説明

半導体用耐熱性粘着テープ

【課題】リードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止時の樹脂漏れを防止する粘着テープであって、耐熱性に優れ、封止時の樹脂漏れを十分に防止し得ると共に、樹脂封止後に剥がす際に生じる糊残りを抑制することができる半導体用耐熱性粘着テープを提供する。
【解決手段】隣接した複数の開口にそれぞれ配列した端子部を有し、複数の半導体素子の一括樹脂封止が可能なリードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止時の樹脂漏れを防止する粘着テープであって、前記粘着テープが、融点180℃以上の耐熱性基材フィルムの片面に、電離放射線の照射により架橋され、かつゲル分率が95%以上で、銅板に対する温度180℃、2時間加熱後の23℃における粘着力が、JIS Z 0237に準じた測定法で、0.1〜7N/25mmの範囲にある耐熱性粘着剤層を有する半導体用耐熱性粘着テープである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用耐熱性粘着テープに関する。さらに詳しくは、本発明は、隣接した複数の開口にそれぞれ配列した端子部を有し、複数の半導体素子の一括樹脂封止が可能なリードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止時の樹脂漏れを防止する粘着テープであって、耐熱性に優れ、封止時の樹脂漏れを十分に防止し得ると共に、樹脂封止後に剥がす際に生じる糊残りを抑制することができる半導体用耐熱性粘着テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの実装技術において、半導体素子、半導体素子搭載部、内部リードフレーム等を樹脂で封止した半導体素子の底面部位に外部実装面となる内部リード端子の一部または全部を露出したSON(Small Outline Non−leaded Package)やQFN(Quad Flat Non−leaded Package)と呼ばれる半導体装置が提案されている。このような構造の半導体装置の製造方法としては、例えば複数の半導体素子搭載面を持つリードフレームの片面に粘着テープをラミネートする工程と、前記リードフレームの前記粘着テープをラミネートした対面に半導体素子を搭載する工程と、前記半導体素子上の電極と前記リードフレームとを金属細線を用いて接続する工程と、前記半導体素子と、前記金属細線と、前記リードフレームの前記半導体素子を搭載した面とを覆うように樹脂を充填し、樹脂を硬化させる工程と、前記粘着テープを剥離除去する工程と、前記樹脂で封止したリードフレームを前記半導体素子毎に切断する工程を含む製造方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
ところが、前記封止樹脂としては、一般にはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられている。エポキシ樹脂を充填する際には、通常170〜200℃の加熱が施される。このため、粘着テープの粘着剤層が軟化、変形し、外部露出面にまで封止樹脂が漏出してしまうことがあった。
また、粘着テープを剥離除去した後に、糊残りが生じ、その後の工程に悪影響を与えることがあった。
【特許文献1】特開2000−294580号公報
【特許文献2】特開2001−345415号公報
【特許文献3】特開2002−110884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、隣接した複数の開口にそれぞれ配列した端子部を有し、複数の半導体素子の一括樹脂封止が可能なリードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止時の樹脂漏れを防止する粘着テープであって、耐熱性に優れ、封止時の樹脂漏れを十分に防止し得ると共に、樹脂封止後に剥がす際に生じる糊残りを抑制することができる半導体用耐熱性粘着テープを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記の優れた機能を有する半導体用耐熱性粘着テープを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、融点がある値以上の耐熱性基材フィルムの片面に、電離放射線の照射により架橋され、かつゲル分率が特定の値以上であって、銅板に対する温度180℃、2時間加熱後の23℃における粘着力がある値以上の耐熱性粘着剤層を設けてなる粘着テープにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)隣接した複数の開口にそれぞれ配列した端子部を有し、複数の半導体素子の一括樹脂封止が可能なリードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止時の樹脂漏れを防止する粘着テープであって、前記粘着テープが、融点180℃以上の耐熱性基材フィルムの片面に、電離放射線の照射により架橋され、かつゲル分率が95%以上で、銅板に対する温度180℃、2時間加熱後の23℃における粘着力が、JIS Z 0237に準じた測定法で、0.1〜7N/25mmの範囲にある耐熱性粘着剤層を有することを特徴とする半導体用耐熱性粘着テープ、
(2)耐熱性粘着剤層が、電離放射線架橋型アクリル系粘着剤層に、電離放射線を照射することにより形成されたものである上記(1)項に記載の半導体用耐熱性粘着テープ、及び
(3)耐熱性粘着剤層が、活性水素をもつ官能基を少なくとも有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、側鎖に電離放射線架橋性の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、活性水素をもつ官能基と反応し得る架橋剤を含む組成物を、加熱架橋し、かつ電離放射線の照射により架橋したものである上記(1)項に記載の半導体用耐熱性粘着テープ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、複数の半導体素子の一括樹脂封止が可能なリードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止時の樹脂漏れを防止する粘着テープであって、耐熱性に優れ、封止時の樹脂漏れを十分に防止し得ると共に、樹脂封止後に剥がす際に生じる糊残りを抑制することができる半導体用耐熱性粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の半導体用耐熱性粘着テープは、隣接した複数の開口にそれぞれ配列した端子部を有し、複数の半導体素子の一括樹脂封止が可能なリードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止時の樹脂漏れを防止するために用いられる粘着テープである。該粘着テープは、融点180℃以上の耐熱性基材フィルムの片面に、電離放射線の照射により架橋され、かつゲル分率が95%以上であって、銅板に対する温度180℃、2時間加熱後の23℃における粘着力が、JIS Z 0237に準じた測定法で、0.1〜7N/25mmである耐熱性粘着剤層が設けられた構成を有している。
本発明の粘着テープに用いられる耐熱性基材フィルムは、JIS K 7121に準拠した測定法で融点が180℃以上のものである。なお、本発明における融点が180℃以上の耐熱性基材フィルムには、180℃以上の温度において溶融しないもの、すなわち、融点をもたないフィルムをも包含する。
このような耐熱性基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、アラミド系フィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリ(4−メチルペンテン−1)フィルム、液晶ポリマーフィルム、及び上記各フィルムを構成するポリマーを2種以上混合してなる混合ポリマーフィルムなどを例示することができる。これらの中で、特にポリイミドフィルムが好適である。
本発明の耐熱性粘着テープにおいては、これらの耐熱性基材フィルムは、厚さに特に制限はないが、通常10〜200μm、好ましくは20〜100μmの範囲である。
【0007】
前記耐熱性基材フィルムは、少なくとも粘着剤層が設けられる側の面に、粘着剤層との接着性を向上させる目的で、所望により、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。また、プライマー処理を施すこともできる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが用いられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが用いられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
本発明の耐熱性粘着テープは、前記の耐熱性基材フィルムの表面処理が施されてなる片面に、電離放射線の照射により架橋され、かつゲル分率が95%以上であって、銅板に対する温度180℃、2時間加熱後の23℃における粘着力が、JIS Z 0237に準じた測定法で、0.1〜7N/25mmである耐熱性粘着剤層を有するものである。
このような性状を有する耐熱性粘着剤層は、電離放射線架橋型アクリル系粘着剤層に、電離放射線を照射することにより、形成することができる。なお、電離放射線架橋型アクリル系粘着剤層とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋するアクリル系粘着剤層を指す。
【0008】
本発明の粘着テープにおける耐熱性粘着剤層は、ゲル分率が95%以上であることが必要である。このゲル分率が95%未満では、リードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止後に剥がす際に糊残りが生じやすい。なお、上記ゲル分率は、下記の方法により測定した値である。
<ゲル分率の測定方法>
剥離フィルム上、当該粘着剤を塗工し、本発明の粘着テープ作製時と同一条件で架橋化させたのち、剥離フィルムから架橋化粘着剤(50mm×100mm)を剥ぎ取る。次いで、上記架橋化粘着剤2枚(合計重量Ag)を100×130mmサイズの200メッシュの金網で包み込み、これをソックスレー抽出器にセットし、酢酸エチルの還流下で16時間抽出処理する。次に、抽出処理後、全網上に残存する粘着剤を100℃で24時間乾燥させ、23℃、50%RHの雰囲気下で3時間以上調湿後、該粘着剤の重量を測定し(Bg)、次式
ゲル分率(%)=(B/A)×100
により、ゲル分率を算出する。
また、下記の方法で測定した被着体の銅板に対する温度180℃、2時間加熱後の23℃における粘着力が、JIS Z 0237に準じた測定法で、0.1〜7N/25mmの範囲にあることが必要である。該粘着力が上記範囲にあれば、粘着テープの機能を十分に果たすことができると共に、樹脂封止後の剥離も容易である。好ましい粘着力は、0.3〜5N/25mmの範囲である。
【0009】
前記電離放射線架橋型アクリル系粘着剤層を構成する粘着剤としては、
[1](メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とし、さらに電離放射線重合性オリゴマー及び/又は電離放射線重合性モノマー、並びに所望により電離放射線重合開始剤を含む粘着剤、
[2]側鎖に電離放射線架橋性の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とし、所望により電離放射線重合開始剤を含む粘着剤、
[3]活性水素をもつ官能基を少なくとも有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、側鎖に電離放射線架橋性の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、活性水素をもつ官能基と反応し得る架橋剤とを含む組成物を主成分とし、所望により電離放射線重合開始剤を含む粘着剤、
などが挙げられる。
前記[1]の粘着剤において、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、所望により用いられる他の単量体との重量平均分子量30万以上の共重合体を好ましく挙げることができる。
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、所望により用いられる他の単量体としては、活性水素をもつ官能基を有する単量体、さらには、ビニルエステル類、オレフィン類、ハロゲン化オレフィン類、スチレン系単量体、ジエン系単量体、ニトリル系単量体、N,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などと同じものを挙げることができる。
【0010】
ここで、活性水素をもつ官能基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。
また、ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが、オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどが、ハロゲン化オレフィン類としては、塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどが、スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが、ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが、ニトリル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが、N,N−ジアルキル置換アクリルアミド類としては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
これらの所望により用いられる他の単量体は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
また、電離放射線重合性オリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、電離放射線重合性オリゴマーとして、一般式[1]
【化1】

(式中、R1及びR2は,それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、それらが結合して炭素環を形成していてもよく、R3は炭素数1〜6のアルキレン基、R4は水素原子又はメチル基、nは1〜6の整数を示す。)
で表されるイミド(メタ)アクリレート0.1〜30重量%及びエチレン性不飽和基含有単量体70〜99.9重量%を構成単位とする共重合オリゴマーも使用することができる。
上記電離放射線重合性オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
この電離放射線重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
一方、電離放射線重合性モノマーとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどの単官能性アクリレート類、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの電離放射線重合性モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの電離放射線重合性オリゴマーや電離放射線重合性モノマーの使用量は、電離放射線の照射により、前述の性状を有するアクリル系耐熱性粘着剤層が得られるように選定される。
【0013】
また、所望により用いられる電離放射線重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。これらは1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、前記電離放射線重合性オリゴマー及び/又は電離放射線重合性モノマー100重量部に対して、通常0.2〜20重量部の範囲で選ばれる。
この電離放射線架橋型アクリル系粘着剤には、所望により、架橋剤を用いることができる。この架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
ここで、ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
【0014】
本発明においては、この架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋剤の種類にもよるが、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対し、通常0.01〜20重量部、好ましくは、0.1〜10重量部の範囲で、前記性状を有するアクリル系粘着剤層が得られるように選定される。
次に、前記[2]の粘着剤において、側鎖に電離放射線架橋性の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、例えば前述の[1]の粘着剤において説明した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体のポリマー鎖に−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの活性点を導入し、この活性点と電離放射線架橋性の官能基を有する化合物と反応させて、該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の側鎖に電離放射線架橋性の官能基を導入してなる粘着剤を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に前記活性点を導入するには、該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を重合する際に、−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの官能基を有する単量体を共存させればよい。
具体的には、−COOH基を導入する場合には(メタ)アクリル酸などを、−NCO基を導入する場合には(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどを、エポキシ基を導入する場合にはグリシジル(メタ)アクリレートなどを、−OH基を導入する場合には2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを、−NH2基を導入する場合にはN−メチル(メタ)アクリルアミドなどを用いればよい。
これら活性点と反応させる電離放射線架橋性の官能基を有する化合物としては、例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートなどの重合性二重結合を有する化合物の中から、活性点の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。
このようにして、側鎖に電離放射線架橋性の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が得られる。
次に、前記[3]の粘着剤において、活性水素をもつ官能基を少なくとも有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、例えば前述の[1]の粘着剤において説明した(メタ)アクリル酸エステルと、活性水素をもつ官能基を有する単量体とを用いて共重合させればよい。
側鎖に電離放射線架橋性の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、前記[2]の粘着剤において述べたものを用いることができる。また、その使用量は、前記活性水素をもつ官能基を少なくとも有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対し、通常5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部の範囲で選ばれる。
活性水素をもつ官能基と反応し得る架橋剤としては、前記[1]の粘着剤において述べた架橋剤を用いることができる。
得られた活性水素をもつ官能基を少なくとも有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、側鎖に電離放射線架橋性の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、活性水素をもつ官能基と反応し得る架橋剤とを含む組成物は、加熱架橋および電離放射線架橋の両方を行うことができるので、耐熱性を飛躍的に向上させることができる。
この電離放射線架橋型アクリル系粘着剤には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望によりアクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
電離放射線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプなどで得られ、一方、電子線は電子線加速器などによって得られる。この電離放射線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、重合開始剤を添加することなく、架橋化粘着剤層を形成することができる。
この電離放射線架橋型アクリル系粘着剤層に対する電離放射線の照射量としては、前述の性状を有する架橋化耐熱性粘着剤層が得られるように、適宜選定される。
このようにして、各成分の種類や量、照射条件、加熱架橋条件などを適宜選ぶことにより、架橋化度が制御され、前述の性状を有するアクリル系耐熱性粘着剤層を形成することができる。
【0015】
本発明の粘着テープを作製する具体的な方法としては、まず、所望によりコロナ放電処理などの表面処理された基材フィルムの該表面処理面に、直接電離放射線架橋型粘着剤層を形成するか、又は剥離シート上に上記粘着剤を塗布して粘着剤層を設けたのち、これを基材フィルムの表面処理面に貼着し、転写する。次いで、該粘着剤層に電離放射線を照射して架橋処理を行い、前記性状を有する架橋化アクリル系耐熱性粘着剤層を形成させる。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μm程度である。
次に、このようにして得られた本発明の半導体用耐熱性粘着テープを用いた半導体装置の製造方法の1例について説明する。
(1)リードフレームとしては、ダイパット及びインナーリードを有するパターンが複数形成されたリードフレームを用い、このリードフレームの片面に、本発明の粘着テープを、0〜200℃で貼着する工程、(2)次いで、リードフレームの露出面(本発明の粘着テープを貼着した面と反対の面)上のダイパッドに銀ペースト等の接着剤を用いて半導体素子を接着し、140〜200℃程度で、30分〜2時間程度の加熱を行うことにより銀ペースト等の接着剤を硬化する工程、(3)その後、150〜250℃程度で加熱して、リードフレームのインナーリードと半導体素子とを金線等のワイヤボンドを行って接続する工程、(4)150〜200℃程度で、リードフレームの露出面、複数の半導体素子及び複数のワイヤを封止材で一括封止する工程、(5)150〜200℃程度で4〜6時間程度の加熱を行うことにより封止材樹脂を硬化する工程、(6)0〜50℃程度で半導体用粘着テープをリードフレーム及び封止材から剥離する工程、(7)封止したリードフレームを分割することにより、各々1個の半導体素子を有する複数の半導体装置を得る工程の各工程を施すことにより、目的の半導体装置を製造することができる。なお、(6)の工程は、(5)の工程の前に行うこともできる。
前記半導体装置の製造工程に、本発明の粘着テープを用いた場合、該テープは耐熱性に優れているので、封止時の樹脂漏れを十分に防止し得ると共に、樹脂封止後に剥がした際に、糊残りが少ない。
【実施例】
【0016】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
厚さ25μmのポリイミドフィルム[デュポン社製、商品名「カプトン100H」、融点なし]に、アクリル系マレイミド樹脂を含む粘着剤[東亜合成社製、商品名「UVA3300」]を、乾燥厚さが25μmになるように塗布し、ベルトコンベア式UV照射機「アイグラフィックス社製、商品名「UB042−5AM/W」、照度200mW/cm2、高圧水銀ランプ2灯]にて、積算光量2000mJ/cm2照射し、硬化させ、紫外線架橋型粘着テープを作製した。
実施例2
実施例1におけるポリイミドフィルムの代わりに、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ社製、商品名「ルミラー」、融点260℃]を用いた以外は、実施例1と同様にして、紫外線架橋型粘着テープを作製した。
実施例3
実施例1におけるポリイミドフィルムの代わりに、厚さ25μmのポリフェニレンスルフィドフィルム[東レ社製、商品名「トレリナ」、融点285℃]を用いた以外は、実施例1と同様にして、紫外線架橋型粘着テープを作製した。
実施例4
アクリル酸2−エチルヘキシル80重量部、アクリル酸ヒドロキシエチル20重量部から得られた共重合体100重量部と、アクリル酸2−エチルヘキシル80重量部、アクリル酸ヒドロキシエチル20重量部から得られた共重合体に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート20重量部を付加したもの20重量部、電離放射線重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[長瀬産業社製、商品名「イルガキュア184」]0.7重量部、多価イソシアネート化合物[日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」]0.8重量部を混合したものを、厚さ25μmのポリイミドフィルム[デュポン社製、商品名「カプトン100H」、融点なし]に乾燥厚さが20μmになるように塗布し、100℃で2分間加熱架橋させたのち、ベルトコンベア式UV照射機[アイグラフィックス社製、商品名「UB042−5AM/W」、照度300mW/cm2、高圧水銀ランプ2灯]にて、積算光量500mJ/cm2照射し、硬化させ、加熱架橋・紫外線架橋併用型粘着テープを作製した。
比較例1
実施例1におけるポリイミドフィルムの代わりに、厚さ50μmのポリプロピレンフィルム(融点170℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして、紫外線架橋型粘着テープを作製した。
比較例2
アクリル酸ブチル60重量部、メタクリル酸メチル20重量部、アクリル酸ヒドロキシエチル20重量部から得られた共重合体100重量部及び多価イソシアネート化合物[日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」]1.0重量部を混合したものを、厚さ25μmのポリイミドフィルム[デュポン社製、商品名「カプトン100H」、融点なし]に、乾燥厚さが20μmになるように塗布し、100℃で2分間加熱架橋させ、加熱架橋型粘着テープを作製した。
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた粘着テープについて、下記の試験を行った。結果を第1表に示す。
(1)粘着力
25mm幅の評価サンプルを銅被着体に2kgのゴムロールで一往復させ貼り付け、20分後テンシロン引張試験機[(株)オリエンテック製、RTA−T−2M]にて剥離角度180°、JIS Z 0237に準じて剥離速度300mm/minで粘着力を測定した。
(2)熱後粘着力
測定条件は上記と同様で、サンプルを貼り付け後180℃で2時間処理した後、測定した。
(3)粘着剤層のゲル分率
明細書本文記載の方法に従って測定した。
(4)糊残り
粘着テープを銅被着体に貼付後180℃で2時間処理し、剥離した際の銅被着体への糊残りの有無を目視で確認した。
(5)樹脂漏れ
粘着テープを、リードフレームに貼付し、トランスファー成型機により175℃の温度下でエポキシ樹脂を用いて樹脂封止を行った。その後、粘着テープを剥離し、樹脂漏れの有無を目視で確認した。
【0017】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の半導体用耐熱性粘着テープは、隣接した複数の開口にそれぞれ配列した端子部を有し、複数の半導体素子の一括樹脂封止が可能なリードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止時の樹脂漏れを効果的に防止すると共に、樹脂封止後剥がした場合、糊残りが少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接した複数の開口にそれぞれ配列した端子部を有し、複数の半導体素子の一括樹脂封止が可能なリードフレームの片面全面に貼付され、樹脂封止時の樹脂漏れを防止する粘着テープであって、前記粘着テープが、融点180℃以上の耐熱性基材フィルムの片面に、電離放射線の照射により架橋され、かつゲル分率が95%以上で、銅板に対する温度180℃、2時間加熱後の23℃における粘着力が、JIS Z 0237に準じた測定法で、0.1〜7N/25mmの範囲にある耐熱性粘着剤層を有することを特徴とする半導体用耐熱性粘着テープ。
【請求項2】
耐熱性粘着剤層が、電離放射線架橋型アクリル系粘着剤層に、電離放射線を照射することにより形成されたものである請求項1に記載の半導体用耐熱性粘着テープ。
【請求項3】
耐熱性粘着剤層が、活性水素をもつ官能基を少なくとも有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、側鎖に電離放射線架橋性の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、活性水素をもつ官能基と反応し得る架橋剤を含む組成物を、加熱架橋し、かつ電離放射線の照射により架橋したものである請求項1に記載の半導体用耐熱性粘着テープ。


【公開番号】特開2006−169480(P2006−169480A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367862(P2004−367862)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】