説明

半導体記憶装置

【課題】コントローラから発生する熱の記録媒体への影響を抑制したSSD装置を提供する。
【解決手段】NAND5及びコントローラ6が、各々複数のバンプを介して下面に実装されたプリント回路板3と、それぞれが導電性を有するトップカバー1及びボトムハウジング9によって構成されプリント回路板3を収容する筐体と、ボトムハウジング9と、コントローラ6及びNAND5との間に介在して、コントローラ6及びNAND5とボトムハウジング9とを熱的に接続する放熱シート10と、を備え、放熱シート10は、ボトムハウジング9のプリント回路板3と対向する領域とプリント回路板3とがなす平行平板が形成するコンデンサの結合容量が、平行平板間に比誘電率5.8の物体をベタに配置した状態での結合容量よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに実装される補助記憶装置としては、HDD(Hard Disk Drive)を用いた補助記憶装置(以下、HDD装置という。)が用いられていた(特許文献1参照)。
【0003】
近年、NAND型フラッシュメモリなどの不揮発性半導体メモリチップを記録媒体として用いた補助記憶装置(いわゆるSolid State Disk、以下SSD装置という。)がHDD装置に代わってコンピュータへ実装されるようになってきている。SSD装置は、複数のNAND型フラッシュメモリ(以下、NANDとする)とそれを制御するコントローラICとがプリント回路板にボール状の電極(バンプ)を介して実装されて構成されており、一般的には外形寸法や形状が規格で規定されたHDD装置と同じ大きさ、形状の筐体(例えば、2.5インチHDD装置と同じ大きさ、形状の筐体)に収容された上でコンピュータに実装される。HDD装置の筐体に関する規格は、磁気ディスクの大きさに応じていくつかの種類があるが、2.5インチHDD装置を始めとして、一般的には筐体は金属製の箱形状である。
【0004】
SSD装置の実動作時(実際のデータの読み書きを行う時)には、スイッチング動作を高速で繰り返し行うことによってコントローラが発熱する。コントローラから発生する熱の一部は、コントローラと接するバンプを介してプリント回路板へ伝わり、さらにプリント回路板上の配線パターン及びNANDと接するバンプを介してNANDへと伝わっていく。NANDは動作原理的に高温環境下ではリーク電流が増大して動作が不安定となりやすいため、動作保証温度が他種のICと比較して低く設定されている。例えば、他の種類のICの動作保証温度が100℃程度であるのに対し、NANDの動作保証温度は85℃程度である。
【0005】
よって、SSD装置では、コントローラを冷却することで、コントローラからNANDへの熱の伝わりを抑制する必要が生じる。磁気ディスクを記録媒体とするHDD装置の場合は、コントローラと磁気ディスクとが離れて配置されており、コントローラから発生した熱が磁気ディスクの機構部分等に影響を及ぼすことは無かったため、これはSSD装置特有の問題であると言える。
【0006】
SSD装置においてコントローラの冷却する構造としては、コントローラとボトムハウジングとの間に放熱シートを介在させることが考えられる。コントローラとボトムハウジングとの間に放熱シートを介在させたとしても、コントローラから発生した熱の全てがボトムハウジングへと伝わる訳ではないが、一部は放熱シートを介してボトムハウジングへと伝わる。これにより、NANDへと伝わる熱量を低減することで、NANDの温度が動作保証温度を超えないように維持していた。
【0007】
ところで、SSD装置やこれを搭載するコンピュータの性能の向上に伴い、コントローラの実動作時の発熱量は増大する傾向にある。一例を挙げると、SSD装置のデータ転送レートは、旧世代のSSD装置では、読み出し100MByte/sec、書き込み40MByte/secであったが、現在では読み出し240MByte/sec、書き込み200MB/secに向上している。このため、コントローラとボトムハウジングとの間にのみ放熱シートを配置しても、コントローラから発生する熱を十分に放熱させることは難しくなっている。しかし、この問題に対する対策がなされたSSD装置は実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−30837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、コントローラから発生する熱の記録媒体への影響を抑制したSSD装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の一態様によれば、複数の不揮発性半導体メモリチップ及び該不揮発性半導体メモリチップへのデータの読み書きを制御するコントローラが、各々複数のバンプを介して一方の面に実装されたプリント回路板と、導電性材料で形成され、プリント回路板を収容する筐体と、筐体のプリント回路板の一方の面と対向する面と、コントローラ及び各不揮発性半導体メモリチップとの間に介在して、コントローラ及び各不揮発性半導体メモリチップと筐体とを熱的に接続する放熱シートと、を備え、放熱シートは、筐体のプリント回路板と対向する領域とプリント回路板とがなすコンデンサの結合容量が、平行平板間に比誘電率5.8の物体をベタに配置した状態での結合容量よりも小さいことを特徴とする半導体記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コントローラから発生する熱の記録媒体への影響を抑制しつつ、不要輻射を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係るSSD装置の構成及びプリント回路板の下面の構成を示す図。
【図2】図2は、コントローラ及びNANDに対応する箇所に貫通孔を備えたテンプレートの構成を示す図。
【図3】図3は、コントローラとNANDとを一枚のベタの放熱シートで覆うSSD装置の構成及びプリント回路板の下面の構成を示す図。
【図4】図4は、プリント回路板とボトムハウジングとによる平行平板コンデンサのモデルを示す図。
【図5】図5は、個片の放熱シートを用いたSSD装置のEMI特性を示す図。
【図6】図6は、ベタの放熱シートを用いたSSD装置のEMI特性を示す図。
【図7】図7は、複数の冷却対象ごとに放熱シートを一つ配置した一例を示す図。
【図8】図8は、第2の実施の形態に係るSSD装置の構成及びプリント回路板の下面の構成を示す図。
【図9】図9は、第3の実施の形態に係る放熱シートの斜視図。
【図10】図10は、両面にNANDが実装されたプリント回路板を用いたSSD装置の構成及び両面にNANDが実装されたプリント回路板の下面の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る半導体記憶装置としてのSSD装置を詳細に説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るSSD装置の構成を示す分解斜視図である。図1(b)は、プリント回路板3の下面の構成を示す斜視図である。本実施の形態に係るSSD装置は、8個のNAND5とコントローラ6とが下面側に実装されたプリント回路板3を備えており、トップカバー1とボトムハウジング9とで構成される筐体にプリント回路板3が収容される。なお、トップカバー1及びボトムハウジング9は、アルミニウムや鉄などの金属材料で形成されている。
【0015】
トップカバー1及びボトムハウジング9は、カバー固定ネジ2によって連結されることで、1側面が開口した略六面体状の筐体を形成する。プリント回路板3は、コントローラ6及びNAND5とボトムハウジング9との間に放熱シート10が介在した状態で固定ネジ8によってボトムハウジング9にネジ止めされている。プリント回路板3の一端部に形成されたコネクタ4は、筐体の開口面において筐体外に露出しており、コネクタ4を介して被実装機器であるコンピュータに接続される。
【0016】
放熱シート10の各々は、シリコーン樹脂及びセラミックスフィラーを含む材料によって柔軟性を備えるように形成されており、プリント回路板3に実装されたコントローラ6やNAND5とボトムハウジング9とに圧迫されて、双方に密着している。これにより、コントローラ6やNAND5とボトムハウジング9とが熱的に接続された状態となっている。なお、SDRAM7とボトムハウジング9との間には放熱シート10が配置されていないが、SDRAM7は耐熱性が高く、コントローラ6からの熱が伝わっても不具合が発生しないためである。放熱シート10は、コントローラ6やNAND5の温度が設計値(例えば85℃)以上に上昇することを防ぐのに十分な放熱効果を備えた大きさである。
【0017】
ここで、本実施の形態に係るSSD装置の組立手順について説明する。放熱シート10は、図2に示すように、コントローラ6及びNAND5に対応する箇所に貫通孔20aを備えたテンプレート20をボトムハウジング9内の所定の位置に配置し、貫通孔20aを介してボトムハウジング9の内面に貼付される。放熱シート10を貼付したのちにテンプレート20をボトムハウジング9から取り外し、その上にプリント回路板3を積載して固定ネジ8でネジ止めする。(この図ではテンプレートを用いた手順を示しているがテンプレートを使用せず直接該当するICのパッケージに放熱シートを貼ってもよい。ただしそのときはIC以外の実装部品に対して貼り付け作業時にダメージを与えない工夫が必要となる。)このような手順を経てコントローラ6及びNAND5とボトムハウジング9とのそれぞれの間に放熱シート10を介在させることにより、放熱シート10の設置作業性が向上する。また、放熱シート10の上にプリント回路板3を被せるようにして組み立てるため、組立作業中に放熱シート10がコントローラ6やNAND5のトップ面(ボトムハウジング9と対向する面)から脱落することがない。その後、トップカバー1をボトムカバー9に被せてカバー固定ネジ2を締結することによって、SSD装置の組立が完了する。
【0018】
次に、本実施の形態において放熱シート10を個片化した理由について説明する。
【0019】
NANDに対する熱対策として、放熱シートを介してNANDとボトムハウジングとを熱的に接続することが考えられる。この構造としては、図3に示すように、複数のNAND5とコントローラ6とを覆う最小の矩形状の放熱シート11をコントローラ6及びNAND5とボトムハウジング9との間に介在させる構造が挙げられる。図3(a)は、コントローラ6とNAND5とを一枚のベタの放熱シート11で覆う構成のSSD装置の分解斜視図であり、図3(b)は、プリント回路板3の下面の構成を示す斜視図である。放熱シート11がコントローラ6及びNAND5を覆う最小の矩形状であることを除いては図1に示したSSD装置と同様である。以下、図3に示すSSD装置と図1に示した第1の実施の形態に係るSSD装置とを対比しつつ説明を行う。
【0020】
SSD装置のプリント回路板3は、ボトムハウジング9と略平行に配置されるため、プリント回路板3とボトムハウジング9とによって平行平板コンデンサが形成されるとみなすことができる。図4に、プリント回路板3とボトムハウジング9とによる平行平板コンデンサのモデルを示す。プリント回路板3とボトムハウジング9とが平行平板となり、結合容量(静電容量)が発生する。平行平板間に放熱シート10、11が配置されているため、放熱シート10、11が存在する領域の面積や放熱シート10、11の比誘電率に応じて結合容量が変動する。
【0021】
プリント回路板3は、コネクタ4を介して接続されたコンピュータから電源が供給されSSDとしての動作をする。内部の動作クロックやリード/ライトのデータによりNAND5及びコントローラ6から高周波ノイズが発生する。このノイズは、プリント回路板3とボトムハウジング9とが容量結合することによってボトムハウジング9にも伝播する。
【0022】
ボトムハウジングは、その縦横や対角線方向の寸法を1波長とする周波数の(1/n)倍の周波数(n=1、2、4、8・・・)の電磁波に対しては共振し、効率の良いアンテナとして機能する。例えば、ボトムハウジング9が長辺0.1m、短辺0.069.85m、対角0.122mであるならば、長辺方向には、3GHz、1.5GHz、0.75GHz、0.375GHz・・・の周波数の電磁波が共振する。また、短辺方向には、4.295GHz、2.147GHz、1.074GHz、0.537GHz・・・の周波数の電磁波が共振する。さらに、対角方向には、2.459GHz、1.230GHz、0.615GHz、0.307GHz・・・の電磁波が共振する。これらの周波数の電磁波は、ボトムハウジング9がアンテナとなって空気中に放射される。
【0023】
上記の例においては、CE、VCCI(Voluntary Control Council for Interference by information technology equipment)、FCC(Federal Communications Commission)などに規定された各国や地域のEMI(Electromagnetic interference)規格において測定範囲として含まれている300MHz〜1GHzのほぼ全域にわたって共振周波数が存在している。ただし、ボトムハウジング9の縦横・対角方向の寸法の違いにより、短辺方向の1/8波長での共振周波数である0.537GHz、対角方向の1/4波長での共振周波数である0.615GHz、長辺方向の1/4波長での共振周波数である0.750GHzは共振周波数の周波数差が小さくなっている。SSD装置の動作スピードを高速化すると、この帯域に相当するノイズが発生しやすくなり、ボトムハウジング9と共振しやすくなる。したがって、ボトムハウジング9がアンテナとして機能することによる不要輻射は、SSD装置の動作スピードが高速化されるにつれて顕著になる。
【0024】
上記のように、コントローラ6及びNAND5の冷却を目的として放熱シート10、11を配置することは、平行平板コンデンサの平行平板間(プリント回路板3−ボトムハウジング9間)に特定の比誘電率(放熱シート10、11の材料の比誘電率)の物体を挿入することとに他ならない。したがって、放熱シート10、11を配置することにより、単にプリント回路板3とボトムハウジング9とが対向しているだけの状態よりも平行平板コンデンサの結合容量が増加し、ボトムハウジング9がアンテナとして機能しやすくなる。また、ベタの放熱シート11を設置する場合は、個片の放熱シート10を配置する場合よりもコンデンサの結合容量が大きく増加するため、ボトムハウジング9がアンテナとして機能することによる不要輻射を低減するという点では不利である。
【0025】
現存する放熱シートの材料の比誘電率は5.8程度であるが、この放熱シートをベタに配置した場合、SSD装置のEMI特性はEMI規格にぎりぎり適合できる状態となり、被実装機器であるコンピュータのシールド性能によっては規格に適合しない可能性がある。SSD装置の動作スピードをさらに高速化するとなると、EMI規格に適合しなくなる可能性はさらに高くなる。また、EMI規格に対してマージン(余裕度)を持たせたさらに厳しい仕様が要求されるような場合には、現在の動作スピードであっても要求される仕様を満たすことができない可能性もでてくる。
【0026】
本実施の形態では、以上の点を考慮し、個片の放熱シート10とすることにより、平行平板コンデンサの結合容量の増大を抑えている。放熱シート10が個片化されており、放熱シート10が占める面積の合計は、ベタの放熱シート11の面積と比較して小さくなっている。このため、コンデンサの結合容量が小さくなり、ノイズ源からアンテナ側までのインピーダンスが大きくなり、伝送レベルが小さくなりボトムハウジング9がアンテナとして機能することによる不要輻射が低減される。
【0027】
以下に、個片の放熱シート10を用いた場合と、ベタの放熱シート11を用いた場合との違いを具体的な数値を挙げてより詳細に説明するが、本発明は例示した数値に限定されるものではない。
【0028】
個片の放熱シート10は、各々縦横0.01m、厚さ0.003mとする。また、プリント回路板3は、縦0.063m、横0.0865mとする。また、ボトムハウジング9は、長辺0.1m、短辺0.069.85m、対角0.122mとする。
【0029】
プリント回路板3とボトムハウジング9との間隔は0.0044mとし、コントローラ6及びNAND5の実装高さを0.0014mとする。すなわち、コントローラ6及びNAND5とボトムハウジング9との間隔は0.003mである。
【0030】
ベタの放熱シート11は、縦0.05m、横0.07m、厚さ0.003mとする。
【0031】
個片の放熱シート10の各々の面積は0.0001m、ベタの放熱シート11の面積は0.0035mmである。個片の放熱シート10はコントローラ6及びNAND5の各々に対応して計9個使用するため、個片の放熱シート10の合計面積Sとベタの放熱シート11の面積Sとの面積比としてはS:S=0.0009:0.0035≒1:3.9となる。
【0032】
平行平板コンデンサの結合容量Cは、下記式(1)で表される。
C=ε×ε×S÷d ・・・(1)
式(1)において、ε:真空中の誘電率(F/m)、ε:平行平板間に存在する物体の比誘電率、S:平行平板の面積(m)、d:平行平板間距離(m)である。
【0033】
本実施の形態に係るSSD装置では、ボトムハウジング9よりも小さいプリント回路板3の面積が平行平板としての面積となり、S=0.063×0.0865=0.0054495mである。平行平板間の一部に放熱シート10、11が存在する場合、コンデンサの結合容量は、放熱シート10、11が存在する領域の結合容量と存在しない領域の結合容量との和となる。
【0034】
ここで、空気の比誘電率は1で近似するものとする。また、説明の簡略化のために、コントローラ6やNAND5などの電子部品については、比誘電率が1であるとする。
【0035】
放熱シート10、11を用いない場合には、平行平板間には空気のみが存在するため、結合容量は、上記式(1)から、8.85419×10−12×1×0.0054495÷0.0044=1.10×10−12F=11.0pFである。
【0036】
個片の放熱シート10を用いる場合は、放熱シート10が存在する領域の面積が0.0009m、放熱シート10が存在しない領域の面積が0.0045495mである。放熱シート10が存在しない領域の結合容量は、上記式(1)から8.85419×10−12×1×0.0045495÷0.0044=9.16×10−12F=9.16pFである。
【0037】
一方、放熱シート10が存在する領域の結合容量は、放熱シートの部分の結合容量と、電子部品の部分の結合容量との直列の合成容量である。二つのコンデンサC、Cの直列の合成容量Cは、下記式(2)で表される。
1/C=(1/C)+(1/C) ・・・(2)
【0038】
放熱シート10の部分の結合容量は、上記式(1)から、8.85419×10−12×5.8×0.0009÷0.003=5.9×10−12=5.69pFである。また、電子部品の部分の結合容量は、上記式(1)から、8.85419×10−12×1×0.0009÷0.0014=1.5×10−11F=15.4pFである。このため、放熱シート10が存在する領域全体としての結合容量は、上記式(2)から4.16pFとなる。したがって、コンデンサ全体での結合容量は、9.16pF+4.16pF=13.32pFとなる。
【0039】
ベタの放熱シート11を用いる場合は、放熱シート11が存在する領域の面積が0.0035m、放熱シート11が存在しない領域の面積が0.0019495mである。個片の放熱シート10を用いる場合と同様の計算により、ベタの放熱シート11が存在しない領域の結合容量は3.92pF、ベタの放熱シート11が存在する領域の結合容量は16.2pFである。したがって、コンデンサ全体での結合容量は、20.1pFとなる。
【0040】
結果として、個片の放熱シート10を用いることにより、ベタの放熱シート11を用いる場合と比較して、結合容量を約44%小さくできる。
【0041】
図5に、個片の放熱シート10を用いたSSD装置のEMI特性を示す。また、図6に、ベタの放熱シート11を用いたSSD装置のEMI特性を示す。ここでは、VCCIに規定された試験方法による測定結果を示しており、コンピュータから延長ケーブルで接続してSSD単体がコンピュータから外に出た状態(本来は被実装機器であるコンピュータに組み込んだ状態でコンピュータを動作させる)で動作させ、10m離れた場所に設置したアンテナに入る電磁波(不要輻射)の強度を測定している。30〜230MHzの帯域では30dB以下、230〜1000MHzの帯域では37dB以下であることがVCCI規格に適合する条件である。ベタの放熱シート11を用いたSSD装置では、700MHz近傍での不要輻射の強度が規格値を上回っているのに対し、個片の放熱シート10を用いたSSD装置では、700MHz近傍での不要輻射の強度が約16dB改善されて規格値以下となっている。
【0042】
このように、個片化された放熱シート10を用いることにより、コンデンサの結合容量が小さくなり、ボトムハウジング9がアンテナとして機能することによる不要輻射が低減される。ベタの放熱シート11で個片の放熱シート10と同等の結合容量を実現するためには、比誘電率が1.586という材料で放熱シート11を形成する必要があるが、このような材料で放熱シート11を形成することは現状では実現が困難である。すなわち、個片化された放熱シート10を用いることにより、ベタの放熱シート11を用いた場合では実現することが困難なレベルにまで結合容量を小さくし、不要輻射を低減できる。
【0043】
また、放熱シート10を個片化することにより、SSD装置の軽量化を図ることもできる。放熱シート10、11の比重を2.7とした場合、上記例では、面積の差は0.0026m、シートの厚さは0.003mであるため重量差は約21gとなる。すなわち、個片の放熱シート10を用いることにより、ベタの放熱シート11を用いる場合と比較して約21gの軽量化を図ることが可能となる。
【0044】
なお、ここではコントローラ6及びNAND5の各々に個別に放熱シート10を配置する構成を例としたが、図7に示すように、複数の冷却対象ごとに放熱シートを一つ配置するようにしても良い。図7では、放熱シート10a、10b、10cの各々が三つの冷却対象(1個のコントローラ6及び8個のNAND5)を覆っている。このような構成とすることにより、放熱シートを貼り付ける作業の工数を減らすことができ、組立作業性を向上させることが可能となる。一つの放熱シートで覆う冷却対象の数が増えるほど組立作業性は高くなるが、冷却対象が存在しない領域にも放熱シートが配置されるためコンデンサの結合容量は増大し、ボトムハウジング9がアンテナとして機能することによる不要輻射は増大する。このように、放熱シートを配置するに当たっての組立作業性と、SSD装置のEMI特性とはトレードオフの関係にあるため、要求される仕様に応じて一つの放熱シートで覆う冷却対象の数を選定するとよい。
【0045】
(第2の実施の形態)
図8(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るSSD装置の構成を示す分解斜視図である。図8(b)は、プリント回路板3の下面の構成を示す斜視図である。第2の実施の形態に係るSSD装置は、図3に示した構成と同様であり、放熱シート12は一枚でコントローラ6と8個のNAND5とを覆う。ただし、本実施の形態においては、放熱シート12の比誘電率は3.8であり、第1の実施の形態の放熱シート10よりも低くなっている。
【0046】
上記式(1)から明らかなように、平行平板のコンデンサの結合容量は、平行平板間に存在する物体の比誘電率に比例する。放熱シート12の寸法が上記第1の実施の形態において例示した放熱シート11の寸法と同じであり、プリント回路板3の面積やボトムハウジング9とプリント回路板3との間隔などの他の条件も同じであるとした場合、平行平板コンデンサの結合容量は上記式(1)、式(2)により、放熱シート12が存在しない領域の結合容量は3.92pF、放熱シート12が存在する領域の結合容量は14.1pFである。よって、コンデンサ全体での結合容量は、18.0pFとなる。したがって、比誘電率が低い材料で形成された放熱シートを適用することにより、プリント回路板とボトムハウジングとによるコンデンサの結合容量を小さくし、ボトムハウジングがアンテナとして機能することによる不要輻射が低減できる。
【0047】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係るSSD装置は、第2の実施の形態と同様に、一枚の放熱シートでコントローラと8個のNANDとを覆うようになっている。図9に、本実施の形態に係る放熱シート13の斜視図を示す。放熱シート13は、冷却対象に対応する各個片13aと、これらを面上に備える板状部13bとが一体に成形された構造である。板状部13bの厚さ寸法を小さくすることにより、板状部13bがプリント回路板3とボトムハウジング9との間に存在することによる結合容量の増加量を、ベタに配置する場合よりも抑えることができる。したがって、本実施形態においては、ベタ形状とする場合よりもコンデンサの結合容量を小さくでき、かつ1回放熱シート13の貼り付け作業が1回で済む。このため、EMI特性と、組立作業性とを両立させることができる。
【0048】
なお、上記各実施の形態においては、コントローラ6及びNAND5がプリント回路板3の下面に実装され、プリント回路板3とボトムハウジング9との間に放熱シート10、12、13が配置された構成を例として説明したが、コントローラ6及びNAND5がプリント回路板3の上面に実装され、プリント回路板3とトップカバー1との間に放熱シートが配置される構成であっても上記同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0049】
また、上記各実施の形態においては、NAND5がプリント回路板3の下面のみに実装されている構成を例として説明したが、図10(a)、(b)に示すように、両面にNAND5が実装されたプリント回路板3を用いた構成とすることも可能である。図10(a)は、両面にNAND5が実装されたプリント回路板3を用いたSSD装置の構成を示す分解斜視図である。図10(b)は、両面にNAND5が実装されたプリント回路板3の下面の構成を示す斜視図である。両面にNAND5が実装されたプリント回路板3を用いる場合には、プリント回路板3の上面側の各NAND5とトップカバー1との間にも第1の実施形態の放熱シート10と同様の個片の放熱シート15を配置することで、プリント回路板3とトップカバー1とによる平行平板コンデンサの結合容量を低減し、トップカバー1がアンテナとして機能することによる不要輻射を低減できる。放熱シート15が、第2、第3の実施形態と同様のものであっても同様の効果が得られることは言うまでもない。このように、本発明は様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 トップカバー、3 プリント回路板、5 NAND、6 コントローラ、9 ボトムハウジング、10、10a、10b、10c、11、12、13 放熱シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の不揮発性半導体メモリチップ及び該不揮発性半導体メモリチップへのデータの読み書きを制御するコントローラが、各々複数のバンプを介して一方の面に実装されたプリント回路板と、
導電性材料で形成され、前記プリント回路板を収容する筐体と、
前記筐体の前記プリント回路板の一方の面と対向する面と、前記コントローラ及び各不揮発性半導体メモリチップとの間に介在して、前記コントローラ及び各不揮発性半導体メモリチップと前記筐体とを熱的に接続する放熱シートと、
を備え、
前記放熱シートは、前記筐体と前記プリント回路板とがなすコンデンサの結合容量が、前記コンデンサ間に比誘電率5.8の物体をベタに配置した状態での結合容量よりも小さいことを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
前記放熱シートが複数に分割されており、複数に分割された放熱シートの各片が間隔を空けて配置されたことを特徴とする請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記複数に分割された放熱シートの各片が、前記コントローラ及び前記不揮発性半導体メモリチップの各々に対応して配置されたことを特徴とする請求項2記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記放熱シートは、前記複数に分割された各片と、該複数に分割された各片を面上に備える板状部とを有することを特徴とする請求項2又は3記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記放熱シートが、比誘電率が5.8よりも小さい材料で形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記プリント回路板の他方の面にも複数の不揮発性半導体メモリチップが実装されており、
前記プリント回路板の他方の面に実装された不揮発性半導体メモリチップと前記筐体の前記プリント回路板の他方の面と対向する内面との間に介在して、前記プリント回路板の他方の面に実装された不揮発性半導体メモリチップと前記筐体とを熱的に接続する放熱部材をさらに有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−134138(P2011−134138A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293492(P2009−293492)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】