説明

半導体用の放熱器

【課題】 放熱器の部品点数の増大を抑えつつ、放熱器の取り付けによってかかる基板へのストレスを緩和する。
【解決手段】 放熱器1が、基板上に取り付けられた半導体の発する熱を外部に放出する本体2と、本体に固定された弾性を有する金属製の板部材3とを備え、板部材3は、本体2の上面の一部を覆う四角形の天板部31と、天板部31の縁から天板部31と一体に形成され、かつ基板に固定される4つの脚部(32a〜d)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用の放熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、デジタル家電、ナビゲーション装置等に代表される電子機器は、付加価値の向上や高性能化のため、従来に増して処理の高速化に対する要求が高まっている。そのため、電子機器に搭載されるICチップ等の半導体は、その発熱量が増大の一途を辿っている。特に、車両に搭載される電子機器は、高温環境下での安定した動作を要求される。そのため、半導体の放熱技術は年々その重要性を増してきている。
【0003】
このような技術の中で、特に発熱量の大きい半導体の放熱のために広く用いられる手法として、ファンや放熱フィンを有する放熱器を用いる手法がある。放熱器を用いる手法では、効率のよい放熱を行うために、半導体が実装される基板と放熱器とをしっかりと固定する必要がある。
【0004】
しかしながら、放熱器を基板にネジ等で固定したときに、基板上に設けられたその取り付け位置の配置と放熱器に設けられたその取り付け位置の配置との間の位置ずれのため、基板に大きなストレスがかかり、そのストレスによって基板が撓み、半導体を基板に取り付けるために用いられた半田がクラックしてしまう場合があった。
【0005】
このような、放熱器の取り付けによってかかる基板へのストレスを、緩和するための技術として、放熱器と基板との接合部にバネを用い、このバネの変形によって上記ストレスを軽減することが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような技術を実現するには、バネという独立した部品が必要になり、放熱器の部品点数が増大してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、放熱器の部品点数の増大を抑えつつ、放熱器の取り付けによってかかる基板へのストレスを緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の特徴は、基板(10)上に取り付けられた半導体(11)の発する熱を外部に放出する本体(2)と、その本体に固定された弾性を有する板部材(3)とを備えた放熱器において、その板部材は、当該本体の上面の一部を覆う天板部(31)を有し、さらに、当該天板部の縁において前記天板部と一体に形成されると共に当該基板に固定される脚部(32a〜d)を有することである。
【0009】
このように、放熱器の本体の上面を覆う天板部、および天板部の縁から出て基板に固定される脚部が弾性を有しているので、放熱器の取り付けによってかかる基板へのストレスを緩和することができる。また、これら天板部と脚部とが一体になっていることで、放熱器の部品点数の増大を抑えることができる。
【0010】
なお、ここでいう弾性とは、脚部の基板への取り付け時、脚部の配置と基板上の取り付け位置とがずれていた場合に、基板が大きく変形することなく板部材が撓む程度の弾性をいう。
【0011】
また、天板部は、前記板部材の縁における、脚部の天板部への付け根部分(51、52)に切れ込み(61、62)を有していてもよい。このような切れ込みがあることで、板部材はより柔軟に撓むことができるようになる。
【0012】
また、脚部は、天板部との境目(53)において天板部に対して折れ曲がっていてもよい。このようになっていることで、この放熱器の製造工程において、天板部に本体を組み付けるときに、天板部に対して折れ曲がっている脚部がガイドの役割を果たすことにより、本体の天板部に対する位置決めが容易となる。
【0013】
また、この折れ曲がり角は、直角であってもよい。このようになっていることで、板部材が覆う基板の面積が少なくなり、基板面への他の装置の実装の自由度が高まる。
【0014】
また、脚部は、天板部の板面に水平な方向に細長い第1板部(54)を有していてもよい、このようになっていることで、板部材は基板面に対して直角を成す軸のまわりのねじれストレスまたは上下方向のストレスの少なくとも一方に対してより柔軟に撓むことができるようになっている。
【0015】
また、この第1板部は、その板面が前記天板部の板面に対して直角を成していてもよい。このようになっていることで、板部材は基板面に対して直角を成す軸のまわりのねじれストレスに対してより柔軟に撓むことができるようになる。また、第1板部が覆う基板の面積が少なくなり、基板面への他の装置の実装の自由度が高まる。
【0016】
また、この第1板部は、その板面が前記天板部の板面に対して水平であってもよい。このようになっていることで、板部材は基板上下方向のストレスに対してより柔軟に撓むことができるようになる。
【0017】
また、この第1板部は、前記本体の側面に近接して対面していてもよい。このようになっていることで放熱器1全体の形状がよりコンパクトになる。
【0018】
また、脚部は4つあり、それら脚部が基板に固定される4つの部位(57)は正方形を成すと共に本体の中心から等距離にあるようになっていてもよい。このようになっていることで、放熱器の基板に対する取り付けの向きの自由度が4となる。
【0019】
また、弾性を有する板部材としては、リン青銅、ベリリウム銅、およびSUS材のいずれか1つを主成分とするものが考えられる。
【0020】
また、本発明の特徴は、寄り具体的には、基板(10)上に取り付けられた半導体(11)の発する熱を外部に放出する本体(2)と、前記本体に固定された弾性を有する金属製の板部材(3)とを備えた放熱器であって、前記板部材は、前記本体の上面の一部を覆う四角形の天板部(31)と、前記天板部の縁において前記天板部と一体に形成されると共に前記基板に固定される4つの脚部(32a〜d)と、を有し、前記天板部は、前記板部材の縁における、前記脚部の前記天板部への両方の付け根部分(51、52)に、当該天板部の縁に対して直角を成す切れ込み(61、62)を有し、前記脚部のそれぞれは、前記天板部との境目において前記天板部に対して直角に折れ曲がっており、前記天板部との境目に繋がる第1板部(54)、前記第1板部の端部に繋がる第2板部(55)、および前記第2板部の端部に繋がる第3板部(56)を有し、前記第1板部は、前記天板部の板面に対して水平な方向に細長く、前記天板部の板面に対して直角を成し、かつ前記本体の側面に近接して対面し、その上下幅が前記本体の厚みと同じであり、前記第2板部は、その板面の向きを前記第1の板部の板面の向きと同一に保ちながら鉛直な方向に続き、前記第3板部は、前記第2板部に対して直角にかつ前記基板に対して水平になるように折り曲げられていると共に前記基板に固定される部位(57)を有し、前記4つの脚部は、前記基板に固定される4つの部位(57)が正方形を成すと共に前記本体の中心から等距離にあることを特徴とする放熱器としても捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る放熱器1の斜視図を示す。この放熱器1は、車載用の電子機器に組み込まれたICチップ等の半導体の上部に覆い被さるように取り付けられ、その半導体の発する熱を効率的に放出するための装置である。図1に示す通り、放熱器1は、上から見て数センチ四方のほぼ正方形となる直方体状の本体2と、本体2の上面および側面を囲むように本体2に取り付けられている板部材3とから成る。
【0022】
また、本体2は、図示しないモータの駆動力によって回転するファン21、および、ファン21の側面を取り囲み、ファン21を下から支持するケーシング22を有している。また、ケーシング22の外周側面の一辺には、ファン21が回転することによってファン21上方から流入する空気を横に逃がすための吹出口22aが設けられている。
【0023】
板部材3は、天板部31と4つの脚部32a〜dとから成る。天板部31は、板部材3のうち、ケーシング22の上面を覆う部分である。この天板部31の内縁はファン21の外周と一致する円形状を有し、その外縁はケーシング22の外周と一致する正方形形状を有している。そしてこの天板部31は、穴形成部33a〜dにおいて、ケーシング22とかしめ結合されることで、本体2に固定されている。
【0024】
この天板部31と一体成型となっている脚部32a〜dは、それぞれ天板部31の異なる縁に繋がっている。天板部31と脚部32a〜dとが繋がる4つの位置は、天板部31の外縁の正方形のうち、対向する2辺にそれぞれ2個ずつ分布している。そしてこれら2辺は、吹出口22aのある側の辺とは異なる辺となっている。
【0025】
図2に、基板10に半田づけで実装されたICチップ11上にこの放熱器1が取り付けられた状態における、図1の矢印方向から見た側面図を示す。なお、この図においては、吹出口22a内の形状の記載は省略している。脚部32a〜dの先端部のそれぞれが、基板に開けられたネジ穴の位置に、ネジ14でネジ止め固定されることにより、放熱器1のケーシング22の底面が、放熱グリス(または放熱シート)13を介してICチップ11と接する。このねじ止め固定の際、脚部32a〜dのネジ止め部分の配置と、基板10上のネジ穴の配置にずれがあると、板部材3または基板10のどちらかが変形してしまう。もし基板10の変形が大きければ、ICチップ11を基板10に固定する半田12a〜fがクラックしてしまう恐れが高くなる。そこで、本実施形態の板部材3は、一般的な基板よりも剛性の低い弾性部材、具体的には、リン青銅、ベリリウム銅、およびSUS材のいずれかを主成分とする金属板となっている。
【0026】
ここで、天板部31の縁から続く脚部32a〜dについて詳細に説明する。図3に、天板部31および脚部32bの拡大図を示す。脚部32bは、(A)天板部31との境目53において天板部31に対して直角下方向に折れ曲がると共にその折れ曲がり部分から水平に続く第1板部54、(B)第1板部54の天板部31の角付近側の端部に繋がると共に天板部31の板面に対して直角に続く第2板部55、および(3)第2板部55の下端において第2板部55と繋がる第3板部56と有している。
【0027】
第1板部54は、境界部53から始まり、天板部31の最も近い角の方向に向かって続いている。この第1板部54は、天板部31の板面に対して水平な方向に細長くなっており、その上下幅はケーシング22の厚みとほぼ同じとなっている。また第1板部54の板面は、天板部31の板面に対して直角を成し、かつケーシング22の側面に接触またはごく近接して対面している。
【0028】
また、第1板部54が天板部31の角を過ぎた位置において、この第1板部54の端部に繋がる第2板部55は、その板面の向きを第1板部54第1の板部の板面の向きと同一に保ちながら、鉛直な方向に曲がり、基板10に接する位置まで続いている。
【0029】
また、第2板部55の下端において第2板部55と繋がる第3板部56は、第2板部55に対して天板部31から離れる方向に直角に折れ曲がっている。このようになっていることで、第3板部56は、基板10に対して水平になる。また第3板部56は、その中央部にバーリング57を有している。このバーリング57と基板10のネジ穴を一致させ、それらにネジを通すことで、放熱器1の基板10への組み付けが実現する。
【0030】
なお、天板部31は、天板部31と脚部32bとの境目の折れ曲がり部分の両端、すなわち脚部32bの付け根部に相当する2点51、52から切れ込むスリット61、62を有している。そしてこのスリットの切れ込み方向は、天板部31の脚部32aおよび脚部32bが繋がる辺に対して直角な方向となっている。
【0031】
以上、脚部32bの構造について説明したが、脚部32a、c、dも同様の構造を有している。より詳細には、脚部32dは、脚部32bと同一の構造を有し、脚部32a、cは、脚部32bに対して鏡像対称となる構造を有している。また、各脚部32a〜dの付け根部、すなわち天板部31と脚部脚部32a〜dとの境目の折れ曲がり部分の両端には、それぞれ天板部31の当該脚部脚部が繋がる辺に対して直角な方向へ切れ込むスリットが設けられている。
【0032】
なお、4つの脚部32a〜dの4つのバーリング57は、本体2のファン21の中心から等距離にあり、かつ正方形を成すようになっている。このようになっていることで、放熱器1の基板10に対する取り付けの向きを、天板部31に直角な軸の回りに90度、180度、および270度回転させても、バーリング57と基板10のネジ穴が一致するようになる。すなわち、放熱器1の基板10に対する取り付けの向きの自由度が4となる。
【0033】
このように、弾性のある部材からなる天板部31から一体形成された脚部32a〜dと基板10とを固定することにより、4つのバーリング57の配置と基板10上の4つのネジ穴の配置との間にずれがあったとしても、天板部31および脚部32a〜dが撓むことによってそのずれを吸収するので、基板10の変形が従来よりも低減する。
【0034】
また、上述のようなスリット61、スリット62の存在により、板部材3はより柔軟に撓むことができるようになる。例えば、脚部32aのバーリング57と脚部32bのバーリング57との間隔よりも、それらに対応するネジ穴の間隔の方が小さいとき、スリット61とスリット62に挟まれた部分が捻れることにより、その間隔のずれが吸収される。
また例えば、基板10のネジ穴の位置の高さがすべて同じで、脚部32bのバーリング57の位置の高さが、脚部32a、c、dのバーリング57の位置の高さよりも低い場合、脚部32bの付け根にあるスリット61およびスリット62に挟まれた部分が上方に反ることで、その高さのずれが吸収される。
【0035】
また、脚部32a〜dの第1板部54が、天板部31の板面に水平な方向に細長くなっており、かつその板面が天板部31の板面に対して直角を成しているので、板部材3は基板面に対して直角を成す軸のまわりのねじれストレスに対してより柔軟に撓むことができるようになる。例えば、例えば、脚部32bのバーリング57と脚部32cのバーリング57との間隔よりも、それらに対応するネジ穴の間隔の方が大きいとき、脚部32bおよび脚部32cの第1板部54が、放熱器1の外側に開くように反ることで、このずれを吸収する。
【0036】
また、脚部32a〜dが、天板部との境目(53)において天板部に対して直角に折れ曲がり、第1板部54および第2板部55の板面が天板部31の板面に対して直角を成し、第1板部54が本体2の側面に近接して対面しているので、脚部32が覆う基板10の面積が少なくなると共に放熱器1全体の形状がコンパクトとなるので、基板面への他の装置の実装の自由度が高まる。
【0037】
また、脚部32a〜dが、天板部との境目53において天板部に対して直角に折れ曲がっていることで、この放熱器1の製造工程において、天板部31に本体2を組み付けるときに、天板部31に対して折れ曲がっている脚部32a〜dがガイドの役割を果たすことにより、本体2の天板部31に対する位置決めが容易となる。
【0038】
また、板部材3の製造段階において、脚部32a〜dのそれぞれは、天板部31と第1板部54との間の折り曲げ、および第2板部55と第3板部56との間の折り曲げの2回のみ折り曲げればよいだけなので、板部材3の製造工程が簡素化される。
【0039】
図4は、このように多方向への可撓性を有する放熱器1を基板10に取り付けたときの、ICチップ11下部の半田12a〜fのひずみの様子を、従来のアルミダイキャスト製の放熱器を基板10に取り付けた場合と対比するグラフである。横軸は放熱グリス13の圧縮量、すなわち、放熱器1をICチップ11に押しつける強さを示し、縦軸は、ICチップ11の角の部分における半田の歪み割合(すなわち半田の基板10からの乖離割合)を示す。点100、101、102が従来の放熱器を用いた場合の値を示し、点100、103が本実施形態の放熱器1を用いた場合の値である。このように、本実施形態の放熱器1の半田ひずみ割合(0.4%)は、従来の放熱器を用いた場合に比べて遙かに小さい。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図5に、本実施形態に係る放熱器1’の斜視図を示す。以下、この放熱器1’が第1実施形態の放熱器1と異なる点について説明する。本実施形態の放熱器1’は、第1実施形態と同様の本体2の上面および側面を囲むように本体2に取り付けられている、第1実施形態と同一の材質の板部材4とから成る。また板部材4は、本体2の上面を覆い、内縁が円形で外縁が正方形の天板部41を有し、さらに、この天板部41の外縁に繋がった、天板部41と一体成型の脚部42a〜dを有する。以下、本実施形態の板部材4が第1実施形態の板部材3と異なる点について説明する。
【0041】
まず、脚部42a〜dは、それぞれ天板部41の外縁の四角形の各辺の端部に繋がっている。この脚部42a〜dは、天板部41との境目73から、天板部41と面の向きを同一に保ちながら水平に続いている。図6に、脚部42aの拡大図を示す。脚部42aは、境界部73において天板部31と繋がる第1板部74、第1板部74と繋がって上下に続く第2板部75、および第2板部75の下端において第2板部55と繋がる第3板部76とを有している。
【0042】
第1板部74は、天板部31の板面に対して水平な方向に細長くなっており、その細い方の幅は本体2のケーシング22の厚みとほぼ同じとなっている。また第1板部74の板面は、天板部31の板面に対して水平となっており、ケーシング22の側面に接触またはごく近接している。また、この第1板部74は、天板部41の四角形の一辺の、天板部41と繋がっている側の反対側の端部まで続いている。
【0043】
この端部において、第2板部75が第1板部74に繋がり、この第1板部74と第2板部75との境界部分において、第2板部75は第1板部74に対して直角に折れ曲がり、そのまま基板と当たる位置まで鉛直に下がっている。
【0044】
また、第2板部75の下端において第2板部75と繋がる第3板部76は、第2板部75に対して天板部41から離れる方向に直角に折れ曲がっている。このようになっていることで、第3板部76は、基板10に対して水平になる。また第3板部76は、その中央部にバーリング77を有している。
【0045】
以上、脚部42aの構造について説明したが、脚部42b、c、dも同じ構造を有している。
【0046】
このように、弾性のある部材からなる天板部41から一体形成された脚部42a〜dと基板10とを固定することにより、4つのバーリング77の配置と基板10上の4つのネジ穴の配置との間にずれがあったとしても、天板部41および脚部42a〜dが撓むことによってそのずれを吸収するので、基板の変形が従来よりも低減する。
【0047】
また、脚部42a〜dの第1板部74が、天板部41の板面に水平な方向に細長くなっているので、板部材4は基板面に対して直角を成す軸のまわりのねじれストレスに対してより柔軟に撓むことができるようになる。例えば、脚部42aのバーリング77と脚部42bのバーリング77との間隔よりも、それらに対応するネジ穴の間隔の方が大きいとき、脚部42aの第1板部74が本体2の外側に開くことで、このずれを吸収する。
【0048】
また、脚部42a〜dの第1板部74が、天板部31の板面に水平な方向に細長くなっており、かつその板面の向きが天板部41と同一になっているので、板部材4は上下により柔軟に撓むことができるようになっている。例えば、基板10のネジ穴の位置の高さがすべて同じで、脚部42aのバーリング77の位置の高さが、脚部42b、c、dのバーリング77の位置の高さよりも低い場合、脚部42aの第1板部74が上方に反ることで、その高さのずれが吸収される。
【0049】
(他の実施形態)
なお、上記の実施形態においては、ファン21によって本体2は上方から空気を吸入して横に吹き出すことで、ケーシング22の底面に放熱グリス13を介して接しているICチップ11の熱を放出するようになっている。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよく、図7に側面図で示す本体8のように、ケーシング82に囲まれたファン81によって本体2の上方から空気を吸入し、その吸入した空気を直接ICチップ11に当てることで、ICチップ11を冷却するようになっていてもよい。また図8に側面図で示す本体9のように、ケーシング92に囲まれた放熱フィン91が、放熱グリス13を介して接しているICチップ11の熱を上方に逃がすようになっていてもよい。
【0050】
また、本体2の材質としては、上記の実施形態のような材質に限らず、他の金属、樹脂(例えばアクリル板)等、通常の基板よりも剛性の低いような材質であれば、どのようなものでもよい。
【0051】
また、この放熱器1、放熱器1’が用いられる対象の半導体は、車載用のものに限らず、例えば家庭内の電化製品、情報機器、または携帯機器の半導体に用いられてもよい。
【0052】
また、脚部は、第1、第2実施形態のような形状を必ずしも有しておらずともよい。脚部が天板に一体成型で繋がっており、この脚部と天板とが弾性のある材質でありさえすれば、基板の変形ストレスを低減するという効果は発揮される。
【0053】
例えば、第1実施形態において、脚部42a〜dは、天板部31と繋がっている部分から、天板部31の辺に沿って、天板部31の角のうち最も近い角の方に続いているが、天板部31の辺に沿って反対方向に続くようになっていてもよい。
【0054】
また例えば、第1実施形態における天板部31と第1板部54との間の折れ曲がりおよび第2板部55と第3板部56との間の折れ曲がりは、必ずしも直角である必要はない。また、第1板部54は必ずしも水平方向に細長くなっている必要はなく、水平に対して傾く方向に細長くなっていてもよい。また、第2板部55は、必ずしも鉛直に続いている必要はなく、鉛直方向に対して斜めに続いていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放熱器1の斜視図である。
【図2】放熱器1の側面図である。
【図3】脚部32bの拡大図である。
【図4】放熱器1を基板10に取り付けた場合の半田ひずみと、従来の放熱器を基板に取り付けた場合の半田ひずみとを比較するグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る放熱器1’の形状を示す図である。
【図6】放熱器1’の脚部42aの拡大図である。
【図7】他の例の放熱器を示す図である。
【図8】他の例の放熱器を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1、1’…放熱器、2、8、9…本体、3…板部材、4…板部材、10…基板、
11…ICチップ、12a〜f…半田、13…放熱グリス、14…ネジ、
21…ファン、22…ケーシング、22a…吹出口22a、31…天板部、
32a〜d…脚部、33a〜d…穴形成部、41…天板部、42a〜d…脚部、
51、52…付け根部、53…境界部、54…第1板部、55…第2板部、
56…第3板部、57…バーリング、61、62…スリット、71、72…付け根部、
73…境界部、74…第1板部、75…第2板部、76…第3板部、
77…バーリング、81…ファン、82、93…ケーシング、91…放熱フィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)上に取り付けられた半導体(11)の発する熱を外部に放出する本体(2)と、前記本体に固定された弾性を有する板部材(3)とを備えた放熱器であって、
前記板部材は、前記本体の上面の一部を覆う天板部(31)と、
前記天板部の縁において前記天板部と一体に形成されると共に前記基板に固定される脚部(32a〜d)と、を有することを特徴とする放熱器。
【請求項2】
前記天板部は、前記板部材の縁における、前記脚部の前記天板部への付け根部分(51、52)に切れ込み(61、62)を有していることを特徴とする請求項1に記載の放熱器。
【請求項3】
前記脚部は、前記天板部との境目(53)において前記天板部に対して折れ曲がっていることを特徴とする請求項1または2に記載の放熱器。
【請求項4】
前記脚部は、前記天板部との境目(53)において前記天板部に対して直角に折れ曲がっていることを特徴とする請求項3に記載の放熱器
【請求項5】
前記脚部は、天板部の板面に水平な方向に細長い第1板部(54)を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の放熱器。
【請求項6】
前記第1板部は、その板面が前記天板部の板面に対して直角を成すことを特徴とする請求項5に記載の放熱器。
【請求項7】
前記第1板部は、その板面が前記天板部の板面に対して水平であることを特徴とする請求項5に記載の放熱器。
【請求項8】
前記第1板部は、前記本体の側面に近接して対面していること特徴とする請求項5または6のいずれか1つに記載の放熱器。
【請求項9】
前記脚部は4つあり、それら脚部が前記基板に固定される4つの部位(57)は正方形を成すと共に前記本体の中心から等距離にあることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の放熱器。
【請求項10】
前記板部材は、リン青銅、ベリリウム銅、およびSUS材のいずれか1つを主成分とすることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の放熱器。
【請求項11】
基板(10)上に取り付けられた半導体(11)の発する熱を外部に放出する本体(2)と、前記本体に固定された弾性を有する金属製の板部材(3)とを備えた放熱器であって、
前記板部材は、前記本体の上面の一部を覆う四角形の天板部(31)と、前記天板部の縁において前記天板部と一体に形成されると共に前記基板に固定される4つの脚部(32a〜d)と、を有し、
前記天板部は、前記板部材の縁における、前記脚部の前記天板部への両方の付け根部分(51、52)に、当該天板部の縁に対して直角を成す切れ込み(61、62)を有し、
前記脚部のそれぞれは、前記天板部との境目において前記天板部に対して直角に折れ曲がっており、前記天板部との境目に繋がる第1板部(54)、前記第1板部の端部に繋がる第2板部(55)、および前記第2板部の端部に繋がる第3板部(56)を有し、
前記第1板部は、前記天板部の板面に対して水平な方向に細長く、前記天板部の板面に対して直角を成し、かつ前記本体の側面に近接して対面し、その上下幅が前記本体の厚みと同じであり、
前記第2板部は、その板面の向きを前記第1の板部の板面の向きと同一に保ちながら鉛直な方向に続き、
前記第3板部は、前記第2板部に対して直角にかつ前記基板に対して水平になるように折り曲げられていると共に前記基板に固定される部位(57)を有し、
前記4つの脚部は、前記基板に固定される4つの部位(57)が正方形を成すと共に前記本体の中心から等距離にあることを特徴とする放熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−216678(P2006−216678A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26442(P2005−26442)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】