説明

半導体装置組立方法および半導体装置組立治具

【課題】組立工数の短縮化および熱履歴の軽減を図る。
【解決手段】半導体素子、半導体素子が実装される絶縁基板および絶縁基板が搭載される金属ベース板を有する回路部と、回路部を収容する外囲ケースとを用意する工程と、回路部と外囲ケースとの少なくとも一方の接着面に接着剤を塗布する工程と、外囲ケースに形成されている端子部と、回路部の半田部位との少なくとも一方に半田を塗布する工程と、トレー部と固定枠部の間で回路部および外囲ケースを組み合わせ、トレー部と固定枠部とを互いに接続することにより、回路部および外囲ケースを、トレー部と固定枠部との間で均一に押圧されて固定された状態にし、加熱処理を施す工程と備える。加熱処理により、回路部と外囲ケースとの接着および端子部と回路部との半田付けを一括して行って半導体装置を組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体素子(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子を有する半導体装置を組み立てる半導体装置組立方法および半導体装置組立治具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、一般的に、放熱用の金属ベース板に、半導体素子が実装されている絶縁基板が搭載された回路部が、外囲ケースに覆われた構造を有している。
半導体装置を組み立てる際には、回路部と外囲ケースとを接着剤を用いて加熱・固定する工程が行われる。その後、外囲ケースに形成されている端子部と、絶縁基板との配線を、ペースト半田による半田付けによって接続する工程が行われる。
【0003】
回路部と外囲ケースとを接着する場合、接着剤を回路部または外囲ケースに塗布し、外囲ケースを適度な圧力で抑えた状態で接着面を加熱することで、接着剤が硬化し、回路部と外囲ケースとが固着する。
【0004】
半導体装置の組立に関する従来技術としては、ケース枠にリードフレームと嵌合する溝と段付け部を設け、ケース枠と金属ベース板の接着と、絶縁基板上下の半田接合とを同時化する技術が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、外囲樹脂ケースを回路組立体の上に重ね合わせ、外部導出端子と主回路、制御回路ブロックとの間の半田付けおよび外囲樹脂ケースと金属ベース板との間の接着を一括して同じ工程で行う技術が提案されている(特許文献2)。
【0006】
さらに、金属ベース板と絶縁基板との半田付け、絶縁基板の導体パターンと内部端子との半田付けおよび金属ベース板と外装樹脂ケースとの接着を同時に行う技術が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−242338号公報
【特許文献2】特開平10−233484号公報
【特許文献3】特開平7−321285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体装置の従来の組立工程としては、上記のように2工程が行われ、いずれの工程にも加熱処理が行われている。
すなわち、1番目の工程では、回路部または外囲ケースに接着剤が塗布された後、回路部に外囲ケースをセットし、熱板上にて回路部と外囲ケースとが均一に接着されるよう、外囲ケースの上から適度な圧力を加えると共に加熱し、接着剤を硬化する。
【0009】
また、2番目の工程では、外囲ケースに形成されている端子部、または回路部の半田部位に対して、ペースト半田を塗布し、リフロー炉等により加熱を行って、半田付けによる接続を行う。
【0010】
このように、半導体装置の従来の組立工程では、第1の工程および第2の工程のいずれに対しても、加熱処理が行われるので、半導体装置が組み立てられるまでに、熱履歴が長くかかることになる。
【0011】
このため、熱によって、回路部の酸化および変形が起きるおそれがあり、半導体装置の品質や寸法精度の劣化が生じるといった問題があった。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、組立工数の短縮化および熱履歴の軽減を図った半導体装置組立方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、組立工数の短縮化および熱履歴の軽減を図ることが可能な半導体装置組立治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、半導体装置組立方法が提供される。半導体装置組立方法は、半導体素子が実装される絶縁基板が金属ベース板に搭載される回路部と、回路部を収容する外囲ケースとの少なくとも一方の接着面に接着剤を塗布する。外囲ケースに形成されている端子部と、回路部の半田部位との少なくとも一方に半田を塗布する。
【0014】
また、トレー部と固定枠部を備える治具を用意し、トレー部と固定枠部の間で回路部および外囲ケースを組み合わせ、トレー部と固定枠部とを互いに接続することにより、回路部および外囲ケースを、トレー部と固定枠部との間で均一に押圧されて固定された状態にし、加熱処理を施す。加熱処理によって、回路部と外囲ケースとの接着および端子部と回路部との半田付けを一括して行って、半導体装置を組み立てる。
【発明の効果】
【0015】
半導体装置組立方法は、外囲ケースの回路部への組み合わせ時に、トレー部と固定枠部とが互いに接続し、回路部および外囲ケースが、トレー部と固定枠部との間で均一に押圧されて固定された状態に対して、加熱処理を行って、半導体装置を組み立てることとした。これにより、組立工数の短縮化および熱履歴の軽減を図ることができ、半導体装置の品質の向上を図ることが可能になる。
【0016】
また、半導体装置組立治具は、外囲ケースの回路部への組み合わせ時に、トレー部と固定枠部とが互いに接続して、回路部および外囲ケースを、トレー部と固定枠部との間で均一に押圧して固定する構成とした。このような治具を用いて半導体装置を組み立てることにより、組立工数の短縮化および熱履歴の軽減を図ることができ、半導体装置の品質の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】半導体装置組立方法を示す図である。
【図2】半導体装置の組立工程を示す図である。
【図3】半導体装置の組立工程を示す図である。
【図4】半導体装置の組立工程を示す図である。
【図5】半導体装置の組立工程を示す図である。
【図6】半導体装置組立方法を示す図である。
【図7】半導体装置組立方法を示す図である。
【図8】半導体装置組立方法を示す図である。
【図9】半導体装置組立治具のトレー部の平面図である。
【図10】半導体装置組立治具のトレー部の側面図である。
【図11】トレー部上の回路部の搭載箇所を示す図である。
【図12】半導体装置組立治具の固定枠部の平面図である。
【図13】トレー部と固定枠部とが嵌合している状態を示す図である。
【図14】固定バーと固定器具の嵌合前の状態を示す図である。
【図15】固定バーと固定器具とが嵌合している状態を示す図である。
【図16】半導体装置の組立フローを示す図である。
【図17】半導体装置の組立フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は半導体装置組立方法を示す図である。半導体装置組立方法は、半導体装置組立治具30を使用して、外囲ケース20に回路部10を収容して半導体装置を組み立てる。
【0019】
回路部10は、放熱用の金属ベース板11、絶縁基板12および半導体素子13を含む。回路部10は、半導体素子13が実装されている絶縁基板12が、金属ベース板11に搭載されている構成を有する。
【0020】
外囲ケース20は、回路パターンまたは導電材料が敷設されている絶縁基板12に対して、半田付けによって接続される端子部21を備える。半導体装置組立治具30は、トレー部31および固定枠部32を備える。
【0021】
半導体装置組立方法を以下に説明する。
まず、図1(a)のように、接着剤塗布装置等により、回路部10と、外囲ケース20との少なくとも一方の接着面に接着剤を塗布する(図では外囲ケース20側に接着剤を塗布している)。また、半田塗布装置等により、外囲ケース20に形成されている端子部21と、回路部10の半田部位との少なくとも一方に半田を塗布する(図では、端子部21側に半田を塗布している)。
【0022】
次に、外囲ケース20の接着面が回路部10の接着面に重なるように、回路部10および外囲ケース20の位置をあわせて組み合わせる。このとき、例えば図示しない位置だし専用の治具を用いてもよい。そして、回路部10および外囲ケース20を図1(b)のように金属製のトレー部31に載置し、外囲ケース20の上部に固定枠部32を装着する。このとき、固定枠部32の上部を押圧することによりトレー部31に設けられている固定バー31aおよび固定枠部32に設けられている固定器具32bが互いに接続(嵌合)する。
【0023】
固定バー31aと固定器具32bとが接続することにより、回路部10および外囲ケース20が、トレー部31と固定枠部32との間で均一に押圧されて固定される。その後、図1(c)のように、回路部10および外囲ケース20が、トレー部31と固定枠部32との間で均一に押圧されて固定された状態に対して、リフロー等により、加熱処理を行う。なお、固定バー31aおよび固定器具32bの機構については後述する。
【0024】
これにより、接着剤の硬化および半田溶融を同時に行い、回路部10と外囲ケース20との接着および端子部21と回路部10との半田付けを一括して行って、半導体装置を組み立てる。
【0025】
以上説明したように、半導体装置組立方法では、外囲ケース20の回路部10への組み合わせ時に、トレー部31と固定枠部32とを互いに接続することにより、回路部10および外囲ケース20を、トレー部31と固定枠部32との間で均一に押圧されて固定された連結状態にする。そして、この連結状態に対して、加熱処理を行って、半導体装置を組み立てることとした。これにより、組立工数の短縮化および熱履歴の軽減を図ることが可能になる。
【0026】
次に半導体装置の一般的な組立工程について説明する。図2〜図5は半導体装置の組立工程を示す図である。
半導体装置の従来の組立工程では、第1の工程として、回路部40と外囲ケース50との接着剤による接着が行われ、第2の工程として、回路部40と外囲ケース50の端子部51との半田付けによる接続が行われる。図2、図3は第1の工程を示しており、図4、図5は第2の工程を示している。
【0027】
図2は、外囲ケース50に接着剤が塗布されている状態を示している。回路部40は、金属ベース板41、絶縁基板42および半導体素子43を含む。金属ベース板41は、例えば、銅製のベース板であり、金属ベース板41の上には、絶縁基板42が搭載され、絶縁基板42には、半導体素子43が実装されている。
【0028】
外囲ケース50は、樹脂で形成されたケースであって、金属製(例えば、銅製)の端子部51を備える。端子部51は、外囲ケース50と一体成型され、端子部51の一方の端部51aは、樹脂によって外囲ケース50の側壁50aに固定されている。
【0029】
また、端子部51の他方の端部51bは、第2の工程において、回路パターンまたは導電材料が敷設されている絶縁基板42の半田部位と、半田付けされる部分である。なお、図中、端子部は1つとしたが、実際には複数の端子部が外囲ケース50に設けられている。
【0030】
このような構成の回路部40および外囲ケース50を用いての半導体装置の組立において、接着剤塗布装置などにより、外囲ケース50の底部に接着剤が塗布される。回路部40の接着面に接着剤が塗布されてもよい。
【0031】
図3は、回路部40と外囲ケース50を重ね合わせて、加熱処理が行われている状態を示している。まず、加熱用熱板70の上に、金属製の固定治具61が搭載される。接着剤が塗布された外囲ケース50を、回路部40の金属ベース板41の接着面に合わせて一体化する。次に、外囲ケース50と金属ベース41は、固定治具61によって固定される。その後、加熱用熱板70は、固定治具61を通じて、外囲ケース50と金属ベース板41との接着面を下方から加熱する。
【0032】
さらに、このとき、加圧治具62が、外囲ケース50の上方から圧力を加えて、外囲ケース50が金属ベース板41と均一に接着するように押圧する。このように、加熱および加圧処理を行うことで、接着剤が均一に硬化して、回路部40の金属ベース板41と外囲ケース50とが所定の位置で均一に固着することになる。
【0033】
図4は、外囲ケース50に設けられている端子部51にペースト半田が塗布され、加熱処理が行われている状態を示している。回路部40と外囲ケース50とが接着された組立体は、搬送トレー80に載置されて、半田塗布装置へ搬送される。半田塗布装置は、外囲ケース50に設けられている端子部51にペースト半田を塗布する。
【0034】
その後、ペースト半田が塗布された組立体は、搬送トレー80に載置された状態で、リフロー炉へ搬送される。
リフロー炉では、段階的な温度上昇にて製品を加熱してゆく。このため、回路部40への急激な熱衝撃を緩和できる。その後、温度上昇に伴い、外囲ケース50の端子部51と絶縁基板42との半田部位とを半田付けする。
【0035】
図5は、外囲ケース50に設けられている端子部51と、回路部40の絶縁基板42との半田部位とが半田付けされた状態を示している。第2の工程が終了すると、その後は洗浄工程へ移ることになる。
【0036】
このように、半導体装置の従来の組立工程では、第1の工程と第2の工程とがそれぞれ独立して行われる。また、第1の工程での回路部40と外囲ケース50との接着剤による接着、および第2の工程での外囲ケース50の端子部51と回路部40の半田部位との半田付けの両方の工程において、加熱処理が行われる。
【0037】
したがって、半導体装置が組み立てられるまでに、2つの工程において加熱処理が行われるので、熱履歴が長くかかることになる。すると、熱によって、例えば、絶縁基板42上の配線パターンの表面が酸化したり、または外囲ケース50の端子部51が変形して、複数の端子部同士が接触したりするおそれがあり、半導体装置の品質や寸法精度の劣化が生じるといった問題があった。
【0038】
本技術はこのような点に鑑みてなされたものであり、組立工数の短縮化および熱履歴の軽減を図った半導体装置組立方法および半導体装置組立治具を提供するものである。
次に本技術の半導体装置組立方法について詳しく説明する。図6〜図8は半導体装置組立方法を示す図である。図6(a)は、外囲ケース20の底部に接着剤を塗布し、外囲ケース20の端子部21にペースト半田を塗布した状態を示している。
【0039】
回路部10は、金属ベース板11、絶縁基板12および半導体素子13を含む。金属ベース板11は、例えば、銅製のベース板であり、金属ベース板11の上には、絶縁基板12が搭載され、絶縁基板12には、半導体素子13が実装されている。
【0040】
外囲ケース20は、樹脂で形成されたケースであって、金属製(例えば、銅製)の端子部21を備える。端子部21は、外囲ケース20と一体成型され、端子部21の一方の端部21aは、樹脂によって外囲ケース20の側壁20aに固定されている。
【0041】
また、端子部21の他方の端部21bは、回路パターンまたは導電材料が敷設されている絶縁基板12の半田部位と、半田付けされる箇所である。なお、図中、端子部は1つ図示しているが、実際には複数の端子部が外囲ケース20に設けられている。
【0042】
このような構成の回路部10および外囲ケース20を用いての半導体装置の組立において、半導体装置組立治具30が用意される。図6(b)のように、半導体装置組立治具30は、金属製のトレー部31と、金属製の固定枠部32を備える。トレー部31には、固定バー31aが設けられており、固定枠部32には、固定器具32bが設けられている。
【0043】
トレー部31に対して、回路部10が搭載される。また、外囲ケース20に対しては、接着剤塗布装置等により、外囲ケース20の底部の接着面に接着剤が塗布される。さらに、半田塗布装置等により、外囲ケース20の端子部21には、ペースト半田が塗布される。
【0044】
そして、外囲ケース20の接着面と回路部10の接着面が重なるように、回路部10および外囲ケース20を位置あわせして組み立て、回路部10および外囲ケース20をトレー部31に載置し、接着剤とペースト半田の両方が塗布された状態の外囲ケース20の上部に固定枠部32を装着する。
【0045】
なお、図示した例では回路部10および外囲ケース20をあらかじめ組み立ててからトレー部31に載置し、外囲ケース20を装着しているが、これに代えて、回路部10をトレー部31に載置し、外囲ケース20に固定枠部32を装着してから、外囲ケース20の接着面と回路部10の接着面が重なるように位置あわせし、組み立ててもよい。
【0046】
図7は、接着剤の硬化および半田溶融のための加熱処理が行われる状態を示す図である。まず、固定枠部32が装着された外囲ケース20を、回路部10の金属ベース板11の接着面に合わせ、固定枠部32の上部を押圧する。
【0047】
このとき、固定枠部32に設けられている固定器具32bと、トレー部31に設けられている固定バー31aとが嵌合することにより、回路部10および外囲ケース20が、トレー部31と固定枠部32との間で均一に押圧されて固定された状態となる。
【0048】
その後、トレー部31と固定枠部32との間で、均一な押圧力を受けながら固定した回路部10および外囲ケース20は、この状態でリフロー炉に搬送され、リフロー炉によって、トレー部31および固定枠部32を通じて、加熱処理が行われる。
【0049】
これにより、外囲ケース20と金属ベース板11との接着面が加熱されて、接着剤が均一に硬化する。また、外囲ケース20の端子部21に塗布されたペースト半田が溶融して、端子部21と絶縁基板12の半田部位とが半田付けされる。
【0050】
図8は、加熱処理が完了し、トレー部31から固定枠部32を外したときの状態を示している。半導体装置の組立が終了すると、その後は洗浄工程へ移ることになる。
次に半導体装置組立治具30の接続機構について説明する。図9は半導体装置組立治具のトレー部の平面図である。図10は半導体装置組立治具のトレー部の側面図である(図9をA方向から見た側面図を示している)。
【0051】
トレー部31は、回路部10が搭載されるトレー状の金属製の治具である。また、図の例では、2台の回路部10が搭載可能な構成を示しており、周囲4辺のうち、対向する2辺に固定バー31a−1、31a−2が2組ずつ設けられている。なお、固定バー31a−1、31a−2には、トレー部31の内側に向けて突出しているピン3a−3が設けられている。
【0052】
図11はトレー部上の回路部の搭載箇所を示す図である。位置決めされた回路部10および外囲ケース20が斜線領域rに搭載される(領域rは半導体装置1台分の回路部10および外囲ケース20が搭載される箇所を示している)。
【0053】
図12は半導体装置組立治具の固定枠部の平面図である。固定枠部32は、外囲ケース20の上部に装着される金属製の治具である。あらかじめ組み立てられた回路部10および外囲ケース20をトレー部31に押さえつけるために用いられる。固定枠部32の周囲4辺のうち、対向する2辺に固定器具32bが1組設けられている。固定枠部32は、例えば金属製の角材から構成され、これらの角材が外囲ケース20に接触してトレー部31に押さえつける。固定枠部32の外囲ケース20に接触する面は、平坦であってもよいし、位置決めのための凸部や凹部などが形成されていてもよい。また、固定枠部32と外囲ケース20の間にはばね等の弾性部材を挟んでもよい。弾性部材を用いることにより、回路部10および外囲ケース20をさらに均等に押さえることができる。
【0054】
図13はトレー部と固定枠部とが嵌合している状態を示す図である。トレー部31には、回路部10が搭載される。また、外囲ケース20の上部に固定枠部32が装着され、固定枠部32が装着された外囲ケース20が、回路部10に重ね合わせられる。
【0055】
この場合に、トレー部31に設けられている固定バー31a−1と、固定枠部32に設けられている固定器具32bとが嵌合し、回路部10および外囲ケース20を、トレー部31と固定枠部32との間で均一に押圧された状態で固定する。
【0056】
図14は固定バーと固定器具の嵌合前の状態を示す図であり、図15は固定バーと固定器具とが嵌合している状態を示す図である。固定バー31aは、底辺部3a−1がトレー部31のトレー面上に固定設置しており、突起部3a−2がトレー面に対して垂直方向に固定されている。また、突起部3a−2の中央近傍には、ピン3a−3が挿入されている。ピン3a−3は、トレー部31の内側に向かって突出している。
【0057】
固定器具32bは、固定枠部32の側壁に固定設置している。固定器具32bは、レバー3b−1、嵌合枠部3b−2および嵌合可動部3b−3を備え、レバー3b−1、嵌合枠部3b−2および嵌合可動部3b−3で、嵌合口3b−4が形成されている。
【0058】
ここで、固定枠部32を上部から押圧しながら、固定バー31aに対して固定器具32bを押しこむと、嵌合可動部3b−3が上方向に可動して、ピン3a−3が嵌合口3b−4に挿入する。
【0059】
また、ピン3a−3が挿入すると、嵌合可動部3b−3が元の位置に戻り、ピン3a−3は嵌合口3b−4に対して嵌合して固定される(トレー部31と固定枠部32とがロック状態となる)。
【0060】
また、レバー3b−1を右下方向へ倒すことにより、嵌合口3b−4が開く状態になって、ピン3a−3が嵌合口3b−4から外れることになり、固定バー31aと固定枠部32との嵌合状態が解除される。
【0061】
このように、半導体装置組立治具30は、トレー部31と固定枠部32を備え、トレー部31は、固定バー31aを有し、固定枠部32は、固定器具32bを有する構成とした。これにより、外囲ケース20の回路部10への組み合わせ時に、トレー部31と固定枠部32とが互いに嵌合して、回路部10および外囲ケース20を、トレー部31と固定枠部32との間で均一に押圧して固定することができる。また、固定枠部32に設けられたレバー3b−1によって、トレー部31と固定枠部32との連結を容易に解除することができる。
【0062】
次に半導体装置組立方法について、従来の組立方法と比較しながら、フローチャートを用いて説明する。図16は半導体装置の組立フローを示す図である。上記の図2〜図5に示した、従来の半導体装置組立工程のフローの一例を示している。
【0063】
〔S1〕半導体素子43が実装されている絶縁基板42が金属ベース板41に搭載された回路部40が生成される。
〔S2〕作業者は、外囲ケース50に接着剤を塗布するための外囲ケース固定治具に外囲ケースをセットする。
【0064】
〔S3〕接着剤塗布装置は、外囲ケース50の所定箇所に接着剤を塗布する。
〔S4〕作業者は、接着剤が塗布された外囲ケース50を回路部40に組み合わせる。
〔S5〕作業者は、回路部40と外囲ケース50の組み合わせ品を、加熱用熱板70上に搭載した固定治具61に置いてセットする。
【0065】
〔S6〕プレス装置(加圧治具)62と加熱用熱板70を有する接着剤硬化装置は、加熱用熱板70から加熱を行い、接着剤を硬化する。
〔S7〕作業者は、半田を塗布するための半田塗布用治具に、接着剤で硬化された回路部40と外囲ケース50との組み合せ品をセットする。
【0066】
〔S8〕半田塗布装置は、外囲ケース50の端子部51に半田を塗布する。
〔S9〕作業者は、半田塗布後の回路部40と外囲ケース50との組み合わせ品を搬送トレー80へ載せる。
【0067】
〔S10〕リフロー炉は、回路部40と外囲ケース50との組み合せ品に対して半田付けを実施する。
〔S11〕作業者は、半田付けが完了した製品を次工程(洗浄工程)へ搬送する。
【0068】
図17は半導体装置の組立フローを示す図である。上記の図6〜図8に示した、本技術の半導体装置組立方法のフローの一例を示している。
〔S21〕半導体素子13が実装されている絶縁基板12が金属ベース板11に搭載された回路部10が生成される。
【0069】
〔S22〕作業者は、外囲ケース20に接着剤を塗布するための外囲ケース固定治具に外囲ケースをセットする。
〔S23〕接着剤塗布装置は、外囲ケース20の所定箇所に接着剤を塗布する。
【0070】
〔S24〕作業者は、半田を塗布するための半田塗布用治具に外囲ケース20をセットする。
〔S25〕半田塗布装置は、外囲ケース20の端子部21に半田を塗布する。
【0071】
〔S26〕作業者は、接着剤および半田が塗布された外囲ケース20を回路部10に組み合わせる。
〔S27〕作業者は、半導体装置組立治具30の固定枠部32を外囲ケース20の上部に装着し、回路部10と外囲ケース20の組み合わせ品を、半導体装置組立治具30のトレー部31にセットする。
【0072】
そして、トレー部31に設けられている固定バー31aおよび固定枠部32に設けられている固定器具32bを互いに嵌合させて、回路部10および外囲ケース20が、トレー部31と固定枠部32との間で均一に押圧された固定状態にする。
【0073】
〔S28〕リフロー炉は、ステップS27の状態に対して、加熱処理を行って、接着剤の硬化および半田の溶融を同時に行い、回路部10と外囲ケース20との接着および端子部21と回路部10との半田付けを一括して行う。
【0074】
〔S29〕作業者は、接着および半田付けの完了後、半導体装置組立治具30を外して、半導体装置を洗浄工程(次工程)へ送る。
このように、図17に示した半導体装置組立方法は、図16に示した従来方式と比べて、工程数が少なくなっていることがわかる。また、従来では、回路部と外囲ケースとの接着剤による接着、および外囲ケースの端子部と回路部の半田部位との半田付けとの両方の工程において、加熱処理が行われていた。
【0075】
これに対し、本技術の半導体装置組立方法では、着脱容易な半導体装置組立治具を用いて、1回の加熱処理で、回路部と外囲ケースとの接着剤による接着、および外囲ケースの端子部と回路部の半田部位との半田付けを一括して行うこととした。これにより、組立工数の短縮化および熱履歴の軽減を図ることが可能になる。
【0076】
なお、上記の例のように、工程S25の後に工程S26を行ってもよいし、この順番を変更して、例えば、工程S23の後に工程S26を行い、その後工程S25を行ってもよい。また、上記の例の工程S1について、半導体素子43、絶縁基板42および金属ベース板41を予め接合した回路部10を用意してもよいし、半導体素子43、絶縁基板42および金属ベース板41の間に半田板を挟んだ回路部10を用意しておき、工程S28において半田付けを行ってもよい。
【0077】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 回路部
11 金属ベース板
12 絶縁基板
13 半導体素子
20 外囲ケース
21 端子部
30 半導体装置組立治具
31 トレー部
32 固定枠部
31a 固定バー
32b 固定器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子、前記半導体素子が実装される絶縁基板および前記絶縁基板が搭載される金属ベース板を有する回路部と、前記回路部を収容する外囲ケースとを用意する工程と、
前記回路部と前記外囲ケースとの少なくとも一方の接着面に接着剤を塗布する工程と、
前記外囲ケースに形成されている端子部と、前記回路部の半田部位との少なくとも一方に半田を塗布する工程と、
トレー部と固定枠部の間で前記回路部および前記外囲ケースを組み合わせ、前記トレー部と前記固定枠部とを互いに接続することにより、前記回路部および前記外囲ケースを、前記トレー部と前記固定枠部との間で均一に押圧されて固定された状態にし、加熱処理を施す工程と、を備え、
前記加熱処理により、前記回路部と前記外囲ケースとの接着および前記端子部と前記回路部との半田付けを一括して行って半導体装置を組み立てる、
ことを特徴とする半導体装置組立方法。
【請求項2】
前記トレー部には、ピンが備えられた固定バーが設けられ、前記固定枠部には、前記ピンと嵌合する嵌合口が形成された固定器具が設けられ、
前記外囲ケースの接着面を前記回路部の接着面に重ね合わせて組み合わせ、前記固定枠部の上部を押圧し、前記固定器具の前記嵌合口に前記固定バーの前記ピンが嵌合させ、前記トレー部と前記固定枠部とを互いに接続させることにより、前記回路部および前記外囲ケースを、前記トレー部と前記固定枠部との間で均一に押圧されて固定された状態にすることを特徴とする請求項1記載の半導体装置組立方法。
【請求項3】
前記固定器具は、前記固定バーとの嵌合を解除するレバーを備えていることを特徴とする請求項2記載の半導体装置組立方法。
【請求項4】
半導体素子、前記半導体素子が実装される絶縁基板および前記絶縁基板が搭載される金属ベース板を有する回路部が載置されるトレー部と、
前記回路部を収容する外囲ケースの上部に装着される固定枠部と、
を備え、
前記トレー部と固定枠部との間で前記外囲ケースおよび前記回路部を組み合わせ、前記トレー部と前記固定枠部とを互いに接続することにより、前記回路部および前記外囲ケースを均一に押圧して固定する、
ことを特徴とする半導体装置組立治具。
【請求項5】
前記トレー部は、ピンが備えられた固定バーを有し、前記固定枠部は、前記ピンと嵌合する嵌合口が形成された固定器具を有し、
前記外囲ケースを前記回路部に重ね合わせて組み合わせ、前記固定枠部の上部を押圧し、前記固定器具の前記嵌合口に前記固定バーの前記ピンが嵌合させ、前記回路部および前記外囲ケースを、前記トレー部と前記固定枠部との間で均一に押圧されて固定された状態にすることを特徴とする請求項4記載の半導体装置組立治具。
【請求項6】
前記固定器具は、前記固定バーとの嵌合を解除するレバーを備えていることを特徴とする請求項5記載の半導体装置組立治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−98395(P2013−98395A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240772(P2011−240772)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)