説明

半導体集積回路および無線通信システム

【課題】ブルートゥース通信の低消費電力モードに使用される動作クロック信号と、リアルタイムクロックの動作クロック信号との共通化を図り、部品点数を削減しモジュールの小型化を図ることの出来るブルートゥース通信モジュール、並びに、その通信制御を行う半導体集積回路を提供する。
【解決手段】ブルートゥース通信の低消費電力モード用の32kHzのクロックφcを、入力クロックφcをカウントするクロックカウンタ(3651)と、例えば1秒単位で時刻を表わす値がカウントされるタイマカウンタ(3652)と、クロックカウンタの値が32000(=H’7D00)になったときにタイマカウンタの値を更新するデコーダ(3653)とから構成されたリアルタイムクロック回路(365)に供給して、時刻の計時を行わせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、現在時刻を計時するいわゆるリアルタイムクロック回路が搭載された通信制御用ICや通信システムに適用して有用な技術であり、例えばブルートゥース通信規格の通信制御用ICやその通信システムに利用して特に有用な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
無線通信規格の1つにブルートゥースと呼ばれ、2.4GHz〜2.48GHzの周波数帯を使用し短距離無線通信を行うものがある。
ブルートゥース規格の短距離無線通信では、リンクコントローラと呼ばれる処理回路により通信相手の機器と相互通信接続を行うための制御が行われる。また、ブルートゥース通信では、ブルートゥースクロックと呼ばれる3.2kHzのクロック信号(以下、単にクロックと称する)に基づき、主に3.2kHzの2倍の周期(625μs)でパケットデータを交互に送受信して通信が行われる。
【0003】
相互通信接続の確立時には、それぞれのリンクコントローラが、自分のブルートゥースクロックと相手機器のブルートゥースクロックのずれ量を割り出し、スレーブ側のリンクコントローラが前記ずれ量を補正した推定クロックを用いてスレーブ側の通信制御を行う。これにより、マスタ側とスレーブ側との通信動作が互いに同期される。通常動作モード(以下、アクティブモードと呼ぶ)においては、上記の3.2kHzのブルートゥースクロックは規格上±20ppmの精度が要求されており、一般には8MHzや13MHzの動作クロックを分周することにより生成されている。
【0004】
さらに、ブルートゥース通信においては、一旦相互通信接続が確立された後に低消費電力モードに遷移した場合に、例えば、3.2kHzのクロックの周期の数十倍から数万倍の周期(数m秒〜数十秒の間隔)で相手機器の呼出しとその応答の信号を送受信することで相互通信接続を維持する処理(リンク処理)が行われる。この処理において信号を送受信するごく短い間は、アクティブモードと同様8MHzや13MHzの動作クロックが必要であるが、その他の期間はブルートゥースクロックをカウントして次の送受信タイミングを待機するだけなので、この間のカウントには低い周波数(例えば32kHz)の発振器で生成したクロックを使用し、周波数の高いアクティブモード用の発振器は停止するように制御することにより低消費電力化を図るようにされる。かかる低消費電力モードにおける3.2kHzのブルートゥースクロックは規格上±250ppmの精度が要求されている。
【0005】
ところで、近年、携帯電話機やPDA(携帯型情報端末)、デジタルカメラなどの携帯型電子機器は、そのほとんどに、例えば時・分・秒の単位で時刻の計時を行うリアルタイムクロック回路(RTC回路)が搭載されている。従来の携帯型電子機器はリアルタイムクロック回路用に32.768kHzの水晶発振器を使用しており、その発振信号を15ビットカウンタでカウントして215分周することで1秒の周期を生成するものが一般的であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ブルートゥース通信モジュールが搭載される携帯電話機やPDA又はデジタルカメラなどのシステムでは、リアルタイムクロック回路が搭載されることが多いが、このようなシステムにおいては、従来、ブルートゥース通信モジュールのアクティブモード用の動作クロックを生成する8MHzもしくは13MHzの水晶発振器、低消費電力モード用の32kHzの水晶発振器、リアルタイムクロック回路用の32.768kHzの水晶発振器と、少なくとも3つ、通常はベースバンド用の発振器が加わって4つの水晶発振器が設けられていた。
【0007】
しかし、発振器に含まれる水晶振動子は、通信システムを構成する通信用ICなどの半導体チップに較べると相対的に大きいため、システムに搭載する振動子の数が多いと実装面積が大幅に拡大しこれを組み込んだモジュールの体積が大きくなってしまう。そこで、本発明者らは、リアルタイムクロック回路用のクロック信号とブルートゥース通信モジュールの低消費電力モード用のクロック信号とを共通の水晶振動子を用いて生成する技術について検討した。
【0008】
その結果、低消費電力モードに必要な3.2kHz±250ppmのクロックをリアルタイムクロック回路用の32.768kHzの発振信号から生成することは、単純なカウンタや分周回路を用いただけでは不可能であり、また、特殊なPLL(Phase Lock Loop)等を使用すれば生成することも可能であるが、それではチップ面積や消費電力の増大につながりかえって逆効果になるという結論に至った。
【0009】
本発明の目的は、例えばブルートゥース通信のような短距離無線通信の低消費電力モードに使用されるクロックと、リアルタイムクロック回路の動作クロックとの共通化を図り、その結果、水晶振動子の数を減らして通信用モジュールの小型化を図ることの出来る短距離無線通信システム、並びに、短距離無線通信制御を行う半導体集積回路を提供することにある。
この発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添附図面から明らかになるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を説明すれば、下記のとおりである。
すなわち、時計機能のために例えば1秒単位の計時を行うタイマ回路(例えばリアルタイムクロック回路)を、クロック信号をカウントするクロックカウンタと、該クロックカウンタの値が所定値になったときに信号を出力するデコーダと、該デコーダの出力信号によりカウント動作をする第2のカウンタにより構成し、上記クロックカウンタに例えばブルートゥースのような短距離無線通信の低消費電力モードで使用されるクロック信号を供給するとともに、該クロックカウンタとデコーダにより時刻の計時に必要な単位時間長(例えば1秒)の周期を有する信号を生成し第2のカウンタでそれを計数するようにしたものである。
【0011】
このような手段によれば、タイマ回路を動作させるクロックと低消費電力モード時に短距離無線通信で使用されるクロックとが共通化されるため、クロックを生成するのに必要な水晶振動子や発振器の個数が少なくてすむようになり、水晶振動子や発振器を含めた短距離無線通信システムを構成する部品の実装面積を小さくすることが出来る。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例のブルートゥース通信システムが搭載された携帯電話機のシステム構成例を示すブロック図である。
この携帯電話機は、無線基地局との交信により公衆ネットワークを通じて通話を行うセルラ通信機能(以下、携帯電話機能と称することもある)に加え、短距離無線通信としてブルートゥース規格の通信により同様の通信機能を有する電子機器と相互通信接続して小範囲(例えば半径10m、25m、100mなど3つのクラスがある)のネットワークを構成するブルートゥース通信機能を備えたものである。
【0013】
図1の実施例の携帯電話機は、表示部としての液晶パネル200、携帯電話用の送受信アンテナ321a、ブルートゥース通信用の送受信アンテナ321b、音声出力用のスピーカ322、音声入力用のマイクロホン323、上記液晶パネル200を駆動して表示を行わせる液晶コントロールドライバ310、スピーカ322やマイクロホン323の信号の入出力を行う音声インターフェース330、アンテナ321aを介して送受信される搬送信号をセルラ通信規格の方式に従って変復調する携帯電話用RFモジュール340、アンテナ321bを介して送受信される2.4GHz帯の搬送信号をブルートゥース規格の方式に従って変復調する変復調回路としてのブルートゥース用RFモジュール350、音声信号やセルラ方式の送受信信号に係る信号処理を行う信号処理回路361、ブルートゥース通信用のベースバンド信号に対して他の機器と相互通信接続するための信号処理を行うリンクコントローラ362、カスタム機能を提供するASIC(Application Specific Integrated Circuits)363、セルラ通信およびブルートゥース通信のプロトコル処理や表示制御などシステム全体の制御を行うマイクロプロセッサもしくはマイクロコンピュータなどからなるシステム制御装置364、時計機能のために例えば時・分・秒の単位で計時を行うタイマ回路としてのリアルタイムクロック回路365、データやプログラムの記憶用メモリ370、および、各部に必要なクロックを生成する3つの水晶発振器380〜382等を備えてなる。ここで、水晶発振器380は第1水晶発振回路を、水晶発振器382は第2水晶発振回路を構成するものである。
【0014】
上記の構成のうち、アンテナ321bと、ブルートゥース用RFモジュール350、リンクコントローラ362、システム制御装置364、水晶発振器380〜382とによりブルートゥース通信システムが構成される。また、アンテナ321aと、携帯電話用RFモジュール340、音声インターフェース330、信号処理回路361、システム制御装置364、リアルタイムクロック回路365、水晶発振器380,381とにより携帯電話通信システムが構成される。
【0015】
本実施例では、上記信号処理回路361と、リンクコントローラ362、ASIC363、システム制御装置364により、セルラ通信のベースバンド信号とブルートゥース通信のベースバンド信号に対してプロトコル処理を行ういわゆるベースバンド部360が構成される。なお、図1には、セルラ通信とブルートゥース通信の両方のプロトコル処理を1つのシステム制御装置364で行うように示されているが、各プロトコル処理を行う制御部を別々に構成することも可能である。
【0016】
また、上記構成のうち、液晶パネル200、アンテナ321a,321b、スピーカ322とマイクロホン323、および発振器380〜382の水晶振動子380a〜382aの各構成を除いた回路は、1チップの半導体基板上に集積して1個のIC(半導体集積回路)として構成することが出来る。あるいは、携帯電話用のモジュールとブルートゥース通信用のモジュールとに分けてそれぞれIC化したり、RFモジュールとベースバンド部とに分けてそれぞれIC化するなど、システム構成はさまざまに変更可能である。
【0017】
また、IC化した場合には、各発振器のうち水晶振動子380a〜382aを除いた発振回路380b〜382bをIC内部に設けて、水晶振動子380a〜382aを発振回路380b〜382bが接続された外部端子に外付けして発振器を構成したり、発振器380〜381を設けずにあるいは水晶振動子を接続しないで内部の発振回路380b〜382bに、外部端子から直接クロック信号を入力するように構成しても良い。
【0018】
水晶発振器380〜382は、それぞれ水晶振動子380a〜382aと発振回路380b〜382bとから構成され、各水晶振動子380a〜382aの固有振動特性に基づいて、携帯電話用およびブルートゥース用のRFモジュール340,350とリンクコントローラ362に供給される13MHzのクロックφa(第1クロック信号)と、ベースバンド部の動作クロックとして供給される25MHzのクロックφb(第3クロック信号)と、リアルタイムクロック回路365と低消費電力モード時にリンクコントローラ362で使用される32kHzのクロックφc(第2クロック信号)とをそれぞれ生成するものである。
【0019】
32kHzの水晶発振器382は常に発振動作するように構成され、そのクロックφcはリアルタイムクロック回路365に対しては常時入力される一方、リンクコントローラ362に対しては、イネーブル信号のような制御信号でクロックの供給/遮断を行うANDゲートのようなゲーテッドクロック回路などを介して低消費電力モード時のみ入力されるように制御される。なお、この水晶発振器382は従来のブルートゥース通信機器においても低消費電力モード用のクロック生成に使用されているものであるが、周波数が低いためこれを常時動作させておいたとしてもこのクロックで動作する回路の消費電力は非常に小さいので、従来においても常に発振動作されている。
【0020】
13MHzのクロックφaは、携帯電話用およびブルートゥース用のRFモジュール340,350に入力された後、該モジュール内でPLL回路などを用いてGHzオーダーの周波数に高められて信号の送受信動作に供給される。また、リンクコントローラ362にはゲーテッドクロック回路などを介してアクティブモード時のみ入力され、通信動作やアクティブモード時のブルートゥースクロックを生成するのに用いられる。
25MHzのクロックφbは、そのままあるいはベースバンド部360内に設けられている図示しないPLL回路などによりその周波数が数倍(例えば4倍)に高められて、信号処理回路361、ASIC363、およびシステム制御装置364に動作クロックとして供給される。
【0021】
上記のクロックφa,φbは周波数が比較的高く、これらのクロックφa,φbを生成する発振回路380b,381bを常時動作させると内部回路の消費電力が比較的大きくなるため、クロック供給先の全回路が低消費電力モードに遷移した場合には、対応する発振回路の動作が停止され、低消費電力モードからアクティブモードに移行する際に発振動作を再開するように制御される。クロック供給先の回路の一部のみが低消費電力モードに遷移した場合には、対応する水晶発振器は動作させたまま、低消費電力モードに遷移した回路へのクロック供給を遮断して消費電力が低減されるように制御される。
【0022】
図2には、ブルートゥース通信の通信動作を説明するタイムチャートを示す。
一般に、ブルートゥース通信は3.2kHzのブルートゥースクロックの2クロック期間(625μs)を1スロットとして、このスロットごとにマスタ機器とスレーブ機器との間で交互にパケットデータを送受信することで通信が行われる。
【0023】
相互通信接続が開始される際には、マスタとなった機器はリンクコントローラの制御により問合せ信号を、1スロット間の2つのブルートゥースクロックの立上り時にそれぞれ送信して、他の通信機器がないか見つけ出す処理を行う。一方、スレーブとなった機器では、リンクコントローラの制御により他の機器からの問合せ信号がないかスキャンする処理が行われており、このスキャン処理によりスレーブ機器がマスタ機器側からの問合せ信号を受信できた場合に、スレーブ機器からマスタ機器へ応答信号が送信される。
【0024】
そして、このような問合せ信号の送受信と応答信号の送受信とが何度か行われてマスタ機器とスレーブ機器間の相互通信接続が確立されていく。この相互通信接続の確立の際、マスタ機器とスレーブ機器ではブルートゥースクロックの位相が互いにずれた状態にあるが、スレーブ機器のリンクコントローラが、両者のブルートゥースクロックの位相差を計数し、さらに、この計数値に基づきマスタ機器のブルートゥースクロックを推定し、この推定クロックを送受信タイミングとすることで、両機器間で通信の同期が図られるようになっている。
【0025】
そして、相互通信接続が確立された後は、互いのリンクコントローラにより、各スロット毎にマスタ機器とスレーブ機器との間で交互にパケットデータが送受信されるように通信制御が行われる。また、予めマスタ機器とスレーブ機器とが申し合わせておくことで、3スロットや5スロットにまたがるパケットデータを一度に送受信するような通信制御も行うことが出来る。アクティブモードにおいては、リンクコントローラ362において、13MHzの動作クロックφaを分周して生成した3.2kHz(±20ppm)のブルートゥースクロックが用いられて上記の通信制御が行われる。
【0026】
データ通信が一定期間行われないなどの所定条件が成立すると、ベースバンド部360からの指示によって、ブルートゥース通信モジュール350がアクティブモードから低消費電力モードへ遷移される。すると、互いのリンクコントローラの制御により、予めマスタ機器とスレーブ機器との間で取り決められた比較的長いタイムスロットの間隔で、呼出し信号と応答信号をやりとりして相互通信接続を維持するようになっている。
【0027】
詳細には、低消費電力モードに遷移されると、リンクコントローラ362にはアクティブモード用の動作クロックφaの供給が停止され、相対的に周波数の低い低消費電力モード用のクロックφcが供給される。また、ブルートゥース用RFモジュール350へのクロックφaの供給が停止され、ブルートゥース用RFモジュール350は低消費電力モードに遷移される。
【0028】
そして、この低消費電力モードでは、リンクコントローラ362によりクロックφcを10分周して生成した3.2kHz(±250ppm)のブルートゥースクロックがカウントされ、このカウント値が設定値になるまで低消費電力モードが続けられる。
【0029】
そして、上記カウント値が設定値になった場合に、リンクコントローラ362が自ら低消費電力モードから抜け出してアクティブモードへ遷移するとともに、ブルートゥース通信に関わる構成(ブルートゥース用RFモジュール350、システム制御装置364、水晶発振器380,381)で停止されていた回路を起動して、呼出信号と応答信号の送受信処理を行う。そして、この送受信の後、再び低消費電力モードに遷移し、このような処理を繰り返す。
【0030】
図3には、図1のリアルタイムクロック回路の一例のブロック図を示す。
この実施例におけるリアルタイムクロック回路365は、低消費電力モード用の水晶発振器382から供給される32kHzのクロックφcをカウントするクロックカウンタ(第1カウンタ)3651と、例えば時・分・秒の単位で時刻を示す値がカウントされるタイマカウンタ(第2カウンタ)3652と、クロックカウンタ3651の値に基づきタイマカウンタ3652の更新を行うデコーダ3653とから構成される。
【0031】
クロックカウンタ3651は15ビットカウンタであり、タイマカウンタ3652は最下位ビットが秒を示すように設定されたカウンタである。デコーダ3653は、クロックカウンタ3651の値が“32000(=H’7D00)”になったことに基づきキャリー信号CRYを発生してタイマカウンタ3652に供給し、タイマカウンタ3652はこのキャリー信号CRYによってインクリメントしてその最下位ビットに「+1」を加算する。また、キャリー信号CRYの発生により、クロックカウンタ3651の全ビットが“0”にクリアされるように構成されている。
【0032】
32kHzのクロックφcで動作するクロックカウンタ3651は1秒経過したときにその値が“32000”になるため、上記のような構成により、タイマカウンタ3652は特に制限されるものでないがこの実施例では、1秒周期で最下位ビットに「1」が加算され、それにより、例えば時・分・秒の単位で計時が行われるようになっている。
【0033】
以上のように、この実施例の携帯電話機に搭載されたブルートゥース通信システムによれば、リンクコントローラ362の低消費電力モードでのクロックφcを用いてリアルタイムクロック回路365が動作するので、従来のリアルタイムクロック回路が必要としていた32.768kHzの水晶発振器を省略することができ、モジュールを構成する部品点数の削減と、モジュールの小型化を図ることが出来る。
【0034】
図4には、本発明を適用したブルートゥース通信システムを搭載し、セルラ通信の他にブルートゥース通信が可能にされた携帯電話機のその他の構成例を示す。
図4のシステムは、図1のシステムと類似しているので、同一もしくは相当する回路や部位には同一の符号を付して重複した説明は省略する。この実施例のシステムは、RFモジュール340,350やリンクコントローラ362に供給される13MHzのクロックφaを、ベースバンド部360の信号処理回路361、ASIC363およびシステム制御装置364の動作クロックもしくはその基準クロックとして兼用したものである。システム制御装置364の処理負荷がさほど高くなく、システム制御装置364を最適な周波数より少し低い周波数で動作させても良い場合には、図4のように水晶発振器を380と382の2つに減らして、更なる部品点数の削減とモジュールの小型化を図ることが出来る。
【0035】
この実施例において、32kHzのクロックφcの供給を受けて時計機能のための計時を行うリアルタイムクロック回路365は、図1の実施例と同様の構成とすることができる。
【0036】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、実施例では、短距離無線通信システムの低消費電力モード用のクロックを供給する発振器として32kHzの水晶発振器を例示したが、その発振周波数は、アクティブモード用の発振器のものより低く、且つ、例えば3.2kHzの整数倍など、低消費電力モードに必要なクロック(実施例では3.2kHzのブルートゥースクロック)と、時刻の計時に必要な単位時間周期(例えば1秒周期)のパルスとをカウンタや分周回路により生成できる周波数であれば良い。それにより低消費電力モード用の水晶発振器とリアルタイムクロック回路用の水晶発振器とを1つで兼用できるという実施例と同様の効果が得られる。
【0037】
また、実施例では、タイマ回路として秒単位の計時を行うリアルタイムクロック回路を例示したが、例えば0.1秒や5秒あるいは1分単位など、1秒の整数分の1または1秒を整数倍した単位で計時を行うタイマ回路として構成することも出来る。この場合、デコーダ3653がキャリー信号CRYを出力するカウント値もそれに応じて変更される。
【0038】
また、実施例では、ベースバンド部360のシステム制御装置364がセルラ通信とブルートゥース通信の両方のプロトコル処理を行っているため、ブルートゥース通信が低消費電力モードに遷移した場合でもセルラ通信がアクティブモードの場合にシステム制御装置364を低消費電力モードへ遷移させられないが、例えば、セルラ通信のプロトコル処理を行う制御装置と、ブルートゥース通信のプロトコル処理を行う制御装置とが別構成になっている場合には、ブルートゥース通信が低消費電力モードに遷移した場合に、対応する制御装置も低消費電力モードへ遷移させることが出来る。
【0039】
また、実施例では、水晶発振器380,381がブルートゥース通信用の回路とセルラ通信用の回路の両方にクロックを供給する構成となっているため、ブルートゥース通信が低消費電力モードへ遷移した場合でもセルラ通信がアクティブモードの場合に、水晶発振器380,381の動作を停止させることが出来ないが、ブルートゥース通信用の回路のみにクロックを供給する構成であれば、ブルートゥース通信が低消費電力モードに遷移した場合に、水晶発振器380,381の動作を停止させることが出来る。
【0040】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である携帯電話機能の他にブルートゥース通信機能を備えた携帯電話機に適用した場合について説明したが、この発明はそれに限定されるものでなく、携帯型情報端末やデジタルカメラなどブルートゥース通信機能とリアルタイムクロック回路を搭載した電子装置やブルートゥース規格と類似の規格の通信機能を備えた電子機器に広く利用することができる。
【0041】
【発明の効果】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
すなわち、本発明に従うと、無線通信の低消費電力モード用の発振器と、時刻の計時を行うタイマ回路用の発振器とを兼用することができ、これによって無線通信システムの部品点数を削減し無線通信機能を搭載した電子機器の小型化が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例のブルートゥース通信システムが搭載された携帯電話機のシス
テム構成例を示すブロック図である。
【図2】
リンクコントローラによる相互通信接続の確立時に送受信される信号を示すタ
イムチャートである。
【図3】
図1のリアルタイムクロック回路の構成図である。
【図4】
ブルートゥース通信システムを搭載した携帯電話機の第2のシステム構成例を
示すブロック図である。
【符号の説明】
350  ブルートゥース用RFモジュール
362  リンクコントローラ
364  システム制御装置(プロトコル制御回路)
365  リアルタイムクロック回路
380〜382  水晶発振器
380a〜382a 水晶振動子
380b〜382b 発振回路
3651 クロックカウンタ(第1カウンタ)
3652 タイマカウンタ(第2カウンタ)
3653 デコーダ
φa   アクティブモードの動作クロック(第1クロック信号)
φb   ベースバンド用の動作クロック(第3クロック信号)
φc   低消費電力モードの動作クロック(第2クロック信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信制御処理を行うコントロール回路と、時計機能のための計時を行うタイマ回路とを備え、上記コントロール回路は通常動作モードにおいて第1の周波数の第1クロック信号により動作し、低消費電力モードにおいて上記第1クロック信号より周波数の低い第2の周波数の第2クロック信号により動作するように構成された半導体集積回路であって、
上記タイマ回路は上記第2クロック信号で計時動作するように構成されていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
上記タイマ回路は、上記第2クロック信号を計数する第1カウンタと、該第1カウンタの値が所定値になったときに信号を出力するデコーダと、該デコーダの出力信号により更新動作する第2カウンタとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
上記コントロール回路は、他の機器と相互通信接続して通信動作を行うリンクコントローラと、送受信データのプロトコル処理を行うプロトコル制御回路とを備え、
上記低消費電力モードの際に上記第2クロック信号が上記リンクコントローラに供給されて通信接続の処理動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
上記プロトコル制御回路は上記第2クロック信号よりも周波数の高い第3クロック信号により動作されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
上記第1クロック信号の入力又は該第1クロック信号を生成するための振動子を接続する第1外部端子と、上記第2クロック信号の入力又は該第2クロック信号を生成するための振動子を接続する第2外部端子とを備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の半導体集積回路。
【請求項6】
上記第2クロック信号は3.2kHzの整数倍の周波数の信号であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の半導体集積回路。
【請求項7】
通信制御処理を行うコントロール回路と、
上記コントロール回路の通常動作モードに使用される第1クロック信号を生成する第1発振回路と、
上記コントロール回路の低消費電力モードに使用される、上記第1クロック信号よりも周波数の低い第2クロック信号を生成する第2発振回路と、
上記第2発振回路により生成されたクロック信号を計数する第1カウンタと、該第1カウンタの値が所定値になったときに信号を出力するデコーダと、該デコーダの出力信号により更新動作する第2カウンタとを有し、時計機能のための計時を行うタイマ回路と、
を備えていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
上記コントロール回路は、他の機器と相互通信接続して通信動作を行うリンクコントローラと、送受信データのプロトコル処理を行うプロトコル制御回路とを備え、
上記低消費電力モードの第2クロック信号は上記リンクコントローラに供給されて低消費電力モードにおけるリンク処理動作に用いられることを特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
上記第2ロック信号よりも周波数の高い第3クロック信号を生成する第3発振回路を備え、
上記プロトコル制御回路は上記第3クロック信号により動作されるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の無線通信システム。
【請求項10】
無線通信用の搬送信号を送受信するアンテナと、
受信した搬送信号からベースバンド信号への復調およびベースバンド信号から搬送信号への変調を行う変復調回路とを備え、
上記第1クロック信号は上記変復調回路の動作クロック信号として共通に使用されることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載の無線通信システム。
【請求項11】
上記第2発振回路の発振周波数は、3.2kHzの整数倍であることを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載の無線通信システム。
【請求項12】
上記無線通信は、2.4GHz帯の信号を送受信するブルートゥース規格に従った無線通信であることを特徴とする請求項7〜11の何れかに記載の無線通信システム。
【請求項13】
通信制御処理を行うコントロール回路と、時計機能のための計時を行うタイマ回路とを備え、上記コントロール回路は第1動作モードにおいて第1の周波数の第1クロック信号により動作し、上記第1動作モードとは異なる第2動作モードにおいて上記第1クロック信号より周波数の低い第2の周波数の第2クロック信号により動作するように構成され、
上記タイマ回路は上記第2クロック信号で計時動作するように構成されていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項14】
上記コントロール回路は、他の機器と相互通信接続して通信動作を行うリンクコントローラと、送受信データのプロトコル処理を行うプロトコル制御回路とを備え、
上記第2動作モードの際に上記第2クロック信号が上記リンクコントローラに供給されて通信接続の処理動作を行うことを特徴とする請求項13に記載の半導体集積回路。
【請求項15】
上記プロトコル制御回路は上記第2クロック信号よりも周波数の高い第3クロック信号により動作されるように構成されていることを特徴とする請求項14に記載の半導体集積回路。
【請求項16】
上記第1クロック信号の入力又は該第1クロック信号を生成するための振動子を接続する第1外部端子と、上記第2クロック信号の入力又は該第2クロック信号を生成するための振動子を接続する第2外部端子とを備えていることを特徴とする請求項13〜15の何れかに記載の半導体集積回路。
【請求項17】
上記第2クロック信号は3.2kHzの整数倍の周波数の信号であることを特徴とする請求項13〜16の何れかに記載の半導体集積回路。
【請求項18】
通信制御処理を行うコントロール回路と、
上記コントロール回路の第1動作モードに使用される第1クロック信号を生成する第1発振回路と、
上記コントロール回路の第2動作モードに使用される、上記第1クロック信号よりも周波数の低い第2クロック信号を生成する第2発振回路と、
上記第2発振回路により生成されたクロック信号を計数する第1カウンタと、該第1カウンタの値が所定値になったときに信号を出力するデコーダと、該デコーダの出力信号により更新動作する第2カウンタとを有し、時計機能のための計時を行うタイマ回路と、
を備えていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項19】
上記コントロール回路は、他の機器と相互通信接続して通信動作を行うリンクコントローラと、送受信データのプロトコル処理を行うプロトコル制御回路とを備え、
上記第2動作モードの第2クロック信号は上記リンクコントローラに供給されて第2動作モードにおけるリンク処理動作に用いられることを特徴とする請求項18に記載の無線通信システム。
【請求項20】
上記第2発振回路の発振周波数は、3.2kHzの整数倍であることを特徴とする請求項18から19の何れかに記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2004−15715(P2004−15715A)
【公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−170076(P2002−170076)
【出願日】平成14年6月11日(2002.6.11)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】