説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】チップ積層体を構成する半導体チップのクラックを防止しつつ、半導体装置のコストアップを抑制する手段を提供する。
【解決手段】半導体装置1はチップ積層体11と絶縁材料から成る補強層16を有する。チップ積層体11は、貫通電極13を有する複数の半導体チップ10が互いに積層されて成る。補強層16は、チップ積層体11の一方の端に位置する第1の半導体チップ10の、チップ積層体11の他の半導体チップとは反対側の一面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CoC(Chip on Chip)型の半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化や高機能化に伴って、複数の半導体チップが互いに積載されたチップ積層体を有するCoC型の半導体装置が検討されている。CoC型の半導体装置の製造方法としては、配線基板あるいは支持基板上に貫通電極を有する複数の半導体チップを順次積載し、各半導体チップ間の隙間をアンダーフィル材で埋めた後、アンダーフィル材を含む複数の半導体チップ全体を覆うように樹脂で封止する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、チップ積層体の最上段の半導体チップの上にサポートチップが配置された半導体装置が開示されている。サポートチップは、チップ積層体の最上段の半導体チップの貫通電極と電気的に接続可能な電極を有する基板である。サポートチップの例として、回路機能を有する半導体チップや不良品の半導体チップなどが挙げられている。チップ積層体を形成する半導体チップの貫通電極の膨張または収縮等によって最上段の半導体チップに応力が生じたとき、この応力はサポートチップにかかる。これにより、半導体チップのクラックを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−129684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された半導体装置では、貫通電極と電気的に接続可能な電極等の構造を有するサポートチップが必要であるため、半導体装置のコストアップにつながる。また、携帯機器等の小型化および薄型化により半導体装置の小型化が望まれているが、サポートチップによって半導体装置の厚さが増すという問題も生じ得る。
【0006】
そこで、チップ積層体を構成する半導体チップのクラックを防止しつつ、半導体装置のコストアップを抑制できる半導体装置、およびその製造方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
半導体装置はチップ積層体と絶縁材料から成る補強層を有する。チップ積層体は、貫通電極を有する複数の半導体チップが互いに積層されて成る。補強層は、チップ積層体の一方の端に位置する第1の半導体チップの、チップ積層体の他の半導体チップとは反対側の一面に形成されている。
【0008】
半導体装置の製造方法は、貫通電極を有する一の半導体チップの一方の面に絶縁材料から成る補強層を形成するステップと、一の半導体チップの、補強層が形成された面とは反対側に、貫通電極を有する別の半導体チップを積層するとともに、両方の半導体チップの貫通電極同士を電気的に接続するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成よれば、製造過程等での温度変化に起因して半導体チップの貫通電極が膨張又は収縮したとしても、半導体チップに生じた応力が補強層にかかるため、半導体チップのクラックを防止できる。また、補強層は半導体チップの貫通電極と電気的に接続される必要がなく、絶縁層から形成されていれば良いため、半導体装置のコストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】補強層が形成された半導体チップを作成する方法を示す断面図である。
【図3】チップ積層体を形成する工程を示す断面図である。
【図4】チップ積層体へ第1の樹脂層を充填する工程の一例を示す断面図である。
【図5】半導体装置の組立フローの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、一実施形態における半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【0012】
半導体装置1は、複数の半導体チップ10が互いに積載されて成るチップ積層体11を有する。チップ積層体11は、例えば、メモリ回路が形成された4つのメモリチップ10と、最下段に配置された1つのIF(インターフェース)チップ10と、を有する。半導体チップの積層方向の最下段の半導体チップ10は、配線基板20に対向して設けられている。互いに積層された半導体チップ10は、4つに限られず、2以上の任意の個数であれば良い。
【0013】
半導体チップ10は貫通電極13を有する。貫通電極13の両端部は、半導体チップ10の表面から突出したバンプ電極12を形成している。互いに隣接した半導体チップ10のバンプ電極12同士が接続されることにより、半導体チップ10は貫通電極13を介して互いに電気的に接続されている。チップ積層体11の最上段の半導体チップ10上に補強層16が設けられている。補強層16は、例えばポリイミドのような絶縁材料からなる。半導体チップ10のチップ厚は例えば50μmであることが好ましい。補強層16は、チップ厚と同等程度の50μmの厚みであることが好ましい。補強層16は、第1の半導体チップ10の一方の面全体を覆っていることが好ましい。
【0014】
チップ積層体11の最上段に位置する半導体チップ10の上面に絶縁材料から成る補強層16を設けたことにより、貫通電極13の熱膨張又は収縮によって最上段の半導体チップ10に集中する応力を補強層16で受けることができる。これにより、最上段の半導体チップ10のクラックを防止することができる。補強層16は半導体チップ10の貫通電極13と電気的に接続される必要がなく、絶縁材料から形成されていれば良い。そのため、半導体装置1のコストアップを抑制することができる。また、特許文献1に記載された半導体装置のように、電極や回路などの構成を有するサポートチップを用いる必要が無いため、半導体装置1の薄型化を図ることができる。
【0015】
チップ積層体11の周囲および半導体チップ10間の隙間には、第1の樹脂層14が形成されている。図1に示す例では、第1の樹脂層14は、半導体装置1を側方から見たときに、略台形状の断面になっている。第1の樹脂層14は、例えばアンダーフィル材を用いて形成される。
【0016】
配線基板20には、例えば両面に所定の配線が形成されたガラスエポキシ基板が用いられる。各配線は後述する接続パッド21やランド23を除いてソルダーレジスト膜等の絶縁膜によって覆われている。配線基板20の一方の面には、半導体チップ10と接続するための複数の接続パッド21が形成されている。配線基板20の他方の面には外部電極となる金属ボール22を接続するための複数のランド23が形成されている。これらの接続パッド21は、ガラスエポキシ基板に設けられた配線によって所定のランド23と電気的に接続されている。接続パッド21には、例えばAuやCu等から成るワイヤバンプ15が形成されている。ワイヤバンプ15は半導体チップ10のバンプ電極12と接続されている。
【0017】
また、チップ積層体11と配線基板20とは、非導電性ペースト(Non Conductive Paste:NCP)等の接着部材24によって接着固定される。接着部材24によりワイヤバンプ15と半導体チップ10のバンプ電極12との接合部位が保護されている。配線基板20上のチップ積層体11は第2の樹脂層25によって封止されている。
【0018】
図2は、補強層16が形成された半導体チップ10を作成する方法の一例を示す断面図である。半導体チップ10は、各々のチップとなるチップ領域32を有する多数個取りの半導体ウエハ31を用いて作成することが好ましい。半導体ウエハ31は、例えばシリコンからなる半導体基板の一面に所定の回路と複数の電極パッドが形成されたチップ領域32を複数有している。それぞれのチップ領域32の電極パッド上に、メッキ等によりバンプ電極12が所定の高さで形成されている。半導体ウエハ31の、バンプ電極12が形成されている一面は、接着材層30を介してガラス基板33に保持される。次に、半導体ウエハ31の裏面(バンプ電極12が形成されていない方の面)を研削し、半導体ウエハ31を所定の厚さ、例えば50μm程度まで薄型化する。これにより、図2(a)に示す半導体ウエハ31が用意される。
【0019】
次に、半導体ウエハ31の裏面側から、それぞれのチップ領域32のバンプ電極12に対応する位置に、半導体基板を貫通する貫通孔を形成する。その後、メッキ法等により貫通孔を導体で埋める。これにより、図2(b)に示すように、貫通電極13および半導体ウエハ31の裏面側のバンプ電極12が形成される。
【0020】
次に、図2(c)に示すように、半導体ウエハ31の裏面全体に所定の厚さの絶縁材料から成る補強層16を形成する。補強層16は、例えば50μmの厚みのポリイミドを用いることができる。補強層16は、例えばポリイミド基板を半導体ウエハ31に接着固定することで形成される。なお、補強層16は、ポリイミド樹脂を、スピンコート法により塗布して形成することもできる。
【0021】
次に、図2(d)に示すように、半導体ウエハ31の裏面の補強層16をダイシングテープ34に保持する。その後、ガラス基板33と半導体ウエハ31とを接着する接着材層30に、ガラス基板33側から所定の光を照射することで、接着材層30の接着力を低下させた状態で、半導体ウエハ31からガラス基板33を除去する。また、半導体ウエハ31に付着した接着材層30も除去する。これにより、図2(e)に示すように、半導体ウエハ31は、補強層16を介してダイシングテープ34に保持された状態となる。
【0022】
その後、図2(f)に示すように、高速回転するダイシングブレード35により、ダイシングラインに沿って、半導体ウエハ31および補強層16を切断する。これにより、半導体ウエハ31は、個々の半導体チップ10に分割される。
【0023】
その後、ダイシングテープ34から半導体チップ1をピックアップすることにより、図2(g)に示すように、補強層16が形成された半導体チップ10が作成される。
【0024】
図3は、チップ積層体11を形成する工程を示す断面図である。図3(a)に示すように、半導体チップ10は、補強層16が形成された面を下に向けて、ステージ100上に保持される。半導体チップ10には平坦な表面を有する補強層16が形成されているため、半導体チップ10はステージ100に良好に保持される。また、ステージ100は、吸引孔101を有し、半導体チップ10を吸引保持するものであることが好ましい。
【0025】
図3(b)に示すように、吸着ステージ100上に保持した1段目の半導体チップ10の上に2段目の半導体チップ10を搭載する。その際、ボンディングツール110の吸着孔112を介して2段目の半導体チップ10が吸引されるため、2段目の半導体チップ10はボンディングツール110から落ちない。1段目の半導体チップ10のバンプ電極12と、2段目の半導体チップ10のバンプ電極12とを電気的に接続することで、1段目半導体チップ10上に2段目の半導体チップ10が積層される。
【0026】
バンプ電極12どうしの接合には、例えば図3(b)に示すように、高温に設定したボンディングツール110により半導体チップ10に所定の荷重を加える熱圧着法を用いることができる。なお、2つの半導体チップの接合には、超音波を印加しつつ圧着する超音波圧着法、あるいはこれと熱圧着法とを併用する超音波熱圧着法を用いてもよい。
【0027】
2段目の半導体チップ10の上に、図3(b)と同様な手順で、3段目の半導体チップ10を接続固定する。続いて、4段目及び5段目の半導体チップ10についても、図3(b)と同様な手順で、それぞれの下の半導体チップ10と接続固定する。これにより、半導体チップ11が互いに積層されて成るチップ積層体11が形成される。図3(c)に示すチップ積層体11は、図1に示したチップ積層体11の上下を逆にしたものである。
【0028】
図4は、チップ積層体11の周囲および半導体チップ10間に第1の樹脂層を形成する工程の一例を示す断面図である。チップ積層体11は、例えば図4(a)に示すように、ステージ120に貼り付けられた塗布用シート121の上に載置される。このとき、チップ積層体11の積層方向の端に位置する半導体チップ10に形成された補強層16が、塗布用シート121に保持されることが好ましい。塗布用シート121は、フッ素系シートやシリコーン系接着材が塗布されたシート等のように、第1の樹脂層14(例えば、アンダーフィル材)に対する濡れ性が悪い材料であることが好ましい。なお、塗布用シート121は、ステージ120上に直接貼る必要はなく、平坦な面上であればどこでもよく、例えばステージ120上に載置した所定の治具等に貼ってもよい。
【0029】
塗布用シート121上に載置された複数の半導体チップ10には、図4(b)に示すように、その端部近傍からディスペンサ130により第1の樹脂層14が供給される。第1の樹脂層14は、チップ積層体11の周囲にフィレットを形成しつつ、半導体チップ10どうしの隙間へ毛細管現象によって進入し、半導体チップ10間の隙間を埋める。第1の樹脂層14が形成されたチップ積層体11を所定の温度でキュア(熱処理)することで、第1の樹脂層14を熱硬化させる(図4(c)参照)。このようにして、チップ積層体11の周囲および半導体チップ10間に設けられた第1の樹脂層14の一面14aが、補強層16の一面16aと同一平面を形成する。
【0030】
上記のように、平坦な表面を有する補強層16を下にしてチップ積層体11がステージ上に保持されるため、第1の樹脂層14を充填する際に、補強層16と塗布用シート121との間へ第1の樹脂層14が回りこむことを防止できる。
【0031】
また、第1の樹脂層14に対する濡れ性が悪い材料から成る塗布用シート121を用いれば、第1の樹脂層14の広がりが抑制されてフィレット幅が大きくなることがなく、熱硬化時における塗布用シート121への第1の樹脂層14の付着も防止される。
【0032】
第1の樹脂層14の熱硬化後、チップ積層体11は、図4(d)に示すように、塗布用シート121からピックアップされる。塗布用シート121が第1の樹脂層14に対する濡れ性が悪い材料であれば、チップ積層体11を塗布用シート121から容易にピックアップできる。
【0033】
なお、チップ積層体11に第1の樹脂層14を供給する際にチップ積層体11が位置ずれを起こすおそれのある場合は、樹脂接着材を用いてチップ積層体11を塗布用シート121に仮固着してもよい。
【0034】
図5は、半導体装置の組立フローの一例を示す断面図である。まず、マトリックス状に配置された複数の製品形成部26を備えた配線基板20を準備する。製品形成部26は、各々が半導体装置1の配線基板20となる部位である。各製品形成部26には所定のパターンの配線が形成されており、各配線は接続パッド21及びランド23を除いてソルダーレジスト膜等の絶縁膜によって覆われている。この配線基板20の製品形成部26間が各半導体装置1を個々に切り離す際のダイシングラインとなる。
【0035】
配線基板20の一方の面には、チップ積層体11と接続するための複数の接続パッド21が形成され、他方の面には外部端子となる金属ボール22を接続するための複数のランド23が形成されている。これら接続パッド21は、所定のランド23と配線によって接続されている。
【0036】
接続パッド21の上にはワイヤバンプ15が設けられている。ワイヤバンプ15は、不図示のワイヤボンディング装置を用いて、溶融して先端がボール状になったAuやCu等のワイヤを配線基板20の接続パッド21上に、例えば超音波熱圧着法によって接合し、その後、ワイヤを引き切ることで形成することができる。ワイヤバンプ15を配線基板20側に形成することで、半導体チップ10の貫通電極13のサイズの小型化や狭ピッチ化を図ることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、チップ積層体11と配線基板20との接続を容易にするために、接続パッド21上にワイヤバンプ15を形成する例を示しているが、チップ積層体11を構成する半導体チップのバンプ電極12に配線基板20の接続パッド21を直接接続してもよい。
【0038】
上述のようにして、配線基板20の準備が完了すると、配線基板20の各製品形成部26上にそれぞれ絶縁性の接着部材24、例えばNCPをディスペンサにより塗布する。次に、図5(a)に示すように、チップ積層体11の最上段の半導体チップに形成された補強層16をボンディングツール160等で吸着保持し、配線基板20の製品形成部26上にチップ積層体11をそれぞれ搭載する。最下段の半導体チップ10の各バンプ電極12と配線基板20の各ワイヤバンプ15とを、例えば熱圧着法を用いて接合する。このとき、配線基板20上に塗布していた接着部材24がチップ積層体11と配線基板20との間に充填され、配線基板20とチップ積層体11とが接着固定される。チップ積層体11の周囲にはテーパ状に第1の樹脂層14が形成されているため、接着部材24の這い上がりを防止できる。これにより、ボンディングツール160へ接着部材24が付着することによるチップ積層体11の破損や接合不良等を低減できる。
【0039】
図5(a)に示すように、ボンディングツール160は、平坦な補強層16の一面と、当該一面と同一平面を形成する第1の樹脂層14の一面14aとを保持する。そのため、ボンディングツール160は、チップ積層体11を良好に保持することができる。
【0040】
チップ積層体11を配線基板20に搭載するときの熱圧着において、チップ積層体11が第1の樹脂層14の熱硬化温度よりも高くなることがある。この場合、チップ積層体11の貫通電極13が膨張し、また、その後の温度低下に伴って貫通電極13が収縮しても、貫通電極13の膨張又は収縮によって最上段の半導体チップ10に生じる応力は補強層16にかかる。したがって、最上段の半導体チップ10のクラックが防止される。
【0041】
チップ積層体11が搭載された配線基板20は、不図示のトランスファモールド装置の上型と下型から成る成型金型にセットされ、モールド工程に移行する。成型金型の上型には、複数のチップ積層体11を一括して覆う不図示のキャビティが形成されており、該キャビティ内に配線基板20上に搭載されたチップ積層体11が収容される。次に、成型金型に設けられたキャビティ内に加熱溶融させた第2の樹脂層(封止樹脂)25を注入し、チップ積層体11全体を覆うように第2の樹脂層25を充填する。第2の樹脂層25には、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0042】
続いて、キャビティ内を第2の樹脂層25で充填した状態で、所定の温度でキュアすることで第2の樹脂層25を熱硬化させる。さらに、所定の温度でベークすることで、第2の樹脂層25を完全に硬化させる(図5(b)参照)。このときのベーク温度が第1の樹脂層14の熱硬化温度よりも高くなることがある。この場合、チップ積層体11の貫通電極13が膨張し、また、その後の温度低下に伴って貫通電極13が収縮しても、貫通電極13の膨張又は収縮によって生じる最上段の半導体装置10の応力は補強層16にかかる。したがって、最上段の半導体チップ10のクラックが防止される。
【0043】
また、本実施形態では、チップ積層体11のチップ間を第1の樹脂層14で封止した後、チップ積層体11全体を覆う第2の樹脂層25を形成するため、半導体チップ10どうしの隙間でボイドが発生するのを抑制できる。
【0044】
第2の樹脂層25を形成した後、ボールマウント工程に移行し、図5(c)に示すように配線基板20の他方の面に形成されたランド23に、半導体装置の外部端子となる金属ボール22、例えば半田ボールを接続する。
【0045】
ボールマウント工程では、配線基板20の各ランド23の位置と対応した複数の吸着孔を備えたマウントツール170を用いて複数の金属ボール22を吸着保持し、各金属ボール22にフラックスを転写した後、各金属ボール22を配線基板20のランド23上に一括して搭載する。全ての製品形成部26に対する金属ボール22の搭載が完了した後、配線基板20をリフローすることで各金属ボール22と各ランド23とを接続する。
【0046】
図5(c)に示す工程のリフローの温度が第1の樹脂層14の熱硬化温度よりも高くなることがある。この場合、チップ積層体11の貫通電極13が膨張し、また、その後の温度低下に伴って貫通電極13が収縮しても、貫通電極13の膨張又は収縮によって最上段の半導体装置10に生じる応力は補強層16にかかる。したがって、最上段の半導体チップ10のクラックが防止される。
【0047】
金属ボール22の接続が完了すると、基板ダイシング工程に移行し、所定のダイシングラインで個々の製品形成部26を切断分離することで半導体装置1を形成する。基板ダイシング工程では、第2の樹脂層25にダイシングテープ180を貼着することで製品形成部26を支持する。そして、図5(d)に示すように、不図示のダイシング装置が備えるダイシングブレード181により所定のダイシングラインで切断することで製品形成部26毎に分離する。切断分離後、ダイシングテープ180を製品形成部26からピックアップすることで、図1に示したCoC型の半導体装置1が得られる。
【0048】
本実施形態によれば、上記のように、製造プロセス中の温度変化に起因する貫通電極13の膨張や収縮によって生じる応力が、チップ積層体11の最上段の半導体チップに形成された補強層16に移行されるため、半導体チップ10がクラックすることを防止できる。
【0049】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 半導体装置
10 半導体チップ
11 チップ積層体
12 バンプ電極
13 貫通電極
14 第1の樹脂層
15 ワイヤバンプ
16 補強層
20 配線基板
21 接続パッド
22 金属ボール
23 ランド
25 第2の樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通電極を有する複数の半導体チップが互いに積層されたチップ積層体と、
前記チップ積層体の一方の端に位置する第1の半導体チップの、前記チップ積層体の他の半導体チップとは反対側の一面に形成された、絶縁材料から成る補強層と、を有する半導体装置。
【請求項2】
前記補強層は、前記第1の半導体チップの前記一面全体に形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記チップ積層体の周囲および前記複数の半導体チップ間に設けられた樹脂層を有し、
前記樹脂層の一面が前記補強層の一面と同一平面を形成している、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記チップ積層体の前記一方の端とは反対側の端に設けられた第2の半導体チップに対向して配置された配線基板を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
貫通電極を有する一の半導体チップの一方の面に絶縁材料から成る補強層を形成するステップと、
前記一の半導体チップの、前記補強層が形成された面とは反対側に、貫通電極を有する別の半導体チップを積層するとともに、両方の前記半導体チップの前記貫通電極同士を電気的に接続するステップと、を含む半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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