説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】多機能を備えたRFモジュールを安価に製造する。
【解決手段】例えば5層((n+m)層)の第1積層基板10からなり、RFパワーモジュールが形成された第1回路ブロックMB1と、第1積層基板10の層数とは異なる層数、例えば11層(k層)の第2積層基板17からなり、フロントエンドモジュールが形成された第2回路ブロックMB2とを用意し、第1積層基板10に第2積層基板17を組み込むことによって、第1積層基板10に形成された第1回路ブロックMB1および第2積層基板17に形成された第2回路ブロックMB2からなる1つの多機能RFモジュールMRF1を構成し、例えば第2回路ブロックMB2に形成されたフロントエンドモジュールに仕様変更が生じた場合は、第2積層基板17を取り替えることで、多機能RFモジュールMRF1の仕様変更を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造技術に関し、特に、デジタル携帯電話に用いられるRF(Radio Frequency)モジュールの製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の普及には、電話器の小型、高性能、高信頼および低価格が強く求められており、そのためには送信部に用いる高周波電力増幅器(High Power Amplifier:以下、HPAと略す)も同様な要求に応える必要がある。HPAは、衛星通信または地上マイクロ波通信などにおいて、映像、データまたは音声などの情報を送るため、マイクロ波を増幅する装置である。
【0003】
HPAに用いられるデバイスとしては、近年、単一電源化が容易で、高出力および量産性に優れたシリコン(Si)系の電界効果トランジスタ(例えばMetal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor:以下、MISFETと略す)が開発されている。また、積層構造のセラミック基板を用いたパッケージ技術も開発されており、このパッケージ技術は複数枚の基板を一貫して組み立てる一貫組み立て方式生産を可能とし、HPAを搭載したRFモジュールの低価格化を実現している(非特許文献1)。
【非特許文献1】吉田 功、他2名、“Si-MOSFETを用いた移動体通信用高周波電力増幅器モジュールの開発と実用化”、[online]、[平成16年6月21日検索]、インターネット<http://www.sgkz.or.jp/nenpoh/35_sangyo/005.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯電話に用いられるHPAを搭載したRFモジュールの製造については、以下に説明する種々の技術的課題が存在する。
【0005】
例えば欧州統一規格GSM(Global System for Mobile Communications)に代表されるように、2つ以上の周波数帯を利用できるデュアルハンドタイプまたはトリプルハンドタイプの携帯電話が、現在の携帯電話開発の主流となっている。このため、携帯電話には、それぞれの周波数帯の部品、例えば2つ以上の周波数帯のそれぞれの信号を分離または合成する分波器、2つ以上の周波数帯のそれぞれに必要とされる高周波を除去するローパスフィルタおよび送信信号と受診信号とを切り換えるアンテナスイッチなどが必要とされている。
【0006】
これまでは、上記部品を個々のディスクリートとしてHPAを搭載したRFモジュールと同様に、実装基板に搭載していたが、パッケージの小型化の要求から、HPAを搭載したRFモジュールに上記部品を半導体素子として搭載する要求が高まっている。
【0007】
そこで、本発明者らは、従来回路(例えばHPA)に加えて追加回路(例えば分波器、ローパスフィルタまたはアンテナスイッチなど)を搭載した多機能RFモジュールの検討を行った。その結果、追加回路には従来回路よりも積層基板に多くの層が必要となり、従来回路に追加回路を加えた新しい回路では、追加回路に必要な層数に合わせて、多機能RFモジュールの積層基板を製造する必要があることが明らかとなった。追加回路に必要な層は従来回路ではほとんど必要としない層であり、従来回路にとっては無駄な層となる。さらに、従来回路に追加回路を加えた新しい回路では、従来回路と追加回路との電気的特性の合わせ込みをするために、従来回路側のパターンを変更する必要があり、新しい回路に合わせて新たに多機能RFモジュール全体の積層基板を製造しなくてはならない。
【0008】
このため、顧客の様々な要求仕様に合わせて従来回路に追加回路を加える場合は、従来回路にとっては必要としない層を追加して、製品毎に多機能RFモジュール全体の積層基板を製造しなければならず、特に、少量多品種製品では多機能RFモジュールのコストが高くなってしまう。
【0009】
本発明の目的は、多機能を備えたRFモジュールを安価に製造することのできる技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
すなわち、1つの所望の回路が構成される1つの基板を、別体で形成された複数の基板を互いの配線接続がなされた状態で一体的に組み合わせて形成したものである。
【0013】
また、本願において開示される発明のうち、他の代表的なものの概要を項に分けて説明すると次の通りである。
1.n層からなる第1サイズの下部積層基板とm層からなる前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった(n+m)層からなる第1積層基板と、前記(n+m)層とは異なるk層からなる第2積層基板とを有し、前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込んで1つのモジュールを構成することを特徴とする半導体装置。
2.第1サイズの下部積層基板と前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった第1積層基板に形成された第1回路ブロックと、第2積層基板に形成された第2回路ブロックとを有し、前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込んで、前記第1および第2回路ブロックからなる1つのモジュールを構成することを特徴とする半導体装置。
3.第1積層基板と、第2積層基板と、互いに異なる外部端子の形状を有する複数種類の裏面端子層とを有し、前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込んで1つのモジュールを構成する半導体装置であって、前記モジュールが搭載される実装基板の配線に合わせて、前記第1積層基板の裏面に所望の前記裏面端子層が接続されていることを特徴とする半導体装置。
4.n層からなる第1サイズの下部積層基板とm層からなる前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった(n+m)層からなる第1積層基板と、前記(n+m)層とは異なるk層からなる第2積層基板と、互いに異なる外部端子の形状を有する複数種類の裏面端子層とを有し、前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込んで1つのモジュールを構成する半導体装置であって、前記モジュールが搭載される実装基板の配線に合わせて、前記第1積層基板の裏面に所望の前記裏面端子層が接続されていることを特徴とする半導体装置。
5.第1サイズの下部積層基板と前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった第1積層基板に形成された第1回路ブロックと、第2積層基板に形成された第2回路ブロックと、互いに異なる外部端子の形状を有する複数種類の裏面端子層とを有し、前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込んで、前記第1および第2回路ブロックからなる1つのモジュールを構成する半導体装置であって、前記モジュールが搭載される実装基板の配線に合わせて、前記第1積層基板の裏面に所望の前記裏面端子層が接続されていることを特徴とする半導体装置。
6.(a)n層からなる第1サイズの下部積層基板とm層からなる前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった(n+m)層からなる第1積層基板を用意する工程と、
(b)前記(n+m)層とは異なるk層からなる第2積層基板を用意する工程と、
(c)前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込んで1つのモジュールを形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
7.(a)第1サイズの下部積層基板と前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった第1回路ブロックが形成された第1積層基板を用意する工程と、
(b)第2回路ブロックが形成された第2積層基板を用意する工程と、
(c)前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込んで、前記第1および第2回路ブロックからなる1つのモジュールを形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
8.(a)第1積層基板を用意する工程と、
(b)第2積層基板を用意する工程と、
(c)互いに異なる外部端子の形状を有する複数種類の裏面端子層を用意する工程と、
(d)前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込む工程と、
(e)前記第1積層基板の裏面に所望の前記裏面端子層を接続する工程とを有し、前記裏面端子層が接続された前記第1積層基板および第2積層基板からなる1つのモジュールを形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。
9.(a)n層からなる第1サイズの下部積層基板とm層からなる前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった(n+m)層からなる第1積層基板を用意する工程と、
(b)前記(n+m)層とは異なるk層からなる第2積層基板を用意する工程と、
(c)互いに異なる外部端子の形状を有する複数種類の裏面端子層を用意する工程と、
(d)前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込む工程と、
(e)前記第1積層基板の裏面に所望の前記裏面端子層を接続する工程とを有し、前記裏面端子層が接続された前記第1積層基板および第2積層基板からなる1つのモジュールを形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。
10.(a)第1サイズの下部積層基板と前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった第1回路ブロックが形成された第1積層基板を用意する工程と、
(b)第2回路ブロックが形成された第2積層基板を用意する工程と、
(c)互いに異なる外部端子の形状を有する複数種類の裏面端子層を用意する工程と、
(d)前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込む工程と、
(e)前記第1積層基板の裏面に所望の前記裏面端子層を接続する工程とを有し、前記裏面端子層が接続された前記第1積層基板および第2積層基板からなる1つのモジュールを形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0015】
多機能を備えたRFモジュールを安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0017】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0018】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするために半田バンプまたは接続端子の一部にハッチングを付す。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態1では、例えばGSM方式のネットワークを利用して情報を伝送するデジタル携帯電話に使用される多機能RFモジュールついて説明する。
【0021】
図1に、本実施の形態1である多機能RFモジュールを用いたデジタル携帯電話システムの一例を示す。図中、PMはRFパワーモジュール(回路ブロック)、ANTは信号電波の送受信用のアンテナ、1はフロントエンドモジュール(回路ブロック)、2は音声信号をベースバンド信号に変換したり、受信信号を音声信号に変換したり、変調方式切換信号やバンド切換信号を生成したりするベースバンド回路、3は受信信号を変調したりする変復調用回路、FLT1,FLT2は受信信号からノイズや妨害波を除去するフィルタである。フィルタFLT1は、例えば900MHz帯のEGSM900(以下、単にGSMと記す)用、フィルタFLT2は、例えば1800MHz帯のGSM1800(以下、単にDCSと記す)用である。
【0022】
上記フロントエンドモジュール1は、インピーダンス整合回路MN1,MN2、ローパスフィルタLPF1,LPF2、スイッチ回路4a,4b、コンデンサC1,C2および分波器5などを有しており、これら各種回路および素子は1つの回路ブロックを構成している。インピーダンス整合回路MN1,MN2はRFパワーモジュールPMの送信出力端子に接続されてインピーダンスの整合を行う回路、ローパスフィルタLPF1,LPF2は高周波を減衰させる回路、スイッチ回路4a,4bは送受信切り換え用のスイッチ回路、コンデンサC1,C2は受信信号から直流成分をカットする素子、分波器5はGSMの信号とDCSの信号とを分波する回路である。なお、スイッチ回路4a,4bの切換信号CNT1,CNT2は上記ベースバンド回路2から供給される。上記ベースバンド回路2は、DSP(Digital Signal Processor)やマイクロプロセッサ、半導体メモリ等の複数の半導体集積回路で構成されている。
【0023】
上記RFパワーモジュールPMは、例えばHPA、ダイオード、コンデンサおよび抵抗などを有しており、これら各種回路および素子は1つの回路ブロックを構成している。以下に、RFパワーモジュールPMについて説明する。
【0024】
図2に、本実施の形態1であるRFパワーモジュールPMの回路ブロック図を示す。この図2は、例えばGSMとDCSとの2つの周波数帯を使用することが可能なデュアルハンド方式であり、それぞれの周波数帯でGMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying)変調方式とEDGE(Enhanced Data GSM Environment)変調方式との2つの通信方式を使用可能な回路ブロックが例示されている。
【0025】
RFパワーモジュールPMは、HPAであるGSM用の電力増幅回路6Aと、HPAであるDCS用の電力増幅回路6Bと、それら電力増幅回路6A,6Bの増幅動作の制御や補正等を行う周辺回路7とを有している。
【0026】
各電力増幅回路6A,6Bは、それぞれ3つの増幅段6A1〜6A3,6B1〜6B3と、それぞれ3つの整合回路6AM1〜6AM3,6BM1〜6BM3とを有している。すなわち、入力端子8a,8bは、入力用の整合回路6AM1,6BM1を介して1段目の増幅段6A1,6B1の入力に電気的に接続され、1段目の増幅段6A1,6B1の出力は段間用の整合回路6AM2,6BM2を介して2段目の増幅段6A2,6B2の入力に電気的に接続され、2段目の増幅段6A2,6B2の出力は段間用の整合回路6AM3,6BM3を介して最終段の増幅段6A3,6B3の入力に電気的に接続され、最終段の増幅段6A3,6B3の出力は出力端子9a,9bと電気的に接続されている。
【0027】
上記周辺回路7は、制御回路7Aと、上記増幅段6A1〜6A3,6B1〜6B3にバイアス電圧を印加するバイアス回路7B等を有している。制御回路7Aは、上記電力増幅回路6A,6Bに印加する所望の電圧を発生する回路であり、電源制御回路7A1およびバイアス電圧生成回路7A2を有している。電源制御回路7A1は、上記増幅段6A1〜6A3,6B1〜6B3の各出力用のパワーMISFETのドレイン端子に印加される第1電源電圧を生成する回路である。また、上記バイアス電圧生成回路7A2は、上記バイアス回路7Bを制御するための第1制御電圧を生成する回路である。
【0028】
このRFパワーモジュールPMでは、電源制御回路7A1が、外部のベースバンド回路(例えば前記図1のベースバンド回路2)から供給される出力レベル指定信号に基づいて上記第1電源電圧を生成すると、バイアス電圧生成回路7A2が電源制御回路7A1で生成された上記第1電源電圧に基づいて上記第1制御電圧を生成するようになっている。上記ベースバンド回路は、上記出力レベル指定信号を生成する回路である。この出力レベル指定信号は、電力増幅回路6A,6Bの出力レベルを指定する信号で、携帯電話と基地局との間の距離、すなわち、電波の強弱に応じた出力レベルに基づいて生成されるようになっている。
【0029】
ところで、本実施の形態1では、上記フロントエンドモジュール1を1つの回路ブロックとし、上記RFパワーモジュールPMを他の1つの回路ブロックとして、2つの回路ブロックをそれぞれ別体で形成された異なる積層基板に形成し、その各々の積層基板を、その各々の配線同士を電気的に接続した状態で一体的に組み合わせることで1つの多機能RFパワーモジュールを構成している。
【0030】
図3(a)および(b)に、本実施の形態1である多機能RFモジュールMRF1の表面側から見た概略斜視図および概略断面図の一例をそれぞれ示す。
【0031】
1つの多機能RFモジュールMRF1は、第1回路ブロック(基板)MB1と第2回路ブロック(基板)MB2とを有している。第1回路ブロックMB1には、例えばRFパワーモジュールPMが形成され、第2回路ブロックMB2には、例えばフロントエンドモジュール1が形成されている。一方の第1回路ブロックMB1の配線層の数は、ここに形成される回路(ここではRFパワーモジュールPM)に必要な層数で形成されている。他方の第2回路ブロックMB2の配線層の数も、ここに形成される回路(ここではフロントエンドモジュール1)に必要な層数で形成されている。このため、第1、第2回路ブロックMB1,MB2の配線層数は互いに異なっており、ここでは、スイッチ回路を有するフロントエンドモジュール1側の第2回路ブロックMB2の配線層の数の方が、HPAを有するRFパワーモジュールPM側の第1回路ブロックMB1の配線層の数よりも多い。
【0032】
第1回路ブロックMB1は、例えば5層((n+m)層)の第1積層基板10からなり、上記5層((n+m)層)のうち2層(n層)は第1サイズの下部積層基板10D、上記5層((n+m)層)のうち3層(m層)は第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板10Uであり、下部積層基板10D上に上部積層基板10Uが重なっている。ここでは、n層とm層とを異なる層数としたが、n層とm層とは同じ層数でもよく、または異なる層数でもよい。また、ここでは、n層をm層よりも小さい層数としたが、n層をm層よりも大きい層数としてもよく、または小さい層数としてもよい。
【0033】
上部積層基板10Uの表面には、複数の半導体チップ(ここでは半導体チップSC1のみが例示されている)やチップ部品SC2が搭載されている。その複数の半導体チップには、上記RFパワーモジュールPMのHPAが形成されている。例示した1つの半導体チップSC1には、例えば最終段の増幅段6A3,6B3が形成されている。これは、最終段の増幅段6A3,6B3は、フロントエンドモジュール1と接続されるので、フロントエンドモジュール1が形成された第2回路ブロックMB2が組み込まれる近傍に有る方が好ましいからである。上記チップ部品SC2には、コンデンサまたは抵抗等などの受動素子が形成されている。上記下部積層基板10Dにおいて、上部積層基板10Uが重なっていない表面には引き出し配線11が形成されている。
【0034】
第1積層基板10の各層は、セラミック材またはプラスチック材からなり、下部積層基板10Dの露出した表面に形成された引き出し配線11、および上部積層基板10Uの表面に形成され、チップ部品SC2が接続された電極パッド12aは、各層内に形成されたスルーホールに埋め込まれた配線と各層間に形成された配線13とによって第1積層基板10の裏面に形成された外部端子14に電気的に接続されている。また上部積層基板10Uの表面に形成された半導体チップSC1の表面には、電極パッドが形成されており、この電極パッドは、上部積層基板10Uの表面に形成された電極パッド12bとワイヤ16を用いて接続されている。電極パッド12bは、上記電極パッド12aと同様に、各層内に形成されたスルーホールに埋め込まれた配線と各層間に形成された配線13とによって第1積層基板10の裏面に形成された外部端子14に電気的に接続されている。
【0035】
第2回路ブロックMB2は、上記第1積層基板10の層数である5層((n+m)層)とは異なる層数、例えば11層(k層)の第2積層基板17からなり、第1積層基板10の上部積層基板10Uが重なっていない下部積層基板10D上に搭載されている。第2積層基板17の表面には、フロントエンドモジュールを構成する各種回路または素子が形成された複数のチップ部品SC3等が搭載されている。
【0036】
第2積層基板17の各層は、セラミック材またはプラスチック材からなる。いずれの材料も用いることが可能であるが、第2積層基板17の材質は、熱膨張係数を同じにする観点などから、第1積層基板10の材質と同じとすることが望ましい。第2積層基板17の表面に形成され、チップ部品SC3等が接続された電極パッド18aは、各層内に形成されたスルーホールに埋め込まれた配線と各層間に形成された配線19とによって第2積層基板17の裏面に形成された接続端子20に電気的に接続されている。
【0037】
第1積層基板10の配線と第2積層基板17の配線とは、第1積層基板10の上部積層基板10Uの表面に形成された電極パッド12cと第2積層基板17の表面に形成された電極パッド18bとをワイヤ21で繋ぐことにより、電気的に接続される。さらに、図3(b)に示すように、第1積層基板10の配線と第2積層基板17の配線とは、第1積層基板10の下部積層基板10Dの露出した表面に引き出された引き出し配線11と第2積層配線17の裏面に形成された接続端子20とを半田バンプ22または半田ペーストを用いて電気的かつ機械的に接続される。本実施の形態1では、第1積層基板10の配線と第2積層基板17の配線との接続に、ワイヤ21および半田バンプ22(または半田ペースト)の両者を例示したが、どちらか一方の接続でもよい。さらに、第1積層基板10および第2積層基板17の表面は封止材23により保護されている。
【0038】
なお、本実施の形態1では、第1積層基板10に第2積層基板17を組み込むことにより、第1回路ブロックMB1と第2回路ブロックMB2とからなる多機能RFモジュールMRF1を構成したが、第2積層基板17に第1積層基板10を組み込むことにより、多機能RFモジュールMRF1を構成してよい。
【0039】
また、本実施の形態1では、多機能RFモジュールMRF1を第1積層基板10からなる第1回路ブロックMB1と第2積層基板17からなる第2回路ブロックMB2との2つで構成したが、ブロック数はこれに限定されない。例えばさらに第3回路ブロックを追加することが可能であり、多機能RFモジュールを第1積層基板からなる第1回路ブロックと第2積層基板からなる第2回路ブロックと第3積層基板からなる第3回路ブロックとの3つで構成し、例えば第1積層基板に第2積層基板および第3積層基板を組み込むこともできる。
【0040】
このような多機能RFパワーモジュールMRF1を製造するには、例えば次のようにする。まず、第1回路ブロックMB1と、第2回路ブロックMB2とを用意する。続いて、第1回路ブロックMB1に、第2回路ブロックMB2を組み込む。この時、第1回路ブロックMB1の引き出し配線11を通じて第1、第2回路ブロックMB1,MB2の配線同士を電気的に接続する。その後、第1、第2回路ブロックMB1,MB2を組み合わせて構成されたモジュール基板の表面に、半導体チップSC1、チップ部品SC2,SC3を実装した後、半導体チップSC1等と第1回路ブロックMB1の配線とをワイヤ16を通じて電気的に接続する。また、このワイヤボンディング工程時に、第1、第2回路ブロックMB1,MB2間をワイヤ21で電気的に接続する。その後、モジュール基板の表面をエポキシ系樹脂等からなる封止材23により封止する。ここで、例えばRFパワーモジュールの開発期においては、アンテナスイッチ回路を有するフロントエンドモジュール1と、HPAを有するRFパワーモジュールPMとの特性の合わせ込み(例えばインピーダンス整合)の最適評価を行うために(すなわち、高い機能を進めるために)、アンテナスイッチ側の構成を変える場合がある。フロントエンドモジュール1とRFパワーモジュールPMとが最初から同一基板に一体成形されているモジュール基板の場合は、上記の変更要求のたびにモジュール基板全体を製造し直さなければならないので、モジュール基板の製造に時間がかかる上、製造コストが増大する問題がある。特に多品種少量生産品では、製品寿命が短く短納期化が望まれるので、如何に開発期間を短縮するかが重要な課題となっている。また、異なる回路ブロックを一体にする場合、配線層数を多く必要とする回路側に合わせてモジュール基板全体を設計するが、セラミック基板の場合、積層数が多いほどコストも増大するのでモジュール基板全体の製造し直しが頻繁に行われることは材料の無駄が生じ、コスト面上も好ましくない。これに対して本実施の形態1では、例えばアンテナスイッチ回路を有する第2回路ブロックMB2の変更が要求されたら、そのアンテナスイッチ回路を有する第2回路ブロックMB2のみを取り換えれば良く、多機能RFモジュールMRF1全体を製造し直す必要がない。このため、時間的および材料の上での無駄を大幅に省くことができるので、多機能RFモジュールMRF1の開発期間を大幅に短縮できる上、製造コストを大幅に低減できる。特に、多品種少量生産品においては、機能の高い製品を短納期で提供できる。
【0041】
このように、本実施の形態1によれば、例えば5層((n+m)層)の第1積層基板10からなるRFパワーモジュールPMが形成された第1回路ブロックMB1と、例えば11層(k層)の第2積層基板17からなるフロントエンドモジュール1が形成された第2回路ブロックMB2とを用意し、第1積層基板10に第2積層基板17を組み込むことによって、第1積層基板10に形成された第1回路ブロックMB1および第2積層基板17に形成された第2回路ブロックMB2からなる1つの多機能RFモジュールMRF1を構成することができる。従って、どちらか一方の回路ブロック(例えば第2回路ブロックMB2に形成されたフロントエンドモジュール1)に仕様変更が生じた場合は、他方の回路ブロック(例えば第1回路ブロックMB1に形成されたRFパワーモジュールPM)を変更することなく、仕様変更の生じた一方の回路ブロックのみを取り替えればよく、多機能RFモジュールMRF1全体を製造しなおす必要がない。また、第1積層基板10および第2積層基板17の各々の層数を搭載する各種回路または素子に合わせて製作できるので、第1積層基板10および第2積層基板17に不要な層を生じさせることなく、多機能RFモジュールMRF1を形成することができる。これらにより、安価に多機能RFモジュールMRF1を形成することができる。
【0042】
(実施の形態2)
多機能RFモジュールは、積層基板の裏面に設けられた外部端子を顧客から用意された実装基板、例えばPCB(Printed Circuit Board)基板の電極に、例えば半田バンプまたは半田ペーストを用いて電気的かつ機械的に接続することにより、実装基板に搭載される。本実施の形態2では、モジュール基板(積層基板)の裏面の外部端子が形成された層(以下、単に裏面端子層と記す)をコンポーネント化し、互いに異なる外部端子の形状を有する複数種類の裏面端子層(整合用の基板)を準備しておき、顧客から用意された実装基板に適した外部端子の形状を有する裏面端子層を半田バンプまたは半田ペーストを用いてモジュール基板に接続した後(すなわち、実装基板に応じて裏面端子層を変更できるようになっている)、多機能RFモジュールを実装基板に搭載する。
【0043】
以下、本実施の形態2である積層基板の裏面端子層の一例を図4〜図6を用いて説明する。
【0044】
図4(a)および(b)に、本実施の形態2である多機能RFモジュールの裏面側から見た概略斜視図および裏面図の一例をそれぞれ示す。
【0045】
図4に示す多機能RFモジュールMRF2は、前記実施の形態1で説明した多機能RFモジュールMRF1とほぼ同じものである。すなわち、例えば5層((n+m)層)の第1積層基板10からなり、RFパワーモジュールPMが形成された第1回路ブロックMB1と、例えば11層(k層)の第2積層基板17からなり、フロントエンドモジュール1が形成された第2回路ブロックMB2とで1つの多機能RFモジュールMRF2が構成されている。
【0046】
ただし、本実施の形態2においては、多機能RFモジュールMRF2の裏面側の層、すなわち、第1積層基板10の下部積層基板10Dの裏面端子層RTL1が、第1、第2回路ブロックMB1,MB2とは別体に形成されており、多機能RFモジュールMRF2のモジュール基板の製造時に、多機能RFモジュールMRF2を実装する実装基板の外部端子に適した裏面端子層RTL1を選択して取り付けることが可能となっている。すなわち、裏面端子層RTL1は、多機能RFモジュールMRF2の外部端子と、多機能RFモジュールMRF2を実装する実装基板の外部端子との整合に用いられる層となっている。この裏面端子層RTL1の裏面(第1面)には、実装基板の外部端子の配置に応じた外部端子が配置されている。この裏面端子層RTL1の第1面の外部端子の配置種類は、実装基板の外部端子種類に応じて複数のものが用意される。すなわち、裏面端子層RTL1は、実装基板の外部端子に応じて複数種類が用意される。ただし、裏面端子層RTL1の第1面とは反対側の第2面には、第1、第2回路ブロックMB1,MB2の接続端子の配置に応じた接続端子が配置されており、その裏面端子層RTL1の第2面の接続端子の配置は、どの裏面端子層RTL1も同じである。
【0047】
図4では、裏面端子層RTL1の接続面の外周に沿って複数の外部端子24が配置され、裏面端子層RTL1の接続面のほぼ中央部に接地端子GNDが配置されている場合が例示されている。
【0048】
また、図5および図6は、他の裏面端子層RTL2,RTL3の接続面図を例示している。図5に示す多機能RFモジュールMRF2の裏面端子層RTL2では、裏面端子層RTL2の接続面の1辺に沿って6つの入出力端子25が配置され、対向する他の一辺に沿って6つの入出力端子25、1つのVcc端子VCおよび1つのVdd端子VDが配置され、裏面端子層RTL2の接続面のほぼ中央部には接地端子GNDが配置されている場合が例示されている。
【0049】
同様に、図6に示す多機能RFモジュールMRF2の裏面端子層RTL3では、Vdd端子VDの位置および接地端子GNDの一部の配置が、図5のVdd端子VDおよび接地端子GNDに対して若干違う場合が例示されている。
【0050】
なお、本実施の形態2では、裏面端子層RTL1〜RTL3の外部端子の形状として、図4〜図6に示す3つの形状を例示したが、これに限定されるものではない。また、裏面端子層RTL1〜RTL3の各々は、1層に限定されるものではなく、多層構成としても良い。また、裏面端子層RTL1〜RTL3の本体材料は、熱膨張係数を同一とする観点等から、第1、第2回路ブロックMB1,MB2の本体材料と同一とすることが好ましい。
【0051】
このように、本実施の形態2によれば、顧客から用意される実装基板に対して、モジュール基板全体の設計を変更することなく、モジュール基板の裏面端子層RTL1〜RTL3のみを変更することで所望する外部端子の形状を提供することができる。このため、多機能モジュールMRF2のモジュール基板の製造時間を短縮できる。また、多機能RFモジュールMRF2のコストの増加を抑えることができる。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0053】
例えば、前記実施の形態では、第1回路ブロックと第2回路ブロックとを組み合わせて、1つの品種、例えば携帯電話用の多機能RFモジュールを構成するとしたが、回路ブロックに代えて、第1の品種と第2の品種とを組み合わせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の半導体装置の製造方法は、携帯電話用の多機能RFモジュールの製造のみでなく、用途に限定されずモジュール全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1である多機能RFモジュールを用いたデジタル携帯電話システムの一例である。
【図2】本発明の実施の形態1であるRFパワーモジュールに搭載される増幅回路の回路ブロック図である。
【図3】(a)および(b)は、それぞれ本発明の実施の形態1である多機能RFモジュールの表面側から見た概略斜視図および概略断面図の一例である。
【図4】(a)および(b)は、それぞれ本発明の実施の形態2である多機能RFモジュールの裏面側から見た概略斜視図および平面図の一例である。
【図5】本発明の実施の形態2である多機能RFモジュールの裏面概略図の他の例である。
【図6】本発明の実施の形態2である多機能RFモジュールの裏面概略図の他の例である。
【符号の説明】
【0056】
1 フロントエンドモジュール
2 ベースバンド回路
3 変復調用回路
4a,4b スイッチ回路
5 分波器
6A,6B 電力増幅回路
6A1 増幅段
6AM1 整合回路
6B1 増幅段
6BM1 整合回路
7 周辺回路
7A 制御回路
7A1 電源制御回路
7A2 バイアス電圧生成回路
7B バイアス回路
8a,8b 入力端子
9a,9b 出力端子
10 第1積層基板
10D 下部積層基板
10U 上部積層基板
11 引き出し配線
12a〜12c 電極パッド
13 配線
14 外部端子
16 ワイヤ
17 第2積層基板
18a,18b 電極パッド
19 配線
20 接続端子
21 ワイヤ
22 半田バンプ
23 封止材
24 外部端子
25 入出力端子
ANT アンテナ
C1,C2 コンデンサ
CNT1,CNT2 切換信号
FLT1,FLT2 フィルタ
GND 接地端子
LPF1,LPF2 ローパスフィルタ
MB1 第1回路ブロック
MB2 第2回路ブロック
MN1,MN2 インピーダンス整合回路
MRF1,MRF2 多機能RFモジュール
PM RFパワーモジュール
RTL1〜RTL3 裏面端子層
SC1 半導体チップ
SC2,SC3 チップ部品
VC Vcc端子
VD Vdd端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路ブロックを有するモジュール回路が形成されたモジュール基板を備え、
前記モジュール基板は、別体に形成された複数の基板を、その各々の配線同士が接続された状態で一体的に組み合わせることで形成されており、
前記複数の基板の中には、互いの配線層数が異なるものが存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
複数の回路ブロックを有するモジュール回路が形成されたモジュール基板を備え、
前記モジュール基板は、別体に形成された複数の基板を、その各々の配線同士が接続された状態で一体的に組み合わせることで形成されており、
前記複数の基板の各々には、前記複数の回路ブロックの各々が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
モジュール回路が形成されたモジュール基板を備え、
前記モジュール基板は、別体に形成された複数の基板を、その各々の配線同士が接続された状態で一体的に組み合わせることで形成されており、
前記複数の基板は、前記モジュール基板の外部端子と前記モジュール基板が搭載される実装基板の外部端子との整合用の基板を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
(a)n層からなる第1サイズの下部積層基板とm層からなる前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった(n+m)層からなる第1積層基板を用意する工程と、
(b)前記(n+m)層とは異なるk層からなる第2積層基板を用意する工程と、
(c)前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込んで1つのモジュールを形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
(a)第1サイズの下部積層基板と前記第1サイズよりも小さい第2サイズの上部積層基板とを備え、前記下部積層基板上に前記上部積層基板が重なった第1回路ブロックが形成された第1積層基板を用意する工程と、
(b)第2回路ブロックが形成された第2積層基板を用意する工程と、
(c)前記第1積層基板に前記第2積層基板を組み込んで、前記第1および第2回路ブロックからなる1つのモジュールを形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−24744(P2006−24744A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201501(P2004−201501)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(000233295)日立ハイブリッドネットワーク株式会社 (195)
【出願人】(504007202)日立ハイテクデーイーテクノロジー株式会社 (11)