説明

半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法

【課題】冷却ハースに収納するハースライナーのセット位置の位置ズレ、および傾きを抑制できる保持治具を提供する。
【解決手段】図1に示すように、蒸着材を収納するハースライナー10と、ハースライナー10を保持するための凹部が設けられた冷却ハース60と、ハースライナー10を冷却ハース60に固定するためのハースライナー保持治具30と、を備え、ハースライナー保持治具30は、冷却ハース60の底部に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の蒸着装置には、電子ビームの照射によって加熱溶解される蒸着材を入れるハースライナーと、それを保持する冷却ハースが設けられている。ハースライナーは、主に蒸着材の汚染防止と蒸着レートアップを目的として設けられている。そして、蒸着材の種類に応じて種々の材質・形状のハースライナーが使用されている。また、蒸着材を電子ビームによって効率良く、かつ安定して加熱溶解させるため、冷却ハースに奪われる熱量を適度に抑制する必要がある。
【0003】
特許文献1−5には、蒸着装置が開示されている。特許文献1の蒸着装置では、高真空状態に維持されたベルジャー内で材料を気化し、被蒸着物の成膜面に材料を堆積させている。特許文献2の蒸着装置では、蒸発源とハースとの間に介在するハースライナーの少なくとも側面の主たる部分が、ハースと離間している。特許文献3の蒸着装置では、電熱ヒータをるつぼの上部開口を覆うように配置している。特許文献4の蒸着装置では、蒸着材料を収納する坩堝状の容器と、容器を収容する坩堝状介在部材とを収納体に収納し、さらに、容器や坩堝状介在部材はそれぞれ複数の支承体で支承されている。特許文献5の蒸着装置では、ハースライナーが互いに切り離された複数の収納容器からなる多重構造を有し、これら収納容器の相互間にも断熱空間が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−164303号公報
【特許文献2】実開昭58−045363号公報
【特許文献3】特開2004−353084号公報
【特許文献4】特開2005−232492号公報
【特許文献5】特開2003−166049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却ハースの傾斜部と接することで、冷却ハースから熱を吸収するため、冷却ハースと接するように上部がU字状となっている上部湾曲部接触型のハースライナーがある。この上部湾曲部接触型のハースライナーを用いる場合、本発明者は以下の課題があることを見出した。冷却ハースおよび、ハースライナーの変形に伴って、ハースライナーをセットした位置の位置ズレや傾きが発生する。これによって、冷却ハースからの冷却と、電子ビームによる加熱のバランスが崩れる。このため、電子ビームによって蒸着材は異常加熱され、蒸着材の異常突沸が発生する。このとき、粒上の蒸着材が半導体ウェハに付着することによって、突起状の異常蒸着が引き起こされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、蒸着材を収納するハースライナーと、
上記ハースライナーを保持するための凹部が設けられた冷却ハースと、
上記ハースライナーを上記冷却ハースに固定するためのハースライナー保持治具と、
を備え、
上記ハースライナー保持治具は、上記冷却ハースの底部に設置されている半導体装置の製造装置が提供される。
【0007】
さらに本発明によれば、蒸着材を真空蒸着させる半導体装置の製造装置を用いており、
ハースライナー保持治具を、冷却ハースに設けられた凹部にセットするセット工程と、
上記ハースライナー保持治具上に、上記蒸着材を収納したハースライナーを保持する保持工程と、
を含み、
上記保持工程において、上記ハースライナー保持治具は、上記冷却ハースの底に設置されている半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明によれば、ハースライナー保持治具を設けたことによって、冷却ハースに収納するハースライナーの全ての位置が決定される。これによってハースライナーのセット位置の位置ズレ、および傾きを抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハースライナー内の蒸着材が異常加熱されにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る蒸着装置を示す図である。
【図2】本実施形態に係る蒸着装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る蒸着装置を示す図である。
図1に示すように、蒸着材を収納するハースライナー10と、ハースライナー10を保持するための凹部が設けられた冷却ハース60と、ハースライナー10を冷却ハース60に固定するためのハースライナー保持治具30と、を備え、ハースライナー保持治具30は、冷却ハース60の底部に設置されている。
【0013】
なお、蒸着材20の異常蒸着を抑制し、かつハースライナー10に均一な冷却効果を得るために、ハースライナー10は真上から見て冷却ハース60と同心円状に合わせて、真横から見て冷却ハース60と水平になるようセットする必要がある。
【0014】
さらに、ハースライナー10は、モリブデン、タングステン、タンタル、及びアルミナの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。また、ハースライナー保持治具30は、蒸着材20の冷却効率を、均一、かつ安定に保つため、ハースライナー10と同等かそれ以上の熱伝導性をもち、なおかつ、耐熱性が高い材料で形成されており、カーボン、及び、アルミナ・窒化ホウ素等のセラミックスの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。なお、ハースライナー10には、上部湾曲部12を設けてもよい。
【0015】
本実施形態に係る蒸着装置では、ハースライナー10の底部14と冷却ハース60はハースライナー保持治具30を介して間接的に接している。ただし、冷却ハース60の傾斜部50とハースライナー10の上部湾曲部12とは非接触である。
【0016】
ハースライナー保持治具30は、中央部に凹部を有する皿状であり、側面の内周面32が傾斜している。ハースライナー保持治具30にハースライナーをセットする際、ハースライナー保持治具30の傾斜した内周面32とハースライナー10の底部14の外縁が接することによって、ハースライナー10の位置は定まる。なお、ハースライナー10の底部14と、ハースライナー保持治具30の側面の内周面32との断面形状が互いに相似形であれば、ハースライナー10の位置は、より定まりやすくなる。また、ハースライナー10の底部14全体とハースライナー保持治具30が接していないため、蒸着材20の冷却異常が発生することを防止できる。
【0017】
蒸着処理を行う際、冷却ハース60を回転させる。このとき、冷却ハース60の上方には、カバーが設けられる。このため、冷却ハース60の上面よりもハースライナー10の上部湾曲部12が上にはみ出ていた場合、冷却ハース60を回転させると、ハースライナー10の上部湾曲部12がカバーに引っかかり回転異常を引き起こす可能性が出てくる。このため、ハースライナー10の上部湾曲部12は冷却ハース60の上面よりも上には出ないことが好ましい。
【0018】
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について説明する。
【0019】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、電極や配線となる薄膜を形成するために、図1に示した蒸着装置を用いている。まず、ハースライナー保持治具30を、冷却ハース60に設けられた凹部にセットする。次に、ハースライナー保持治具30上に、蒸着材20を収納したハースライナー10を保持する。その後、蒸着材20を加熱溶解させるために、電子ビームを照射する。これらの操作を行うことにより、蒸着処理が行われる。
【0020】
次に、本実施形態による効果について説明する。
【0021】
ハースライナー10は、上部湾曲部12ではなく、底部14で支えられることによって、ハースライナー10の重心が定まりやすくなる。このため、ハースライナー10を冷却ハース60の凹部に収納する際、ハースライナー保持治具30を用いることで、位置ずれや傾きが発生しにくくなる。これにより、冷却ハース60による蒸着材20の冷却効率が均一、かつ安定になることで、蒸着材20の異常加熱は抑制できる。すなわち、異常蒸着してしまった半導体ウェハの数は抑制され、廃棄する半導体ウェハの数を抑制することができる。
【0022】
(第2の実施形態)
図2は、本実施形態に係る蒸着装置を示す図である。本実施形態においても半導体装置の製造工程は第1の実施形態と同じである。
図2に示すように本実施の形態の半導体装置は、ハースライナー10において上部の湾曲部が設けられていない。本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0023】
なお、本実施形態に係る半導体装置の製造装置を用いることによって、廃棄する半導体ウェハの数は、従来比と比較して60%程度低減させることができる。
【0024】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0025】
10 ハースライナー
12 上部湾曲部
14 底部
20 蒸着材
30 ハースライナー保持治具
32 内周面
40 側壁部
50 傾斜部
60 冷却ハース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着材を収納するハースライナーと、
前記ハースライナーを保持するための凹部が設けられた冷却ハースと、
前記ハースライナーを前記冷却ハースに固定するためのハースライナー保持治具と、
を備え、
前記ハースライナー保持治具は、前記冷却ハースの底部に設置されている半導体装置の製造装置。
【請求項2】
前記ハースライナーは、モリブデン、タングステン、タンタル、及びアルミナの少なくとも1つを含む請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項3】
前記ハースライナー保持治具は、前記ハースライナーと同等かそれ以上の熱伝導性をもち、なおかつ、耐熱性が高い材料で形成されている請求項1または2に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項4】
前記ハースライナー保持治具は、カーボン、及び、アルミナ・窒化ホウ素等のセラミックスの少なくとも1つを含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項5】
蒸着材を真空蒸着させる半導体装置の製造装置を用いており、
ハースライナー保持治具を、冷却ハースに設けられた凹部にセットするセット工程と、
前記ハースライナー保持治具上に、前記蒸着材を収納したハースライナーを保持する保持工程と、
を含み、
前記保持工程において、前記ハースライナー保持治具は、前記冷却ハースの底に設置されている半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記蒸着材を加熱溶解させるために、電子ビームを照射する照射工程をさらに含む請求項5に記載の半導体装置の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate