説明

半導体装置及びその駆動方法

【課題】動作遅延を抑制することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】命令を読み出す読み出し部1と、命令に基づいて演算を行う演算部2とを用いてパイプライン処理を行う半導体装置において、分岐予測がはずれた際に当該読み出し部1が保持する命令をフリップフロップ10からメモリ11へと送信する。なお、読み出し部1を構成するフリップフロップ10及びメモリ11間の命令の送受は、演算部2によって制御される。これにより、当該分岐予測が外れた後に読み出し部1が読み出す命令がサブルーチンである場合などにおける読み出し部1の無駄な動作をなくすことが可能となる。すなわち、読み出し部1が再度同一命令を読み出すことなく、メモリ11に保持されている命令をフリップフロップ10へと返送することで演算部2に対して当該命令を出力することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその駆動方法に関する。特に、パイプライン処理を行う半導体装置及びその駆動方法に関する。なお、本明細書において、半導体装置とは、半導体特性を利用する全ての装置を指す。
【背景技術】
【0002】
多くの大規模集積回路(Large Scale Integration:LSI)及び中央演算装置(Central Processing Unit:CPU)などでは、パイプライン処理を行うことによって回路動作の高速化を図っている。なお、パイプライン処理では、回路を直列に連結された複数の処理ユニットに分割し、当該複数の処理ユニットのそれぞれにおいて命令に従った処理を同時並行的に実行する。そして、当該複数の処理ユニットの一では、処理後に処理済みの命令を後段の処理ユニットに対して出力すると共に前段の処理ユニットから新たな命令が入力される。これにより、各処理ユニットを効率良く動作させることが可能となる。
【0003】
ただし、パイプライン処理においては、当該複数の処理ユニットの動作が停止(パイプラインハザード、ハザード)してしまうことがある。例えば、当該複数の処理ユニットに対して条件分岐命令が入力される場合にハザードを生じることがある。なお、条件分岐命令とは、ある条件を満たした場合に分岐が成立する命令である。この場合、当該条件を満たすか否かを判定する処理ユニット(演算部ともいう)が動作するまで、当該分岐が成立するか否かが分からない。よって、当該分岐が成立するか否かが判明するまで、命令を読み出す(フェッチする)処理ユニット(読み出し部ともいう)の動作を停止させる必要がある。これは、回路動作が遅延することを意味する。
【0004】
これに対して、当該分岐が成立するか否かを予測することで、それが判明する前であっても、読み出し部の動作を継続して行う技術(分岐予測)が知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、当該予測が的中した場合には、回路を遅延させることなく動作させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−69960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、上述の分岐予測が外れた場合には、読み出し部において既存の命令を破棄し、且つ新たな命令を読み出すことが必要となる。よって、当該分岐予測を行わない場合と同程度又はそれ以上に動作遅延が生じることとなる。
【0007】
ここで、当該新たな命令がサブルーチンである場合などにおいては、当該複数の処理ユニットが当該サブルーチンなどに従った処理を行った後に、読み出し部において一度破棄した命令を再度読み出すことになる。すなわち、読み出し部において、同様の動作を2回行うことになる。
【0008】
上述の点に鑑み本発明の一態様は、読み出し部における無駄な動作をなくし、動作遅延を抑制することが可能な半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の半導体装置には、読み出し部に命令の読み出し及び保持を行うフリップフロップ、及びフリップフロップとの間で命令を送受するメモリが設けられる。そして、読み出し部によって読み出された命令に基づいて動作する演算部が出力する信号によって、フリップフロップ及びメモリ間の命令の送受を制御する。
【0010】
具体的には、本発明の一態様は、命令を読み出す読み出し部と、命令に基づいて演算を行う演算部とを用いてパイプライン処理を行う半導体装置であって、読み出し部は、命令の読み出し及び保持を行うフリップフロップと、フリップフロップとの間で命令を送受するメモリと、を有し、フリップフロップ及びメモリ間の命令の送受は、演算部が出力する信号によって制御される半導体装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様の半導体装置は、読み出し部を構成するフリップフロップ及びメモリ間の命令の送受を演算部によって制御することが可能である。よって、上述の分岐予測が外れた場合であっても読み出し部における既存の命令を破棄することなく保持することが可能となる。具体的には、演算部によってフリップフロップが保持するデータをメモリへと転送することで、当該既存の命令を保持することが可能である。
【0012】
そして、読み出し部において読み出される命令に基づいて演算部が動作した後に、再度当該既存の命令を読み出す動作を行うことなく、演算部が当該既存の命令に基づく動作を行うことが可能となる。具体的には、演算部によってメモリが保持するデータをフリップフロップへと転送することで当該既存の命令を読み出し部から演算部に対して出力することが可能である。
【0013】
したがって、本発明の一態様の半導体装置は、分岐予測が外れた後に読み出し部が読み出す命令がサブルーチンである場合などにおける無駄な動作をなくすことが可能となる。これにより、当該半導体装置の動作遅延を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)、(B)半導体装置の構成例を示す図。
【図2】(A)、(B)メモリの構成例を示す図。
【図3】(A)〜(E)トランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【図4】(A)〜(D)トランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【図5】(A)〜(D)トランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【図6】(A)、(B)トランジスタの作製工程の一例を示す断面図。
【図7】(A)〜(C)トランジスタの一例を示す断面図。
【図8】(A)〜(E)酸化物半導体の結晶構造を説明する図。
【図9】(A)〜(C)酸化物半導体の結晶構造を説明する図。
【図10】(A)〜(C)酸化物半導体の結晶構造を説明する図。
【図11】(A)、(B)酸化物半導体の結晶構造を説明する図。
【図12】トランジスタの一例を示す(A)上面図、(B)断面図。
【図13】(A)、(B)トランジスタの特性を示す図。
【図14】トランジスタの特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の一態様について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得る。したがって、本発明は以下に示す記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0016】
まず、本発明の一態様の半導体装置の一例について図1、2を参照して説明する。
【0017】
<半導体装置の構成例>
図1(A)は、本発明の一態様の半導体装置の構成例を示す図である。図1(A)に示す半導体装置は、直列に連結された読み出し部1及び演算部2を有する。読み出し部1は、外部(例えば、キャッシュ)から命令を読み出す(フェッチする)。そして、当該命令を演算部2に出力する。演算部2は、読み出し部1から入力される命令に基づいて演算を行う。なお、読み出し部1は、演算部2が演算を行っている期間において、外部から新たな命令を読み出す。すなわち、図1(A)に示す半導体装置は、読み出し部1及び演算部2を用いてパイプライン処理を行う半導体装置である。
【0018】
なお、図1(A)において、読み出し部1及び演算部2以外の処理ユニットがそれらと直列に連結されている構成とすることも出来る。また、読み出し部1及び演算部2間に当該処理ユニットが連結されている構成とすることも出来る。
【0019】
さらに、読み出し部1は、外部から命令を読み出し、且つ当該命令を保持するフリップフロップ10と、フリップフロップ10との間で当該命令を送受するメモリ11とを有する。なお、フリップフロップ10及びメモリ11間の当該命令の送受は、演算部2が出力する信号によって制御される。
【0020】
よって、図1(A)に示す半導体装置においては、演算部2が出力する信号に応じてフリップフロップ10が保持する命令(既存の命令)をメモリ11へと送信することができる。そして、フリップフロップ10では、新たな命令の読み出しを行うことができる。すなわち、図1(A)に示す半導体装置では、当該既存の命令及び当該新たな命令の双方を読み出し部1において保持することが可能である。なお、当該既存の命令は、演算部2が出力する信号によって、メモリ11からフリップフロップ10へと返送することが可能である。
【0021】
図1(A)に示す半導体装置では、分岐予測が外れた後に読み出し部1において読み出される命令がサブルーチンであった場合などにおける動作遅延を抑制することが可能である。具体的には、まず、読み出し部1が分岐予測にしたがって第1の命令を読み出す。ここで、同時並行的に演算部2において行われる動作によって当該分岐予測が外れたことが判明した場合に、図1(A)に示す半導体装置では、当該第1の命令を破棄することなくメモリ11において保持することが可能である。そして、図1(A)に示す半導体装置では、フリップフロップ10を用いて第2の命令の読み出しを行う。その後、演算部2が当該第2の命令に従って動作する。ここで、当該第2の命令がサブルーチンである場合には、次に演算部2が行う動作はメモリ11に保持されている当該第1の命令に従った動作となる。このような場合に、図1(A)に示す半導体装置では、当該第1の命令を再度読み出す必要がない。よって、半導体装置における動作遅延を抑制することが可能である。
【0022】
また、当該半導体装置として図1(B)に示す半導体装置を適用することも出来る。図1(B)に示す半導体装置は、図1(A)に示す半導体装置が有する読み出し部1に、演算部2が出力する信号に応じて、メモリ11において保持される命令を補正する補正部12が付加された構成を有する。補正部12が付加されることによって、メモリ11において当該命令が保持されている間における演算部2の演算によって、当該命令を変更する必要が生じた場合であっても、当該命令を補正することが可能となる。なお、図1(B)においては、メモリ11において保持する命令を補正する構成について例示したが、当該命令がメモリ11からフリップフロップ10に対して返送される際に、補正部12が補正を行う構成とすることも可能である。
【0023】
<メモリの構成例>
図2(A)は、図1に示す半導体装置が有するメモリ11の構成例を示す図である。図2(A)に示すメモリ11は、ゲートが演算部2に電気的に接続され、ソース及びドレインの一方がフリップフロップ10に電気的に接続されたトランジスタ51と、ゲートが演算部2に電気的に接続され、ソース及びドレインの一方がフリップフロップ10に電気的に接続されたトランジスタ52と、一方の電極がトランジスタ51のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、他方の電極が固定電位を供給する配線に電気的に接続されたキャパシタ53と、一方の電極がトランジスタ52のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、他方の電極が固定電位を供給する配線に電気的に接続されたキャパシタ54と、を有する。なお、トランジスタ51のゲート及びトランジスタ52のゲートは、演算部2内の異なるノードに電気的に接続されている。他方、トランジスタ51のソース及びドレインの一方及びトランジスタ52のソース及びドレインの一方は、フリップフロップ10内の同一ノードに電気的に接続されている。また、当該固定電位としては、接地電位などを適用することが可能である。
【0024】
ここで、図2(A)に示すトランジスタ51及びトランジスタ52は、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタであることとする。なお、酸化物半導体は、バンドギャップが広く、且つ真性キャリア密度が低いという特徴を有する。よって、酸化物半導体膜に生じるオフ電流を極めて低くすることが可能である。なお、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタの詳細については、後述することとする。したがって、図2(A)に示すメモリ11においては、トランジスタ51のソース及びドレインの他方、及びキャパシタ53の一方の電極が電気的に接続するノード、並びにトランジスタ52のソース及びドレインの他方、及びキャパシタ54の一方の電極が電気的に接続するノードにおいて長期間に渡って2値のデータを保持することが可能である。そして、図2(A)に示す半導体装置においては、演算部2が出力する信号に応じてトランジスタ51及びトランジスタ52のスイッチングを制御することで、フリップフロップ10が保持する命令又は当該命令の一部を2値のデータとしてそれらのノードにおいて保持することが可能である。
【0025】
なお、図1(A)、(B)に示す半導体装置が有するメモリ11として、図2(B)に示すメモリ11を適用することも可能である。図2(B)に示すメモリ11は、図2(A)に示すメモリ11に、ゲートが電源制御部3に電気的に接続され、ソース及びドレインの一方がフリップフロップ10に電気的に接続されたトランジスタ55と、一方の電極がトランジスタ55のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、他方の電極が固定電位を供給する配線に電気的に接続されたキャパシタ56とが付加された構成を有する。なお、電源制御部3は、フリップフロップ10に対して電源電圧VDDを供給するか否かを選択する機能を有する。また、トランジスタ55は、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタであることとする。よって、上述の通り、トランジスタ55のソース及びドレインの他方、及びキャパシタ56の一方の電極が電気的に接続するノードにおいてフリップフロップ10が保持する命令又は当該命令の一部を2値のデータとして保持することが可能である。
【0026】
図2(B)に示す半導体装置においては、電源制御部3がフリップフロップ10に対する電源電圧VDDの供給を停止する期間前及び当該期間後にトランジスタ55をオン状態とし、且つ当該期間中にトランジスタ55をオフ状態とすることで、当該期間中にフリップフロップ10が保持する命令をメモリ11において保持することが可能となる。よって、フリップフロップ10に対する電源電圧VDDの供給を停止することによって消費電力の低減を図ると共に動作遅延の抑制を図ることが可能となる。なお、図2(B)に示すメモリ11において、トランジスタ55がオフ状態を維持する期間は、トランジスタ51及びトランジスタ52がオフ状態を維持する期間よりも長くなる蓋然性が高い。よって、キャパシタ56の静電容量の値は、キャパシタ53及びキャパシタ54の静電容量の値よりも高いことが好ましい。
【0027】
<トランジスタの構造例>
上述の半導体装置は、多数のトランジスタを用いて構成される。以下では、当該半導体装置を構成するトランジスタの具体例について詳述する。なお、以下では、フリップフロップ10を構成するpチャネル型トランジスタの一及びnチャネル型トランジスタの一並びにメモリ11を構成するチャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタの一の構造例およびその作製工程について図3〜図6を参照して説明する。具体的には、図3〜図6に示す断面図において、A1−A2断面はnチャネル型トランジスタの作製工程における断面図であり、B1−B2断面はpチャネル型トランジスタの作製工程における断面図である。
【0028】
まず、絶縁膜302を介して半導体膜304が設けられた基板300を用意する(図3(A)参照)。
【0029】
基板300として、例えば、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体基板を適用することができる。また、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板なども挙げられる。
【0030】
絶縁膜302は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコンなどを含む単層構造又は積層構造とする。なお、絶縁膜302の形成方法としては、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などが挙げられる。絶縁膜302の膜厚は、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とする。
【0031】
また、半導体膜304は、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体材料、多結晶半導体材料、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体材料を適用することができる。なお、半導体膜304は、酸化物半導体材料を含まないため、酸化物半導体以外の半導体材料とも記す。
【0032】
半導体膜304として、シリコンなどの単結晶半導体材料を用いる場合には、フリップフロップ10の動作を高速化することができるため好ましい。
【0033】
また、絶縁膜302を介して半導体膜304が設けられた基板300として、SOI基板も適用することができる。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン層が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体膜が設けられた構成の基板も含む。つまり、「SOI基板」が有する半導体膜は、シリコンに限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁膜を介して半導体膜が設けられた構成も含む。ここでは、絶縁膜302を介して半導体膜304が設けられた基板300として、単結晶シリコン基板上に酸化シリコン膜を介してシリコン膜が設けられたSOI基板を用いる場合について説明する。
【0034】
次に、半導体膜304を島状に加工して、半導体膜304a、304bを形成する(図3(B)参照)。当該加工方法として、ドライエッチングを用いることが好適であるが、ウェットエッチングを用いてもよい。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0035】
次に、半導体膜304a、304bを覆うように、ゲート絶縁膜306a、306bを形成する(図3(B)参照)。ゲート絶縁膜306a、306bは、例えば、半導体膜304a、304b表面の熱処理(熱酸化処理や熱窒化処理など)によって形成することができる。熱処理に代えて、高密度プラズマ処理を適用してもよい。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などのうちいずれかの混合ガスを用いて行うことができる。もちろん、CVD法やスパッタリング法等を用いてゲート絶縁膜を形成しても良い。
【0036】
ゲート絶縁膜306a、306bは、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどの材料を用いることができる。また、ゲート絶縁膜として、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0、z>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0、z>0))等の高誘電率(high−k)材料を用いることもできる。ゲート絶縁膜は、上述の材料を用いて、単層構造又は積層構造で形成する。また、ゲート絶縁膜306a、306bの膜厚は、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。
【0037】
上述のように、ゲート絶縁膜を薄くすると、トンネル効果などに起因するゲートリークが問題となる。ゲートリークの問題を解消するには、ゲート絶縁膜に、上述したhigh−k材料を用いると良い。high−k材料をゲート絶縁膜に用いることで、電気的特性を確保しつつ、ゲートリークを抑制するために膜厚を大きくすることが可能になる。なお、high−k材料を含む膜と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウムなどのいずれかを含む膜との積層構造としてもよい。
【0038】
次に、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物元素、及びp型の導電性を付与する不純物元素をゲート絶縁膜306a、306bを介して半導体膜304a、304bに添加する(図3(C)参照)。半導体膜304a、304bがシリコンの場合、n型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、リンや砒素などを用いることができる。また、p型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、硼素、アルミニウム、ガリウムなどを用いることができる。ここでは、ゲート絶縁膜306aを介して半導体膜304aに硼素を添加することで不純物を含む半導体膜308を形成し、ゲート絶縁膜306bを介して半導体膜304bにリンを添加することで不純物を含む半導体膜310を形成する。
【0039】
次に、ゲート絶縁膜306a、306b上にゲート電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電膜を形成し、当該導電膜を加工して、ゲート電極312a、312bを形成する(図3(D)参照)。
【0040】
ゲート電極312a、312bに用いる導電膜としては、アルミニウム、銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電膜を形成しても良い。導電膜の形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。また、導電膜の加工は、レジストマスクを用いたエッチングによって行うことができる。
【0041】
次に、ゲート電極312a、312bをマスクとして、n型の導電型を付与する不純物元素及びp型の導電性を付与する不純物元素をゲート絶縁膜306a、306bを介して半導体膜304a、304bに添加する(図3(E)参照)。ここでは、ゲート絶縁膜306aを介して半導体膜304aにリンを添加することで不純物領域314a、314bを形成し、ゲート絶縁膜306bを介して半導体膜304bに硼素を添加することで不純物領域316a、316bを形成する。
【0042】
次に、ゲート電極312a、312bの側面にサイドウォール構造の側壁絶縁膜318a〜318dを形成する(図4(A)参照)。側壁絶縁膜318a〜318dは、ゲート電極312a、312bを覆う絶縁膜を形成した後、これをRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法による異方性エッチングをすることによって形成される。ここで、絶縁膜について特に限定はないが、例えば、TEOS(Tetraethyl−Ortho−Silicate)若しくはシラン等と、酸素若しくは亜酸化窒素等とを反応させて形成した段差被覆性のよい酸化シリコンを用いることができる。また、低温酸化(LTO:Low Temperature Oxidation)法により形成する酸化シリコンを用いてもよい。絶縁膜は熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD、スパッタリング等の方法によって形成することができる。
【0043】
次に、ゲート電極312a、312b、及び側壁絶縁膜318a〜318dをマスクとして、n型の導電型を付与する不純物元素、及びp型の導電性を付与する不純物元素をゲート絶縁膜306a、306bを介して半導体膜304a、304bに添加する。ここでは、ゲート絶縁膜306aを介して半導体膜304aにリンを添加することで不純物領域320a、320bを形成し、ゲート絶縁膜306bを介して半導体膜304bに硼素を添加することで不純物領域322a、322bを形成する(図4(B)参照)。
【0044】
以上により、酸化物半導体以外の半導体材料が設けられた基板300を用いて、nチャネル型トランジスタ113及びpチャネル型トランジスタ111を作製することができる。このようなトランジスタは、高速動作が可能であるという特徴を有する。
【0045】
次に、トランジスタ113及びトランジスタ111を覆うように、絶縁膜324を形成する(図4(C)参照)。絶縁膜324は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。絶縁膜324として、誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することができるため好ましい。なお、絶縁膜324として、上述の材料を用いた多孔性の絶縁膜を適用してもよい。多孔性の絶縁膜では、密度の高い絶縁膜と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する容量をさらに低減することが可能である。また、絶縁膜324として、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することもできる。ここでは、酸化窒化シリコンを用いて絶縁膜324を形成する場合について説明する。
【0046】
次に、半導体膜304a、304bに添加された不純物元素を活性化するための熱処理を行う。熱処理はファーネスアニール炉を用いて行う。その他に、レーザーアニール法、またはラピッドサーマルアニール法(RTA法)を適用することができる。熱処理は窒素雰囲気中で400〜600℃、代表的には450〜500℃で1〜4時間として行う。この熱処理により、不純物元素の活性化と同時に絶縁膜324の酸化窒化シリコン膜の水素が放出され、半導体膜304a、304bの水素化を行うことができる。
【0047】
なお、上記の各工程の前後には、さらに電極や配線、半導体膜、絶縁膜などを形成する工程も含んでいてもよい。例えば、下部のトランジスタと、上部のトランジスタを接続するための電極や配線などを形成することが好ましい。また、配線の構造として、絶縁膜及び導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用して、高度に集積化した記憶装置を実現することも可能である。
【0048】
次に、絶縁膜324の表面を平坦化させる(図4(D)参照)。絶縁膜324の平坦化処理としては、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing、以下CMP処理という)などの研磨処理の他にエッチング処理などを適用することも可能である。
【0049】
ここで、CMP処理とは、被加工物の表面を基準にし、それにならって表面を化学的・機械的な複合作用により平坦化する手法である。より具体的には、研磨ステージの上に研磨布を貼り付け、被加工物と研磨布との間にスラリー(研磨剤)を供給しながら研磨ステージと被加工物とを各々回転または揺動させて、スラリーと被加工物との化学反応と、研磨布と被加工物との機械研磨の作用により、被加工物の表面を研磨する方法である。
【0050】
絶縁膜324の表面の平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下となるようにCMP処理を行うことが好ましい。なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、下記の式(1)にて定義される。
【0051】
【数1】

【0052】
なお、上記において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)の4点で表される四角形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0053】
次に、平坦化された絶縁膜324の表面に酸化物半導体膜342を成膜する(図5(A)参照)。
【0054】
用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0055】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0056】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0057】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0058】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0059】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0060】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
【0061】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成のrだけ近傍であるとは、a、b、cが、
(a―A)+(b―B)+(c―C)≦r
を満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0062】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0063】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
【0064】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0065】
また、酸化物半導体膜342としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲット中の金属元素の原子数比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0066】
酸化物半導体膜342としてIn−Ga−Zn−O系材料をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1、4:2:3、3:1:2、1:1:2、2:1:3、または3:1:4で示されるIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いる。
【0067】
また、酸化物半導体膜342としてIn−Sn−Zn−O系材料をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Sn:Zn=1:1:1、2:1:3、1:2:2、または20:45:35で示されるIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いる。
【0068】
また、ターゲットの相対密度は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。相対密度の高いターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜342を緻密な膜とすることができる。
【0069】
酸化物半導体膜342は、スパッタリング法、分子線エピタキシー法、原子層堆積法またはパルスレーザー蒸着法により成膜することができる。また、酸化物半導体膜342の膜厚は、5nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下とする。
【0070】
また、酸化物半導体膜342は、非晶質であってもよく、結晶性を有していてもよい。例えば、酸化物半導体膜は、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、又は正六角形の原子配列を有し、且つ、c軸に垂直な方向から見て、金属原子が層状、又は金属原子と酸素原子が層状に配列した結晶を含む膜とすることができる。なお、本明細書等では、当該膜をCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。
【0071】
CAAC―OS膜は単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC―OS膜は結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0072】
CAAC―OS膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC―OS膜を構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC―OS膜が形成される基板面、CAAC―OS膜の表面などに垂直な方向)に揃っていてもよい。または、CAACを―OS膜を構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、CAAC―OS膜が形成される基板面、CAAC―OS膜の表面などに垂直な方向)を向いていてもよい。
【0073】
このようなCAAC―OS膜の例として、膜状に形成され、膜表面または基板面に垂直な方向から観察すると三角形または六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子または金属原子および酸素原子(または窒素原子)の層状配列が認められる酸化物膜を挙げることもできる。
【0074】
次に、酸化物半導体膜342をCAAC―OS膜とする方法について説明する。酸化物半導体膜342をCAAC―OS膜とする方法として、例えば以下の2種類の方法によって行うことができる。1つの方法は、酸化物半導体膜342の成膜を、基板を加熱しながら行う方法であり、もう1つの方法は、酸化物半導体膜342の成膜を2回に分け、1度目の成膜の後、2度目の成膜の後のそれぞれに熱処理を行う方法である。
【0075】
基板を加熱しながら酸化物半導体膜342の成膜を1回で行う場合には、基板温度は、100℃以上600℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上500℃以下とする。なお、酸化物半導体膜342の成膜時に、基板を加熱する温度を高くすることで、非晶質な部分に対して結晶部分の占める割合の多いCAAC―OS膜とすることができる。
【0076】
また、酸化物半導体膜342の成膜を2回に分ける場合には、基板を基板温度100℃以上450℃以下に保ちながら、絶縁膜324の上に1層目の酸化物半導体膜342を成膜し、窒素、酸素、希ガス、または乾燥空気の雰囲気下で、550℃以上基板の歪み点未満の熱処理を行う。該熱処理によって、1層目の酸化物半導体膜342の表面を含む領域に結晶領域(板状結晶を含む)が形成される。そして、2層目の酸化物半導体膜342を1層目の酸化物半導体膜342よりも厚く形成する。その後、再び550℃以上基板の歪み点未満の熱処理を行い、表面を含む領域に、結晶領域(板状結晶を含む)が形成された1層目の酸化物半導体膜342を結晶成長の種として、上方に結晶成長させ、2層目の酸化物半導体膜342の全体を結晶化させる。なお、1層目の酸化物半導体膜342は1nm以上10nm以下で成膜することが好ましい。
【0077】
上述の成膜方法によれば、酸化物半導体膜342が、5nm程度の膜厚であっても、短チャネル効果を抑制することができるため、好ましい。
【0078】
なお、CAAC―OS膜の結晶性は、被形成面のラフネスの影響を受けるため、上述したように絶縁膜324の表面は可能な限り平坦にしておくことが望ましい。また、絶縁膜324の表面の平均面粗さは、例えば、0.1nm以上0.5nm未満とすることが好ましい。絶縁膜324表面を平坦化させることにより、CAAC―OS膜の結晶の連続性を向上させることができる。また、絶縁膜324の表面を平坦化させることにより、非晶質の部分に対して結晶部分の占める割合の多いCAAC―OS膜とすることができる。
【0079】
スパッタリング法により成膜される酸化物半導体膜342中には、水素又は水、水酸基を含む化合物などが含まれていることがある。水素や水などは、ドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。したがって、スパッタリング法を用いて、酸化物半導体膜342を成膜する際、できる限り酸化物半導体膜342の水素濃度を低減することが好ましい。
【0080】
水素濃度を低減させるためには、酸化物半導体膜342の成膜時に、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における酸化物半導体膜342中への、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として吸着型の真空ポンプ(例えば、クライオポンプなど)を用いることで、排気系からのアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基を含む化合物、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0081】
また、ターゲットの純度を、99.99%以上とすることで、酸化物半導体膜に混入するアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等を低減することができる。また、当該ターゲットを用いることで、酸化物半導体膜において、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の濃度を低減することができる。
【0082】
スパッタリング装置の処理室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水酸基を含む化合物、水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、および希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。例えば、アルゴンの純度を、9N(99.9999999%)以上(HOは、0.1ppb未満、Hは、0.5ppb未満)とし、露点−121℃とする。また、酸素の濃度は、8N(99.999999%)以上(HOは、1ppb未満、Hは、1ppb未満)とし、露点−112℃とする。また、希ガスと酸素の混合ガスを用いる場合には、酸素の流量比率を大きくすることが好ましい。
【0083】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0084】
上記のようにすることで、水素の混入が低減された酸化物半導体膜342を成膜することができる。なお、上記スパッタリング装置を用いても、酸化物半導体膜342には少なからず窒素を含んで形成される。例えば、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定される酸化物半導体膜342の窒素濃度は、5×1018cm−3未満となる。
【0085】
酸化物半導体膜342中の水分又は水素などの不純物をさらに低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化物半導体膜342に対して、熱処理を行うことが好ましい。例えば、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で、酸化物半導体膜342に熱処理を施す。なお、酸化性雰囲気とは、酸素、オゾンまたは酸化窒素(亜酸化窒素、一酸化二窒素)などの酸化性ガスを10ppm以上含有する雰囲気をいう。また、不活性雰囲気とは、前述の酸化性ガスが10ppm未満であり、その他、窒素または希ガスで充填された雰囲気をいう。
【0086】
熱処理の温度は、例えば、150℃以上基板歪み点温度未満、好ましくは250℃以上450℃以下、さらに好ましくは300℃以上450℃以下とする。処理時間は3分〜24時間とする。24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0087】
熱処理に用いる加熱装置に特別な限定はなく、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、電気炉や、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。
【0088】
熱処理を行うことによって、酸化物半導体膜342から水素(水、水酸基を含む化合物)などの不純物を放出させることができる。これにより、酸化物半導体膜342中の不純物を低減することができる。
【0089】
また、熱処理を行うことによって、酸化物半導体膜342から不安定なキャリア源である水素を脱離させることができるため、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向へ変動することを抑制させることができる。さらに、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0090】
次に、フォトリソグラフィ工程により酸化物半導体膜342上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて、酸化物半導体膜342を所望の形状にエッチングし、島状の酸化物半導体膜342aを形成する(図5(B)参照)。なお、該レジストマスクは、フォトリソグラフィ工程の他にインクジェット法、印刷法等を適宜用いることができる。該エッチングは、酸化物半導体膜342aの端部がテーパ形状となるようにエッチングすることが好ましい。島状の酸化物半導体膜342aの端部をテーパ形状とすることで、後に形成される膜の被覆性を向上させることができ、該膜の断切れを防止することができる。テーパ形状は、該レジストマスクを後退させつつエッチングすることで形成することができる。
【0091】
なお、ここでは、酸化物半導体膜342を成膜した直後に熱処理を行う場合について説明したが、島状の酸化物半導体膜342aに加工した後に熱処理を行っても良い。
【0092】
次に、酸化物半導体膜342aなどの上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて、導電膜を所望の形状にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極344a、344bを形成する(図5(C)参照)。
【0093】
導電膜は、後にソース電極およびドレイン電極となるものであり、アルミニウム、クロム、銅、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、上述した金属材料を成分とする合金等を用いて形成することもできる。さらに、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いて形成することもできる。
【0094】
導電膜は、単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電膜を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパ形状を有するソース電極またはドレイン電極344a、344bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0095】
導電膜のエッチングは、形成されるソース電極またはドレイン電極344a、344bの端部がテーパ形状となるように行うことが好ましい。ここで、テーパ角は、例えば、30°以上60°以下とすることが好ましい。ソース電極またはドレイン電極344a、344bの端部がテーパ形状となるようにエッチングすることにより、後に形成されるゲート絶縁膜の被覆性が向上し、段切れを防止することができる。
【0096】
トランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極またはドレイン電極344a、及びソース電極またはドレイン電極344bの下端部の間隔によって決定される。なお、チャネル長(L)が25nm未満のトランジスタを形成する場合に用いるマスク形成の露光を行う際には、数nm〜数十nmと波長の短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いるのが望ましい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長(L)を、10nm以上1000nm(1μm)以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高めることが可能である。
【0097】
次に、ソース電極またはドレイン電極344a、344b、及び酸化物半導体膜342aを覆うように、ゲート絶縁膜346を形成する(図5(D)参照)。
【0098】
ゲート絶縁膜346は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁膜346は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどを用いることができる。また、ゲート絶縁膜346として、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0、z>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0、z>0))などの高誘電率(high−k)材料を用いることもできる。ゲート絶縁膜346は、単層構造としても良いし、上記の材料を組み合わせて積層構造としても良い。
【0099】
また、ゲート絶縁膜346は、第13族元素および酸素を含む絶縁材料としてもよい。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体材料との相性が良い。したがって、第13族元素および酸素を含む絶縁材料を酸化物半導体膜に接する絶縁膜に用いることで、酸化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができる。
【0100】
ここで、第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一または複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0101】
例えば、ガリウムを含有する酸化物半導体膜342aに接してゲート絶縁膜346を形成する場合に、ゲート絶縁膜に酸化ガリウムを含む材料を用いることで酸化物半導体膜とゲート絶縁膜の界面特性を良好に保つことができる。また、酸化物半導体膜と酸化ガリウムを含む絶縁膜とを接して設けることにより、酸化物半導体膜と絶縁膜の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁膜に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁膜を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、酸化物半導体膜への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0102】
なお、酸化物半導体膜342(または酸化物半導体膜342a)に熱処理を行うと、水素などが放出されるとともに、酸化物半導体膜342に含まれる酸素も放出されてしまう。酸素が放出されることにより、酸化物半導体膜342には、酸素欠損が生じてしまう。酸素欠損の一部はドナーとなるため、酸化物半導体膜342にキャリアを発生させる原因となり、トランジスタの特性に影響を与えるおそれがある。
【0103】
そこで、酸化物半導体膜342aに接するゲート絶縁膜346として、熱処理により酸素が脱離する絶縁膜を用いることが好ましい。
【0104】
本明細書等において、「熱処理により酸素が脱離する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算した酸素の脱離量(又は放出量)が1.0×1018cm−3以上、好ましくは3.0×1020cm−3以上であることをいう。また、「熱処理により酸素が脱離しない」とは、TDS分析にて、酸素原子に換算した酸素の脱離量(又は放出量)が1.0×1018cm−3未満であることをいう。
【0105】
以下、酸素の放出量をTDS分析で酸素原子に換算して定量する方法について説明する。
【0106】
TDS分析したときの気体の脱離量は、イオン強度の積分値に比例する。このため、絶縁膜のイオン強度の積分値と、標準試料の基準値に対する比とにより、気体の脱離量を計算することができる。標準試料の基準値とは、所定の密度の原子を含む試料において、当該原子に相当するイオン強度の積分値に対する当該原子の密度の割合である。
【0107】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の脱離量(NO2)は、下記の式(2)で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子及び質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0108】
【数2】

【0109】
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。式(2)の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照できる。なお、上記した酸素の脱離量の数値は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016cm−3の水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した数値である。
【0110】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の脱離量を評価することで、酸素原子の脱離量についても見積もることができる。
【0111】
なお、NO2は酸素分子の脱離量である。絶縁膜においては、酸素原子に換算したときの酸素の脱離量は、酸素分子の脱離量の2倍となる。
【0112】
熱処理により酸素が脱離する膜の一例として、酸素が過剰な酸化シリコン(SiOx(x>2))がある。酸素が過剰な酸化シリコン(SiOx(x>2))とは、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した値である。
【0113】
酸化物半導体膜342aに接する絶縁膜(例えば、絶縁膜324やゲート絶縁膜346)として、熱処理により酸素が脱離する絶縁膜を用い、ゲート絶縁膜346の成膜後のいずれかの工程の後に、熱処理を行うことにより、絶縁膜324やゲート絶縁膜346から酸素が脱離し、酸化物半導体膜342aに酸素を供給することができる。これにより、酸化物半導体膜342aに生じた酸素欠損を補償し、酸素欠損を低減することができる。よって、酸化物半導体膜342aにキャリアの生成を抑制することができるため、トランジスタの特性の変動を抑制することができる。
【0114】
次に、ゲート絶縁膜346上に、導電膜を成膜した後、フォトリソグラフィ工程により当該導電膜上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて導電膜を所望の形状にエッチングして、ゲート電極348を形成する(図5(D)参照)。導電膜は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。導電膜は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0115】
次に、ゲート電極348、ソース電極またはドレイン電極344a、344bをマスクとして、酸化物半導体膜342aに、n型の導電性を付与するドーパントを添加し、一対のドーパント領域349a、349bを形成する(図6(A)参照)。なお、酸化物半導体膜342aのうち、ドーパント領域349aとドーパント領域349bとの間に挟まれた領域が、チャネルとなる。また、チャネルは、酸化物半導体膜342aにおいて、ゲート絶縁膜346を介してゲート電極348と重なる領域に形成される。
【0116】
ドーパント領域349a、349bを形成するためのドーパントの添加は、イオン注入法を用いることができる。ドーパントは、例えばヘリウム、アルゴン、キセノンなどの希ガスや、窒素、リン、ヒ素、アンチモンなどの15族原子などを用いることができる。例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、ドーパント領域349a、349b中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。n型の導電性を付与するドーパントが添加されているドーパント領域349a、349bは、酸化物半導体膜342a中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、ドーパント領域349a、349bを酸化物半導体膜342aに設けることで、ソース電極またはドレイン電極344a、344bの間の抵抗を下げることができる。
【0117】
次に、ゲート絶縁膜346及びゲート電極348上に、絶縁膜350及び絶縁膜352を形成する(図6(A)参照)。絶縁膜350及び絶縁膜352は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料、ポリイミド、アクリル等の有機材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、絶縁膜350及び絶縁膜352には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁膜350及び絶縁膜352の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。例えば、絶縁膜350に、無機材料を含む材料を用い、絶縁膜352に有機材料を含む材料を用いることもできる。
【0118】
また、酸化アルミニウム膜は、水素や水などに対するブロッキング性を有するため、絶縁膜350として用いることで、記憶装置の外部から混入する水素や水などが、酸化物半導体膜342aに混入することを防止することができるため、好ましい。また、酸化アルミニウム膜は、酸素に対するブロッキング性も有するため、酸化物半導体膜342aに含まれる酸素が外方拡散されてしまうことを抑制することもできる。絶縁膜350として、酸化アルミニウム膜を用いることにより、水素や水などが酸化物半導体膜342aに混入することを防止するとともに、酸化物半導体膜342aに含まれる酸素が外方拡散されてしまうことを抑制することができるため、トランジスタの電気的特性が変動してしまうことを抑制することができる。
【0119】
次に、ゲート絶縁膜346、絶縁膜350、及び絶縁膜352に、ソース電極またはドレイン電極344bにまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。その後、ソース電極またはドレイン電極344bに接する導電膜を形成する。次に、導電膜に、エッチング処理又はCMP処理を行うことにより、電極354を形成する(図6(B)参照)。
【0120】
次に、絶縁膜352上に電極354と接するように、配線356を形成する(図6(B)参照)。配線356は、PVD法や、CVD法を用いて導電膜を形成した後、当該導電膜を加工することによって形成される。また、導電膜には、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン等の金属材料や、上述した金属材料を成分とする合金等を用いることができる。さらに、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0121】
また、電極354を用いずに、配線356を形成してもよい。例えば、絶縁膜350の開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、その後に、開口に埋め込むようにアルミニウム膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここでは、ソース電極またはドレイン電極344b)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0122】
配線356を形成することにより、下層に形成されたトランジスタと、上層に形成されたトランジスタとを、接続することもできる(図示しない)。
【0123】
以上の工程により、フリップフロップ10を構成するnチャネル型トランジスタ113及びpチャネル型トランジスタ111並びにメモリ11を構成する酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタ115が完成する(図6(B)参照)。
【0124】
<トランジスタの変形例>
以下では、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタの変形例について図7を参照して説明する。
【0125】
図7(A)に示すトランジスタ411は、下地膜412上に形成されたソース電極またはドレイン電極414a、414bと、ソース電極またはドレイン電極414a、414b上に形成された酸化物半導体膜413と、酸化物半導体膜413、ソース電極またはドレイン電極414a、414b上のゲート絶縁膜415と、ゲート絶縁膜415上において酸化物半導体膜413と重なる位置に設けられたゲート電極416とを有する。さらに、トランジスタ411上には、保護絶縁膜417が設けられている。
【0126】
図7(A)に示すトランジスタ411は、ゲート電極416が酸化物半導体膜413の上に形成されているトップゲート型であり、かつ、ソース電極またはドレイン電極414a、414bが酸化物半導体膜413の下に形成されているボトムコンタクト型である。そして、トランジスタ411は、ソース電極またはドレイン電極414a、414bと、ゲート電極416とが重なっていないので、ソース電極またはドレイン電極414a、414bとゲート電極416との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0127】
また、酸化物半導体膜413は、ゲート電極416が形成された後に酸化物半導体膜413にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対のドーパント領域418a、418bを有する。また、酸化物半導体膜413のうち、ゲート絶縁膜415を間に挟んでゲート電極416と重なる領域がチャネルが形成される領域419である。酸化物半導体膜413では、一対のドーパント領域418a、418bの間にチャネルが形成される領域419が設けられている。ドーパント領域418a、418bを形成するためのドーパントの添加は、イオン注入法を用いることができる。ドーパントは、例えばヘリウム、アルゴン、キセノンなどの希ガスや、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ホウ素などを用いることができる。
【0128】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、ドーパント領域418a、418b中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。
【0129】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されているドーパント領域418a、418bは、酸化物半導体膜413中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、ドーパント領域418a、418bを酸化物半導体膜413に設けることで、ソース電極またはドレイン電極414a、414bの間の抵抗を下げることができる。
【0130】
また、酸化物半導体膜413は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体膜413がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体膜413の導電率を高めることができるので、ソース電極またはドレイン電極414a、414bの間の抵抗を下げることができる。
【0131】
そして、ソース電極またはドレイン電極414a、414bの間の抵抗を下げることで、トランジスタ411の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ411の微細化により、当該トランジスタを用いた半導体装置の占める面積を縮小化し、単位面積あたりのトランジスタ数を高めることができる。
【0132】
図7(B)に示すトランジスタ421は、下地膜422上に形成された、酸化物半導体膜423と、酸化物半導体膜423上に形成されたソース電極またはドレイン電極424a、424bと、酸化物半導体膜423、ソース電極またはドレイン電極424a、424b上のゲート絶縁膜425と、ゲート絶縁膜425上において酸化物半導体膜423と重なる位置に設けられたゲート電極426と、ゲート電極426上において酸化物半導体膜423を覆う保護絶縁膜427とを有する。さらに、トランジスタ421は、ゲート電極426の側面に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール430a、430bを有する。
【0133】
図7(B)に示すトランジスタ421は、ゲート電極426が酸化物半導体膜423の上に形成されているトップゲート型であり、かつ、ソース電極またはドレイン電極424a、424bが酸化物半導体膜423の上に形成されているトップコンタクト型である。そして、トランジスタ421は、トランジスタ411と同様に、ソース電極またはドレイン電極424a、424bと、ゲート電極426とが重なっていないので、ソース電極またはドレイン電極424a、424bとゲート電極426との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0134】
また、酸化物半導体膜423は、ゲート電極426が形成された後に酸化物半導体膜423にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度ドーパント領域428a、428bと、一対の低濃度ドーパント領域429a、429bとを有する。また、酸化物半導体膜423のうち、ゲート絶縁膜425を間に挟んでゲート電極426と重なる領域がチャネルが形成される領域431である。酸化物半導体膜423では、一対の高濃度ドーパント領域428a、428bの間に一対の低濃度ドーパント領域429a、429bが設けられ、一対の低濃度ドーパント領域429a、429bの間にチャネルが形成される領域431が設けられている。そして、一対の低濃度ドーパント領域429a、429bは、酸化物半導体膜423中の、ゲート絶縁膜425を間に挟んでサイドウォール430a、430bと重なる領域に設けられている。
【0135】
高濃度ドーパント領域428a、428b及び低濃度ドーパント領域429a、429bは、上述した、トランジスタ411が有するドーパント領域418a、418bの場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度ドーパント領域428a、428bを形成するためのドーパントの種類については、ドーパント領域418a、418bの場合を参照することができる。
【0136】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度ドーパント領域428a、428b中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。また、例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、低濃度ドーパント領域429a、429b中の窒素原子の濃度は、5×1018/cm以上5×1019/cm未満であることが望ましい。
【0137】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度ドーパント領域428a、428bは、酸化物半導体膜423中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度ドーパント領域428a、428bを酸化物半導体膜423に設けることで、ソース電極またはドレイン電極424a、424bの間の抵抗を下げることができる。また、低濃度ドーパント領域429a、429bをチャネルが形成される領域431と高濃度ドーパント領域428a、428bの間に設けることで、短チャネル効果による閾値電圧のマイナスシフトを軽減することができる。
【0138】
また、酸化物半導体膜423は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体膜423がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体膜423の導電率を高めることができるので、ソース電極またはドレイン電極424a、424bの間の抵抗を下げることができる。
【0139】
そして、ソース電極またはドレイン電極424a、424bの間の抵抗を下げることで、トランジスタ421の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。
【0140】
図7(C)に示すトランジスタ441は、下地膜442上に形成されたソース電極またはドレイン電極444a、444bと、ソース電極またはドレイン電極444a、444b上に形成された活性層として機能する酸化物半導体膜443と、酸化物半導体膜443、ソース電極またはドレイン電極444a、444b上のゲート絶縁膜445と、ゲート絶縁膜445上において酸化物半導体膜443と重なる位置に設けられたゲート電極446と、ゲート電極446の側面に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール450a、450bとを有する。さらに、トランジスタ441上には、保護絶縁膜447が形成されている。
【0141】
図7(C)に示すトランジスタ441は、ゲート電極446が酸化物半導体膜443の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極またはドレイン電極444a、444bが酸化物半導体膜443の下に形成されているボトムコンタクト型である。そして、トランジスタ441は、トランジスタ411と同様に、ソース電極またはドレイン電極444a、444bと、ゲート電極446とが重なっていないので、ソース電極またはドレイン電極444a、444bとゲート電極446との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0142】
また、酸化物半導体膜443は、ゲート電極446が形成された後に酸化物半導体膜443にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度ドーパント領域448a、448bと、一対の低濃度ドーパント領域449a、449bとを有する。また、酸化物半導体膜443のうち、ゲート絶縁膜445を間に挟んでゲート電極446と重なる領域がチャネルが形成される領域451である。酸化物半導体膜443では、一対の高濃度ドーパント領域448a、448bの間に一対の低濃度ドーパント領域449a、449bが設けられ、一対の低濃度ドーパント領域449a、449bの間にチャネルが形成される領域451が設けられている。そして、一対の低濃度ドーパント領域449a、449bは、酸化物半導体膜443中の、ゲート絶縁膜445を間に挟んでサイドウォール450a、450bと重なる領域に設けられている。
【0143】
高濃度ドーパント領域448a、448b及び低濃度ドーパント領域449a、449bは、上述した、トランジスタ411が有するドーパント領域418a、418bの場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度ドーパント領域448a、448bを形成するためのドーパントの種類については、ドーパント領域418a、418bの場合を参照することができる。
【0144】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度ドーパント領域448a、448b中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。また、例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、低濃度ドーパント領域449a、449b中の窒素原子の濃度は、5×1018/cm以上5×1019/cm未満であることが望ましい。
【0145】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度ドーパント領域448a、448bは、酸化物半導体膜443中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度ドーパント領域448a、448bを酸化物半導体膜443に設けることで、ソース電極またはドレイン電極444a、444bの間の抵抗を下げることができる。また、低濃度ドーパント領域449a、449bをチャネルが形成される領域451と高濃度ドーパント領域448a、448bの間に設けることで、短チャネル効果による閾値電圧のマイナスシフトを軽減することができる。
【0146】
また、酸化物半導体膜443は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体膜443がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体膜443の導電率を高めることができるので、ソース電極またはドレイン電極444a、444bの間の抵抗を下げることができる。
【0147】
そして、ソース電極またはドレイン電極444a、444bの間の抵抗を下げることで、トランジスタ441の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ441の微細化により、当該トランジスタを用いた半導体装置の占める面積を縮小化し、単位面積あたりのトランジスタ数を高めることができる。
【0148】
また、酸化物半導体膜より下層に位置する下地膜や、上層に位置する保護絶縁膜は、アルカリ金属や、水素及び酸素に対するバリア性の高い材料を用いるのが望ましい。例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。下地膜及び保護絶縁膜をバリア性の高い絶縁膜の単層または積層、もしくは、バリア性の高い絶縁膜と、バリア性の低い絶縁膜の積層としてもよい。
【0149】
酸化物半導体膜をバリア性の高い絶縁膜で覆うことにより、外部からの不純物の侵入を防ぐとともに、酸化物半導体膜中からの酸素脱離を防ぐことができる。よって、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0150】
<酸化物半導体の結晶構造例>
以下では、CAAC−OS膜について説明する。
【0151】
CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例について図8〜図11を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図8〜図11は縦方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図8において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸は3配位のOを示す。
【0152】
図8(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図8(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図8(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図8(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0153】
図8(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図8(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図8(B)に示す構造をとりうる。図8(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0154】
図8(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図8(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図8(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図8(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0155】
図8(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図8(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図8(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0156】
図8(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図8(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図8(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0157】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0158】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図8(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図8(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。図8(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0159】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0160】
図9(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図9(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図9(C)は、図9(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0161】
図9(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図9(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図9(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0162】
図9(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0163】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図8(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0164】
具体的には、図9(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0165】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物や、In−Hf−Zn−O系酸化物、In−La−Zn−O系酸化物、In−Ce−Zn−O系酸化物、In−Pr−Zn−O系酸化物、In−Nd−Zn−O系酸化物、In−Sm−Zn−O系酸化物、In−Eu−Zn−O系酸化物、In−Gd−Zn−O系酸化物、In−Tb−Zn−O系酸化物、In−Dy−Zn−O系酸化物、In−Ho−Zn−O系酸化物、In−Er−Zn−O系酸化物、In−Tm−Zn−O系酸化物、In−Yb−Zn−O系酸化物、In−Lu−Zn−O系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物や、In−Ga−O系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0166】
例えば、図10(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0167】
図10(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0168】
図10(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図10(C)は、図10(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0169】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0170】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図10(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0171】
具体的には、図10(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Ga−Zn−O系の結晶を得ることができる。なお、得られるIn−Ga−Zn−O系の層構造は、InGaO(ZnO)(nは自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0172】
n=1(InGaZnO)の場合は、例えば、図11(A)に示す結晶構造を取りうる。なお、図11(A)に示す結晶構造において、図8(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0173】
また、n=2(InGaZn)の場合は、例えば、図11(B)に示す結晶構造を取りうる。なお、図11(B)に示す結晶構造において、図8(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0174】
以上、説明したように、CAAC−OS膜に含まれる結晶は、さまざまな構造を取りうる。
【0175】
<チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタの特性について>
以下では、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタの電気的特性について説明する。
【0176】
図12に、トランジスタ(試料1および試料2)の上面図および断面図を示す。図12(A)はトランジスタの上面図であり、図12(B)は図12(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面図である。
【0177】
図12(B)に示すトランジスタは、基板600と、基板600上に設けられた下地絶縁膜602と、下地絶縁膜602上に設けられた酸化物半導体膜606と、酸化物半導体膜606と接する一対の電極614と、酸化物半導体膜606および一対の電極614上に設けられたゲート絶縁膜608と、ゲート絶縁膜608を介して酸化物半導体膜606と重畳して設けられたゲート電極610と、ゲート絶縁膜608およびゲート電極610を覆って設けられた層間絶縁膜616と、ゲート絶縁膜608及び層間絶縁膜616に設けられた開口部を介して一対の電極614と接続する配線618と、層間絶縁膜616および配線618を覆って設けられた保護膜620と、を有する。
【0178】
基板600としてはガラス基板を、下地絶縁膜602としては酸化シリコン膜を、酸化物半導体膜606としてはIn−Sn−Zn−O膜を、一対の電極614としてはタングステン膜を、ゲート絶縁膜608としては酸化シリコン膜を、ゲート電極610としては窒化タンタル膜とタングステン膜との積層構造を、層間絶縁膜616としては酸化窒化シリコン膜とポリイミド膜との積層構造を、配線618としてはチタン膜、アルミニウム膜、チタン膜がこの順で形成された積層構造を、保護膜620としてはポリイミド膜を、それぞれ用いることができる。
【0179】
なお、図12(A)に示す構造のトランジスタにおいて、ゲート電極610と一対の電極614との重畳する幅をLovと呼ぶ。同様に、酸化物半導体膜606に対する一対の電極614のはみ出しをdWと呼ぶ。
【0180】
図12(B)に示す構造のトランジスタ(試料1および試料2)の作製方法を以下に説明する。
【0181】
まず、基板600の表面に対し、アルゴン雰囲気でプラズマ処理を行う。プラズマ処理は、スパッタリング装置を用い、基板600側にバイアス電力を200W(RF)印加して3分間行う。
【0182】
続けて、真空状態を保ったまま、下地絶縁膜602である酸化シリコン膜を300nmの厚さで成膜する。
【0183】
酸化シリコン膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を1500W(RF)として成膜する。ターゲットは、石英ターゲットを用いる。なお、成膜時の基板加熱温度は100℃とする。
【0184】
次に、下地絶縁膜602の表面をCMP処理し、Ra=0.2nm程度まで平坦化する。
【0185】
次に、平坦化された下地絶縁膜602上に酸化物半導体膜であるIn−Sn−Zn−O膜を15nmの厚さで成膜する。
【0186】
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、アルゴン:酸素=2:3[体積比]の混合雰囲気で電力を100W(DC)として成膜する。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いる。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とする。
【0187】
次に、試料2のみ加熱処理を650℃の温度で行う。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を保持したままさらに酸素雰囲気で1時間の加熱処理を行う。
【0188】
次に、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いてエッチングすることで酸化物半導体膜を加工して、酸化物半導体膜606を形成する。
【0189】
次に、酸化物半導体膜606上にタングステン膜を50nmの厚さで成膜する。
【0190】
タングステン膜は、スパッタリング装置を用い、アルゴン雰囲気で電力を1000W(DC)として成膜する。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とする。
【0191】
次に、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いてエッチングすることでタングステン膜を加工して、一対の電極614を形成する。
【0192】
次に、ゲート絶縁膜608である酸化シリコン膜を100nmの厚さで成膜する。なお、酸化シリコン膜の比誘電率は3.8とする。
【0193】
ゲート絶縁膜608である酸化シリコン膜は、下地絶縁膜602と同様の方法で成膜することができる。
【0194】
次に、ゲート絶縁膜608上に窒化タンタル膜およびタングステン膜を、この順番でそれぞれ15nmおよび135nmの厚さで成膜する。
【0195】
窒化タンタル膜は、スパッタリング装置を用い、アルゴン:窒素=5:1の混合雰囲気で電力を1000W(DC)として成膜する。なお、成膜時に基板加熱は行っていない。
【0196】
タングステン膜は、スパッタリング装置を用い、アルゴン雰囲気で電力を4000W(DC)として成膜する。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とする。
【0197】
次に、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いてエッチングすることで窒化タンタル膜およびタングステン膜を加工して、ゲート電極610を形成する。
【0198】
次に、ゲート絶縁膜608及びゲート電極610上に、層間絶縁膜616となる酸化窒化シリコン膜を300nmの厚さで成膜する。
【0199】
層間絶縁膜616となる酸化窒化シリコン膜は、PCVD装置を用い、モノシラン:亜酸化窒素=1:200の混合雰囲気で電力を35W(RF)として成膜する。なお、成膜時の基板加熱温度は325℃とする。
【0200】
次に、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いてエッチングすることで層間絶縁膜616となる酸化窒化シリコン膜を加工する。
【0201】
次に、層間絶縁膜616となる感光性ポリイミドを1500nmの厚さで成膜する。
【0202】
次に、層間絶縁膜616となる酸化窒化シリコン膜のフォトリソグラフィ工程で用いたフォトマスクを用いて層間絶縁膜616となる感光性ポリイミドを露光し、その後現像し、感光性ポリイミド膜を硬化させるために加熱処理を行い、酸化窒化シリコン膜と合わせて層間絶縁膜616を形成する。加熱処理は、窒素雰囲気において、300℃の温度で行う。
【0203】
次に、チタン膜、アルミニウム膜およびチタン膜を、この順番でそれぞれ50nm、100nmおよび5nmの厚さで成膜する。
【0204】
チタン膜は、二層ともにスパッタリング装置を用い、アルゴン雰囲気で電力を1000W(DC)として成膜する。
【0205】
アルミニウム膜は、スパッタリング装置を用い、アルゴン雰囲気で電力を1000W(DC)として成膜する。
【0206】
次に、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いてエッチングすることでチタン膜、アルミニウム膜およびチタン膜を加工して、配線618を形成する。
【0207】
次に、保護膜620である感光性ポリイミド膜を1500nmの厚さで成膜する。
【0208】
次に、配線618のフォトリソグラフィ工程で用いたフォトマスクを用いて感光性ポリイミドを露光し、その後現像して、保護膜620に配線618を露出する開口部を形成する。
【0209】
次に、感光性ポリイミド膜を硬化させるために加熱処理を行う。加熱処理は、層間絶縁膜616で用いた感光性ポリイミド膜に対する加熱処理と同様の方法で行う。
【0210】
以上の工程で、図12(B)に示す構造のトランジスタ(試料1及び試料2)を作製することができる。
【0211】
次に、図12(B)に示す構造のトランジスタ(試料1及び試料2)の電気的特性を評価した結果について説明する。なお、試料1及び試料2の違いは、In−Sn−Zn−O膜成膜後に加熱処理を行っているか否かである(上記参照)。
【0212】
図12(B)に示す構造のトランジスタ(試料1及び試料2)におけるVgs−Ids特性を測定し、試料1の結果を図13(A)に、試料2の結果を図13(B)にそれぞれ示す。なお、測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが片側3μm(合計6μm)、dWが片側3μm(合計6μm)である。また、Vdsは10Vとする。
【0213】
試料1と試料2とを比較すると、試料2に示すように酸化物半導体膜の成膜後に加熱処理を行うことでトランジスタの電界効果移動度が高くなることがわかる。これは、加熱処理を行うことにより酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減されたためと考えられる。したがって、酸化物半導体膜の成膜後に行う加熱処理によって酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減することにより、トランジスタの電界効果移動度を向上させることができることがわかる。
【0214】
次に、当該トランジスタ(チャネル幅1μm当たり)のオフ電流を評価した結果について説明する。
【0215】
測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lを3μm、チャネル幅Wを10cm、Lovを2μm、dWを0μmとしている。
【0216】
図14に、トランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。ここでは、簡単のため測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0217】
図14より、トランジスタのオフ電流は、測定時の基板温度が85℃のとき2×10−21A/μm(2zA/μm)であることがわかる。
【0218】
このように、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタのオフ電流は極めて小さいことがわかる。
【符号の説明】
【0219】
1 読み出し部
2 演算部
3 電源制御部
10 フリップフロップ
11 メモリ
12 補正部
51 トランジスタ
52 トランジスタ
53 キャパシタ
54 キャパシタ
55 トランジスタ
56 キャパシタ
111 トランジスタ
113 トランジスタ
115 トランジスタ
300 基板
302 絶縁膜
304 半導体膜
304a 半導体膜
304b 半導体膜
306a ゲート絶縁膜
306b ゲート絶縁膜
308 半導体膜
310 半導体膜
312a ゲート電極
312b ゲート電極
314a 不純物領域
314b 不純物領域
316a 不純物領域
316b 不純物領域
318a 側壁絶縁膜
318b 側壁絶縁膜
318c 側壁絶縁膜
318d 側壁絶縁膜
320a 不純物領域
320b 不純物領域
322a 不純物領域
322b 不純物領域
324 絶縁膜
342 酸化物半導体膜
342a 酸化物半導体膜
344a ソース電極またはドレイン電極
344b ソース電極またはドレイン電極
346 ゲート絶縁膜
348 ゲート電極
349a ドーパント領域
349b ドーパント領域
350 絶縁膜
352 絶縁膜
354 電極
356 配線
411 トランジスタ
412 下地膜
413 酸化物半導体膜
414a ソース電極またはドレイン電極
414b ソース電極またはドレイン電極
415 ゲート絶縁膜
416 ゲート電極
417 保護絶縁膜
418a ドーパント領域
418b ドーパント領域
419 領域
421 トランジスタ
422 下地膜
423 酸化物半導体膜
424a ソース電極またはドレイン電極
424b ソース電極またはドレイン電極
425 ゲート絶縁膜
426 ゲート電極
427 保護絶縁膜
428a 高濃度ドーパント領域
428b 高濃度ドーパント領域
429a 低濃度ドーパント領域
429b 低濃度ドーパント領域
430a サイドウォール
430b サイドウォール
431 領域
441 トランジスタ
442 下地膜
443 酸化物半導体膜
444a ソース電極またはドレイン電極
444b ソース電極またはドレイン電極
445 ゲート絶縁膜
446 ゲート電極
447 保護絶縁膜
448a 高濃度ドーパント領域
448b 高濃度ドーパント領域
449a 低濃度ドーパント領域
449b 低濃度ドーパント領域
450a サイドウォール
450b サイドウォール
451 領域
600 基板
602 下地絶縁膜
606 酸化物半導体膜
608 ゲート絶縁膜
610 ゲート電極
614 電極
616 層間絶縁膜
618 配線
620 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
命令を読み出す読み出し部と、前記命令に基づいて演算を行う演算部とを用いてパイプライン処理を行う半導体装置であって、
前記読み出し部は、前記命令の読み出し及び保持を行うフリップフロップと、前記フリップフロップとの間で前記命令を送受するメモリと、を有し、
前記フリップフロップ及び前記メモリ間の前記命令の送受は、前記演算部が出力する信号によって制御される半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記メモリに前記命令が保持されている間に前記演算部において行われる演算に応じて、前記メモリにおいて保持される前記命令、又は前記メモリから前記フリップフロップに対して送信される前記命令の補正を行う補正部を有する半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記メモリは、ソース及びドレインの一方に電気的に接続されたノードにおいて前記命令を保持するトランジスタを有し、
前記トランジスタは、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタであり、
前記演算部が出力する信号によって前記トランジスタのスイッチングを制御することで、前記フリップフロップ及び前記メモリ間の前記命令の送受が行われる半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記メモリは、ソース及びドレインの一方に電気的に接続されたノードにおいて前記命令を保持する退避用トランジスタを有し、
前記退避用トランジスタは、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタであり、
前記フリップフロップ及び前記メモリに対する電源電圧の供給を停止する期間前及び前記期間後に前記退避用トランジスタをオン状態とすることで、前記フリップフロップ及び前記メモリ間の前記命令の送受が行われる半導体装置。
【請求項5】
請求項4において、
一方の電極が前記トランジスタのソース及びドレインの一方に電気的に接続されたキャパシタと、
一方の電極が前記退避用トランジスタのソース及びドレインの一方に電気的に接続された退避用キャパシタと、を有し、
前記退避用キャパシタの静電容量の値は、前記キャパシタの静電容量の値よりも高い半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置の駆動方法であって、
前記読み出し部が分岐予測にしたがって第1の命令を読み出し、且つ前記演算部において前記分岐予測が外れたことが判明した後に、前記読み出し部において前記フリップフロップから前記メモリへと前記第1の命令が送信される第1の工程と、
前記読み出し部が第2の命令を読み出した後に、前記演算部が前記第2の命令に従って動作する、前記第1の工程後の第2の工程と、
前記読み出し部において前記メモリから前記フリップフロップへと前記第1の命令が返送された後に、前記演算部が前記第1の命令に従って動作する、前記第2の工程後の第3の工程とを有する半導体装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−8351(P2013−8351A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110896(P2012−110896)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】