説明

半導体装置の実装構造

【課題】実装後の信頼性を確保することができる半導体装置の実装構造を提供することを目的とする。
【解決手段】外部接続用の電極が形成された電極形成面を有する半導体素子2’を備えた半導体装置2を基板1に実装した半導体装置の実装構造において、半導体装置2を200μm以下の厚みtに薄化加工された半導体素子2’の電極形成面にバンプ3を形成して構成し、基板1への実装時にはバンプ3を基板1の回路電極1aに半田接合して実装高さhが厚みtより大きくなるようにする。これにより、実装状態において半導体素子2’が基板1の変形に追従して変形し、半導体装置2と基板1の接合部に作用する応力を低減して、実装後の信頼性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部接続用の電極が形成された電極形成面を有する半導体素子を備えた半導体装置をワークに実装して成る半導体装置の実装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子をパッケージングして製造される半導体装置を基板などのワークに実装する実装構造として、半導体装置に形成された半田バンプなどの突出電極をワークの回路電極に接合した構造が知られている。このような実装構造において、実装後の接合信頼性を確保するためには、半田バンプなどの突出電極の接合部に作用する応力を低減することが求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来の半導体装置の実装構造においては、実装後の環境温度変化によって半導体素子とワークとの熱膨張率の差に起因して発生する熱応力は主として接合部に集中して作用し、この熱応力が繰り返し作用するヒートサイクルによって接合部の破断を生じやすく、実装後の信頼性が確保されないという問題点があった。
【0004】
そこで本発明は、実装後の信頼性を確保することができる半導体装置の実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の半導体装置の実装構造は、外部接続用の電極が形成された電極形成面を有する厚みが200μm以下の半導体素子と半導体素子の電極形成面の裏面に接着材により接合された補強部材を備えた半導体装置をワークに実装した半導体装置の実装構造であって、前記接着材を低弾性係数の樹脂接着材とすることにより、半導体素子が前記補強部材に拘束されることなくワークの変形に追従して変形するようにした。
【0006】
請求項2記載の半導体装置の実装構造は、請求項1記載の半導体装置の実装構造であって、前記半導体素子の厚みが、200μm以下である。
【0007】
請求項3記載の半導体装置の実装構造は、請求項1記載の半導体装置の実装構造であって、前記補強部材の端部が、ワークに接合されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体素子の電極をワークの回路電極に接合した実装状態において半導体素子がワークの変形に追従して変形する構成とすることにより、半導体装置とワークとの接合部に作用する応力を低減して、実装後の信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の半導体装置の実装構造の斜視図、図2は本発明の実施の形態1の半導体装置の実装構造の側断面図、図3は本発明の実施の形態1の半導体装置の実装構造における半田接合部の応力解析結果を示すグラフである。
【0010】
図1において、ワークである基板1には半導体装置2が実装されている。半導体装置2はシリコンを薄片状に加工した半導体素子2’を備えており、半導体素子2’の下面は、
外部接続用の電極である金属バンプ3(以下、単に「バンプ」3と略記。)が形成された電極形成面となっている。バンプ3を基板1の回路電極1a(図2参照)に半田接合することにより、半導体装置2は基板1に実装される。
【0011】
図2(a)において、半導体素子2’は機械研磨やエッチングなどを用いた薄化工程を経て厚みtが200μm以下となっている。一般に、半導体素子をバンプを介して基板に実装した状態では、半導体素子の厚み寸法が小さいほど、また実装高さ(半導体素子下面の基板上面からの高さ)が高いほど実装後の接合信頼性が優れている。このため、本実施の形態1に示す実装構造では、上述のように半導体素子2’を薄化して厚みtを200μm以下に設定すると共に、実装高さhが厚みtよりも十分大きくなるよう、寸法設定される。すなわち、半導体装置2の製造過程においては、バンプ3の高さ寸法は半導体素子2’の厚みよりも大きくなるように設定される。
【0012】
図2(b)は、半導体装置2を基板1に実装した実装構造において、実装後に基板1に何らかの外力により、撓み変形が発生した状態を示している。半導体素子2’は上述のように薄くて撓みやすいため、基板1の撓み変形に対して半導体素子2’が追従して変形する。発明者らの実験によれば、半導体素子2’の厚みtが200μmを下回るようになると、実装状態において基板の変形に対する追従性が明瞭に認められるようになる。
【0013】
そしてこの200μm程度の厚みの半導体素子2’を用いた実装構造では、半田接合部に発生する応力が適正レベル以下に保たれることが解析結果によって示されている。図3はこの解析結果を示すものであり、バンプ3と回路電極1aとの半田接合部に発生する応力と、半導体素子2’の厚さtとの相関を示している。図3から判るように、厚さtが200μmでは、半田接合部の応力は1kg/mm以下で、破断の発生を防止するために十分に低いレベルにある。さらに厚みtが100μm以下になると、厚みの減少に伴って半田接合部の応力が急激に低下していることが判る。
【0014】
すなわち、半導体素子の厚みtが200μm以下の半導体装置を用いることにより、基板1の変形時に半導体素子の追従性を確保することができ、更に厚みtを100μm以下に設定することにより、半田接合部の応力レベルを大幅に低下させることができる。このように、半導体素子2’を極薄とすることにより、実装後にアンダーフィル樹脂を充填するなどの補強処理を必要とすることなく半田接合部の応力が緩和され、簡易な形態のパッケージ構造で実装後の信頼性を確保することができる。
【0015】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2の半導体装置の実装構造の斜視図、図5、図6は本発明の実施の形態2の半導体装置の実装構造の側断面図である。
【0016】
図4において、基板11には半導体装置12が実装されている。半導体装置12は実施の形態1に示す半導体素子2’と同様の半導体素子12’を備えており、半導体素子12’の下面は、外部接続用の電極であるバンプ13が形成された電極形成面となっている。バンプ13を基板11の回路電極11a(図5参照)に半田接合することにより、半導体装置12は基板11に実装される。
【0017】
図5(a)において半導体装置12は、半導体素子12’の電極形成面の裏面に、接着材15により接合されたハンドリング用の保持部としてのバンパ部材14とを備えた構成となっており、バンパ部材14のサイズB2は半導体素子12’のサイズB1よりも大きく、その外周端は、半導体素子12’の外周端よりも外側に突出している。バンパ部材14は半導体素子12’の中央部のみと接着材15によって局部的に接合された構造となっている。半導体素子12’の外端部は、バンパ部材14に対して自由端となっており、熱
膨張で半導体素子12’とバンパ部材14のサイズが変化しても半導体装置12が反る心配がない。
【0018】
この半導体装置12を基板11に実装して成る実装構造において、図5(b)に示すように、実装後に基板11に何らかの外力により、撓み変形が発生した場合には、半導体装置12のうち半導体素子12’は薄くて撓みやすいため、基板11の撓み変形に対して半導体素子12’のみが追従して変形する。このとき、バンパ部材14は半導体素子12’の中央部のみと局部的に接合されているため、半導体素子12’の変形は、バンパ部材14によって拘束されることなく許容される。これにより、本実施の形態2に示す半導体装置の実装構造においても、実施の形態1に示す例と同様の効果を得ることができる。
【0019】
図6は、バンパ部材として、周囲に突部14’aが設けられ半導体素子12’が接合される部分に凹部14’bが形成された形状のバンパケース14’を用いた例を示している。バンパケース14’は、図4に示す例と同様に半導体素子12’と中央部のみと局部的に接着材15によって接合されている。
【0020】
この半導体装置の実装構造は、バンプ13を基板11の電極回路11aに接合するとともに、バンパケース14’の端部に設けられた突部14’aを基板11に接着材16によって接合することにより、半導体装置を基板11に固定する形態となっている。この実装構造においても、半導体素子12’の変形が許容される構造となっており、実施の形態1に示す例と同様の効果を得る。また、バンパケース14’はハンドリング時において半導体素子12’の側方をも保護し、実装後にはバンパケース14’によって基板の変形が防止され、実装後の信頼性が更に向上している。
【0021】
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3の半導体装置の実装構造の斜視図、図8、図9は本発明の実施の形態3の半導体装置の実装構造の側断面図である。
【0022】
図7において、基板21には半導体装置22が実装されている。半導体装置22は実施の形態1に示す半導体素子2’と同様の半導体素子22’を備えており、半導体素子22’の下面は、外部接続用の電極であるバンプ23が形成された電極形成面となっている。バンプ23を基板21の回路電極21a(図8参照)に半田接合することにより、半導体装置22は基板21に実装される。
【0023】
図8(a)において半導体装置22は、半導体素子22’の電極形成面の裏面に、接着材25により接合された補強部材としてのバンパ部材24を備えた構成となっており、バンパ部材24のサイズB2は半導体素子22’のサイズB1よりも大きく、その外周端は、半導体素子22’の外周端よりも外側に突出している。バンパ部材24は半導体素子22’と接着材25によって接合された構造となっている。ここで、接着材25は低弾性係数の樹脂接着材であり、エラストマーなど接合状態における弾性係数が小さく、小さな外力で容易に伸縮する材質が用いられる。すなわち接着材25は半導体素子22’の変形を許容する状態で、この半導体素子22’をバンパ部材24に接合している。
【0024】
この半導体装置22を基板21に実装して成る実装構造において、図8(b)に示すように、実装後に基板21に何らかの外力により、撓み変形が発生した場合には、半導体装置21のうち半導体素子22’は薄くて撓みやすく、しかも接着材25は低弾性係数の変形しやすい材質を用いていることから、基板21の変形に対して半導体素子22’と接着材25の接着層が追従変形する。したがって、半導体素子22’の変形は、バンパ部材24によって拘束されることなく許容される。これにより、本実施の形態3に示す半導体装置の実装構造においても、実施の形態1に示す例と同様の効果を得ることができる。
【0025】
図9は、バンパ部材として、周囲に突部24’aが設けられ半導体素子12’が接合される部分に凹部24’bが形成された形状のバンパケース24’を用いた例を示している。バンパケース24’は、図7に示す例と同様に半導体素子22’と接着材25によって接合されている。
【0026】
この半導体装置の実装構造は、バンプ23を基板21の電極回路21aに接合するとともに、バンパケース24’の端部に設けられた突部24’aが基板21に接合されることにより、半導体装置22が基板21に固定される形態となっている。この実装構造においても、半導体素子22’のたわみが許容される構造となっており、実施の形態1に示す例と同様の効果を得る。また、バンパケース24’はハンドリング時において半導体素子22’の側方をも保護し、実装後にはバンパケース24’によって基板の変形が防止され、実装後の信頼性が更に向上している。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、半導体素子の電極をワークの回路電極に接合した実装状態において半導体素子がワークの変形に追従して変形する構成としたので、半導体装置とワークとの接合部に作用する応力を低減して、実装後の信頼性を確保することができ、半導体装置の実装構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1の半導体装置の実装構造の斜視図
【図2】(a)本発明の実施の形態1の半導体装置の実装構造の側断面図(b)本発明の実施の形態1の半導体装置の実装構造の側断面図
【図3】本発明の実施の形態1の半導体装置の実装構造における半田接合部の応力解析結果を示すグラフ
【図4】本発明の実施の形態2の半導体装置の実装構造の斜視図
【図5】(a)本発明の実施の形態2の半導体装置の実装構造の側断面図(b)本発明の実施の形態2の半導体装置の実装構造の側断面図
【図6】本発明の実施の形態2の半導体装置の実装構造の側断面図
【図7】本発明の実施の形態3の半導体装置の実装構造の斜視図
【図8】(a)本発明の実施の形態3の半導体装置の実装構造の側断面図(b)本発明の実施の形態3の半導体装置の実装構造の側断面図
【図9】本発明の実施の形態3の半導体装置の実装構造の側断面図
【符号の説明】
【0029】
1,11,21 基板
2,12,22 半導体装置
3,13,23 バンプ
14,24 バンパ部材
15,25 接着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部接続用の電極が形成された電極形成面を有する厚みが200μm以下の半導体素子と半導体素子の電極形成面の裏面に接着材により接合された補強部材を備えた半導体装置をワークに実装した半導体装置の実装構造であって、前記接着材を低弾性係数の樹脂接着材とすることにより、半導体素子が前記補強部材に拘束されることなくワークの変形に追従して変形することを特徴とする半導体装置の実装構造。
【請求項2】
前記半導体素子の厚みが、200μm以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の実装構造。
【請求項3】
前記補強部材の端部が、ワークに接合されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2004−343142(P2004−343142A)
【公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223188(P2004−223188)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【分割の表示】特願2000−391945(P2000−391945)の分割
【原出願日】平成12年12月25日(2000.12.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】