半導体産業に供給する液化材料の容器
【課題】この発明は、充填した液化材料を残らず使い果すことができ、容器の洗浄を容易且つ確実に実施できる容器を提供することを課題とする。
【解決手段】充填容器1は、頂部に向けて下方に傾斜した底部内面2aを有する液体タンク2、頂部に形成された供給ポート3に接続された供給用チューブ5、底部の下方で供給ポート3に近接した位置で供給用チューブ5の途中に取り付けられたバルブ14、液体タンク2の上部を閉塞したリッド6、リッド6を貫通して設けられた液流入用のポート8およびガス送込み用のポート9、および各ポート8、9に取り付けられたバルブ11、12を有する。液化材料を充填容器1内に充填する場合、バルブ14を開いた状態で液体タンク2内を真空引きし、バルブ14を閉じてポート8から液化材料を充填する。この後、バルブ14を開いて供給用チューブ5内を液化材料で満たす。
【解決手段】充填容器1は、頂部に向けて下方に傾斜した底部内面2aを有する液体タンク2、頂部に形成された供給ポート3に接続された供給用チューブ5、底部の下方で供給ポート3に近接した位置で供給用チューブ5の途中に取り付けられたバルブ14、液体タンク2の上部を閉塞したリッド6、リッド6を貫通して設けられた液流入用のポート8およびガス送込み用のポート9、および各ポート8、9に取り付けられたバルブ11、12を有する。液化材料を充填容器1内に充填する場合、バルブ14を開いた状態で液体タンク2内を真空引きし、バルブ14を閉じてポート8から液化材料を充填する。この後、バルブ14を開いて供給用チューブ5内を液化材料で満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体デバイスの製造に使用する液化材料を充填して半導体製造装置に供給するための容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業において、有機金属材料の需要が高まりつつあり、高価な材料の需要が高まりつつある。有機金属材料は、液体で人体に有害な物質であることが多いため、安全且つ容易に運搬することが望ましい。現時点では、ケミカル容器からこれら液化材料を半導体製造装置へ移送するため、ステンレス製の充填容器が広く利用されている。液化材料は、ユーザー側の液送システムを通して充填容器から半導体製造装置へ供給される。
【0003】
この種の充填容器のメーカーは、容器加温システムの改良、ロードセルや液面センサによる液化材料の残量計測ツールの正確さの改良、および蒸気圧が低く粘着性が高い液化材料が充填されている容器を液送システムから取り外す際のパージシステムの改良の目的で、研究を重ねている。特に、加圧したガスを用いた液化材料の排出の後で充填容器内に残留する液化材料の残留量の削減、および充填容器の洗浄効率の改良についてのいくつかの試みがなされている。
【0004】
多くの液化材料は、水や空気中の酸素と容易に反応し、直ちに分解(重合)された生成物を生じる。これら生成物は、液体洗浄では容易に取り除くことが難しく、容易に洗浄できる構造の充填容器が必要とされている。多くの充填容器は、容器の底に届くディップポート、および液体を加圧するためのガスを送り込むためのトップポートを有する。
【0005】
図1には、従来のディップポートおよびトップポートを有するタイプの充填容器の一例を示してある。この従来の充填容器は、容器の上部を閉塞したリッドを貫通して伸びたディップチューブを有し、このディップチューブの先端が容器の底部の内面に近接する位置まで伸びている。つまり、ディップチューブは、充填容器内に充填される液化材料に浸漬される。ディップチューブは、リッドの孔に溶接により固定されており、リッドの上方に伸びたチューブには、バルブが取り付けられている。
【0006】
一方、充填容器の底部内面は、液化材料を最後まで使い切るため、充填容器底中央にある頂部に向けて下方に傾斜した凹形状に形成されている。そして、この最も低くされた頂部に向けてディップチューブの先端が指向されている。このため、充填容器内の液化材料が残り少なくなったとき、頂部に集まった液化材料をディップチューブを介して概ね最後まで吸い出すことができ、充填容器内に残留する高価な液化材料の残留量を少なくできる。しかし、上述した従来の充填容器は、容器内の全ての液化材料を完全に排出することのできる構造を有していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の充填容器は、以下の(1)〜(5)の問題を有する。
【0008】
(1)充填容器内の全ての液化材料を加圧ガスを用いて排出できない。
つまり、液化材料を充填容器から取り出す際には、リッドに設けた別のポート(トップポート)を介して加圧したガスを容器内に送り込んで容器内圧を高めることで、ディップチューブを介して液化材料を取り出すことになるが、ディップチューブ先端と充填容器の底部内面の最も低い位置にある頂部との間にはクリアランスを設ける必要があり、頂部に溜まった液化材料を全て排出することができない。
【0009】
(2)ディップチューブの外側表面やディップチューブのリッドに対する溶接箇所を洗浄することが難しい。
つまり、この種の充填容器には、人体に有害な物質である液化材料[Hf(NEtMe)4;テトラキスエチルメチルアミノハフニウム、Zr(NEtMe)4;テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム、Si2Cl6;ヘキサクロロジシランなど]を充填する場合が多く、洗浄工程の最初からリッドを外して充填容器の内部を洗浄することはできない。このため、最初の洗浄工程(粗洗浄)では、リッドに設けられたポートを介して容器内に付着した僅かな液化材料を加圧された不活性ガスでパージする。その後で、リッドに設けられたポートを介して洗浄液を容器内に注入し、容器内面に付着した液化材料を大まかに取り除く。そして、この後、仕上げ洗浄工程として、リッドを外して充填容器の内面およびリッドの内面を念入りに洗浄することになる。
【0010】
このため、最初の粗洗浄工程では、洗浄液でディップチューブの外側表面を十分に洗浄することが難しく、また、チューブの溶接箇所を洗浄液で洗浄することが難しい。つまり、粗洗浄工程では、液化材料を十分に除去することができない。この結果、リッドを外すまでに数回洗浄液注入による粗洗浄を繰り返す必要があり、洗浄液が無駄になり、洗浄工程の多くの時間を要することになる。
【0011】
(3)ディップチューブと充填容器の底部(頂部)との間の距離を高精度に取り付けすることが難しく、両者の間の距離には製造誤差がある。同じ方法で容器を製造しても、この距離の誤差に基づいて、使用後に容器内に残留する液化材料の量に固体差を生じる。
【0012】
(4)液化材料を充填容器に充填した後、ディップチューブ(液体の供給ポート)内にガス成分が残る。このディップチューブ内の残留ガスは、充填容器から液化材料を取り出して使用を開始する際に、液化材料の不安定な流れを生じる。
【0013】
例えば、図3Aおよび図3Bに示すように、液化材料を2つの容器間で移して充填する場合、液化材料を充填される側の図中左側の比較的小さな容器(ここでは単に充填容器と称する)内には、リッドに設けたポートを介して液化材料が送り込まれる。この場合、まず、図3Aに示すように、充填容器が真空引きされ、外部につながる全てのポートのバルブが一旦閉じられる。そして、この後、図3Bに示すように、2つの容器をつなぐ充填用チューブが連結され、この充填用チューブの両端にあるバルブが開かれる。これにより、充填容器内の負圧によって液化材料が充填容器内に送り込まれる。
【0014】
このとき、ディップチューブの先端と充填容器の底部(頂部)との間に隙間があるため、図中右側の充填元の母容器から充填容器へ移された液化材料がこの隙間を埋めるまでの間に、充填用チューブ内にあったガス成分が充填容器内に流れ込み、その分、充填容器内の真空度が低下する。そして、この希薄なガス成分は、液化材料がディップチューブの先端に入り込む前にディップチューブ内にも流れ込む。つまり、この僅かに流れ込んだガスがバルブを閉じた状態のディップチューブ内に残ることになり、液化材料を充填した後、ディップチューブ内で凝集されることになる。
【0015】
充填容器内に充填した液化材料を半導体製造装置に供給して使用する際には、ディップチューブのバルブを開いて液化材料を取り出すことになる。このため、上記のように、液化材料の充填後にディップチューブ内にガス成分が残っていると、液化材料の取り出し開始時に、ガス成分が始めに送り出されることになり、液化材料の流れが不安定になる。
【0016】
(5)全ての液化材料を供給(排出)する目的で、ディップチューブ、およびコーン形の容器の底部を持つ。また、ディップチューブの先端は、容器の底部の周縁部より深い中央の頂部まで延びている。このため、容器洗浄の際にリッドを開閉するとき、リッドに溶接されたディップチューブの先端が左右に振れて充填容器の底部の周辺部に接触し、充填容器の底部内面にスクラッチを生じ易い。
【0017】
充填容器内面は、腐食防止や液化材料純度維持のためにコーディングされている。特に、多くの充填容器はステンレススチール316Lによって形成されており、その表面は電解研磨されている。この様に処理されている容器内面は耐食性のある緻密な酸化膜が形成されている。このため、上述したようにディップチューブの先端が容器内面に接触してスクラッチを生じると、コーティングが剥れてしまう場合がある。コーティングが剥れてしまうと、充填される液化材料の純度が低下する要因になるだけでなく、過度に傷が付いた容器は再研磨する必要もあり充填容器の管理コストがかかる。
【0018】
この発明の目的は、充填した液化材料を残らず使い果すことができ、容器の洗浄を容易且つ確実に実施できる充填容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明の充填容器は、以下のように、上記(1)〜(5)の問題を解決する。
【0020】
(1)この発明の充填容器の主な特徴は、図2A〜図2Cに示すように、上述した従来のディップチューブの代りに、充填容器の底部に形成した排出ポートに供給チューブを取り付けたことである。この発明の充填容器は、殆ど全ての液化材料を排出することができ、ディップチューブを用いた容器と比較して、容器内に残留する液化材料を殆どゼロにできる。このことは、液化材料を効率良く使用すること、および液化材料の効果的な移動に寄与する。
【0021】
つまり、充填容器の底部内面を図示のように1つの頂点に向けて下方に湾曲させて最後に残った液化材料が頂点に集まるような構造を採用した上で、この頂点に設けた排出ポートに供給チューブを接続したため、容器内の殆ど全ての液化材料を使い果たすことができる。
【0022】
(2)従来のように充填容器内にディップチューブが存在すると、ディップチューブの外面を洗浄することが難しく、リッドとディップチューブとの間の溶接箇所を洗浄することが難しい。一般に、空気や水と反応して生成された分解生成物は、洗浄が難しい。この発明の充填容器は、洗浄の難しさを減少するため、ディップチューブを持っていない。
【0023】
この発明の充填容器のように、液化材料に浸漬されるディップチューブを持たないことで、供給用チューブの外面が液化材料によって濡れることがないため、そもそも、供給用チューブの外面の洗浄が不要となる。また、リッドを貫通して溶接したディップチューブを持たないため、そもそも、溶接箇所が無く、洗浄の必要もない。
【0024】
(3)ディップチューブを持たない充填容器は、製造工程における強みでもある。なぜなら、ディップチューブの取り付けは、繊細な作業であり、熟練を要する技術でもあるため、ディップチューブの先端エッジと充填容器の底部内面との間の距離を、常に同じ距離に保つことが難しい。これに対し、本発明の充填容器は、ディップチューブの代りに外付けの供給用チューブを取り付けたため、チューブ先端と容器底面との間のギャップが無く、ギャップ管理の必要がない。
【0025】
つまり、本発明の充填容器によると、液化材料の使用後に、充填容器の底部に残留する液体の量が区々になることはなく、殆ど全ての液化材料を使い果たすことができる。このような利益は、本発明の充填容器の場合、製造した全ての充填容器に当てはめることができ、同じ仕様、同じ形に製造できる。
【0026】
(4)本発明の充填容器は、例えば、図4Aに示すように、容器の底部に接続した外付けの供給用チューブを有し、且つこの接続部の近くでチューブの基端部にバルブを有する。また、充填容器のリッドに取り付けたポート、および供給用チューブをリッドの上側まで引き伸ばした箇所に、それぞれバルブを取り付けた。このため、液化材料を充填した後、供給用チューブ内に不所望なガス成分が残留することがない。
【0027】
充填容器に液化材料を移し替える場合、まず、図4Aに示すように、供給用チューブの接続部近くにあるバルブが開かれて、上部リッドにあるポート、および供給用チューブを介して、充填容器が真空引きされる。このとき、供給用チューブも真空引きされる。そして、真空引きの後、供給用チューブの根元のバルブが閉じられて、リッドのポートに取り付けられたバルブ、および供給用チューブのリッド近くまで引き出された箇所に取り付けられたバルブが閉じられる。
【0028】
この後、図4Bに示すように、図示左側の真空引きした充填容器の上部リッドにあるポートと供給元になる図示右側の母容器との間を充填用チューブでつなぐ。この状態で、充填用チューブの根元にある母容器側のバルブと充填容器側のポートのバルブを開くと、充填容器内の負圧によって、充填用チューブを介して母容器内の液化材料が充填容器内へ流れ込む。このとき、充填容器に外付けした供給用チューブの根元のバルブが閉じられているため、充填容器の底面とバルブとの間のチューブ部分にも液化材料が充填される。また、このとき、充填用チューブ内にガス成分が残っていたとしても、このガス成分は充填容器内の上方に溜まるので問題ない。
【0029】
上記のように充填容器内に液化材料を充填した後、図4Cに示すように、充填容器の供給用チューブの根元にあるバルブを開くと、充填された液化材料が供給用チューブの全長を満たし、リッドの上方に引き回されたチューブの箇所に取り付けられたバルブまで、液化材料で満たされる。これにより、充填容器を半導体製造装置に装着して液化材料を使用に供するとき、リッド上部にある供給用チューブのバルブを開いた直後から液化材料が半導体製造装置へ流れることになり、ガス成分が流れを阻害する要因を無くすことができる。
【0030】
(5)本発明の充填容器は、ディップチューブを持たないため、リッドを貫通したディップチューブをリッドに溶接することもない。このため、リッドを開閉する際に、チューブの先端が充填容器の底部内面に接触する心配も無く、スクラッチを生じることも無い。
【発明の効果】
【0031】
この発明の充填容器は、上記のような構成および作用を有しているので、充填した液化材料を残らず使い果すことができ、容器の洗浄を容易且つ確実に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、ディップチューブを有する従来の充填容器の一例を示す図である。
【図2A】図2Aは、この発明の実施の形態に係る充填容器の基本構造を示す図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの構造に1つのバルブを追加した図である。
【図2C】図2Cは、図2Bの構造に保護ケースを追加した図である。
【図3A】図3Aは、図1の従来の充填装置を真空引きした状態を示す図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの真空引きした充填容器に液化材料を移し替える動作を説明するための図である。
【図4A】図4Aは、図2A〜図2Cの本実施の形態の充填容器を真空引きした状態を示す図である。
【図4B】図4Bは、図4Aで真空引きした充填容器に液化材料を移し替える動作を説明するための図である。
【図4C】図4Cは、図4Bで液化材料を充填した後、外付けの供給用チューブを液化材料で満たした状態を示す図である。
【図5】図5は、図2A〜図2Cの本実施の形態の充填容器の構造を説明するための概略図である。
【図6】図6は、図5の充填容器を半導体製造装置にセットした一例を示す概略図である。
【図7】図7は、図5の充填容器を半導体製造装置にセットした他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
近年、半導体デバイスの製造価格は安くなりつつあり、最終製品コストを下げるため、原料の使用効率を高めることが重要視されている。半導体デバイスの原料として、例えば、Hf(NEtMe)4;テトラキスエチルメチルアミノハフニウム、Zr(NEtMe)4;テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム、Si2Cl6;ヘキサクロロジシランなどの液化材料(液体原料)がある。この種の液化材料は、製造元で純度の高い状態で生成した後、半導体製造装置へ供給するまでの間で、充填容器に収容して輸送する必要がある。
【0034】
本発明の充填容器は、充填した液体原料を使い切ることができ、再充填のためのクリーニング効率を改良することができる。本発明の充填容器は、充填した液化材料を供給するための供給用チューブのレイアウトが従来の容器と異なる。つまり、本発明の充填容器は、従来のディップチューブの代わりに液体タンクの底に接続した供給用チューブを有する。供給用チューブは、液体タンクの外側に取り付けられる。
【0035】
以下、図5を参照して、本発明の実施の形態に係る充填容器1について詳細に説明する。充填容器1は、上述した液化材料を収容する液体タンク2、および保護ケース4(4a、4b)を有する。液体タンク2は、ステンレススチール、好ましくは、ステンレススチール316Lによって形成されており、内面が電解研磨されている。保護ケース4は、液体タンク2より一周り大きなサイズを有し、後述するリッド6の位置で上下に2分割されている。
【0036】
液体タンク2の底部内面2aは、図示のように下方に凸をなすように湾曲している。そして、底部内面2aの中央近くで最も低い頂部には、液体タンク2に充填した液化材料を使用に供すべく排出(供給)するための供給ポート3が形成されている。供給ポート3には、供給用チューブ5が接続されている。供給用チューブ5は、後述するように液体タンク2の外側にレイアウトされる。
【0037】
液体タンク2の上端には開口部2bがある。この開口部2bは、一周り径の大きいリッド6によって閉塞されて密閉される。リッド6は、複数本のネジ7によって液体タンク2の上部に締結固定される。これら複数のネジ7は、液体タンク2を洗浄する際の後述する仕上げ洗浄時に取り外される。
【0038】
リッド6には、液体タンク2内に液化材料を充填するとともに液体タンク2内に粗洗浄(後述する)のための洗浄液を注入するための液流入用のポート8、および加圧した不活性ガスを液体タンク2内に送り込むためのガス送込み用のポート9が設けられている。各ポート8、9には、流路を開閉するためのバルブ11、12が取り付けられている。
【0039】
液体タンク2の底部に接続された供給用チューブ5は、図示のように液体タンク2の外側を通ってリッド6の上方まで引き回されている。この際、リッド6の周辺部にある液体タンクより大径に張り出したフランジ部6aに形成された孔6bを通して、供給用チューブ5が配管される。これにより、供給用チューブ5を必要以上に長くすることを防止でき、コンパクトなレイアウトが可能となる。
【0040】
この供給用チューブ5は、従来のディップチューブのように液体タンク2内の液化材料に浸漬されることはない。
【0041】
液化材料の供給方向(排出方向)に沿って供給用チューブ5の下流側端部には、流路を開閉するためのバルブ13が取り付けられている。すなわち、このバルブ13は、リッド6の上方で上述した2つのバルブ11、12と並べて配置される。また、液体タンクの底部に設けた供給ポート3と当該バルブ13との間の供給用チューブ5の途中には、もう1つのバルブ14が取り付けられている。好ましくは、このバルブ14は、供給ポート3より下方で液体タンク2の底部に近接して取り付けられる。
【0042】
液体タンク2は、台座15上に据え付けられた状態で、保護ケース4内に配置される。言い換えると、保護ケース4は、液体タンク2の外側を包囲するよう取り付けられる。この保護ケース4によって、液体タンク2の外側に配管された供給用チューブ5、液体タンク2の下方に配置されたバルブ14、およびリッド6の上方に配置された3つのバルブ11〜13が保護される。
【0043】
保護ケース4は、リッド6の上方の3つのバルブ11〜13を包囲する上部ケース4a、およびリッド6の下方に配置された液体タンク2を包囲する下部ケース4bを有する。下部ケース4bの外周面には、充填容器1を持ち運ぶための2つのハンドル16、16が取り付けられている。
【0044】
上記構造の充填容器1に液化材料を充填する場合、まず、供給用チューブ5の途中に配置したバルブ14を開いて供給用チューブ5を液体タンク2に連通させ、リッド6の液流入用のポート8に取り付けたバルブ11を閉じた状態で、ポート9のバルブ12および供給用チューブ5のバルブ13を開いて図示しない真空ポンプで液体タンク2を真空引きする。これにより、液体タンク2内が真空引きされるとともに供給用チューブ5内も真空引きされる。液体タンク2および供給用チューブ5内の圧力を所望する圧力まで減圧させた後、2つのバルブ12、13を閉じる。
【0045】
この後、液体タンク2の底部近くに設けたバルブ14を閉じて液体タンク2と供給用チューブ5を遮断し、液流入用ポート8のバルブ11を介して、液化材料の供給源となる別の液体タンク(図示せず)を接続する。そして、この状態で、バルブ11を開いて液化材料を液体タンク2に充填する。このとき、バルブ14が閉じているため、液体タンク2に流入した液化材料は、始めに、供給ポート3を介してバルブ14の手前まで供給用チューブ5内に流れ込み、液体タンク2の底部から順に溜まる。
【0046】
所望する量の液化材料を液体タンク2内に充填した後、バルブ11を閉じて供給源である図示しない別の液体タンクを取り外し、バルブ14を開いて充填した液化材料を供給用チューブ5内にも送り込む。バルブ14を開く前の状態で、上述したように供給用チューブ5内も真空引きされているため、バルブ14を開くと同時にチューブ内の負圧によって液化材料がチューブ5内を満たす。理想的には、この状態で、バルブ13の位置まで液化材料で満たされる。
【0047】
以上のように液体タンク2に充填した液化材料を取り出す場合、すなわち、この充填容器1を後述する半導体製造装置にセットして液化材料を半導体製造装置に供給する場合、供給用チューブ5の下流側端部にバルブ13を介して半導体製造装置の供給ポートを接続し、ガス送込み用のポート9に取り付けたバルブを開いて加圧した不活性ガスを液体タンク2内に送り込む。そして、液体タンク2内の圧力が所望する圧力まで昇圧された後、供給用チューブ5のバルブ13を開いて液化材料を半導体製造装置へ供給する。
【0048】
本実施の形態の充填装置1では、上述したように、液化材料を液体タンク2内に充填するときガス成分が供給用チューブ5内に残ることがないため、液化材料を半導体製造装置へ供給する際に、ガス成分が半導体製造装置へ送り込まれる不具合を生じることがない。
【0049】
上述したように液化材料を充填して供給する本実施の形態の充填容器1は、内部を洗浄して複数回繰り返して使用される。充填容器1の洗浄は、液体タンク2内を大まかに洗浄する粗洗浄、およびリッド6を取り外して念入りに洗浄する仕上げ洗浄の2工程に分けられる。本実施の形態の充填容器1に収容する液化材料は、上述したように純度の極めて高い状態を維持する必要があるため、充填容器1を再使用に供する場合には、液体タンク2の内面やリッド6の内面など液化材料が触れる面を十分に洗浄する必要がある。
【0050】
粗洗浄の工程では容器の中に極僅かに残っている液化材料をパージするために、容器内に空気を入れないように加圧した不活性ガスをバルブ12より導入し、バルブ14を介してバルブ13より排出させる。その後で、容器内に空気を巻き込まないようにバルブ11を開いて液流入用のポート8から液体タンク2内へ洗浄液を注入する。洗浄液の注入後、バルブ11を閉じる。洗浄液としては、液化材料に対して反応性の極めて低い溶媒が選択される。一定量の洗浄液を液体タンク2内に注入した後、充填容器1を複数回回転させ、液体タンク2やリッド6の内面に付着している液化材料の残留液を洗浄液で洗い流す。この後、加圧した不活性ガスをバルブ12より導入して、バルブ14を介してバルブ13から洗浄液が排出され、廃棄処分される。この洗浄液の導入と排出を複数回繰り返し、容器内の液化材料を除去する。
【0051】
仕上げ洗浄の工程では、上述した粗洗浄によって液体タンク2の内面に付着した液化材料は概ね取り除かれているため、作業員の手作業によって液体タンク2の内壁を拭くこともでき、液体タンク2の内面などを十分念入りに洗浄することができる。しかし、上述した粗洗浄の工程は、高濃度の液化材料が液体タンク2の内壁に付着しているため、リッド6を開けて内部を拭くような洗浄方法を採用することができない。このため、粗洗浄では、上述したような洗浄液を用いた洗浄方法を採用した。
【0052】
本発明の充填容器1は、従来のようにディップチューブを持たないため、上述した洗浄工程によって、容器内に残留した液化材料を効果的且つ十分に洗浄できる。また、本発明の充填容器1によると、リッド6に固設したディップチューブを持たないため、仕上げ洗浄の工程でリッド6を開ける際に、ディップチューブの先端が液体タンク2の底面に接触する心配も無い。
【0053】
ところで、上述したように液化材料を充填した状態の充填容器1は、例えば、図6に一例を示すように半導体製造装置20の供給装置25にセットされる。このレイアウトは、半導体製造装置20に充填容器1を直接セットしたものである。この状態で、充填容器1内の液化材料は、バルブ13まで供給用チューブ5を満たしているものとする。
【0054】
充填容器1を図示のようにセットして、充填した液化材料を半導体製造装置20へ供給する場合、まず、バルブ12を開いてガス供給管21を介して加圧した不活性ガスを液体タンク2内へ送り込む。そして、液体タンク2内が所望する圧力まで昇圧された後、バルブ13、14を開いて液供給管22を介して液化材料を半導体製造装置20へ送り込む。
【0055】
半導体製造装置20では、送り込まれた液化材料を気化器24によって気化し、気化したガス材料を処理チャンバ26へ供給する。処理チャンバ26では、このガス材料を原料として用いて半導体デバイスを製造する。なお、充填容器1の交換時期は、供給装置25内で充填容器1を載置したロードセル28を介して液化材料の残量を検出することで、半導体製造装置20側で判断する。
【0056】
また、本実施の形態の充填容器1は、図7に他の一例を示すように半導体製造装置30の供給装置35にセットされても良い。このレイアウトは、供給装置35内に予め用意した供給容器31に液化材料を補充するため充填容器1をセットするようにしたものである。この場合においても、充填容器1を供給装置35にセットしたときにはバルブ13まで液化材料が供給用チューブ5を満たしているものとする。また、供給容器31は、充填容器1と同じ構造(ここでは同一符号を付す)のものを取り付けた。
【0057】
供給容器31から半導体製造装置30への液化材料の供給、および半導体製造装置30における処理は、図6で説明した一例と同じであるため、ここではその説明を省略する。供給容器31内の液化材料の残量が一定レベルを超えて少なくなると、充填容器1から供給容器31へ液化材料が補充される。供給容器31内の液化材料の残量は、ロードセル28を介して検出する。
【0058】
充填容器1から供給容器31へ液化材料を補充する場合、まず、充填容器1のバルブ12を開いてガス供給管21を介して加圧した不活性ガスを液体タンク2内へ送り込む。そして、液体タンク2内が所望する圧力まで昇圧された後、バルブ13、14を開いて液供給管22を介して液化材料を供給容器31へ送り込む。供給装置31は、液流入用のポート8に取り付けたバルブ11を開いて液化材料の補充を受ける。なお、充填容器1の交換時期は、充填容器1を載置したロードセル28を介して液化材料の残量を検出することで、半導体製造装置30側で判断する。
【0059】
図7の例では、図6の例とは異なり、半導体製造装置30を停止させることなく、運転を継続することができ、半導体製造装置30の稼働率を向上させることができる。
【0060】
本願発明者等は、以下に説明するいくらかの実験の結果、本発明の充填容器の上述したような新規な構造に基づく顕著な効果を確認した。
【0061】
[本実施の形態の充填容器と従来の充填容器との残留量の比較]
テストサンプルとして、異なる3社が製造した3つの充填容器を用意した。これら3つ全ての充填容器は、液体タンク内にディップチューブを有する上述した従来タイプのものであるが、それぞれ異なる容量(2.5〜3リッター)を有する。そして、この発明の充填容器は、市場で入手可能な部品で製造した。
【0062】
テストは、各充填容器に試験水を充填した後、加圧ガスを送り込んで試験水を排出し、充填容器内に残留した試験水の残量を比較することで実施した。その結果を表1に示す。この発明の充填容器をテストした際の試験水の残量は、非常に効果的なパフォーマンスを示した。つまり、この発明の充填容器が、液化材料の排出において、他の容器と比較して、最も良い結果をもたらした。本願発明者等は、このような結果を、下記の表1に示すように、表面張力や粘度の異なる複数種類の液体についても確認した。
【表1】
【0063】
この結果、全ての液体について、本発明の充填容器が排出後の残量が最も少なく、良好な結果であったことを確認できた。
【0064】
[従来の充填容器の洗浄困難性]
ディップチューブを有する従来のテストサンプルについて、使用後の充填容器の内面をチェックした。充填する液化材料の種類や充填容器の使用回数は種々の場合についてテストした。なお、テストは、充填容器を通常通り洗浄した後、ボアスコープやファイバースコープを用いた顕微鏡観測によって、ディップチューブの表面上の残留固体物質や侵食スポットを調べた。
【0065】
この結果、ディップチューブの外面を洗浄することは、他の部位を洗浄するより難しいことが分かった。つまり、本願発明の充填容器は、ディップチューブを持たないため、従来のディップチューブを有する充填容器より簡単に洗浄できることになる。さらに、本願発明の充填容器は、容器を種々に傾斜させて回転させることで、僅かな溶媒の使用だけで洗浄できる。つまり、この発明の方法によると、洗浄溶媒も効果的に減少することができる。
【0066】
[ディップチューブを有する充填容器を同じ仕様で同じデザインに保つことの困難性]
表1に示すように、液体を排出した後の残留液の量は、似通った容積の充填容器であっても、種々の値を示しているのが分かる。これは、充填容器の製造の困難性から引き起こされており、特にディップチューブのエッジと充填容器の底部内面との間の可能な限り小さい離間距離に起因する。本発明では、製造工程にて、充填容器の底部にある供給ポートに供給用チューブを接続でき、両者の間に接続誤差は無い。
【0067】
[供給用チューブとバルブに残留ガスが残らない]
本願発明の充填容器は、半導体製造装置に液化材料を供給するための供給用チューブ内に気泡が残ることが無い。例えば、液化材料をこの発明の充填容器へ充填するとき、始めに充填容器を供給用チューブとともに真空引きし、充填容器の底部近くで供給用チューブの途中にあるバルブを閉じる。そして、この状態で、充填容器内に液化材料を充填し、上述したバルブを開く。これにより、液化材料の充填後、供給用チューブ内にガス成分が残ることを防止できる。その結果、充填が終了した後、液化材料を供給用チューブを介して供給するとき、液流が不安定になることが無い。
【0068】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0069】
例えば、上述した実施の形態では、充填容器1内に残留した液化材料の残留量を検出するため、ロードセル28を用いた場合について説明したが、これに限らず、リッド6に設けたポート8を介して挿入される液面センサを用いて充填容器1内の液化材料の液面の高さを検出することで残量を検出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1…充填容器、2…液体タンク、3…供給ポート、4…保護ケース、5…供給用チューブ、6…リッド、8…液流入用のポート、9…ガス送込み用のポート、11、12、13、14…バルブ、20、30…半導体装置、25、35…供給装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体デバイスの製造に使用する液化材料を充填して半導体製造装置に供給するための容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業において、有機金属材料の需要が高まりつつあり、高価な材料の需要が高まりつつある。有機金属材料は、液体で人体に有害な物質であることが多いため、安全且つ容易に運搬することが望ましい。現時点では、ケミカル容器からこれら液化材料を半導体製造装置へ移送するため、ステンレス製の充填容器が広く利用されている。液化材料は、ユーザー側の液送システムを通して充填容器から半導体製造装置へ供給される。
【0003】
この種の充填容器のメーカーは、容器加温システムの改良、ロードセルや液面センサによる液化材料の残量計測ツールの正確さの改良、および蒸気圧が低く粘着性が高い液化材料が充填されている容器を液送システムから取り外す際のパージシステムの改良の目的で、研究を重ねている。特に、加圧したガスを用いた液化材料の排出の後で充填容器内に残留する液化材料の残留量の削減、および充填容器の洗浄効率の改良についてのいくつかの試みがなされている。
【0004】
多くの液化材料は、水や空気中の酸素と容易に反応し、直ちに分解(重合)された生成物を生じる。これら生成物は、液体洗浄では容易に取り除くことが難しく、容易に洗浄できる構造の充填容器が必要とされている。多くの充填容器は、容器の底に届くディップポート、および液体を加圧するためのガスを送り込むためのトップポートを有する。
【0005】
図1には、従来のディップポートおよびトップポートを有するタイプの充填容器の一例を示してある。この従来の充填容器は、容器の上部を閉塞したリッドを貫通して伸びたディップチューブを有し、このディップチューブの先端が容器の底部の内面に近接する位置まで伸びている。つまり、ディップチューブは、充填容器内に充填される液化材料に浸漬される。ディップチューブは、リッドの孔に溶接により固定されており、リッドの上方に伸びたチューブには、バルブが取り付けられている。
【0006】
一方、充填容器の底部内面は、液化材料を最後まで使い切るため、充填容器底中央にある頂部に向けて下方に傾斜した凹形状に形成されている。そして、この最も低くされた頂部に向けてディップチューブの先端が指向されている。このため、充填容器内の液化材料が残り少なくなったとき、頂部に集まった液化材料をディップチューブを介して概ね最後まで吸い出すことができ、充填容器内に残留する高価な液化材料の残留量を少なくできる。しかし、上述した従来の充填容器は、容器内の全ての液化材料を完全に排出することのできる構造を有していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の充填容器は、以下の(1)〜(5)の問題を有する。
【0008】
(1)充填容器内の全ての液化材料を加圧ガスを用いて排出できない。
つまり、液化材料を充填容器から取り出す際には、リッドに設けた別のポート(トップポート)を介して加圧したガスを容器内に送り込んで容器内圧を高めることで、ディップチューブを介して液化材料を取り出すことになるが、ディップチューブ先端と充填容器の底部内面の最も低い位置にある頂部との間にはクリアランスを設ける必要があり、頂部に溜まった液化材料を全て排出することができない。
【0009】
(2)ディップチューブの外側表面やディップチューブのリッドに対する溶接箇所を洗浄することが難しい。
つまり、この種の充填容器には、人体に有害な物質である液化材料[Hf(NEtMe)4;テトラキスエチルメチルアミノハフニウム、Zr(NEtMe)4;テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム、Si2Cl6;ヘキサクロロジシランなど]を充填する場合が多く、洗浄工程の最初からリッドを外して充填容器の内部を洗浄することはできない。このため、最初の洗浄工程(粗洗浄)では、リッドに設けられたポートを介して容器内に付着した僅かな液化材料を加圧された不活性ガスでパージする。その後で、リッドに設けられたポートを介して洗浄液を容器内に注入し、容器内面に付着した液化材料を大まかに取り除く。そして、この後、仕上げ洗浄工程として、リッドを外して充填容器の内面およびリッドの内面を念入りに洗浄することになる。
【0010】
このため、最初の粗洗浄工程では、洗浄液でディップチューブの外側表面を十分に洗浄することが難しく、また、チューブの溶接箇所を洗浄液で洗浄することが難しい。つまり、粗洗浄工程では、液化材料を十分に除去することができない。この結果、リッドを外すまでに数回洗浄液注入による粗洗浄を繰り返す必要があり、洗浄液が無駄になり、洗浄工程の多くの時間を要することになる。
【0011】
(3)ディップチューブと充填容器の底部(頂部)との間の距離を高精度に取り付けすることが難しく、両者の間の距離には製造誤差がある。同じ方法で容器を製造しても、この距離の誤差に基づいて、使用後に容器内に残留する液化材料の量に固体差を生じる。
【0012】
(4)液化材料を充填容器に充填した後、ディップチューブ(液体の供給ポート)内にガス成分が残る。このディップチューブ内の残留ガスは、充填容器から液化材料を取り出して使用を開始する際に、液化材料の不安定な流れを生じる。
【0013】
例えば、図3Aおよび図3Bに示すように、液化材料を2つの容器間で移して充填する場合、液化材料を充填される側の図中左側の比較的小さな容器(ここでは単に充填容器と称する)内には、リッドに設けたポートを介して液化材料が送り込まれる。この場合、まず、図3Aに示すように、充填容器が真空引きされ、外部につながる全てのポートのバルブが一旦閉じられる。そして、この後、図3Bに示すように、2つの容器をつなぐ充填用チューブが連結され、この充填用チューブの両端にあるバルブが開かれる。これにより、充填容器内の負圧によって液化材料が充填容器内に送り込まれる。
【0014】
このとき、ディップチューブの先端と充填容器の底部(頂部)との間に隙間があるため、図中右側の充填元の母容器から充填容器へ移された液化材料がこの隙間を埋めるまでの間に、充填用チューブ内にあったガス成分が充填容器内に流れ込み、その分、充填容器内の真空度が低下する。そして、この希薄なガス成分は、液化材料がディップチューブの先端に入り込む前にディップチューブ内にも流れ込む。つまり、この僅かに流れ込んだガスがバルブを閉じた状態のディップチューブ内に残ることになり、液化材料を充填した後、ディップチューブ内で凝集されることになる。
【0015】
充填容器内に充填した液化材料を半導体製造装置に供給して使用する際には、ディップチューブのバルブを開いて液化材料を取り出すことになる。このため、上記のように、液化材料の充填後にディップチューブ内にガス成分が残っていると、液化材料の取り出し開始時に、ガス成分が始めに送り出されることになり、液化材料の流れが不安定になる。
【0016】
(5)全ての液化材料を供給(排出)する目的で、ディップチューブ、およびコーン形の容器の底部を持つ。また、ディップチューブの先端は、容器の底部の周縁部より深い中央の頂部まで延びている。このため、容器洗浄の際にリッドを開閉するとき、リッドに溶接されたディップチューブの先端が左右に振れて充填容器の底部の周辺部に接触し、充填容器の底部内面にスクラッチを生じ易い。
【0017】
充填容器内面は、腐食防止や液化材料純度維持のためにコーディングされている。特に、多くの充填容器はステンレススチール316Lによって形成されており、その表面は電解研磨されている。この様に処理されている容器内面は耐食性のある緻密な酸化膜が形成されている。このため、上述したようにディップチューブの先端が容器内面に接触してスクラッチを生じると、コーティングが剥れてしまう場合がある。コーティングが剥れてしまうと、充填される液化材料の純度が低下する要因になるだけでなく、過度に傷が付いた容器は再研磨する必要もあり充填容器の管理コストがかかる。
【0018】
この発明の目的は、充填した液化材料を残らず使い果すことができ、容器の洗浄を容易且つ確実に実施できる充填容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明の充填容器は、以下のように、上記(1)〜(5)の問題を解決する。
【0020】
(1)この発明の充填容器の主な特徴は、図2A〜図2Cに示すように、上述した従来のディップチューブの代りに、充填容器の底部に形成した排出ポートに供給チューブを取り付けたことである。この発明の充填容器は、殆ど全ての液化材料を排出することができ、ディップチューブを用いた容器と比較して、容器内に残留する液化材料を殆どゼロにできる。このことは、液化材料を効率良く使用すること、および液化材料の効果的な移動に寄与する。
【0021】
つまり、充填容器の底部内面を図示のように1つの頂点に向けて下方に湾曲させて最後に残った液化材料が頂点に集まるような構造を採用した上で、この頂点に設けた排出ポートに供給チューブを接続したため、容器内の殆ど全ての液化材料を使い果たすことができる。
【0022】
(2)従来のように充填容器内にディップチューブが存在すると、ディップチューブの外面を洗浄することが難しく、リッドとディップチューブとの間の溶接箇所を洗浄することが難しい。一般に、空気や水と反応して生成された分解生成物は、洗浄が難しい。この発明の充填容器は、洗浄の難しさを減少するため、ディップチューブを持っていない。
【0023】
この発明の充填容器のように、液化材料に浸漬されるディップチューブを持たないことで、供給用チューブの外面が液化材料によって濡れることがないため、そもそも、供給用チューブの外面の洗浄が不要となる。また、リッドを貫通して溶接したディップチューブを持たないため、そもそも、溶接箇所が無く、洗浄の必要もない。
【0024】
(3)ディップチューブを持たない充填容器は、製造工程における強みでもある。なぜなら、ディップチューブの取り付けは、繊細な作業であり、熟練を要する技術でもあるため、ディップチューブの先端エッジと充填容器の底部内面との間の距離を、常に同じ距離に保つことが難しい。これに対し、本発明の充填容器は、ディップチューブの代りに外付けの供給用チューブを取り付けたため、チューブ先端と容器底面との間のギャップが無く、ギャップ管理の必要がない。
【0025】
つまり、本発明の充填容器によると、液化材料の使用後に、充填容器の底部に残留する液体の量が区々になることはなく、殆ど全ての液化材料を使い果たすことができる。このような利益は、本発明の充填容器の場合、製造した全ての充填容器に当てはめることができ、同じ仕様、同じ形に製造できる。
【0026】
(4)本発明の充填容器は、例えば、図4Aに示すように、容器の底部に接続した外付けの供給用チューブを有し、且つこの接続部の近くでチューブの基端部にバルブを有する。また、充填容器のリッドに取り付けたポート、および供給用チューブをリッドの上側まで引き伸ばした箇所に、それぞれバルブを取り付けた。このため、液化材料を充填した後、供給用チューブ内に不所望なガス成分が残留することがない。
【0027】
充填容器に液化材料を移し替える場合、まず、図4Aに示すように、供給用チューブの接続部近くにあるバルブが開かれて、上部リッドにあるポート、および供給用チューブを介して、充填容器が真空引きされる。このとき、供給用チューブも真空引きされる。そして、真空引きの後、供給用チューブの根元のバルブが閉じられて、リッドのポートに取り付けられたバルブ、および供給用チューブのリッド近くまで引き出された箇所に取り付けられたバルブが閉じられる。
【0028】
この後、図4Bに示すように、図示左側の真空引きした充填容器の上部リッドにあるポートと供給元になる図示右側の母容器との間を充填用チューブでつなぐ。この状態で、充填用チューブの根元にある母容器側のバルブと充填容器側のポートのバルブを開くと、充填容器内の負圧によって、充填用チューブを介して母容器内の液化材料が充填容器内へ流れ込む。このとき、充填容器に外付けした供給用チューブの根元のバルブが閉じられているため、充填容器の底面とバルブとの間のチューブ部分にも液化材料が充填される。また、このとき、充填用チューブ内にガス成分が残っていたとしても、このガス成分は充填容器内の上方に溜まるので問題ない。
【0029】
上記のように充填容器内に液化材料を充填した後、図4Cに示すように、充填容器の供給用チューブの根元にあるバルブを開くと、充填された液化材料が供給用チューブの全長を満たし、リッドの上方に引き回されたチューブの箇所に取り付けられたバルブまで、液化材料で満たされる。これにより、充填容器を半導体製造装置に装着して液化材料を使用に供するとき、リッド上部にある供給用チューブのバルブを開いた直後から液化材料が半導体製造装置へ流れることになり、ガス成分が流れを阻害する要因を無くすことができる。
【0030】
(5)本発明の充填容器は、ディップチューブを持たないため、リッドを貫通したディップチューブをリッドに溶接することもない。このため、リッドを開閉する際に、チューブの先端が充填容器の底部内面に接触する心配も無く、スクラッチを生じることも無い。
【発明の効果】
【0031】
この発明の充填容器は、上記のような構成および作用を有しているので、充填した液化材料を残らず使い果すことができ、容器の洗浄を容易且つ確実に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、ディップチューブを有する従来の充填容器の一例を示す図である。
【図2A】図2Aは、この発明の実施の形態に係る充填容器の基本構造を示す図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの構造に1つのバルブを追加した図である。
【図2C】図2Cは、図2Bの構造に保護ケースを追加した図である。
【図3A】図3Aは、図1の従来の充填装置を真空引きした状態を示す図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの真空引きした充填容器に液化材料を移し替える動作を説明するための図である。
【図4A】図4Aは、図2A〜図2Cの本実施の形態の充填容器を真空引きした状態を示す図である。
【図4B】図4Bは、図4Aで真空引きした充填容器に液化材料を移し替える動作を説明するための図である。
【図4C】図4Cは、図4Bで液化材料を充填した後、外付けの供給用チューブを液化材料で満たした状態を示す図である。
【図5】図5は、図2A〜図2Cの本実施の形態の充填容器の構造を説明するための概略図である。
【図6】図6は、図5の充填容器を半導体製造装置にセットした一例を示す概略図である。
【図7】図7は、図5の充填容器を半導体製造装置にセットした他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
近年、半導体デバイスの製造価格は安くなりつつあり、最終製品コストを下げるため、原料の使用効率を高めることが重要視されている。半導体デバイスの原料として、例えば、Hf(NEtMe)4;テトラキスエチルメチルアミノハフニウム、Zr(NEtMe)4;テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム、Si2Cl6;ヘキサクロロジシランなどの液化材料(液体原料)がある。この種の液化材料は、製造元で純度の高い状態で生成した後、半導体製造装置へ供給するまでの間で、充填容器に収容して輸送する必要がある。
【0034】
本発明の充填容器は、充填した液体原料を使い切ることができ、再充填のためのクリーニング効率を改良することができる。本発明の充填容器は、充填した液化材料を供給するための供給用チューブのレイアウトが従来の容器と異なる。つまり、本発明の充填容器は、従来のディップチューブの代わりに液体タンクの底に接続した供給用チューブを有する。供給用チューブは、液体タンクの外側に取り付けられる。
【0035】
以下、図5を参照して、本発明の実施の形態に係る充填容器1について詳細に説明する。充填容器1は、上述した液化材料を収容する液体タンク2、および保護ケース4(4a、4b)を有する。液体タンク2は、ステンレススチール、好ましくは、ステンレススチール316Lによって形成されており、内面が電解研磨されている。保護ケース4は、液体タンク2より一周り大きなサイズを有し、後述するリッド6の位置で上下に2分割されている。
【0036】
液体タンク2の底部内面2aは、図示のように下方に凸をなすように湾曲している。そして、底部内面2aの中央近くで最も低い頂部には、液体タンク2に充填した液化材料を使用に供すべく排出(供給)するための供給ポート3が形成されている。供給ポート3には、供給用チューブ5が接続されている。供給用チューブ5は、後述するように液体タンク2の外側にレイアウトされる。
【0037】
液体タンク2の上端には開口部2bがある。この開口部2bは、一周り径の大きいリッド6によって閉塞されて密閉される。リッド6は、複数本のネジ7によって液体タンク2の上部に締結固定される。これら複数のネジ7は、液体タンク2を洗浄する際の後述する仕上げ洗浄時に取り外される。
【0038】
リッド6には、液体タンク2内に液化材料を充填するとともに液体タンク2内に粗洗浄(後述する)のための洗浄液を注入するための液流入用のポート8、および加圧した不活性ガスを液体タンク2内に送り込むためのガス送込み用のポート9が設けられている。各ポート8、9には、流路を開閉するためのバルブ11、12が取り付けられている。
【0039】
液体タンク2の底部に接続された供給用チューブ5は、図示のように液体タンク2の外側を通ってリッド6の上方まで引き回されている。この際、リッド6の周辺部にある液体タンクより大径に張り出したフランジ部6aに形成された孔6bを通して、供給用チューブ5が配管される。これにより、供給用チューブ5を必要以上に長くすることを防止でき、コンパクトなレイアウトが可能となる。
【0040】
この供給用チューブ5は、従来のディップチューブのように液体タンク2内の液化材料に浸漬されることはない。
【0041】
液化材料の供給方向(排出方向)に沿って供給用チューブ5の下流側端部には、流路を開閉するためのバルブ13が取り付けられている。すなわち、このバルブ13は、リッド6の上方で上述した2つのバルブ11、12と並べて配置される。また、液体タンクの底部に設けた供給ポート3と当該バルブ13との間の供給用チューブ5の途中には、もう1つのバルブ14が取り付けられている。好ましくは、このバルブ14は、供給ポート3より下方で液体タンク2の底部に近接して取り付けられる。
【0042】
液体タンク2は、台座15上に据え付けられた状態で、保護ケース4内に配置される。言い換えると、保護ケース4は、液体タンク2の外側を包囲するよう取り付けられる。この保護ケース4によって、液体タンク2の外側に配管された供給用チューブ5、液体タンク2の下方に配置されたバルブ14、およびリッド6の上方に配置された3つのバルブ11〜13が保護される。
【0043】
保護ケース4は、リッド6の上方の3つのバルブ11〜13を包囲する上部ケース4a、およびリッド6の下方に配置された液体タンク2を包囲する下部ケース4bを有する。下部ケース4bの外周面には、充填容器1を持ち運ぶための2つのハンドル16、16が取り付けられている。
【0044】
上記構造の充填容器1に液化材料を充填する場合、まず、供給用チューブ5の途中に配置したバルブ14を開いて供給用チューブ5を液体タンク2に連通させ、リッド6の液流入用のポート8に取り付けたバルブ11を閉じた状態で、ポート9のバルブ12および供給用チューブ5のバルブ13を開いて図示しない真空ポンプで液体タンク2を真空引きする。これにより、液体タンク2内が真空引きされるとともに供給用チューブ5内も真空引きされる。液体タンク2および供給用チューブ5内の圧力を所望する圧力まで減圧させた後、2つのバルブ12、13を閉じる。
【0045】
この後、液体タンク2の底部近くに設けたバルブ14を閉じて液体タンク2と供給用チューブ5を遮断し、液流入用ポート8のバルブ11を介して、液化材料の供給源となる別の液体タンク(図示せず)を接続する。そして、この状態で、バルブ11を開いて液化材料を液体タンク2に充填する。このとき、バルブ14が閉じているため、液体タンク2に流入した液化材料は、始めに、供給ポート3を介してバルブ14の手前まで供給用チューブ5内に流れ込み、液体タンク2の底部から順に溜まる。
【0046】
所望する量の液化材料を液体タンク2内に充填した後、バルブ11を閉じて供給源である図示しない別の液体タンクを取り外し、バルブ14を開いて充填した液化材料を供給用チューブ5内にも送り込む。バルブ14を開く前の状態で、上述したように供給用チューブ5内も真空引きされているため、バルブ14を開くと同時にチューブ内の負圧によって液化材料がチューブ5内を満たす。理想的には、この状態で、バルブ13の位置まで液化材料で満たされる。
【0047】
以上のように液体タンク2に充填した液化材料を取り出す場合、すなわち、この充填容器1を後述する半導体製造装置にセットして液化材料を半導体製造装置に供給する場合、供給用チューブ5の下流側端部にバルブ13を介して半導体製造装置の供給ポートを接続し、ガス送込み用のポート9に取り付けたバルブを開いて加圧した不活性ガスを液体タンク2内に送り込む。そして、液体タンク2内の圧力が所望する圧力まで昇圧された後、供給用チューブ5のバルブ13を開いて液化材料を半導体製造装置へ供給する。
【0048】
本実施の形態の充填装置1では、上述したように、液化材料を液体タンク2内に充填するときガス成分が供給用チューブ5内に残ることがないため、液化材料を半導体製造装置へ供給する際に、ガス成分が半導体製造装置へ送り込まれる不具合を生じることがない。
【0049】
上述したように液化材料を充填して供給する本実施の形態の充填容器1は、内部を洗浄して複数回繰り返して使用される。充填容器1の洗浄は、液体タンク2内を大まかに洗浄する粗洗浄、およびリッド6を取り外して念入りに洗浄する仕上げ洗浄の2工程に分けられる。本実施の形態の充填容器1に収容する液化材料は、上述したように純度の極めて高い状態を維持する必要があるため、充填容器1を再使用に供する場合には、液体タンク2の内面やリッド6の内面など液化材料が触れる面を十分に洗浄する必要がある。
【0050】
粗洗浄の工程では容器の中に極僅かに残っている液化材料をパージするために、容器内に空気を入れないように加圧した不活性ガスをバルブ12より導入し、バルブ14を介してバルブ13より排出させる。その後で、容器内に空気を巻き込まないようにバルブ11を開いて液流入用のポート8から液体タンク2内へ洗浄液を注入する。洗浄液の注入後、バルブ11を閉じる。洗浄液としては、液化材料に対して反応性の極めて低い溶媒が選択される。一定量の洗浄液を液体タンク2内に注入した後、充填容器1を複数回回転させ、液体タンク2やリッド6の内面に付着している液化材料の残留液を洗浄液で洗い流す。この後、加圧した不活性ガスをバルブ12より導入して、バルブ14を介してバルブ13から洗浄液が排出され、廃棄処分される。この洗浄液の導入と排出を複数回繰り返し、容器内の液化材料を除去する。
【0051】
仕上げ洗浄の工程では、上述した粗洗浄によって液体タンク2の内面に付着した液化材料は概ね取り除かれているため、作業員の手作業によって液体タンク2の内壁を拭くこともでき、液体タンク2の内面などを十分念入りに洗浄することができる。しかし、上述した粗洗浄の工程は、高濃度の液化材料が液体タンク2の内壁に付着しているため、リッド6を開けて内部を拭くような洗浄方法を採用することができない。このため、粗洗浄では、上述したような洗浄液を用いた洗浄方法を採用した。
【0052】
本発明の充填容器1は、従来のようにディップチューブを持たないため、上述した洗浄工程によって、容器内に残留した液化材料を効果的且つ十分に洗浄できる。また、本発明の充填容器1によると、リッド6に固設したディップチューブを持たないため、仕上げ洗浄の工程でリッド6を開ける際に、ディップチューブの先端が液体タンク2の底面に接触する心配も無い。
【0053】
ところで、上述したように液化材料を充填した状態の充填容器1は、例えば、図6に一例を示すように半導体製造装置20の供給装置25にセットされる。このレイアウトは、半導体製造装置20に充填容器1を直接セットしたものである。この状態で、充填容器1内の液化材料は、バルブ13まで供給用チューブ5を満たしているものとする。
【0054】
充填容器1を図示のようにセットして、充填した液化材料を半導体製造装置20へ供給する場合、まず、バルブ12を開いてガス供給管21を介して加圧した不活性ガスを液体タンク2内へ送り込む。そして、液体タンク2内が所望する圧力まで昇圧された後、バルブ13、14を開いて液供給管22を介して液化材料を半導体製造装置20へ送り込む。
【0055】
半導体製造装置20では、送り込まれた液化材料を気化器24によって気化し、気化したガス材料を処理チャンバ26へ供給する。処理チャンバ26では、このガス材料を原料として用いて半導体デバイスを製造する。なお、充填容器1の交換時期は、供給装置25内で充填容器1を載置したロードセル28を介して液化材料の残量を検出することで、半導体製造装置20側で判断する。
【0056】
また、本実施の形態の充填容器1は、図7に他の一例を示すように半導体製造装置30の供給装置35にセットされても良い。このレイアウトは、供給装置35内に予め用意した供給容器31に液化材料を補充するため充填容器1をセットするようにしたものである。この場合においても、充填容器1を供給装置35にセットしたときにはバルブ13まで液化材料が供給用チューブ5を満たしているものとする。また、供給容器31は、充填容器1と同じ構造(ここでは同一符号を付す)のものを取り付けた。
【0057】
供給容器31から半導体製造装置30への液化材料の供給、および半導体製造装置30における処理は、図6で説明した一例と同じであるため、ここではその説明を省略する。供給容器31内の液化材料の残量が一定レベルを超えて少なくなると、充填容器1から供給容器31へ液化材料が補充される。供給容器31内の液化材料の残量は、ロードセル28を介して検出する。
【0058】
充填容器1から供給容器31へ液化材料を補充する場合、まず、充填容器1のバルブ12を開いてガス供給管21を介して加圧した不活性ガスを液体タンク2内へ送り込む。そして、液体タンク2内が所望する圧力まで昇圧された後、バルブ13、14を開いて液供給管22を介して液化材料を供給容器31へ送り込む。供給装置31は、液流入用のポート8に取り付けたバルブ11を開いて液化材料の補充を受ける。なお、充填容器1の交換時期は、充填容器1を載置したロードセル28を介して液化材料の残量を検出することで、半導体製造装置30側で判断する。
【0059】
図7の例では、図6の例とは異なり、半導体製造装置30を停止させることなく、運転を継続することができ、半導体製造装置30の稼働率を向上させることができる。
【0060】
本願発明者等は、以下に説明するいくらかの実験の結果、本発明の充填容器の上述したような新規な構造に基づく顕著な効果を確認した。
【0061】
[本実施の形態の充填容器と従来の充填容器との残留量の比較]
テストサンプルとして、異なる3社が製造した3つの充填容器を用意した。これら3つ全ての充填容器は、液体タンク内にディップチューブを有する上述した従来タイプのものであるが、それぞれ異なる容量(2.5〜3リッター)を有する。そして、この発明の充填容器は、市場で入手可能な部品で製造した。
【0062】
テストは、各充填容器に試験水を充填した後、加圧ガスを送り込んで試験水を排出し、充填容器内に残留した試験水の残量を比較することで実施した。その結果を表1に示す。この発明の充填容器をテストした際の試験水の残量は、非常に効果的なパフォーマンスを示した。つまり、この発明の充填容器が、液化材料の排出において、他の容器と比較して、最も良い結果をもたらした。本願発明者等は、このような結果を、下記の表1に示すように、表面張力や粘度の異なる複数種類の液体についても確認した。
【表1】
【0063】
この結果、全ての液体について、本発明の充填容器が排出後の残量が最も少なく、良好な結果であったことを確認できた。
【0064】
[従来の充填容器の洗浄困難性]
ディップチューブを有する従来のテストサンプルについて、使用後の充填容器の内面をチェックした。充填する液化材料の種類や充填容器の使用回数は種々の場合についてテストした。なお、テストは、充填容器を通常通り洗浄した後、ボアスコープやファイバースコープを用いた顕微鏡観測によって、ディップチューブの表面上の残留固体物質や侵食スポットを調べた。
【0065】
この結果、ディップチューブの外面を洗浄することは、他の部位を洗浄するより難しいことが分かった。つまり、本願発明の充填容器は、ディップチューブを持たないため、従来のディップチューブを有する充填容器より簡単に洗浄できることになる。さらに、本願発明の充填容器は、容器を種々に傾斜させて回転させることで、僅かな溶媒の使用だけで洗浄できる。つまり、この発明の方法によると、洗浄溶媒も効果的に減少することができる。
【0066】
[ディップチューブを有する充填容器を同じ仕様で同じデザインに保つことの困難性]
表1に示すように、液体を排出した後の残留液の量は、似通った容積の充填容器であっても、種々の値を示しているのが分かる。これは、充填容器の製造の困難性から引き起こされており、特にディップチューブのエッジと充填容器の底部内面との間の可能な限り小さい離間距離に起因する。本発明では、製造工程にて、充填容器の底部にある供給ポートに供給用チューブを接続でき、両者の間に接続誤差は無い。
【0067】
[供給用チューブとバルブに残留ガスが残らない]
本願発明の充填容器は、半導体製造装置に液化材料を供給するための供給用チューブ内に気泡が残ることが無い。例えば、液化材料をこの発明の充填容器へ充填するとき、始めに充填容器を供給用チューブとともに真空引きし、充填容器の底部近くで供給用チューブの途中にあるバルブを閉じる。そして、この状態で、充填容器内に液化材料を充填し、上述したバルブを開く。これにより、液化材料の充填後、供給用チューブ内にガス成分が残ることを防止できる。その結果、充填が終了した後、液化材料を供給用チューブを介して供給するとき、液流が不安定になることが無い。
【0068】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0069】
例えば、上述した実施の形態では、充填容器1内に残留した液化材料の残留量を検出するため、ロードセル28を用いた場合について説明したが、これに限らず、リッド6に設けたポート8を介して挿入される液面センサを用いて充填容器1内の液化材料の液面の高さを検出することで残量を検出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1…充填容器、2…液体タンク、3…供給ポート、4…保護ケース、5…供給用チューブ、6…リッド、8…液流入用のポート、9…ガス送込み用のポート、11、12、13、14…バルブ、20、30…半導体装置、25、35…供給装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に少なくとも1つのポートを有し、底部に少なくとも1つのポートを有し、高純度液化材料を収容して半導体産業に供給する容器。
【請求項2】
上記少なくとも2つのポートには、それぞれバルブが取り付けられている請求項1に記載の容器。
【請求項3】
上記底部の内面は1つの頂点に向けて下方に傾斜した形状を有し、上記底部のポートは上記頂点に接続されている請求項1に記載の容器。
【請求項4】
上記底部のポートは、当該容器の外側を通った配管を介して当該容器の上部まで伸びており、上記上部のポートに取り付けたバルブと同じ高さ位置で上記底部から伸びたポートにバルブを設け、これら2つのバルブを介して半導体製造装置の液体供給システムに接続される請求項1に記載の容器。
【請求項5】
上記底部のポートの下方に1つのバルブを有する請求項1に記載の容器。
【請求項6】
上記上部に締結固定されたリッドを有する請求項1に記載の容器。
【請求項7】
上記底部のポートに接続した配管を上記リッドのフランジに形成した孔に挿通せしめた請求項6に記載の容器。
【請求項8】
液化材料の充填、容器の洗浄、および/或いは、液面センサの挿入のための1つ或いはそれ以上のポートをさらに有する請求項1に記載の容器。
【請求項9】
上記底部のポート、およびこのポートから伸びた配管を保護するための保護カバーを有する請求項1に記載の容器。
【請求項10】
当該容器を固定するための台座を有する請求項1に記載の容器。
【請求項11】
ステンレススチール、好ましくはステンレススチール316Lによって形成され、より好ましくは、内面が電解研磨されている請求項1に記載の容器。
【請求項12】
上記上部のポートから加圧したガスを送り込み、上記底部のポートから液化材料を供給する請求項1に記載の容器。
【請求項13】
当該容器を持ち運ぶためのハンドルを有する請求項1に記載の容器。
【請求項14】
最も低い頂部に向けて下方に傾斜した凹面を有する底部を有し、液化材料を充填するための液体タンクと、
上記底部を貫通して上記頂部に設けられた供給ポートと、
この供給ポートに接続されて上記液体タンクの外側にレイアウトされる供給用チューブと、
上記底部の下方で上記供給ポートに近接して上記供給用チューブの途中に取り付けられたバルブと、
上記液体タンクの上部から加圧ガスを送り込むためのガス送込み用のポートと、
を有することを特徴とする容器。
【請求項1】
上部に少なくとも1つのポートを有し、底部に少なくとも1つのポートを有し、高純度液化材料を収容して半導体産業に供給する容器。
【請求項2】
上記少なくとも2つのポートには、それぞれバルブが取り付けられている請求項1に記載の容器。
【請求項3】
上記底部の内面は1つの頂点に向けて下方に傾斜した形状を有し、上記底部のポートは上記頂点に接続されている請求項1に記載の容器。
【請求項4】
上記底部のポートは、当該容器の外側を通った配管を介して当該容器の上部まで伸びており、上記上部のポートに取り付けたバルブと同じ高さ位置で上記底部から伸びたポートにバルブを設け、これら2つのバルブを介して半導体製造装置の液体供給システムに接続される請求項1に記載の容器。
【請求項5】
上記底部のポートの下方に1つのバルブを有する請求項1に記載の容器。
【請求項6】
上記上部に締結固定されたリッドを有する請求項1に記載の容器。
【請求項7】
上記底部のポートに接続した配管を上記リッドのフランジに形成した孔に挿通せしめた請求項6に記載の容器。
【請求項8】
液化材料の充填、容器の洗浄、および/或いは、液面センサの挿入のための1つ或いはそれ以上のポートをさらに有する請求項1に記載の容器。
【請求項9】
上記底部のポート、およびこのポートから伸びた配管を保護するための保護カバーを有する請求項1に記載の容器。
【請求項10】
当該容器を固定するための台座を有する請求項1に記載の容器。
【請求項11】
ステンレススチール、好ましくはステンレススチール316Lによって形成され、より好ましくは、内面が電解研磨されている請求項1に記載の容器。
【請求項12】
上記上部のポートから加圧したガスを送り込み、上記底部のポートから液化材料を供給する請求項1に記載の容器。
【請求項13】
当該容器を持ち運ぶためのハンドルを有する請求項1に記載の容器。
【請求項14】
最も低い頂部に向けて下方に傾斜した凹面を有する底部を有し、液化材料を充填するための液体タンクと、
上記底部を貫通して上記頂部に設けられた供給ポートと、
この供給ポートに接続されて上記液体タンクの外側にレイアウトされる供給用チューブと、
上記底部の下方で上記供給ポートに近接して上記供給用チューブの途中に取り付けられたバルブと、
上記液体タンクの上部から加圧ガスを送り込むためのガス送込み用のポートと、
を有することを特徴とする容器。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−263009(P2009−263009A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106667(P2009−106667)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】
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