半導体光変調器及びそれを用いた半導体光送信機
【課題】プリチャープ伝送時にも良好な伝送特性を得ることができる半導体光変調器及びそれを用いた半導体光送信機を提供する。
【解決手段】半導体光変調器には、基板1上に設けられた光導波路4a及び4bを備えたマッハ・ツェンダ型光干渉計と、光導波路4a上に形成された電極11aと、光導波路4b上に形成され、電極11aとは長さが相違する電極11bと、が設けられている。更に、基板1上に光導波路4a及び4bから、光導波路4a及び4bから被変調光の波長以上離間して設けられた半導体メサ構造体7と、半導体メサ構造体7上に形成され、電極11bに電気的に接続された補助電極12と、が設けられている。
【解決手段】半導体光変調器には、基板1上に設けられた光導波路4a及び4bを備えたマッハ・ツェンダ型光干渉計と、光導波路4a上に形成された電極11aと、光導波路4b上に形成され、電極11aとは長さが相違する電極11bと、が設けられている。更に、基板1上に光導波路4a及び4bから、光導波路4a及び4bから被変調光の波長以上離間して設けられた半導体メサ構造体7と、半導体メサ構造体7上に形成され、電極11bに電気的に接続された補助電極12と、が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光変調器及びそれを用いた半導体光送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長距離で大容量の光通信には、非線形光学結晶ニオブ酸リチウム(LN)中の電気光学効果を利用したMach−Zehnder(MZ)干渉計型変調器(以下、LN−MZ変調器ということがある)と半導体レーザとを組み合わせた送信機が主に用いられている。
【0003】
また、光通信に用いられる一般的な石英ガラスコア光ファイバは、光の波長が近赤外の1.5μm近傍の場合に非常に小さな透過損を示す。このため、長距離光通信には1.5μm帯の光が多く用いられている。その一方で、現在、幹線系に敷設されているシングルモード光ファイバの多くは、この波長帯で正の波長分散を持つ。そこで、分散による伝送波形劣化を補償するために、長距離伝送、特に50kmを超える長距離伝送では、意図的に変調光に負チャープを与えるプリチャープ伝送が用いられている。即ち、LN−MZ変調器では、分波した光信号の経路である2つのアーム(導波路)に印加する電界の強度の変調振幅比を適当に調整して所望の負チャープを付与している。特に、Zカット型とよばれるタイプのLN−MZ変調器では、2つの導波路に対して非対称な位置に形成された単一電極により、2つの導波路に互いに異なる強度の電界変化が付与され、所望の負チャープが付与される。
【0004】
近年では、半導体を用いたMach−Zehnder干渉計型変調器(以下、半導体MZ変調器ということがある)についての研究も行われている。半導体MZ変調器には、半導体導波路の屈折率及びその変化率がLN導波路よりも大きいため、小型化が可能であるという利点がある。また、半導体レーザとの集積が容易なので、送信機内の部品点数を減らすことができるという利点もある。
【0005】
ここで、従来の半導体MZ変調器の構造について説明する。図1は、従来の半導体MZ変調器の構造の一例を示す模式図である。
【0006】
図1(a)に示すように、基板51上に入力導波路52、光分配器53、導波路54a及び54b、光結合器55、並びに出力導波路56が形成されている。これらは、半導体導波路から構成されている。導波路54a上に電極61aが形成され、導波路54b上に電極61bが形成されている。更に、基板51の裏面に電極が形成されている。電極61aと接地との間にバイアス直流電源71a及び交流電源72aが直列に接続され、電極61bと接地との間にバイアス直流電源71b及び交流電源72bが接続されている。
【0007】
半導体MZ変調器にも、LN−MZ変調器と同様にプリチャープの付与が要求される。プリチャープの付与には、いくつかの方法が検討されている。第1の方法は、電極61aに印加する変調電圧(交流電源72aの変調電圧)の振幅と電極61bに印加する変調電圧(交流電源72bの変調電圧)の振幅とを非対称にするという方法である。第2の方法は、電極61aに印加するバイアス電圧(バイアス直流電源71aの電圧)と電極61bに印加するバイアス電圧(バイアス直流電源71bの電圧)とを非対称にするという方法である。第3の方法は、図1(b)に示すように、電極61aの長さと電極61bの長さとを非対称にするという方法である。これらの方法はいずれも、両アーム(導波路54a及び54b)に反対称な変調電圧を与えるプッシュプル駆動を前提としている。
【0008】
しかしながら、第1の方法では、送信機内に高周波減衰器を設ける必要が生じ、装置の小型化及び省電力化の観点から不利である。第2の方法のみでは、得られる非対称性が小さく十分にプリチャープを付与することができない。第3の方法では、電極61a及び61b間の高周波特性(電力の反射、透過特性等)に差異が生じ、良好な伝送特性を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−102097号公報
【特許文献2】特開2000−066156号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】L. B. Soldano, et al, J. Lightwave Technol., vol.13, pp.615-627 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、プリチャープ伝送時にも良好な伝送特性を得ることができる半導体光変調器及びそれを用いた半導体光送信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
半導体光変調器の一態様には、基板上に設けられた第1の光導波路及び第2の光導波路を備えたマッハ・ツェンダ型光干渉計と、前記第1の光導波路上に形成された第1の電極と、前記第2の光導波路上に形成され、前記第1の電極とは長さが相違する第2の電極と、が設けられている。更に、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路から被変調光の波長以上離間して設けられた半導体メサ構造体と、前記半導体メサ構造体上に形成され、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち短いものに電気的に接続された補助電極と、が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
上記の半導体光変調器等によれば、2つの電極間の高周波特性を揃えることが可能となり、プリチャープ伝送時にも良好な伝送特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の半導体MZ変調器の構造の一例を示す模式図である。
【図2】第1のシミュレーションの結果を示す図である。
【図3】第2のシミュレーションの結果を示す図である。
【図4】同じく、第2のシミュレーションの結果を示す図である。
【図5】(a)は第1の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す模式図であり、(b)は第2の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す模式図である。
【図6】第3の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す上面図である。
【図7A】第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図7B】図7Aに引き続き、半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図8】同じく、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す上面図である。
【図10】第3の実施形態の変形例を示す図である。
【図11】第3の実施形態の他の変形例を示す図である。
【図12】半導体光送信機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記のように、図1(b)に示すように、電極61aの長さと電極61bの長さとを非対称にした場合には、電極61a及び61b間の高周波特性に差異が生じ、良好な伝送特性を得ることができない。これは、実効的に印加される変調電圧の波形が電極61a及び61b間で相違してしまい、この波形が等しい場合と比べて変調光の波形のアイ開口率が劣化するからである。
【0016】
ここで、本願発明者らが行った種々のシミュレーションについて説明する。
【0017】
第1のシミュレーションでは、伝送線路の持つ高周波特性によってRF波形が劣化する様子を擬似的に表現するために、遮断周波数が異なる2種類の低域透過フィルタ(low-pass filter)が交流電源と電極との間に接続されていることとし、RF変調電圧波形(アイパターン)を求めた。ここで、低域透過フィルタは、光送信機の周波数特性解析に用いられることが多い4次のButterworthフィルタとした。一方の遮断周波数は20GHzとし、他方の遮断周波数は7.5GHzとした。また、入力信号のRF波形は、立ち上がり及び立ち下がりが自乗余弦波形を持つ10Gbit/sのNRZ信号の波形とし、立ち上がり時間及び立ち下がり時間はいずれも50psとした。
【0018】
図2に、第1のシミュレーションの結果(低域透過フィルタ通過後のRF変調電圧波形)を示す。図2(a)は遮断周波数が20GHzの場合のRF変調電圧波形を示し、図2(b)は遮断周波数が7.5GHzの場合のRF変調電圧波形を示す。図2に示すように、遮断周波数が相違するため、RF変調電圧波形が大きく相違している。このことは、高周波特性(高周波帯域)が相違する電極に印加されたRF信号も、互いに大きく相違したものになることを意味している。
【0019】
第2のシミュレーションでは、2つの電極に波形が等しいRF信号を印加してプッシュプル駆動を行った場合、及び2つの電極に波形が相違するRF信号を印加してプッシュプル駆動を行った場合の変調光の波形(アイパターン)を求めた。ここで、半導体MZ変調器は、半導体多重量子井戸(MQW:multiple-quantum well)を導波層とするMZ干渉計を対称プッシュプル駆動で動作させることとし、MZ干渉計の各アーム内での屈折率の変化は印加電圧に対して2次関数で表されるとした。また、干渉計の両アームに与えるRF信号の振幅は等しいとし、各アームの電極長は1:3と非対称とし、またバイアス電圧も非対称とした。そして、波形が等しいRF信号を印加する場合には、電極の長短に関わらず両アーム上の電極の高周波帯域が7.5GHzで揃っているとし、波形が相違するRF信号を印加する場合には、長い電極の高周波帯域が7.5GHz、短い電極の高周波帯域が20GHzであるとした。また、変調光の波形は、光ファイバを用いた伝送前及び伝送後について求めた。なお、伝送後の波形の計算では、時間波形をフーリエ変換して周波数軸上で光ファイバの伝達関数を乗じ、逆フーリエ変換して時間領域に戻すことで、ファイバ中の群遅延分散による波形歪を評価した。このシミュレーションでは、2次分散のみを考慮し、1600ps/nmの分散量を与えた。これは、標準的な光ファイバで80km〜100kmの伝送に相当する分散量である。
【0020】
図3及び図4に、第2のシミュレーションの結果(変調光の波形)を示す。図3(a)は波形が等しいRF信号を印加した場合の伝送前の波形(変調器の出力光の波形)を示し、図3(b)は図3(a)に示す波形の出力光の伝送後の波形を示す。図4(a)は波形が相違するRF信号を印加した場合の伝送前の波形(変調器の出力光の波形)を示し、図4(b)は図4(a)に示す波形の出力光の伝送後の波形を示す。図3(a)と図4(a)とを比較すると、高周波帯域が非対称の場合、対称の場合と比較して、伝送前の波形のオンレベルとオフレベルとの比(動的消光比)が劣化していることが分かる。図3(a)及び図4(a)中の矢印の長さが動的消光比に相当する。また、図4(b)中の矢印で示した部分から、伝送後の波形が非対称に歪み、アイ開口が劣化していることも分かる。符号誤り率が1×10-11以下のエラーフリーの伝送を行うためには、このようなアイ開口の劣化は許容されず、このまま用いることはできない。
【0021】
本願発明者らは、これらのシミュレーションの結果から、2つの導波路上の電極の高周波帯域が対称であれば、これらの高周波帯域が低い場合でも、良好な伝送特性が得られることを見出した。以下、このような知見に基づく実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図5(a)は、第1の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す模式図である。第1の実施形態は、集中定数型電極を備えた半導体光変調器の一例である。
【0023】
第1の実施形態では、図5(a)に示すように、基板1上に入力導波路2、光分配器3、導波路4a及び4b、光結合器5、並びに出力導波路6が形成されている。これらは、半導体導波路から構成されている。半導体導波路の構造は特に限定されず、例えば、p−i−n層構造、p−i−p層構造、又はn−i−n層構造である。半導体レーザと同一基板上に集積する場合には、これらのうちp−i−n層構造が好ましい。入力導波路2、光分配器3、導波路4a及び4b、光結合器5、並びに出力導波路6からマッハ・ツェンダ型干渉計が構成されている。更に、導波路4aとの間で導波路4bを挟む位置に、導波路4a及び4bと並行に延びる半導体メサ構造体7が導波路4a及び4bから独立して基板1上に形成されている。半導体メサ構造体7の幅は、導波路4a及び4bの幅と等しく、半導体メサ構造体7の断面構造(層構造)は、導波路4a及び4bの断面構造(層構造)と同様である。例えば、導波路4a及び4bに含まれるi層(第1の空乏層)の厚さと、半導体メサ構造体7に含まれるi層(第2の空乏層)の厚さとが等しい。なお、半導体メサ構造体7は、導波路4a及び4bを導波する光の電磁界の分布に影響を与えない程度の位置に設けられている。即ち、半導体メサ構造体7と導波路4a及び4bとの間の距離は、導波路4a及び4bを導波する光(被変調光)の波長以上である。なお、半導体メサ構造体7の幅が導波路4a及び4bの幅と一致している必要はないが、一致していない場合でも、半導体メサ構造体7の幅は、導波路4a及び4bの幅の90%〜110%であることが好ましく、95%〜105%であることがより好ましい。同様に、半導体メサ構造体7に含まれるi層の厚さが導波路4a及び4bに含まれるi層の厚さと一致している必要はないが、一致していない場合でも、半導体メサ構造体7に含まれるi層の厚さは、導波路4a及び4bに含まれるi層の厚さの90%〜110%であることが好ましく、95%〜105%であることがより好ましい。
【0024】
また、導波路4a上に電極11aが形成され、導波路4b上に電極11bが形成されている。更に、半導体メサ構造体7上に補助電極12が形成され、補助電極12と電極11bとが接続部13を介して互いに接続されている。電極11a、電極11b、補助電極12、及び接続部13は同一の材料から構成されている。電極11aは電極11bよりも長く、電極11b及び補助電極12の総長さが電極11aの長さと一致していることが好ましいが、これらが一致していなくてもよい。一致していない場合でも、電極11b及び補助電極12の総長さは、電極11aの長さの90%〜110%であることが好ましく、95%〜105%であることがより好ましい。また、半導体メサ構造体7の長さは補助電極12の長さ以上である。なお、干渉計の長さ(導波路4a及び4bが延びる方向の寸法)は、干渉計の幅(導波路4a及び4bが並ぶ方向の寸法)に比べてかなり大きく、電極11aの長さは、例えば1.5mm程度であり、導波路4a及び4bの間隔は、例えば50μm程度である。また、半導体メサ構造体7と導波路4bとの間の間隔は、例えば5μmである。この間隔は、導波路4a及び4bを導波する光(被変調光)の波長以上である。更に、基板1の裏面に電極が形成されている。電極11aと接地との間にバイアス直流電源21a及び交流電源22aが接続され、電極11bと接地との間にバイアス直流電源21b及び交流電源22bが接続されている。
【0025】
このように構成された第1の実施形態は、入力導波路2に強度一定の光(CW:continuous wave光)が入射され、電極11a及び11bにRF信号が印加されると、半導体MZ光変調器として動作する。この際に、電極11a及び11bの長さが非対称であるため、同じ振幅のRF信号でプッシュプル駆動を行っても所望の負チャープ動作が得られる。従って、長距離伝送に適したプリチャープ伝送が可能である。
【0026】
また、RF信号が印加される電極の高周波特性(高周波帯域)は、RF信号が印加される電極と基板1の裏面に設けられた電極との間の単位長さあたりの容量及び長さに主に依存する。また、RF信号が印加される電極と基板1の裏面に設けられた電極との間の単位長さあたりの容量は、これらの間に位置するi層の厚さ及び幅でほぼ決定される。本実施形態では、交流電源22aからのRF信号は電極11aに印加され、交流電源22bからのRF信号は電極11b、接続部13、及び補助電極12に印加される。ここで、電極11aの長さは、電極11bの長さ及び補助電極12の長さの和と同等であり、これらの幅も同等である。更に、半導体メサ構造体7の幅が導波路4a及び4bの幅と同等であり、半導体メサ構造体7の断面構造が導波路4a及び4bの断面構造と同様である。従って、電極11a及び11bの特性インピーダンスが同等になり、高周波特性が揃う。このため、上述のシミュレーションから明らかなように、両RF信号の変調電圧波形が揃い、変調光波形の望ましくない歪を抑制することが可能となり、消光比及び伝送後波形のアイ開口率を良好なものとすることができる。つまり、幹線系の大容量通信においても良好な伝送特性を得ることができる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図5(b)は、第2の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す模式図である。第2の実施形態は、進行波型電極を備えた半導体光変調器の一例である。
【0028】
第2の実施形態では、図5(b)に示すように、電極11aの入力導波路2側の端部に入力パッド14aが設けられ、出力導波路6側の端部に出力パッド15aが設けられ、電極11bの入力導波路2側の端部に入力パッド14bが設けられ、補助電極12の出力導波路6側の端部に出力パッド15bが設けられている。また、入力パッド14aと接地との間にバイアス直流電源21a及び交流電源22aが接続され、入力パッド14bと接地との間にバイアス直流電源21b及び交流電源22bが接続されている。また、出力パッド15aと接地との間に終端抵抗23aが接続され、出力パッド15bと接地との間に終端抵抗23bが接続されている。他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0029】
このように構成された進行波型電極を備えた第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、適切なプリチャープを付与することができ、また、良好な伝送特性をえることができる。
【0030】
なお、バイアス直流電源21aが終端抵抗23aと直列に接続されていてもよく、バイアス直流電源21bが終端抵抗23bと直列に接続されていてもよい。
【0031】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す上面図である。第3の実施形態は、進行波型電極を備えた半導体光変調器の一例である。
【0032】
第3の実施形態では、図6に示すように、基板上に入力導波路202、光分配器203、導波路204a及び204b、光結合器205、並びに出力導波路206が形成されている。これらは、半導体導波路から構成されている。半導体導波路の構造は特に限定されず、例えば、p−i−n層構造、p−i−p層構造、又はn−i−n層構造である。半導体レーザと同一基板上に集積する場合には、これらのうちp−i−n層構造が好ましい。入力導波路202、光分配器203、導波路204a及び204b、光結合器205、並びに出力導波路206からマッハ・ツェンダ型干渉計が構成されている。更に、導波路204aとの間で導波路204bを挟む位置に、導波路204a及び204bと並行に延びる半導体メサ構造体207が導波路204a及び204bから独立して基板上に形成されている。半導体メサ構造体207の幅は、導波路204a及び204bの幅と同等であり、半導体メサ構造体207の断面構造(層構造)は、導波路204a及び204bの断面構造(層構造)と同様である。例えば、導波路204a及び204bに含まれるi層(第1の空乏層)の厚さと、半導体メサ構造体207に含まれるi層(第2の空乏層)の厚さとが同程度となっている。導波路204a、導波路204b、及び半導体メサ構造体207の幅は、例えば1.5μmであり、半導体メサ構造体207と導波路204bとの間の間隔は、例えば5μmである。この間隔は、導波路204a及び204bを導波する光(被変調光)の波長以上である。
【0033】
また、導波路204a上に電極211aが形成され、導波路204b上に電極211bが形成されている。更に、半導体メサ構造体207上の2か所に1個ずつ補助電極212が形成され、2個の補助電極212と電極211aとが接続部213を介して互いに接続されている。電極211aは電極211bよりも長く、電極211bの長さと2個の補助電極212の長さとの総和が電極211aの長さと同等である。例えば、電極211aの長さは1.5mmであり、電極211bの長さは0.5mmであり、補助電極212の総長さは1.0mmである。また、半導体メサ構造体207の長さは2個の補助電極212の長さの和以上である。なお、干渉計の長さ(導波路204a及び204bが延びる方向の寸法)は、干渉計の幅(導波路204a及び204bが並ぶ方向の寸法)に比べてかなり大きく、導波路204a及び204bの間隔は、例えば50μm程度である。更に、基板の裏面に電極が形成されている。
【0034】
このように構成された半導体光変調器に対しては、第2の実施形態と同様に、例えば、入力パッド214aと接地との間にバイアス直流電源及び交流電源が接続され、入力パッド214bと接地との間に他のバイアス直流電源及び交流電源が接続される。また、出力パッド215aと接地との間に終端抵抗が接続され、出力パッド215bと接地との間に他の終端抵抗が接続される。なお、保護膜110により、電極、入力パッド、又は出力パッドが設けられていない領域が覆われている。
【0035】
このような第3の実施形態によっても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
次に、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法について説明する。図7A及び図7Bは、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。また、図8も、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。図9は、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す上面図である。図7A及び図7Bは、図6及び図9中のI−I線に沿った断面を示し、図8は、図6及び図9中のII−II線に沿った断面を示す。
【0037】
先ず、図7A(a)に示すように、n型基板101上に、例えば有機金属気相成長(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)法により、n型バッファ層102、多重量子井戸(MQW:multi-quantum wells)層103、クラッド層104、p型クラッド層105、及びp型コンタクト層106をこの順で積層する。n型基板101としては、例えばn型InP基板を用いる。n型バッファ層102としては、例えば厚さが100nm程度のn型InP層を形成する。クラッド層104としては、例えば厚さが100nm程度の不純物が添加されていないi型のInP層を形成する。p型クラッド層105としては、例えば厚さが1500nm程度のp型InP層を形成する。p型コンタクト層としては、例えば厚さが150nm程度のp型InGaAs層を形成する。MQW層103としては、例えばInGaAsPの井戸層とInPの障壁層とが交互に積層された積層体を形成する。例えば、井戸層の厚さは10nmとし、障壁層の厚さは10nmとし、これらが20周期繰り返して積層されている。MQW層103が導波層として機能する。また、井戸層の組成は、例えばバンド端の遷移波長が1.4μmになるよう決定する。この場合、変調光の波長を1.55μm付近とした場合に、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)によって実用上十分な大きさの屈折率変化を得ることができる。
【0038】
次いで、p型コンタクト層106上に、例えば化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)法によりシリコン酸化膜を形成する。その後、シリコン酸化膜上に、半導体導波路を形成する予定の領域、及び半導体メサ構造体207を形成する予定の領域を覆うレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンをマスクとして用いてシリコン酸化膜のウェットエッチングを行う。この結果、レジストパターンの形状がシリコン酸化膜に転写され、図7A(b)に示すように、半導体導波路を形成する予定の領域、及び半導体メサ構造体207を形成する予定の領域を覆うマスクパターン107が形成される。
【0039】
続いて、マスクパターン107をマスクとして用いて、p型コンタクト層106、p型クラッド層105、クラッド層104、MQW層103、及びn型バッファ層102のドライエッチングを行う。このドライエッチングは、例えば反応性イオンエッチング(RIE:reactive ion etching)により行う。また、このドライエッチングでは、n型基板101を若干オーバーエッチングする。この結果、図7A(c)及び図9(a)に示すように、導波路204a、導波路204b、及び半導体メサ構造体207のメサストライプ構造が得られる。
【0040】
このとき、導波路204a、導波路204b、及び半導体メサ構造体207の幅は、例えば1.5μmとする。これは、変調光の波長において導波モードが単一となるようにするためである。また、半導体メサ構造体207と導波路204bとの間の間隔は、例えば5μmとする。また、光分配器203及び光結合器205として、MMI(multi-mode interference)カプラを設ける。この結果、干渉計の両アーム(導波路204a及び204b)へと光を分岐させ、両アームからの光を合波させることが可能となる。MMIカプラの幅及び長さは、例えば、導波路部の屈折率と周囲の屈折率との比に応じて分岐比が1対1になるように設計する。
【0041】
次いで、図7B(d)に示すように、例えばMOCVD法による埋め込み成長を行って、メサストライプ構造の周囲に埋め込み層108を形成する。埋め込み層108としては、例えば高抵抗(SI:semi-insulated)InP層を形成する。その後、BHF(Bufferedフッ酸)を用いてマスクパターン107を除去する。
【0042】
続いて、図7B(e)及び図8(a)に示すように、埋め込み層108及びp型コンタクト層106上にレジストパターン109を形成する。レジストパターン109としては、電極を形成する予定の領域のp型コンタクト層106を覆い、その他の領域のp型コンタクト層106を露出するものを形成する。そして、レジストパターン109をマスクとして用いたウェットエッチングを行い、p型コンタクト層106のレジストパターン109から露出している部分を除去する。次いで、図9(b)に示すように、レジストパターン109を除去する。
【0043】
その後、全面に保護膜110を形成し、その上にレジストパターン111を形成する。保護膜110としては、例えばシリコン酸化膜を形成する。また、レジストパターン111としては、メサ上の電極を形成する予定の領域の保護膜110を露出するものを形成する。そして、レジストパターン111をマスクとして用いて保護膜110のウェットエッチングを行う。この結果、図7B(f)及び図8(b)に示すように、電極を形成する予定の領域のp型コンタクト層106が露出する。
【0044】
続いて、図7B(g)及び図8(c)に示すように、例えばシードメタル膜112をレジストパターン111上及びp型コンタクト層106上に形成する。シードメタル膜112の形成では、例えば、Auの真空蒸着、Znの真空蒸着、及びAuの真空蒸着をこの順で行う。
【0045】
次いで、レジストパターン111をその上のシードメタル膜112と共に除去する。この結果、図7B(h)及び図8(d)に示すように、p型コンタクト層106上のみにシードメタル膜112が残存する。つまり、シードメタル膜112をリフトオフ法により形成する。
【0046】
その後、図7B(i)及び図8(e)に示すように、シードメタル膜112を露出するレジストパターン113を保護膜110上に形成する。そして、レジストパターン113をマスクとして用いてAuめっきを行うことにより、シードメタル膜112上にAu膜114を形成する。
【0047】
続いて、図7B(j)及び図8(f)に示すように、レジストパターン113を除去する。次いで、n型基板101の裏面にシードメタル膜115及びAu膜116をこの順で形成する。シードメタル膜115の形成では、例えば、AuGe真空蒸着及びAuの真空蒸着をこの順で行う。Au膜116は、例えばめっきにより形成することができる。
【0048】
このような処理の結果、図6に示す半導体光変調器が得られる。
【0049】
なお、電極211b、補助電極212、及び半導体メサ構造体7の関係は、図6に示されたものに限定されない。例えば、図10(a)に示すように、半導体メサ構造体7が基板の端面から離間していてもよい。また、図10(b)に示すように、補助電極212の一端のみに補助電極212が接続されていてもよい。また、図10(c)に示すように、電極211aに、補助電極212と同様の補助電極222が接続され、補助電極222の下に、半導体メサ構造体207と同様の半導体メサ構造体227が設けられていてもよい。但し、電極211a及び211bの長さが互いに相違し、電極211a及び補助電極222の総長さと電極211b及び補助電極212の総長さとが同等である。また、図10(d)に示すように、補助電極212が平面視で導波路204a及び204b間に位置していてもよい。
【0050】
更に、これらの電極、補助電極、及び半導体メサ構造体の関係は、図11に示すように、集中定数型電極を備えた半導体光変調器に適用することもできる。図11(a)〜(d)に示す構造は、夫々図10(a)〜(d)に示す構造に対応し、図11(e)に示す構造は図6に示す構造に対応する。
【0051】
また、図12に示すように、単一の基板上に、上記の半導体光変調器と半導体レーザ120とを集積することにより、半導体光送信機が得られる。この半導体光送信機は、幹線系の大容量通信に好適である。
【0052】
更に、導波路を構成する半導体材料は、特に限定されず、例えば、Zn、Cd、Hg、Al、N、Sb、S、Te等のII族元素、III族元素、V族元素、又はVI族元素を含む混晶を導波層(活性層)の材料として用いてもよい。例えば、AlGaInAsを井戸層の材料として用い、AlInAsを障壁層の材料として用いた量子井戸層を用いてもよい。また、光結合器、光分配器として、方向性結合器、Y分岐導波路等の一般的な結合器を用いてもよい。また、上記の実施形態では、光導波路がSI−BH(buried heterostructure)構造を備えているが、PNPN型の埋め込み導波路となっていてもよい。また、半導体を用いた埋め込みを行わないハイメサ型導波路構造を備えていてもよく、上部クラッド層のみがエッチングされたリッジ型導波路構造を備えていてもよい。
【0053】
また、半導体メサ構造体の幅は、必ずしも導波路のものと一致している必要はなく、半導体メサ構造体に含まれるi層の厚さも、必ずしも導波路のものと一致している必要はない。但し、特に数GHz以上の高周波のRF信号による変調を行う場合には、全体の静電容量だけでなく電極の長さ及び単位長さ当たりの容量等によって電極の周波数特性が影響を受けるため、これらは一致していることが望ましい。また、これらが一致していれば、一致していない場合よりも製造が容易である。
【符号の説明】
【0054】
1:基板
4a、4b:導波路
7:半導体メサ構造体
11a、11b:電極
12:補助電極
13:接続部
204a、204b:導波路
207、227:半導体メサ構造体
211a、211b:電極
212、222:補助電極
213:接続部
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光変調器及びそれを用いた半導体光送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長距離で大容量の光通信には、非線形光学結晶ニオブ酸リチウム(LN)中の電気光学効果を利用したMach−Zehnder(MZ)干渉計型変調器(以下、LN−MZ変調器ということがある)と半導体レーザとを組み合わせた送信機が主に用いられている。
【0003】
また、光通信に用いられる一般的な石英ガラスコア光ファイバは、光の波長が近赤外の1.5μm近傍の場合に非常に小さな透過損を示す。このため、長距離光通信には1.5μm帯の光が多く用いられている。その一方で、現在、幹線系に敷設されているシングルモード光ファイバの多くは、この波長帯で正の波長分散を持つ。そこで、分散による伝送波形劣化を補償するために、長距離伝送、特に50kmを超える長距離伝送では、意図的に変調光に負チャープを与えるプリチャープ伝送が用いられている。即ち、LN−MZ変調器では、分波した光信号の経路である2つのアーム(導波路)に印加する電界の強度の変調振幅比を適当に調整して所望の負チャープを付与している。特に、Zカット型とよばれるタイプのLN−MZ変調器では、2つの導波路に対して非対称な位置に形成された単一電極により、2つの導波路に互いに異なる強度の電界変化が付与され、所望の負チャープが付与される。
【0004】
近年では、半導体を用いたMach−Zehnder干渉計型変調器(以下、半導体MZ変調器ということがある)についての研究も行われている。半導体MZ変調器には、半導体導波路の屈折率及びその変化率がLN導波路よりも大きいため、小型化が可能であるという利点がある。また、半導体レーザとの集積が容易なので、送信機内の部品点数を減らすことができるという利点もある。
【0005】
ここで、従来の半導体MZ変調器の構造について説明する。図1は、従来の半導体MZ変調器の構造の一例を示す模式図である。
【0006】
図1(a)に示すように、基板51上に入力導波路52、光分配器53、導波路54a及び54b、光結合器55、並びに出力導波路56が形成されている。これらは、半導体導波路から構成されている。導波路54a上に電極61aが形成され、導波路54b上に電極61bが形成されている。更に、基板51の裏面に電極が形成されている。電極61aと接地との間にバイアス直流電源71a及び交流電源72aが直列に接続され、電極61bと接地との間にバイアス直流電源71b及び交流電源72bが接続されている。
【0007】
半導体MZ変調器にも、LN−MZ変調器と同様にプリチャープの付与が要求される。プリチャープの付与には、いくつかの方法が検討されている。第1の方法は、電極61aに印加する変調電圧(交流電源72aの変調電圧)の振幅と電極61bに印加する変調電圧(交流電源72bの変調電圧)の振幅とを非対称にするという方法である。第2の方法は、電極61aに印加するバイアス電圧(バイアス直流電源71aの電圧)と電極61bに印加するバイアス電圧(バイアス直流電源71bの電圧)とを非対称にするという方法である。第3の方法は、図1(b)に示すように、電極61aの長さと電極61bの長さとを非対称にするという方法である。これらの方法はいずれも、両アーム(導波路54a及び54b)に反対称な変調電圧を与えるプッシュプル駆動を前提としている。
【0008】
しかしながら、第1の方法では、送信機内に高周波減衰器を設ける必要が生じ、装置の小型化及び省電力化の観点から不利である。第2の方法のみでは、得られる非対称性が小さく十分にプリチャープを付与することができない。第3の方法では、電極61a及び61b間の高周波特性(電力の反射、透過特性等)に差異が生じ、良好な伝送特性を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−102097号公報
【特許文献2】特開2000−066156号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】L. B. Soldano, et al, J. Lightwave Technol., vol.13, pp.615-627 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、プリチャープ伝送時にも良好な伝送特性を得ることができる半導体光変調器及びそれを用いた半導体光送信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
半導体光変調器の一態様には、基板上に設けられた第1の光導波路及び第2の光導波路を備えたマッハ・ツェンダ型光干渉計と、前記第1の光導波路上に形成された第1の電極と、前記第2の光導波路上に形成され、前記第1の電極とは長さが相違する第2の電極と、が設けられている。更に、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路から被変調光の波長以上離間して設けられた半導体メサ構造体と、前記半導体メサ構造体上に形成され、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち短いものに電気的に接続された補助電極と、が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
上記の半導体光変調器等によれば、2つの電極間の高周波特性を揃えることが可能となり、プリチャープ伝送時にも良好な伝送特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の半導体MZ変調器の構造の一例を示す模式図である。
【図2】第1のシミュレーションの結果を示す図である。
【図3】第2のシミュレーションの結果を示す図である。
【図4】同じく、第2のシミュレーションの結果を示す図である。
【図5】(a)は第1の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す模式図であり、(b)は第2の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す模式図である。
【図6】第3の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す上面図である。
【図7A】第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図7B】図7Aに引き続き、半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図8】同じく、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す上面図である。
【図10】第3の実施形態の変形例を示す図である。
【図11】第3の実施形態の他の変形例を示す図である。
【図12】半導体光送信機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記のように、図1(b)に示すように、電極61aの長さと電極61bの長さとを非対称にした場合には、電極61a及び61b間の高周波特性に差異が生じ、良好な伝送特性を得ることができない。これは、実効的に印加される変調電圧の波形が電極61a及び61b間で相違してしまい、この波形が等しい場合と比べて変調光の波形のアイ開口率が劣化するからである。
【0016】
ここで、本願発明者らが行った種々のシミュレーションについて説明する。
【0017】
第1のシミュレーションでは、伝送線路の持つ高周波特性によってRF波形が劣化する様子を擬似的に表現するために、遮断周波数が異なる2種類の低域透過フィルタ(low-pass filter)が交流電源と電極との間に接続されていることとし、RF変調電圧波形(アイパターン)を求めた。ここで、低域透過フィルタは、光送信機の周波数特性解析に用いられることが多い4次のButterworthフィルタとした。一方の遮断周波数は20GHzとし、他方の遮断周波数は7.5GHzとした。また、入力信号のRF波形は、立ち上がり及び立ち下がりが自乗余弦波形を持つ10Gbit/sのNRZ信号の波形とし、立ち上がり時間及び立ち下がり時間はいずれも50psとした。
【0018】
図2に、第1のシミュレーションの結果(低域透過フィルタ通過後のRF変調電圧波形)を示す。図2(a)は遮断周波数が20GHzの場合のRF変調電圧波形を示し、図2(b)は遮断周波数が7.5GHzの場合のRF変調電圧波形を示す。図2に示すように、遮断周波数が相違するため、RF変調電圧波形が大きく相違している。このことは、高周波特性(高周波帯域)が相違する電極に印加されたRF信号も、互いに大きく相違したものになることを意味している。
【0019】
第2のシミュレーションでは、2つの電極に波形が等しいRF信号を印加してプッシュプル駆動を行った場合、及び2つの電極に波形が相違するRF信号を印加してプッシュプル駆動を行った場合の変調光の波形(アイパターン)を求めた。ここで、半導体MZ変調器は、半導体多重量子井戸(MQW:multiple-quantum well)を導波層とするMZ干渉計を対称プッシュプル駆動で動作させることとし、MZ干渉計の各アーム内での屈折率の変化は印加電圧に対して2次関数で表されるとした。また、干渉計の両アームに与えるRF信号の振幅は等しいとし、各アームの電極長は1:3と非対称とし、またバイアス電圧も非対称とした。そして、波形が等しいRF信号を印加する場合には、電極の長短に関わらず両アーム上の電極の高周波帯域が7.5GHzで揃っているとし、波形が相違するRF信号を印加する場合には、長い電極の高周波帯域が7.5GHz、短い電極の高周波帯域が20GHzであるとした。また、変調光の波形は、光ファイバを用いた伝送前及び伝送後について求めた。なお、伝送後の波形の計算では、時間波形をフーリエ変換して周波数軸上で光ファイバの伝達関数を乗じ、逆フーリエ変換して時間領域に戻すことで、ファイバ中の群遅延分散による波形歪を評価した。このシミュレーションでは、2次分散のみを考慮し、1600ps/nmの分散量を与えた。これは、標準的な光ファイバで80km〜100kmの伝送に相当する分散量である。
【0020】
図3及び図4に、第2のシミュレーションの結果(変調光の波形)を示す。図3(a)は波形が等しいRF信号を印加した場合の伝送前の波形(変調器の出力光の波形)を示し、図3(b)は図3(a)に示す波形の出力光の伝送後の波形を示す。図4(a)は波形が相違するRF信号を印加した場合の伝送前の波形(変調器の出力光の波形)を示し、図4(b)は図4(a)に示す波形の出力光の伝送後の波形を示す。図3(a)と図4(a)とを比較すると、高周波帯域が非対称の場合、対称の場合と比較して、伝送前の波形のオンレベルとオフレベルとの比(動的消光比)が劣化していることが分かる。図3(a)及び図4(a)中の矢印の長さが動的消光比に相当する。また、図4(b)中の矢印で示した部分から、伝送後の波形が非対称に歪み、アイ開口が劣化していることも分かる。符号誤り率が1×10-11以下のエラーフリーの伝送を行うためには、このようなアイ開口の劣化は許容されず、このまま用いることはできない。
【0021】
本願発明者らは、これらのシミュレーションの結果から、2つの導波路上の電極の高周波帯域が対称であれば、これらの高周波帯域が低い場合でも、良好な伝送特性が得られることを見出した。以下、このような知見に基づく実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図5(a)は、第1の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す模式図である。第1の実施形態は、集中定数型電極を備えた半導体光変調器の一例である。
【0023】
第1の実施形態では、図5(a)に示すように、基板1上に入力導波路2、光分配器3、導波路4a及び4b、光結合器5、並びに出力導波路6が形成されている。これらは、半導体導波路から構成されている。半導体導波路の構造は特に限定されず、例えば、p−i−n層構造、p−i−p層構造、又はn−i−n層構造である。半導体レーザと同一基板上に集積する場合には、これらのうちp−i−n層構造が好ましい。入力導波路2、光分配器3、導波路4a及び4b、光結合器5、並びに出力導波路6からマッハ・ツェンダ型干渉計が構成されている。更に、導波路4aとの間で導波路4bを挟む位置に、導波路4a及び4bと並行に延びる半導体メサ構造体7が導波路4a及び4bから独立して基板1上に形成されている。半導体メサ構造体7の幅は、導波路4a及び4bの幅と等しく、半導体メサ構造体7の断面構造(層構造)は、導波路4a及び4bの断面構造(層構造)と同様である。例えば、導波路4a及び4bに含まれるi層(第1の空乏層)の厚さと、半導体メサ構造体7に含まれるi層(第2の空乏層)の厚さとが等しい。なお、半導体メサ構造体7は、導波路4a及び4bを導波する光の電磁界の分布に影響を与えない程度の位置に設けられている。即ち、半導体メサ構造体7と導波路4a及び4bとの間の距離は、導波路4a及び4bを導波する光(被変調光)の波長以上である。なお、半導体メサ構造体7の幅が導波路4a及び4bの幅と一致している必要はないが、一致していない場合でも、半導体メサ構造体7の幅は、導波路4a及び4bの幅の90%〜110%であることが好ましく、95%〜105%であることがより好ましい。同様に、半導体メサ構造体7に含まれるi層の厚さが導波路4a及び4bに含まれるi層の厚さと一致している必要はないが、一致していない場合でも、半導体メサ構造体7に含まれるi層の厚さは、導波路4a及び4bに含まれるi層の厚さの90%〜110%であることが好ましく、95%〜105%であることがより好ましい。
【0024】
また、導波路4a上に電極11aが形成され、導波路4b上に電極11bが形成されている。更に、半導体メサ構造体7上に補助電極12が形成され、補助電極12と電極11bとが接続部13を介して互いに接続されている。電極11a、電極11b、補助電極12、及び接続部13は同一の材料から構成されている。電極11aは電極11bよりも長く、電極11b及び補助電極12の総長さが電極11aの長さと一致していることが好ましいが、これらが一致していなくてもよい。一致していない場合でも、電極11b及び補助電極12の総長さは、電極11aの長さの90%〜110%であることが好ましく、95%〜105%であることがより好ましい。また、半導体メサ構造体7の長さは補助電極12の長さ以上である。なお、干渉計の長さ(導波路4a及び4bが延びる方向の寸法)は、干渉計の幅(導波路4a及び4bが並ぶ方向の寸法)に比べてかなり大きく、電極11aの長さは、例えば1.5mm程度であり、導波路4a及び4bの間隔は、例えば50μm程度である。また、半導体メサ構造体7と導波路4bとの間の間隔は、例えば5μmである。この間隔は、導波路4a及び4bを導波する光(被変調光)の波長以上である。更に、基板1の裏面に電極が形成されている。電極11aと接地との間にバイアス直流電源21a及び交流電源22aが接続され、電極11bと接地との間にバイアス直流電源21b及び交流電源22bが接続されている。
【0025】
このように構成された第1の実施形態は、入力導波路2に強度一定の光(CW:continuous wave光)が入射され、電極11a及び11bにRF信号が印加されると、半導体MZ光変調器として動作する。この際に、電極11a及び11bの長さが非対称であるため、同じ振幅のRF信号でプッシュプル駆動を行っても所望の負チャープ動作が得られる。従って、長距離伝送に適したプリチャープ伝送が可能である。
【0026】
また、RF信号が印加される電極の高周波特性(高周波帯域)は、RF信号が印加される電極と基板1の裏面に設けられた電極との間の単位長さあたりの容量及び長さに主に依存する。また、RF信号が印加される電極と基板1の裏面に設けられた電極との間の単位長さあたりの容量は、これらの間に位置するi層の厚さ及び幅でほぼ決定される。本実施形態では、交流電源22aからのRF信号は電極11aに印加され、交流電源22bからのRF信号は電極11b、接続部13、及び補助電極12に印加される。ここで、電極11aの長さは、電極11bの長さ及び補助電極12の長さの和と同等であり、これらの幅も同等である。更に、半導体メサ構造体7の幅が導波路4a及び4bの幅と同等であり、半導体メサ構造体7の断面構造が導波路4a及び4bの断面構造と同様である。従って、電極11a及び11bの特性インピーダンスが同等になり、高周波特性が揃う。このため、上述のシミュレーションから明らかなように、両RF信号の変調電圧波形が揃い、変調光波形の望ましくない歪を抑制することが可能となり、消光比及び伝送後波形のアイ開口率を良好なものとすることができる。つまり、幹線系の大容量通信においても良好な伝送特性を得ることができる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図5(b)は、第2の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す模式図である。第2の実施形態は、進行波型電極を備えた半導体光変調器の一例である。
【0028】
第2の実施形態では、図5(b)に示すように、電極11aの入力導波路2側の端部に入力パッド14aが設けられ、出力導波路6側の端部に出力パッド15aが設けられ、電極11bの入力導波路2側の端部に入力パッド14bが設けられ、補助電極12の出力導波路6側の端部に出力パッド15bが設けられている。また、入力パッド14aと接地との間にバイアス直流電源21a及び交流電源22aが接続され、入力パッド14bと接地との間にバイアス直流電源21b及び交流電源22bが接続されている。また、出力パッド15aと接地との間に終端抵抗23aが接続され、出力パッド15bと接地との間に終端抵抗23bが接続されている。他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0029】
このように構成された進行波型電極を備えた第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、適切なプリチャープを付与することができ、また、良好な伝送特性をえることができる。
【0030】
なお、バイアス直流電源21aが終端抵抗23aと直列に接続されていてもよく、バイアス直流電源21bが終端抵抗23bと直列に接続されていてもよい。
【0031】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態に係る半導体光変調器の構造を示す上面図である。第3の実施形態は、進行波型電極を備えた半導体光変調器の一例である。
【0032】
第3の実施形態では、図6に示すように、基板上に入力導波路202、光分配器203、導波路204a及び204b、光結合器205、並びに出力導波路206が形成されている。これらは、半導体導波路から構成されている。半導体導波路の構造は特に限定されず、例えば、p−i−n層構造、p−i−p層構造、又はn−i−n層構造である。半導体レーザと同一基板上に集積する場合には、これらのうちp−i−n層構造が好ましい。入力導波路202、光分配器203、導波路204a及び204b、光結合器205、並びに出力導波路206からマッハ・ツェンダ型干渉計が構成されている。更に、導波路204aとの間で導波路204bを挟む位置に、導波路204a及び204bと並行に延びる半導体メサ構造体207が導波路204a及び204bから独立して基板上に形成されている。半導体メサ構造体207の幅は、導波路204a及び204bの幅と同等であり、半導体メサ構造体207の断面構造(層構造)は、導波路204a及び204bの断面構造(層構造)と同様である。例えば、導波路204a及び204bに含まれるi層(第1の空乏層)の厚さと、半導体メサ構造体207に含まれるi層(第2の空乏層)の厚さとが同程度となっている。導波路204a、導波路204b、及び半導体メサ構造体207の幅は、例えば1.5μmであり、半導体メサ構造体207と導波路204bとの間の間隔は、例えば5μmである。この間隔は、導波路204a及び204bを導波する光(被変調光)の波長以上である。
【0033】
また、導波路204a上に電極211aが形成され、導波路204b上に電極211bが形成されている。更に、半導体メサ構造体207上の2か所に1個ずつ補助電極212が形成され、2個の補助電極212と電極211aとが接続部213を介して互いに接続されている。電極211aは電極211bよりも長く、電極211bの長さと2個の補助電極212の長さとの総和が電極211aの長さと同等である。例えば、電極211aの長さは1.5mmであり、電極211bの長さは0.5mmであり、補助電極212の総長さは1.0mmである。また、半導体メサ構造体207の長さは2個の補助電極212の長さの和以上である。なお、干渉計の長さ(導波路204a及び204bが延びる方向の寸法)は、干渉計の幅(導波路204a及び204bが並ぶ方向の寸法)に比べてかなり大きく、導波路204a及び204bの間隔は、例えば50μm程度である。更に、基板の裏面に電極が形成されている。
【0034】
このように構成された半導体光変調器に対しては、第2の実施形態と同様に、例えば、入力パッド214aと接地との間にバイアス直流電源及び交流電源が接続され、入力パッド214bと接地との間に他のバイアス直流電源及び交流電源が接続される。また、出力パッド215aと接地との間に終端抵抗が接続され、出力パッド215bと接地との間に他の終端抵抗が接続される。なお、保護膜110により、電極、入力パッド、又は出力パッドが設けられていない領域が覆われている。
【0035】
このような第3の実施形態によっても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
次に、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法について説明する。図7A及び図7Bは、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。また、図8も、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す断面図である。図9は、第3の実施形態に係る半導体光変調器を製造する方法を工程順に示す上面図である。図7A及び図7Bは、図6及び図9中のI−I線に沿った断面を示し、図8は、図6及び図9中のII−II線に沿った断面を示す。
【0037】
先ず、図7A(a)に示すように、n型基板101上に、例えば有機金属気相成長(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)法により、n型バッファ層102、多重量子井戸(MQW:multi-quantum wells)層103、クラッド層104、p型クラッド層105、及びp型コンタクト層106をこの順で積層する。n型基板101としては、例えばn型InP基板を用いる。n型バッファ層102としては、例えば厚さが100nm程度のn型InP層を形成する。クラッド層104としては、例えば厚さが100nm程度の不純物が添加されていないi型のInP層を形成する。p型クラッド層105としては、例えば厚さが1500nm程度のp型InP層を形成する。p型コンタクト層としては、例えば厚さが150nm程度のp型InGaAs層を形成する。MQW層103としては、例えばInGaAsPの井戸層とInPの障壁層とが交互に積層された積層体を形成する。例えば、井戸層の厚さは10nmとし、障壁層の厚さは10nmとし、これらが20周期繰り返して積層されている。MQW層103が導波層として機能する。また、井戸層の組成は、例えばバンド端の遷移波長が1.4μmになるよう決定する。この場合、変調光の波長を1.55μm付近とした場合に、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)によって実用上十分な大きさの屈折率変化を得ることができる。
【0038】
次いで、p型コンタクト層106上に、例えば化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)法によりシリコン酸化膜を形成する。その後、シリコン酸化膜上に、半導体導波路を形成する予定の領域、及び半導体メサ構造体207を形成する予定の領域を覆うレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンをマスクとして用いてシリコン酸化膜のウェットエッチングを行う。この結果、レジストパターンの形状がシリコン酸化膜に転写され、図7A(b)に示すように、半導体導波路を形成する予定の領域、及び半導体メサ構造体207を形成する予定の領域を覆うマスクパターン107が形成される。
【0039】
続いて、マスクパターン107をマスクとして用いて、p型コンタクト層106、p型クラッド層105、クラッド層104、MQW層103、及びn型バッファ層102のドライエッチングを行う。このドライエッチングは、例えば反応性イオンエッチング(RIE:reactive ion etching)により行う。また、このドライエッチングでは、n型基板101を若干オーバーエッチングする。この結果、図7A(c)及び図9(a)に示すように、導波路204a、導波路204b、及び半導体メサ構造体207のメサストライプ構造が得られる。
【0040】
このとき、導波路204a、導波路204b、及び半導体メサ構造体207の幅は、例えば1.5μmとする。これは、変調光の波長において導波モードが単一となるようにするためである。また、半導体メサ構造体207と導波路204bとの間の間隔は、例えば5μmとする。また、光分配器203及び光結合器205として、MMI(multi-mode interference)カプラを設ける。この結果、干渉計の両アーム(導波路204a及び204b)へと光を分岐させ、両アームからの光を合波させることが可能となる。MMIカプラの幅及び長さは、例えば、導波路部の屈折率と周囲の屈折率との比に応じて分岐比が1対1になるように設計する。
【0041】
次いで、図7B(d)に示すように、例えばMOCVD法による埋め込み成長を行って、メサストライプ構造の周囲に埋め込み層108を形成する。埋め込み層108としては、例えば高抵抗(SI:semi-insulated)InP層を形成する。その後、BHF(Bufferedフッ酸)を用いてマスクパターン107を除去する。
【0042】
続いて、図7B(e)及び図8(a)に示すように、埋め込み層108及びp型コンタクト層106上にレジストパターン109を形成する。レジストパターン109としては、電極を形成する予定の領域のp型コンタクト層106を覆い、その他の領域のp型コンタクト層106を露出するものを形成する。そして、レジストパターン109をマスクとして用いたウェットエッチングを行い、p型コンタクト層106のレジストパターン109から露出している部分を除去する。次いで、図9(b)に示すように、レジストパターン109を除去する。
【0043】
その後、全面に保護膜110を形成し、その上にレジストパターン111を形成する。保護膜110としては、例えばシリコン酸化膜を形成する。また、レジストパターン111としては、メサ上の電極を形成する予定の領域の保護膜110を露出するものを形成する。そして、レジストパターン111をマスクとして用いて保護膜110のウェットエッチングを行う。この結果、図7B(f)及び図8(b)に示すように、電極を形成する予定の領域のp型コンタクト層106が露出する。
【0044】
続いて、図7B(g)及び図8(c)に示すように、例えばシードメタル膜112をレジストパターン111上及びp型コンタクト層106上に形成する。シードメタル膜112の形成では、例えば、Auの真空蒸着、Znの真空蒸着、及びAuの真空蒸着をこの順で行う。
【0045】
次いで、レジストパターン111をその上のシードメタル膜112と共に除去する。この結果、図7B(h)及び図8(d)に示すように、p型コンタクト層106上のみにシードメタル膜112が残存する。つまり、シードメタル膜112をリフトオフ法により形成する。
【0046】
その後、図7B(i)及び図8(e)に示すように、シードメタル膜112を露出するレジストパターン113を保護膜110上に形成する。そして、レジストパターン113をマスクとして用いてAuめっきを行うことにより、シードメタル膜112上にAu膜114を形成する。
【0047】
続いて、図7B(j)及び図8(f)に示すように、レジストパターン113を除去する。次いで、n型基板101の裏面にシードメタル膜115及びAu膜116をこの順で形成する。シードメタル膜115の形成では、例えば、AuGe真空蒸着及びAuの真空蒸着をこの順で行う。Au膜116は、例えばめっきにより形成することができる。
【0048】
このような処理の結果、図6に示す半導体光変調器が得られる。
【0049】
なお、電極211b、補助電極212、及び半導体メサ構造体7の関係は、図6に示されたものに限定されない。例えば、図10(a)に示すように、半導体メサ構造体7が基板の端面から離間していてもよい。また、図10(b)に示すように、補助電極212の一端のみに補助電極212が接続されていてもよい。また、図10(c)に示すように、電極211aに、補助電極212と同様の補助電極222が接続され、補助電極222の下に、半導体メサ構造体207と同様の半導体メサ構造体227が設けられていてもよい。但し、電極211a及び211bの長さが互いに相違し、電極211a及び補助電極222の総長さと電極211b及び補助電極212の総長さとが同等である。また、図10(d)に示すように、補助電極212が平面視で導波路204a及び204b間に位置していてもよい。
【0050】
更に、これらの電極、補助電極、及び半導体メサ構造体の関係は、図11に示すように、集中定数型電極を備えた半導体光変調器に適用することもできる。図11(a)〜(d)に示す構造は、夫々図10(a)〜(d)に示す構造に対応し、図11(e)に示す構造は図6に示す構造に対応する。
【0051】
また、図12に示すように、単一の基板上に、上記の半導体光変調器と半導体レーザ120とを集積することにより、半導体光送信機が得られる。この半導体光送信機は、幹線系の大容量通信に好適である。
【0052】
更に、導波路を構成する半導体材料は、特に限定されず、例えば、Zn、Cd、Hg、Al、N、Sb、S、Te等のII族元素、III族元素、V族元素、又はVI族元素を含む混晶を導波層(活性層)の材料として用いてもよい。例えば、AlGaInAsを井戸層の材料として用い、AlInAsを障壁層の材料として用いた量子井戸層を用いてもよい。また、光結合器、光分配器として、方向性結合器、Y分岐導波路等の一般的な結合器を用いてもよい。また、上記の実施形態では、光導波路がSI−BH(buried heterostructure)構造を備えているが、PNPN型の埋め込み導波路となっていてもよい。また、半導体を用いた埋め込みを行わないハイメサ型導波路構造を備えていてもよく、上部クラッド層のみがエッチングされたリッジ型導波路構造を備えていてもよい。
【0053】
また、半導体メサ構造体の幅は、必ずしも導波路のものと一致している必要はなく、半導体メサ構造体に含まれるi層の厚さも、必ずしも導波路のものと一致している必要はない。但し、特に数GHz以上の高周波のRF信号による変調を行う場合には、全体の静電容量だけでなく電極の長さ及び単位長さ当たりの容量等によって電極の周波数特性が影響を受けるため、これらは一致していることが望ましい。また、これらが一致していれば、一致していない場合よりも製造が容易である。
【符号の説明】
【0054】
1:基板
4a、4b:導波路
7:半導体メサ構造体
11a、11b:電極
12:補助電極
13:接続部
204a、204b:導波路
207、227:半導体メサ構造体
211a、211b:電極
212、222:補助電極
213:接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた第1の光導波路及び第2の光導波路を備えたマッハ・ツェンダ型光干渉計と、
前記第1の光導波路上に形成された第1の電極と、
前記第2の光導波路上に形成され、前記第1の電極とは長さが相違する第2の電極と、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路から被変調光の波長以上離間して設けられた半導体メサ構造体と、
前記半導体メサ構造体上に形成され、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち短いものに電気的に接続された補助電極と、
を有することを特徴とする半導体光変調器。
【請求項2】
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は第1の空乏層を有し、
前記半導体メサ構造体は第2の空乏層を有し、
前記第2の空乏層の厚さ及び幅は、前記第1の空乏層の厚さ及び幅の90%以上110%以下であり、
前記補助電極の長さと前記第1の電極及び前記第2の電極のうち短いものの長さとの和は、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち長いものの長さの90%以上110%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体光変調器。
【請求項3】
前記半導体メサ構造体の層構造は、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の層構造と等しく、
前記半導体メサ構造体の幅は、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の幅の90%以上110%以下であり、
前記補助電極の長さと前記第1の電極及び前記第2の電極のうち短いものの長さとの和は、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち長いものの長さの90%以上110%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体光変調器。
【請求項4】
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、半導体の多重量子井戸構造の導波層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体光変調器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体光変調器と、
前記基板上に前記半導体光変調器と集積された半導体レーザと、
を有することを特徴とする半導体光送信機。
【請求項1】
基板上に設けられた第1の光導波路及び第2の光導波路を備えたマッハ・ツェンダ型光干渉計と、
前記第1の光導波路上に形成された第1の電極と、
前記第2の光導波路上に形成され、前記第1の電極とは長さが相違する第2の電極と、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路から被変調光の波長以上離間して設けられた半導体メサ構造体と、
前記半導体メサ構造体上に形成され、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち短いものに電気的に接続された補助電極と、
を有することを特徴とする半導体光変調器。
【請求項2】
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は第1の空乏層を有し、
前記半導体メサ構造体は第2の空乏層を有し、
前記第2の空乏層の厚さ及び幅は、前記第1の空乏層の厚さ及び幅の90%以上110%以下であり、
前記補助電極の長さと前記第1の電極及び前記第2の電極のうち短いものの長さとの和は、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち長いものの長さの90%以上110%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体光変調器。
【請求項3】
前記半導体メサ構造体の層構造は、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の層構造と等しく、
前記半導体メサ構造体の幅は、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の幅の90%以上110%以下であり、
前記補助電極の長さと前記第1の電極及び前記第2の電極のうち短いものの長さとの和は、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち長いものの長さの90%以上110%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体光変調器。
【請求項4】
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、半導体の多重量子井戸構造の導波層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体光変調器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体光変調器と、
前記基板上に前記半導体光変調器と集積された半導体レーザと、
を有することを特徴とする半導体光送信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−197427(P2011−197427A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64376(P2010−64376)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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