説明

半導体装置及び半導体装置を用いた無線タグ

【課題】R/Wの搬送波の電力が大きい無線通信システムの構築が想定される無線タグには、過剰な電力を受信する環境に無線タグが存在する場合に、内部で過剰な電力を生成しないようにする、過電圧保護回路が設けられているものがあるが、過電圧保護回路の動作によって雑音が生じ、変調度の小さい信号においては受信エラーの原因となっていた。
【解決手段】搬送波、又は振幅変調波を受信し、生成電圧が過電圧保護回路の動作開始電圧近傍にある場合においても、一度過電圧保護回路が動作を開始した後、生成電圧の最大値を記憶回路において保持しておき、前記保持された電圧にしたがって過電圧保護回路を制御する。過電圧保護回路が動作を開始する電圧と、過電圧保護回路が動作を停止する電圧が異ならせ、過電圧保護回路が動作を開始するタイミングと、過電圧保護回路が動作を停止するタイミングにヒステリシスを持たせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を用いてデータの送受信を行う無線タグに関する。特に無線通信に於いて大電力を受信した場合に、無線通信回路の破壊、又は回路を構成する素子の劣化、破壊を防止する過電圧保護回路の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信を利用した個体識別技術(以下、無線通信システムと表記する)が注目を集めている。特に、無線通信によりデータの送受信を行うデータキャリアとして、RFID(Radio Frequency Identification)技術を利用した無線タグ(以下、カード型、チップ型等の形状を問わず、総称して無線タグと表記する)による個体識別技術が注目を集めている。無線タグは、ICタグ、RFIDタグ、電子タグとも呼ばれる。
【0003】
無線タグを用いた個体識別技術は、製造、流通の分野において、従来のバーコード管理に代わり、多数多量の物品の管理等に役立てられ始めており、個人認証への応用も進められている。
【0004】
ここで言う無線通信システムとは、リーダ/ライタ(以下、R/Wと表記する)等の送受信機(質問器とも言う)と、無線タグとの間のデータの送受信を無線にて行う通信システムである。このような無線通信においては、R/Wから発せられる搬送波に、送受信すべきデータを重畳してやりとりを行う。
【0005】
また、無線タグにはR/Wから発せられる搬送波、又は搬送波に変調波を重畳して生成された振幅変調波から、無線タグ内部で駆動用の直流電圧を生成することによって、無線タグ内部の回路の駆動電力を賄うものがあり、このような無線タグは内部にバッテリーを持たない。これは一般にパッシブ型と呼ばれている。一方、無線タグの動作に必要な電力を、無線タグ自身に内蔵されたバッテリーから賄うものは、対してアクティブ型と呼ばれている。
【0006】
パッシブ型の無線タグは、バッテリーを持たないことから小型軽量化が可能であるという利点を有するが、R/Wから発せられる搬送波を受信することで駆動電力を生成するため、搬送波の受信が十分でないと、回路動作に必要な電力を生成できない。
【0007】
このような無線通信システムを用いてアプリケーションが構築される場合に求められる要素の一つに、最大通信距離が長いことや、特定の領域に多数の無線タグが存在する場合、その全てを認識できる、といったことがある。
【0008】
両者とも、R/Wの搬送波の電力を大きくすることで実現を図る場合が多い。従って、R/Wのごく近傍に無線タグが存在する場合や、R/W近傍にある無線タグの個数が少ない場合においては、無線タグにおいてかなりの大電力が受信されることになる。
【0009】
無線タグにおいて過剰な電力が供給された場合、内部生成される直流電圧も過剰なものとなるため、無線タグの内部回路に高電圧が印加されることで、内部の素子が破壊される恐れがある。そのため、R/Wの搬送波の電力が大きい無線通信システムの構築が想定される無線タグには、過剰な電力を受信する環境に無線タグが存在する場合に、内部で過剰な電力を生成しないようにする、過電圧保護回路が設けられているものがある。このような無線タグが、以下の特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−180073号公報
【特許文献2】特開2007−183790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の過電圧保護回路は、R/Wから発せられる搬送波、又は振幅変調波を受信して、無線タグ内部で直流電圧を生成する際、生成されて生ずる電源電圧が過剰なものとならないよう、生成される電源電圧が所望の値に達したところで、それ以上の電源電圧が生成されないように動作する。このような動作の例としては、過剰に生成される電力を逃がすパスが形成されるようにする方法や、アンテナが搬送波を受信しにくくする等の方法が挙げられる。
【0012】
しかしながら、特に13.56MHz帯の周波数帯を用いる無線通信システムにおいては、搬送波に変調波を重畳する際に、振幅の大きい領域と小さい領域の差が10%程度の変調度を有する振幅変調波を用いて信号の送受信が行われる場合がある。このように変調度が小さい振幅変調波の送受信においては、アンテナ周辺の雑音が信号の送受信精度に大きく影響するが、過電圧保護回路が動作するしきい値に近い受信電力の領域では、過電圧保護回路が動作する、停止する、といった動作を繰り返し、結果として信号に雑音が混入してしまう。これらは過電圧保護回路が、無線タグが送受信する信号に合わせて電圧の抑制量を変化させ、アンテナ端子の信号を打ち消してしまうために起こる現象である。このような雑音は、R/Wと無線タグとの通信エラーの要因となる。
【0013】
本発明の一態様は、受信される電力の強度が過剰になった場合に、内部の回路に過電圧が印加されることを良好に防止し、かつその動作が送受信される信号に雑音として影響しない構成を有する過電圧保護回路を提供することを課題の一つとする。また、R/Wから発せられる搬送波の電力が大きい無線通信システムにおいて、前述の過電圧保護回路を有し、最大通信距離を縮めることなく、無線タグが大電力を受信する近距離でも内部回路の劣化、破壊を防止し、近傍から最大通信距離までの全領域において、R/Wと無線タグ間で正常かつ安定した無線通信を行うことのできる無線タグを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の課題を解決するために、本発明の一態様においては以下のような手段を講じた。
【0015】
本発明の半導体装置の一態様は、外部から供給される電力の大きさを検知し、検知した電力に応じた電位を出力する電圧検出回路と、前記電圧検出回路から出力される前記電位の最大値に応じた電位を保持する記憶回路と、前記記憶回路に保持された電位に応じて、前記電力の受信部のインピーダンスを変化させる保護回路とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の半導体装置の一態様は、外部から供給される電力の大きさを検知し、検知した電力に応じた電位を出力する電圧検出回路と、前記電圧検出回路から出力される電位の最大値に応じた電位を保持する記憶回路と、前記記憶回路に保持された電位に応じて、前記電力の受信部のインピーダンスを変化させ、前記電力の過剰分を消費あるいは反射させる保護回路とを有することを特徴とする。
【0017】
また、前述の前記記憶回路は、リセット端子を有し、前記リセット端子にリセット信号が入力されると、前記記憶回路は、保持した電位をリセットすることを特徴とする。
【0018】
本発明の半導体装置の一態様と、外部と無線で通信を行う無線通信回路と、前記外部から供給される電力を基に直流電圧を生成する電源回路と、前記生成された直流電圧によって駆動され、データの処理を行う論理回路とを用いて、無線タグを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様が有する過電圧保護回路は、搬送波、又は振幅変調波を受信し、生成電圧が過電圧保護回路の動作開始電圧近傍にある場合においても、一度過電圧保護回路が動作を開始した後、生成電圧の最大値を記憶回路において保持しておき、前記保持された電圧にしたがって過電圧保護回路が制御される。従って、過電圧保護回路が動作を開始する電圧と、過電圧保護回路が動作を停止する電圧が異なるため、過電圧保護回路が動作を開始するタイミングと、過電圧保護回路が動作を停止するタイミングにヒステリシスを持たせることができる。
【0020】
この機能により、過電圧保護回路の動作は、搬送波、又は振幅変調波の受信電力のわずかな振れに対して過敏に反応せず、安定するため、変調信号や復調信号が雑音の影響を受けにくくなる。よって、大電力を出力するR/Wを用いた無線通信システムにおいて、過電圧生成から無線タグ内部の回路を良好に保護し、かつ振幅変調波の変調による電力変動によらず安定して正常な無線通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一態様に係る半導体装置の構成を示す図。
【図2】電源回路の動作及び搬送波に信号を重畳する変調について説明する図。
【図3】本発明の一態様に係る過電圧保護回路の一実施形態を示す図。
【図4】従来の過電圧保護回路の一例を示す図。
【図5】本発明の一態様に係る過電圧保護回路を用いた無線タグと、従来の過電圧保護回路を用いた無線タグにおける、入力電流に対するアンテナでの信号変調度の変化を比較する図。
【図6】本発明の一態様に係る過電圧保護回路が有する電圧検出回路の動作を説明する図。
【図7】従来の過電圧保護回路を用いた無線タグにおける、入力電力と応答率の関係を示す図。
【図8】本発明の一態様に係る過電圧保護回路を用いた無線タグにおける、入力電力と応答率の関係を示す図。
【図9】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を示す図。
【図10】本発明の一態様に係る半導体装置の適用例を示す図。
【図11】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を示す図。
【図12】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を示す図。
【図13】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を示す図。
【図14】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について、以下に図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し適用し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には、異なる図面において同一の符号を共通して用い、繰り返しの説明を省略することがある。
【0023】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施形態について、図1を用いて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一態様にかかる無線タグのブロック図を示しており、無線タグ100は、受信されたデータに基づいて、応答信号を生成するなどといった機能的処理を行う論理回路101と、R/Wと信号の送受信を行うアンテナ回路102と、アンテナ回路102において受信された振幅変調波を復調し、パルス信号を取り出す復調回路103と、論理回路101から出力される応答信号を変調し、R/Wに送信する信号へと変換する変調回路104と、アンテナ回路102において受信された搬送波、又は振幅変調波から直流電圧を生成するための電源回路105と、内部回路に過電圧が印加されるのを防止するための、本発明の一態様にかかる過電圧保護回路106とを有する。アンテナ回路102と、復調回路103と、変調回路104とが、無線通信回路に相当し、無線通信回路を用いることで無線タグ100の外部にあるR/Wと、無線で通信を行うことができる。
【0025】
アンテナ回路102は、アンテナ111及び共振容量112を有する。アンテナ111については、その形状や巻き数によって、R/Wからの搬送波の受信能力が異なるが、特にここでは限定しない。共振容量112は、アンテナ111との組み合わせによって、アンテナ回路102の共振周波数を、R/Wからの搬送波の周波数に最適化するために設けられる容量である。
【0026】
電源回路105は、アンテナ回路102で受信した搬送波、又は振幅変調波を整流し、直流電圧であるエンベローブ電圧Venvを生成するための整流回路113と、Venvが所望の電圧を大きく上回らないように調整し、一定の電圧Vddに調整する定電圧回路114とを有する。
【0027】
過電圧保護回路106は、電源回路105から出力され、論理回路101、復調回路103、変調回路104等の内部回路に供給される電圧を監視する電圧検出回路115と、電圧検出回路115にて検出された電圧の最大値を記憶する記憶回路116と、記憶回路116において記憶された電圧に従って動作する保護回路117とを有する。
【0028】
無線タグ100の各部の動作について、図2を用いて説明する。アンテナ回路102において、R/Wからの搬送波、又は振幅変調波を受信すると、整流回路113が交流の搬送波、又は振幅変調波を整流して直流電圧Venv201を生成する。続いて、定電圧回路114はVenv201に基づいたレギュレート電圧Vdd202を出力する。図2(A)に示すように、Venv201が低いとき、すなわち受信電力の小さい領域(203)では、定電圧回路114はほぼVenv=Vddとなるように出力するが、アンテナ回路102における受信電力の上昇に伴ってVenv201が上昇し、ある電圧に達して以降の領域(204)は、Venv201がそれ以上上昇したとしても一定のレギュレート電圧Vdd202を出力する。
【0029】
一方、復調回路103においては、振幅変調波211を復調して、搬送波に重畳されている信号を取り出し、論理回路101へと入力する(図2(B)参照)。
【0030】
図2(B)に示すように、振幅変調波211は、搬送波の振幅に変調を加えることで信号を重畳している。このような振幅変調波211を復調回路103に入力し、振幅に変調が加えられた領域と加えられていない領域との違いによって、パルス信号212を取り出し、論理回路101に入力する。
【0031】
論理回路101においては、パルス信号212に従って応答信号が生成され、変調回路104へと入力される。変調回路104においては、R/Wから出力されている搬送波を、応答信号に従って変調することで、R/Wに応答信号を返信する。
【0032】
次に、本発明の一態様にかかる過電圧保護回路の構成、及び動作について説明する。図3は、本発明を実施する過電圧保護回路106の回路構成の一例を示したものである。
【0033】
整流回路113は、容量301、トランジスタ302、トランジスタ303、及び容量304を有している。図3に示した整流回路113の例では、容量301と、トランジスタ302とで構成されるクランプ回路を有する、半波倍圧整流回路となっている。
【0034】
電圧検出回路115は、抵抗306、トランジスタ307〜トランジスタ310、トランジスタ311、トランジスタ312を有している。
【0035】
記憶回路116は、トランジスタ314、トランジスタ315、容量316を有している。
【0036】
保護回路117は、容量317、及びトランジスタ318を有している。
【0037】
以下、図3に示した過電圧保護回路の詳細な動作について説明する。なお、トランジスタにおいてはNチャネル型、Pチャネル型を双方用いており、各トランジスタのオン、オフを論ずる際には、しきい値電圧を上回る、下回る、と記載するが、特に断りの無い限りは、しきい値電圧を上回るとは、ゲートとソース間の電圧の絶対値が、しきい値電圧の絶対値を上回ることを意味し、しきい値電圧を下回るとは、ゲートとソース間の電圧の絶対値が、しきい値電圧の絶対値を下回ることを意味する。以下、これに従ってNチャネル型トランジスタ、Pチャネル型トランジスタとも同様の記載にて説明する。
【0038】
アンテナ回路102が搬送波を受信することで共振状態となり、容量301の一方の電極に振幅を与える。容量301の他方の電極には、一方の電極の電位に対し、ダイオード接続されたトランジスタ302のソースとドレイン間に生ずる電圧分だけオフセットされた電位が現れる。さらにダイオード接続されたトランジスタ303によって半波整流され、直流電圧Venvを生成する。容量304は平滑容量であり、生成された直流電圧Venvの保持、及びノイズの平滑化を行う。ここで、抵抗305はプルダウン抵抗であり、整流回路113での直流電圧の生成が行われないとき、整流回路113の出力をVss側にプルダウンする。
【0039】
生成された直流電圧Venvは、電圧検出回路115にて監視される。具体的には、Venv−Vss間に設けられた抵抗306と、トランジスタ307〜トランジスタ310との間で分圧される電位を取り出す。Venvが低いときには、ダイオード接続されたトランジスタ307〜トランジスタ310の各々においては、ゲートとソース間の電圧がしきい値電圧を下回っているためにオフしており、従ってトランジスタ311のゲートの電位は、Venvにほぼ等しくなり、トランジスタ311はオフする。Venvが上昇すると、トランジスタ307〜トランジスタ310の各々において、ゲートとソース間の電圧がしきい値電圧を上回り、オンする。トランジスタ307〜トランジスタ310の各々におけるソースとドレイン間のインピーダンス変化に従って、トランジスタ311のゲートの電位は、トランジスタ307〜トランジスタ310と抵抗306との間で分圧された電位となる。さらにVenvが上昇すると、トランジスタ311においてゲートとソース間の電圧がしきい値電圧を上回り、オンする。
【0040】
また、トランジスタ312のゲートにはバイアス電位が印加されており、トランジスタ311がオンしているときには、定電流源として動作している。トランジスタ311のソースとドレイン間のインピーダンス変化に従って、トランジスタ311のドレインの電位は、トランジスタ312のソースとドレイン間の電圧との分圧によって決定される。
【0041】
電圧検出回路115からの出力電位は、抵抗313を介して記憶回路116に入力される。なお、抵抗313は、記憶回路116に入力される信号のノイズ低減等のために設けているものであり、特に設けなくても動作原理は変わらない。
【0042】
Venvが低いとき、トランジスタ311はオフしており、記憶回路116にはVssに近い電位が入力される。Venvが前述のとおり大きく上昇すると、トランジスタ311がオンして、トランジスタ311及びトランジスタ312で分圧される電位が上昇し、記憶回路116に入力される。容量316の一方の電極は、Vss側に接続されており、他方の電極は、電圧検出回路115の状態によってVssに近い電位、又はトランジスタ311及びトランジスタ312で分圧される電位となって保持される。
【0043】
容量316の他方の電極の電位が上昇すると、保護回路117においてトランジスタ318のゲートの電位が上昇し、ゲートとソース間の電圧がしきい値電圧を上回るとオンする。このとき、アンテナ回路102の一方の端子は、容量317、トランジスタ318を介してVss側に接続されるため、容量317とトランジスタ318のインピーダンスによって、共振周波数が変化する。
【0044】
このときの、電圧検出回路115及び保護回路117における、トランジスタ311のゲート電位、トランジスタ318のゲート電位と、Venv変化との関係を、それぞれ図6(A)(B)に模式的に示す。
【0045】
図6(A)において、601は受信電力に対するVenvの変化を示しており、602はトランジスタ311のゲート電位の変化を示している。603で示される電位差が、トランジスタ311のゲートとソース間の電圧に該当する。
【0046】
入力電力が小さい領域604においては、トランジスタ307〜トランジスタ310がオフしているため、トランジスタ311のゲートの電位はほぼVenvに等しくなっており、トランジスタ311はオフしている。入力電力が大きい領域605に入ると、トランジスタ307〜トランジスタ310がオンし、603のような電位差が生じ始める。したがってトランジスタ311がオンする。
【0047】
図6(B)において、606はトランジスタ311のドレイン電位の変化を示している。607で示される電位差が、トランジスタ311のソースとドレイン間の電圧に該当する。
【0048】
入力電力が小さい領域604においては、トランジスタ311がオフしているため、トランジスタ311のドレイン電位はほぼVssに等しくなっており、ダイオード接続されたトランジスタ314はオフしている。入力電力が次第に大きくなり、領域609に入ると、トランジスタ311がオンし、トランジスタ311のドレイン電位が上昇を始める。トランジスタ314において、ゲートとソース間の電圧が上昇を始め、しきい値電圧を上回ると、トランジスタ314がオンして、トランジスタ318のゲート電位が上昇を始める。このとき、608で示される電位差が、トランジスタ318のゲートとソース間の電圧に該当する。トランジスタ318のゲートとソース間の電圧がしきい値電圧を上回り、トランジスタ318がオンすると、トランジスタ318のソースとドレイン間のインピーダンスが変化して、電流が流れやすくなる。609の領域では、トランジスタ318は飽和領域で動作しているため、ゲートとソース間の電圧の変化に従ってインピーダンスは大きく変化する。従って、トランジスタ318の消費電流が大きくなり、アンテナ回路102における共振周波数の変化も大きい。さらに入力電力が大きくなり、領域610に入ると、トランジスタ318のゲートとソース間の電圧が拡大し、トランジスタ318は線形領域での動作に入る。この領域では、トランジスタ318は完全にオンし、保護回路117が完全に機能した状態となる。
【0049】
以上の動作により、過剰な電圧生成が生じた場合、すなわちVenvが過剰に上昇した場合には、保護回路117が動作して、過剰な電力を消費する、または、アンテナの共振周波数を変化させることで反射係数を大きくし、意図的にリターンロスを生じさせることで、整流回路113が生成する電圧を低下させる。
【0050】
ここで、記憶回路116においては、容量316の他方の電極の電位、すなわちダイオード接続されたトランジスタ314を介して、トランジスタ318のゲート電位がひとたび上昇すると、ダイオード接続されたトランジスタ314によって逆方向への電流が阻害されるため、Venvが多少下降して、電圧検出回路115から出力される電位が下降しても、ピーク時の電位を保持している。
【0051】
これにより、R/Wの振幅変調などに起因する、Venvの微小な電位の上昇、下降によって、トランジスタ318が過敏にオン、オフを繰り返すことが無いため、保護回路117は安定する。
【0052】
やがて通信を終了するとき、トランジスタ315のゲートにリセット信号が入力されてトランジスタ315がオンすると、ダイオード接続されたトランジスタ314及び容量316で保持されていた電荷はトランジスタ315を介して放電され、トランジスタ318のゲート電位は下降する。これにより、保護回路117は動作を停止する。
【0053】
なお、トランジスタ315の制御に関しては、他の構成であっても構わない。例えば、通信を終了してR/Wの搬送波が停止した場合、又は無線タグがR/Wとの通信を終了して、応答範囲から外れた場合などには、電源回路での直流電圧の生成が停止するため、Venvが大きく下降する。このVenvの電位をリセット信号の代わりにトランジスタ315のゲートに入力すると、前述の通信終了後の動作によってVenvが下降し、トランジスタ315がオンすることで、容量316にて保持されていた電位がリセットされ、保護回路117の動作が停止する。
【0054】
以上の動作によって、本発明の一態様にかかる過電圧保護回路は、過電圧保護回路の動作開始電圧と、動作停止電圧とにヒステリシスを持たせることによって、動作開始電圧近傍での動作/非動作の無意味な切り替わりを抑制し、安定して動作させることができる。
【0055】
過電圧保護回路が安定して動作することにより、アンテナへのノイズの影響を最小限に抑えることができるため、通信の安定性向上、最大通信距離の向上に大きく寄与する。
【0056】
なお、本発明は、詳細な回路の構成において図3の構成に限定されるものではなく、トランジスタの極性、電源電位の大小関係によって適宜構成が異なっていても良い。例えば電圧検出回路115において、VenvとVssの分圧に用いるトランジスタ307〜トランジスタ310はNチャネル型トランジスタ、トランジスタ311はPチャネル型トランジスタ、保護回路117で用いているトランジスタ318はNチャネル型トランジスタとしているが、トランジスタの極性及び接続関係を逆にしたとしても同様の機能を有する回路構成は容易であるので、当然ながら本発明に含まれるものである。なおその場合は、トランジスタ315が接続される電源電位等も変更することになるが、本発明の機能としては同じである。
【0057】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で示した半導体装置を得るための一作製方法を説明する。
【0058】
まず、基板1201の一表面に剥離層1202を形成し、続けて下地となる絶縁膜1203および半導体膜1204(例えば非晶質珪素を含む膜)を形成する(図12(A)参照)。剥離層1202、絶縁膜1203および半導体膜1204は、連続して形成することができる。連続して形成することにより、大気に曝されないため不純物の混入を防ぐことができる。
【0059】
基板1201は、ガラス基板、石英基板、金属基板、ステンレス基板、本工程の処理温度に耐えうる耐熱性があるプラスチック基板等を用いるとよい。このような基板であれば、その面積や形状に大きな制限はないため、例えば、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向上させることができる。このような利点は、円形のシリコン基板を用いる場合と比較すると、大きな優位点である。従って、回路部を大きく形成した場合であっても、シリコン基板を用いる場合と比較して低コスト化を実現することができる。
【0060】
なお、本工程では、剥離層1202を基板1201の全面に設けているが、必要に応じて、基板1201の全面に剥離層を設けた後に、フォトリソグラフィ法により剥離層1202を選択的に設けてもよい。また、基板1201に接するように剥離層1202を形成しているが、必要に応じて、基板1201に接するように酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜等の絶縁膜を形成し、当該絶縁膜に接するように剥離層1202を形成してもよい。
【0061】
ここで、酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質をいう。例えば、酸化窒化珪素とは、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の範囲で含まれる物質とすることができる。また、窒化酸化珪素とは、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上30原子%以下の範囲で含まれる物質とすることができる。但し、上記組成の範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率は、その合計が100原子%を超えない値をとる。
【0062】
剥離層1202は、金属膜や金属膜と金属酸化膜の積層構造等を用いることができる。金属膜としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)から選択された元素、前記元素を主成分とする合金材料、前記元素を主成分とする化合物材料からなる膜を単層構造又は積層構造で形成する。また、これらの材料は、スパッタ法やプラズマCVD法等の各種CVD法等を用いて形成することができる。金属膜と金属酸化膜の積層構造としては、上述した金属膜を形成した後に、酸素雰囲気化またはNO雰囲気下におけるプラズマ処理、酸素雰囲気化またはNO雰囲気下における加熱処理を行うことによって、金属膜表面に当該金属膜の酸化物または酸化窒化物を設けることができる。また、金属膜を形成した後に、オゾン水等の酸化力の強い溶液で表面を処理することにより、金属膜表面に当該金属膜の酸化物又は酸化窒化物を設けることができる。
【0063】
絶縁膜1203は、スパッタ法やプラズマCVD法等により、珪素の酸化物または珪素の窒化物を含む膜を、単層構造又は積層構造で形成する。下地となる絶縁膜が2層構造の場合、例えば、1層目として窒化酸化珪素膜を形成し、2層目として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。下地となる絶縁膜が3層構造の場合、1層目の絶縁膜として酸化珪素膜を形成し、2層目の絶縁膜として窒化酸化珪素膜を形成し、3層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。または、1層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成し、2層目の絶縁膜として窒化酸化珪素膜を形成し、3層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。下地となる絶縁膜1203は、基板1201からの不純物の侵入を防止するブロッキング膜として機能する。
【0064】
半導体膜1204は、スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等により、25nm以上200nm以下程度、好ましくは50nm以上70nm以下程度、具体的には66nmの厚さで形成する。半導体膜1204としては、例えば、非晶質珪素膜を形成すればよい。
【0065】
次に、半導体膜1204にレーザ光を照射して結晶化を行う。なお、レーザ光の照射と、RTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法とを組み合わせた方法等により半導体膜1204の結晶化を行ってもよい。その後、得られた結晶質半導体膜を所望の形状にエッチングして、半導体膜1204a、半導体膜1204bを形成し、これらを覆うようにゲート絶縁膜1205を形成する(図12(B)参照)。
【0066】
半導体膜1204a、半導体膜1204bの作製工程の一例を以下に簡単に説明する。まず、プラズマCVD法を用いて、非晶質半導体膜(例えば、非晶質珪素膜)を形成する。次に、結晶化を助長する金属元素であるニッケルを含む溶液を非晶質半導体膜上に保持させた後、非晶質半導体膜に脱水素化の処理(500℃、1時間)と、熱結晶化の処理(550℃、4時間)を行って結晶質半導体膜を形成する。その後、結晶化の程度に基づき、必要に応じて、レーザ発振器からレーザ光を照射し、フォトリソグラフィ法を用いることよって半導体膜1204a、半導体膜1204bを形成する。なお、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化を行わずに、レーザ光の照射だけで非晶質半導体膜の結晶化を行ってもよい。
【0067】
また、半導体膜に対し、連続発振レーザ光又は10MHz以上の周波数で発振するレーザ光を照射しながら一方向に走査して結晶化させて得られた半導体膜1204a、半導体膜1204bを形成することができる。このような結晶化の場合、そのレーザ光の走査方向に結晶が成長する特性がある。その走査方向をチャネル長方向(チャネル形成領域が形成されたときにキャリアが流れる方向)に合わせてトランジスタを配置するとよい。
【0068】
次に、半導体膜1204a、半導体膜1204bを覆うゲート絶縁膜1205を形成する。ゲート絶縁膜1205は、CVD法やスパッタ法等により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物を含む膜を、単層構造又は積層構造で形成する。具体的には、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜を、単層構造又は積層構造で形成する。
【0069】
また、ゲート絶縁膜1205は、半導体膜1204a、半導体膜1204bに対しプラズマ処理を行い、表面を酸化又は窒化することで形成しても良い。例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと、酸素、酸化窒素(NO)、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを導入したプラズマ処理で形成する。この場合のプラズマの励起は、マイクロ波を用いて行うと、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。この高密度プラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化又は窒化することができる。
【0070】
このような高密度プラズマを用いた処理により、1nm以上20nm以下程度、代表的には5nm以上10nm以下程度の絶縁膜が半導体膜に形成される。この場合の反応は、固相反応であるため、当該絶縁膜と半導体膜との界面準位密度をきわめて低くすることができる。このような、プラズマ処理は、半導体膜(結晶性シリコン、或いは多結晶シリコン)を直接酸化(又は窒化)するため、形成される絶縁膜の膜厚のばらつきをきわめて小さくすることができる。加えて、結晶性シリコンの結晶粒界でも酸化が進行するということがないため、非常に好ましい状態となる。すなわち、ここで示す高密度プラズマ処理で半導体膜の表面を固相酸化することにより、結晶粒界において異常に酸化反応をさせることなく、均一性が良く、界面準位密度が低い絶縁膜を形成することができる。
【0071】
ゲート絶縁膜1205は、プラズマ処理によって形成される絶縁膜のみを用いても良いし、それに加えてプラズマや熱反応を利用したCVD法で酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンなどの絶縁膜を堆積し、積層させても良い。いずれにしても、プラズマ処理により形成した絶縁膜をゲート絶縁膜の一部又は全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを小さくすることができ、好ましい。
【0072】
また、半導体膜に対し、連続発振レーザ光又は10MHz以上の周波数で発振するレーザ光を照射しながら一方向に走査して結晶化させて得られた半導体膜1204a、半導体膜1204bを形成する場合は、上記プラズマ処理を行ったゲート絶縁膜を組み合わせることで、特性ばらつきが小さく、しかも電界効果移動度が高い薄膜トランジスタ(TFT)を得ることができる。
【0073】
次に、ゲート絶縁膜1205上に、導電膜を形成する。ここでは、100nm以上500nm以下程度の厚さの導電膜を単層で形成する。用いる材料としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された元素を含む材料、これらの元素を主成分とする合金材料、又はこれらの元素を主成分とする化合物材料を用いることができる。リン等の不純物元素を添加した多結晶珪素に代表される半導体材料を用いても良い。導電膜を積層構造で形成する場合には、例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜の積層構造、窒化タングステン膜とタングステン膜の積層構造、窒化モリブデン膜とモリブデン膜の積層構造を用いることができる。例えば、窒化タンタル30nmと、タングステン150nmとの積層構造を用いることができる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、導電膜を形成した後に、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、導電膜を3層以上の積層構造としても良く、例えば、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用することができる。
【0074】
次に、上記の導電膜上に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストからなるマスクを形成し、ゲート電極とゲート配線を形成するためのエッチング処理を行って、半導体膜1204a、半導体膜1204bの上方にゲート電極1207を形成する。
【0075】
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成して、半導体膜1204a、半導体膜1204bに、イオンドープ法またはイオン注入法により、n型又はp型を付与する不純物元素を低濃度に添加する。本実施の形態においては、半導体膜1204a、半導体膜1204bに、n型を付与する不純物元素を低濃度に添加する。n型を付与する不純物元素は、15族に属する元素を用いれば良く、リン(P)、砒素(As)などを用いることができる。また、p型を付与する不純物元素としては、13族に属する元素を用いれば良く、硼素(B)などを用いることができる。
【0076】
なお、本実施の形態においては簡単のため、n型TFTについてのみ示しているが、本発明はこれに限定して解釈されない。p型TFTのみを用いる構成としても良い。また、n型TFTとp型TFTを併せて形成しても良い。n型TFTとp型TFTを併せて形成する場合、後にp型TFTとなる半導体層を覆うマスクを形成してn型を付与する不純物元素を添加し、後にn型TFTとなる半導体層を覆うマスクを形成してp型を付与する不純物元素を添加することで、n型を付与する不純物元素とp型を付与する不純物元素を選択的に添加することができる。
【0077】
次に、ゲート絶縁膜1205とゲート電極1207を覆うように、絶縁膜を形成する。これら絶縁膜は、プラズマCVD法やスパッタ法等により、珪素、珪素の酸化物又は珪素の窒化物の無機材料を含む膜や、有機樹脂などの有機材料を含む膜を、単層又は積層して形成する。絶縁膜を、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより選択的にエッチングして、ゲート電極1207の側面に接する絶縁膜1208(サイドウォールともよばれる)を形成する。絶縁膜1208は、後にLDD(Lightly Doped drain)領域を形成する際の不純物元素を添加するためのマスクとして用いる。
【0078】
次に、フォトリソグラフィ法により形成したレジストからなるマスクと、ゲート電極1207および絶縁膜1208をマスクとして用いて、半導体膜1204a、半導体膜1204bにn型を付与する不純物元素を添加する。これにより、チャネル形成領域1206a、第1の不純物領域1206b、第2の不純物領域1206cが形成される(図12(C)参照)。第1の不純物領域1206bは薄膜トランジスタのソース領域又はドレイン領域として機能し、第2の不純物領域1206cはLDD領域として機能する。第2の不純物領域1206cが含む不純物元素の濃度は、第1の不純物領域1206bが含む不純物元素の濃度よりも低い。
【0079】
続いて、ゲート電極1207、絶縁膜1208等を覆うように、絶縁膜を単層構造又は積層構造で形成する。本実施の形態では、絶縁膜1209、絶縁膜1210、絶縁膜1211を3層構造とする場合を例示する。これら絶縁膜はCVD法により形成することができ、絶縁膜1209は酸化窒化珪素膜50nm、絶縁膜1210は窒化酸化珪素膜200nm、絶縁膜1211は酸化窒化珪素膜400nmとして形成することができる。これら絶縁膜の表面は、その膜厚にもよるが、下層に設けられた層の表面形状に沿って形成される。すなわち、絶縁膜1209は膜厚が薄いため、その表面はゲート電極1207の表面形状に大きく沿っている。膜厚が厚くなるにつれ表面形状は平坦に近づくため、3層構造のうち膜厚が最も厚い絶縁膜1211の表面形状は平坦に近い。しかしながら、有機材料とは異なるため、平坦な表面形状とは異なっている。すなわち、表面形状を平坦にしたいのであれば、ポリイミド、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ等の有機材料やシロキサン材料等を用いればよい。またこれら絶縁膜の作製方法は、CVD法以外に、スパッタ法、SOG法、液滴吐出法、スクリーン印刷法等を採用することができる。
【0080】
そして、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜1209、絶縁膜1210、絶縁膜1211等をエッチングして、第1の不純物領域1206bに達するコンタクトホールを形成した後、薄膜トランジスタのソース電極又はドレイン電極として機能する導電膜1231a、及び接続配線として機能する導電膜1231bを形成する。導電膜1231a、導電膜1231bは、コンタクトホールを充填するように導電膜を形成し、当該導電膜を選択的にエッチングすることで形成することができる。なお、導電膜を形成する前に、コンタクトホールにおいて露出した半導体膜1204a、半導体膜1204bの表面にシリサイドを形成して、抵抗を低くしてもよい。導電膜1231a、導電膜1231bは、低抵抗材料を用いて形成すると信号遅延を生じることがなく、好ましい。低抵抗材料は耐熱性が低い場合も多くあるため、低抵抗材料の上下には耐熱性の高い材料を設けるとよい。例えば、低抵抗材料としてアルミニウムを300nm形成し、アルミニウムの上下にチタンを100nmずつ設ける構成がよい。また導電膜1231bは、接続配線として機能しているが、導電膜1231aと同じ積層構造で形成することで、接続配線の低抵抗化と耐熱性の向上を図ることができる。導電膜1231a、導電膜1231bは、その他の導電性材料、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)から選択された元素を含む材料、これらの元素を主成分とする合金材料、これらの元素を主成分とする化合物材料を用いて、単層構造又は積層構造で形成することができる。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としてニッケルを含む材料、又は、アルミニウムを主成分として、ニッケルと、炭素又は珪素の一方あるいは両方を含む合金材料に相当する。また導電膜1231a、導電膜1231bは、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。
【0081】
以上により、薄膜トランジスタ1230a、薄膜トランジスタ1230bを含む素子層1249が得られる(図13(A)参照)。
【0082】
なお、絶縁膜1209、絶縁膜1210、絶縁膜1211を形成する前、または絶縁膜1209を形成した後、又は絶縁膜1209、絶縁膜1210を形成した後に、半導体膜1204の結晶性の回復や半導体膜1204に添加された不純物元素の活性化、半導体膜1204の水素化を目的とした加熱処理を行うとよい。加熱処理には、熱アニール法、レーザーアニール法、RTA法などを適用するとよい。
【0083】
次に、導電膜1231a、導電膜1231bを覆うように、絶縁膜1212、絶縁膜1213を形成する(図13(B)参照)。絶縁膜1212には100nmの膜厚を有する窒化珪素膜を用い、絶縁膜1213には1500nmの膜厚を有するポリイミドを用いる場合を例示する。絶縁膜1213の表面形状は平坦性が高いと好ましい。そのため、有機材料であるポリイミドの特徴に加えて、厚膜化する構成、例えば750nm以上3000nm以下の膜厚(具体的には1500nm)によっても、絶縁膜1213の平面形状の平坦性を高めている。当該絶縁膜1212、絶縁膜1213に対しては、開口部を形成する。本実施の形態では、導電膜1231bが露出する開口部1214を形成する場合を例示する。このような開口部1214において(詳しくは点線で囲まれた領域1215において)、絶縁膜1212の端部は、絶縁膜1213で覆われている。上層の絶縁膜1213で下層の絶縁膜1212の端部を覆うことで、その後開口部1214に形成される配線の段切れを防止することができる。本実施の形態では、絶縁膜1213が有機材料であるポリイミドを用いているため、開口部1214において、絶縁膜1213はなだらかなテーパを有することができ、効率的に段切れを防止することができる。このような段切れ防止効果を得ることのできる絶縁膜1213の材料は、ポリイミド以外に、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ等の有機材料やシロキサン材料等が挙げられる。また絶縁膜1212には、窒化珪素膜の代わりに、酸化窒化珪素膜や窒化酸化珪素膜を用いてもよい。また絶縁膜1212、絶縁膜1213の作製方法は、CVD法、スパッタ法、SOG法、液滴吐出法またはスクリーン印刷法等を用いることができる。
【0084】
次に、絶縁膜1213上に導電膜1217を形成し、当該導電膜1217上に絶縁膜1218を形成する(図13(C)参照)。導電膜1217は、導電膜1231a、導電膜1231bと同じ材料で形成することができ、例えばチタン100nm、アルミニウム200nm、チタン100nmの積層構造を採用することができる。導電膜1217は、開口部1214で導電膜1231bと接続するため、チタン同士が接触することでコンタクト抵抗を抑えることができる。また導電膜1217は、薄膜トランジスタと、アンテナ(おって形成される)との間の信号に基づく電流が流れるため、配線抵抗が低い方が好ましい。そのため、アルミニウム等の低抵抗材料を用いるとよい。また導電膜1217は、その他の導電性材料、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)から選択された元素を含む材料、これらの元素を主成分とする合金材料、これらの元素を主成分とする化合物材料を用いて、単層構造又は積層構造で形成することができる。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としてニッケルを含む材料、又は、アルミニウムを主成分として、ニッケルと、炭素又は珪素の一方あるいは両方を含む合金材料に相当する。また導電膜1217は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。絶縁膜1218は、その表面形状に平坦性を要求されるため、有機材料で形成するとよく、2000nmのポリイミドを用いる場合を例示する。絶縁膜1218は、1500nmの膜厚で形成された絶縁膜1213の開口部1214、及び開口部1214に形成された導電膜1217の表面の凹凸を平坦にする必要があり、絶縁膜1213の膜厚よりも厚い2000nmの膜厚で形成されている。そのため、絶縁膜1218は絶縁膜1213の1.1倍〜2倍以上、好ましくは1.2〜1.5倍の膜厚を有するとよく、絶縁膜1213が750nm以上3000nm以下の膜厚を有するのであれば、900nm以上4500nm以下の膜厚とすると好ましい。絶縁膜1218には、膜厚を考慮しつつ、さらに平坦性の高い材料を用いるとよい。平坦性の高い材料として絶縁膜1218に用いられる材料は、ポリイミド以外に、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ等の有機材料やシロキサン材料等が挙げられる。絶縁膜1218上にアンテナを形成する場合、このように絶縁膜1218の表面形状の平坦性を考慮する必要がある。
【0085】
また、絶縁膜1218は、回路部におけるアンテナの外側(図示せず)で、絶縁膜1213の端部を覆うと好ましい。絶縁膜1213を覆う際、絶縁膜1218は、絶縁膜1213の膜厚と、絶縁膜1218の膜厚との合計より、外側から2倍以上の長さでマージンをもって覆うとよい。本実施の形態では、絶縁膜1213は1500nm、絶縁膜1218は2000nmで形成したため、絶縁膜1213の端から距離d=7000nmの外側から、絶縁膜1218は絶縁膜1213の端部を覆う。このような構成によって、プロセスのマージンを確保することができ、また水分や酸素の侵入を防止することも期待できる。
【0086】
次に、絶縁膜1218上にアンテナ1220を形成する(図14参照)。そして、アンテナ1220と導電膜1217とを開口部を介して電気的に接続させる。開口部はアンテナ1220の下方に設け、集積化を図る。なおアンテナ1220は、導電膜1231aに直接接続させてもよいが、本実施の形態のように導電膜1217を設けることにより、アンテナ1220との接続のための開口部の形成にマージンを持たせることができ、高集積化を図ることができ好ましい。そのため、導電膜1217の上にさらなる導電膜を設けて、アンテナ1220を接続してもよい。すなわちアンテナ1220は、薄膜トランジスタを構成する導電膜1231aと電気的に接続されればよく、複数の導電膜を介した接続構造によって高集積化を図ることができる。このような導電膜1217をはじめとする複数の導電膜は、膜厚が厚くなると半導体装置にも厚みが出てしまうため、薄い方が好ましい。そのため、導電膜1231aと比較すると、導電膜1217等はその膜厚を薄くすることが好ましい。
【0087】
アンテナ1220は、第1の導電膜1221、第2の導電膜1222の積層構造を採用することができ、本実施の形態ではチタン100nm、アルミニウム5000nmの積層構造の場合を例示する。チタンは、アンテナの耐湿性を高めることができ、絶縁膜1218とアンテナ1220との密着性を高めることもできる。さらにチタンは、導電膜1217との接触抵抗を低くすることができる。これは導電膜1217の最上層には、チタンが形成されているため、アンテナのチタンと同一材料同士が接触していることによる。このようなチタンはドライエッチングを用いて形成されるため、端部が切り立った状態となることが多い。アルミニウムは低抵抗材料であるため、アンテナに好適である。アルミニウムを厚膜化していることにより、抵抗をより低くすることができる。アンテナの抵抗が低くなることで、通信距離を伸ばすことができ、好ましい。このようなアルミニウムはウェットエッチングを用いて形成されるため、端部における側面にテーパが付くことが多い。本実施の形態におけるテーパは、アルミニウム側に凸部が形成された、つまり内側に凹んだ形で形成されている。また、アルミニウムをウェットエッチングする際、チタンの端部より、アルミニウムの端部が内側となる(領域1242)。例えば、アルミニウムの端部は、アルミニウムの膜厚の1/6〜1/2程度の範囲で内側(距離L分内側)に設けるとよく、本実施の形態ではチタン端部から距離L=0.8μm以上2μm以下の範囲で内側となるようにするとよい。チタン端部がアルミニウム端部より突出していることで、その後に形成される絶縁膜の段切れを防止することができ、アンテナの耐性を高めることができる。
【0088】
アンテナはチタンやアルミニウム以外に、銀、銅、金、白金、ニッケル、パラジウム、タンタル、モリブデン等の金属元素を含む材料、当該金属元素を含む合金材料、当該金属元素を含む化合物材料を導電性材料として用いることができ、CVD法、スパッタ法、スクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法、液滴吐出法、ディスペンサ法、メッキ法等を用いて形成することができる。また本実施の形態では、積層構造を例示したが、上述したいずれの材料の単層構造で形成してもよい。
【0089】
アンテナ1220を覆って、絶縁膜1223を形成する。本実施の形態では、絶縁膜1223を200nmの窒化珪素膜で形成する。絶縁膜1223により、アンテナの耐湿性をより高めることができ、好ましい。絶縁膜1223はチタン端部がアルミニウム端部より突出しているため、段切れすることなく形成できる。このような絶縁膜1223は窒化珪素膜以外に、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、その他の無機材料から形成することができる。
【0090】
このようにして絶縁基板を用いて形成された半導体集積回路を完成することができる。
【0091】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0092】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置を、より信頼性を高く、かつ歩留まり良く作製する方法について、図9を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例としてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)に関して説明する。
【0093】
作製基板900上に剥離層901を介して、トランジスタ902、トランジスタ903、容量904、絶縁層905が設けられ、半導体集積回路910が形成されている(図9(A)参照)。
【0094】
トランジスタ902、トランジスタ903は薄膜トランジスタであり、それぞれソース領域又はドレイン領域、低濃度不純物領域、チャネル形成領域、ゲート絶縁層、ゲート電極、ソース電極又はドレイン電極を有する。ソース領域又はドレイン領域は、ソース電極又はドレイン電極として機能する配線と接し、電気的に接続されている。
【0095】
トランジスタ902はNチャネル型トランジスタであり、ソース領域又はドレイン領域、及び低濃度不純物領域には、N型を付与する不純物元素(例えばリン(P)やヒ素(As)等)を含む。トランジスタ903はPチャネル型トランジスタであり、ソース領域又はドレイン領域、及び低濃度不純物領域には、P型を付与する不純物元素(例えばボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等)を含む。
【0096】
容量904は、トランジスタ902、トランジスタ903と同様の工程で形成され、一方の電極は半導体層、他方の電極はゲート電極で形成されている。このとき、容量値を効率よく確保するため、ゲート電極層を形成する前に、容量904を形成する半導体層に不純物元素を添加しておいても良い。この工程によると、ゲート電極層の下層の領域に配置された半導体層にも不純物元素が添加されるため、効率よく容量として機能することができる。
【0097】
次に、絶縁層905上に、導電膜でなるアンテナ911を形成し、アンテナ911上に保護膜912を形成する。アンテナ911は、半導体集積回路と電気的に接続される。図9(A)では、容量904の一方の電極と電気的に接続されている。
【0098】
続いて、保護膜912上に、絶縁体920を形成する。絶縁体920としては、例えば繊維体921に有機樹脂922を含浸させた構造体を用いても良い。
【0099】
保護膜912と絶縁体920を接着した後、剥離層901を界面として、半導体集積回路910、アンテナ911、及び保護膜912を基板900より分離する。よって半導体集積回路910、アンテナ911、及び保護膜912は、絶縁体920側に設けられる(図9(B)参照)。
【0100】
保護膜912と絶縁体920の接着については、特に図示しないが接着剤を用いても良いし、圧着、もしくは加熱圧着によって接着しても良い。
【0101】
その後、半導体集積回路910が、剥離層901を介して露出している剥離面の側に絶縁体930を接着し、半導体集積回路910、アンテナ911、及び保護膜912を、絶縁体920及び絶縁体930に挟持する(図9(C)参照)。
【0102】
絶縁体930も、絶縁体920と同様、例えば繊維体931に有機樹脂932を含浸させた構造体を用いても良い。
【0103】
特に図示していないが、絶縁体920及び絶縁体930は、平面方向に多数配列するように複数の半導体集積回路910、アンテナ911、保護膜912が形成された構造体を挟持しており、個々に分断することによって、それぞれ半導体集積回路910、アンテナ911、及び保護膜912が絶縁体920及び絶縁体930に挟持された構造を有する半導体集積回路チップを作製する。分断の手段としては物理的に分断することができれば特に限定しないが、好ましい一例として、本実施の形態では分断線に沿ってレーザ光を照射することによって分断する。
【0104】
レーザ光を照射して分断することによって、半導体集積回路チップの分断面941、942において、絶縁体920及び絶縁体930が溶融し、互いに融着することで、個々の半導体集積回路チップは、半導体集積回路910、アンテナ911、及び保護膜912を絶縁体920及び絶縁体930によって全面を封止する構造となる。
【0105】
ここでは特に図示しないが、半導体集積回路910、アンテナ911、及び保護膜912の全面をより良好に覆うために、絶縁体920及び絶縁体930の外側又は内側に、さらに絶縁体を設けても良い。
【0106】
このように形成することにより、半導体集積回路を挟持して絶縁体を設けているため、作製工程においても、外部ストレスや応力による半導体集積回路の破損や特性不良などの悪影響を防止することができる。よって信頼性を高く、かつ歩留まり良く半導体装置を作製することができる。
【0107】
なお、本実施の形態で作製した半導体装置は、可撓性を有する絶縁体を用いることで、可撓性を有する半導体装置とすることができる。
【0108】
トランジスタ902、トランジスタ903、及び容量904が有する半導体層を形成する材料は、シランやゲルマンに代表される半導体材料ガスを用いて気相成長法やスパッタリング法で作製される非晶質(アモルファス、以下「AS」ともいう。)半導体、該非晶質半導体を光エネルギーや熱エネルギーを利用して結晶化させた多結晶半導体、或いは微結晶(セミアモルファス若しくはマイクロクリスタルとも呼ばれる。以下「SAS」ともいう。)半導体などを用いることができる。半導体層はスパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等により成膜することができる。
【0109】
微結晶半導体膜は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低周波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0110】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどの水素化珪素を水素で希釈して形成することができる。また、水素化珪素及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの水素化珪素に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。
【0111】
アモルファス半導体としては、代表的には水素化アモルファスシリコン、結晶性半導体としては代表的にはポリシリコン(多結晶シリコン)などがあげられる。ポリシリコンには、800℃以上のプロセス温度を経て形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂高温ポリシリコンや、600℃以下のプロセス温度で形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂低温ポリシリコン、また結晶化を促進する元素などを用いて、非晶質シリコンを結晶化させたポリシリコンなどを含んでいる。もちろん、前述したように、微結晶半導体又は半導体層の一部に結晶相を含む半導体を用いることもできる。
【0112】
また、半導体の材料としてはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などの単体のほかGaAs、InP、SiC、ZnSe、GaN、SiGeなどのような化合物半導体も用いることができる。また酸化物半導体である酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化マグネシウム亜鉛、酸化ガリウム、インジウム酸化物、及び上記酸化物半導体の複数より構成される酸化物半導体などを用いることができる。例えば、酸化亜鉛とインジウム酸化物と酸化ガリウムとから構成される酸化物半導体なども用いることができる。なお、酸化亜鉛を半導体層に用いる場合、ゲート絶縁層をY、Al、TiO、それらの積層などを用いると良く、ゲート電極層、ソース電極層、ドレイン電極層としては、ITO、Au、Tiなどを用いると良い。また、ZnOにInやGaなどを添加することもできる。
【0113】
半導体層に、結晶性半導体層を用いる場合、その結晶性半導体層の作製方法は、種々の方法(レーザ結晶化法、熱結晶化法、またはニッケルなどの結晶化を助長する元素を用いた熱結晶化法等)を用いれば良い。また、SASである微結晶半導体をレーザ照射して結晶化し、結晶性を高めることもできる。結晶化を助長する元素を導入しない場合は、非晶質珪素膜にレーザ光を照射する前に、窒素雰囲気下500℃で1時間加熱することによって非晶質珪素膜の含有水素濃度を1×1020atoms/cm以下にまで放出させる。これは水素を多く含んだ非晶質珪素膜にレーザ光を照射すると非晶質珪素膜が破壊されてしまうからである。
【0114】
非晶質半導体層への金属元素の導入の仕方としては、当該金属元素を非晶質半導体層の表面又はその内部に存在させ得る手法であれば特に限定はなく、例えばスパッタ法、CVD法、プラズマ処理法(プラズマCVD法も含む)、吸着法、金属塩の溶液を塗布する方法を使用することができる。このうち溶液を用いる方法は簡便であり、金属元素の濃度調整が容易であるという点で有用である。また、このとき非晶質半導体層の表面の濡れ性を改善し、非晶質半導体層の表面全体に水溶液を行き渡らせるため、酸素雰囲気中でのUV光の照射、熱酸化法、ヒドロキシラジカルを含むオゾン水又は過酸化水素による処理等により、酸化膜を成膜することが望ましい。
【0115】
また、非晶質半導体層を結晶化し、結晶性半導体層を形成する結晶化工程で、非晶質半導体層に結晶化を促進する元素(触媒元素、金属元素とも示す)を添加し、熱処理(550℃〜750℃で3分〜24時間)により結晶化を行っても良い。結晶化を助長(促進)する元素としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)及び金(Au)から選ばれた一種又は複数種類を用いることができる。
【0116】
結晶化を助長する元素を結晶性半導体層から除去、又は軽減するため、結晶性半導体層に接して、不純物元素を含む半導体層を形成し、ゲッタリングシンクとして機能させる。不純物元素としては、N型を付与する不純物元素、P型を付与する不純物元素や希ガス元素などを用いることができ、例えばリン(P)、窒素(N)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ボロン(B)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)から選ばれた一種または複数種を用いることができる。結晶化を促進する元素を含む結晶性半導体層に、希ガス元素を含む半導体層を形成し、熱処理(550℃〜750℃で3分〜24時間)を行う。結晶性半導体層中に含まれる結晶化を促進する元素は、希ガス元素を含む半導体層中に移動し、結晶性半導体層中の結晶化を促進する元素は除去、又は軽減される。その後、ゲッタリングシンクとなった希ガス元素を含む半導体層を除去する。
【0117】
非晶質半導体層の結晶化は、熱処理とレーザ光照射による結晶化を組み合わせても良く、熱処理やレーザ光照射を単独で、複数回行っても良い。
【0118】
また、結晶性半導体層を、直接基板にプラズマ法により形成しても良い。また、プラズマ法を用いて、結晶性半導体層を選択的に基板に形成しても良い。
【0119】
ゲート絶縁層は酸化珪素、若しくは酸化珪素と窒化珪素の積層構造で形成すれば良い。ゲート絶縁層は、プラズマCVD法や減圧CVD法により絶縁膜を堆積することで形成しても良いし、プラズマ処理による固相酸化若しくは固相窒化で形成すると良い。単結晶半導体層を、プラズマ処理により酸化又は窒化することにより形成するゲート絶縁層は、緻密で絶縁耐圧が高く信頼性に優れているためである。例えば、亜酸化窒素(NO)をArで1〜3倍(流量比)に希釈して、10〜30Paの圧力にて3〜5kWのマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して半導体層の表面を酸化若しくは窒化させる。この処理により1nm〜10nm(好ましくは2nm〜6nm)の絶縁膜を形成する。さらに亜酸化窒素(NO)とシラン(SiH)を導入し、10〜30Paの圧力にて3〜5kWのマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して気相成長法により酸化窒化シリコン膜を形成してゲート絶縁層を形成する。固相反応と気相成長法による反応を組み合わせることにより界面準位密度が低く絶縁耐圧の優れたゲート絶縁層を形成することができる。
【0120】
また、ゲート絶縁層として、二酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、二酸化チタン、五酸化タンタルなどの高誘電率材料を用いても良い。ゲート絶縁層に高誘電率材料を用いることにより、ゲートリーク電流を低減することができる。
【0121】
ゲート電極層は、CVD法やスパッタ法、液滴吐出法などを用いて形成することができる。ゲート電極層は、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al、Ta、Mo、Cd、Zn、Fe、Ti、Si、Ge、Zr、Baから選ばれた元素、又は前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成すれば良い。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜や、AgPdCu合金を用いても良い。また、単層構造でも複数層の構造でも良く、例えば、窒化タングステン膜とモリブデン膜との2層構造としても良いし、膜厚50nmのタングステン膜、膜厚500nmのアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜、膜厚30nmの窒化チタン膜を順次積層した3層構造としても良い。また、3層構造とする場合、第1の導電膜のタングステンに代えて窒化タングステンを用いても良いし、第2の導電膜のアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜に代えてアルミニウムとチタンの合金膜(Al−Ti)を用いても良いし、第3の導電膜の窒化チタン膜に代えてチタン膜を用いても良い。
【0122】
ゲート電極層に可視光に対して透光性を有する透光性の材料を用いることもできる。透光性の導電材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、有機インジウム、有機スズ、酸化亜鉛等を用いることができる。また、酸化亜鉛(ZnO)を含むインジウム亜鉛酸化物(IZO(Indium Zinc Oxide))、酸化亜鉛(ZnO)、ZnOにガリウム(Ga)をドープしたもの、酸化スズ(SnO)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物なども用いても良い。
【0123】
ゲート電極層を形成するのにエッチングにより加工が必要な場合、マスクを形成し、ドライエッチングまたはドライエッチングにより加工すれば良い。ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、電極層をテーパ形状にエッチングすることができる。なお、エッチング用ガスとしては、Cl、BCl、SiClもしくはCClなどを代表とする塩素系ガス、CF、SFもしくはNFなどを代表とするフッ素系ガス又はOを適宜用いることができる。
【0124】
本実施の形態では、トランジスタの構造としてはシングルゲート構造を説明したが、ダブルゲート構造などのマルチゲート構造でも良い。この場合、半導体層の上方、下方にゲート電極層を設ける構造でも良く、半導体層の片側(上方又は下方)にのみ複数ゲート電極層を設ける構造でも良い。
【0125】
また、トランジスタのソース領域及びドレイン領域にシリサイドを設ける構造としても良い。シリサイドは半導体層のソース領域及びドレイン領域上に導電膜を形成し、加熱処理、GRTA法、LRTA法等により、露出されたソース領域及びドレイン領域の半導体層中の珪素と導電膜とを反応させて形成する。レーザ照射やランプによる光照射によってシリサイドを形成しても良い。シリサイドを形成する導電膜の材料としては、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、Ha(ハフニウム)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nb)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。
【0126】
ソース電極層又はドレイン電極層として機能する配線層は、PVD法、CVD法、蒸着法等により導電膜を成膜した後、所望の形状にエッチングして形成することができる。また、印刷法、電解メッキ法等により、所定の場所に選択的に配線層を形成することができる。更にはリフロー法、ダマシン法を用いても良い。配線層の材料は、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al、Ta、Mo、Cd、Zn、Fe、Ti、Zr、Ba等の金属、Si、Ge等の半導体又はその合金、若しくはその窒化物を用いて形成すれば良い。また透光性の材料も用いることができる。
【0127】
また、透光性の導電性材料であれば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化亜鉛(ZnO)を含むインジウム亜鉛酸化物(IZO(indium zinc oxide))、酸化亜鉛(ZnO)、ZnOにガリウム(Ga)をドープしたもの、酸化スズ(SnO)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物などを用いることができる。
【0128】
本発明の一態様にかかる半導体装置は、半導体素子として電界効果トランジスタはもちろん、半導体層を用いる記憶素子なども適用することができ、多用途に渡って要求される機能を満たす半導体装置を作製し、提供することができる。
【0129】
(実施の形態4)
無線タグを始めとした半導体装置は、微小な半導体素子を多数用いて形成した半導体集積回路を有するため、外部からの静電気放電(Electrostatic Discharge:ESD)による回路の誤動作や半導体素子の損傷を生じやすい。特に無線タグ等のように、表面積の大きい導電体を有するアンテナ等は、静電気放電が生ずる可能性が高い。本実施の形態においては、そのような静電気放電から半導体集積回路を保護する構成の一例について述べる。
【0130】
図11(A)〜(D)に構成例を示す。本実施の形態においては、導電性材料を有する遮蔽体を半導体集積回路の近傍に設けることにより、半導体集積回路を保護している。
【0131】
図11(A)は、遮蔽体1101を半導体集積回路チップの外側全体を覆うように形成した例を示している。遮蔽体1101は、アンテナにおいてR/Wから発せられる搬送波、又は振幅変調波の受信を極力妨げない程度の膜厚で形成すれば良い。
【0132】
なお、図11(A)では、遮蔽体1101は半導体集積回路チップの上面、下面、側面を覆うように形成されているが、形成の方法としては、上面及び側面の一部に遮蔽体を形成した後、半導体集積回路を裏返して下面及び側面の一部に遮蔽体を形成し、全面を覆うように形成すれば良い。
【0133】
図11(B)は、遮蔽体1102は絶縁体の内側に設けられ、半導体集積回路の全面を覆うように形成した例である。このように半導体集積回路の全面を覆うように遮蔽体1102を形成するには、半導体集積回路を絶縁体で挟持、接着する前に、個々の半導体集積回路チップに分断し、遮蔽体1102を形成する必要があるが、特にこの形態に限定するものではない。例えば、半導体集積回路チップを絶縁体で挟持、接着する前に、半導体集積回路の上面、下面に遮蔽体を形成しておき、絶縁体で挟持、接着した後、レーザ光を照射して分断すると、分断面において遮蔽体が溶融し、半導体集積回路の側面を上下から溶着して覆うように形成しても良い。
【0134】
図11(C)は、遮蔽体1103は絶縁体の内側に設けられ、半導体集積回路の片面のみに形成した例である。本例では、遮蔽体1103はアンテナ側に形成されているが、剥離面側に形成しても良い。
【0135】
遮蔽体を半導体集積回路の片面のみに形成することにより、遮蔽体がアンテナにおいてR/Wから発せられる搬送波、又は振幅変調波の受信を妨げず、良好な通信精度を確保することができる。
【0136】
図11(A)〜(C)においては、遮蔽体は導電性の材料を用いて、膜状に形成した例を示したが、図11(D)に示すように、遮蔽体1104a〜1104gのように島状に形成しても良い。遮蔽体1104a〜1104gの各々は、導電性材料で形成されているために導電性を有するが、半導体集積回路上に点在して形成されており、互いに導通していないため、導電性材料を用いていながら、全体としては絶縁体に等しい膜とすることができる。このような構成で遮蔽体を形成すると、島状の遮蔽体1104a〜1104gの各々は導電性材料を用いて形成されるため、静電気放電に対して良好に半導体集積回路を保護し、かつ全体としては導電膜としての形状を成していないため、遮蔽体がアンテナにおいてR/Wから発せられる搬送波、又は振幅変調波の受信を妨げず、良好な通信精度を確保することができる。
【0137】
遮蔽体1101を形成する材料としては、導電体又は半導体が好ましく、例えば金属膜、金属酸化物膜、半導体膜、又は金属窒化物膜等が挙げられる。具体的な材料としては、チタン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、タンタル、カドミウム、亜鉛、鉄、シリコン、ゲルマニウム、ジルコニウム、バリウムから選ばれた元素、又は前記元素を主成分とする合金材料、化合物材料、窒化物材料、酸化物材料等を用いることができる。
【0138】
窒化物材料としては、窒化タンタル、窒化チタンなどを用いることができる。
【0139】
酸化物材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、有機インジウム、有機スズ、酸化亜鉛等を用いることができる。また、酸化亜鉛(ZnO)を含むインジウム亜鉛酸化物(IZO(Indium Zinc Oxide))、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウム(Ga)を含む酸化亜鉛、酸化スズ(SnO)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物(ITO(Indium Tin Oxide))なども用いても良い。
【0140】
また、半導体に不純物元素などを添加して導電性を付与した半導体膜などを用いることができる。例えばリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜などを用いることができる。
【0141】
さらに、遮蔽体として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を用いても良い。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリン及び又はその誘導体、ポリピロール及び又はその誘導体、ポリチオフェン及び又はその誘導体、これらの2種以上の共重合体などが挙げられる。
【0142】
共役導電性高分子の具体例としては、ポリピロ−ル、ポリ(3−メチルピロ−ル)、ポリ(3−ブチルピロ−ル)、ポリ(3−オクチルピロ−ル)、ポリ(3−デシルピロ−ル)、ポリ(3,4−ジメチルピロ−ル)、ポリ(3,4−ジブチルピロ−ル)、ポリ(3−ヒドロキシピロ−ル)、ポリ(3−メチル−4−ヒドロキシピロ−ル)、ポリ(3−メトキシピロ−ル)、ポリ(3−エトキシピロ−ル)、ポリ(3−オクトキシピロ−ル)、ポリ(3−カルボキシルピロ−ル)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルピロ−ル)、ポリN−メチルピロール、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−オクトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(2−オクチルアニリン)、ポリ(2−イソブチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0143】
導電性高分子を含む遮蔽体には、有機樹脂やドーパント(ハロゲン類、ルイス酸、無機酸、有機酸、遷移金属ハロゲン化物、有機シアノ化合物、非イオン性界面活性剤等)を含ませても良い。
【0144】
遮蔽体は、スパッタリング法、プラズマCVD法、蒸着法などの各種乾式法、塗布法、印刷法、液滴吐出法(インクジェット法)などの各種湿式法により形成することができる。
【0145】
(実施の形態5)
本発明の一態様にかかる半導体装置により無線タグ(以下、無線チップ、無線プロセッサ、無線メモリともよぶ)として機能する半導体装置を形成することができる。本発明の一態様にかかる半導体装置の用途は広範にわたり、非接触で対象物の履歴等の情報を明確にし、生産・管理等に役立てる商品であればどのようなものにも適用することができる。例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類、包装用容器類、書籍類、記録媒体、身の回り品、乗物類、食品類、衣類、保健用品類、生活用品類、薬品類及び電子機器等に設けて使用することができる。これらの例に関して図10を用いて説明する。
【0146】
紙幣、硬貨とは、市場に流通する金銭であり、特定の地域で貨幣と同じように通用するもの(金券)、記念コイン等を含む。有価証券類とは、小切手、証券、約束手形等を指し、プロセッサ回路を有するチップ1001を設けることができる(図10(A)参照)。証書類とは、運転免許証、住民票等を指し、プロセッサ回路を有するチップ1002を設けることができる(図10(B)参照)。身の回り品とは、鞄、眼鏡等を指し、プロセッサ回路を有するチップ1003を設けることができる(図10(C)参照)。無記名債券類とは、切手、おこめ券、各種ギフト券等を指す。包装用容器類とは、お弁当等の包装紙、ペットボトル等を指し、プロセッサ回路を有するチップ1004を設けることができる(図10(D)参照)。書籍類とは、書物、本等を指し、プロセッサ回路を有するチップ1005を設けることができる(図10(E)参照)。記録媒体とは、DVDソフト、ビデオテープ等を指し、プロセッサ回路を有するチップ1006を設けることができる(図10(F)参照)。乗物類とは、自転車等の車両、船舶等を指し、プロセッサ回路を有するチップ1007を設けることができる(図10(G)参照)。食品類とは、食料品、飲料等を指す。衣類とは、衣服、履物等を指す。保健用品類とは、医療器具、健康器具等を指す。生活用品類とは、家具、照明器具等を指す。薬品類とは、医薬品、農薬等を指す。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(テレビ受像機、薄型テレビ受像機)、携帯電話等を指す。
【0147】
このような半導体装置の設け方としては、物品の表面に貼る、或いは物品に埋め込んで設ける。例えば、本の場合は紙に埋め込めばよく、有機樹脂からなるパッケージであれば有機樹脂に埋め込めばよい。
【0148】
このように、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に半導体装置を設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。また乗物類に半導体装置を設けることにより、偽造や盗難を防止することができる。また、動物等の生き物に埋め込むことによって、個々の生き物の識別を容易に行うことができる。例えば、家畜等の生き物にセンサーを備えた半導体装置を埋め込む又は取り付けることによって、生まれた年や性別または種類等はもちろん体温等の健康状態を容易に管理することが可能となる。
【0149】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載されている他の実施形態、及び実施例と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0150】
本実施例においては、実施の形態1にて図3に示した本発明の一態様にかかる過電圧保護回路を有する無線タグと、従来の過電圧保護回路を有する無線タグの動作について、高周波回路シミュレーションによって比較検証を行った結果について述べる。
【0151】
図4は、比較に用いた従来の無線タグのアンテナ回路、整流回路、電圧検出回路、及び過電圧保護回路の構成を示したものである。図3に示した本発明の一態様にかかる構成と比較すると、電圧検出回路115の出力を直接用いて保護回路117の有するトランジスタ318のゲートを制御している点が異なる。
【0152】
図3、図4のそれぞれに示した回路のアンテナ部より、R/Wからの搬送波に相当する電力を投入し、アンテナ回路102に入力される電力強度に応じて、アンテナ回路102における信号の変調度の変化を比較した。
【0153】
図5(A)、(B)に計算結果を示す。図5(A)において、VppMaxとは、アンテナ回路102における信号の最大振幅、VppMinとは、アンテナ回路102における信号の最小振幅であり、(変調度)=(VppMax−VppMin)/(VppMax+VppMin)で定義される。
【0154】
図5(B)は、図5(A)における、本発明の一態様にかかる構成と従来の構成の、R/W入力電力に対する変調度の変化をグラフに示したものである。シミュレーション条件として、R/W入力電力に相当するパラメータであるR/W入力電流を20mA〜600mAまで変化させた。入力電流に対する入力電力(dBm)の関係については、図5においては直接的に変換を行っていないが、R/W・アンテナ間の結合係数等の設定に従って、入力電流の増加に対し、R/Wからの入力電力は増加するものである。過電圧保護回路が動作を開始するときのR/W入力電流は、200mAである。プロット501は、従来の構成の過電圧保護回路を有する無線タグにおけるアンテナの信号変調度を示し、プロット502は、R/Wから20%の変調度を有する信号を入力したときの、本発明の一態様にかかる構成の過電圧保護回路を有する無線タグにおけるアンテナの信号変調度を示している。
【0155】
R/Wからの入力電力が比較的低い領域、すなわち、Venvが過電圧保護回路動作開始電圧以下となるような領域では、アンテナの信号変調度は両者とも10%〜17.4%程度を示している。やがてR/Wからの入力電力が高い領域、すなわち、Venvが過電圧保護回路動作開始電圧以上となるような領域では、過電圧保護回路の動作によってアンテナの共振点が変化する。その境界を、図5(B)中、破線500で示している。
【0156】
破線500を越えた領域では、プロット501で示される、従来の構成の過電圧保護回路を有する無線タグにおけるアンテナの信号変調度は、5%程度まで大きく低下している。これは、信号の振幅の最大値と最小値の差が小さくなり、R/W側での信号の読み取りが困難になることを示す。一方、プロット502で示される、本発明の一態様にかかる構成の過電圧保護回路を有する無線タグにおけるアンテナの信号変調度は、10%から下がることなく、安定して10〜15%程度の変調度を保っている。入力電流600mAの領域において変調度が大きくなるのは、R/Wからの入力電力が大きくなり、過電圧保護回路および定電圧回路の制御範囲を越えて電圧が上がってしまうためである。
【0157】
以上の結果においてわかるとおり、本発明の一態様にかかる構成を有する過電圧保護回路は、動作開始のタイミングと、動作停止のタイミングにヒステリシス性を持たせることで、動作開始電圧近傍での挙動を安定化し、アンテナにおける変調動作への影響を最小限に抑える効果が得られることが確認できた。
【実施例2】
【0158】
本実施例においては、13.56MHz帯の、ISO15693準拠無線タグの試作チップを用いて、図3に示した本発明の一態様にかかる過電圧保護回路を有する無線タグと、図4に示した従来の過電圧保護回路を有する無線タグにおいて、入力電力の変化に伴って過電圧保護回路が動作した際の実際のチップ応答を調査し、比較を行ったので、概要および結果について示す。
【0159】
試作チップの概要について簡単に述べる。試作チップは、ISO15693に準拠した、13.56MHz帯に対応した無線タグであり、その主な構成は図1に示したとおりである。主要部分を共通とし、過電圧保護回路の構成において、図3に示した本発明の一態様にかかる構成を有するものと、図4に示した従来の構成を有するものとの間で比較を行った。なお、実際の試作チップにおいては、図4に示した従来の構成を有する過電圧保護回路において、トランジスタ311のドレインと、トランジスタ318のゲートとの間の経路に、ノイズ対策としてローパスフィルタを付加したものを作製している。
【0160】
実験の概要について述べる。前述の2種類のサンプルを用い、R/Wからの入力電力を変化させた場合の各プロトコルの応答率を調査した。プロトコルについては、ISO15693の規格に定められた方式に従い、R/Wからタグへの搬送波の変調度が100%、及び10%とし、その各々について単一副搬送波を用いたものと双副搬送波を用いたものとし、さらにその各々について、データ符号化方式を4中1方式、256中1方式としたものについて、各条件における応答率を調査した。伝送速度については、高速モードでのみ評価を行った。実験では、R/Wより連続して20回信号を発信し、その内チップが正常な応答を返した回数の割合をパーセンテージで示している。
【0161】
図7(A)(B)従来の過電圧保護回路を有する無線タグを用いた測定結果を、図8(A)(B)に本発明の一態様にかかる過電圧保護回路を有する無線タグを用いた測定結果を示す。図7(A)において、破線701で示したR/W入力電力を上回ると、過電圧保護回路が動作を開始して、Venvの上昇が5V付近で一定化するのがわかる。同じく、図8(A)において、破線801で示したR/W入力電力を上回ると、過電圧保護回路が動作を開始して、Venvの上昇が5V付近で一定化するのがわかる。
【0162】
図7(B)は、従来の過電圧保護回路を有する無線タグを用いた測定結果を表にまとめたものである。R/Wから無線タグへの信号が100%変調の場合、評価した全てのプロトコル、全ての入力電力の範囲において、少なくとも20回中1回以上(図7(B)ではMin.25%)の応答が得られている。しかしながら、R/Wから無線タグへの信号が10%変調の場合、R/Wからの入力電力が20dBmを上回ったあたりの領域から、正常応答が得られない(応答率0%)領域が現れている。この現象は、過電圧保護回路の動作に伴って、アンテナにおける信号の変調度が著しく低下してしまう(実施例1 図5(A)(B)参照)ことに起因するものである。
【0163】
図8(B)は、本発明の一態様にかかる過電圧保護回路を有する無線タグを用いた測定結果を表にまとめたものである。評価した全てのプロトコル、全ての入力電力の範囲において、少なくとも20回中1回以上の応答が得られており、従来の過電圧保護回路を有する無線タグを用いた場合に応答が得られなかった、10%変調時の大入力電力の領域での応答率が大きく向上しているのがわかる。
【0164】
以上の比較から、本発明の一態様にかかる過電圧保護回路は、入力電力の増加によるVenvの過剰な上昇を良好に抑制しつつ、その動作は従来の過電圧保護回路に比べて安定しており、変調度の小さい信号へのノイズの影響を抑え、無線タグとR/Wとの通信精度の向上に寄与できていることが確認された。
【符号の説明】
【0165】
100 無線タグ
101 論理回路
102 アンテナ回路
103 復調回路
104 変調回路
105 電源回路
106 過電圧保護回路
111 アンテナ
112 共振容量
113 整流回路
114 定電圧回路
115 電圧検出回路
116 記憶回路
117 保護回路
201 Venv
202 レギュレート電圧Vdd
211 振幅変調波
212 パルス信号
301 容量
302 トランジスタ
303 トランジスタ
304 容量
305 抵抗
306 抵抗
307 トランジスタ
310 トランジスタ
311 トランジスタ
312 トランジスタ
313 抵抗
314 トランジスタ
315 トランジスタ
316 容量
317 容量
318 トランジスタ
500 破線
501 プロット
502 プロット
604 領域
605 領域
609 領域
610 領域
701 破線
801 破線
900 基板
901 剥離層
902 トランジスタ
903 トランジスタ
904 容量
905 絶縁層
910 半導体集積回路
911 アンテナ
912 保護膜
920 絶縁体
921 繊維体
922 有機樹脂
930 絶縁体
931 繊維体
932 有機樹脂
941 分断面
1001 チップ
1002 チップ
1003 チップ
1004 チップ
1005 チップ
1006 チップ
1007 チップ
1101 遮蔽体
1102 遮蔽体
1103 遮蔽体
1201 基板
1202 剥離層
1203 絶縁膜
1204 半導体膜
1205 ゲート絶縁膜
1207 ゲート電極
1208 絶縁膜
1209 絶縁膜
1210 絶縁膜
1211 絶縁膜
1212 絶縁膜
1213 絶縁膜
1214 開口部
1215 領域
1217 導電膜
1218 絶縁膜
1220 アンテナ
1221 導電膜
1222 導電膜
1223 絶縁膜
1242 領域
1249 素子層
1104a 遮蔽体
1204a 半導体膜
1204b 半導体膜
1206a チャネル形成領域
1206b 不純物領域
1206c 不純物領域
1230a 薄膜トランジスタ
1230b 薄膜トランジスタ
1231a 導電膜
1231b 導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される電力の大きさに応じた電位を出力する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路から出力される前記電位の最大値に応じた電位を保持する記憶回路と、
前記記憶回路に保持された電位に応じてインピーダンスが変化する保護回路と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
外部から供給される電力の大きさに応じた電位を出力する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路から出力される前記電位の最大値に応じた電位を保持する記憶回路と、
前記記憶回路に保持された電位に応じてインピーダンスが変化することで、前記電力の過剰分を消費あるいは反射させる保護回路と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
外部から電力が供給されるアンテナ回路と、
前記電力の大きさに応じた電位を出力する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路から出力される前記電位の最大値に応じた電位を保持する記憶回路と、
前記記憶回路に保持された電位に応じてインピーダンスが変化することで、前記アンテナ回路の共振周波数を変化させ、前記電力の過剰分を反射させる保護回路と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記記憶回路はリセット端子を有し、
前記リセット端子にリセット信号が入力されると、前記記憶回路は、保持した電位をリセットすることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置と、
外部と無線で通信を行う無線通信回路と、
前記外部から供給される電力を基に直流電圧を生成する電源回路と、
前記直流電圧を用いて駆動し、データの処理を行う論理回路と、
を有する無線タグ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−97606(P2010−97606A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216307(P2009−216307)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】