向(X軸方向)に位置決めするとともに、当該へき開面に対して平行な一方向(Z軸方向)に位置決めする機能を有している。
【0024】
図2に示す状態で、個々の半導体レーザチップ6のへき開面にレジスト塗布やコーティングを施してもよいが、効率化を図るとともにコーティング剤の回り込みを防止するために、ここでは、複数個の半導体レーザチップ6に対して同時にレジスト塗布やコーティングを行うこととする。図4は、複数個の半導体レーザチップ6に対して同時にレジスト塗布やコーティングを行うための、本実施の形態に係る半導体製造装置の第2の治具手段としての本体の構成を示した図である。図4において、8は複数の治具4を並べて載せるための台座、9は後述する露光用マスクとの位置決めを行うためのアライメントマーク、30はY方向押さえ、31,32はZ方向押さえである。第2の治具手段は、台座8、Y方向押さえ30、および、Z方向押さえ31,32から構成されている。
【0025】
上述したように、半導体レーザチップ6は治具4に真空吸着されて固定されているため、載置した状態から治具4を時計回りに90度回転させて、横に向けても、半導体レーザチップ6が治具4から落ちることはない。そのため、図4(a)の平面図および図4(b)の側面図に示すように、半導体レーザチップ6を乗せた治具4を横に向けて、レジスト塗布、露光、および、コーティングを行う側のへき開面を上向きにした状態で、治具4を複数個、台座8上に並べて載置する。このとき、図4(a),(b)に示されているように、台座8と治具4の端面4a,4bが接触して、配置されている。このように、台座8には、治具4の少なくとも2方向の端面と当接する当て面が設けられているため、当該当て面を利用して、各治具4を配置すれば、台座8に対して少なくとも2方向で精度よく位置決めを行うことができる。また、各半導体レーザチップ6の電極が設けられている面のうち、治具4側とは反対側の面は、隣接する治具4の背面に接触しており、各治具4と半導体レーザチップ6との間には隙間がない状態である。このように隙間なく配置する理由は、精度よく位置決めするためと、コーティング剤等の溶剤の回り込みを防止するための2つの理由がある。なお、このように、半導体レーザチップ6と治具4とを交互に配置する理由は、半導体レーザチップ6だけを積み重ねてコーティングを行って、全反射コーティングや保護コーティング等を形成すると、半導体レーザチップ6同士が密着して分離できなくなるためである。また、図4(b)に示されているように、半導体レーザチップの全反射コーティングや保護コーティング等を形成する側と反対側の端面は、台座8には接触していない。これにより、コーティングを行わない側の半導体レーザチップへの損傷やコンタミネーションを避けることができる。
【0026】
図4においては、Z方向押さえ31と32との間の空間の大きさが、8個の治具4とそれに載置された8個の半導体レーザチップ6との厚さの合計とほぼ同じ大きさとなっている。そのため、図4においては、8個の治具4が、半導体レーザチップ6を載置した状態で、台座8の当て面を利用することによって、半導体レーザチップ6に平行で光軸に垂直な方向に精度よく位置決めされ配置される。また、Z方向押さえ31,32およびY方向押さえ30が、それぞれ、治具4の端面のうち、台座8が当接していない他の端面に当接する当て面を有しており、それらにより、治具4は、Z方向およびY方向の位置決めがなされ、より精度のよい位置決めとなる。さらに、8個の治具4は、図1〜図3を用いて説明したとおり、顕微鏡やカメラを用いて、半導体レーザチップ6に対して互いに正確に位置決めされている。その結果、複数の半導体レーザチップ6同士が、台座8上で、互いに正確に位置決めされることになる。また、図3で説明した通り、半導体レーザチップ6の端面(へき開面)は治具4の端面と正確に位置決めされているため、複数の治具4および半導体レーザチップ6で構成される、X軸に垂直な面は、凹凸の少ないほぼ平坦な面が構成されており、均一に、全反射コーティング(図9の符号20参照)や、保護コーティング(図9の符号22参照)や、レジスト(図6(b)参照)を塗布することが可能である。そのため、この状態において、複数の治具4および半導体レーザチップ6で構成される、当該X軸に垂直な面に対して、全反射コーティング(図9の符号20参照)または保護コーティング(図9の符号22参照)を均一に施した後に、当該コーティングを施した面のうちの少なくともいずれか一方に対して、当該コーティング上に、スピンコーター等により、レジスト13(図6(b)参照)を均一に塗布する。塗布されたレジスト13は、プリベーク工程により、加熱され、固化される。
【0027】
また、アライメントマーク9が、台座8とY方向押さえ30とにそれぞれ1箇所ずつ、計2箇所形成されているため、後述する露光工程において、露光用マスク(図5参照)との正確な位置決めが行える。ここで、より正確な位置出しをするため、アライメントマーク9の位置を、台座8及び/またはY方向押さえ30に、1箇所だけでなく、2箇所以上任意の個数を任意の位置に設けても良い。また、図には記していないが、トルク管理されたねじ等で、台座8、Y方向押さえ30、Z方向押さえ31,32は互いに固定されており、移動や作業の際に互いに位置が変化しないよう構成されている(図8,9参照)。
【0028】
図5は、本実施の形態1に係る半導体製造装置で用いる露光用マスクの構成を示す構成図である。図5に示すように、ガラス等により形成された透明の平板状のフォトマスク10に、クロムメッキ等により、アライメントマーク11が2箇所以上と、マスクパターン12とが、黒く塗られ形成されている。本実施の形態1においては、このように、露光用マスクは、フォトマスク10と、アライメントマーク11と、マスクパターン12とから構成されている。図5に示した図では、アライメントマーク11とマスクパターン12とが黒く塗られ、その他の部分が透明であり、感光した部分が溶解する「ポジ型」の例が示されているが、その場合に限らず、感光した部分が残る「ネガ型」としても良い。また、アライメントマーク11は、フォトマスク10の中央部分に形成されたマスクパターン12の上下の位置に1つずつ計2箇所形成されている例が図5に示されているが、これに限定されるものではなく、任意の個数を任意の位置に形成してよい。但し、これらのアライメントマーク11は、前述の図4に示したアライメントマーク9と位置合わせするためのものであるので、アライメントマーク11と9とは、互いに、その個数および位置を、精度高く正確に一致させて形成する必要がある。このように、本実施の形態においては、アライメントマーク9,11が、台座8およびY方向押さえ30と、露光用マスクとの間の位置決めを行うためのマスク用位置決め手段となっている。
【0029】
本実施の形態においては、露光用マスクは上述のように構成されており、当該図5に示した露光用マスクを、図4に示した状態の治具4が載置された台座8上に、図6(a)に示すように、位置決めして配置する。位置決めの際には、台座8とY方向押さえ30に設けられたアライメントマーク9の位置に、フォトマスク10に設けられたアライメントマーク11の位置がそれぞれ一致するようにして位置決めして、フォトマスク10を配置する。この状態で、図6(b)に示すように、紫外光などを照射して、フォトマスク10のマスクパターン12を、レジスト13に露光する。露光により、フォトマスク10のマスクパターン12がレジスト13上に描かれる。このように、マスクパターン12を用いるので、高精度に区分されたパターンを半導体レーザチップ6の端面に描くことができる。その後、現像により、余分なレジスト13を除去し(図10(b)のレジスト23参照)、レジスト13のない部分に、部分反射コーティング(図10(c)の符号24参照)を施す。最後に、溶剤などによって、レジスト13を完全に除去する。
【0030】
このように、本実施の形態においては、台座8及びY方向押さえ30とフォトマスク10とに、アライメントマーク9,11という位置決め機構が備わっていることにより、台座8及びY方向押さえ30と、フォトマスク10とを、精度高く位置決めできるので、複数の半導体レーザチップ6に対して、一度に、精度良く露光を行うことが可能であり、また、マスクパターン12の作り方によっては、発光点の一部にレジスト13を残して部分的にコーティングを施す等の、高精度に区分けされたコーティングを行うこともできる。また、金属製のマスクを用いる場合と違い、ガラス製のフォトマスク10を使用したことにより、半導体レーザチップ6に密着するレジスト13を用いることができるため、コーティング剤の回り込み等を小さくすることができる。
【0031】
本実施の形態においては、このようにして、半導体レーザチップ6のへき開面に、全反射コーティングや、保護コーティング、あるいは、部分反射コーティングを形成する。なお、全反射コーティングおよび部分反射コーティングは、コーティングを施さなかった場合よりも透過率が高く、保護コーティングは、コーティングを施さなかった場合と同等あるいはそれより低い透過率である。
【0032】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、半導体基板(半導体ウェハ)をへき開することによって得られた半導体レーザチップのへき開面に対して垂直な方向(X軸方向)に位置決めするとともに平行な一方向(Z軸方向)に位置決めするための治具4と、複数の半導体レーザチップ6のへき開面を揃えるためのY方向押さえ30、Z軸方向押さえ31、および、台座8とを備えるようにしたので、半導体レーザチップ6のへき開面に対して、フォトマスク10のマスクパターン12を精度よく配置し、高精度に区分けしたコーティングを行うことができる。なお、従来においては、半導体レーザチップのへき開面等の端面にパターンを作成するという用途自体が無かったので、精度よく位置合わせすることも、ましてや、露光用マスクを用いることも、全くそのような発想はなかったが、本実施の形態においては、半導体レーザチップ同士を精度よく位置決めできる構成を有しているので、半導体レーザチップの端面にマスクを用いた露光ができ、高精度に区分けされたコーティングを行うことができる。
【0033】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2に係る半導体レーザ素子の製造装置(以下、半導体製造装置と呼ぶ。)で用いる治具補助具の構成を示す構成図である。図7において、15は、治具補助具として機能するダミーバー(第1の治具手段)である。ダミーバー15は、半導体レーザチップ6と略々同じ形状(同じ幅、同じ長さ)で厚みだけが異なる板状の部材であり、金属やシリコン等で製造される。半導体レーザチップ6とダミーバー15とは、図7(a)に示すように、交互に配置され、図7(b)に示すように、互いに密着して積層される。積層の際には、半導体レーザチップ6とダミーバー15とは、互いの両端面同士、および、側面同士を揃えて配置される。ここで注意すべきことは、図7(b)に示すような積層後に、一番下の層と一番上の層とがいずれもダミーバー15となるように積層することで、これにより、すべての半導体レーザチップ6がダミーバー15の間に配置されるようになる。
【0034】
図8は、図7に示したダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを、本実施の形態に係る半導体製造装置に搭載するところを示したものである。図8において、16は治具本体、17は治具側板、18は治具押さえ、19はネジである。これらの、治具本体16、治具側板17、および、治具押さえ18は、ダミーバー15と半導体レーザチップ6とが交互に積層された状態の各半導体レーザチップ6のコーティングを施す端面の位置を揃えて並べて配置し、当該端面に平行な4方向から締めて固定するための、略々枠型の治具(第2の治具手段)となっている。
【0035】
図8に示すように、図7に示したダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを、コーティング等を施す反射面(へき開面)が上向きになるようにして、L字型に形成された治具本体16上に載せる。治具本体16は基本的にはL字型形状であるが、ダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを載せるための突出部161,162が設けられている。突出部161,162の厚さ(高さ)は、治具本体16の他の部分よりも半導体レーザチップ6の幅の分だけ薄くなっており、ダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを載置すると、ちょうど、治具本体16の他の部分と同じ高さになるように構成されている。このようにして、治具本体16上にダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを載置した状態で、半導体レーザチップ6の側面(反射面でない側の面)方向から治具側板17で押さえ、さらに、半導体レーザチップの主面(電極が設けられている側の面)方向から治具押さえ18で押さえつける。この状態を維持するために、トルク管理されたネジ19を締めて、治具本体16に、治具側板17および治具押さえ18を固定し、半導体レーザチップ6を半導体製造装置から落ちない程度の強さで押さえつける。これで、固定が完了する。このようにして、ダミーバー15と半導体レーザチップ6とを固定した状態を示したものが図9である。なお、固定手段としては、ネジ19以外のものを用いてもよい。
【0036】
このように構成されたダミーバー15および治具16〜19においては、半導体レーザチップ6の反射面に垂直な面を揃えて複数の半導体レーザチップ6を配置することが可能であり、また、レジストを塗布する反射面を、凹凸の少ないほぼ平坦な面となるように揃えることが可能である。また、治具本体16が、半導体レーザチップ6のコーティングを行わない面に対して半導体レーザチップ16の発光点がない部分に当るように構成されているため、コーティングを行わない側の半導体レーザチップ6の発光点への損傷やコンタミネーションを避けることができる。また、ダミーバー15の形状を、半導体レーザチップ6より短く構成したり、あるいは、長く構成したりして、適宜調整することにより、レジストの厚みを調整することも可能である。また、治具本体16および治具側板17にアライメントマークを設けておくことにより、実施の形態1と同様に(図6参照)、高精度に、半導体レーザチップ6と露光マスク(図5参照)の位置決めを行うことが可能である。
【0037】
本実施の形態においては、図9の状態でレジスト塗布を行い、その後は、上述の実施の形態1と同様に、図5に示す露光マスクを用いて、図6に示すように紫外光等により露光を行い、コーティングを行う。レジスト塗布、露光、コーティング等の処理については、実施の形態1と基本的に同様に行なうものであるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
以上のように、本実施の形態においても、半導体基板(半導体ウェハ)をへき開することによって得られた半導体レーザチップのへき開面に対して垂直な方向(X軸方向)に位置決めするとともに平行な一方向(Z軸方向)に位置決めするための治具補助具であるダミーバー15と、複数の半導体レーザチップのへき開面を揃えるための、治具本体16、治具側板17、および、治具押さえ18とを備えるようにしたので、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、半導体レーザチップ6のへき開面に対して、フォトマスク10のマスクパターン12を精度よく配置し、高精度に区分けしたコーティングを行うことができる。
【0039】
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3を示す構成図である。図10は、半導体レーザチップ6のコーティングプロセスの手順を示しており、矢印に沿って、図10(a)から図10(d)へと作業工程が示されている。なお、本実施の形態においては、上述の実施の形態1または実施の形態2で説明した半導体レーザ素子の製造装置を用いて、位置合わせを行って、コーティング処理やレジスト塗布処理を行うこととする。半導体レーザ素子の製造装置の構成は、実施の形態1,2で説明した通りであるため、ここでは、その説明を省略し、以下では、半導体レーザチップ6のコーティングプロセスの手順のみを説明する。
【0040】
半導体レーザチップ6のコーティングプロセスの手順においては、最初に、図10(a)に示すように、レーザダイオード21のへき開面の一方に全反射コーティング20を施し、反対側のへき開面に、コーティングを施さなかった場合と同等もしくはコーティングを施さなかった場合より透過率が低い保護コーティング22を施す。この状態において、次に、保護コーティング22上にレジスト23を塗布し、プリベークによりレジスト23を加熱処理して固化し、固化したレジスト23上に露光用マスク(図5参照)を配置して、マスクパターン(図5の符号12参照)をレジスト23上に描く。次に、現像により、余分なレジスト23を除去すると、図10(b)に示す状態になる。次に、図10(c)に示すように、レジスト23が塗布されていない部分に、部分反射コーティング24を施す。次に、図10(d)に示したように、溶剤などによって、レジスト23が除去され、レーザビーム出射方向に示した方向に高輝度レーザビームが取り出されるよう構成される。このように、コーティングプロセスにおいて、反射面に保護コーティング22を施すことにより、レジスト23を塗布する作業や、運搬中に、反射面への水分やコンタミネーション等の悪影響を防ぐことができ、より寿命が長く、反射面の強度の強いレーザダイオード素子を提供することができる。
【0041】
また、保護コーティング22の最外面に、SiO2や、SiNなど、空気中の水分に対して反応しにくいものを使用しておくと、さらに反射面を保護し、高い耐光強度を得る効果が大きい。さらに、半導体レーザチップの成長、へき開、全反射コーティング23と保護コーティング22形成までを、清浄なチャンバーから取り出さずに行うようにすれば、端面の劣化や汚れを防ぐ効果はさらに大きい。
【0042】
以上のように、本実施の形態3によれば、上述の実施の形態1,2と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態においては、複数の半導体レーザチップを互いに精度よく位置決めして、へき開面にレジストを塗布し、露光用マスクによってパターンを露光してコーティングを施すようにしたので、へき開面のコンタミネーション、空気中の水分による劣化、酸化による劣化等を避けることができ、より寿命の長い、へき開面損傷の起きにくい半導体レーザシップ(レーザダイオード)を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ばね、2 バルブ、3 空気穴、4 治具、5 溝、6 半導体レーザチップ、7 顕微鏡、8 台座、9 アライメントマーク、10 フォトマスク、11 アライメントマーク、12 マスクパターン、13 レジスト、15 ダミーバー、16 治具本体、17 治具側板、18 治具押さえ、19 ネジ、20 全反射コーティング、21 レーザダイオード、22 保護コーティング、23 レジスト、24 部分反射コーティング。
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体レーザ素子の製造装置および製造方法に関し、特に、半導体レーザ素子を精度良く配置し、レジストを塗布し、端面上にマスクによる露光を行うための、半導体レーザ素子の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを用いて半導体レーザ素子等を製造する際には、まず、基板上に結晶を成長させる結晶成長装置を用いて、レーザの誘導放出が行なわれる活性層を含む多層構造を有する半導体基板(半導体ウェハ)を生成する。半導体基板の生成方法としては、例えば、GaAs、InP、GaNなどからなる基板上に、気相エピタキシャル法、液相エピタキシャル法、または、分子線エピタキシャル法などを用いて、例えば、InGaAs、InGaAsP、InGaP,AlGaInP,InGaN、AlGaNなどからなる活性層および半導体層を順次積層して生成する。なお、活性層および半導体層には、添加不純物として、例えば、Si、Mg、Znなどが用いられる。
【0003】
こうして生成した半導体基板(半導体ウェハ)に対し、次に、電極を形成する。電極は、基板上面にp型電極を形成し、基板下面にn型電極を形成する。p型電極およびn型電極は、半導体基板(半導体ウェハ)から最終的に形成される複数の半導体レーザチップ(レーザダイオード)に対してそれぞれ1つずつ形成されるので、それらの位置を意識しながら、縦方向および横方向にアレイ状に並ぶように互いに離間して形成される。電極形成には、例えば、リフトオフ法、真空蒸着法、スパッタリング法などの方法が用いられる。
【0004】
こうして電極を形成した後に、レーザ光導波路となる方向に対して垂直な方向に、半導体基板(半導体ウェハ)をへき開し、複数の半導体レーザチップ(レーザダイオード)がバー状(短冊状)に一列に並んだ半導体レーザバーを形成する。このへき開によって形成された半導体レーザバーの両方のへき開面(端面)は、いずれか一方が出射端面(透過面)となり、他方が後端面(反射面)となる。これらのへき開面には誘電体膜のコーティングが施される。
【0005】
半導体レーザバーは誘電体膜でコーティングした後に、さらにへき開され、個々の半導体レーザチップ(レーザダイオード)に分離される。場合によっては、半導体レーザバーの形態のまま、使用される場合もある。当該分離により生成される面、すなわち、半導体レーザチップの電極が形成された上面および下面、及び、透過面または反射面となるへき開面と交差する面は、側壁面となる。また、透過面及び反射面の間の距離は、半導体レーザチップ(レーザダイオード)の共振器長となる。
【0006】
上述したように、半導体レーザバーのへき開面には誘電体膜によるコーティングを施すが、従来のコーティング装置においては、図11に示すように、1対の治具によって、半導体レーザチップ(半導体レーザバー)の両面から半導体レーザチップを挟み込むことにより、半導体レーザチップのへき開面を当該治具で固定した上で、当該へき開面に対してコーティングを行っていた。
【0007】
その際に、コーティング膜のへき開面以外への回り込みの防止を図ったもの(例えば、特許文献1参照)や、へき開面の上下面のコーティングを可能にするもの(例えば、特許文献2参照)、あるいは、コーティング膜厚調整のため、蒸着ビームの角度を調整するもの(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3661919号公報
【特許文献2】特開2000−208863号公報
【特許文献3】特許第3784639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図11に記載のものや、特許文献1〜3に記載のコーティング装置にあっては、単に、半導体レーザバーを挟んで固定するだけで、コーティングを行うへき開面(ファセット)を精度よく位置決めするための構成は設けられておらず、また、位置決めについては何ら考慮もされていなかった。特に、ビームに垂直かつ半導体レーザ素子に平行な方向において位置を正確に決めることができなかった。
【0010】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、複数の半導体レーザ素子を同時に精度よく位置決めすることが可能な、半導体レーザ素子の製造装置および製造方法を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、半導体レーザ素子の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行う第1の治具手段と、前記半導体レーザ素子を位置決めした状態の複数の前記第1の治具手段を、各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて固定する、第2の治具手段とを備えた半導体レーザ素子の製造装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、半導体レーザ素子の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行う第1の治具手段と、前記半導体レーザ素子を位置決めした状態の複数の前記第1の治具手段を、各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて固定する、第2の治具手段とを備えた半導体レーザ素子の製造装置であるので、複数の半導体レーザ素子を同時に精度よく位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置で用いる治具の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置の治具に半導体レーザチップを固定した様子を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置の治具への半導体レーザチップの配置作業を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置で用いる台座上に、半導体レーザチップを載置した治具を設置した様子を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置で用いる露光用マスクを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置において、台座上に半導体レーザチップを載置した治具を設置し、その上に、露光用マスクを配置した様子を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る半導体レーザ素子の製造装置で用いる治具補助具の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る半導体レーザ素子の製造装置の治具への半導体レーザチップの配置作業を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る半導体レーザ素子の製造装置の治具への半導体レーザチップの配置し固定した状態を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る半導体レーザ素子の製造装置のコーティング方法を説明する図である。
【図11】従来の半導体レーザ素子の製造装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明は、半導体レーザチップまたは半導体レーザバー等の半導体レーザ素子におけるへき開によって得られたへき開面に対して垂直な方向と、当該へき開面に平行な方向のうちの1方向に対して、位置決めする機構、および、複数の半導体レーザ素子のへき開面を揃えて並べる機構を設けた、露光マスク装置およびコーティング装置などの、半導体レーザ素子の製造装置に関する。この発明の半導体レーザ素子の製造装置は、その範疇として、露光マスク装置およびコーティング装置などの、半導体レーザ素子を製造するための装置全般を含むものとする。また、半導体レーザ素子は、その範疇として、半導体レーザチップおよび半導体レーザバーなどの、半導体レーザ素子全般を含むものとする。
【0015】
また、この発明は、半導体レーザチップまたは半導体レーザバー等の半導体レーザ素子におけるへき開によって得られたへき開面の一部に対して透過率の異なるコーティングを行うコーティング方法において、へき開面の少なくとも一方に対し、コーティングを施さなかった場合よりも透過率が高い保護コーティングを施し、その後、へき開面の一部にマスクを施して、へき開面の一部にコーティングを施す、半導体レーザ素子の製造方法にも関する。
【0016】
以下、この発明の実施の形態について説明する。なお、この発明の特徴は、レジスト塗布、露光、コーティング工程に関する部分であり、半導体基板の生成方法およびへき開方法については、上述したような、公知の任意の生成方法でよいため、ここではその説明は省略し、この発明の特徴部分を中心に説明する。
【0017】
また、以下の説明においては、半導体レーザ素子として、半導体レーザチップ(レーザダイオード)を例に挙げて説明するが、その場合に限らず、他の半導体レーザ素子、例えば、半導体レーザチップ(レーザダイオード)に分離する前の半導体レーザバーに対しても、この発明の半導体レーザ素子の製造装置および製造方法を適用することができることは言うまでもなく、その場合においても、同様の効果が得られる。
【0018】
実施の形態1.
以下、図面を用いて、この発明の実施の形態1に係る半導体レーザ素子の製造装置(以下、単に、半導体製造装置とする。)について説明する。図1は、本実施の形態1に係る半導体製造装置において用いられる治具(第1の治具手段)の構成を示す図である。図1(a)は正面断面図、図1(b)は平面図、図1(c)は側面図である。また、図2は、半導体レーザチップを半導体製造装置の治具に吸着固定した様子を示す図である。図2(a)は正面図、図2(b)は平面図、図2(c)は側面図である。これらの図において、1はばね、2はバルブ、3は空気穴、4は治具、5は溝、6は半導体レーザチップ(レーザダイオード)である。
【0019】
図1(b)の平面図に示すように、本実施の形態1に係る半導体製造装置で用いる治具4は、略々直方体の外形を有し、治具4の上面には、吸着用の空気穴3および溝5が形成されている。この空気穴3と溝5とが設けられている箇所が、半導体レーザチップ6の載置部となる。載置部の表面は、空気穴3および溝5を除いて、平坦な面となっている。空気穴3は、治具4の上面において、治具4の長手方向(以下、Y軸方向とする。)の略々中央の位置で、かつ、長手方向に垂直な方向(以下、X軸方向とする。)における中央よりも端に寄った位置(図の例では、右寄り)に形成されている。空気穴3は略々円形に形成されており、溝5はその空気穴3を挟んで、2本形成されている。これらの2本の溝5は、Y軸方向に延びており、互いに平行になるように設けられている。各溝5と空気穴3とはそれぞれ1点で接触しており、互いに連結していて、空気穴3に対して空気が出入りするときには、その空気が溝5内も流れる構造となっている。
【0020】
図1(a)の正面断面図に示されるように、空気穴3は、治具4の内部において、L字型に形成されている。すなわち、治具4の上面から、X軸およびY軸に垂直な方向(以下、Z方向とする。)に所定の長さ(治具4のZ方向の長さの約1/2程度の長さ)だけ延びるように形成されて、そこから、直角に曲がって、Y軸方向に、治具4の一方の端面まで延びて、外部空間に向かって開口している。なお、当該開口部の付近では、空気穴3の内径が他の部分よりも広くなっており、バルブ2が挿入されている。バルブ2は、図1(a)に示すように、内径が広くなった部分の空気穴3に対してちょうど嵌る大きさの外径を有する頭部と、当該頭部より外径の小さい脚部とから構成されている。バルブ2は、その頭部の先端に当接したばね1の作用により、Y軸方向に移動可能に設けられている。通常時は、バルブ2の脚部だけが治具4から外に突き出ている(図1(a)では、バルブ2が押し込まれた状態が記載されている。)。このように、空気穴3は、一端が、半導体レーザチップ6が搭載される載置部に開口し、他端が、治具4の他の端面において外部に向かって開口した、貫通穴となっている。この他の端面は、図1(a)の例に限らず、載置部が設けられている面以外の端面であれば、いずれの端面であってもよい。
【0021】
このとき、図2(b)に示すように、空気穴3と溝5とを覆うように、治具4の上面に、半導体レーザチップ6を載置して、作業員がY軸方向にバルブ2を押し込み、その状態で、バルブ2から手を放すと、ばね1の作用によって、空気穴3内の空気によって、空気穴3および溝5とで半導体レーザチップ6を真空吸着し、固定できる。このとき、バルブ2の脚部の先端の一部のみが、治具4から外に突き出た状態となって、その位置で、作用と反作用の力のつりあいが保たれ、バルブ2の位置は安定する。なお、上述したように、空気穴3と溝5とは連結しているため、吸着力が、空気穴3部分だけでなく、溝5部分でも働くため、半導体レーザチップ6のほぼ全体に対して吸着力が働き、半導体レーザチップ6のほぼ全体で吸着固定されるので、固定状態は非常に安定する。そのため、半導体レーザチップ6が治具4から脱落することはない。このように、ばね1と空気穴3と溝5とは、半導体レーザチップ6を吸引固定するための吸引手段となっている。
【0022】
なお、図3は、図2の状態になるよう半導体レーザチップ6を治具4へ載置する作業を示す図である。図3において、7は顕微鏡である。他の構成については、図1,2で説明したものであるため、ここでは、その説明を省略し、同一符号を付して示す。図3に示すように、治具4に半導体レーザチップ6を吸着固定する前に、作業員が顕微鏡7などで、Z軸方向またはそれに平行な方向から、半導体レーザチップ6と治具4との位置関係を目視確認しながら、μm単位で精度良く半導体レーザチップ6の位置決めをする。その状態で、バルブ2を押しこんで、手を離すと、ばね1の作用で、空気穴3および溝5による真空吸着によって固定することができる。位置決めの際には、半導体レーザチップ6のへき開面と治具4の1つの端面とが一致するように位置決めする(へき開面が、治具4からはみ出ることなく、へこむことなく、正確に一致するように位置決めする。)。これにより、X軸方向(へき開面に対して垂直な方向)における位置決めが精度よく行うことができる。また、同時に、治具4の半導体レーザチップ6を載せる面は、平坦に形成されているので、治具4の当該面に密着させて辺導体レーザチップ6を搭載させることにより、Z軸方向(へき開面に対して平行な一方向)の位置決めも精度よく行なうことができる。なお、ここでは、顕微鏡7を用いた目視による確認を実施の形態1として示したが、その場合に限らず、治具4を自動ステージに載せ、半導体レーザチップ6をコレット等に吸着し、カメラをCCDカメラに画像として取り込んで、パソコン上に取り込んだ画面で両者を比較しながら位置決めしても良い。また、バルブ2の押しこみも、作業員の手によって行なわずに、機械アーム等の装置を用いて、押し込むようにしてもよい。このようにして、顕微鏡やカメラによりμm単位で位置決めすれば、より正確な位置決めが可能である。また、Y軸方向への位置決めは、特に精度よく行なわなくてもよいが、もし、Y軸方向へ精度よく位置決めしたい場合には、治具4の溝5の両端付近に、半導体レーザチップ6を位置合わせするためのアライメントを設けておき、当該アライメントに半導体レーザチップ6の端を合わせて配置するようにすればよい。
このようにすることにより、位置決めの際には、目標とする公差の範囲内に位置決めすることができる。このように、へき開面が、治具4から大きくはみ出ることなく、へこむことなく正確に位置決めできるため、次のような効果がある。半導体レーザチップ端面に付着するレジストの厚みが著しく不均等になったり、つかなかったりする現象を避けることができ、また、レジスト除去の際、除去するべき箇所に残ったり、除去すべきでない箇所に残らなかったりする不具合を避けることができる。
【0023】
このように、治具4は、半導体基板(半導体ウェハ)をへき開することによって得られた半導体レーザチップ6のへき開面に対して垂直な方向(X軸方向)に位置決めするとともに、当該へき開面に対して平行な一方向(Z軸方向)に位置決めする機能を有している。
【0024】
図2に示す状態で、個々の半導体レーザチップ6のへき開面にレジスト塗布やコーティングを施してもよいが、効率化を図るとともにコーティング剤の回り込みを防止するために、ここでは、複数個の半導体レーザチップ6に対して同時にレジスト塗布やコーティングを行うこととする。図4は、複数個の半導体レーザチップ6に対して同時にレジスト塗布やコーティングを行うための、本実施の形態に係る半導体製造装置の第2の治具手段としての本体の構成を示した図である。図4において、8は複数の治具4を並べて載せるための台座、9は後述する露光用マスクとの位置決めを行うためのアライメントマーク、30はY方向押さえ、31,32はZ方向押さえである。第2の治具手段は、台座8、Y方向押さえ30、および、Z方向押さえ31,32から構成されている。
【0025】
上述したように、半導体レーザチップ6は治具4に真空吸着されて固定されているため、載置した状態から治具4を時計回りに90度回転させて、横に向けても、半導体レーザチップ6が治具4から落ちることはない。そのため、図4(a)の平面図および図4(b)の側面図に示すように、半導体レーザチップ6を乗せた治具4を横に向けて、レジスト塗布、露光、および、コーティングを行う側のへき開面を上向きにした状態で、治具4を複数個、台座8上に並べて載置する。このとき、図4(a),(b)に示されているように、台座8と治具4の端面4a,4bが接触して、配置されている。このように、台座8には、治具4の少なくとも2方向の端面と当接する当て面が設けられているため、当該当て面を利用して、各治具4を配置すれば、台座8に対して少なくとも2方向で精度よく位置決めを行うことができる。また、各半導体レーザチップ6の電極が設けられている面のうち、治具4側とは反対側の面は、隣接する治具4の背面に接触しており、各治具4と半導体レーザチップ6との間には隙間がない状態である。このように隙間なく配置する理由は、精度よく位置決めするためと、コーティング剤等の溶剤の回り込みを防止するための2つの理由がある。なお、このように、半導体レーザチップ6と治具4とを交互に配置する理由は、半導体レーザチップ6だけを積み重ねてコーティングを行って、全反射コーティングや保護コーティング等を形成すると、半導体レーザチップ6同士が密着して分離できなくなるためである。また、図4(b)に示されているように、半導体レーザチップの全反射コーティングや保護コーティング等を形成する側と反対側の端面は、台座8には接触していない。これにより、コーティングを行わない側の半導体レーザチップへの損傷やコンタミネーションを避けることができる。
【0026】
図4においては、Z方向押さえ31と32との間の空間の大きさが、8個の治具4とそれに載置された8個の半導体レーザチップ6との厚さの合計とほぼ同じ大きさとなっている。そのため、図4においては、8個の治具4が、半導体レーザチップ6を載置した状態で、台座8の当て面を利用することによって、半導体レーザチップ6に平行で光軸に垂直な方向に精度よく位置決めされ配置される。また、Z方向押さえ31,32およびY方向押さえ30が、それぞれ、治具4の端面のうち、台座8が当接していない他の端面に当接する当て面を有しており、それらにより、治具4は、Z方向およびY方向の位置決めがなされ、より精度のよい位置決めとなる。さらに、8個の治具4は、図1〜図3を用いて説明したとおり、顕微鏡やカメラを用いて、半導体レーザチップ6に対して互いに正確に位置決めされている。その結果、複数の半導体レーザチップ6同士が、台座8上で、互いに正確に位置決めされることになる。また、図3で説明した通り、半導体レーザチップ6の端面(へき開面)は治具4の端面と正確に位置決めされているため、複数の治具4および半導体レーザチップ6で構成される、X軸に垂直な面は、凹凸の少ないほぼ平坦な面が構成されており、均一に、全反射コーティング(図9の符号20参照)や、保護コーティング(図9の符号22参照)や、レジスト(図6(b)参照)を塗布することが可能である。そのため、この状態において、複数の治具4および半導体レーザチップ6で構成される、当該X軸に垂直な面に対して、全反射コーティング(図9の符号20参照)または保護コーティング(図9の符号22参照)を均一に施した後に、当該コーティングを施した面のうちの少なくともいずれか一方に対して、当該コーティング上に、スピンコーター等により、レジスト13(図6(b)参照)を均一に塗布する。塗布されたレジスト13は、プリベーク工程により、加熱され、固化される。
【0027】
また、アライメントマーク9が、台座8とY方向押さえ30とにそれぞれ1箇所ずつ、計2箇所形成されているため、後述する露光工程において、露光用マスク(図5参照)との正確な位置決めが行える。ここで、より正確な位置出しをするため、アライメントマーク9の位置を、台座8及び/またはY方向押さえ30に、1箇所だけでなく、2箇所以上任意の個数を任意の位置に設けても良い。また、図には記していないが、トルク管理されたねじ等で、台座8、Y方向押さえ30、Z方向押さえ31,32は互いに固定されており、移動や作業の際に互いに位置が変化しないよう構成されている(図8,9参照)。
【0028】
図5は、本実施の形態1に係る半導体製造装置で用いる露光用マスクの構成を示す構成図である。図5に示すように、ガラス等により形成された透明の平板状のフォトマスク10に、クロムメッキ等により、アライメントマーク11が2箇所以上と、マスクパターン12とが、黒く塗られ形成されている。本実施の形態1においては、このように、露光用マスクは、フォトマスク10と、アライメントマーク11と、マスクパターン12とから構成されている。図5に示した図では、アライメントマーク11とマスクパターン12とが黒く塗られ、その他の部分が透明であり、感光した部分が溶解する「ポジ型」の例が示されているが、その場合に限らず、感光した部分が残る「ネガ型」としても良い。また、アライメントマーク11は、フォトマスク10の中央部分に形成されたマスクパターン12の上下の位置に1つずつ計2箇所形成されている例が図5に示されているが、これに限定されるものではなく、任意の個数を任意の位置に形成してよい。但し、これらのアライメントマーク11は、前述の図4に示したアライメントマーク9と位置合わせするためのものであるので、アライメントマーク11と9とは、互いに、その個数および位置を、精度高く正確に一致させて形成する必要がある。このように、本実施の形態においては、アライメントマーク9,11が、台座8およびY方向押さえ30と、露光用マスクとの間の位置決めを行うためのマスク用位置決め手段となっている。
【0029】
本実施の形態においては、露光用マスクは上述のように構成されており、当該図5に示した露光用マスクを、図4に示した状態の治具4が載置された台座8上に、図6(a)に示すように、位置決めして配置する。位置決めの際には、台座8とY方向押さえ30に設けられたアライメントマーク9の位置に、フォトマスク10に設けられたアライメントマーク11の位置がそれぞれ一致するようにして位置決めして、フォトマスク10を配置する。この状態で、図6(b)に示すように、紫外光などを照射して、フォトマスク10のマスクパターン12を、レジスト13に露光する。露光により、フォトマスク10のマスクパターン12がレジスト13上に描かれる。このように、マスクパターン12を用いるので、高精度に区分されたパターンを半導体レーザチップ6の端面に描くことができる。その後、現像により、余分なレジスト13を除去し(図10(b)のレジスト23参照)、レジスト13のない部分に、部分反射コーティング(図10(c)の符号24参照)を施す。最後に、溶剤などによって、レジスト13を完全に除去する。
【0030】
このように、本実施の形態においては、台座8及びY方向押さえ30とフォトマスク10とに、アライメントマーク9,11という位置決め機構が備わっていることにより、台座8及びY方向押さえ30と、フォトマスク10とを、精度高く位置決めできるので、複数の半導体レーザチップ6に対して、一度に、精度良く露光を行うことが可能であり、また、マスクパターン12の作り方によっては、発光点の一部にレジスト13を残して部分的にコーティングを施す等の、高精度に区分けされたコーティングを行うこともできる。また、金属製のマスクを用いる場合と違い、ガラス製のフォトマスク10を使用したことにより、半導体レーザチップ6に密着するレジスト13を用いることができるため、コーティング剤の回り込み等を小さくすることができる。
【0031】
本実施の形態においては、このようにして、半導体レーザチップ6のへき開面に、全反射コーティングや、保護コーティング、あるいは、部分反射コーティングを形成する。なお、全反射コーティングおよび部分反射コーティングは、コーティングを施さなかった場合よりも透過率が高く、保護コーティングは、コーティングを施さなかった場合と同等あるいはそれより低い透過率である。
【0032】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、半導体基板(半導体ウェハ)をへき開することによって得られた半導体レーザチップのへき開面に対して垂直な方向(X軸方向)に位置決めするとともに平行な一方向(Z軸方向)に位置決めするための治具4と、複数の半導体レーザチップ6のへき開面を揃えるためのY方向押さえ30、Z軸方向押さえ31、および、台座8とを備えるようにしたので、半導体レーザチップ6のへき開面に対して、フォトマスク10のマスクパターン12を精度よく配置し、高精度に区分けしたコーティングを行うことができる。なお、従来においては、半導体レーザチップのへき開面等の端面にパターンを作成するという用途自体が無かったので、精度よく位置合わせすることも、ましてや、露光用マスクを用いることも、全くそのような発想はなかったが、本実施の形態においては、半導体レーザチップ同士を精度よく位置決めできる構成を有しているので、半導体レーザチップの端面にマスクを用いた露光ができ、高精度に区分けされたコーティングを行うことができる。
【0033】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2に係る半導体レーザ素子の製造装置(以下、半導体製造装置と呼ぶ。)で用いる治具補助具の構成を示す構成図である。図7において、15は、治具補助具として機能するダミーバー(第1の治具手段)である。ダミーバー15は、半導体レーザチップ6と略々同じ形状(同じ幅、同じ長さ)で厚みだけが異なる板状の部材であり、金属やシリコン等で製造される。半導体レーザチップ6とダミーバー15とは、図7(a)に示すように、交互に配置され、図7(b)に示すように、互いに密着して積層される。積層の際には、半導体レーザチップ6とダミーバー15とは、互いの両端面同士、および、側面同士を揃えて配置される。ここで注意すべきことは、図7(b)に示すような積層後に、一番下の層と一番上の層とがいずれもダミーバー15となるように積層することで、これにより、すべての半導体レーザチップ6がダミーバー15の間に配置されるようになる。
【0034】
図8は、図7に示したダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを、本実施の形態に係る半導体製造装置に搭載するところを示したものである。図8において、16は治具本体、17は治具側板、18は治具押さえ、19はネジである。これらの、治具本体16、治具側板17、および、治具押さえ18は、ダミーバー15と半導体レーザチップ6とが交互に積層された状態の各半導体レーザチップ6のコーティングを施す端面の位置を揃えて並べて配置し、当該端面に平行な4方向から締めて固定するための、略々枠型の治具(第2の治具手段)となっている。
【0035】
図8に示すように、図7に示したダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを、コーティング等を施す反射面(へき開面)が上向きになるようにして、L字型に形成された治具本体16上に載せる。治具本体16は基本的にはL字型形状であるが、ダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを載せるための突出部161,162が設けられている。突出部161,162の厚さ(高さ)は、治具本体16の他の部分よりも半導体レーザチップ6の幅の分だけ薄くなっており、ダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを載置すると、ちょうど、治具本体16の他の部分と同じ高さになるように構成されている。このようにして、治具本体16上にダミーバー15と半導体レーザチップ6とを積層したものを載置した状態で、半導体レーザチップ6の側面(反射面でない側の面)方向から治具側板17で押さえ、さらに、半導体レーザチップの主面(電極が設けられている側の面)方向から治具押さえ18で押さえつける。この状態を維持するために、トルク管理されたネジ19を締めて、治具本体16に、治具側板17および治具押さえ18を固定し、半導体レーザチップ6を半導体製造装置から落ちない程度の強さで押さえつける。これで、固定が完了する。このようにして、ダミーバー15と半導体レーザチップ6とを固定した状態を示したものが図9である。なお、固定手段としては、ネジ19以外のものを用いてもよい。
【0036】
このように構成されたダミーバー15および治具16〜19においては、半導体レーザチップ6の反射面に垂直な面を揃えて複数の半導体レーザチップ6を配置することが可能であり、また、レジストを塗布する反射面を、凹凸の少ないほぼ平坦な面となるように揃えることが可能である。また、治具本体16が、半導体レーザチップ6のコーティングを行わない面に対して半導体レーザチップ16の発光点がない部分に当るように構成されているため、コーティングを行わない側の半導体レーザチップ6の発光点への損傷やコンタミネーションを避けることができる。また、ダミーバー15の形状を、半導体レーザチップ6より短く構成したり、あるいは、長く構成したりして、適宜調整することにより、レジストの厚みを調整することも可能である。また、治具本体16および治具側板17にアライメントマークを設けておくことにより、実施の形態1と同様に(図6参照)、高精度に、半導体レーザチップ6と露光マスク(図5参照)の位置決めを行うことが可能である。
【0037】
本実施の形態においては、図9の状態でレジスト塗布を行い、その後は、上述の実施の形態1と同様に、図5に示す露光マスクを用いて、図6に示すように紫外光等により露光を行い、コーティングを行う。レジスト塗布、露光、コーティング等の処理については、実施の形態1と基本的に同様に行なうものであるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
以上のように、本実施の形態においても、半導体基板(半導体ウェハ)をへき開することによって得られた半導体レーザチップのへき開面に対して垂直な方向(X軸方向)に位置決めするとともに平行な一方向(Z軸方向)に位置決めするための治具補助具であるダミーバー15と、複数の半導体レーザチップのへき開面を揃えるための、治具本体16、治具側板17、および、治具押さえ18とを備えるようにしたので、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、半導体レーザチップ6のへき開面に対して、フォトマスク10のマスクパターン12を精度よく配置し、高精度に区分けしたコーティングを行うことができる。
【0039】
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3を示す構成図である。図10は、半導体レーザチップ6のコーティングプロセスの手順を示しており、矢印に沿って、図10(a)から図10(d)へと作業工程が示されている。なお、本実施の形態においては、上述の実施の形態1または実施の形態2で説明した半導体レーザ素子の製造装置を用いて、位置合わせを行って、コーティング処理やレジスト塗布処理を行うこととする。半導体レーザ素子の製造装置の構成は、実施の形態1,2で説明した通りであるため、ここでは、その説明を省略し、以下では、半導体レーザチップ6のコーティングプロセスの手順のみを説明する。
【0040】
半導体レーザチップ6のコーティングプロセスの手順においては、最初に、図10(a)に示すように、レーザダイオード21のへき開面の一方に全反射コーティング20を施し、反対側のへき開面に、コーティングを施さなかった場合と同等もしくはコーティングを施さなかった場合より透過率が低い保護コーティング22を施す。この状態において、次に、保護コーティング22上にレジスト23を塗布し、プリベークによりレジスト23を加熱処理して固化し、固化したレジスト23上に露光用マスク(図5参照)を配置して、マスクパターン(図5の符号12参照)をレジスト23上に描く。次に、現像により、余分なレジスト23を除去すると、図10(b)に示す状態になる。次に、図10(c)に示すように、レジスト23が塗布されていない部分に、部分反射コーティング24を施す。次に、図10(d)に示したように、溶剤などによって、レジスト23が除去され、レーザビーム出射方向に示した方向に高輝度レーザビームが取り出されるよう構成される。このように、コーティングプロセスにおいて、反射面に保護コーティング22を施すことにより、レジスト23を塗布する作業や、運搬中に、反射面への水分やコンタミネーション等の悪影響を防ぐことができ、より寿命が長く、反射面の強度の強いレーザダイオード素子を提供することができる。
【0041】
また、保護コーティング22の最外面に、SiO2や、SiNなど、空気中の水分に対して反応しにくいものを使用しておくと、さらに反射面を保護し、高い耐光強度を得る効果が大きい。さらに、半導体レーザチップの成長、へき開、全反射コーティング23と保護コーティング22形成までを、清浄なチャンバーから取り出さずに行うようにすれば、端面の劣化や汚れを防ぐ効果はさらに大きい。
【0042】
以上のように、本実施の形態3によれば、上述の実施の形態1,2と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態においては、複数の半導体レーザチップを互いに精度よく位置決めして、へき開面にレジストを塗布し、露光用マスクによってパターンを露光してコーティングを施すようにしたので、へき開面のコンタミネーション、空気中の水分による劣化、酸化による劣化等を避けることができ、より寿命の長い、へき開面損傷の起きにくい半導体レーザシップ(レーザダイオード)を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ばね、2 バルブ、3 空気穴、4 治具、5 溝、6 半導体レーザチップ、7 顕微鏡、8 台座、9 アライメントマーク、10 フォトマスク、11 アライメントマーク、12 マスクパターン、13 レジスト、15 ダミーバー、16 治具本体、17 治具側板、18 治具押さえ、19 ネジ、20 全反射コーティング、21 レーザダイオード、22 保護コーティング、23 レジスト、24 部分反射コーティング。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行う第1の治具手段と、
前記半導体レーザ素子を位置決めした状態の複数の前記第1の治具手段を、各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて固定する、第2の治具手段と
を備えたことを特徴とする半導体レーザ素子の製造装置。
【請求項2】
前記第2の治具手段と露光用マスクとの間の位置決めを行うためのマスク用位置決め手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子の製造装置。
【請求項3】
前記第1の治具手段は、
前記半導体レーザ素子の端面の位置決めを行って前記半導体レーザ素子を載置する表面が平坦な載置部を有する略々直方体の本体と、
前記本体の内部に設けられ、前記本体の載置部に向かって開口しているとともに、前記載置部から前記本体の他の端面まで延びて、当該他の端面において外部に向かって開口している、貫通穴と、
前記貫通穴の前記他の端面における開口部に嵌合された吸引手段と
を備えており、
前記第2の治具手段は、
前記半導体レーザ素子を吸引固定した状態の複数の前記第1の治具手段の少なくとも2方向の端面に当接する当て面を有する台座と、
前記台座が当接していない前記第1の治具手段の他の方向の端面に当接する当て面を有する押さえ手段と
を備えている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子の製造装置。
【請求項4】
前記第1の治具手段は、
前記半導体レーザ素子に対して厚み以外の大きさが同じである部材から構成されたダミーバーであり、
前記第2の治具手段は、
複数の前記半導体レーザ素子と前記ダミーバーとが交互に積層された状態の各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて配置し、前記端面に平行な4方向から固定する枠型の治具である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子の製造装置。
【請求項5】
半導体レーザ素子の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行うための第1の治具手段を用いて位置決めを行う第1の位置決めステップと、
前記半導体レーザ素子を位置決めした状態の複数の前記第1の治具手段を、各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて配置するための第2の治具手段を用いて位置決めを行う第2の位置決めステップと、
前記第2の位置決めステップにより並べて配置された前記端面に対し、コーティングを施さなかった場合よりも透過率が高い保護コーティングを施す第1のコーティングステップと、
前記第2の治具手段と露光用マスクとの間の位置決めを行うためのマスク用位置決め手段を用いて前記露光用マスクの位置決めを行う第3の位置決めステップと、
前記露光用マスクにより前記端面の一部にマスクを施した状態で、前記マスクの施されていない部分の前記端面に部分反射コーティングを施す第2のコーティングステップと
を備えたことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項1】
半導体レーザ素子の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行う第1の治具手段と、
前記半導体レーザ素子を位置決めした状態の複数の前記第1の治具手段を、各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて固定する、第2の治具手段と
を備えたことを特徴とする半導体レーザ素子の製造装置。
【請求項2】
前記第2の治具手段と露光用マスクとの間の位置決めを行うためのマスク用位置決め手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子の製造装置。
【請求項3】
前記第1の治具手段は、
前記半導体レーザ素子の端面の位置決めを行って前記半導体レーザ素子を載置する表面が平坦な載置部を有する略々直方体の本体と、
前記本体の内部に設けられ、前記本体の載置部に向かって開口しているとともに、前記載置部から前記本体の他の端面まで延びて、当該他の端面において外部に向かって開口している、貫通穴と、
前記貫通穴の前記他の端面における開口部に嵌合された吸引手段と
を備えており、
前記第2の治具手段は、
前記半導体レーザ素子を吸引固定した状態の複数の前記第1の治具手段の少なくとも2方向の端面に当接する当て面を有する台座と、
前記台座が当接していない前記第1の治具手段の他の方向の端面に当接する当て面を有する押さえ手段と
を備えている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子の製造装置。
【請求項4】
前記第1の治具手段は、
前記半導体レーザ素子に対して厚み以外の大きさが同じである部材から構成されたダミーバーであり、
前記第2の治具手段は、
複数の前記半導体レーザ素子と前記ダミーバーとが交互に積層された状態の各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて配置し、前記端面に平行な4方向から固定する枠型の治具である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子の製造装置。
【請求項5】
半導体レーザ素子の端面に対して垂直な方向と当該端面に平行な少なくとも1方向とにおける位置決めを行うための第1の治具手段を用いて位置決めを行う第1の位置決めステップと、
前記半導体レーザ素子を位置決めした状態の複数の前記第1の治具手段を、各前記半導体レーザ素子の前記端面の位置が揃うように並べて配置するための第2の治具手段を用いて位置決めを行う第2の位置決めステップと、
前記第2の位置決めステップにより並べて配置された前記端面に対し、コーティングを施さなかった場合よりも透過率が高い保護コーティングを施す第1のコーティングステップと、
前記第2の治具手段と露光用マスクとの間の位置決めを行うためのマスク用位置決め手段を用いて前記露光用マスクの位置決めを行う第3の位置決めステップと、
前記露光用マスクにより前記端面の一部にマスクを施した状態で、前記マスクの施されていない部分の前記端面に部分反射コーティングを施す第2のコーティングステップと
を備えたことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−58593(P2013−58593A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195852(P2011−195852)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/省エネルギーレーザ加工のための高効率ファイバ結合型レーザ光源の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/省エネルギーレーザ加工のための高効率ファイバ結合型レーザ光源の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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